特許第5937058号(P5937058)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5937058有機エレクトロルミネッセンス素子のための材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5937058
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセンス素子のための材料
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/16 20060101AFI20160609BHJP
   C07D 495/16 20060101ALI20160609BHJP
   C07D 513/16 20060101ALI20160609BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   C07D487/16CSP
   C07D495/16
   C07D513/16
   H05B33/14 B
   H05B33/22 D
   H05B33/22 B
【請求項の数】8
【全頁数】60
(21)【出願番号】特願2013-500357(P2013-500357)
(86)(22)【出願日】2011年2月25日
(65)【公表番号】特表2013-523606(P2013-523606A)
(43)【公表日】2013年6月17日
(86)【国際出願番号】EP2011000944
(87)【国際公開番号】WO2011116865
(87)【国際公開日】20110929
【審査請求日】2014年2月24日
(31)【優先権主張番号】102010012738.8
(32)【優先日】2010年3月25日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597035528
【氏名又は名称】メルク パテント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100095441
【弁理士】
【氏名又は名称】白根 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100119976
【弁理士】
【氏名又は名称】幸長 保次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(74)【代理人】
【識別番号】100134290
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 将訓
(72)【発明者】
【氏名】パルハム、アミア・ホサイン
(72)【発明者】
【氏名】プフルム、クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ムジカ−フェルナウド、テレサ
【審査官】 伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−255324(JP,A)
【文献】 IL FARMACO,1996年,Vol.51, No.6,p.425-430
【文献】 Journal of Heterocyclic Chemistry,1995年,Vol.32,p.1687-1691
【文献】 Journal of Heterocyclic Chemistry,1994年,Vol.31,p.1033-1036
【文献】 Journal of Heterocyclic Chemistry,1993年,Vol.30,p.749-753
【文献】 Tetrahedron,1987年,Vol.43, No.15,p.3465-3470
【文献】 HETEROCYCLES,1979年,Vol.12, No.3,p.353-357
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAPLUS/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(11)〜(14)、(18)〜(23)、(25)〜(28)および(32)〜(36)から選ばれる化合物。
【化1-1】
【化1-2】
【化1-3】
(式中、以下が、使用される記号と添え字に適用される;
Xは、C=OまたはSOであり;
Wは、出現毎に同一であるか異なり、CRまたはNであり、ただし、環中の三個以下のWは、Nであり;
Vは、NR、OまたはSであり
Zは、出現毎に同一であるか異なり、CRまたはNであり、
Eは、出現毎に同一であるか異なり、CR、C=OまたはNRであり;
Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、CN、N(Ar、C(=O)Ar、1〜10個のC原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、3〜10個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキルもしくはアルコキシ基、2〜10個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接しないCH基は、Oで置き代えられてよく、ここで、1以上のH原子は、DもしくはFで置き代えられてよい。)、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、1以上の基Rで置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基またはこれらの構造の組み合わせより成る群から選ばれ;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CN、NO、N(Ar、N(R、C(=O)Ar、C(=O)R、P(=O)(Ar、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、3〜40個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、2〜40個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接しないCH基は、RC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SもしくはCONRで置き代えられてよく、ここで、1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CNもしくはNOで置き代えられてよい。)または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、1以上の基Rで置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基、またはこれらの構造の組み合わせより成る群から選ばれ;ここで、2個以上の隣接する置換基Rは、一以上の置換基Rにより置換されてよいモノ環状あるいはポリ環状脂肪族、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造を随意に形成してもよく;
は、H、D、F、CN、1〜20個のC原子を有する脂肪族炭化水素基、5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であって、ここで、1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、IもしくはCNで置き代えられてよく、ここで、2個以上の隣接する置換基Rはモノ-あるいはポリ環状脂肪族、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造を互いに形成してもよく;
Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の非芳香族基Rにより置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であって;ここで、同じN原子もしくはP原子に結合する2個の基Arは、単結合により、またはN(R)、C(RもしくはOから選ばれるブリッジにより、互いに架橋されてもよい。)
【請求項2】
以下の式(11a)〜(14a)、(18a)〜(23a)、(25a)〜(28a)および(32a)〜(36a)の化合物から選ばれる、請求項1記載の化合物。
【化2-1】
【化2-2】
【化2-3】
【化2-4】
【化2-5】
(式中、使用される記号は、請求項1の意味を有する。)
【請求項3】
以下の式(11b)〜(14b)、(18b)〜(23b)、(25b)〜(28b)および(32b)〜(36b)の化合物から選ばれる、請求項1または2記載の化合物。
【化3-1】
【化3-2】
【化3-3】
【化3-4】
【化3-5】
(式中、使用される記号は、請求項1と2の意味を有する。)
【請求項4】
Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、CN、N(Ar、C(=O)Ar、1〜10個のC原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、3〜10個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキルもしくはアルコキシ基、2〜10個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接しないCH基は、Oで置き代えられてよく、ここで、1以上のH原子は、DもしくはFで置き代えられてよい。)、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、1以上の基Rで置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基またはこれらの構造の組み合わせより成る群から選ばれることを特徴とする、請求項1〜3何れか1項記載の化合物。
【請求項5】
