特許第5937085号(P5937085)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5937085ハニカム複合材支持部のコーティング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5937085
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】ハニカム複合材支持部のコーティング方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/18 20060101AFI20160609BHJP
   B05C 3/10 20060101ALI20160609BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20160609BHJP
   B32B 3/28 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   B05D1/18
   B05C3/10
   B05D7/00 K
   B32B3/28 Z
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-532134(P2013-532134)
(86)(22)【出願日】2011年9月29日
(65)【公表番号】特表2014-500133(P2014-500133A)
(43)【公表日】2014年1月9日
(86)【国際出願番号】EP2011066976
(87)【国際公開番号】WO2012045653
(87)【国際公開日】20120412
【審査請求日】2014年8月8日
(31)【優先権主張番号】102011002176.0
(32)【優先日】2011年4月19日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】61/391,088
(32)【優先日】2010年10月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513089419
【氏名又は名称】イゼリ・フレディ
【氏名又は名称原語表記】ISELI,Fredy
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100086793
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144082
【弁理士】
【氏名又は名称】林田 久美子
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(72)【発明者】
【氏名】イゼリ・フレディ
【審査官】 中山 基志
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭53−132075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D1/00−7/26
B05C1/00−3/20
B32B1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延在する多数のチャネルを有するセルロースのハニカム複合材支持部(1)を含浸コーティングで耐火性および/または耐水性、および/または機械的安定性を向上させる方法において、
含浸剤を真空コーティング室(8)内に供給することと、
前記チャネルの内周面上に含浸剤を堆積させることによって、一周しかつ軸方向に連続したコーティングを前記チャネルの前記内周面上に作成し、
余分な含浸剤(13)を前記真空コーティング室(8)から排出する、
ことを備えるコーティング方法であって、
前記ハニカム複合材支持部(1)と前記真空コーティング室(8)とを、相対移動させ、前記ハニカム複合材支持部(1)を前記真空コーティング室(8)を通過させて移送することにより、空気を、前記ハニカム複合材支持部(1)と前記真空コーティング室(8)との間の少なくとも1つの隙間(12)を介して前記真空コーティング室(8)内に取り込み、前記空気を用いて、前記含浸剤を乱流の霧状とする、
ことを特徴とするコーティング方法
