(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5937090
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】ポートを備えたベント可能な閉塞部材
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20160609BHJP
C12M 3/00 20060101ALI20160609BHJP
B01L 3/00 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
C12M1/00 D
C12M3/00 A
B01L3/00
【請求項の数】29
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-533974(P2013-533974)
(86)(22)【出願日】2011年10月12日
(65)【公表番号】特表2014-500709(P2014-500709A)
(43)【公表日】2014年1月16日
(86)【国際出願番号】US2011055975
(87)【国際公開番号】WO2012051307
(87)【国際公開日】20120419
【審査請求日】2014年10月9日
(31)【優先権主張番号】61/404,965
(32)【優先日】2010年10月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507170918
【氏名又は名称】ナルジェ・エヌユーエヌシー・インターナショナル・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・エム・ステイトン
【審査官】
田中 耕一郎
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2006/0283896(US,A1)
【文献】
特開平08−173146(JP,A)
【文献】
特表平11−506933(JP,A)
【文献】
特開2009−034078(JP,A)
【文献】
特開平06−201894(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0187409(US,A1)
【文献】
米国特許第04036386(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0136686(US,A1)
【文献】
米国特許第05353949(US,A)
【文献】
米国特許第05395006(US,A)
【文献】
米国特許第05398837(US,A)
【文献】
特開2002−355027(JP,A)
【文献】
特表2010−518879(JP,A)
【文献】
特開2002−323143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00−C12M 3/00
G01N 33/00−G01N 33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部チャンバとこの内部チャンバに対して流体連通した少なくとも1つの開口とを具備した実験器具デバイスのための閉塞部材であって、
前記閉塞部材が、
前記実験器具デバイスに対して取り付けられ得るよう構成されているとともに前記少なくとも1つの開口に対して流体連通し得るよう構成され、さらに、ベント領域を有した閉塞部材ボディと;
この閉塞部材ボディに対してこの閉塞部材ボディ内で上下方向に移動可能に取り付けられたベントバルブであるとともに、前記閉塞部材ボディとこのベントバルブとの間にスペースを形成し、このスペースが、前記閉塞部材ボディとこのベントバルブとの間の経路を形成し、この経路により、前記閉塞部材ボディの前記ベント領域を介して前記実験器具デバイスの前記内部チャンバと外部との間のガス交換が可能とされている、ベントバルブと;
前記スペース内に配置されたフィルタであるとともに、前記経路を通して前記内部チャンバへと流入するガスから汚染物質を濾過し得るよう構成されたフィルタと;
を具備していることを特徴とする閉塞部材。
【請求項2】
請求項1記載の閉塞部材において、
前記ベントバルブが、さらに、
前記ベントバルブを貫通して延在するポートと;
前記ベントバルブに対して着脱可能に連結されたプラグであるとともに、前記ベントバルブから選択的に取り外し可能とされ、この取外しによって、前記ポートを通しての前記内部チャンバに対しての流体連通を提供し得るものとされた、プラグと;
を備えていることを特徴とする閉塞部材。
【請求項3】
請求項1記載の閉塞部材において、
さらに、
前記閉塞部材ボディに対して付設された把持構造であるとともに、前記実験器具デバイスに対して前記閉塞部材ボディを取り付け得るよう構成された把持構造を具備していることを特徴とする閉塞部材。
【請求項4】
請求項3記載の閉塞部材において、
前記把持構造と前記閉塞部材ボディとが、一体構造として構成されていることを特徴とする閉塞部材。
【請求項5】
請求項1記載の閉塞部材において、
前記ベント領域が、前記スペースに対して連通した複数の開口を有していることを特徴とする閉塞部材。
【請求項6】
請求項5記載の閉塞部材において、
前記ベントバルブが、少なくとも1つのボスを備え、
前記ベント領域が、複数の位置を規定する形状を有し、
前記複数の位置の各々が、前記ベントバルブの前記少なくとも1つのボスと係合し得るような形状とされていることを特徴とする閉塞部材。
【請求項7】
請求項6記載の閉塞部材において、
前記複数の位置のうちの第1位置が、第1深さ方向寸法を有し、
前記複数の位置のうちの第2位置が、第2深さ方向寸法を有し、
前記複数の位置のうちの前記第2位置が、前記複数の位置のうちの前記第1位置に対して隣接しており、
前記第2深さ方向寸法が、前記第1深さ方向寸法とは異なるものとされていることを特徴とする閉塞部材。
【請求項8】
請求項5記載の閉塞部材において、
前記閉塞部材ボディが、さらに、
前記実験器具デバイスの外面に配置され得るよう構成された第1端部と;
前記実験器具デバイスの内面に配置され得るよう構成された第2端部と;
を備え、
前記ベント領域が、前記閉塞部材ボディの前記第1端部に配置されていることを特徴とする閉塞部材。
【請求項9】
請求項5記載の閉塞部材において、
前記閉塞部材ボディが、さらに、
外側の側壁と;
前記ベント領域を介して前記外側の側壁に対して連結された内側の側壁と;