シス-インドロカルバゾール誘導体の、オルト位置で、ハロゲンにより置換されたアリールもしくはへテロアリール誘導体および酸誘導体との反応による請求項1〜4何れか1項記載の化合物の製造方法であって、ここで、酸誘導体は、カルボン酸エステル、カルボン酸ハロゲン化物、スルホン酸ハロゲン化物、ホスフィニルハロゲン化物、ホスフィニルオキシハロゲン化物から選ばれる、方法。
【請求項6】
請求項1〜4何れか1項記載の化合物の、有機エレクトロルミネッセンス素子での使用。
【請求項7】
請求項1〜4何れか1項記載の少なくとも一つの化合物を含む電子素子であって、ここで、電子素子は、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)、有機集積回路(O-IC)、有機電界効果トランジスタ(O-FET)、有機薄膜トランジスタ(O-TFT)、有機発光トランジスタ(O-LET)、有機太陽電池(O-SC)、有機光学検査器、有機光受容器、有機電場消光素子(O-FQD)、発光電子化学電池(LEC)、有機レーザーダイオード(O-laser)および「有機プラスモン発光素子」より成る群から選ばれる、電子素子。
【請求項8】
請求項1〜4何れか1項記載の化合物が、蛍光もしくは燐光エミッターのためのマトリックス材料としておよび/または正孔障壁層中でおよび/または電子輸送層中でおよび/または電子障壁もしくは励起子障壁層中でおよび/または正孔輸送中で、使用されることを特徴とする、または、請求項1〜4何れか1項の化合物が、光学アウトカップリング層中で使用されることを特徴とする、請求項7記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子素子、特に、有機エレクトロルミネッセンス素子での使用のための材料に関する。
【0002】
有機半導体が機能性材料として使用される有機エレクトロルミネセンス素子(OLED)の構造は、たとえば、US 4539507、US 5151629、EP0676461およびWO98/27136に記載されている。ここで使用される発光材料は、蛍光発光ではなく燐光発光を示す有機金属錯体とますますなっている(M.A.aldo et al., Appl. Phys. Lett. 1999, 75, 4-6)。量子力学的理由により、エネルギーとパワー効率における4倍までの増加が、燐光発光エミッターとして有機金属化合物を使用して可能である。しかしながら、一般的に、OLED、特に、三重項発光(燐光)を示すOLEDにおいて、たとえば、効率、駆動電圧および寿命に関して、改善に対する必要性が未だ存在する。これは、比較的短い波長範囲で、たとえば、緑色で発光するOLEDに、特に、あてはまる。
【0003】
燐光OLEDの特性は、使用される三重項エミッターによってのみ決定されるのではない。ここで、特に、マトリックス材料、正孔障壁材料、電子輸送材料、正孔輸送材料および電子-あるいは励起子障壁材料等に使用されるその他の材料も、特に重要である。そこで、これら材料における改善は、OLED特性に顕著な改善をももたらすことができる。蛍光OLEDのためのこれら材料における改善に対する必要性が、また、未だに存在する。
【0004】
先行技術にしたがうと、ケトン(たとえば、WO 2004/093207もしくはWO 2010/006680にしたがう)またはホスフィンオキシド(たとえば、WO 2005/003253にしたがう)は、特に、燐光エミッターのためのマトリックス材料として使用される。しかしながら、他のマトリックス材料の場合のように、これらマトリックス材料の使用について、特に、素子の効率と寿命に関して、改善の必要性が未だ存在する。
【0005】
先行技術にしたがうと、カルバゾール誘導体(たとえば、WO2005/039246、 US2005/0069729、JP2004/288381、EP 1205527もしくはWO 2008/086851にしたがう)またはインドロカルバゾール誘導体(たとえば、WO 2007/063754もしくはWO 2008/056746にしたがう)が、さらに、有機エレクトロルミネッセンス素子における燐光エミッターのためのマトリックス材料として使用される。これらは、非常に酸化に対して敏感であり、材料の精製と貯蔵およびその材料を含む溶液の長期の安定性を損なうことが多い。ここで、効率、寿命と材料の安定性に関して、同様に改善が望まれる
本発明の目的は、蛍光もしくは燐光OLED、特に、燐光OLEDにおける、たとえば、マトリックス材料としてまたは正孔輸送/電子障壁材料としてまたは励起子障壁材料として、または電子輸送あるいは正孔障壁材料としての使用に適している化合物を提供することである。特に、本発明の目的は、緑色および赤色のみならず青色燐光OLEDのために適するマトリックス材料を提供することである。
【0006】
驚くべきことに、以下でより詳細に説明される化合物が、この目的を達成し、特に、寿命、効率と駆動電圧に関して、有機エレクトロルミネッセンス素子における顕著な改善をもたらすことが見出された。これは、特に、赤色および緑色燐光エレクトロルミネッセンス素子、特に、マトリックス材料としての本発明による化合物の使用についてあてはまる。本発明の材料は、さらに、その溶液中の改善された酸化安定性と高温安定性により特徴づけられる。したがって、本発明は、これら材料とこの型の化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【0007】
本発明は、以下の式(1)の化合物に関する。
【化1】
【0008】
式中、以下が、使用される記号と添え字に適用される;
Xは、C=O、C(R)、NR、O、S、C=S、C=NR、C=C(R)、Si(R)、BR、PR、P(=O)R、SOまたはSOであり;
Yは、同一であるか異なり、以下に定義されるとおりのWであり、またはNR、OまたはSであり、ただし、基Eが基Yに結合するならば、Y=Cであり;
Wは、出現毎に同一であるか異なり、CRまたはNであり、ただし、環中の三個以下のWは、Nであり、さらに、ただし、基Eがこの基Wに結合するならば、W=Cであり;
Zは、出現毎に同一であるか異なり、CRまたはNであり;または、二個の隣接する基Zは、式(2)の基であり、
【化2】
【0009】
式中、破線の結合は、この単位の連結を示し;
Eは、出現毎に同一であるか異なり、単結合、C(R)、NR、O、S、C=O、C=S、C=NR、C=C(R)、Si(R)、BR、PR、P(=O)R、SOまたはSOであり;
Arは、基Yと二個の炭素原子と一緒になって、1以上の基Rで置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有するアリールもしくはヘテロアリール基であり、
Aは、m=n=0ならば、Rであり、また、一方の添え字mまたはn=1で、他方の添え字mまたはn=0ならば、各場合にRで置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有するアリールもしくはヘテロアリール基または-CR=CR-、-CR=N-もしくは-N=N-であり、添え字m=n=1ならば、各場合にRで置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有するアリールもしくはヘテロアリール基であり;
Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CN、NO、N(Ar、N(R、C(=O)Ar、C(=O)R、P(=O)(Ar、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、3〜40個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、2〜40個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接しないCH基は、RC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SもしくはCONRで置き代えられてよく、ここで、1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CNもしくはNOで置き代えられてよい。)、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜80個、好ましくは、5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、1以上の基Rで置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基またはこれらの構造の組み合わせより成る群から選ばれ;ここで、2個以上の隣接する置換基Rは、一以上の置換基Rにより置換されてよいモノ環状あるいはポリ環状脂肪族、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造を随意に形成してもよく;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CN、NO、N(Ar、N(R、C(=O)Ar、C(=O)R、P(=O)(Ar、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、3〜40個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、2〜40個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接しないCH基は、RC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SもしくはCONRで置き代えられてよく、ここで、1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CNもしくはNOで置き代えられてよい。)、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、1以上の基Rで置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基、またはこれらの構造の組み合わせより成る群から選ばれ;ここで、2個以上の隣接する置換基Rは、一以上の置換基Rにより置換されてよいモノ環状あるいはポリ環状脂肪族、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造を随意に形成してもよく;