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記真空コーティング室内に空気を吸い込むおよび/または吹き込むことにより空気を供給することを特徴とするコーティング方法。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか一項に記載の方法において、空気/含浸剤混合物の形態の含浸剤の流れを前記チャネル(5,6)によって前記真空コーティング室(8)内に生成することを特徴とするコーティング方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法において、
前記真空コーティング室(8)内に、少なくとも1つのノズルを用いて噴霧される前記含浸剤(13)を、前記真空コーティング室(8)内に吸引されたおよび/または吹き込まれた前記空気を用いて渦巻かせ、乱流の霧状にし、
前記渦巻きにされた含浸剤(13)を前記チャネル(5,6)内に堆積させる、
ことを特徴とするコーティング方法。
【請求項5】
請求項から4のいずれか一項に記載の方法において、前記余分な含浸剤(13)を前記取り込まれた空気とともに排出することを特徴とするコーティング方法。
【請求項6】
請求項からのいずれか一項に記載の方法において、前記ハニカム複合材支持部(1)と前記真空コーティング室(8)とを、前記チャネル(5,6)の軸方向の延在部に対して垂直に相対移動させ、前記ハニカム複合材支持部(1)を前記真空コーティング室(8)を通過させて移送すること、を特徴とするコーティング方法。
【請求項7】
請求項からのいずれか一項に記載の方法において、前記含浸剤(13)は、流体とともに、セメント、水ガラス、白亜、および無機結合剤の物質群から選択される少なくとも1つの物質で構成されるか;または、前記含浸剤(13)は、セメント、水ガラス、白亜、および無機結合剤の物質群から選択される少なくとも1つの物質で構成されることを特徴とするコーティング方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、前記流体が水および/または前記セメントがマイクロセメントであることを特徴とするコーティング方法。
【請求項9】
請求項から8のいずれか一項に記載の方法において、木材、板紙、発泡プラスチック、または合板で作られる被覆層を前記ハニカム複合材支持部(1)の少なくとも1つの表面側に固定して、サンドイッチ状構成要素を作成することを特徴とするコーティング方法。
【請求項10】
軸方向に延在する多数のチャネルを有するハニカム複合材支持部(1)を含浸コーティングでコーティングして耐火性および/または耐水性、および/または機械的安定性を向上させる、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法を実施するコーティング装置(7)であって
前記装置(7)は真空コーティング室(8)を備え、
前記真空コーティング室(8)は、
真空を生成する手段と、
一周しかつ軸方向に連続したコーティングを作成するために前記チャネル(5,6)の内周面上に含浸剤(13)を堆積させるために、前記真空コーティング室(8)内に前記含浸剤(13)を供給する、少なくとも1つのノズルを有する供給手段(9)と、を備えることを特徴とするコーティング装置。
【請求項11】
請求項10に記載の装置において、前記真空コーティング室(8)は少なくとも1つの、空気を取り込むための切り込みまたは隙間が形成された開口部を有すること、および/または前記真空コーティング室(8)は空気を吹き込む吹き込み手段を有すること、を特徴とするコーティング装置。
【請求項12】
請求項10または11のいずれかに記載の装置において、前記ハニカム複合材支持部(1)と前記真空コーティング室(8)との相対移動のための手段が設けられていることを特徴とするコーティング装置。
【請求項13】
