(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5937051
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】施錠装置
(51)【国際特許分類】
E05C 3/04 20060101AFI20160609BHJP
E05B 65/06 20060101ALI20160609BHJP
E05B 3/00 20060101ALI20160609BHJP
E05B 3/06 20060101ALI20160609BHJP
E05B 15/02 20060101ALI20160609BHJP
E05C 9/04 20060101ALI20160609BHJP
E05B 63/14 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
E05C3/04 E
E05B65/06 A
E05B3/00 A
E05B3/06 B
E05B15/02 M
E05C9/04
E05B63/14 D
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-228762(P2013-228762)
(22)【出願日】2013年11月1日
(65)【公開番号】特開2015-86665(P2015-86665A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2015年5月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000152169
【氏名又は名称】株式会社栃木屋
(74)【代理人】
【識別番号】100066267
【弁理士】
【氏名又は名称】白浜 吉治
(74)【代理人】
【識別番号】100134072
【弁理士】
【氏名又は名称】白浜 秀二
(72)【発明者】
【氏名】浅井 剛
【審査官】
佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−307052(JP,A)
【文献】
特開平8−152013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00− 85/28
E05C 1/00− 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉の外面側から内面側へ延びて時計方向と反時計方向との回転運動を反復可能な軸部と、前記外面側にあって前記軸部を前記回転運動させることが可能な操作部と、前記操作部を前記扉に取り付けるために前記外面側に固定される取付け部材と、前記内面側にあって前記軸部の前記回転運動に伴って回転して前記扉を固定枠に対して施錠状態と解錠状態とにすることが可能な止め金具とを有する施錠装置であって、
前記軸部は、前記取付け部材から前記内面側へ延びるスリーブ状部分の内側において前記回転運動を反復するものであり、
前記取付け部材は、前記扉の内側において前記スリーブ状部分の外周面に螺合するナットと協働して前記扉を内外方向から挟圧することによって前記扉に固定されるものであり、
前記止め金具は、前記扉の前記内面側に延びた前記軸部の内端部に固定されるとともに、前記ナットの外周面を覆う円筒状部を有し、前記軸部を前記回転運動させると、前記円筒状部が前記ナットの前記外周面に沿って回転することを特徴とする前記施錠装置。
【請求項2】
前記軸部は、円柱状部と、前記円柱状部から軸方向へ延びて前記内端部を形成する角柱状部とを有するものであって、前記止め金具はそれに形成された角孔において前記角柱状部に回転不能に嵌合し、前記角孔が前記円筒状部の径方向の中心に位置している請求項1記載の施錠装置。
【請求項3】
前記操作部が前記施錠装置の常態において前記軸部に対して固定されている態様のハンドルおよび前記施錠装置の常態において前記軸部に対して着脱できる態様のハンドルのいずれかを含む請求項1または2記載の施錠装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、扉を固定枠に対して施錠するための施錠装置に関する。
【背景技術】
【0002】
扉の外側でハンドルを回転させると、扉の内側にある止め金具が回転して固定枠に係合し、扉を固定枠に対して施錠状態にすることのできる施錠装置は周知である。また、ハンドルを回転させると、扉の内側にあるロッドが扉の縦方向および/または横方向に動いて、固定枠に形成された嵌合孔に退出可能に進入して扉を施錠状態にすることができる施錠装置も周知である。
【0003】
例えば、特開平8−170466号公報(特許文献1)に記載の扉用ハンドルでは、ハンドルから扉の内側へ延びた軸部の先端部分に角柱状部が形成され、その角柱状部に止め金具が取り付けられている。止め金具は、それ自体が固定枠に係合して扉を施錠状態にすることができるものであることに加えて、扉の上下方向へ延びる一対のロッドが取り付けられていて、ハンドルの回転に伴ってそれらのロッドが上下動することによっても扉を施錠状態にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−170466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来例の施錠装置では、角柱状部に形成されたねじ穴に螺合する小ねじによって、止め金具が角柱状部に固定されている。このような施錠装置では、施錠状態にある扉に地震等によって激しい振動が加わるとか、解錠操作をすることなく扉を無理に開こうとすることが繰り返されるとかということがあると、角柱状部や小ねじには止め金具を介してそれらを変形させる力が作用して、施錠装置の一部が破損したり、解錠不能になったりするということがある。