を備えていることを特徴とする閉塞部材。
【請求項10】
請求項9記載の閉塞部材において、
前記ベントバルブが、このベントバルブの外表面上に少なくとも1つの凹所を備え、
前記閉塞部材ボディの前記内側の側壁が、さらに、少なくとも1つの内向きのタブを備え、
前記タブが、前記少なくとも1つの凹所によって受領され得るとともに、前記少なくとも1つの凹所内を移動し得るよう構成されていることを特徴とする閉塞部材。
【請求項11】
内部チャンバとこの内部チャンバに対して流体連通した少なくとも1つの開口とを具備した実験器具デバイスの前記開口をベントするための方法であって、
前記閉塞部材が、前記実験器具デバイスに対して取り付けられ得るよう構成されているとともに前記少なくとも1つの開口に対して流体連通し得るよう構成され、さらに、ベント領域を有した閉塞部材ボディと;この閉塞部材ボディに対してこの閉塞部材ボディ内で上下方向に移動可能に取り付けられたベントバルブと;を具備している場合に、
この方法においては、
前記閉塞部材ボディに対して上下方向に前記ベントバルブを移動させることにより、前記開口を選択的にかつ可変的にベントし、これにより、前記閉塞部材ボディの前記ベント領域を介して前記実験器具デバイスの前記内部チャンバと外部との間のガス交換を提供し;
前記開口をシールし、これにより、前記実験器具デバイスの前記内部チャンバと外部との間にわたっての流体連通を阻止する;
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11記載の方法において、
さらに、
前記開口を選択的にベントさせつつ、前記開口を貫通して延在するポートを開口させることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項11記載の方法において、
さらに、
前記開口をシールした後に、前記開口を貫通して延在するポートを開口させることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13記載の方法において、
さらに、
開口させた前記ポートを通して、前記実験器具デバイスに対しての流体の導入または前記実験器具デバイスからの流体の導出を行うことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項11記載の方法において、
前記選択的なベントに際しては、さらに、前記実験器具デバイスの前記内部チャンバと外部との間にわたって移動する流体を濾過することを特徴とする方法。
【請求項16】
内部チャンバとこの内部チャンバに対して流体連通した少なくとも1つの開口とを具備した実験器具デバイスの前記開口をベントするための方法であって、
前記閉塞部材が、前記実験器具デバイスに対して取り付けられ得るよう構成されているとともに前記少なくとも1つの開口に対して流体連通し得るよう構成され、さらに、ベント領域を有した閉塞部材ボディと;この閉塞部材ボディに対してこの閉塞部材ボディ内で上下方向に移動可能に取り付けられたベントバルブと;を具備している場合に、
この方法においては、
前記閉塞部材ボディに対して上下方向に前記ベントバルブを移動させることにより、前記開口を選択的にベントし、これにより、前記閉塞部材ボディの前記ベント領域を介して前記実験器具デバイスの前記内部チャンバと外部との間のガス交換を提供し;
前記開口を通して延在するポートを開口させる;
ことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16記載の方法において、
さらに、
開口させた前記ポートを通して、前記実験器具デバイスに対しての流体の導入または前記実験器具デバイスからの流体の導出を行うことを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17記載の方法において、
さらに、
前記ポートを閉塞し、これにより、前記ポートを通しての前記実験器具デバイスの前記内部チャンバと外部との間にわたっての流体連通を阻止することを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項16記載の方法において、
さらに、
前記開口をシールし、これにより、前記ポートを選択的に開口させた後に、前記実験器具デバイスの前記内部チャンバと外部との間にわたってのガス交換を阻止することを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項16記載の方法において、
さらに、
前記開口をシールし、これにより、前記ポートを選択的に開口させる前に、前記実験器具デバイスの前記内部チャンバと外部との間にわたってのガス交換を阻止することを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項16記載の方法において、
前記選択的なベントに際しては、さらに、前記実験器具デバイスの前記内部チャンバと外部との間にわたって移動する流体を濾過することを特徴とする方法。
【請求項22】
内部チャンバとこの内部チャンバに対して流体連通した少なくとも1つの開口とを具備した実験器具デバイスの前記開口をベントするための方法であって、
前記閉塞部材が、前記実験器具デバイスに対して取り付けられ得るよう構成されているとともに前記少なくとも1つの開口に対して流体連通し得るよう構成され、さらに、ベント領域を有した閉塞部材ボディと;この閉塞部材ボディに対してこの閉塞部材ボディ内で上下方向に移動可能に取り付けられたベントバルブと;を具備している場合に、
この方法においては、
前記閉塞部材ボディに対して上下方向に前記ベントバルブを移動させることにより、前記開口を選択的にベントし、これにより、前記閉塞部材ボディの前記ベント領域を介して前記実験器具デバイスの前記内部チャンバと外部との間のガス交換を提供し;
前記開口をシールし、これにより、前記実験器具デバイスの前記内部チャンバと外部との間にわたっての流体連通を阻止し;
前記開口を通して延在するポートを開口させる;
ことを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項22記載の方法において、
さらに、
開口させた前記ポートを通して、前記実験器具デバイスに対しての流体の導入または前記実験器具デバイスからの流体の導出を行うことを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項22記載の方法において、