は、H、D、F、CN、1〜20個のC原子を有する脂肪族炭化水素基、5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であって、ここで、1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、IもしくはCNで置き代えられてよく、ここで、2個以上の隣接する置換基Rはモノ-あるいはポリ環状脂肪族、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造を互いに形成してもよく;
Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の非芳香族基Rにより置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であって;ここで、同じN原子もしくはP原子に結合する2個の基Arは、単結合により、または、N(R)、C(RもしくはOから選ばれるブリッジにより、互いに架橋されてもよく;
m、nは、出現毎に同一であるか異なり、0または1であり、ここで、m=0に対しては、基Eに代えて、基Rが、Aに結合し、ここで、n=0に対しては、基Eに代えて、基Rが、Aに結合し
pは、0または1であり、ここで、p=0に対しては、基Z=Zに代えて、基Rが、炭素原子の各々とWに結合し、ただし、m=n=0ならば、p=1である。
【0010】
本発明の意味でのアリール基は、6〜60個のC原子を含む;本発明の意味でのヘテロアリール基は、2〜60個のC原子と少なくとも1個のヘテロ原子を含むが、ただし、C原子とヘテロ原子の合計は少なくとも5個である。ヘテロ原子は、好ましくは、N、Oおよび/またはSから選ばれる。ここで、アリール基もしくはヘテロアリール基は、単純な芳香族環、すなわちベンゼン、または、単純な複素環式芳香族環、例えば、ピリジン、ピリミジン、チオフェン等、または、縮合アリールもしくはヘテロリール基、例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン等の何れかを意味するものと解される。たとえば、ビフェニル等の単結合により互いに結合した芳香族環は、アリールもしくはヘテロリール基を指すのではなく、逆に、芳香族環構造を指す。
【0011】
本発明の意味での芳香族環構造は、6〜80個のC原子を環構造中に含む。本発明の意味での複素環式芳香族環構造は、2〜60個のC原子と少なくとも1個のヘテロ原子を環構造中に含むが、但し、C原子とヘテロ原子の合計は少なくとも5個である。ヘテロ原子は、好ましくは、N、Oおよび/またはSから選ばれる。本発明の意味での芳香族もしくは複素環式芳香族環構造は、必ずしもアリール基もしくはヘテロアリール基のみを含む構造ではなく、その代わりに、加えて、複数のアリール基もしくはヘテロアリール基は、例えば、sp-混成C、NあるいはO原子のような非芳香族単位(H以外の原子は、好ましくは、10%より少ない)により中断されていてもよい構造を意味するものと解される。したがって、たとえば、フルオレン、9,9’-スピロビフルオレン、9,9-ジアリールフルオレン、トリアリールアミン、ジアリールエーテル、スチルベン等のような構造も、二個以上のアリール基が、たとえば、短いアルキル基により連結される構造であることから、本発明の意味での芳香族環構造を意味するものと解される。
【0012】
本発明の目的のために、脂肪族炭化水素基またはアルキル基またはアルケニル基またはアルキニル基は、典型的には、1〜40個または1〜20個のC原子を含んでもよく、ここで、加えて、個々のH原子もしくはCH基は、上記言及した基により置換されていてよく、好ましくは、基メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、2-メチルブチル、n-ペンチル、s-ペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル、n-ヘキシル、ネオヘキシル、シクロヘキシル、n-ヘプチル、シクロヘプチル、n-オクチル、シクロオクチル、2-エチルヘキシル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニル、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニルおよびオクチニルを意味するものと解される。1〜40個のC原子を有するアルコキシ基は、好ましくは、メトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシ、n-ペントキシ、s-ペントキシ、2-メチルブトキシ、n-ヘキソキシ、シクロヘキシルオキシ、n-ヘプトキシ、シクロヘプチルオキシ、n-オクチルオキシ、シクロオクチルオキシ、2-エチルヘキシルオキシ、ペンタフルオロエトキシまたは2,2,2-トリフルオロエトキシを意味するものと解される。1〜40個のC原子を有するチオアルキル基は、特に、メチルチオ、エチルチオ、n-プロピルチオ、i-プロピルチオ、n-ブチルチオ、i-ブチルチオ、s-ブチルチオ、t-ブチルチオ、n-ペンチルチオ、s-ペンチルチオ、n-ヘキシルチオ、シクロヘキシルチオ、n-ヘプチチオル、シクロヘプチルチオ、n-オクチルチオ、シクロオクチルチオ、2-エチルヘキシルチオ、トリフルオロメチルチオ、ペンタフルオロエチルチオ、2,2,2-トリフルオロエチルチオ、エテニルチオ、プロペニルチオ、ブテニチオル、ペンテニルチオ、シクロペンテニルチオ、ヘキセニルチオ、シクロヘキセニルチオ、ヘプテニルチオ、シクロヘプテニルチオ、オクテニルチオ、シクロオクテニルチオ、エチニルチオ、プロピニルチオ、ブチニルチオ、ペンチニルチオ、ヘキシニルチオ、ヘプチニルチオまたはオクチニルチオを意味するものと解される。一般的に、本発明にしたがうアルキル、アルコキシあるいはチオアルキル基は、直鎖、分岐あるいは環状であってよく、一以上の隣接しないCH基は、上記した言及した基により置き代えられてよく、さらに、1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CNもしくはNO、好ましくは、F、ClもしくはCNで、さらに、好ましくは、FもしくはCNで、特に、好ましくは、CNで置き代えられてよい。
【0013】
5〜80個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造は、各場合に、上記基Rまたは炭化水素基で置換されてよく、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造上で任意の所望の位置を介して連結してもよく、特に、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ベンズアントラセン、フェナントレン、ピレン、クリセン、ペリレン、フルオランセン、ナフタセン、ペンタセン、ベンゾピレン、ビフェニル、ビフェニレン、ターフェニル、ターフェニレン、フルオレン、スピロビフルオレン、ジヒドロフェナントレン、ジヒドロピレン、テトラヒドロピレン、シス-もしくはトランス-インデノフルオレン、シス-もしくはトランス-インデノカルバゾール、シス-もしくはトランス-インドロカルバゾール、トルクセン、イソトルクセン、スピロトルクセン、スピロイソトルクセン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ-5,6-キノリン、ベンゾ-6,7-キノリン、ベンゾ-7,8-キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、フェナントロイミダゾール、ピリジンイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロオキサゾール、フェナントロオキサゾール、イソオキサゾール、1,2-チアゾール、1,3-チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ヘキサアザトリフェニレン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、1,5-ジアザアントラセン、2,7-ジアザピレン、2,3-ジアザピレン、1,6-ジアザピレン、1,8-ジアザピレン、4,5-ジアザピレン、4,5,9,10-テトラアザペリレン、ピラジン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、フルオルビン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントロリン、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、1,3,5-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,2,3-トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5-テトラジン、1,2,3,4-テトラジン、1,2,3,5-テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジンおよびベンゾチアジアゾールから誘導される基またはこれら構造の組み合わせから誘導される基を意味するものと解される。
【0014】
本発明の好ましい具体例では、Xは、C=O、CR、S、OまたはSO、特に、好ましくは、C=OまたはSOである。
【0015】
本発明のさらに好ましい具体例では、Eは、出現毎に同一であるか異なり、単結合、CR、C=O、NR、OまたはS、特に、好ましくは、単結合、CR、C=OまたはNR、非常に、特に、好ましくは、単結合、CRまたはC=O、特に、単結合である。
