(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記長さ調整機構は、前記付勢手段の前記ブラシ本体側端部及び前記調整部の前記一端部双方の間に配置され、前記双方の端面に当接する弾性部材を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のブラシ装置。
【背景技術】
【0002】
一般に直流モータなどでは、ブラシを用いて整流子への整流を行っている。
ブラシは通常ブラシ装置に収められており、このブラシが厚み方向に沿って付勢されて整流子と当接することによって整流が実行される。そして、コイルに通電している電流の方向が切替ることにより回転子が回転する。
ところで、従来のブラシ付き直流モータにおいては、電流の方向が切替る際(以下、「整流時」と記す)、ブラシと整流子との接触の影響でチャタリングが起きると、ブラシと整流子間に火花が発生し、この火花によりブラシ寿命が短縮するという問題があった。
更に、騒音や電磁ノイズ等の原因となることが知られている。
【0003】
小型モータでは、一般的に、ブラシと整流子との接触性を保持するために、ねじり方向(回転方向)の荷重に対して有効性のあるトーションスプリング(ねじりばね)が使用される。
このトーションスプリングは、組付け性及びコスト面において有利であるため、現在、多く使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1には、直流モータが開示されている。
この特許文献1に記載の直流モータには、ブラシボックスとその中に保持されたブラシが開示されており、このブラシを整流子に圧接させるための捩りコイルばね(トーションスプリング)が配設されている。
そして、ブラシの外側端面(整流子と圧接する面と反対側の面)は、緩やかな断面円弧状の曲面として形成されており、捩りコイルばねの自由端は、この外側端面を押圧するよう構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、特許文献1のようにトーションスプリングを使用した技術であると、確かに、圧縮コイルばねや引張コイルばねのように直線方向に押圧力を付加するものに比して、ブラシと整流子の接触性を良好に保持することができる。
また、この技術を採用すると、組付け性や、コスト面においても有利である。
しかし、特許文献1のように、トーションスプリングを使用すると、このトーションスプリングの足長は一定であるため、ブラシが磨耗するに従い、トーションスプリングとブラシ被押圧面との接点位置が移動するという問題が生じる。
【0007】
つまり、
図11乃至
図13に示すように、ブラシが磨耗するに従い、トーションスプリングからの押圧力を受ける接点位置が変わり、ブラシの接触が片当りとなって不安定になるという問題が生じる。
簡単に説明すると、
図11に示すように、ブラシが磨耗する前では、トーションスプリングの先端は、ブラシの重心位置M11の直上に位置しており、トーションスプリングは、ブラシをその重心位置M11に向って押圧することができる。
【0008】
しかし、整流子との摺接によりブラシが磨耗すると、
図12に示すように、トーションスプリングの先端は、ブラシの重心位置M11の直上から外れ、重心位置M11に向ってブラシを押圧することができなくなる。
このため、ブラシの接触が片当りとなって不安定となる。
図13に押圧位置の軌跡を示す。
上記のような状態が起きると、整流時間も短くなり、不足整流による火花発生も懸念される。
【0009】
なお、特許文献1では、ブラシの押圧面が緩やかな断面円弧状(中心に向かい深くなる円弧状)の曲面として形成されており、トーションスプリングの自由端は、この押圧面を押圧するように形成されているが、トーションスプリングの自由端部が押圧面に固定されているわけではないので、ブラシの磨耗に伴いスプリングの押圧位置が変わり、ブラシと整流子との接触安定性の面で懸念が払拭されないものであった。
【0010】