さらに、
前記ポートを閉塞し、これにより、前記ポートを通しての前記実験器具デバイスの前記内部チャンバと外部との間にわたっての流体連通を阻止することを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項22記載の方法において、
さらに、
前記開口をシールし、これにより、前記ポートを選択的に開口させる前に、前記実験器具デバイスの前記内部チャンバと外部との間にわたってのガス交換を阻止することを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項22記載の方法において、
さらに、
前記開口をシールし、これにより、前記ポートを選択的に開口させた後に、前記実験器具デバイスの前記内部チャンバと外部との間にわたってのガス交換を阻止することを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項22記載の方法において、
前記選択的なベントに際しては、さらに、前記実験器具デバイスの前記内部チャンバと外部との間にわたって移動するガスを濾過することを特徴とする方法。
【請求項28】
内部チャンバとこの内部チャンバに対して流体連通した少なくとも1つの開口とを具備した実験器具デバイスのための閉塞部材であって、
前記閉塞部材が、
前記実験器具デバイスに対して取り付けられ得るよう構成されているとともに前記少なくとも1つの開口に対して流体連通し得るよう構成され、さらに、ベント領域を有した閉塞部材ボディと;
この閉塞部材ボディに対してこの閉塞部材ボディ内で上下方向に移動可能に取り付けられたベントバルブであるとともに、前記閉塞部材ボディとこのベントバルブとの間にスペースを形成し、このスペースが、前記閉塞部材ボディとこのベントバルブとの間の第1経路を形成し、この第1経路により、前記閉塞部材ボディの前記ベント領域を介して前記実験器具デバイスの前記内部チャンバと外部との間のガス交換が可能とされている、ベントバルブと;
前記スペース内に配置されたフィルタであるとともに、前記第1経路を通して前記内部チャンバへと流入するガスから汚染物質を濾過し得るよう構成されたフィルタと;
前記ベントバルブを貫通して延在する閉塞可能なポートであるとともに、前記内部チャンバに対して流体連通した第2経路を形成する閉塞可能なポートと;
を具備していることを特徴とする閉塞部材。
【請求項29】
請求項28記載の閉塞部材において、
前記閉塞可能なポートが、さらに、この閉塞可能なポートに対して着脱可能に連結されたキャップを備えていることを特徴とする閉塞部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2010年10月12日付けで出願された米国特許予備出願第61/404,965号明細書の優先権を主張するものである。この文献の記載内容は、参考のためここに組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般に、ポートプラグに関するものであり、より詳細には、細胞培養デバイスにおいてガス交換を可能とするポートプラグに関するものである。
【背景技術】
【0003】
細胞培養容器内のガス成分またはエアスペースと、細胞培養容器が格納されているガス環境と、の間の適切なガス交換は、一般に、細胞成長および/または機能を得るためには重要である。ガス交換は、細胞培養容器のポート開口内の閉塞部材も含めた様々な特徴物によって、行うことができる。閉塞部材は、ベント状態を有することができる。例えば、ベント状態においては、閉塞部材と容器との間に、スペースが形成される。これに代えて、閉塞部材は、ガス交換が可能であるようなガス透過性メンブランやフィルムやフィルタを含む領域を有することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】本明細書には、先行技術文献が記載されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ベント状態における従来の閉塞部材の使用時には、エア流通スペースを介した通過によって、細胞培養が、微生物汚染を受けてしまう。ガス透過性メンブランを含んだ領域を有した従来の閉塞部材は、微生物汚染から保護し得るものではあるけれども、例えば細胞培養の検査および/または操作のために細胞培養容器を成長環境から他の環境(例えば、層流フード内における雰囲気エア)へと移動させるような場合に、ガス交換を制限することができない。
【0006】
したがって、微生物汚染をリスクを低減しつつも、なおかつ、細胞培養容器に対しての流体連通のためのポートを開放する能力を維持しつつも、細胞培養容器を逆向きにベントし得る閉塞部材を有することが有利である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、微生物汚染を低減することによって、および、ポートの機能を増大させることによって、従来技術によるベント可能な細胞培養容器の上記問題点や他の欠点を克服する。本発明は、特定のいくつかの実施形態に関して説明されるけれども、本発明がそれら実施形態によって限定されるものではないことは、理解されるであろう。それよりもむしろ、本発明は、本発明の精神および範囲に属するすべての代替構成や修正構成や等価構成を含有するものである。
【0008】
本発明の一実施形態においては、内部チャンバとこの内部チャンバに対して流体連通した少なくとも1つの開口とを具備した実験器具デバイスのための閉塞部材が提供される。閉塞部材は、実験器具デバイスに対して取り付けられ得るよう構成されているとともに少なくとも1つの開口に対して流体連通し得るよう構成された閉塞部材ボディを具備している。ベントバルブが、この閉塞部材ボディに対して移動可能に取り付けられる。ベントバルブは、閉塞部材ボディと一緒にスペースを形成し、このスペースは、閉塞部材ボディとこのベントバルブとの間の経路を形成し、この経路により、実験器具デバイスの内部チャンバと外部との間のガス交換が可能とされる。フィルタが、スペース内に配置され、経路を通して内部チャンバへと流入するすべてのガスから汚染物質を濾過することができる。
【0009】
本発明の他の実施形態においては、実験器具デバイスの開口をベントするための方法が提供される。実験器具デバイスは、内部チャンバと、この内部チャンバに対して流体連通した少なくとも1つの開口と、開口内に配置された閉塞デバイスと、を具備している。この方法においては、開口を選択的にかつ可変的にベントし、これにより、実験器具デバイスの内部チャンバと外部との間のガス交換を提供する。開口をシールし、これにより、流体連通を阻止する。
