(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5936980
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】自動車運搬用車両
(51)【国際特許分類】
B60P 3/075 20060101AFI20160609BHJP
【FI】
B60P3/075
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-221105(P2012-221105)
(22)【出願日】2012年10月3日
(65)【公開番号】特開2014-73718(P2014-73718A)
(43)【公開日】2014年4月24日
【審査請求日】2015年8月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236551
【氏名又は名称】株式会社浜名ワークス
(73)【特許権者】
【識別番号】512256694
【氏名又は名称】三榮運輸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076129
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 圭佑
(74)【代理人】
【識別番号】100080458
【弁理士】
【氏名又は名称】高矢 諭
(74)【代理人】
【識別番号】100089015
【弁理士】
【氏名又は名称】牧野 剛博
(72)【発明者】
【氏名】田村 元
(72)【発明者】
【氏名】神谷 好則
【審査官】
田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭61−050843(JP,A)
【文献】
特開平02−262449(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3033331(JP,U)
【文献】
特開平06−286518(JP,A)
【文献】
実開昭60−163131(JP,U)
【文献】
特開2012−131255(JP,A)
【文献】
実開平02−125841(JP,U)
【文献】
特開2010−228582(JP,A)
【文献】
実開昭59−067402(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 3/073−3/077
B62D 33/02
B60S 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷台上面に、自動車の車輪固縛用装具におけるフック及びタイヤストッパが掛止め可能とされたグレーチングが配置された自動車運搬用車両であって、
前記荷台の幅方向両側に、幅方向中央部分よりも低く、防油性の材料からなり、各々が荷台全幅の1/7〜1/3で、前記荷台の前端から後端まで連続して形成された左右一対のトレンチと、
前記荷台を貫通して設けられ、前記左右のトレンチの荷台後端近傍の底面に連通する排液管と、
前記荷台の下側に吊下げられ、前記排液管からの排液を受止めて油水分離をする油水分離器と、
を有してなり、
前記グレーチングは、前記トレンチに上方から嵌め込められる形状で、且つ、上面が前記荷台の中央部分と等しい高さとなるようにされたことを特徴とする自動車運搬用車両。
【請求項2】
請求項1において、
前記グレーチングにおける、前記車輪固縛用装具が引掛け可能であり、固縛のとき前記自動車の車輪が載る固縛部の幅が、前記固縛部以外の一般部の幅の1.5〜2.5倍とされたことを特徴とする自動車運搬用車両。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記荷台の上面、且つ、後端において、前記左右のトレンチに連通する後端トレンチが設けられ、前記排液管は、前記左右のトレンチの一方の荷台後端近傍の底面に設けられ、前記後端トレンチを介して前記左右のトレンチの他方に連通されたことを特徴とする自動車運搬用車両。
【請求項4】
請求項1又は2において、
前記排液管は、前記左右のトレンチの一方の後端近傍の底面に設けられ、且つ、他方のトレンチの後端近傍の底面とは、床面の下方を通って荷台幅方向に配置された接続管を介して連通されていることを特徴とする自動車運搬用車両。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記グレーチングは、平面視でX軸方向に長いX方向部材、及び、Y軸方向に長いY方向部材を格子状に並べて、溶着して構成され、前記X方向部材は、帯状板体であって、その幅方向が高さ方向となるように平行に並べて配置され、前記Y方向部材は、角棒を、その中心軸線周りにねじって形成されたねじり棒からなり、前記並べられたX方向部材の上面に溶着されていることを特徴とする自動車運搬用車両。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記トレンチは、幅方向両側に、前記グレーチングの底面が接触する載置部と、幅方向中間部において、前記載置部よりも低く凹設された溝部と、からなり、前記溝部は、前記排液管に連通されていることを特徴とする自動車運搬用車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車運搬用車両に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車運搬用車両としては、例えば特許文献1に記載されたようなものがある。