【0006】
この発明が課題とするところは、扉の激しい振動にも耐えうるように改良された施錠装置の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、この発明が対象とするのは、扉の外面側から内面側へ延びて時計方向と反時計方向との回転運動を反復可能な軸部と、前記外面側にあって前記軸部を前記回転運動させることが可能な操作部と、前記操作部を前記扉に取り付けるために前記外面側に固定される取付け部材と、前記内面側にあって前記軸部の前記回転運動に伴って回転して前記扉を固定枠に対して施錠状態と解錠状態とにすることが可能な止め金具とを有する施錠装置である。
【0008】
かかる施錠装置において、この発明が特徴とするところは、以下のとおりである。前記軸部は、前記取付け部材から前記内面側へ延びるスリーブ状部分の内側において前記回転運動を反復するものである。前記取付け部材は、前記扉の内側において前記スリーブ状部分の外周面に螺合するナットと協働して前記扉を内外方向から挟圧することによって前記扉に固定されるものである。前記止め金具は、前記扉の前記内面側に延びた前記軸部の内端部に固定されるとともに、前記ナットの外周面を覆う円筒状部を有し、前記軸部を前記回転運動させると、前記円筒状部が前記ナットの前記外周面に沿って回転する。
【0009】
この発明の実施態様の一つにおいて、前記軸部は、円柱状部と、前記円柱状部から軸方向へ延びて前記内端部を形成する角柱状部とを有するものであって、前記止め金具はそれに形成された角孔において前記角柱状部に回転不能に嵌合し、前記角孔が前記円筒状部の径方向の中心に位置している。
【0010】
この発明の実施態様の他の一つにおいて、前記操作部が前記施錠装置の常態において前記軸部に対して固定されている態様のハンドルおよび前記施錠装置の常態において前記軸部に対して着脱できる態様のハンドルのいずれかを含む。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る施錠装置では、扉の内側へ延びるスリーブ状部分の内側で軸部が時計方向と反時計方向との回転運動を反復する。軸部の先端部分に固定された止め金具は、スリーブ状部分の外周面に螺合するナットを覆う円筒状部を有している。扉が固定枠に対して旋回運動することによって開閉するものであって、止め金具が固定枠に係合して施錠状態にある扉が振動すると、振動は止め金具によって抑えられる。その反作用として、止め金具は、それが嵌合している角柱状部を折り曲げるように作用することがある。しかし、この施錠装置では、扉が振動したときに、止め金具における円筒状部の内周面がそのナットに当接することで、角柱状部に対するそのような作用を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図面は、この発明の特定の実施の形態を示し、発明に不可欠な構成ばかりでなく、選択的に実施することができる形態および好ましい実施の形態を含む。
【
図2】一部分を断面図で示す
図1の施錠装置の側面図。
【
図3】
図1の施錠装置を扉の内側から見たときの組立図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付の図面を参照してこの発明に係る施錠装置の詳細を説明すると、以下のとおりである。
【0014】
図1は、この発明に係る施錠装置の一例であるハンドル付き施錠装置10の使用状態を示す部分破断斜視図である。施錠装置10は、固定枠5に対して蝶番(図示せず)を介して旋回するように開閉する扉6に取り付けられている。ただし、図では、固定枠5と扉6との一部分のみが示されている。施錠装置10は、扉6の外面側に固定されている取付け部材11と、取付け部材11に対して時計方向と反時計方向との回転運動を往復させることが可能なハンドル13を有する操作部14と、ハンドル13とともに回転運動をして固定枠5に対する施錠位置と解錠位置との間を往復する止め金具15とを有する。その止め金具15は、第1アーム16と、一対の第2アーム17a,17bとを有する。第1アーム16は固定枠5における縁部5aの後方の施錠位置にあって、扉6が施錠状態にある。一対の第2アーム17a,17bそれぞれには、ロッド部材18a,18bが取り付けられている。ロッド部材18a,18bのそれぞれは、扉6の上下方向へ延びていて、固定枠5におけるロッド挿入孔19a,19bのそれぞれに退出可能に進入している。図示例においてハンドル13を矢印Aで示す反時計方向へ回転させると、止め金具15も反時計方向Aへ回転して、第1アーム16の固定枠5に対する係合が解けるとともに、ロッド部材18a,18bのそれぞれが挿入孔19a,19bから退出して、施錠装置10および扉6が解錠状態になる。
【0015】
図2,3は、
図1における施錠装置10の側面図と、施錠装置10の組立図である。ただし、
図2においては、施錠装置10の一部分が断面図で示されている。これらの図において、扉6の外面側に位置する操作部14の取付け部材11は扉6の内面側に延びるスリーブ状部分20を有し、ハンドル13はスリーブ状部分20の内側において扉6の内面側へ延びる軸部21を有する。扉6の内面側では、スリーブ状部分20の外周面は雄ねじ20aになっている。スリーブ状部分20に対しては歯付き座金26が嵌合し、ナット27が螺合することによって、取付け部材11が扉6に対して固定されている。軸部21は、スリーブ状部分20に周方向へ摺動可能に嵌合している円柱状部21aと、スリーブ状部分20から延出している角柱状部21b(