【0010】
本発明のさらに他の実施形態においては、実験器具デバイスの開口をベントするための方法が提供される。実験器具デバイスは、内部チャンバと、この内部チャンバに対して流体連通した少なくとも1つの開口と、開口内に配置された閉塞デバイスと、を具備している。この方法においては、開口を選択的にベントし、これにより、実験器具デバイスの内部チャンバと外部との間のガス交換を提供する。開口を貫通して延在するポートを選択的に開口させ、開口させたポートを通して、実験器具デバイスに対しての流体の導入または実験器具デバイスからの流体の導出を行う。
【0011】
本発明の他の実施形態においては、実験器具デバイスの開口をベントするための方法が提供される。実験器具デバイスは、内部チャンバと、この内部チャンバに対して流体連通した少なくとも1つの開口と、開口内に配置された閉塞デバイスと、を具備している。この方法においては、開口を選択的にベントし、これにより、実験器具デバイスの内部チャンバと外部との間のガス交換を提供する。開口をシールし、これにより、流体連通を阻止する。開口を通して延在するポートを開口させ、これにより、開口させたポートを通して、実験器具デバイスに対しての流体の導入または実験器具デバイスからの流体の導出を行う。
【0012】
本発明のさらなる実施形態においては、内部チャンバとこの内部チャンバに対して流体連通した少なくとも1つの開口とを具備した実験器具デバイスのための閉塞部材が提供される。閉塞部材は、実験器具デバイスに対して取り付けられ得るよう構成されているとともに少なくとも1つの開口に対して流体連通し得るよう構成された閉塞部材ボディを具備している。ベントバルブが、この閉塞部材ボディに対して移動可能に取り付けられる。ベントバルブは、閉塞部材ボディと一緒に、スペースを形成し、このスペースは、閉塞部材ボディとこのベントバルブとの間の第1経路を形成し、この第1経路により、実験器具デバイスの内部チャンバと外部との間のガス交換が可能とされる。フィルタが、スペース内に配置され、第1経路を通して内部チャンバへと流入するガスから汚染物質を濾過することができる。閉塞可能なポートが、ベントバルブを貫通して延在するとともに、内部チャンバに対して流体連通した第2経路を形成する。
【0013】
本発明の上記の目的や他の目的や様々な利点は、添付図面によりおよびその説明により、明瞭となるであろう。
【0014】
添付図面は、本明細書の一部を構成するものであって、上記の一般的な説明と合わせて、また、以下の詳細な説明と合わせて、本発明の様々な実施形態を例示するものであり、本発明の原理を説明している。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態による、実験器具の開口のための閉塞部材を示す斜視図である。
【
図4】本発明の2つの実施形態による2つの閉塞部材を有した細胞培養ファクトリを示す斜視図である。
【
図5】
図1の5−5線に沿って閉塞部材を示す横断面図である。
【
図6】
図1の6−6線に沿って閉塞部材を示す横断面図である。
【
図7A】閉塞部材を示す斜視図であって、シール部が、ベント状態でもって横断面図で示されている。
【
図7B】閉塞部材を示す斜視図であって、シール部が、シール状態でもって横断面図で示されている。
【
図8A】閉塞部材を示す斜視図であって、シール部が、ベント状態でもって横断面図で示されており、ポートキャップが取り外されており、チューブがポートを通して挿入されようとしている。
【
図8B】閉塞部材を示す斜視図であって、シール部が、ベント状態でもって横断面図で示されており、チューブがポートを通して延在している。
【
図8C】閉塞部材を示す斜視図であって、シール部が、シール状態でもって横断面図で示されており、チューブがポートを通して延在している。
【
図9A】本発明の他の実施形態による閉塞部材を示す斜視図である。
【
図11A】本発明の他の実施形態において、閉塞部材を示す一連をなす複数の斜視図であり、閉塞部材の使用方法を示している。
【
図11B】本発明の他の実施形態において、閉塞部材を示す一連をなす複数の斜視図であり、閉塞部材の使用方法を示している。
【
図11C】本発明の他の実施形態において、閉塞部材を示す一連をなす複数の斜視図であり、閉塞部材の使用方法を示している。
【
図13A】本発明のさらに他の実施形態において、閉塞部材を示す一連をなす複数の斜視図であり、閉塞部材の使用方法を示している。
【
図13B】本発明のさらに他の実施形態において、閉塞部材を示す一連をなす複数の斜視図であり、閉塞部材の使用方法を示している。
【
図13C】本発明のさらに他の実施形態において、閉塞部材を示す一連をなす複数の斜視図であり、閉塞部材の使用方法を示している。
【
図15A】本発明の様々な実施形態による閉塞部材表面を示す斜視図である。
【
図15B】本発明の様々な実施形態による閉塞部材表面を示す斜視図である。
【
図15C】本発明の一実施形態による閉塞部材と一緒に使用するためのアダプタを示す斜視図である。
【
図15D】本発明の様々な実施形態による閉塞部材表面を示す斜視図である。
【
図15E】本発明の様々な実施形態による閉塞部材表面を示す斜視図である。
【
図15F】本発明の様々な実施形態による閉塞部材表面を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付図面には、特に
図1〜
図3には、本発明の一実施形態による閉塞部材10が図示されている。閉塞部材10は、一般に、閉塞部材ボディ12と、ベントバルブ14と、ポートキャップ16と、を備えている。
【0017】
閉塞部材ボディ12は、図示のように実質的に円筒形状のものとすることができ、外側の側壁18を備えることができる。側壁18は、把持構造22に対して係合することができる、および/または、容器20(
図4)の開口92(
図4)に対して直接的に接触することができる。把持構造22は、側方延在部分26を備えることができる。側方延在部分26は、閉塞チャンバまたは閉塞スペース25を規定する容器20に対しての閉塞部材10の挿入時または取外し時には閉塞部材10に対してのユーザーの把持に適合するような、構成および/または形状および/または肌目を有している。付加的には、把持構造22は、弾性材料から構成することができる、あるいは、弾性材料によってコーティングすることができる。これにより、ユーザーの使いやすさおよび快適性を増強することができる。さらに、把持構造22は、外表面28を有することができる。外表面28は、限定するものではないけれども、凹所(図示せず)や、少なくとも1つのネジ山(図示せず)や、リッジ(図示せず)や、リブ30、等を有することができる。これにより、容器20に対しての、シール係合や螺着係合や摩擦係合や他の嵌め合い係合を容易に行うことができる。
