特許第5936983号(P5936983)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5936983
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】スタックモールド射出圧縮成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/56 20060101AFI20160609BHJP
   B29C 45/17 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   B29C45/56
   B29C45/17
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-224076(P2012-224076)
(22)【出願日】2012年10月9日
(65)【公開番号】特開2014-76549(P2014-76549A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2015年4月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】308013436
【氏名又は名称】小島プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩屋 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】近藤 啓太
【審査官】 長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−173074(JP,A)
【文献】 特開2006−110991(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0076713(US,A1)
【文献】 特開2011−104834(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定金型と、可動金型と、該固定金型と可動金型との間においてスライド可能な中間金型とを備え、
前記固定金型と中間金型との間に第1のキャビティが形成され、
前記中間金型と可動金型との間に第2のキャビティが形成されているスタックモールド射出成形型において、前記各キャビティへ射出した溶融樹脂に圧縮力を作用させながら冷却固化させる、スタックモールド射出圧縮成形方法であって、
前記固定金型内には、溶融樹脂を供給するノズルと連通する一次ランナが設けられており、
前記中間金型内には、該中間金型と固定金型とを完締めした状態において前記一次ランナと連通する二次ランナが設けられており、
前記二次ランナは、溶融樹脂の射出タイミングを制御可能なバルブゲートを介して前記第1及び第2のキャビティへそれぞれ連通しており、
前記固定金型と中間金型とを半締めした状態において、前記一次ランナと二次ランナの間に捨てランナが形成され、
前記第1・第2のキャビティのうち、いずれか一方のキャビティへ溶融樹脂を射出して射出圧縮成形した後、次いで他方のキャビティへ溶融樹脂を射出して射出圧縮成形することを特徴とする、スタックモールド射出圧縮成形方法。
【請求項2】
記第2のキャビティへ溶融樹脂を射出して射出圧縮成形した後、次いで前記第1のキャビティへ溶融樹脂を射出して射出圧縮成形することを特徴とする、請求項1に記載のスタックモールド射出圧縮成形方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つの金型で複数の成形品を成形できるスタックモールド射出成形型において射出圧縮成形を行う、スタックモールド射出圧縮成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、溶融樹脂を金型内のキャビティへ射出し、冷却固化することで所定形状に成形された射出成形品が、あらゆる分野で使用されている。このときに使用する射出成形型の一種として、1つの金型で複数の成形品を成形できるスタックモールド射出成形型も開発されている。スタックモールド射出成形型によれば、1つの金型で1つの成形品を成形する一般的な射出成形(以下、単数射出成形と称す)と同じ型締め力で、複数の成形品を同時に成形できるという利点を有する。すなわち、単数射出成形と同等の生産コスト(ランニングコスト)によって複数の成形品を同時に製造でき、従来よりも生産性を大幅に向上できる。延いては、成形品1個当たりのコスト低減にも繋がる。