図3参照)とを有する。取付け部材11と扉6との間にはゴムパッキング22が介在し、これら扉6とゴムパッキング22とには、スリーブ状部分20のための挿入孔23,24が形成されている。軸部21の先端部分に位置する角柱状部21bは、止め金具15に形成された角孔36において嵌合していて、止め金具15が軸部21とともに回転できる状態にある。角柱状部21bの端面48にはばね座金のついた抜け止め用ボルト33が平座金34を介して螺合している。
【0016】
図3において、止め金具15には、軸部21およびスリーブ状部分20に直交して横方向へ延びる第1アーム16と上下方向へ延びる一対の第2アーム17a,17bとが形成されていることに加え、角孔36を中心にして扉6に向かって延びる円筒状部37が形成されている。円筒状部37は、スリーブ状部分20および軸部21と同軸の関係にあって、
図2に示されているように、スリーブ状部分20に螺合しているナット27を覆っている。その円筒状部37の内径は、ナット27の最大外径よりも僅かに大きく、例えば最大外径よりも0.1−0.5mm大きく作られていて、ハンドル13を反時計方向Aまたは時計方向へ旋回させると、円筒状部37はナット27の周方向へ回転する。また、例えば扉6が振動することによって第1アーム16とスリーブ状部分20との交差が直交状態から僅かに変化すると、すなわち、スリーブ状部分20に対して止め金具15が僅かに傾斜すると、第1アーム16につながる円筒状部37もスリーブ状部分20に対して傾斜して、円筒状部37の内周面がナット27の外周面に当接する。
【0017】
止め金具15が固定枠5に係合して施錠状態にある扉6は、それを解錠状態にすることなく無理に開こうとしたり、地震があったりすると、固定枠5に対しての振動を繰り返すことがある。例えば、扉6が開く方向と閉じる方向とへの振動を繰り返すことがある。そのときの開く方向への扉6の動きは、止め金具15の作用によって止められるのであるが、その作用は、軸部21の角柱状部21bに嵌合している角孔36の周縁部分と、ナット27を覆う円筒状部37とにおいて発生する。すなわち、第1アーム16が固定枠5に係合している止め金具15は、角孔36の周縁部分がボルト33を介して角柱状部21bに固定されていることによって、扉6の動きを抑えるように作用する。止め金具15はまた、扉6が開く方向へ旋回すると、スリーブ状部分20に対して傾斜して、円筒状部37の内周面が径方向からナット27に当接することによっても、扉6の開く方向への動きを抑えるように作用する。円筒状部37によるそのような作用は、角孔36の周縁部が角柱状部21bを折り曲げるように作用することを防ぐ。それゆえ、施錠装置10では、円筒状部37が存在しないときに、角柱状部21bと角孔36の周縁部との間の相互作用だけで扉6の開く方向への動きを止めようとすると角柱状部21bにそれを折り曲げるようとする強い力の作用することがあるのであるが、円筒状部37が存在することによって、そのような力の作用することを防ぐことができる。
【0018】
なお、
図2における施錠装置10は、それの通常の使用状態である常態において、取付け部材11とハンドル13とが一体になっているが、施錠装置10を分解するときには、ハンドル13を取付け部材11から外すことができる。ただし、
図2において、取付け部材11とハンドル13とについての詳細構造の図示は省略されている。
【0019】
このように形成されている
図1の施錠装置10において、ハンドル13を反時計方向Aへ回転させると、軸部21が反時計方向Aへ回転する。角柱状部21bに嵌合している止め金具15もまた反時計方向Aへ回転し、第1アーム16の固定枠5に対する係合が解けて扉6が解錠状態になる。
【0020】
解錠状態にある扉6を施錠状態にするには、扉6を閉じた後にハンドル13を時計方向へ回転させればよい。ハンドル13を時計方向へ回転させると、止め金具15を時計方向へ旋回させることができて、止め金具15の第1アーム16を固定枠5に対して
図1の如く係合させることができる。
【0021】
施錠装置10は、ロッド部材18a,18bが取り付けられていない状態で使用することのできるものであるが、ロッド部材18a,18bが
図1の如く取り付けられている場合の施錠装置10は、次のように作用する。
図1において、ハンドル13を操作して止め金具15を反時計方向Aへ回転させると、止め金具15における第2アーム17a,17bのそれぞれも反時計方向Aへ回転する。そのときに、
図1における上方のロッド部材18aは下降して、その上端部が挿入孔19aから退出する。下方のロッド部材18bは上昇して、その下端部が挿入孔19bから退出する。かくして、第2アーム17a,17bも固定枠5に対する係合が解けて、扉6は、それを開くことが可能になる。なお、角柱状部21bは通常正方形の端面48(
図3参照)を有し、その端面48にボルト33を螺合させるためのねじ穴49を有する。角柱状部21bの端面48において、対角線の長さは円柱状部21aの直径と同じであるかその直径よりも短く、端面48における一辺の長さはその直径よりも短い。したがって、軸部21において、円柱状部21aを大径部と呼び、角柱状部21bは円柱状部21aとの比較において小径部と呼ぶこともできる。
【0022】
この発明は、施錠装置10の常態が
図1のそれとは異なり、ハンドル13が取付け部材11に対して着脱可能に形成されている態様のもので実施することもできる。
【符号の説明】
【0023】
5 固定枠
6 扉
10 施錠装置
11 取付け部材
13 ハンドル
14 操作部
15 止め金具
16 アーム(第1アーム)
18a ロッド部材
18b ロッド部材
20 スリーブ状部分
21 軸部
21a 円柱状部
21b 角柱状部
27 ナット
37 円筒状部
43 角孔