【0018】
これに代えて、あるいは、これに加えて、閉塞部材ボディ12の外側の外側18は、限定するものではないけれども、凹所(図示せず)や、少なくとも1つのネジ山(図示せず)や、リッジ(図示せず)や、リブ(図示せず)や、タブ32を有することができる。これにより、容器20に対しての閉塞部材10の係合を容易に行うことができる。
【0019】
閉塞部材ボディ12および把持構造22が、成型後に互いに組み付けられることとなる個別の成型部材として図示されているけれども、いくつかの実施形態においては、閉塞部材ボディ12を、把持構造22のうちの、例えばリブ30や側方延在部分26といったような特徴物を有するようにして成型し得ることは、容易に理解されるであろう。閉塞部材ボディ12と把持構造22とが個別的に成型されている実施形態においては、閉塞部材ボディ12の外側の側壁18は、キー付きのものとすることができる、および/または、表面特徴物(例えば、
図5に示すような「キー付き構造」24)を有することができる。これにより、把持構造22に適合して把持構造22を受領することができる。
【0020】
閉塞部材10は、任意の適切な実験器具容器において使用することができる。例えば、限定するものではないけれども積層トレイ90を備えたような任意のタイプの細胞培養容器において使用することができる。例示としての積層トレイ90は、例えば、市販されている NUNCLON Δ 表面細胞ファクトリシステム(デンマーク国 Roskilde 所在の Nunc A/S 社)や、本出願と同日付けで出願された CELL CULTURE DEVICE と題する米国特許出願(代理人番号 NAC-146US )に記載された積層細胞ファクトリを有することができる。この文献の記載内容は、参考のためここに組み込まれる。本発明の様々な実施形態は、例えば細胞培養トレイといったように細胞培養応用に関して例示して説明されているけれども、閉塞部材10を、例えばローラボトルやフラスコも含めた他の容器と一緒に使用し得ることは、理解されるであろう。
【0021】
大まかには、図示のように、容器20は、細胞培養デバイスとされており、細胞培養トレイ90a、90b、90c、90dからなる積層を有している。この場合、チャンバまたはスペース25と、容器20の外部と、の間のガス交換は、内部のチャンバまたはスペース25と流体連通した1つまたは複数のベント用ポート開口92を介して行われる。各トレイ90a、90b、90c、90dは、少なくとも1つの成長表面を備えている。最も底部のトレイ90aは、フロアとすることも、また、容器20の底部とすることも、できる。少なくとも1つの側壁94が、最も下側のトレイ90aの底部から上向きに延在している。積層中の頂部のトレイ90dは、頂部のカバーとして機能することができる。あるいは、これに代えて、個別のカバー部材(図示せず)を使用することができる。この特別の実施形態においては、頂部のトレイ90dは、1つまたは複数のベント用ポート開口92,92’を備えている。ベント用ポート開口の各々は、本発明の1つまたは複数の実施形態による閉塞部材10,10’を受領している。いくつかの実施形態においては、ポート開口92は、注ぎ口96を有することができる。
【0022】
閉塞部材ボディ12の細部について説明すると、閉塞部材ボディ12は、内側の側壁34を有することができる。内側の側壁34は、外側の側壁18と一緒に上向きに延在しているとともに、ベント領域またはベント表面36(「ベント表面」36)のところにおいて、外側の側壁18に対して連結されている。ベント表面36は、実質的に水平方向とすることができる、すなわち、内側の側壁34および外側の側壁18に対して直交したものとすることができる。ベント表面36は、例示の実施形態においては、複数の開口38を有することができる。複数の開口38は、詳細に後述するように、閉塞部材10が容器20の開口内に配置されたときには、容器20の外部と内部との間のエア交換を可能とすることができる。
【0023】
図示されていないけれども、閉塞部材10の滅菌性を維持するために、ベント表面36は、ベントカバー37(
図9)を有することができる。ベントカバー37は、例えば、取外し可能な脆性を有した引き裂きストリップを有することができる、あるいは、取外し不可能な回転カバーを有することができる。ベントカバーは、第1位置においては、ベント開口38をカバーしてガス交換を阻止し、第2位置においては、ベント開口38を開放してガス交換を可能とする。
【0024】
図3においては、複数の開口38の各々が、より詳細に示されており、内側の側壁34に対して隣接した内側の外側エッジ40と、外側の側壁18に対して隣接した外側の側壁エッジ42と、を有している。内側の側壁エッジ40は、上面44から下向きに延在した波形形状のものとすることができる。波形形状のエッジは、深さ方向の寸法を、上面44と波形形状エッジとの間の鉛直方向において、例えば曲率半径に大小を持たせることによって、変えることができる。より詳細には、複数の開口38の各々は、深さ方向寸法を有した波形の内側の側壁エッジ40を有している。深さ方向寸法は、隣接する開口38どうしの間において互いに異なるものとすることができる。これに加えて、必須ではないけれども、複数の開口38のうちの1つの開口38の深さ方向寸法は、径方向反対側に位置した開口38の深さ方向寸法と同様のものとすることができる。他の態様においては、開口の波形形状エッジは、それぞれに異なる深さ方向寸法を有することができ、閉塞部材10の長手方向中心軸線46に関して、対称性を有したものとも、また、対称性を有していないものとも、することができる。
【0025】
図1〜
図3に示すように、開口38の対称的な波形形状エッジ40は、ベントバルブ14と連係して、閉塞部材10を、シール状態から少なくとも1つのベント状態へと移行させる。この場合、閉塞部材10は、ベント状態の1つにおいては、容器20の外部と内部との間のエア交換を可能とする。シール状態と複数のベント状態のうちの1つのベント状態との間にわたっての閉塞部材10の移行方法については、詳細に後述する。
【0026】