【0016】
本発明のなおさらに好ましい具体例では、Aは、各場合に、一以上の基Rで置換されてよい5〜16個、特に、5〜10個の芳香族環原子を有するアリールもしくはヘテロアリール基であるか、または式-CR=CR-、-CR=N-もしくは-N=N-である。
【0017】
本発明の、特に、好ましい具体例では、Aは、以下の式(3)、(4)、(5)または(6)の一つの基である。
【化3】
【0018】
式中、破線の結合は、Nへの連結を示し、*は、基Eが存在するならば、Eへの連結位置を示し、Wは、上記の意味を有し、ここで、基Eがこの位置で結合するならば、WはCである。さらに、Vは、NR、OまたはSである。
【0019】
本発明のさらに好ましい具体例では、式(1)の五員環中の単位Z=Zは、上記式(2)の基である。さらに、式(1)の六員環中の単位Z=Zは、好ましくは、-CR=CR-または-CR=N-、特に、-CR=CR-である。
【0020】
本発明のさらに好ましい具体例では、Arは、以下の式(7)、(8)、(9)または(10)の一つの基である。
【化4】
【0021】
式中、破線の結合は、Nへの連結を示し、#は、Xへの連結位置を示し、*は、基Eが存在するならば、Eへの連結位置を示し、WとVは、上記の意味を有し、ここで、基Eがこの位置で結合するならば、WはCである。
【0022】
本発明のなおさらに好ましい具体例では、少なくとも一つの添え字mまたはn=1である。特に、好ましくは、m+n=1である。
【0023】
本発明のなおさらに好ましい具体例では、添え字p=1である。
【0024】
本発明の、特に、好ましい具体例では、上記選好は同時に生じる。したがって、特に、好ましいのは、以下が適用される式(1)の化合物である:
Xは、C=O、CR、S、OまたはSOであり;
Eは、出現毎に同一であるか異なり、単結合、CR、C=O、NR、OまたはSであり;
Aは、各場合に、一以上のRで置換されてよい5〜16個の芳香族環原子を有するアリールもしくはヘテロアリール基または基-CR=CR-、-CR=N-もしくは-N=N-であり;
Z=Zは、五員環中で、上記の式(2)の基であり;
Arは、以下の式(7)〜(10)の一つの基であり;
【化5】
【0025】
式中、破線の結合は、Nへの連結を示し、#は、Xへの連結位置を示し、*は、基Eが存在するならば、Eへの連結位置を示し、Wは、上記の意味を有し、ここで、基Eがこの位置で結合するならば、WはCであり;さらに、Vは、NR、O、SまたはCRであり、
m、nは、出現毎に同一であるか異なり、0または1であり、ここで、少なくとも一つの添え字mまたはn=1である。
【0026】
本発明の、非常に、特に、好ましい具体例では、以下が、式(1)の化合物に適用される。
【0027】
Xは、C=OまたはSOであり;
Eは、出現毎に同一であるか異なり、単結合、CR、C=OまたはNR、好ましくは、CRまたはC=O、特に、好ましくは、単結合であり;
Aは、以下の式(3)〜(6)の一つの基であり、
【化6】
【0028】
式中、破線の結合は、Y*への連結を示し、*は、基Eが存在するならば、Eへの連結位置を示し、WとVは、上記の意味を有し、ここで、基Eがこの位置で結合するならば、WはCであり;
Z=Zは、式(1)の五員環中で、上記の式(2)の基でありおよび式(1)の六員環中で、-CR=CR-または-CR=Nであり;
Arは、上記式(7)〜(10)の一つの基であり;
m、nは、同一であるか異なり、0または1であり、m+n=1であり、
pは、1である。
【0029】
したがって、本発明の、特に、好ましい具体例は、以下の式(11)〜(37)の化合物である。
【化7-1】
【化7-2】
【0030】
式中、使用される記号は上記の意味を有する。
【0031】
式(11)〜(37)の化合物のさらに好ましい具体例では、環毎の一つの記号WまたはZの最大の合計は、Nであり、残る記号WとZはCRである。本発明の特に、好ましい具体例では、すべての記WとZは、CRである。したがって、特に、好ましいのは、以下の式(11a)〜(37a)の化合物である。
【化8-1】
【化8-2】
【化8-3】
【化8-4】
【0032】
式中、使用される記号は、上記の意味を有する。
【0033】
非常に、特に、好ましいのは、以下の式(11b)〜(37b)の化合物である。
【化9-1】
【化9-2】
【化9-3】
【化9-4】
【0034】
式中、使用される記号は、上記の意味を有する。
【0035】
特に、好ましいのは、以下の式(11c)〜(37c)の化合物である。
【化10-1】
【化10-2】
【化10-3】
【0036】
式中、使用される記号は、上記の意味を有する。
【0037】
式(11a)〜(37c)において、Xは、C=OまたはSOである。
【0038】
さらに、式(11a)〜(37c)において、Eは、好ましくは、CR、C=OまたはNRである。
【0039】
式(11a)〜(37c)において、特に、好ましくは、Xは、C=OまたはSOであり、同時に、Eは、CR、C=OまたはNRである。
【0040】
本発明の、好ましい具体例では、上記式のRは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、CN、N(Ar、C(=O)Ar、1〜10個のC原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、3〜10個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキルもしくはアルコキシ基、2〜10個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接しないCH基は、Oで置き代えられてよく、ここで、1以上のH原子は、DもしくはFで置き代えられてよい。)、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、1以上の基Rで置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基またはこれらの構造の組み合わせより成る群から選ばれる。
【0041】
本発明の、特に、好ましい具体例では、上記式のRは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、CN、1〜10個のC原子を有する直鎖アルキル基、3〜10個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上のH原子は、DもしくはFで置き代えられてよい。)、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜18個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造またはこれらの構造の組み合わせより成る群から選ばれる。
【0042】
真空蒸発により加工される化合物に対してアルキル基は、好ましくは、4個以下のC原子、特に、好ましくは、1個以下のC原子を有する。溶液から加工される化合物に対しては、10個までのC原子を有するアルキル基により置換されるか、オリゴアリーレン基、たとえば、オルト-、メタ-、パラ-もしくは分岐ターフェニル基により置換された化合物が適切でもある。
【0043】
上記に示された具体例にしたがう好ましい化合物または有機電子素子に、好ましくは、使用することのできる化合物は、以下の構造の化合物である。
【化11-1】
【化11-2】
【化11-3】
【化11-4】
【化11-5】
【化11-6】
【0044】
本発明による化合物は、スキーム1〜8に図解して示されるように、当業者に知られた合成工程により調製することができる。ここで、合成は、シス-インドロカルバゾールまたは関連誘導体から出発して実行され、その合成は当業者に知られている(たとえば、Chemistry Letters 2005, 34(11), 1500-1501; Tetrahedron Letters 2009, 50(13), 1469-1471; Khimiya Geterotsiklichenskikh Soedinenii 1985, (9), 1222-1224)。
【0045】
ここで、可能な合成は、スキーム1に示されるとおりの、銅および銅(I)塩の存在下でのシス-インドロカルバゾールまたは関連誘導体の、オルト−ハロ安息香酸エステルとの反応であり、ここで、ハロゲンは、好ましくは、ヨウ素である。
【0046】
スキーム1
【化12】
【0047】
ここで、さらに可能な合成は、シス-インドロカルバゾールまたは関連誘導体の、オルト−ハロ安息香酸塩化物との反応であり、ここで、ハロゲンは、好ましくは、ヨウ素である。ここで、最初の工程で、酸塩化物は、二個の窒素原子のうちの一つと反応し、さらなる工程で、ハロゲンは、スキーム2に示されるとおりの、銅および銅(I)塩の存在下で、第2の窒素原子と反応する。
【0048】
スキーム2
【化13】
【0049】
SOブリッジが、シス-インドロカルバゾールまたは関連誘導体をオルト−ハロスルホン酸塩化物と反応させることにより導入され、ここで、ハロゲンは、好ましくは、ヨウ素である。ここで、最初の工程で、スルホン酸塩化物は、二個の窒素原子のうちの一つと反応し、さらなる工程で、ハロゲンは、スキーム3に示されるとおりの、銅および銅(I)塩の存在下で第2の窒素原子と反応する。
【0050】
スキーム3
【化14】
【0051】
CRブリッジが、シス-インドロカルバゾールまたは関連誘導体をオルト−ハロ安息香酸塩化物と反応させることにより導入され、ここで、ハロゲンは、好ましくは、ヨウ素である。ここで、最初の工程で、ベンジル塩化物は、二個の窒素原子のうちの一つと反応し、さらなる工程で、ハロゲンは、スキーム4に示されるとおりの、銅および銅(I)塩の存在下で第2の窒素原子と反応する。
【0052】
スキーム4
【化15】
【0053】