求項10から12のいずれか一項に記載のコーティング装置を使用して、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法を実施するコーティング装置の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸方向に延在する多数のチャネルを有し、セルロース、具体的には紙または板紙からなるハニカム複合材支持部(構成上、好ましくは構造上使用するためのハニカム体であって、具体的には段ボールハニカム部または拡張ハニカム体)を含浸コーティングで耐火性および/または耐水性、および/または機械的安定性を向上させる、請求項1の前提部に記載の方法とおよび請求項10に記載のコーティングされたハニカム複合材支持部とに関する。本発明はさらに、請求項14の前提部に記載のコーティング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハニカム複合材支持部、具体的には複合材製品におけるハニカム芯材として使用するものが知られており、このとき、ハニカム複合材支持部のハニカムは、軸方向に延在する複数のチャネルで形成され、これらのチャネルは、平坦な台紙とこれらの台紙に接着される波形紙とによって円周方向に区切られる。
【0003】
成形された複合紙ハニカム商品の作成方法はDE3631185A1から知られており、これは紙ハニカム部、すなわち複数の軸方向チャネルを有するハニカム複合材支持部を硬化性の液状合成樹脂でコーティングしたものである。コーティングのために、ハニカム複合材支持部は合成樹脂が充填された浸漬槽に浸漬され、このとき、浸漬槽上方の空間は真空状態にされる。使用される合成樹脂は、紙ハニカムの耐火性でなく耐水性を向上させると考えられる。また、この周知の方法はバッチ式でのみ実行可能なため、商業規模での使用は困難である。この周知の方法では、任意の粘性を有するまたは水を含有する含浸剤で(例えば水を含有する無機懸濁液で)ハニカム複合材支持部のチャネルをコーティングすることもできない。これは、紙ハニカムが水を吸収する結果、強度が失われ、ハニカム構造が軟化して崩壊にさえ至るためである。
【0004】
ハニカム複合材支持部の製作方法が、例えばDE10305747A1に説明されている。他のハニカム複合材支持部(段ボール支持部)がDE19654672A1およびDE19820493A1に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】DE3631185A1
【特許文献2】DE10305747A1
【特許文献3】DE19654672A1
【特許文献4】DE19820493A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
チャネル内壁を商業的に含浸剤でコーティングするために、この出願人は、台紙とこれに接着される波形紙とからなる段ボール片の内壁面を、接着前に噴霧して含浸剤でコーティングすることによりハニカム複合材支持部を形成する方法を開発した。この周知の方法によって商業上の製造には成功した。しかしながら、この周知の方法では全てのチャネルをそれらの内部で軸方向に連続してコーティングすることはできないという欠点がある。これは、台紙および波形紙によって区切られる段ボール片のそれらのチャネルには、外部から噴霧しても内部で噴霧しても届かないためである。
【0007】
前述の従来技術を起点として、本発明の目的は、商業上の利用に適し、さらにハニカム複合材支持部の全てのチャネルの内周において含浸層が確実に設けられ、加えて、水を含有する、具体的にはセメントベースの含浸剤の処理に適した、ハニカム複合材支持部に、改良されたコーティング方法を提供することである。さらに、このようにコーティングされたハニカム複合材支持部と、それに対応して改良されたコーティング装置とを提供する。
【0008】
この目的は、方法に関しては請求項1の特徴によって達成される。
【0009】
コーティングされたハニカム複合材支持部に関しては、この目的は請求項10の特徴によって達成され、装置に関しては請求項14の特徴によって達成される。
【0010】
本発明の有利なさらなる発展を下位請求項において提供する。明細書、特許請求の範囲、および/または図面に開示される特徴のうち少なくとも2つによる全ての組み合わせが本発明に含まれる。繰り返しを避けるため、装置によって開示される特徴は方法によって開示されると考えられ、請求項に記載できる。同様に、方法によって開示されている特徴は装置によっても開示されると考えられ、請求項に記載できる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は前述の従来技術とは異なり、紙や板紙等のセルロース/パルプで作られるハニカム複合材支持部(ハニカム複合材からなる構成要素、またはハニカム複合材を備える構成要素)を含浸槽に浸漬したり、接着前に段ボール片に噴霧して多層ハニカム複合材支持部を形成したりせずに、真空コーティング室内で含浸コーティングを塗布するという着想に基づいている。含浸剤と好ましくは空気とが真空コーティング室内に供給され、含浸剤が好ましくは全てのチャネルの内周面に堆積する。これにより、チャネルの長手方向への延在部に対して軸方向に連続し、かつ内周方向にクローズした(一周した)コーティングが得られる。真空(周囲圧力と比較して陰圧)が寄与することによって、確実に流体の含浸剤が、好ましくは内部に液滴状の含浸剤/霧状の含浸剤が存在する空気を含む流れとして軸方向チャネル内を流れて、内周面上に堆積する。