本発明の目的は、上記各問題点を解決することにあり、ブラシ装置におけるブラシ周りの構造を変更して、ブラシが使用に伴い磨耗した場合であっても、ブラシと整流子との接触を恒常的に安定化させることが可能なブラシ装置及びこれを備えた直流モータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、本発明に係るブラシ装置によれば、整流子の径方向に延出するブラシ本体と、該ブラシ本体の径方向側端面を径方向内側へ向かって押圧して、前記ブラシ本体を前記整流子に圧接させる付勢手段と、を少なくとも備えたブラシ装置であって、前記付勢手段は、径方向以外の方向から前記ブラシ本体を前記整流子方向へと押圧するものであるとともに、前記付勢手段のブラシ本体側端部には、長さ調整機構が備えられており、前記長さ調整機構は、前記付勢手段の前記ブラシ本体側端部と分離して、前記ブラシ本体側に配設される調整部と、該調整部の前記ブラシ本体側に形成された係合押圧部と、前記付勢手段の前記ブラシ本体側端部と、前記調整部のうち前記係合押圧部が形成された側と反対側の一端部と、を被覆する被覆部と、を有して構成されており、前記係合押圧部は、前記被覆部内を前記ブラシ本体方向へ移動可能に構成されていることにより解決される。
【0012】
このように構成されていることにより、本発明に係るブラシ装置に備えられた付勢手段は、その長さを可変とすることができる。
つまり、係合押圧部をブラシ本体方向に移動させる(引出す)ことができる。
ブラシ本体は整流を行うことにより磨耗すると、その径方向側端面(押圧面)は、整流子側へと後退することとなる。
つまり、径方向側端面(押圧面)は移動することとなる。
【0013】
しかし、本発明では、係合押圧部をブラシ本体方向に移動させる(引出す)ことができるため、径方向側端面(押圧面)の磨耗による移動に追随することが可能となり、よって、付勢手段によるブラシ本体の押圧を確実に行い、ブラシ本体と整流子との接触を恒常的に安定化させることができる。
【0014】
また、このとき、具体的には、前記ブラシ本体が収納される収納ボックスを備え、前記付勢手段は、トーションスプリングであり、前記長さ調整機構は、前記収納ボックスの側面であって前記ブラシ本体の径方向側端面よりも前記整流子から径方向に離隔する位置から前記収納ボックス内部に進入して、前記係合押圧部が前記ブラシ本体の径方向側端面に接していると好適である。
【0015】
このようにトーションスプリングを使用することにより、圧縮コイルばねや引張コイルばねのように直線方向に押圧力を付加するものに比して、ブラシ本体と整流子の接触性を良好に保持することができるとともに、組付け性や、コスト面においても有利となる。
そして、トーションスプリングにおける問題点であった、ブラシ本体と整流子との接触安定性の問題は上記(請求項1)のように解消され、トーションスプリングの利点とともに、ブラシ本体と整流子との接触を恒常的に安定化させることも可能となる。
【0016】
さらに、前記長さ調整機構は、前記付勢手段の前記ブラシ本体側端部及び前記調整部の前記一端部双方の間に配置され、前記双方の端面に当接する弾性部材を備えるようにしてもよい。
【0017】
このように弾性部材を備えることにより、その弾性力によって、付勢手段による付勢力が調整部から係合押圧部を介してブラシ本体に確実に伝わり、ブラシ本体と整流子との接触を安定させることができる。
【0018】
例えば、前記弾性部材は、ゴム又はばねから形成されているものでもよい。
【0019】
さらに、前記ブラシ本体の径方向側端面には、前記係合押圧部の形状に整合し、前記係合押圧部を係止する係合凹部が形成されており、前記係合押圧部は、前記係合凹部に係合し、前記ブラシ本体の磨耗により、前記ブラシ本体の径方向側端面が前記整流子方向に移動した際、前記長さ調整機構の前記係合押圧部が、前記被覆部内を移動して前記ブラシ本体方向へ引出されることにより、前記係合押圧部と前記係合凹部との係合状態は維持されると好ましい。
【0020】
このように構成されていると、係合押圧部と係合凹部が係合して、ブラシ本体の押圧位置がずれることを確実に回避することができる。
また、係合押圧部と係合凹部が係合しているため、長さ調整機構における係合押圧部の引出し(つまり、長さ調整)が容易かつ確実に行える。
よって、より確実に、ブラシ本体と整流子との接触を恒常的に安定化させることが可能となる。
