【課題を解決するための手段】
【0032】
この目的は、一組のナノメートルサイズの無機粒子を円形又は略円形形状の内壁表面を有する容器に添加する段階と、前記容器を通る回転軸に対して前記容器を回転させることによって前記一組の粒子を前記内壁表面に沿って動かす段階と、を含み、前記粒子を動かす段階を乾燥状態で行い、前記容器を数時間連続で一定速度で継続的に回転する、ナノメートルサイズの無機粒子の凝集によるマイクロメートル又はミリメートルサイズの無機顆粒の形成方法を用いて達成される。
【0033】
本発明による造粒方法における造粒は、乾式状態で行われ、すなわち粒子状態から顆粒状態への変更が何らの保湿剤(液体又は蒸気)又は何らの他の有機結合剤の添加なしに行われる。
【0034】
容器が回転しているとき、粒子は、容器の内壁表面及びこの壁の“ロール”に対して動く。
【0035】
容器の理想的な回転速度は、粒子が容器壁の内表面に満足のいくように転がるようなものである。
【0036】
全ての粒子が容器壁の内表面に沿って移動するものである場合、当業者に明らかなように、容器が当然ながら回転しなければならないが、湿式造粒の場合のように、回転速度はまた、臨界速度(それは、後に詳細な説明において更に検討される)未満でなければならないことに留意すべきである。この臨界速度は、しばしば容器に加えられる粒子の性質(それらの組成)に依存し、従って実験的に決定しなければならない。
【0037】
この臨界速度を上回って、粒子に作用する遠心力は、内壁表面に沿って粒子を移動することを可能にするために非常に高い。
【0038】
好ましくは、この臨界速度より若干低い範囲内の速度はまた、避けられるだろう(当業者が決定することができるだろう速度範囲)。この粒子は、内壁表面に沿って移動するが、必ずしも“組”を形成する必要はない。いくつかの粒子が、その組から分離し、落下する傾向があり、それによって他の粒子を分散し、粒子の組の移動を妨害するからである。
【0039】
好ましくは、停止したときに粒子の組が得られるような形態と比較して容器壁の内表面に沿って拡散することによって粒子の組が移動するように、容器の回転速度は選択される。
【0040】
好ましくは、粒子の組が容器壁の内表面に沿って拡散するように、回転速度は選択され、粒子及び壁の間の摩擦力、並びに、他の粒子及び重力を用いた摩擦力は、粒子に加えられる遠心力よりも大きいようなものである。
【0041】
有利には、容器が依然として回転しているけれども、容器の回転速度は、粒子の組がもはや内壁表面に沿って動くことができなくなる回転速度に相当する臨界速度の25から40%である。臨界速度において、粒子の組は、もはや容器壁の内表面上に滑らないが、それと共にそれぞれが共に回転する。
【0042】
前述の説明及び以下の説明において、粒子に対して適用される“サイズ”という用語が、これらの粒子の最大寸法を意味し、粒子に対して適用される“ナノメートル”という用語が、サイズが100ナノメートル未満であることを意味し、粒子に対して適用される“マイクロメートル”という用語が、サイズが1マイクロメートルから1ミリメートル(1ミリメートルを含まない)であることを意味し、粒子に対して適用される“ミリメートル”という用語が、サイズが1ミリメートルから10ミリメートルであることを意味することに留意すべきである。
【0043】
以下の手順は、初期の粒子(未処理のパウダー)のサイズを決定するために使用することができる。第1に、粒子(又は顆粒)の比表面積は、粒子の表面積/重量比(単位:m
2/g
−1)を与えるBET(Brunauer、Emmet及びTelier)法を用いて測定される。次いで、パウダー粒子の密度は、体積あたりの粒子重量を与えるヘリウム比重瓶法を用いて測定した。ヘリウム比重瓶法によって、周知の質量を有する試料の体積の非常に正確な測定装置を用いて、分割された又は多孔性の固体材料の密度を決定する。最後に、平均粒径は、各々の粒子が球状であると仮定して計算する。
【0044】
好ましくは、粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)観察によって決定する。
【0045】
好ましくは、容器の回転軸は、内壁表面の円形又は略円形の断面の中心に位置する。
【0046】
選択された容器は、この内壁表面が粒子磨耗に対抗する材料で作られるという条件で、円形又は略円形の内壁表面を有する何れかの容器であり得る。
【0047】
従って、有利には、容器は、金属、ガラス、セラミック又はポリマーで作られ得る。
【0048】
有利には、容器は、内容積が球形又は円筒形状である何らかの容器であり得る。
【0049】
容器は、化学実験室で頻繁に使用されるタイプのガラスの丸底フラスコ(例えば、Quickfit(商標)フラスコ)、又は、例えば円筒缶であるシリンダーであり得る。
【0050】
容器は、好ましくは密閉され、それによって容器から予想外の粒子の飛び出しを避ける。また、それはまた、好ましくは漏れないものである。
【0051】
種々の実施形態において、容器の回転軸は、水平から傾いていてもよい。そのため、それは、水平に対して0を超え、90°以下の角度で傾いていてもよく、傾斜角度は、好ましくは80°未満である。
【0052】
容器が、回転軸に対して対象物を回転させることができる周知の技術手段で回転され得ることに留意すべきである。例えば、それは、容器が配置されたロールミキサー(容器が円筒形状又は球形状である)又は容器に固定された回転子などであり得る。
【0053】
本発明による造粒方法の利点の1つは、それが、例えば回転ドラム装置(造粒ドラム)又は回転プレート装置(回転皿)などの、湿式造粒に通常使用される装置で使用され得るということである。