【0012】
これにより、細かい霧状のコーティング剤および空気の流れが真空コーティング室内に形成されてチャネル内を流れることが好ましく、このとき、含浸剤がチャネル内に堆積する。余分な含浸剤は真空コーティング室から排出され、具体的には、好ましく吸い込まれた空気とともに排出されるか吸い出される。本発明にかかる真空室内でのセルロースのハニカム複合材支持部のコーティングを用いることで、ハニカム複合材支持部の全てのセルロースの上層にクローズドコーティングを確実に設けることが初めて可能となる。真空コーティング室でのコーティングは、好ましく、水性の含浸剤を使用する場合でもセルロース材料のあらゆる軟化を防ぐ。これには好ましくはセメント−水混合物、すなわち、具体的にはマイクロセメントを含むセメント接着剤が含まれる。それに加えてまたは代えて、好ましくは無機懸濁液の使用が可能であり、これらは好ましくは水を含有するものである。
【0013】
ハニカム複合材支持部の上方にある少なくとも1つのノズルを介して真空室内に含浸剤を供給し、ハニカム複合材支持部の下方の領域で吸い出すようにして、含浸剤の流れ(好ましくは空気内の液滴状の含浸剤)を真空によってチャネルを介して吸い込むか引き出すことが特に適切である。
【0014】
入ってくる空気を用いて真空コーティング室内の含浸剤を渦巻かせて、細かい霧状のコーティング剤および空気の前述の流体の流れを形成することが特に好ましい。含浸剤を周囲から、すなわち外部から隙間を介して真空室内に吸い込むことが特に有利であることがわかった。真空コーティング室を通過させてハニカム複合材支持部をコーティングする連続搬送の場合、真空コーティング室に入るときおよび/または真空コーティング室から出るときに、ハニカム複合材支持部を囲む隙間を介して空気を吸い込むと有利であることがわかった。隙間を介して空気を吸い込むことによって高い空気流量を実現でき、結果的に良好な噴霧(乱流)をもたらすこととなる。
【0015】
真空室を使用するさらなる利点は、真空を用いることで間隙空気がセルロースから排出され、さらには含浸剤がコーティング対象となるセルロースのハニカム複合材支持部の全ての表面に強く付着することである。(真空を同時に生成するために)余分な含浸剤で満たされた空気の流れをコーティング中に真空コーティング室から吸い出すことが好ましく、このとき、含浸剤が、例えば空気の流れがバッフル板に接触して広がることによって堆積し、その後、具体的には真空コーティング室内に配置されたノズルを介して真空コーティング室に供給されることが特に好ましい。
【0016】
本発明にかかる方法は、水を含有する含浸剤を、特に好ましくはセメント、さらに好ましくはマイクロセメントである無機添加剤とともに使用することに特に適している。この方法によって、ハニカム複合材支持部の全てのチャネルに商業的にコーティングを行うことが初めて可能となる。
【0017】
ハニカム複合材支持部の構成に関しては様々な可能性がある。セルロース、具体的には紙または板紙のハニカム体を備えることは必須である。これは、例えば接着やいくつかの段ボール層の使用等、様々な種類のそれ自体周知の方法によって製作可能であり、あるいは、ハニカム複合材支持部はいわゆる拡張ハニカム体、すなわちハニカム素材を拡げてハニカム形状にする引き離しハニカム要素から製作される。このとき、原則として、ハニカム体の材料にクラフト紙、テスト紙、またはボーガス紙を使用することが適当である。
【0018】
方法の一実施形態として、軸方向チャネルの形態の複数のハニカムを有するセルロースのハニカム複合材支持部と、ハニカム複合材支持部にコーティングを施す真空コーティング室との間で相対移動を実現し、これは好ましくはチャネルの軸方向の延在部に対して垂直とすることが特に適切である。
【0019】