【0003】
このようなスタックモールド射出成形型として、例えば特許文献1が提案されている。特許文献1では、固定金型と、可動金型と、該固定金型と可動金型との間においてスライド可能な中間金型とを備え、固定金型と中間金型との間に第1のキャビティが形成され、中間金型と可動金型との間に第2のキャビティが形成されている。固定金型内には、溶融樹脂を供給するノズルと第1のキャビティとを連通する一次ランナが設けられており、中間金型内には、第1のキャビティと第2のキャビティとを連通する二次ランナが設けられている。そのうえで、一次ランナを介して第1のキャビティへ射出された溶融樹脂は、そのまま二次ランナを介して第2のキャビティへも射出される。すなわち、特許文献1では、従来と同様に第1のキャビティと第2のキャビティとへ同時に溶融樹脂を射出している。
【0004】
一方、キャビティへ射出した溶融樹脂を冷却固化させる前に圧縮力を作用させて成形品を成形する射出圧縮成形方法も開示されている。これによれば、金型を型締めした際の圧縮力を受けながら成形品が成形されることによって、溶融樹脂の充填圧によって成形する一般的な射出成形(以下、充填圧射出成形と称す)よりも成形品の表面性状のムラが抑えられ、品質の高い成形品を得られるという利点を有する。このような射出圧縮成形方法としては、例えば特許文献2が提案されている。特許文献2では、完全に金型を型締めした完締め状態直前の半締め状態において溶融樹脂を射出してから金型を完全に型締めすることで、キャビティへ射出された溶融樹脂へ圧縮力を作用させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05−278087号公報
【特許文献2】特開2004−66728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、スタックモールド射出成形型と射出圧縮成形とには、それぞれ特有の利点がある。そこで、両者の利点を得るためには、特許文献1のようなスタックモールド射出成形型において、特許文献2のように射出圧縮成形を行えばよい。しかしながら、単に特許文献1と特許文献2とを組み合わせると、充填圧射出成形よりも高い型締め力を複数のキャビティへ同時に作用させる必要がある。これでは、キャビティの数に応じてトータル型締め力が倍増するので、単数射出成形と同等の生産コストで複数の成形品を同時に成形できるというスタックモールド射出成形型の利点が失われてしまう。
【0007】
そこで、スタックモールド射出成形型の利点を損なうことなく射出圧縮成形するには、各キャビティに作用させる圧縮力のタイミング(完締めタイミング)をずらすことが考えられる。しかしながら、特許文献1のように複数のキャビティへ同時に溶融樹脂を射出したうえで完締めタイミングを異ならせると、溶融樹脂がキャビティへ射出されてから固化されるまでの時間にバラツキが生じてしまう。これでは、各キャビティで得られる成形品の品質にもバラツキが生じてしまう。最悪の場合不良品が発生する虞もあり、結局スタックモールド射出成形型と射出圧縮成形とを組み合わせる意味がなくなってしまう。
【0008】
そこで、本発明はこのような課題を解決するものであって、その目的は、必要以上に生産コストを増加させることなくスタックモールド射出成形型によって射出圧縮成形を行いながら、同時に得られる各成形品における品質のバラツキも生じない、スタックモールド射出圧縮成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのための手段として、本発明は、固定金型と、可動金型と、該固定金型と可動金型との間においてスライド可能な中間金型とを備え、前記固定金型と中間金型との間に第1のキャビティが形成され、前記中間金型と可動金型との間に第2のキャビティが形成されているスタックモールド射出成形型において、前記各キャビティへ射出した溶融樹脂に圧縮力を作用させながら冷却固化させるスタックモールド射出圧縮成形方法であって、前記第1・第2のキャビティのうち、いずれか一方のキャビティへ溶融樹脂を射出して射出圧縮成形した後に、次いで他方のキャビティへ溶融樹脂を射出して射出圧縮成形することを特徴とする。
【0010】
これによれば、各キャビティへの溶融樹脂の射出タイミングをずらし、一方のキャビティにおいて射出圧縮成形してから他方のキャビティにおいて射出圧縮成形しているので、各キャビティにおいて溶融樹脂が射出されてから固化するまでの時間が均一となる。これにより、得られる各成形品の表面性状等の品質にバラツキが生じることを避けることができる。