燐ブリッジが、シス-インドロカルバゾールまたは関連誘導体をオルト−ハロホスフィニル塩化物と反応させることにより導入され、ここで、ハロゲンは、好ましくは、ヨウ素である。ここで、最初の工程で、ホスフィニル塩化物は、二個の窒素原子のうちの一つと反応し、さらなる工程で、ハロゲンは、スキーム5に示されるとおりの、銅および銅(I)塩の存在下で第2の窒素原子と反応する。ホスフィンオキシドブリッジは、ホスフィニル塩化物との反応により同様に導入することができる。
【化16】
【0054】
スキーム5
インドロカルバゾールから直接誘導されないが、他の基Eを含む、本発明のさらなる誘導体の合成は、スキーム6〜スキーム8で、図式的に示される。
【0055】
スキーム6
【化17】
【0056】
スキーム7
【化18】
【0057】
スキーム8
【化19】
【0058】
したがって、本発明は、さらに、シス-インドロカルバゾール誘導体の、オルト位置で、ハロゲン、好ましくは、ヨウ素により置換されたアリールもしくはへテロアリール誘導体および酸誘導体との反応による式(1)の化合物の製造方法である。ここで、酸誘導体は、好ましくは、カルボン酸エステル、カルボン酸ハロゲン化物、スルホン酸ハロゲン化物、ホスフィニルハロゲン化物、ホスフィニルオキシハロゲン化物である。
【0059】
上記記載の本発明による化合物、特に、臭素、沃素、塩素、ボロン酸あるいはボロン酸エステル等の反応性脱離基により、または、オレフィンもしくはオキセタン等の反応性重合可能基により置換された化合物は、対応するオリゴマー、デンドリマーまたはポリマーの調製のためのモノマーとして使用することもできる。ここで、オリゴマー化またはポリマー化は、好ましくは、ハロゲン官能基もしくはボロン酸官能基を介してまたは重合可能基を介して実行することができる。さらに、この型の基を介してポリマーを架橋結合することもさらに可能である。本発明による化合物とポリマーは、架橋結合層または非架橋結合層として使用することができる。
【0060】
したがって、本発明は、さらに、一以上の上記言及した本発明による化合物を含むオリゴマー、ポリマーまたはデンドリマーに関し、一以上の結合は、本発明による化合物からポリマー、オリゴマーまたはデンドリマーへと存在する。したがって、本発明による化合物の結合に応じて、これは、オリゴマーもしくはポリマーの側鎖を生成するか、または主鎖中で結合する。ポリマー、オリゴマーまたはデンドリマーは、共役、部分共役もしくは非共役であってよい。オリゴマーまたはポリマーは、直鎖、分岐鎖もしくは樹状であってよい。上記記載したとおりの同じ選好が、オリゴマー、デンドリマーおよびポリマー中の本発明による化合物の繰り返し単位にあてはまる。
【0061】
オリゴマーまたはポリマーの調製のために、本発明によるモノマーは、さらなるモノマーとホモ重合するか共重合する。好ましいホモポリマーまたはコポリマーは、式(1)の単位または上記好ましい具体例が、0.01〜99.9モル%、好ましくは、5〜90モル%、特に、好ましくは、20〜80モル%の割合で存在する。ポリマー骨格を形成する適切で好ましいコモノマーは、フルオレン(たとえば、EP842208もしくはWO2000/22026にしたがう)、スピロビフルオレン(たとえば、EP707020、EP894107もしくはWO2006/061181にしたがう)、パラ-フェニレン(たとえば、WO92/18552にしたがう)、カルバゾール(たとえば、WO2004/070772もしくはWO2004/113468にしたがう)、チオフェン(たとえば、EP1028136にしたがう)、ジヒドロフェナントレン(たとえば、WO 2005/014689にしたがう)、シス-およびトランス-インデノフルオレン(たとえば、WO2004/041901もしくはWO2004/113412にしたがう)、ケトン(たとえば、WO2005/040302にしたがう)、フェナントレン(たとえば、WO2005/104264もしくはWO0207/017066にしたがう)または複数のこれらの単位から選ばれる。ポリマー、オリゴマーおよびデンドリマーは、さらなる単位、たとえば、正孔輸送単位、特に、トリアリールアミン系のもの、および/または電子輸送単位をも含んでもよい。さらに、ポリマーは、共重合された、またはブレンドとして混合されたかのいずれかの形態で三重項エミッターを含んでもよい。式(1)の単位または上記好ましい具体例と三重項エミッターの組み合わせは、的確に特に良好な結果を生じる。
【0062】
さらに、式(1)の化合物または上記好ましい具体例は、さらに官能化され、そのため拡張された構造に変換されてもよい。ここで、言及されてもよい反応は、スズキ法によるアリールボロン酸との、またはハートウイッグ-ブーフバルト法による一級あるいは二級アミンとの反応である。したがって、式(1)の化合物または上記好ましい具体例は、燐光金属錯体に直接、または他の金属錯体にも結合することもできる。
【0063】
本発明の化合物は、電子素子での使用に適している。ここで、電子素子は、少なくとも一つの有機化合物を含む少なくとも一つの層を含む素子を意味するものと解される。しかしながら、ここで、素子は、無機材料または無機材料から完全に構築された層をも含んでもよい。
【0064】
したがって、本発明は、さらに、本発明の化合物の電子素子での、特に、有機エレクトロルミネッセンス素子での使用に関する。
【0065】
したがって、本発明は、さらになお、少なくとも一つの上記言及した本発明の化合物を含む電子素子に関する。上述した選好は、同様に、電子素子にあてはまる。
【0066】
電子素子は、好ましくは、有機エレクトロルミネセンス素子(OLED)、有機集積回路(O-IC)、有機電界効果トランジスタ(O-FET)、有機薄膜トランジスタ(O-TFT)、有機発光トランジスタ(O-LET)、有機太陽電池(O-SC)、有機光学検査素子、有機光受容器、有機電場消光素子(O-FQD)、発光電子化学電池(LEC)および有機レーザーダイオード(O-laser)および「有機プラズモン発光素子」(D. M. Koller et al., Nature Photonics 2008, 1-4)より成る群から選ばれるが、好ましくは、有機エレクトロルミネセンス素子(OLED)、特に、好ましくは、燐光OLEDである。
【0067】
有機エレクトロルミネセンス素子は、カソード、アノードおよび少なくとも一つの発光層を含む。これらの層とは別に、さらなる層、たとえば、各場合に、一以上の正孔注入層、正孔輸送層、正孔障壁層、電子輸送層、電子注入層、励起子障壁層、電子障壁層および/または電荷生成層をも含んでもよい。たとえば、励起子障壁機能を有する中間層も、同様に二個の発光層の間に導入することもできる。しかしながら、これらの層の夫々は、必ずしも存在する必要がないことに留意する必要がある。ここで、有機エレクトロルミネセンス素子は、一つの発光層または複数の発光層を含んでもよい。複数の発光層が存在するならば、これらは、好ましくは、380nm〜750nm間に全体で複数の最大発光を有し、全体として、白色発光が生じるものであり、換言すれば、蛍光若しくは燐光を発することができる種々の発光化合物が、発光層に使用される。特に、好ましいのは、3個の発光層を有する構造であり、ここで、その3層は、青色、緑色及びオレンジ色もしくは赤色発光を呈する(基本構造については、例えば、WO 2005/011013参照。)。
【0068】
上記示される具体例にしたがう本発明による化合物は、その正確な構造に応じて、種々の層に使用することができる。好ましいものは、式(1)の化合物または上記好ましい具体例を、その正確な置換に応じて、蛍光もしくは燐光エミッター、特に、燐光エミッターのためのマトリックス材料として、および/または正孔障壁層中および/または電子輸送層中におよび/または電子障壁層もしくは励起子障壁層中におよび/または正孔輸送層中に含む有機エレクトロルミネッセンス素子である。上記に示される好ましい具体例は、有機電子素子中での材料の使用にもあてはまる。
【0069】
本発明のさらなる具体例では、有機エレクトロルミネッセンス素子は、式(1)の化合物または上記好ましい具体例を光学アウトカップリング層中に含む。ここで、光学アウトカップリング層は、光のアウトカップリングを改善するために、アノードとカソードとの間に位置せずに、実際の素子の外側の電極、たとえば、電極と基板との間に適用される層を意味するものと解される。
【0070】
本発明の好ましい具体例では、式(1)の化合物または上記好ましい具体例は、発光層中で、蛍光もしくは燐光化合物、特に、燐光化合物のためのマトリックス材料として使用される。ここで、有機エレクトロルミネッセンス素子は、一つの発光層もしくは複数の発光層を含み、ここで、少なくとも一つの発光層は、少なくとも一つの本発明による化合物をマトリックス材料として含む。
【0071】
式(1)の化合物または上記好ましい具体例が、発光層中で、発光化合物のためのマトリックス材料として使用されるならば、好ましくは、一以上の燐光材料(三重項エミッター)と組み合わせて使用される。本発明の意味での燐光発光は、比較的高いスピン多重度、すなわち、スピン状態>1の励起状態から、特に、励起三重項状態からのルミネッセンスを意味するものと解される。本発明の目的のために、遷移金属もしくはランタノイド、特に、すべてのイリジウム、白金および銅錯体を含むすべてのルミネッセンス錯体が、燐光化合物とみなされるべきである。
【0072】
式(1)の化合物または上記好ましい具体例と発光化合物の混合物は、エミッターとマトリックス材料を含む全混合物を基礎として、式(1)の化合物または上記好ましい具体例を、99〜1vol%、好ましくは、98〜10vol%、特に、好ましくは、97〜60vol%、特に、95〜80vol%含む。対応して、混合物は、エミッターとマトリックス材料を含む全混合物を基礎として、エミッターを1〜99vol%、好ましくは、2〜90vol%、特に、好ましくは、3〜40vol%、特に、5〜20vol%含む。
【0073】