図3に示すように、フィルタ50を、閉塞部材ボディ12の内部に配置して保持することができる。フィルタにより、容器20の外部から容器20の内部への閉塞部材10を通しての微生物の通過を低減することができるあるいは阻止することができる。フィルタ50は、ガス透過性メンブランを備えることができる、あるいは、フィルタ50は、例えば酸素や二酸化炭素といったような少なくとも1つのガスの交換を可能とする任意の適切な材料から形成することができる。適切な材料には、限定するものではないけれども、ポリエチレンや、ポリテトラフルオロエチレンや、ニトロセルロースや、ポリサルホンや、ポリ塩化ビニル、がある。多孔性のフィルタである場合には、フィルタ50のポアは、好ましくは、バクテリアおよび/または菌類の通過を阻止し得るサイズとされる。
【0027】
図1〜
図3を参照して、ベントバルブ14とポートキャップ16とに関する例示としての実施形態の細部について、説明する。ベントバルブ14は、熱可塑性材料を使用して成型することができる。熱可塑性材料は、限定するものではないけれども、ポリエチレンや、ポリプロピレンや、ポリ塩化ビニルや、アクリロニトリル−ブタジエンスチレンや、ポリスチレン、とすることができる。ベントバルブ14は、中空の直立部分52(実質的に円筒形のものとすることができる)を備えている。ベントバルブ14は、さらに、直立部分52から径方向に張り出している平坦ベース54を備えている。平坦ベース54は、さらに、環状凹所56を有している。環状凹所56は、外壁60を有した環状リッジ58によって、取り囲まれている。外壁60は、径方向において下向きにかつ外向きに傾斜している。よって、ベントバルブ14が閉塞部材ボディ12内において同軸的に配置された場合には、閉塞部材ボディ12の外側の側壁18が、外壁60に対して近接することができるおよび/または外壁60に対して係合することができる。これにより、第1シールを形成する。いくつかの実施形態においては、閉塞部材ボディ12の内側の側壁34が、環状凹所56に対して係合することができ、これにより、第2シールを形成する。しかしながら、他の実施形態においては、内側の側壁34は、環状凹所56に対して係合する1つまたは複数のリブを有することができる。さらに他の実施形態においては、内側の側壁34は、環状凹所56に対して係合する必要はない。
【0028】
ベントバルブ14は、さらに、直立部分52の上エッジ64の近傍に配置された少なくとも1つのボス(径方向反対側に位置した2つのボス62が図示されている)を備えている。ボス62の各々は、波形形状エッジ40の曲率半径に対して実質的に適合しておりそのため波形形状エッジ40の曲率半径内に受領される外表面を有することができる。波形形状エッジ40に対してのボス62の(深さ方向寸法に関する)配置は、詳細に後述するように、閉塞部材10がベント状態となるかあるいはシール状態となるかを決定する。
【0029】
ボス62は、上エッジ64がポートキャップ16を受領し得るよう、ベントバルブ14の上エッジ64から十分な距離だけ離間されている。ポートキャップ16は、限定するものではないけれども、円形のものや、
図9に示すようにドーム状のものや、
図3に示すように把持リブ66付きのフラットなもの、といったような様々な任意の形状で形成することができる。ポートキャップ16は、ベントバルブ14を通して延在している管腔または穴またはポート68を閉塞する。ポートキャップ16は、ベントバルブ14から取り外し可能とすることができる。これにより、詳細に後述するように、容器20の外部と内部との間にわたっての流体連通を提供することができる。他の態様においては、流体連通が要望されていない場合や必要でない場合には、ポートキャップ16は、ベントバルブ14に対して恒久的に固定することができる。
【0030】
図3,5,6を参照して、閉塞部材10の組付について、詳細に説明する。ベントバルブ14は、ベントバルブ14の外面70が閉塞部材ボディ12の内側の側壁34に対して近接して配置されるようにして、閉塞部材ボディ12の中に配置することができる。したがって、環状リッジ58は、閉塞部材ボディ12の内側の側壁34と外側の側壁18との間に設けられた連通容積72内に、少なくとも部分的に、位置することができる。フィルタ50は、複数の開口38の近傍において、閉塞部材ボディ12の連通容積72内に配置される。しかしながら、フィルタ50の位置は、この特定の態様に限定されるものではない。
【0031】
したがって、
図7Aおよび
図7Bに示すように、ベントバルブ14が閉塞部材ボディ12内に配置された状態では、ボス62は、ベント表面36に沿って位置することができる。より詳細には、ボス62は、開口38の波形形状エッジ40のいずれか1つのエッジ内に位置することができる。より詳細には、図示のように、ベント表面36には、10個の開口38が設けられている、あるいはむしろ、2組をなす5個の開口38が設けられている。各組の1つの開口38は、最大の深さ方向寸法を有しており、これにより、波形形状の内壁エッジ40によってほぼ完全に受領されて、波形形状の内壁エッジ40内に留まる。ボス62がこの位置とされたとき(すなわち、完全なベント状態)には、ベントバルブ14は、閉塞部材ボディ12内において閉塞部材ボディ12に対して下位置に位置しており、平坦ベース54の外壁60は、閉塞部材ボディ12の外側の側壁18から離間している。したがって、いくらかのガスが、複数の開口38を通して閉塞部材ボディ12内へと流入しフィルタ50を通過し連通容積72を通って移動しそして外側の側壁18と平坦ベース54の外壁60との間の間隙を通って閉塞部材ボディ12から流出することにより、閉塞部材10を通して交換することができる。同様に、ガスは、これとは逆向きに移動することもできる。
【0032】
ポートキャップ16付きのベントバルブ14は、閉塞部材ボディ12に対して、長手方向中心軸線46まわりに、回転させることができる。これにより、ベントバルブ14のボス62が、複数の開口38のうちの隣接する開口の波形形状エッジ40へと順次的に移動する。また、特定の実施形態においては、反時計回りにおけるベントバルブ14の回転(矢印74によって示されている)により、ボス62は、より小さな深さ方向寸法を有した波形形状エッジ40内に位置することとなる。深さ方向寸法が減少することにより、ベントバルブ14は、閉塞部材ボディ12に対して上向きに案内され(矢印76によって示されている)、ベントバルブ14の平坦ベース54の外壁60は、閉塞部材ボディ12の外側の側壁18に対してより近接するようになる(すなわち、部分的なベント状態)。その結果、ガス交換の量を低減させることができる。他の態様においては、閉塞部材10は、選択的にベントし得るだけでなく、可変的にベントすることもできる。フルベント状態とシール状態とに限定される必要がない。シール状態については、詳細に後述する。