ここで、ハニカム複合材支持部を固定のコーティング装置に対して、具体的には真空コーティング室を通過して相対移動させることが特に好ましい。真空コーティング室への入口および真空コーティング室からの出口において小さな隙間が好ましくはハニカム複合材支持部の周囲に形成され、これを介して真空コーティング室内に空気を吸い込んで、具体的には、好ましくは噴射ノズルを介して導入される含浸剤が確実に極めて細かい霧状となるようにする。空気の吸い込みに加えてまたは代えて、噴霧の目的で真空コーティング室内に空気を吹き込むことも可能である。バッチ式による実行も可能であり、これによりハニカム複合材支持部を真空コーティング室を通過させて移送せずに、コーティング中にその内部に空気を入れる。この場合、空気を適切な、具体的には切り込みまたは隙間が形成された開口部を介して吸い込むことが可能である。
【0020】
基本的に、ハニカム複合材支持部とコーティング装置とを、好ましくは互いに反対の方向に相対移動させることもできる。
【0021】
ハニカム複合材支持部とコーティング装置との間で相対移動を実現することによって、商業上の利用可能性をさらに向上できる。これは、チャネルのいくつかの中を含浸剤の流れ(好ましくは空気+含浸剤)が流れるのと同時に、ハニカム複合材支持部がコーティング装置に対して、具体的には真空コーティング室を通過して相対移動することによる。結果的にハニカム複合材支持部の長さに制限がなくなる。ハニカム複合材支持部全体を受け取ると同時に全てのチャネルをコーティングする非常に大型の真空コーティング室を実現しなくとも(あるいは実現することも可能である)、コーティングを準連続的に遂行できる。
【0022】
陰圧を生成するために、真空室に対して吸引ポンプまたは吸引ファンを適切に割り当てて、周囲と比較して対応する圧力差を生じさせる。最初に述べたように、余分な、すなわち堆積していない含浸剤を、真空室に供給された、具体的には吸い込まれた空気とともに、この吸引手段を介して吸い出すことがここでは特に適切である。
【0023】
本発明を用いることで、引き離しハニカム要素(拡張ハニカム)、具体的には複数の段ボール片を互いに接着せずに作成されるクラフト紙、テスト紙、またはボーガス紙から製作されたハニカム複合材支持部に最適なコーティングを施すこともできる。
【0024】
余分な含浸剤、すなわち除去された、具体的には吸い出された含浸剤は循環して送給される、つまりチャネルに再び供給されてコーティングに用いられることが好ましく、このとき、除去側の含浸剤を収集容器に収集または供給し、その後、チャネルに供給するための送給ポンプを用いてそこから含浸剤を再び排出することが特に適切である。
【0025】
最初に示したように、含浸剤は、好ましくは水と混合されたセメント、具体的にはセメント混合物、好ましくはマイクロセメントおよび/または水ガラスおよび/または無機懸濁液の混合物、好ましくは水と例えばセメントや白亜等の無機結合剤との混合物を含むことが特に適切である。
【0026】
方法の変形例として、真空コーティング室でのコーティングと同時および/または含浸剤コーティングの後に、チャネルに充填材、具体的にはチャネルへの圧入および/または吹き込みおよび/または吸い込みが可能な断熱材を充填することが特に好ましい。この充填材は粒子の形態で存在し、好ましくは粒子サイズが2mm未満、好ましくは0.05mm〜2mmであることが好ましい。この充填材が含浸剤と混合されることによって含浸剤の流れの形態の混合物がコーティングの目的でチャネル内を送給可能となることが特に適切である。この断熱材としては、例えば発泡スチロールおよび/またはポリスチレンおよび/またはケイ酸で作られる、例えばミサポール(Misapor)および/または断熱パール等の発泡ガラスを使用でき、このとき、任意で好ましい粒子サイズ(大きさ)に細かく砕くことが可能な古い材料または屑材料をこの目的に用いることが特に適切である。(それに加えてまたは代えて)具体的には、膨張粘土やイトン(Ytong)等の軽量の構成材料を断熱材として用いることも可能である。前述の断熱充填材を用いることで、大幅により良好な断熱値が実現され、チャネルによって形成されたハニカム構造がさらに強化される。
【0027】
この方法の一変形例によれば、充填材および/または含浸剤と充填材との混合物を吸引しないことも可能であり、これに代えて、例えば充填材または含浸剤コーティング−充填材混合物を真空コーティング室の除去側で機械的に除去して、確実にチャネルが充填されたままにすることもできる。後にチャネルに充填材を充填する間、すなわち含浸剤コーティングの後、具体的には含浸剤コーティングの乾燥後に充填材を導入する間、ハニカム複合材支持部の片側、具体的には除去側を封止することが有利である。このためにハニカム複合材支持部に紙、厚紙、および/または板を被せることができる。