【0011】
このとき、前記固定金型内に、溶融樹脂を供給するノズルと連通する一次ランナを設け、前記中間金型内に、当該中間金型と固定金型との完締め状態において前記一次ランナと連通する二次ランナを設けて、前記二次ランナを、溶融樹脂の射出タイミングを制御可能なバルブゲートを介して前記第1及び第2のキャビティへそれぞれ連通させたうえで、前記第2のキャビティへ溶融樹脂を射出して射出圧縮成形した後に、次いで前記第1のキャビティへ溶融樹脂を射出して射出圧縮成形することが好ましい。
【0012】
これによれば、バルブゲートの制御によって溶融樹脂を射出する場所とタイミングを自由に設定できる。なお、中間金型と固定金型とを完締めした状態において一次ランナと二次ランナとが連通する構成とすると、中間金型と固定金型との半締め状態においては、一次ランナと二次ランナとの連通部周辺には僅かな隙間(以下、捨てランナと称す)が生じ、当該捨てランナにも溶融樹脂が充填される。この場合、先に第1のキャビティにおいて射出圧縮成形すると、捨てランナに溜まった溶融樹脂が固化し始めているので、次いで第2のキャビティにおける射出圧縮成形性を阻害してしまう。これを避けるには、第1のキャビティに続いて第2のキャビティにおいて射出成形する前に、捨てランナで固化した樹脂をわざわざ除去する必要があり、生産性が低下してしまう。そこで、先に第2のキャビティにおいて射出圧縮成形してから、次いで第1のキャビティにおいて射出圧縮成形する構成としていれば、上記のような問題を避けることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、必要以上に生産コストを増加させることなくスタックモールド射出成形型によって射出圧縮成形を行うことができ、且つ、同時に得られる各成形品における品質のバラツキも生じない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】全開き状態の成形型の模式図である。
図2】第2のキャビティへ溶融樹脂を射出している状態を示す模式図である。
図3】第2のキャビティにおいて圧縮成形している状態を示す模式図である。
図4】第1のキャビティへ溶融樹脂を射出している状態を示す模式図である。
図5】第1のキャビティにおいて圧縮成形している状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の代表的な実施形態について説明する。本実施形態で使用する成形型は、図1等に示すように、固定金型10と、可動金型11と、該固定金型10と可動金型11との間においてスライド可能な中間金型12とを備え、固定金型10と中間金型12との間(双方の対向面)、及び中間金型12と可動金型11との間(双方の対向面)に、それぞれ所定形状の第1のキャビティ20及び第2のキャビティ21が形成された、スタックモールド射出成形型となっている。なお、本実施形態では、第1及び第2のキャビティ20・21は、固定金型10と中間金型12との間、及び中間金型12と可動金型11との間において、それぞれ複数(2箇所)設けられている。
【0016】
固定金型10には、溶融樹脂が供給されるノズル14と連通する一次ランナ15が設けられている。可動金型11は、中間金型12を介した固定金型10との対向位置においてスライド可能に配されている。中間金型12内には、一端が中間金型12と固定金型10とを完締めした状態において一次ランナ15と直接連通する、二次ランナ16が設けられている。二次ランナ16は、中間金型12内において複数方向へ分岐状に延びており、その他端は、それぞれ各キャビティ20・21へ連通している。なお、二次ランナ16の他端(各キャビティ20・21との連通部)には、バルブゲート30が設けられている。バルブゲート30は、図2に示すように、バルブゲート用射出部31に対して進退可能な封止ピン(バルブ)32を内部に備えるゲートであって、封止ピン32を進退させてバルブゲート用射出部31の開閉を行うことで、溶融樹脂の射出タイミングを制御可能となっている。符号17は、可動金型11及び中間金型12のスライド移動を案内するタイロッドである。
【0017】
そのうえで、当該成形型により樹脂成形品を射出圧縮成形する方法について説明する。まず、図1に示す全開き状態から、図2に示すように、固定金型10に対して中間金型12を完全に型締め(完締め)して一次ランナ15と二次ランナ16とを直接連通させる。一方、この時点では、中間金型12と可動金型11とを完締めせず、完締め状態直前の半締め状態(完締め状態よりも中間金型12と可動金型11とを僅かに開いた状態)としておく。そのうえで、ノズル14から一次ランナ15及び二次ランナ16を通して、各第2のキャビティ21のみへ溶融樹脂を射出する。このとき、一次ランナ15と二次ランナ16とが直接連通していることで、当該一次ランナ15と二次ランナ16との連通部周辺には、溶融樹脂が無駄に溜まることはない。