【0021】
また、具体的な適用において、前記係合押圧部は、前記調整部の前記一端部の延出方向を基準として前記ブラシ本体側に膨出するように湾曲して形成されており、前記係合凹部は、前記係合押圧部に係合する、断面略V字形状、断面略U字形上、断面略円弧形状、のいずれかに形成された溝若しくは孔部であると、係合押圧部と係合凹部とが確実に係合するので、確実にブラシ本体を押圧できることとなり好適である。
【0022】
更に、具体的には、前記係合凹部は、前記ブラシ本体の重心点の径方向線上に形成されると、ブラシ本体を好ましい方向に押圧することが可能となるため好適である。
【0023】
更に、本発明に係る直流モータは、前記整流子と、該整流子を有する回転子と、前記ブラシ装置と、を少なくとも備える。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るブラシ装置は、ブラシ装置におけるブラシ周りの構造を変更したことにより、ブラシが使用に伴い磨耗した場合であっても、ブラシと整流子との接触を恒常的に安定化させることが可能となる。
このため、ブラシが磨耗するに従い、トーションスプリングからの押圧力を受ける接点位置が変わることなく、このため押圧位置は一定範囲となり、ブラシの接触が片当りとなって不安定になることが回避される。
また、整流時間を長く維持し、不足整流による火花発生を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下に説明する構成は本発明を限定するものでなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
本実施形態は、ブラシ装置におけるブラシ周りの構造を変更して、ブラシが使用に伴い磨耗した場合であっても、ブラシと整流子との接触を恒常的に安定化させることが可能なブラシ装置及びこれを備えた直流モータに関するものである。
【0027】
図1乃至
図7は、本発明の一実施形態を示すものであり、
図1はモータの概略構成を示す断面図、
図2はブラシ装置周りを示す説明図、
図3はスプリングの構成を示す説明図、
図4はスプリングのブラシ押圧状態を示す説明図、
図5はスプリングによるブラシ押圧状態(使用初期)を示す説明図、
図6はスプリングによるブラシ押圧状態(ブラシ磨耗時)を示す説明図、
図7は係合押圧部の移動状態を示す説明図である。また、
図8乃至
図10は、本発明の変形例に係る長さ調整機構を示す説明図である。
【0028】
図1により、本実施形態に係るモータMの構成の一例について説明する。
本実施形態に係るモータMは、ブラシ装置Sを除いて、公知のブラシ付き直流モータの構成を採用したものである。
本実施形態に係るモータMは、
図1に示すように、出力軸となるシャフト1と、コイル2が形成された鉄心3と、整流子4と、界磁機構としての磁石5と、ブラシ装置Sと、これらを内部に収納するハウジング6とを主たる構成要素として構成されている。
【0029】
シャフト1は、軸受7を介して回転自在にハウジング6に支持されている。
なお、本実施形態においてはモータMとして一方向回転モータを例示しているため、シャフト1は一方向に回転する構成となる。
シャフト1には鉄心3が固定されており、その周囲には鉄心3の外周を囲むように磁石5が配置されている。
また、シャフト1には整流子4もまた固定されている。
【0030】
整流子4は、シャフト1と一体的に一方向に回転する円筒状の部材であり、その回転方向に沿って一定間隔毎に配置された複数の整流子片4aを備える。
この整流子4は、回転に伴って、ブラシ装置Sのブラシ本体11と当接する整流子片4aが切り替わることにより、コイル2を流れる電流の向きを切り替える。
【0031】
また、ブラシ装置Sは、整流子4を通じてコイル2に電流を流すものであり、ブラシ本体11と、収納ボックス12と、付勢手段としてのスプリング13と、図示しない給電用のリード線から給電されるピグテール14とを主たる構成要件として構成されている。
このブラシ装置Sは、エンドブラケット10に、整流子4の径方向に延びるように一対取付けられており、本実施形態においては、シャフト1を中心として略90°離隔して配設されている。
