【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は前述の従来技術とは異なり、紙や板紙等のセルロース/パルプで作られるハニカム複合材支持部(ハニカム複合材からなる構成要素、またはハニカム複合材を備える構成要素)を含浸槽に浸漬したり、接着前に段ボール片に噴霧して多層ハニカム複合材支持部を形成したりせずに、真空コーティング室内で含浸コーティングを塗布するという着想に基づいている。含浸剤と好ましくは空気とが真空コーティング室内に供給され、含浸剤が好ましくは全てのチャネルの内周面に堆積する。これにより、チャネルの長手方向への延在部に対して軸方向に連続し、かつ内周方向にクローズした(一周した)コーティングが得られる。真空(周囲圧力と比較して陰圧)が寄与することによって、確実に流体の含浸剤が、好ましくは内部に液滴状の含浸剤/霧状の含浸剤が存在する空気を含む流れとして軸方向チャネル内を流れて、内周面上に堆積する。
【0012】
これにより、細かい霧状のコーティング剤および空気の流れが真空コーティング室内に形成されてチャネル内を流れることが好ましく、このとき、含浸剤がチャネル内に堆積する。余分な含浸剤は真空コーティング室から排出され、具体的には、好ましく吸い込まれた空気とともに排出されるか吸い出される。本発明にかかる真空室内でのセルロースのハニカム複合材支持部のコーティングを用いることで、ハニカム複合材支持部の全てのセルロースの上層にクローズドコーティングを確実に設けることが初めて可能となる。真空コーティング室でのコーティングは、好ましく、水性の含浸剤を使用する場合でもセルロース材料のあらゆる軟化を防ぐ。これには好ましくはセメント−水混合物、すなわち、具体的にはマイクロセメントを含むセメント接着剤が含まれる。それに加えてまたは代えて、好ましくは無機懸濁液の使用が可能であり、これらは好ましくは水を含有するものである。
【0013】
ハニカム複合材支持部の上方にある少なくとも1つのノズルを介して真空室内に含浸剤を供給し、ハニカム複合材支持部の下方の領域で吸い出すようにして、含浸剤の流れ(好ましくは空気内の液滴状の含浸剤)を真空によってチャネルを介して吸い込むか引き出すことが特に適切である。
【0014】
入ってくる空気を用いて真空コーティング室内の含浸剤を渦巻かせて、細かい霧状のコーティング剤および空気の前述の流体の流れを形成することが特に好ましい。含浸剤を周囲から、すなわち外部から隙間を介して真空室内に吸い込むことが特に有利であることがわかった。真空コーティング室を通過させてハニカム複合材支持部をコーティングする連続搬送の場合、真空コーティング室に入るときおよび/または真空コーティング室から出るときに、ハニカム複合材支持部を囲む隙間を介して空気を吸い込むと有利であることがわかった。隙間を介して空気を吸い込むことによって高い空気流量を実現でき、結果的に良好な噴霧(乱流)をもたらすこととなる。
【0015】
真空室を使用するさらなる利点は、真空を用いることで間隙空気がセルロースから排出され、さらには含浸剤がコーティング対象となるセルロースのハニカム複合材支持部の全ての表面に強く付着することである。(真空を同時に生成するために)余分な含浸剤で満たされた空気の流れをコーティング中に真空コーティング室から吸い出すことが好ましく、このとき、含浸剤が、例えば空気の流れがバッフル板に接触して広がることによって堆積し、その後、具体的には真空コーティング室内に配置されたノズルを介して真空コーティング室に供給されることが特に好ましい。
【0016】
本発明にかかる方法は、水を含有する含浸剤を、特に好ましくはセメント、さらに好ましくはマイクロセメントである無機添加剤とともに使用することに特に適している。この方法によって、ハニカム複合材支持部の全てのチャネルに商業的にコーティングを行うことが初めて可能となる。
【0017】
ハニカム複合材支持部の構成に関しては様々な可能性がある。セルロース、具体的には紙または板紙のハニカム体を備えることは必須である。これは、例えば接着やいくつかの段ボール層の使用等、様々な種類のそれ自体周知の方法によって製作可能であり、あるいは、ハニカム複合材支持部はいわゆる拡張ハニカム体、すなわちハニカム素材を拡げてハニカム形状にする引き離しハニカム要素から製作される。このとき、原則として、ハニカム体の材料にクラフト紙、テスト紙、またはボーガス紙を使用することが適当である。