【0033】
閉塞部材ボディ12に対してのベントバルブ14のさらなる回転時には、ボス62は、最も小さな深さ方向寸法を有した内壁エッジ40を備えた開口38へと移動する。すなわち、図示のように、外壁エッジ42と実質的に同一平面上に位置した内壁エッジ40を備えた開口38へと移動する。この位置(シール状態)においては、ベントバルブ14は、閉塞部材ボディ12に対しての上方位置へと案内される。この位置においては、ベントバルブ14の平坦ベース54の外壁60は、閉塞部材ボディ12の外側の側壁18に対して隣接して位置し、閉塞部材ボディ12の外側の側壁18に対してシールを形成する。その結果、所望に応じて(例えば、制御された環境から、容器20(
図4)を移動させる場合)、ガス交換を一時的に終了させることができる。
【0034】
図8A〜
図8Cには、本発明の他の実施形態による閉塞部材10を使用した方法が図示されている。
図8Aに示すように、ポートキャップ16(
図1)は、ベントバルブ14から取り外される。これにより、ポートが開放され、容器20(
図4)の内外にわたっての流体連通が可能となる。これにより、チューブ78や、アダプタ170(
図15C)、等を、ベントバルブ14内へと挿入することができる。これにより、例えば細胞培養媒体や添加剤や細胞といったような流体の交換を行うことができる。より詳細には、滅菌細胞培養媒体供給源(図示せず)に対して接続された滅菌チューブ78を、
図8Bに示すように(矢印80によって図示されている)、ベントバルブ14のポート68内へと案内することができる。
【0035】
チューブ78を完全に挿入した状態で、ベントバルブ14と組み合わされたチューブ78を、ベントバルブ14およびポートキャップ16に関して上述したのと同様にして、操作することができる。すなわち、ベントバルブ14と組み合わされたチューブ78を、回転させることにより(矢印82によって示されている)、ベントバルブ14の平坦ベース54の外壁60を、閉塞部材ボディ12の外側の側壁18に対して、ベント状態および/またはシール状態とすることができる(矢印84によって示されている)。これに加えて、閉塞部材10は、チューブ78付きのベントバルブ14をさらに回転させることにより、ベントし得るとともに(完全なベント状態あるいは部分的なベント状態)、容器20内へと細胞培養媒体および/または添加剤を導入することができる。図示していないけれども、チューブ78をベントバルブ14から引き抜くことができ、ポートキャップ16を取り付けることができる。
【0036】
したがって、
図1〜
図8Cの閉塞部材10は、ガス交換のために、1つまたは複数のベント状態と、シール状態と、を可逆的に提供することができ、また、流体連通のために開放ポートを可逆的に提供することができる。
【0037】
図9および
図10には、本発明の他の実施形態による閉塞部材100が図示されている。閉塞部材100は、閉塞部材ボディ102と、この閉塞部材ボディ102に対して固定された把持構造104と、を備えている。把持構造104は、上述したのと同様に、閉塞部材100の取扱いを容易とし得るよう、側方延在部分106と、肌目(あるいは、凹凸)を有した外表面108と、を備えることができる。この場合にも、図示していないものの、把持構造104は、閉塞部材ボディ102を有した一体構造として成型することもできる。
【0038】
閉塞部材ボディ102は、この場合にも、外側の側壁110を備えることができる。外側の側壁110は、容器20(
図4)の開口92(
図4)に対して流体密封的シールを形成し得るよう構成された少なくとも1つの外側ネジ山112を有している。上述したように、外側ネジ山112は、リブ30(
図1)や流体密封シールを形成するための他の構造によって、代替することができる。閉塞部材ボディ102は、さらに、ベント領域すなわちベント表面114(「ベント表面」114)と、内側の側壁116と、を備えている。ここで、ベント表面114は、ベント表面114が使用の待ち受け状態となるまで閉塞部材100の滅菌性を維持し得るよう構成されたベントカバー37を備えている。
【0039】
ベント表面114は、上述したのと同様に、複数の開口118を備えることができる。複数の開口118は、連通容積120を通しての容器20(
図4)の内外にわたってのガス交換を提供することができる。ベント表面114は、フィルタ50(
図3)や微生物の通過を低減または阻止するための他の構造を備えることができる。フィルタの一例は、0.2μm〜0.45μmというサイズのポアを有することができる。これにより、特にエアに乗って運ばれるようなバクテリアや菌類といったような少なくとも大部分の微生物の通過を阻止することができる。
【0040】
図9および
図10に図示された閉塞部材100のベントバルブ122は、
図1のベントバルブ14と同様の形状のものとすることができる。しかしながら、この実施形態においては、ベントバルブ122は、プラグ126を介してポートキャップ124に対して動作可能に連結されている。この点において、ポートキャップ124は、ベントバルブ122の上エッジ128に対して連結されている。上エッジ128は、ベントバルブ122の平坦ベース130とは反対側に位置している。よって、プラグ126およびポートキャップ124は、上述したように、チューブ78(
図7A)やアダプタ170(
図15C)の挿入前には、閉塞部材100から取り外される。
【0041】