【0028】
含浸剤および断熱材からなる塊を、具体的には最上部に配置された供給側に供給し、それをチャネル内に任意で導入、具体的には、例えばポンプを用いておよび/または例えばドクターブレードを用いるなどして機械的に加圧下で圧入し、その後、具体的には陰圧を用いて余分な塊を除去側で除去する、具体的には抜き出すまたは排出することが特に適切である。
【0029】
ここで、充填材、具体的には断熱材をハニカム複合材支持部のチャネル内に設けることは、独立した発明として開示することが考慮されるべきであり、例えば分割出願によって権利の請求を可能とすべきであることが特に留意される。断熱材を追加して設けることで、一周しかつ軸方向に連続した含浸剤を、具体的には含浸剤がチャネル内を断熱材とともに流れることによって形成することが好ましい。しかしながら、含浸剤なしにまたは別の方法で断熱材を設ける、具体的には断熱材のみをチャネル内に導入することも可能である。
【0030】
本発明によってコーティングされたハニカム複合材支持部、具体的にはハニカム複合材支持部を介して間隔を空けた2つの被覆層を備えるサンドイッチ状構成要素を作成するためにコーティングされたハニカム複合材支持部には、少なくとも1つの被覆層を設けることが特に適切であり、このとき、被覆層は、例えば木材、板紙、発泡プラスチックまたは合板またはアルミニウム箔または紙または金属シートからなるものでもよい。この場合、被覆層の表面はチャネルの長手方向の延在部に対して垂直に延在する。
【0031】
ハニカム複合材支持部には、例えば異なった厚み(強度)および/または選択材料を有する、異なる被覆層が互いに反対方向を向いた両側に設けられることが特に好ましい。あるいは、同一の被覆層同士を用いることもできる。例えば、チャネル状のシート同士、鋼シート同士、ステンレス鋼シート同士、銅シート同士、亜鉛シート同士、アルミニウムシート同士を被覆層として用いたり、異なる合金同士での使用も考えられる。銅板同士を用いることもできる。
【0032】
本発明は、好ましくは本発明の概念によって実行される方法でコーティングされたハニカム複合材支持部にも及ぶ、このとき、全てのチャネルの内周上に、一周しかつ軸方向に連続した含浸コーティングが設けられることが特に好ましい。チャネルには充填材、具体的には断熱材が追加して設けられ、具体的には軸方向に連続して充填されることが特に適切である。
【0033】
ハニカム複合材支持部は、好ましくは段ボール片の複数の接着層からなるものでもよく、このとき、具体的にはハニカム複合材支持部の作成が段ボール片を巻くのと同時にそれ自体を接着して行われる場合に、これら複数の層は単一の片からなるものでもよいし、それから製作されるものでもよい。複数の段ボール層がチャネルの長手方向の延在部に対して垂直となるように実現されることが必須である。段ボール片を巻く代わりに、複数の段ボール片を平行な層状にして接着することも可能である。巻く方法は、例えばDE10305747A1に説明される。あるいは、ハニカム複合材支持部は拡張可能なハニカム要素からなる、すなわち拡張ハニカム要素として構成することも可能である。
【0034】
段ボール片、すなわち段ボール片から作られるハニカム複合材支持部の層は、第1および第2チャネルを備え、このとき、第1チャネルは、層の台紙とこの層の波形紙との間、すなわち、台紙と、この台紙に対向する波形紙の第1表面との間に形成される。第2チャネルは使用する段ボール片の種類によって、すなわち単一の波形紙に単一の台紙が接着される段ボール片であるか、波形紙が2つの台紙の間に挟まれる段ボール片であるかのいずれかによって、その層の波形紙と、隣接する層の台紙または同じ層の別の台紙のいずれかとの間、つまり、このような台紙と、波形紙においる第1表面と反対を向く第2表面との間に形成される。
【0035】
従来技術のように、接着前に段ボール片に対して外部から噴霧することでハニカム複合材支持部が形成される際の段ボール片の場合と同様に、波形紙と台紙との間では、波形紙が台紙に接着されるどの接合点にも含浸剤が存在しないことが好ましい。本発明にかかる方法では、仕上げられたチャネル内、すなわち接着済みのハニカム複合材支持部内で流れが発生するため、波形紙と台紙との間の接合領域には接着剤だけが存在することになる。