【0018】
方法の一実施形態として、軸方向チャネルの形態の複数のハニカムを有するセルロースのハニカム複合材支持部と、ハニカム複合材支持部にコーティングを施す真空コーティング室との間で相対移動を実現し、これは好ましくはチャネルの軸方向の延在部に対して垂直とすることが特に適切である。
【0019】
ここで、ハニカム複合材支持部を固定のコーティング装置に対して、具体的には真空コーティング室を通過して相対移動させることが特に好ましい。真空コーティング室への入口および真空コーティング室からの出口において小さな隙間が好ましくはハニカム複合材支持部の周囲に形成され、これを介して真空コーティング室内に空気を吸い込んで、具体的には、好ましくは噴射ノズルを介して導入される含浸剤が確実に極めて細かい霧状となるようにする。空気の吸い込みに加えてまたは代えて、噴霧の目的で真空コーティング室内に空気を吹き込むことも可能である。バッチ式による実行も可能であり、これによりハニカム複合材支持部を真空コーティング室を通過させて移送せずに、コーティング中にその内部に空気を入れる。この場合、空気を適切な、具体的には切り込みまたは隙間が形成された開口部を介して吸い込むことが可能である。
【0020】
基本的に、ハニカム複合材支持部とコーティング装置とを、好ましくは互いに反対の方向に相対移動させることもできる。
【0021】
ハニカム複合材支持部とコーティング装置との間で相対移動を実現することによって、商業上の利用可能性をさらに向上できる。これは、チャネルのいくつかの中を含浸剤の流れ(好ましくは空気+含浸剤)が流れるのと同時に、ハニカム複合材支持部がコーティング装置に対して、具体的には真空コーティング室を通過して相対移動することによる。結果的にハニカム複合材支持部の長さに制限がなくなる。ハニカム複合材支持部全体を受け取ると同時に全てのチャネルをコーティングする非常に大型の真空コーティング室を実現しなくとも(あるいは実現することも可能である)、コーティングを準連続的に遂行できる。
【0022】
陰圧を生成するために、真空室に対して吸引ポンプまたは吸引ファンを適切に割り当てて、周囲と比較して対応する圧力差を生じさせる。最初に述べたように、余分な、すなわち堆積していない含浸剤を、真空室に供給された、具体的には吸い込まれた空気とともに、この吸引手段を介して吸い出すことがここでは特に適切である。
【0023】
本発明を用いることで、引き離しハニカム要素(拡張ハニカム)、具体的には複数の段ボール片を互いに接着せずに作成されるクラフト紙、テスト紙、またはボーガス紙から製作されたハニカム複合材支持部に最適なコーティングを施すこともできる。
【0024】
余分な含浸剤、すなわち除去された、具体的には吸い出された含浸剤は循環して送給される、つまりチャネルに再び供給されてコーティングに用いられることが好ましく、このとき、除去側の含浸剤を収集容器に収集または供給し、その後、チャネルに供給するための送給ポンプを用いてそこから含浸剤を再び排出することが特に適切である。
【0025】
最初に示したように、含浸剤は、好ましくは水と混合されたセメント、具体的にはセメント混合物、好ましくはマイクロセメントおよび/または水ガラスおよび/または無機懸濁液の混合物、好ましくは水と例えばセメントや白亜等の無機結合剤との混合物を含むことが特に適切である。
【0026】
方法の変形例として、真空コーティング室でのコーティングと同時および/または含浸剤コーティングの後に、チャネルに充填材、具体的にはチャネルへの圧入および/または吹き込みおよび/または吸い込みが可能な断熱材を充填することが特に好ましい。この充填材は粒子の形態で存在し、好ましくは粒子サイズが2mm未満、好ましくは0.05mm〜2mmであることが好ましい。この充填材が含浸剤と混合されることによって含浸剤の流れの形態の混合物がコーティングの目的でチャネル内を送給可能となることが特に適切である。この断熱材としては、例えば発泡スチロールおよび/またはポリスチレンおよび/またはケイ酸で作られる、例えばミサポール(Misapor)および/または断熱パール等の発泡ガラスを使用でき、このとき、任意で好ましい粒子サイズ(大きさ)に細かく砕くことが可能な古い材料または屑材料をこの目的に用いることが特に適切である。(それに加えてまたは代えて)具体的には、膨張粘土やイトン(Ytong)等の軽量の構成材料を断熱材として用いることも可能である。前述の断熱充填材を用いることで、大幅により良好な断熱値が実現され、チャネルによって形成されたハニカム構造がさらに強化される。