【0032】
本実施形態に係るブラシ本体11は、主成分として銅粉を含有した黒鉛(ブラシ粉)から構成された略直方体形状の部材である。
このブラシ本体11の外側端面(整流子4と摺接する面と反対側の端面)には、係合凹部11aが形成されている。
【0033】
この係合凹部11aは、本実施形態においては、断面略V字形状に切り込まれた孔若しくは溝として構成されるが、これに限られるものでははく、断面略U時形状、断面円弧形状の孔若しくは溝として形成されていてもよい。
なお、このブラシ本体11の構成は、本発明の主要構成の一つであるため、後に詳述する。
【0034】
ブラシ本体11は、摺接面11B側の端部を突出させた状態で、その他部分が収納ボックス12に収納されており、同じく収納ボックス12内に収納されたスプリング13によって、その押圧面11A(摺接面11Bと反対側に対向する面)から整流子4側へ向けて付勢されている。
なお、このスプリング13の構成もまた、本発明の主要構成の一つであるため、後にブラシ本体11の構成と併せて詳述する。
【0035】
このように、スプリング13が付加する付勢力によって、ブラシ本体11は、その厚み方向(整流子4の径方向に沿う方向)の前端に位置する摺接面11Bにて回転状態の整流子4と当接することとなる。
換言すると、整流子4は、その外周面においてブラシ本体11の前端面(摺接面11B)に接しながら同面上を摺動することとなる。
【0036】
この結果、ブラシ本体11は、摺接面11Bが上記の厚み方向(整流子4の径方向に沿う方向)に沿って後退するように磨耗することになる。
すなわち、ブラシ本体11は、未消費の状態からモータMの利用時間の経過に伴って徐々に厚み方向に磨耗し、ブラシ本体11として適当に機能することができなくなるまで消費される。
【0037】
なお、本実施形態において、ブラシ本体11が消費され始めてから消費され終わるまでの期間(つまり、ブラシ本体11の寿命)は、モータMが使用され始めた時点から、摺接面11Bが所定位置(例えば、ピグテール14の接続位置から幾分手前の位置)まで後退した時点までの期間である。
【0038】
次いで、
図2乃至
図4により、本実施形態に係るスプリング13とブラシ本体11の構成について詳述する。
図2及び
図3には、本実施形態に係るブラシ装置S及びスプリング13が示されている。
図2に示すように、エンドブラケット10には、スプリング支持柱10aが、ブラシ装置Sが配設される側に凸となるように突設されている。
【0039】
収納ボックス12は、前述の通り、その内部にブラシ本体11が内蔵される中空略四角柱形状の部材であり、その上面には、径方向に切り欠かれたピグテール突出孔12aが形成されており、このピグテール突出孔12aよりピグテール14が突出するように構成されている。
【0040】
また、収納ボックス12の側面には、スプリング貫通孔12bが形成されており、スプリング13の長さ調整機構13A(後述する)は、このスプリング貫通孔12bを貫通して収納ボックス12内部に進入している。
【0041】
スプリング13は、長さ調整機構13A、ブラシ側端部13B、螺旋部13C、固定側端部13Dを有して構成されたトーションスプリングである。
螺旋部13Cは螺旋状に旋回されたバネ部であり、その中空部には、スプリング支持柱10aが嵌合する。
【0042】
固定側端部13Dは、螺旋部13Cの接線方向に延出した棒状の一端部であり、エンドブラケット10に突設されたスプリング支持片10bに固定されている。
また、ブラシ側端部13Bは、螺旋部13Cの接線方向に延出した棒状の他端部であり、その先端部は、後述する長さ調整機構13Aに接続されている。
【0043】
なお、ブラシ側端部13Bの先端部(ブラシ本体11側の端部)を以下、「本体側端部13e」と記す。
この本体側端部13eは、特許請求の範囲の「付勢手段のブラシ本体側端部」に相当する。
【0044】
図3に示すように、長さ調整機構13Aは、略直線棒状の調整部13aと、この調整部13aの先端部(ブラシ本体11側先端部)に形成された係合押圧部13bと、チューブ13cと、を有して構成されている。
【0045】