【0003】
一方、自動車運搬用車両において、工作機械などを搬送できるようにしたものがある。
【0004】
工作機械は、これが中古の場合、切削油などが付着していたり、あるいはオイルタンク内の残油が漏洩して荷台の床面に滴下することがある。
【0005】
このような漏洩油が床面に残っていた場合、車両の運行中に一箇所に集まって、そこから路上に漏れてしまうことも考えられる。又、自動車の搬送中に荷台が雨に濡れた場合、その雨と共に荷台表面上の油が路面に流出することも考えられる。
【0006】
このように、路面に流出した漏洩油は、環境を汚染するので必ず拭き取ったりしなければならないが、自動車運搬用車両の荷台は面積が広く、拭き取り作業に時間及びコストが掛かり、且つ、その間は車両を休ませなければならないので、運行効率が低下してしまうという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−106576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来の問題点を解消するべくなされたものであって、拭き取り作業をすることなく、荷台上に滴下した漏洩油を回収できるようにした自動車運搬用車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、次の各実施例によって解決することができる。
【0010】
(1)荷台上面に、自動車の車輪固縛用装具におけるフック及びタイヤストッパが掛止め可能とされたグレーチングが配置された自動車運搬用車両であって、前記荷台の幅方向両側に、幅方向中央部分よりも低く、防油性の材料からなり、各々が荷台全幅の1/7〜1/3で、前記荷台の前端から後端まで連続して形成された左右一対のトレンチと、前記荷台を貫通して設けられ、前記左右のトレンチの荷台後端近傍の底面に連通する排液管と、前記荷台の下側に吊下げられ、前記排液管からの排液を受止めて油水分離をする油水分離器と、を有してなり、前記グレーチングは、前記トレンチに上方から嵌め込められる形状で、且つ、上面が前記荷台の中央部分と等しい高さとなるようにされたことを特徴とする自動車運搬用車両。
【0011】
(2)(1)において、前記グレーチングにおける、前記車輪固縛用装具が引掛け可能であり、固縛のとき前記自動車の車輪が載る固縛部の幅が、前記固縛部以外の一般部の幅の1.5〜2.5倍とされたことを特徴とする自動車運搬用車両。
【0012】
(3)(1)又は(2)において、前記荷台の上面、且つ、後端において、前記左右のトレンチに連通する後端トレンチが設けられ、前記排液管は、前記左右のトレンチの一方の荷台後端近傍の底面に設けられ、前記後端トレンチを介して前記左右のトレンチの他方に連通されたことを特徴とする自動車運搬用車両。
【0013】
(4)(1)又は(2)において、前記排液管は、前記左右のトレンチの一方の後端近傍の底面に設けられ、且つ、他方のトレンチの後端近傍の底面とは、床面の下方を通って荷台幅方向に配置された接続管を介して連通されていることを特徴とする自動車運搬用車両。
【0014】
(5)(1)乃至(4)のいずれかにおいて、前記グレーチングは、平面視でX軸方向に長いX方向部材、及び、Y軸方向に長いY方向部材を格子状に並べて、溶着して構成され、前記X方向部材は、帯状板体であって、その幅方向が高さ方向となるように平行に並べて配置され、前記Y方向部材は、角棒を、その中心軸線周りにねじって形成されたねじり棒からなり、前記並べられたX方向部材の上面に溶着されていることを特徴とする自動車運搬用車両。
【0015】
(6)(1)乃至(5)のいずれかにおいて、前記トレンチは、幅方向両側に、前記グレーチングの底面が接触する載置部と、幅方向中間部において、前記載置部よりも低く凹設された溝部と、からなり、前記溝部は、前記排液管に連通されていることを特徴とする自動車運搬用車両。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、自動車運搬用車両において、荷台表面に漏れた漏洩油を確実に回収して、漏洩油の飛散による環境汚染を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施例に係る自動車運搬用車両を示す平面図