【0036】
前述のように、それぞれが1つの波形紙および少なくとも1つの台紙を備える段ボール片を互いに接着する代わりに、ハニカム複合材支持部をいわゆる拡張ハニカムとして形成できる。拡張ハニカムは、複数の段ボール片を重ねて作成されるハニカム体と比べて、極めて安価に製造される。
【0037】
既に示したように、充填材、具体的には断熱材または遮音材が、コーティングされたチャネル内に設けられることが特に適切であり、このとき、この断熱材または遮音材は、好ましくはチャネルの長手方向の延在部の少なくともほぼ全体にわたって設けられるべきであり、かつ当然ながら充填材の個別の隣接する粒子は、チャネルが長手方向に延在する方向に互いに間隔を空けて配置されうる。充填材は、真空コーティング室内において充填材を含有する含浸剤とともにチャネル内に導入されることが好ましい。
【0038】
ハニカム複合材支持部、具体的にはそれから製作される複合材材料は、気体および/または水蒸気を抑制するまたは通さないプラスチックまたは金属の薄膜を少なくとも1つ備えることが特に適切であり、このとき、このような薄膜でハニカム複合材支持部を包むことがさらに好ましい。チャネルの軸方向の少なくとも片側、さらに好ましくはチャネルの軸方向の両側を少なくとも1つのプラスチック薄膜および/または金属薄膜で封止することが好ましい。
【0039】
本発明は、コーティング装置、またはそれを用いてセルロースのハニカム複合材支持部をコーティングすることにも及ぶ。本発明にかかるコーティング装置は、含浸剤は供給するが、好ましくは必ずしも空気は供給しない真空コーティング室を特徴とする。真空コーティング室内に真空(周囲と比較して陰圧)を生成するために、これに対して適切な真空生成手段、具体的には吸引ポンプまたは吸引ブロワが割り当てられ、このとき、これらを介して、具体的には適切な切れ込みまたは隙間を介して真空コーティング室に好ましくは空気も吸い込まれる。この空気の吸い込みまたは吹き込みは、好ましくは含浸剤の最適な乱流/噴霧が発生し空気および液滴状の含浸剤の流体の流れがチャネル内を流れうる程度の高速で行われ、このとき、含浸剤は一周しかつ軸方向に連続してコーティングとして堆積することとなる。ハニカム複合材支持部は、例えばコンベヤーベルト、コンベヤーチェーン、または供給および/もしくは引っ張り手段等の適当な手段によって、好ましくは真空コーティング室内を案内されることが好ましい。
【0040】
ここで、真空コーティング室は、ハニカム複合材支持部を導入するまたは取り出すための導入口および導出口を有することが特に適切であり、このとき、好ましくは円周方向の隙間が、導入口の縁とセルロースのハニカム複合材支持部との間、導出口の縁とハニカム複合材支持部との間にそれぞれ形成され、これらを介して真空生成手段を用いて空気が吸い込まれる。分離手段を真空コーティング室の下流に設けて、液滴状の含浸剤を含有する吸い出された空気の流れから含浸剤を分離することが好ましく、具体的にはそれをバッフル板に対して向けるか、適切な拡大(断面拡大)によって流量を低下させるかによって行われる。分離された含浸剤はその後、具体的には少なくとも1つのノズルを介して、適当な送給ポンプを用いて真空コーティング室に供給し戻すことが可能である。
【0041】
本発明のさらなる効果、特徴、および詳細は以下の好ましい実施例の説明から、および図面を参照して得られる。以下に各図の内容を示す。
図面において、同様の構成要素、および同様の機能を有する構成要素は同一の参照符号によって識別される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】単一または複数の段ボール片によって形成可能な複数の接着段ボール層からなる多層ハニカム複合材支持部の一部分を示す平面図である。
図2A】コーティング装置、より正確にはコーティング装置の真空コーティング室の正面図である。
図2B図2Aにかかるコーティング室のA−A線に沿った断面図である。