この係合押圧部13bは、先端が略円弧形状に湾曲するように形成されており、その湾曲形状は、ブラシ本体11の押圧面11Aに形成された係合凹部11aに整合するように構成されている。
つまり、スプリング13の係合押圧部13bは、ブラシ本体11の係合凹部11aに係止されるよう構成されている。
【0046】
なお、係合押圧部13bは略円弧形状に限られるものではなく、係合凹部11aの形状に合わせてこれに係合する形状であれば、どのような形状であってもよい。
以下、調整部13aの端部(係合押圧部13bが形成されている側と反対側の端部)を「調整部端部13d」と記す。
この調整部端部13dは、特許請求の範囲の「調整部のうち係合押圧部が形成された側と反対側の一端部」に相当する。
【0047】
チューブ13cは、円筒状の部材であり、本体側端部13eと調整部端部13dを内部に被覆するとともに、少なくとも調整部端部13dを移動可能とするものである。
前述の通り、本体側端部13eは、ブラシ側端部13Bの先端部であり、調整部端部13dは、調整部13aの一端部(係合押圧部13bが形成されている側と反対側の一端部)である。
具体的には、スプリング13のブラシ本体11側に延びる側の端片を略中央部付近で切断して使用するとよい。
【0048】
チューブ13cは、本体側端部13eと調整部端部13dがその内孔に嵌合するとともに、一定の力により調整部端部13dがブラシ本体11方向に引き出されるように構成されているとよい。
【0049】
素材等は特に限定されることはないが、具体的には、例えば、ある程度硬度のある素材(例えば、ある程度の硬度を有する合成樹脂等)で形成し、外力が特にかからない状態では嵌合状態を維持して両端部を不動とし、ブラシ本体11が磨耗し後退する程度の力で調整部端部13dが引出されるよう構成されるとともに、スプリング13がブラシ本体11を押す力によって変形しない程度の硬度を有するとよい。
【0050】
また、チューブ13cの内孔壁面を粗面としたり、弾性体を貼付する等の処理を行うことにより調整部端部13d及び本体側端部13eとチューブ13cの内孔壁面との摩擦係数を高めると、これが重力落下に対する抜け止めとなり、組付け性が向上する。
【0051】
このように構成されたブラシ本体11とスプリング13は、
図4に示すように組付けられる。
つまり、ブラシ本体11は、前述の通り、摺接面11B側の端部を突出させた状態で、その他部分が収納ボックス12に収納されており、この状態において、摺接面11Bは整流子4と圧接している。
【0052】
そして、スプリング13の長さ調整機構13Aは、収納ボックス12の側面に形成されたスプリング貫通孔12bを貫通して収納ボックス12内部に進入し、その先端に配設された係合押圧部13bが、押圧面11Aに形成された係合凹部11aに係止されることとなる。
よって、ブラシ本体11は、この係止点(係合凹部11aの位置)からスプリング13によりブラシ重心M1方向へと押圧されることとなる。
【0053】
次いで、
図5及び
図6により、スプリング13がブラシ本体11の磨耗に追随する様子を説明する。
図5に示すように、初期状態では、ブラシ本体11は、摺接面11B側の端部を突出させた状態で、その他部分が収納ボックス12に収納される。そして、この状態において、摺接面11Bは整流子4と圧接しており、押圧面11Aに形成された係合凹部11aにスプリング13の係合押圧部13bが係止されていることとなる。
よって、ブラシ本体11は、この係止点からスプリング13によりブラシ重心M1方向へと確実に押圧されている。
【0054】
この状態でブラシ本体11が磨耗すると、
図6に示すようにブラシ本体11の押圧面11Aが整流子4方向へと近接、換言すると、係合押圧部13bから離間する方向に移動する。このとき、スプリング13の本体側端部13eには、螺旋部13Cを略中心とした係合凹部11aに向かうばねの復元力が内在している。このため、本体側端部13eに係る復元力が、チューブ13cを介して調整部13aの係合押圧部13bに付加されることで、係合押圧部13bは、螺旋部13Cを略中心とした略円弧方向に移動する。このようにして、押圧面11Aに形成された係合凹部11aとスプリング13の係合押圧部13bとの接触が維持される。更に、長さ調整機構13Aによって、調整部端部13d(調整部13a)がブラシ本体11方向に引き出され、係合押圧部13bは、整流子4方向に移動する係合凹部11aに追従して移動することで、係止点はそのまま維持される。