【
図3】同自動車運搬用車両の荷台の一部を示す斜視図
【
図4】同荷台に配置されるグレーチングの一部を拡大して示す斜視図
【
図7】同自動車運搬用車両のグレーチングに、車輪固縛用装具によって自動車の車輪を固縛した状態を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例に係る自動車運搬用車両10について詳細に説明する。
【0019】
図1、
図2に示される自動車運搬用車両10には、荷台12の上面に
図7に示される車輪固縛用装具14のフック及びタイヤストッパ等(説明後述)が掛止め可能とされたグレーチング16が配置されている。
【0020】
荷台12には、その幅方向両側に、荷台前端から後端まで連続して形成された左右一対のトレンチ18A、18B、及び、この左右一対のトレンチ18A、18Bの後端に連続して荷台幅方向に形成された後端トレンチ18Cが凹設されていて、前記グレーチング16は、トレンチ18A、18B、18Cに、上方から嵌め込まれる形状で、且つ、嵌め込み状態で上面が荷台12の中央部分13と等しい高さとなるようにされている。
【0021】
前記左右一対のトレンチ18A、18B及び後端トレンチ18Cの各々には、
図3に詳細に示されるように、幅方向両側にグレーチング16(
図4参照)の底面が接触する載置部19Aと、幅方向中間部において載置部19Aよりも低く凹設された溝部19Bとから構成されている。
【0022】
図5、
図6に示されるように、トレンチ18Bの溝部19Bの後端近く、及び、後端トレンチ18C内には、荷台12を貫通して排液管20A、20Bがそれぞれ接続されている。これらの排液管20A、20Bは、荷台12の下側に吊下げられた油水分離器22に連通されている。
【0023】
油水分離器22内には、縦方向に平行に複数のろ紙が設けられていて、このろ紙を油水が通過するときに、油のみが吸着されるようになっていて、排液管20A、20Bからの排液を受止めて、油水分離をするようにされている。油水分離器の構造は周知であるので、詳細な説明は省略する。
【0024】
図4に一部が拡大して示されるように、グレーチング16は、左右一対のトレンチ18A、18B内において、平面視で、X軸方向(車両前後方向)に長い複数のX方向部材24X、及び、Y軸方向(車両幅方向)に長い複数のY方向部材24Yを格子状に並べて溶着して構成されている。X方向部材24Xは、帯状板体であって、その幅方向が高さ方向(Z軸方向)となるように平行に並べて配置されている。Y方向部材24Yは、角棒をその中心軸線周りにねじって形成されたねじり棒からなり、前記並べられたX方向部材24Xの上面に形成された切欠き部25内に上方から嵌め込まれた状態でX方向部材24Xに溶着されている。
【0025】
前記トレンチ18A、18B及び後端トレンチ18Cは、防油性の材料(例えばJISA6021:2011ウレタンゴム系高強度形の超速硬化ウレタン吹き付け防水材)からなり、
図1に示されるように左右のトレンチ18A、18Bでは、グレーチング16の固縛部16Aと一般部16Bに対応した幅に形成されている。後端トレンチ18Cは、グレーチング16における一般部16Bの幅と等しい車体前後方向長さの幅で形成されている。
【0026】
この実施例において、グレーチング16における固縛部16Aの幅は、一般部16Bの幅の約2倍とされている。従って、トレンチ18A、18Bの、固縛部16Aに嵌め込まれる部分は、他の部分の2倍の幅に形成されている。
【0027】
図2の符号26は、収納状態の幌を示す。この幌26は、自動車運搬用車両10に自動車や他の荷物を積載した時、荷台12の後端まで引張って前後方向に広げられ、積載荷物を雨水や埃から保護するものである。
【0028】
なお、図においては、自動車を荷台12に積み卸しする際に用いられる道板が図示省略されている。
【0029】
図5、
図6に示されるように、トレンチ18A、18B及び後端トレンチ18C内の漏出油を油水分離器22に導くための排液管20A、20Bは、荷台12の幅方向には同一位置で、且つ、前後方向には2箇所に設けられている。
【0030】
一方の排液管20Aは、荷台12における幅方向一対のトレンチ18A、18Bのうち、車体左側のトレンチ18Bに接続され、後ろ側の排液管20Bは後端トレンチ18Cの荷台幅方向左側位置に接続されている。従って、排液管20Aは主としてトレンチ18B内の漏出油、排液管20Bはトレンチ18A内及び後端トレンチ18C内の漏出油を油水分離器22に導くようにされている。
【0031】
図5、
図6において符号28は、油水分離器22において油分を分離された後の水を排出するためのドレーンコックを示す。
【0032】