【0018】
中間金型12と可動金型11との半締め状態において、各第2のキャビティ21へ十分量の溶融樹脂を充填できたら、図3に示すように、中間金型12と可動金型11とを完締めし、圧縮成形する。すなわち、各第2のキャビティ21内に充填されている溶融樹脂に圧縮力が作用し、当該圧縮状態において可動金型11を冷却させて溶融樹脂を固化させる。これにより、表面性状の良好な品質の高い成形品となる。
【0019】
各第2のキャビティ21において射出圧縮成形できたら、図4に示すように、固定金型10と中間金型12とを僅かに開いて半締め状態としたうえで、今度は各第1のキャビティ20へ溶融樹脂を射出する。このとき、一次ランナ15と二次ランナ16との連通部周辺には僅かな隙間(捨てランナ)22が生じており、当該捨てランナ22にも溶融樹脂が流入する。なお、第1のキャビティ20において射出圧縮成形している間も、中間金型12と可動金型11とは完締め状態で保持されていると共に、第2のキャビティ21側は冷却状態で維持されている。
【0020】
そして、固定金型10と中間金型12との半締め状態において、各第1のキャビティ20へ十分量の溶融樹脂を充填できたら、図5に示すように、固定金型10と中間金型12とを完締めし、圧縮成形する。すなわち、各第1のキャビティ20内に充填されている溶融樹脂に圧縮力が作用し、当該圧縮状態において固定金型10を冷却させて溶融樹脂を固化させる。これにより、表面性状の良好な品質の高い成形品となる。なお、捨てランナ22に溜まっていた溶融樹脂は、固定金型10と中間金型12とを完締めする際には十分な流動性を有するため、当該固定金型10と中間金型12との完締めに伴い一次ランナ15や二次ランナ16等へほぼ押し流され、捨てランナ22内には殆ど溶融樹脂が残らない。
【0021】
各第1のキャビティ20においても射出圧縮成形できたら、最後に各金型10・11・12を全開きして、各キャビティ20・21から成形品を取り出せばよい。後は、図1に示す状態からの繰り返しである。
【0022】
(変形例)
以上、本発明に係るスタックモールド射出圧縮成形方法の代表的な実施形態について説明したが、これに限られることは無く、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。特に、第1・第2のキャビティのうち、いずれか一方のキャビティへ溶融樹脂を射出して射出圧縮成形した後、次いで他方のキャビティへ溶融樹脂を射出して射出圧縮成形する成形方法である限り、ここで使用するスタックモールド射出圧縮成形型の細かな構成には多種多様なバリエーションがある。
【0023】
例えば、上記実施形態では、第1及び第2のキャビティ20・21をそれぞれ複数(2箇所)設けたが、1箇所だけでもよい。又は、3箇所以上設けることもできる。
【0024】
また、捨てランナ22の問題は生じるが、上記実施形態とは逆に、第1のキャビティ20にて射出圧縮成形した後に、第2のキャビティ21にて射出圧縮成形することもできる。
【0025】
固定金型10と中間金型12や、中間金型12と可動金型11を半締め状態とする際は、当該固定金型10と中間金型12との間や、中間金型12と可動金型11との間に、ストッパが介在するような構成とすることもできる。この場合、ストッパは各金型のスライド方向と直交する方向に進退自在に配し、半締め状態とする場合にのみ各金型の間に進出し、その他の状態では後退するよう制御する。
【0026】
また、一端がノズル14に連通する一次ランナ15も固定金型10内にて複数の方向へ分岐させ、他端の1つは二次ランナ16と連通可能とし、他の他端は、バルブゲートを介して第1のキャビティ20へ連通させることもできる。この場合、中間金型12内の二次ランナ16は、一端が一次ランナ15と連通可能となっており、他端はノズルゲートを介して第2のキャビティ21のみへ連通させればよい。
【符号の説明】
【0027】
10 固定金型
11 可動金型
12 中間金型
14 ノズル
15 一次ランナ
16 二次ランナ
20 第1のキャビティ
21 第2のキャビティ
22 捨てランナ
30 バルブゲート
31 バルブゲート用射出部
32 封止ピン


図1
図2
図3
図4
図5