ベントバルブ122に話を戻すと、ベントバルブ122は、1つまたは複数の凹所表面132を備えることができる。凹所表面132は、閉塞部材ボディ102の内側の側壁116上に形成された1つまたは複数のタブまたはラグ134を受領することができる。いくつかの実施形態においては、凹所表面132は、少なくとも1つのネジ山を備えることができる。これにより、ベントバルブ122は、ラグ134に対しておよび閉塞部材ボディ102に対して螺着し得るとともに、ラグ134に対しておよび閉塞部材ボディ102に対して移動することができる。他の実施形態においては、図示の実施形態のように、凹所表面132は、実質的にL字形状を有することができる。この点において、凹所表面132は、第1端部132aおよび第2端部132bを有した実質的な水平方向部分と、第2端部132bから第3端部132cまでにわたって延在する実質的な鉛直方向部分と、を有することができる。よって、ラグ134が水平方向部分の第1端部132aに位置している時には、閉塞部材ボディ102に対しての、ベントバルブ122の鉛直方向位置が、実質的に固定される。その後、ベントバルブ122を回転させることができる。これにより、ラグ134は、水平方向部分の第2端部132aを経由して、第3端部132cへと上向きに案内されることができる。ベントバルブ122を上向きに移動させることにより、平坦ベース130の外壁136は、閉塞部材ボディ102の外側の側壁110に対して係合してシールを形成することができる。さらに、内側の側壁116は、上述したように、シール状態のために、ベントバルブ122と平坦ベース130の環状リッジ140との間において環状凹所138内に位置することができる。ベントバルブ122を逆向きに移動させることにより、閉塞部材100をベント状態に移行させることができる。
【0042】
図11A〜
図11Cおよび
図12A〜
図12Cは、
図9Aのデバイス100と同様であるような、閉塞部材150のさらに他の実施形態を示している。
図11A〜
図11Cおよび
図12A〜
図12Cにおいては、同様の部材には同じ符号が付されている。
図11A〜
図11Cおよび
図12A〜
図12Cは、容器20(
図4)に対しての開放ポートとしての閉塞部材150の使用方法を示している。閉塞部材150は、タブ付きポートキャップ152を備えている。タブ付きポートキャップ152は、閉塞部材150に対して回転させることができ、閉塞部材150から取り外すことができる。
図11Aおよび
図12Aにおいては、ベントバルブ122は、ベント状態とされており、タブ付きポートキャップ152は、下位置において固定されている。しかしながら、ベントカバー37は、ベント表面114上に留まっており、これにより、容器20(
図4)の内外にわたってのガス交換は起こらない。
図11Bおよび
図12Bにおいては、タブ付きポートキャップ152は、回転されていて、上向きに引き上げられている。これにより、ベントバルブ122の平坦ベース130を、閉塞部材ボディ102の外側の側壁110に向けて案内することができ、閉塞部材150をシール状態とすることができる。
図11Cおよび
図12Cにおいては、ポートは、ポートキャップ152を取り外すことによって、開口している。ベント112は、シール状態とされている。
【0043】
図13A〜
図13Cおよび
図14A〜
図14Cは、
図11A〜
図11Cおよび
図12A〜
図12Cと同様であるものの、ポートのベントと開口との双方を行うための方法を示している。したがって、
図13Aおよび
図14Aにおいては、ベントバルブ122をベント状態に維持しつつなおかつタブ付きポートキャップ152を下位置に固定しつつも、閉塞部材150のベント表面114は、ベントカバー37(
図11A)を取り外すことによって、開放される。
図13Bおよび
図14Bにおいては、タブ付きポートキャップ152が回転され、上向きに引き上げられる。これにより、ベントバルブ122の平坦ベース130を、閉塞部材ボディ102の外側の側壁110に向けて案内することができ、閉塞部材150をシール状態とすることができる。
図13Cおよび
図14Cにおいては、ポートは、ポートキャップ152を取り外すことによって、開口される。ベント112は、シール状態とされている。
【0044】
図15A〜
図15Fは、本発明の追加的な実施形態による様々な閉塞表面を示している。
図15Aにおいては、本発明の一実施形態による閉塞表面160は、シールされたポート164の周囲に同心的に形成された複数の開口を有したベント表面162を備えている。したがって、流体ポートは、閉塞表面160が取り外された時にのみ、利用可能である。
【0045】
図15Bは、本発明の他の実施形態による閉塞表面166を示している。この閉塞表面166には、ベント表面が設けられていない(すなわち、開口が設けられていない)。しかしながら、閉塞表面166は、上向きに延在しているポート168を有している。したがって、ポートを、閉塞表面166内において回転させつつも、ベントを行うことはできない。
【0046】
図15Cは、本発明の一実施形態による開口ポートを有した閉塞表面と一緒に使用するためのアダプタ170の一例を示している。アダプタ170は、開口したポート内に挿入することができ、上述したように流体の導入や導出のためにチューブ78(
図7A)を受領することができる。
【0047】
図15Dは、本発明の一実施形態による閉塞表面172を示している。この閉塞表面172は、
図15Bの閉塞表面166と同様のものとされている。しかしながら、
図15Dにおいては、ポート174は、閉塞表面166から上向きに延在することに代えて、閉塞表面174に対して面一とされている。
【0048】
図15Eは、本発明のさらに他の実施形態による閉塞表面176を示している。この閉塞表面176は、複数の開口を有したベント表面177を備えているとともに、上向きに延在するポート178を備えている。ポートキャップ16,124(
図1,
図8)を設けることに代えて、ポート178は、蓋180によって閉塞することができる。蓋180は、着脱可能なものとすることも、また、ポート178に対して恒久的に固定されたものとも、することができる。
【0049】
図15Fは、本発明の一実施形態による閉塞表面182を示している。閉塞表面182は、外側の側壁18(
図5A)を内側の側壁34(
図5A)に対して連結する中実表面を備えている。ベントは、閉塞表面182を取り外すことによって、行うことができる。
【0050】
本発明につき、様々な実施形態に関して例示して説明したけれども、また、それら実施形態に関して詳細に説明したけれども、特許請求の範囲を、それら実施形態やそれらの詳細へと限定することは、意図されていない。当業者には、追加的な利点や修正点が明らかであろう。本発明の様々な特徴点は、ユーザーの好みに応じて、単独でも、あるいは、任意の組合せでも、使用することができる。本発明について、また、本発明の実施方法について、説明した。しかしながら、本発明自体は、特許請求の範囲によって規定される。
【符号の説明】
【0051】
10 閉塞部材
12 閉塞部材ボディ
14 ベントバルブ
20 実験器具デバイス
25 内部チャンバ
50 フィルタ
72 スペース
92 開口
100 閉塞部材
102 閉塞部材ボディ
120 スペース
122 ベントバルブ
150 閉塞部材