【0027】
この方法の一変形例によれば、充填材および/または含浸剤と充填材との混合物を吸引しないことも可能であり、これに代えて、例えば充填材または含浸剤コーティング−充填材混合物を真空コーティング室の除去側で機械的に除去して、確実にチャネルが充填されたままにすることもできる。後にチャネルに充填材を充填する間、すなわち含浸剤コーティングの後、具体的には含浸剤コーティングの乾燥後に充填材を導入する間、ハニカム複合材支持部の片側、具体的には除去側を封止することが有利である。このためにハニカム複合材支持部に紙、厚紙、および/または板を被せることができる。
【0028】
含浸剤および断熱材からなる塊を、具体的には最上部に配置された供給側に供給し、それをチャネル内に任意で導入、具体的には、例えばポンプを用いておよび/または例えばドクターブレードを用いるなどして機械的に加圧下で圧入し、その後、具体的には陰圧を用いて余分な塊を除去側で除去する、具体的には抜き出すまたは排出することが特に適切である。
【0029】
ここで、充填材、具体的には断熱材をハニカム複合材支持部のチャネル内に設けることは、独立した発明として開示することが考慮されるべきであり、例えば分割出願によって権利の請求を可能とすべきであることが特に留意される。断熱材を追加して設けることで、一周しかつ軸方向に連続した含浸剤を、具体的には含浸剤がチャネル内を断熱材とともに流れることによって形成することが好ましい。しかしながら、含浸剤なしにまたは別の方法で断熱材を設ける、具体的には断熱材のみをチャネル内に導入することも可能である。
【0030】
本発明によってコーティングされたハニカム複合材支持部、具体的にはハニカム複合材支持部を介して間隔を空けた2つの被覆層を備えるサンドイッチ状構成要素を作成するためにコーティングされたハニカム複合材支持部には、少なくとも1つの被覆層を設けることが特に適切であり、このとき、被覆層は、例えば木材、板紙、発泡プラスチックまたは合板またはアルミニウム箔または紙または金属シートからなるものでもよい。この場合、被覆層の表面はチャネルの長手方向の延在部に対して垂直に延在する。
【0031】
ハニカム複合材支持部には、例えば異なった厚み(強度)および/または選択材料を有する、異なる被覆層が互いに反対方向を向いた両側に設けられることが特に好ましい。あるいは、同一の被覆層同士を用いることもできる。例えば、チャネル状のシート同士、鋼シート同士、ステンレス鋼シート同士、銅シート同士、亜鉛シート同士、アルミニウムシート同士を被覆層として用いたり、異なる合金同士での使用も考えられる。銅板同士を用いることもできる。
【0032】
本発明は、好ましくは本発明の概念によって実行される方法でコーティングされたハニカム複合材支持部にも及ぶ、このとき、全てのチャネルの内周上に、一周しかつ軸方向に連続した含浸コーティングが設けられることが特に好ましい。チャネルには充填材、具体的には断熱材が追加して設けられ、具体的には軸方向に連続して充填されることが特に適切である。
【0033】
ハニカム複合材支持部は、好ましくは段ボール片の複数の接着層からなるものでもよく、このとき、具体的にはハニカム複合材支持部の作成が段ボール片を巻くのと同時にそれ自体を接着して行われる場合に、これら複数の層は単一の片からなるものでもよいし、それから製作されるものでもよい。複数の段ボール層がチャネルの長手方向の延在部に対して垂直となるように実現されることが必須である。段ボール片を巻く代わりに、複数の段ボール片を平行な層状にして接着することも可能である。巻く方法は、例えばDE10305747A1に説明される。あるいは、ハニカム複合材支持部は拡張可能なハニカム要素からなる、すなわち拡張ハニカム要素として構成することも可能である。
【0034】