つまり、押圧点は、ブラシ重心M1の直上(係合凹部11aの位置)であることは変わらず、よって、ブラシ本体11と整流子4とは安定的に圧接することとなる。
【0055】
図7に係合押圧部13b側が引出された状態を示す。
図7(a)には、初期状態(ブラシ本体11が磨耗していない状態)を示す。
この状態においては、調整部13aの露出部分はt1である。
この状態からブラシ本体11が磨耗すると、
図7(b)に示す状態となる。
【0056】
前述の通り、係合押圧部13bはブラシ本体11に形成された係合凹部11aに係合しているので、係合押圧部13bは矢印方向に引出されて、調整部13aの露出部分はt2となる。
つまり、t2−t1分の距離だけ引出されることとなる。
換言すれば、t2−t1分の距離だけ長くなったこととなり、係合押圧部13bは係合凹部11a部分を押し、つまり、ブラシ重心M1に向ってブラシ本体11を押圧することとなる。
【0057】
換言すれば、本実施形態の構成によれば、従来技術のように、押圧点がずれて、ブラシ重心M1の直上位置から外れることによりブラシ本体11が傾くことがない。
以上のように、ブラシ本体11が使用に伴い磨耗した場合であっても、ブラシ本体11と整流子4との接触を恒常的に安定化させることが可能となる。
このため、ブラシ本体11が磨耗するに従い、スプリング13からの押圧力を受ける接点位置が変わることなく、このため押圧位置は一定範囲となり、ブラシの接触が片当りとなって不安定になることが回避される。
また、整流時間を長く維持し、不足整流による火花発生を抑制することができる。
【0058】
(変形例)
上記の実施形態に係る長さ調整機構13Aにおいては、チューブ13cに覆われた部位である本体側端部13eと調整部端部13dとの間には何も設けられていないものとして説明した。このような構成であっても、チューブ13cが調整部端部13dを一定の力で押し出すことが可能な素材で形成し、チューブ13cの内孔面と調整部端部13dの外面との相互の摩擦力が最適なものとなるように、チューブ13cの内孔面又は調整部端部13dの外面の表面性状を選定することで、上記のように、調整部端部13dは、チューブ13cの内孔からブラシ本体11方向に引き出される。このようにすれば、次に説明する変形例に係る長さ調整機構13Ax,13Ayよりも簡単な構成で、ブラシ本体11に、整流子4に向かう方向の応力を付加することができる。
【0059】
本発明は、上記構成に限定されず、チューブ13cに覆われた部位である本体側端部13eと調整部端部13dとの間に、弾性部材を備える構成であってもよい。次に、変形例に係る長さ調整機構13Ax,13Ay,13Azについて、
図8乃至
図10を参照して説明する。
【0060】
長さ調整機構13Axは、
図8(a),
図8(b)に示すように、チューブ13cの内部であって調整部端部13dと本体側端部13eとの間に、弾性を有する例えば合成ゴムから成りリング状に形成されたゴム15aを備える。具体的には、本変形例に係るゴム15aは、そのリング状の中心貫通孔が本体側端部13eと調整部端部13dとを延長方向に向くように、換言すると、ゴム15aの外面が本体側端部13eの外面と調整部端部13dの外面とに略並行となる向きであり、ゴム15aの端面が本体側端部13eと調整部端部13dの双方に当接する向きで、チューブ13cの内部に配設されている。なお、本発明は、ゴム15aの配設向きを、この向きに限定するものではない。つまり、ブラシ本体11の磨耗後においても、調整部端部13dに安定して弾性力(復元力)が伝わればよく、具体的には、リング状のゴム15aの外周面に、調整部端部13d及び本体側端部13e双方の端面が当接するように配設するようにしてもよい。
【0061】