図7において、符号30は、車輪固縛用装具14によってグレーチング16に固縛される自動車の車輪を示す。
【0033】
この実施例において、車輪固縛用装具14は、車輪30のほぼ上半分に巻き掛けられる調整側ベルト14Cと、前記タイヤストッパ14Bと、調整側ベルト14Cの一端を巻き締めするためのラチェットバックル14Dと、このラチェットバックル14Dの調整側ベルト14Cと反対側に連結された固定ベルト14Eと、固定ベルト14Eをグレーチング16に固定するためのフック14Aと、を備えている。又、フック14Aは、調整側ベルト14Cの他端をグレーチング16に固定するため及び車輪30とラチェットバックル14Dの間で、調整側ベルト14Cをグレーチング16方向に引張るようにされたガイドローラ14Fをグレーチング16に掛止めするためにも用いられている。
【0034】
本実施例においては、荷台12上に落下した油滴が、トレンチ18A、18B及び後端トレンチ18Cにおける溝部19Bに導かれて、排液管20A、20Bから油水分離器22に送られて、油と水に分離されるので、荷台12上の油滴が道路上に拡散することが防止される。
【0035】
又、荷台12上の油はトレンチ18A、18B及び後端トレンチ18Cに集められ、且つ、その上にグレーチング16が設けられているので、自動車を積載する際に、油によって車輪が滑ったりすることがない。
【0036】
特に、この実施例においては、トレンチ18A、18B及び後端トレンチ18Cは、X方向部材24Xとこれと直行するY方向部材24Yを格子状に溶着してなるので、積載自動車の車輪がトレンチ上で滑ったりすることが無い。更にY方向部材24Yは、四角形断面の角棒をその中心軸線周りにねじって形成されているので、その曲げ剛性を大きくすることができると共に、車輪との引っ掛かりを向上させることができる。
【0037】
なお、上記実施例において、グレーチング16は、一般部16Bよりも幅広の固縛部16Aを有しているが、本発明はこれに限定されるものでなく、幅広の固縛部を設けることなく、積載自動車の車輪を車輪固縛用装具14によって固縛することができるものであればよい。
【0038】
ただ、固縛部16Aのみを一般部16Bよりも幅広に形成しておくと、全体を幅広に形成する場合よりもコスト及び重量が少なく、且つ、幅広の車輪を有する自動車の搬送ができるという利点がある。
【0039】
又、前記固縛部16Aの幅は、一般部16Bの幅の1.5〜2.5倍の範囲で設ければよい。
【0040】
更に、上記トレンチ18A、18Bは、X方向部材24Xを車体前後方向としているが、本発明はこれに限定されるものでなく、Y方向部材24Yが車体前後方向となるように配置しても良い。これは、後端トレンチ18Cについても同様である。
【0041】
更に、上記実施例において、後端トレンチ18Cは必ずしも設けなくても良い。この場合、後端トレンチ18Cに変えて、トレンチ18A、18Bを、荷台12の後端位置で車体幅方向に連通するように排液管を設ける必要がある。
【0042】
又、上記の実施例においては、トレンチ18A、18B内に嵌合されたグレーチング16は、そのX方向部材24Xが帯状板体であって、幅方向が高さ方向となるように平行に並べて配置されていて、且つ、X方向部材24Xは、車体前後方向に長く配置されているので、自動車運搬用車両10の走行中に右折や左折の際のいわゆる横Gによりトレンチ18A、18B内の油を含む液体が荷台12の幅方向に移動することが抑制される。従って、大きな横Gが加わっても、トレンチ18A、18Bの車両幅方向両端から油が外部に漏れることが無い。
【0043】
同様の理由で、後端トレンチ18Cにおいては、X方向部材24Xを車両幅方向に長く配置することによって、車両発進時の加速による、荷台12の後端からの油の漏出が防止される。
【0044】
なお、この実施例に係る自動車運搬用車両10は、1台の自動車を搬送するものであって、例えば全長の短い自動車を2台積載するような場合は、グレーチング及びトレンチは、車体前後方向の4箇所に、幅広の固縛部16Aに相当する幅広部分を形成しておく。
【産業上の利用可能性】
【0045】
荷台上に漏出した漏洩油が、運行中に路上に拡散して環境を汚染することを防止した自動車運搬用車両は、産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0046】
10…自動車運搬用車両
12…荷台
13…中央部分
14…車輪固縛用装具
14A…フック
14B…タイヤストッパ
14C…調整側ベルト
14D…ラチェットバックル
14E…固定ベルト
14F…ガイドローラ
16…グレーチング
16A…固縛部
16B…一般部
18A、18B…トレンチ
18C…後端トレンチ
19A…載置部
19B…溝部
20A、20B…排液管
22…油水分離器
24X…X方向部材
24Y…Y方向部材
25…切欠き部
26…幌
28…ドレーンコック
30…車輪