図3】段ボール部の平面図であり、例としていくつかのチャネル(ただし、好ましくは全てのチャネル)に発泡スチロールボールの形態の充填材(ここでは、断熱材)が充填された様子である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1は、ハニカム複合材支持部1(ここでは、例えば段ボールハニカム体)の表面側の平面図を示す。図示される部分は4つの接着された層2からなり、このとき、各層2は、波形紙4に接着されて第1チャネル5を形成する、平らな台紙3によって形成される。これにより、第1チャネル5は波形紙4と台紙3とによって円周方向に区切られる。さらに、各層2は、図示される実施形態では、前述の波形紙4ともう1つの台紙、すなわち隣接する(平行な)層の台紙とによって区切られる第2チャネル6を備える。図示しない別の実施形態では、各層2は、波形紙を挟んで一体化した2つの台紙を備えることも可能である。この場合、第2チャネルは波形紙と同一の層の台紙とによって区切られる。
【0044】
図1からわかるように、層2は湾曲している。これは、例えばDE10305747A1に説明されるように、ハニカム複合材支持部1が、台紙3と波形紙4とからなる段ボール片を巻くことによって製作されたため、すなわち別個の層2が同じ段ボール片からなるために起こる。別の製造方法では、層2は、互いに重ねて接着された、段ボール片の別々の紙片によって形成される。例えば、図2Aおよび2Bを参照して説明される方法によって、含浸コーティングが設けられる複数の軸方向チャネル5,6を形成することが重要である。
【0045】
図2Aおよび2Bに、コーティング装置7をごく概略的に示す。これはコーティング室8を備えており、それを通過して、コーティング対象となるセルロースで作られるハニカム複合材支持部1が、具体的には矢印15の方向に移送される。水およびセメントをここでは主成分とする含浸剤13が、送給ポンプを備える供給手段9を用いてノズル配列10を介して真空コーティング室8内に供給される。含浸剤13はノズル配列10の少なくとも1つのノズル内を流れ、好ましくはここで噴霧される。好ましく噴霧された含浸剤13は、好ましくは真空コーティング室8内で(さらに)乱流にされる。このために、矢印のみで示される吸引手段11を用いて真空コーティング室8内で真空(陰圧)が生成され、これによりハニカム複合材支持部1を囲む隙間12を介して外部から高速で空気が確実に吸い込まれる。
【0046】
この吸い込まれた空気は、好ましくはノズルを通過して噴霧された含浸剤と合流することにより、極めて細かい霧状となり、空気含浸剤−液滴混合物の流体の流れが形成され、チャネル5,6内を具体的には真空コーティング室8の排出側14の方向に流れる(好ましくは吸引される)。必要であれば、ハニカム複合材支持部1用に導入側Eに設けられる隙間12および/または導出側Aに設けられる隙間をその断面において様々に構成することが可能であり、これにより、流量に影響を与えられるようにしたり、コーティング装置7をハニカム複合材支持部1の異なる形状に対して容易に適合させられるようにする。
【0047】
いずれの場合も、好ましくは霧状の、または空気−液滴混合物内に存在する含浸剤が真空コーティング室8内の全てのチャネル5,6に入り、含浸剤がそこで分離されることが必須であり、このとき、余分な含浸剤13が、吸引手段11を介して隙間12を通して吸い込まれた空気とともに排出され、好ましくはこの空気から分離される。含浸剤は、供給手段9を介して真空コーティング室8に、その後再び供給される。
【0048】
必要に応じて、充填材が前もって追加されていてもよく、具体的には真空コーティング室8内の含浸剤の流れの中に吹き込まれていてもよい。これは粒子、具体的にはボールの形態の断熱材および/または遮音材を含み、これらの粒子はチャネル5,6内、好ましくはチャネル5,6の長手方向の延在部の全体にわたって堆積することが特に好ましい。
【0049】
図3は、例として複数の第1および第2チャネル5,6を有するハニカム複合材支持部1を示しており、このとき、単なる例として、チャネル5,6の一部に、本明細書では発泡スチロールの形態のボール充填材16が充填され、このとき、全てのチャネル5,6に充填材、具体的には断熱材または遮音材が充填されることが当然ながら好ましい。
【符号の説明】
【0050】
1 ハニカム複合材支持部
2 層
3 台紙
4 波形紙
5 第1チャネル
6 第2チャネル
7 コーティング装置
8 真空コーティング室
9 供給手段
10 ノズル配列
11 吸引手段
12 隙間
13 含浸剤
14 空気および余分な含浸剤の排出側
15 矢印方向(移送方向)
16 充填材
A 導出側
E 導入側
図1
図2A
図2B
図3