更に、ゴム15aは、ブラシ本体11が磨耗によって小さくなることにより係合凹部11aが整流子4側に移動し、ゴム15aの弾性力によって係合押圧部13bが引き出されると、ゴム15aが伸長することによってその復元力が弱まる。ゴム15aは、このような場合であっても、所定の弾性力を内在する状態、換言すると、弾性変形した状態となるように、チューブ13cの内部に配設されている。つまり、ゴム15aは、自然長よりも長くならない範囲で、調整部端部13dと本体側端部13eとのギャップに応じて伸縮するように配設されている。
【0062】
このように構成された長さ調整機構13Axによれば、磨耗することによってブラシ本体11が小さくなると、係合凹部11aは係合押圧部13bから離間しようとするが、ゴム15aの弾性力によって、係合凹部11aに追従するように調整部端部13dが引き出されることとなる。このように調整部端部13dが引き出されて、係合凹部11aと係合押圧部13bとが係合することによる押圧力が、ブラシ本体11が磨耗した場合であっても重心M1を通る方向に安定的に付加され、ブラシ本体11と整流子4との接触を安定して維持することができる。
【0063】
上述の効果は、ゴム15aを用いる代わりにばねを用いても奏することができる。次に、弾性部材としての板ばね15bを備える長さ調整機構13Ayについて説明する。
【0064】
長さ調整機構13Ayは、
図9(a),
図9(b)に示すように、チューブ13cの内部であって調整部端部13dと本体側端部13eとの間に、断面U字状に形成された板ばね15bを備える。具体的には、本変形例に係る板ばね15bは、そのU字状の並行する部位が、調整部端部13dの端面及び本体側端部13eの端面の双方にそれぞれ当接する向きで、チューブ13cの内部に設けられている。
【0065】
更に、板ばね15bは、ブラシ本体11が磨耗によって小さくなることにより係合凹部11aが整流子4側に移動し、板ばね15bの弾性力によって係合押圧部13bが引き出されると、板ばね15bが伸長することによってその弾性力が弱まる。板ばね15bは、このような場合であっても、所定の弾性力を内在する状態、換言すると、弾性変形した状態となるように、チューブ13cの内部に配設されている。つまり、板ばね15bは、自然長よりも長くならない範囲で、調整部端部13dと本体側端部13eとのギャップに応じて伸縮するように配設されている。
【0066】
このように構成された長さ調整機構13Ayによれば、磨耗することによってブラシ本体11が小さくなると、係合凹部11aは係合押圧部13bから離間しようとするが、板ばね15bの弾性力によって、係合凹部11aに追従するように調整部端部13dが引き出されることとなる。このように調整部端部13dが引き出されて、係合凹部11aと係合押圧部13bとが係合することによる押圧力が、ブラシ本体11が磨耗した場合であっても重心M1を通る方向に安定的に付加され、ブラシ本体11と整流子4との接触を安定して維持することができる。
【0067】
なお、上記のゴム15a及び板ばね15bは、弾性部材の一例であり、磨耗によって小さくなったブラシ本体11に対して、調整部端部13dの引き出しが自動でなされる程度の所定の押し出し力を調整部端部13dに付与可能な弾性部材であれば、その形状は任意である。例えば、弾性部材は、板ばね15bのように断面U字状のものに限定されず、長さ調整機構13Azが備えるものとして
図10(a),
図10(b)に示すように、断面N字状に形成された板ばね15cであってもよい。板ばね15cは、そのN字状の並行する部位が、調整部端部13dの端面及び本体側端部13eの端面の双方にそれぞれ当接する向きで、チューブ13cの内部に設けられている。
【0068】
板ばね15cは、このように形成され、チューブ13c内に配設されていることで、上記構成の板ばね15bと同様に、その弾性力で調整部端部13dを略均一に押し出すことができ、ブラシ本体11が磨耗した場合であっても、調整部端部13dから係合押圧部13bを介して係合凹部11aに押圧力を安定的に付加することができ、ブラシ本体11と整流子4との接触を安定して維持することができる。
【0069】
その他、ゴム15aは、リング状ではなく、多角筒状、円柱状、多角柱状又は板状等で形成されるものであってもよい。また、板ばね15bの代わりに、トーションばね、押しばね等から成るもの、その他合成樹脂から成るものを用いるようにしてもよい。