段ボール片、すなわち段ボール片から作られるハニカム複合材支持部の層は、第1および第2チャネルを備え、このとき、第1チャネルは、層の台紙とこの層の波形紙との間、すなわち、台紙と、この台紙に対向する波形紙の第1表面との間に形成される。第2チャネルは使用する段ボール片の種類によって、すなわち単一の波形紙に単一の台紙が接着される段ボール片であるか、波形紙が2つの台紙の間に挟まれる段ボール片であるかのいずれかによって、その層の波形紙と、隣接する層の台紙または同じ層の別の台紙のいずれかとの間、つまり、このような台紙と、波形紙においる第1表面と反対を向く第2表面との間に形成される。
【0035】
従来技術のように、接着前に段ボール片に対して外部から噴霧することでハニカム複合材支持部が形成される際の段ボール片の場合と同様に、波形紙と台紙との間では、波形紙が台紙に接着されるどの接合点にも含浸剤が存在しないことが好ましい。本発明にかかる方法では、仕上げられたチャネル内、すなわち接着済みのハニカム複合材支持部内で流れが発生するため、波形紙と台紙との間の接合領域には接着剤だけが存在することになる。
【0036】
前述のように、それぞれが1つの波形紙および少なくとも1つの台紙を備える段ボール片を互いに接着する代わりに、ハニカム複合材支持部をいわゆる拡張ハニカムとして形成できる。拡張ハニカムは、複数の段ボール片を重ねて作成されるハニカム体と比べて、極めて安価に製造される。
【0037】
既に示したように、充填材、具体的には断熱材または遮音材が、コーティングされたチャネル内に設けられることが特に適切であり、このとき、この断熱材または遮音材は、好ましくはチャネルの長手方向の延在部の少なくともほぼ全体にわたって設けられるべきであり、かつ当然ながら充填材の個別の隣接する粒子は、チャネルが長手方向に延在する方向に互いに間隔を空けて配置されうる。充填材は、真空コーティング室内において充填材を含有する含浸剤とともにチャネル内に導入されることが好ましい。
【0038】
ハニカム複合材支持部、具体的にはそれから製作される複合材材料は、気体および/または水蒸気を抑制するまたは通さないプラスチックまたは金属の薄膜を少なくとも1つ備えることが特に適切であり、このとき、このような薄膜でハニカム複合材支持部を包むことがさらに好ましい。チャネルの軸方向の少なくとも片側、さらに好ましくはチャネルの軸方向の両側を少なくとも1つのプラスチック薄膜および/または金属薄膜で封止することが好ましい。
【0039】
本発明は、コーティング装置、またはそれを用いてセルロースのハニカム複合材支持部をコーティングすることにも及ぶ。本発明にかかるコーティング装置は、含浸剤は供給するが、好ましくは必ずしも空気は供給しない真空コーティング室を特徴とする。真空コーティング室内に真空(周囲と比較して陰圧)を生成するために、これに対して適切な真空生成手段、具体的には吸引ポンプまたは吸引ブロワが割り当てられ、このとき、これらを介して、具体的には適切な切れ込みまたは隙間を介して真空コーティング室に好ましくは空気も吸い込まれる。この空気の吸い込みまたは吹き込みは、好ましくは含浸剤の最適な乱流/噴霧が発生し空気および液滴状の含浸剤の流体の流れがチャネル内を流れうる程度の高速で行われ、このとき、含浸剤は一周しかつ軸方向に連続してコーティングとして堆積することとなる。ハニカム複合材支持部は、例えばコンベヤーベルト、コンベヤーチェーン、または供給および/もしくは引っ張り手段等の適当な手段によって、好ましくは真空コーティング室内を案内されることが好ましい。
【0040】
ここで、真空コーティング室は、ハニカム複合材支持部を導入するまたは取り出すための導入口および導出口を有することが特に適切であり、このとき、好ましくは円周方向の隙間が、導入口の縁とセルロースのハニカム複合材支持部との間、導出口の縁とハニカム複合材支持部との間にそれぞれ形成され、これらを介して真空生成手段を用いて空気が吸い込まれる。分離手段を真空コーティング室の下流に設けて、液滴状の含浸剤を含有する吸い出された空気の流れから含浸剤を分離することが好ましく、具体的にはそれをバッフル板に対して向けるか、適切な拡大(断面拡大)によって流量を低下させるかによって行われる。分離された含浸剤はその後、具体的には少なくとも1つのノズルを介して、適当な送給ポンプを用いて真空コーティング室に供給し戻すことが可能である。
【0041】
本発明のさらなる効果、特徴、および詳細は以下の好ましい実施例の説明から、および図面を参照して得られる。以下に各図の内容を示す。
図面において、同様の構成要素、および同様の機能を有する構成要素は同一の参照符号によって識別される。