本発明のさらに好ましい具体例は、式(1)の化合物または上記好ましい具体例の、さらなるマトリックス材料と組み合わせての燐光エミッターのためのマトリックス材料としての使用である。式(1)の化合物または上記好ましい具体例と組み合わせて使用することのできる、特に、適切なマトリックス材料は、たとえば、WO 2004/013080、WO 2004/093207、WO 2006/005627もしくはWO 2010/006680にしたがう芳香族ケトン、芳香族ホスフィンオキシドまたは芳香族スルホキシドもしくはスルホン、トリアリールアミン、カルバゾール誘導体、たとえば、CBP(N,N-ビスカルバゾリルビフェニル)または、WO 2005/039246、US 2005/0069729、JP 2004/288381、EP 1205527もしくはWO 2008/086851に記載されたカルバゾール誘導体、たとえば、WO 2007/063754もしくはWO 2008/056746にしたがうインドロカルバゾール誘導体、未公開出願DE 102009023155.2もしくはDE 102009031021.5にしたがうインデノカルバゾール誘導体、たとえば、EP 1617710、EP 1617711、EP 1731584、JP 2005/347160にしたがうアザカルバゾール誘導体、たとえば、WO 2007/137725にしたがうバイポーラーマトリックス材料、たとえば、WO 2005/111172にしたがうシラン、たとえば、WO 2006/117052にしたがうアザカルバゾールもしくはボロン酸エステル、たとえば、WO 2007/063754、WO 2008/056746、WO 2010/015306もしくは未公開出願DE 102009053382.6、DE 102009053644.2あるいはDE 102009053645.0にしたがうトリアジン誘導体、たとえば、EP 652273もしくはWO 2009/062578にしたがう亜鉛錯体、たとえば、WO 2010/054729にしたがうジアザシロールもしくはテトラアザシロール誘導体、たとえば、WO 2010/054730にしたがうジアザホスホール誘導体、たとえば、未公開出願DE 102009048791.3およびDE 102009053836.4にしたがう架橋カルバゾール誘導体である。通常のエミッターより、より短い波長で発光するさらなる燐光エミッターが、同様に、コホストとして混合物中に存在してもよい。
【0074】
適切な燐光発光化合物(三重項エミッター)、特に、好ましくは、可視域で適切な励起により発光する化合物は、加えて、20より大きい原子番号、好ましくは、38〜84の原子番号、特に、好ましくは、56〜80の原子番号を有する少なくとも一つの原子、特に、この原子番号を有する金属を含む。使用される燐光発光エミッターは、好ましくは、銅、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銀、金またはユウロピウムを含む化合物、特に、イリジウムまたは白金を含む化合物である。
【0075】
上記のエミッターの例は、出願WO 00/70655、WO 01/41512、WO 02/02714、WO 02/15645、EP 1191613、EP 1191612、EP 1191614、WO 05/033244、WO 05/019373、US2005/0258742およびWO 10/086089により明らかにされている。一般的には、燐光発光OLEDのために先行技術にしたがって使用され、有機エレクトロルミネッセンス素子分野の当業者に知られるようなすべての燐光発光錯体が適切であり、当業者は進歩性を必要とすることなく、更なる燐光発光化合物を使用することができよう。
【0076】
本発明のさらなる具体例では、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、別々の正孔注入層および/または正孔輸送層および/または正孔障壁層および/または電子輸送層を含まず、たとえば、WO 2005/053501に記載されるとおり、発光層は、正孔注入層もしくはアノードに直接隣接し、および/または発光層は、電子輸送層もしくは電子注入層もしくはカソードに直接隣接する。さらに、たとえば、WO 2009/030981に記載されるとおり、発光層中の金属錯体と同一または類似する金属錯体を、発光層に直接隣接して、正孔輸送もしくは正孔注入材料として使用することも可能である。
【0077】
本発明のさらなる好ましい具体例では、式(1)の化合物または上記好ましい具体例は、電子輸送もしくは電子注入層中で電子輸送材料として使用される。ここで、発光層は、蛍光もしくは燐光であってよい。化合物が電子輸送材料として使用されるならば、たとえば、Liq(リチウムヒドロキシキノリナート)等のアルカリ金属錯体でドープされることが好ましいかもしれない。
【0078】
本発明のなおさらに好ましい具体例では、式(1)の化合物または上記好ましい具体例は、正孔障壁層中で使用される。正孔障壁層は、カソード側で発光層に直接隣接する層を意味するものと解される。
【0079】
式(1)の化合物または上記好ましい具体例は、さらに、正孔障壁層中もしくは電子輸送層中の双方で、また発光層中のマトリックスとして使用することもできる。
【0080】
本発明のなおさらなる具体例では、式(1)の化合物または上記好ましい具体例は、正孔輸送層中もしくは電子障壁層あるいは励起子障壁層中で使用される。
【0081】
本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子のさらなる層では、先行技術にしたがって通常使用されるすべての材料を使用することができる。したがって、当業者は、発明性を要することなく、本発明による式(1)の化合物または上記好ましい具体例と組み合わせて、有機エレクトロルミネッセンス素子のために知られたすべての材料を使用することができる。
【0082】
更に好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、昇華プロセスにより適用され、材料は、10−5mbar未満、好ましくは、10−6mbar未満の初期圧力で、真空昇華ユニット中で真空気相堆積されることを特徴とする。しかしながら、初期圧力は、さらにより低くても、たとえば、10−7mbar未満でも可能である。
【0083】
同様に好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、OVPD(有機気相堆積)プロセスもしくはキャリアガス昇華により適用され、材料は、10−5mbar〜1barの圧力で適用される。このプロセスの特別な場合は、OVJP(有機気相ジェット印刷)プロセスであり、材料はノズルにより直接適用され、そのように構造化される(たとえば、M. S. Arnold et al., Appl. Phys. Lett. 2008, 92, 053301)。
【0084】
更に、好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、溶液から、たとえば、スピンコーティングにより、もしくは、たとえば、スクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、LITI(光誘起熱画像化、熱転写印刷)、インクジェット印刷もしくはノズル印刷のような任意の所望の印刷プロセスにより製造されることを特徴とする。たとえば、適切な置換により得られた可溶性の化合物が、この目的のために必要である。これらのプロセスは、オリゴマー、デンドリマーおよびポリマーのために、特に、適切でもある。
【0085】
たとえば、一以上の層が溶液から適用され、一以上のさらなる層が気相堆積により適用されるハイブリッドプロセスも可能である。
【0086】
これらのプロセスは、当業者に一般的に知られており、本発明の化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子を、発明性を要することなく適用することができる。
【0087】
本発明による化合物と本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子は、先行技術を凌駕する以下の驚くべき優位性により特徴付けられる。
【0088】
1.本発明による式(1)の化合物または上記好ましい具体例は、蛍光もしくは燐光エミッターのためのマトリックス材料として使用され、非常に高い効率と長い寿命をもたらす。これは、特に、化合物が燐光エミッターのためのマトリックス材料として使用されるときに、あてはまる。
【0089】
2.本発明による式(1)の化合物または上記好ましい具体例は、赤色および緑色燐光発光化合物のためのマトリックスのみならず、特に、青色燐光発光化合物のためのマトリックスとして適している。
【0090】
3.燐光化合物のマトリックス材料として使用に関して、非常の良好な結果が、低いエミッター濃度でも達成される。これは、先行技術によるマトリックス材料の場合ではそうではないことが多いが、燐光化合物で通常使用されるイリジウムまたは白金等の金属の希少性の面で望ましい。
【0091】
4.昇華で部分的もしくは完全な熱分解を受ける先行技術にしたがう多くの化合物とは対照的に、本発明による化合物は、高い熱安定性を有する。
【0092】
5.本発明による化合物は、有機エレクトロルミネッセンス素子に使用され、高い効率と低い使用電圧での急峻な電流/電圧曲線をもたらす。
【0093】
6.本発明による化合物は、電子輸送材料としての使用において、有機エレクトロルミネッセンス素子の効率、寿命と駆動電圧に関して非常に良好な特性をもたらす。
【0094】
これらの上記優位性は、その他の電子特性を損なうことはない。
【0095】
本発明は、次の例により詳細に説明されるが、それにより限定することを望むものではない。当業者は、発明性を要することなく、開示された範囲全体を実行し、本発明による化合物をさらに調製し、それらを電子素子で使用し、本発明によるプロセスを使用するために説明を使用することができるだろう。
【0096】

以下の合成は、他に断らない限り、保護ガス雰囲気下で行われる。出発物質は、アルドリッチ(ALDRICH)またはABCR(酢酸パラジウム(II)、トリ-o-トリルホスフィン、無機物、溶媒)から購入することができる。11,12-ジヒドロインドロ [2,3-a]カルバゾールの合成は、文献(Bulletin of the Chemical Society of Japan 2007, 80 (6), 1199-1201)にしたがって、実行することができる。ビスインドール(Journal of Organic Chemistry 2007, 72(9), 3537-3542)および1-ブロモカルバゾール(Journal of Organic Chemistry 2001, 66(25), 8612-8615)、1-ヒドロキシカルバゾール(Journal of Organic Chemistry 1988, 53(4), 794-9)、1,10-ジヒドロピロロ[2,3-a]カルバゾール(Khimiya Geterotsiklicheskikh Soedinenii 1979, (10), 1362-6) および1H,8H-ピロロ[3,2-g]インドール(Tetrahedron Letters 2009, 50 (13), 1469-1471)および1,8-ジヒドロ-2,7-ジフェニベンゾ[2,1-b:3,4-b']ジピロール(Tetrahedron Letters 2009, 50 (13), 1469-1471)の合成も同様に、文献から知られている。
【0097】
例1:
【化20】
【0098】
37.4g(145ミリモル)の11,12-ジヒドロインドロ[2,3-a]カルバゾールが、150mlのジ-n-ブチルエーテル中の23ml(159.5リモル)のメチル2-ヨードベンゾエートに添加され、溶液は、脱気される。10g(158ミリモル)の銅粉末、1.38g(7ミリモル)の沃化銅(I)と22g(159.6ミリモル)のKCOが、引き続き、混合物に添加され、次いで、保護ガス下、4日間、144℃で撹拌される。有機相はMgSOで乾燥され、溶媒は真空除去される。残留物はアセトンから再結晶化され、最後に高真空中で昇華される。収率:20.9g(58.4ミリモル)、理論値の40%、HPLCによる純度99.9%。
【0099】
例2:
【化21】
【0100】
化合物は、37.4g(145ミリモル)の11,12-ジヒドロインドロ[2,3-a]カルバゾールと54g(159.5ミリモル)のメチル3-ヨードビフェニル-2-カルボキシレートとの反応により、例1と同じ手順で合成される。残留物は、CHCl/イソプロパノールから再結晶化され、最後に高真空中で昇華される。収率:24.5g(56ミリモル)、理論値の39%、HPLCによる純度99.9%。
【0101】
例3:
【化22】
【0102】
化合物は、37.4g(145ミリモル)の11,12-ジヒドロインドロ[2,3-a]カルバゾールと42g(159.5ミリモル)のメチル3-ヨードチオフェニル-2-カルボキシレートとの反応により、例1と同じ手順で合成される。残留物は、CHCl/イソプロパノールから再結晶化され、最後に高真空中で昇華される。収率:22.6g(62ミリモル)、理論値の43%、HPLCによる純度99.9%。
【0103】
例4:
【化23】
【0104】
化合物は、33.6g(145ミリモル)のビスインドールと23ml(159.5ミリモル)のメチル2-ヨードビベンゾエートとの反応により、例1と同じ手順で合成される。残留物は、トルエンから再結晶化され、最後に高真空中で昇華される。収率:22.4g(66ミリモル)、理論値の47%、HPLCによる純度99.9%。
【0105】
例5:
【化24】
【0106】
化合物は、44g(145ミリモル)の1,8-ジヒドロ-2,7-ジベンゾ[2,1-b:3,4-b’]ジピロールと23ml(159.5ミリモル)のメチル2-ヨードベンゾエートとの反応により、例1と同じ手順で合成される。残留物は、トルエンから再結晶化され、最後に高真空中で昇華される。収率:20.84g(50ミリモル)、理論値の35%、HPLCによる純度99.9%。
【0107】
例6:
【化25】
【0108】
第一工程:11-(2-ヨードベンゼンスルホニル)-11,12-ジヒドロ-11,12-ジアザインデノ[2,1-a]フルオレン
43g(169ミリモル)の11,12-ジヒドロインドロ[2,3-a]カルバゾールが、1000mlのTHF中に、まず導入され、8.9g(223.3ミリモル)のNaH(油中60%)が、0℃で添加される。24g(80ミリモル)の2-ヨードベンゼンスルホニルクロライドが、引き続き、混合物に添加され、次いで、40℃で12時間撹拌される。有機相はMgSOで乾燥され、溶媒は真空除去される。残留物はアセトンから再結晶化され、最後に高真空中で昇華される。収率:29g(574ミリモル)、理論値の72%、HPLCによる純度99.9%。
【0109】
第二工程:
閉環が、46g(145ミリモル)の11-(2-ヨードベンゼンスルホニル)-11,12-ジヒドロ-11,12-ジアザインデノ[2,1-a]フルオレンと10g(158ミリモル)の銅粉末、1.38g(7ミリモル)の沃化銅(I)と22g(159.6ミリモル)のKCOとの反応により、例1と同じ手順で実行される。残留物は、CHCl/イソプロパノールから再結晶化され、最後に高真空中で昇華される。収率:11.9g(30ミリモル)、理論値の38%、HPLCによる純度99.9%。
【0110】
例7:
【化26】
【0111】
第一工程:9-ベンゼンスルホニル-1-ブロモ-9H-カルバゾール
19.6g(80ミリモル)の1-ブロモカルバゾールが、1000mlのTHF中に、まず導入され、8.9g(223.3ミリモル)のNaH(油中60%)が、0℃で添加される。24g(80ミリモル)の2-ヨードベンゼンスルホニルクロライドが、引き続き、混合物に添加され、次いで、40℃で12時間撹拌される。有機相はMgSOで乾燥され、溶媒は真空除去される。残留物はアセトンから再結晶化され、最後に高真空中で昇華される。収率:29g(574ミリモル)、理論値の72%、HPLCによる純度99.9%。
【0112】
第二工程:メチル9-ベンゼンスルホニル-9H-[1,9’]ビカルバゾリル-1’-カルボキシレート
8.0g(42.2ミリモル)の沃化銅(I)と11.7ml(97.5ミリモル)のトランス-シクロヘキサンジアミンが、1170mlのジオキサン中の26.3g(117ミリモル)のメチル9H-カルバゾール-1-カルボキシレート、45.2g(117ミリモル)の9-ベンゼンスルホニル-1-ブロモ-9H-カルバゾールと416.4g(1961ミリモル)のリン酸カリウムの十分に撹拌された懸濁液に添加され、引き続き、混合物は還流下16時間加熱される。冷却後、沈殿した固形物は、吸引濾過され、50mlのトルエンで三度、50mlのエタノール:水(1:1,v:v)で三度、100mlのエタノールで三度洗浄される。収率:43g(81ミリモル)、理論値の70%。
【0113】
第三工程:メチル9H- [1,9’]ビカルバゾリル-1’-カルボキシレート
65mlのジメチルスルホキシドと21mlの水中の65g(123ミリモル)のメチル9-ベンゼンスルホニル-9H-[1,9’]ビカルバゾリル-1’-カルボキシレートと48g(856ミリモル)の水酸化カリウムが、60℃で1時間加熱される。混合物は、引き続き、室温まで冷却され、1MのHCl溶液を使用して中和され、ジクロロメタンで抽出される。溶媒は、真空蒸発され、残留物はクロマトフラフ(ヘプタン/酢酸エチル10:1)により精製される。収率:45g(116ミリモル)、理論値の95%。
【0114】
第四工程:環化
22g(159.6ミリモル)のKCOが、151mlのジ-n-ブチルエーテル中の56.5g(145ミリモル)の9H-[1,9’]ビカルバゾリル-1’-カルボキシレートに添加され、混合物は、保護ガス下、4日間、144℃で撹拌される。有機相はMgSOで乾燥され、溶媒は真空除去される。残留物はアセトンから再結晶化され、最後に高真空中で昇華される。収率:25g(69.7ミリモル)、理論値の49%、HPLCによる純度99.9%。
【0115】
例8:
【化27】
【0116】
第一工程:2-(12H-11,12-ジアザインデノ[2,1-a]フルオレン-11-イル)ベンゼンチオール
25g(96.6ミリモル)の11,12-ジヒドロインドロ[2,3-a]カルバゾールが、80mlのジ-n-ブチルエーテル中の12.5g(48ミリモル)の2−ヨードベンゼンチオールに添加され、溶液は脱気される。6.6g(0.105ミリモル)の銅粉末、0.92g(0.003ミリモル)の沃化銅(I)と14.6g(106.6ミリモル)のKCOが、引き続き、混合物に添加され、次いで、保護ガス下、4日間、144℃で撹拌される。有機相はMgSOで乾燥され、溶媒は真空除去される。残留物はアセトンから再結晶化され、最後に高真空中で昇華される。収率:22.5g(61ミリモル)、理論値の66%、HPLCによる純度89.4%。
【0117】
第二工程:1-[2-(12H-11,12-ジアザインデノ[2,1-a]フルオレン-11-イル)フェニルスルファニル]ピロリジン-2,5-ジオン
27.3g(75ミリモル)の2-(12H-11,12-ジアザインデノ[2,1-a]フルオレン-11-イル)ベンゼンチオールが、150mlのCHCl中の10g(75ミリモル)のNCS溶液に0℃で添加され、10.5ml(75.3ミリモル)のEtNが、引き続き、添加され、混合物は室温で18時間撹拌される。有機相はMgSOで乾燥され、溶媒は真空除去される。残留物はアセトンから再結晶化され、最後に高真空中で昇華される。収率:30g(66ミリモル)、理論値の85%、HPLCによる純度88.3%。
【0118】
第三工程:環化
40mlのCHCl中の4.6g(10ミリモル)の1-[2-(12H-11,12-ジアザインデノ[2,1-a]フルオレン-11-イル) フェニルスルファニル]ピロリジン-2,5-ジオン溶液が、25mlのCHCl中の0.9g(5ミリモル)のN,N-ジメチルトリプタミン、0.2g(0.5ミリモル)の硫酸水素テトラブチルアンモニウムと5mlの50%KOH溶液の溶液に添加され、混合物は、室温で3時間撹拌される。0.2g(0.5ミリモル)の硫酸水素テトラブチルアンモニウムが、引き続き、再度添加され、混合物は、さらに3時間撹拌される。有機相はMgSOで乾燥され、溶媒は真空除去される。残留物はアセトンから再結晶化され、最後に高真空中で昇華される。収率2.4g(6.5ミリモル)、理論値の66%、HPLCによる純度99.9%。
【0119】
例9:
【化28】
【0120】
第一工程:メチル2-(9H-カルバゾール-1-イルアミノ)ベンゾエート
35.51g(234.9ミリモル)のメチルアントラニラートが、500mlのトルエン中に溶解され、十分に脱気される。52g(213ミリモル)の1-ブロモカルバゾール、2.1g(10.7ミリモル)の4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン、1.19g(5.34ミリモル)のPd(OAc)と76.5g(234.9ミリモル)のCsCOが、添加され、混合物は、次いで、脱気され、保護ガス雰囲気下100℃で24時間撹拌される。固形物は、引き続き、セライトにより濾過され、有機相は水で洗浄され、MgSOで乾燥され、蒸発される。粗生成物は熱ヘプタンで撹拌洗浄され、57.4g(108ミリモル)、理論値の86%、HPLCによる純度86%を得る。
【0121】
第二工程: 2-[2-(9H-カルバゾール-1-イルアミノ)フェニル]プロパン-2-オル
71.7g(227ミリモル)の2-(9H-カルバゾール-1-イルアミノ)ベンゾエートが、保護ガス下、2000mlのTHF中にまず導入され、0℃まで冷却される。300mlの2M塩化メチルマグネシウム溶液が、この温度で滴下され、混合物は、引き続き、一晩かけて室温にもたらされる。600mlの飽和NHCl溶液と900mlの水/濃HCl8:1が、溶液に添加される。相は分離され、溶媒は真空除去される。H-NMRにより生成物含量は約90%であり、全収率は64.5g(90%)である。
【0122】
第三工程:7,7ジメチル-12,13-ジヒドロ-7H-インドロ[3,2-c]アクリジン
63g(200ミリモル)の2-[2-(9H-カルバゾール-1-イルアミノ)フェニル]プロパン-2-オルが、保護ガス下、268g(2734ミリモル)のポリリン酸中にまず導入され、0℃まで冷却される。混合物は、引き続き、100℃で3時間撹拌され、次いで、室温まで冷却される。水が、氷冷された混合物に添加され、混合物は、酢酸エチルで抽出され、溶媒は、真空蒸発される。H-NMRにより生成物含量は約96%であり、全収率は53g(90%)である。
【0123】
第四工程:環化
43g(145ミリモル)の7,7-ジメチル-12,13-ジヒドロ-7H-インドロ[3,2-c]アクリジンが、150mlのジ-n-ブチルエーテル中の23ml(159.5リモル)のメチル2-ヨードベンゾエートに添加され、溶液は、脱気される。10g(158ミリモル)の銅粉末、1.38g(0.007ミリモル)の沃化銅(I)と22g(159.6ミリモル)のKCOが、引き続き、混合物に添加され、次いで、保護ガス下、4日間、144℃で撹拌される。有機相はMgSOで乾燥され、溶媒は真空除去される。残留物はアセトンから再結晶化され、最後に高真空中で昇華される。収率:19.5g(49ミリモル)、理論値の34%、HPLCによる純度99.9%。
【0124】
例10:
【化29】
【0125】
第一工程:3-[(Z)-1-eth-(E)-イリデンペンタ-2,4-ジエニル]-8-フェニル-11,12-ジヒドロ-11,12-ジアザインデノ[2,1-a]フルオレン
13.3g(110.0ミリモル)のフェニルボロン酸、20g(50ミリモル)の3,8-ジブロモ-11,12-ジヒドロインドロ[2,3-a]カルバゾールと44.6g(210.0ミリモル)のリン酸三カリウムが、500mlのトルエン、500mlのジオキサンと500mlの水中に懸濁される。913mg(3.0ミリモル)のトリ-o-トリルホスフィンと次いで、112mg(0.5ミリモル)の酢酸パラジウム(II)が、この懸濁液に添加され、反応混合物は、還流下16時間加熱される。冷却後、有機層が分離され、シリカゲルで濾過され、200mlの水で三度洗浄され、引き続き、蒸発乾固される。残留物はトルエンからまたジクロロメタン/イソプロパノールから再結晶化される。収率は、16g(39ミリモル)で、理論値の80%に対応する。
【0126】
第二工程:(2-ブロモフェニル)-(3,8-ジフェニル-12H-11,12-ジアザインデノ[2,1-a]フルオレン-11-イル)メタノン
2.1g(52.5ミリモル)のNaH(鉱物油中60%)が、保護ガス雰囲気下500mlのTHF中に溶解される。200mlのTHF中に溶解された20g(50ミリモル)の3-[(Z)-1-eth-(E)-イリデンペンタ-2,4-ジエニル]-8-フェニル-11,12-ジヒドロ-11,12-ジアザインデノ[2,1-a]フルオレンと11.5g(52.5ミリモル)の15-クラウン-5’が、添加される。室温で1時間後、250mlのTHF中の12g(55ミリモル)の2-ブロモベンゾイルクロライドが滴下される。反応混合物は、室温で18時間撹拌される。この後、反応混合物は、氷上に注がれ、ジクロロメタンで三度抽出される。結合した有機相は、NaSOで乾燥され、蒸発される。残留物は、熱トルエンで抽出され、トルエン/n-ヘプタンから再結晶化される。収率は、22g(75%)である。
【0127】
第3工程:
150mlのジ-n-ブチルエーテルが、85g(145ミリモル)の(2-ブロモフェニル)-(3,8-ジフェニル-12H-11,12-ジアザインデノ[2,1-a]フルオレン-11-イル)メタノンに添加され、溶液は、脱気される。10g(158ミリモル)の銅粉末、1.38g(7ミリモル)の沃化銅(I)と22g(159.6ミリモル)のKCOが、引き続き、混合物に添加され、次いで、保護ガス下、4日間、144℃で撹拌される。有機相はMgSOで乾燥され、溶媒は真空除去される。残留物はアセトンから再結晶化され、最後に高真空中で昇華される。収率:63g(124ミリモル)、理論値の86%、HPLCによる純度99.9%。
【0128】
例11:OLEDの製造
本発明によるOLEDと先行技術によるOLEDが、WO 2004/058911にしたがう一般的プロセスにより製造されるが、ここに記載される特別な状況(層の厚さの変化、材料)に適合される。
【0129】
種々のOLEDに対する結果が、以下の例I1〜I10で示される(表1と2参照)。厚さ150nmの構造化されたITO(インジウム錫酸化物)で被覆されたガラス板が、改善された加工のために、20nmのPEDOT(ポリ(3,4-エチレンジオキシ-2,5-チオフェン)で水からのスピンコート、H.C.Stack,Goslar独から購入。)で被覆される。これらの被覆されたガラス板はOLEDが適用される基板を形成する。OLEDは、基本的に、次の層構造を有する:基板/正孔輸送層(HTL)/中間層(IL)/電子障壁層(EBL)/発光層(EML)/電子輸送層(ETL)/随意に、電子注入層(EIL)および最後にカソード。カソードは、100nm厚のアルミニウム層により形成される。OLEDの正確な構造は、表1に示される。OLEDの製造のために使用された材料は、表3に示される。
【0130】
すべての材料は、真空室において、熱気相堆積により適用される。ここで、発光層は、常に、少なくとも一つのマトリックス材料(ホスト材料)と、共蒸発により一定の体積割合でマトリックス材料または材料と前混合される発光ドーパント(エミッター)とから成る。ここで、M1:TEG1(95%:5%)等の表現は、材料M1が95体積%の割合で層中に存在し、TEG1が5体積%の割合で層中に存在することを意味する。同様に、電子輸送層も、二種の材料の混合物から成ってもよい。
【0131】
OLEDは、標準方法により特性決定される。この目的のために、エレクトロルミネセンススペクトル、電流/電圧/輝度特性線(IUL特性線)から計算した、輝度の関数としての電流効率(cd/Aで測定)、パワー効率(Im/Wで測定)、外部量子効率(EQE、パーセントで測定)ならびに寿命が測定される。エレクトロルミネセンススペクトルは、輝度1000cd/mで測定され、CIE1931xおよびy色座標はそこから計算される。表2での表現U1000は、輝度1000cd/mに対して必要とされる電圧を示す。SE1000とLE1000は、1000cd/mで達成された電流およびパワー効率を示す。最後に、EQE1000は、駆動輝度1000cd/mでの外部量子効率である。
【0132】
種々のOLEDに対するデータが、表2に要約される。
【0133】
いくつかの例が、以下に詳細に説明される。しかしながら、これらは、表2に示されるデータの選択であるだけであることが指摘されねばならない。
【0134】
燐光OLEDにおけるマトリックス材料としての本発明の化合物の使用
本発明による化合物の燐光エミッターのためのマトリックス材料としての使用について、良好な電圧とある場合には非常に良好な効率が、得られる。特に、材料M1とM2は、5%という低いエミッター濃度(例11と12)に対して、非常に高い電流効率(62cd/A、17.1%EQE)が達成されるという事実により特徴づけられる。これは、非常に、多くの通常のマトリックス材料の場合では生ぜず、イリジウム錯体は、短い設定時間での大量生産に対しては十分に熱的に安定でないことが多いことから、技術的観点から有利である。比較的低いエミッター濃度の使用は、同じ設定時間でより低い気相堆積温度を可能とし、熱安定性の問題を回避することができる。一定電流での駆動時に、例11と12の輝度は、約90時間後に8000cd/mの初期値から6400cd/mに低下する。さらに、本発明の材料は、表2に明らかに示されるとおりに、良好な性能データを同様に示す。
【0135】
電子輸送材料としての本発明の化合物の使用
本発明の化合物は、さらに、OLEDの電子輸送層中で使用することができる。電子注入層としての本発明の材料ETM1とLiQとの組合せは4.7Vの電圧、51cd/Aの電流効率とそれゆえの良好なパワー効率35Im/Wが、緑色燐光OLEDに対して得られる(例19)。
【0136】
表1:OLEDの構造
【表1】
【0137】
表2:OLEDのデ−タ
【表2】
【0138】
表3:OLEDのための材料の構造式
【表3-1】
【表3-2】