【0054】
この場合、粒子が装置に加えられた後に、装置の入口及び出口を封鎖することを考慮に入れることが望ましい。例えば、回転皿に関して、粒子が逃げるのを防止するために皿の上で蓋が使用され得る。
【0055】
同様に、枠が設けられる平板で構成される回転皿の場合、皿の板は、垂直に対して傾いている。全ての粒子が枠上で動け、この場合の枠が、円形又は略円形の断面を有する内壁表面を形成するようなものである。
【0056】
一方、皿の底が球形状である場合、皿を傾ける必要はない。
【0057】
さらに、湿式造粒工程に関して、容器を粒子で過剰充填することを避けることが重要である。好ましくは、容器の内容積は、容器に添加される全ての粒子の体積の少なくとも5倍を超える。
【0058】
有利には、容器に添加される粒子は、無機材料で作られる。
【0059】
有利には、無機材料は、酸化物、金属又は炭化物であり得る。無機材料は、酸化チタン、酸化シリコン、酸化アルミニウム、炭化シリコン又は炭化チタンであり得る。
【0060】
本発明による造粒方法は、特に関心のあるマイクロメートル又はミリメートルサイズの顆粒を得るために使用され得る。
【0061】
従って、本発明はまた、マイクロメートル又はミリメートルの無機材料の顆粒であって、それがこの無機材料のナノメートルの粒子のみから構成され、それらの粒子が互いに凝集されている顆粒に適用することができる。
【0062】
有利には、無機材料は、酸化物、金属又は炭化物である。
【0063】
有利には、無機材料は、酸化チタン、酸化シリコン、酸化アルミニウム、炭化チタン又は炭化シリコン(SiC)である。好ましくは、無機材料は、二酸化チタン(TiO
2)、二酸化シリコン(SiO
2)又はアルミナ(Al
2O
3)から選択される。
【0064】
有利には、顆粒は、球状又は略球状であり、それは、ナノメートルサイズのファセットを有する。
【0065】
有利には、顆粒の嵩密度は、容器に添加される粒子の何れか1つの嵩密度の少なくとも2倍である。得られる粒状化パウダーは、初期の粒状化されていないパウダーの嵩密度の少なくとも2倍、好ましくはそれよりもっと大きい嵩密度を有する。
【0066】
本発明による方法は、何れの結合剤、溶媒(蒸気又は液体)及び何れの圧縮を用いない乾式法を使用することによって、無機ナノパウダー(酸化物、金属又は炭化物)の造粒に使用することができる。
【0067】
さらに、大気温度又は容器内の圧力に対して外部からの変更は必要ない。
【0068】
容器への中性ガス又は中性試薬の添加も必要ない。
【0069】
最後に、高剪断速度を有する混合器又は造粒機に使用される攪拌装置(ボールなど)を何ら動かす必要はない。
【0070】
本発明による造粒方法は、ナノ構造化ファセットを有する球形の顆粒を多かれ少なかれ得るために使用することができる。
【0071】
本発明による方法の最後に得られる顆粒の特徴は、適用される造粒パラメータ、すなわち、初期のナノパウダーの物理化学的及び構造的特徴、“内容積におけるパウダー体積/容器”の比、容器の回転速度、容器の内容積、容器が作られる材料の種類、回転軸の傾斜角度、及び容器を回転するために使用される技術に必然的に依存する。
【0072】
顆粒は、適用される造粒パラメータに依存する多かれ少なかれ広いサイズ分散を有し、それは、数十分の1マイクロメーターから数ミリメーターまで(7mmまで)様々である。
【0073】
粒状化ナノパウダーの嵩密度は調整可能であり、それは、初期の嵩密度の15倍まで増加し得る。
【0074】
得られた粒状化ナノパウダーは、その比表面積を維持し、顆粒は、超音波処理によって溶媒に容易に分散される。
【0075】
粒状化ナノパウダーの流動性は、それが、篩いを目詰まりすることなく篩い掛けし得るようなものである。
【0076】
最後に、その水分含量は、処理されていないナノパウダーの初期の水分含量より高くない。
【0077】
本発明による造粒方法の単純化は、ナノパウダー分野で一般的に使用される他の方法と比較してより低いコストでこの方法の速い産業化及び実施を予想することができる。
【0078】
これらの顆粒からの固体材料の形状における試験が現在行われている。予備試験によって、操作の容易性において顕著な改善、貯蔵容積の低下、材料形状プロトコルの単純化が示される。
【0079】
見られるように、本発明による造粒方法の適用は非常に容易であるが、この方法が当業者に自明であると考えることは誤解であろう。
【0080】
上述しているように、ナノパウダーは、自然に凝集する傾向にある。これは、発明者が、自発的なナノパウダーの凝集状態(自発造粒)及び誘導造粒状態の間に発明の目的における区別を行うためである。定義によれば、顆粒は凝集体であるので、この区別を行うことは重要である。上述のように、ナノパウダーは、必然的に凝集体の形態である。しかしながら、自発造粒からもたらされる顆粒又は凝集体は、粉末状で揮発性のままである。本発明による造粒方法によって得られる顆粒は、マイクロメートル又はミリメートルサイズの物体であり、好ましくは、球状の外形及び形状を有する物体である。
【0081】
ナノパウダーが必然的に凝集する傾向にあるけれども、同時に、それらは利用可能な空間全体を占める傾向にある。ナノパウダーが温度に関して気体のように振る舞う傾向があることが知られる。すなわち、熱運動は、ナノパウダーが所定の容積全体を占めるようにする傾向がある。
【0082】
従って、容器内のナノパウダーの回転が自発的に形成された事前凝集体を緻密化し得ることを考えることは明らかではなく、それが、数マイクロメートルのサイズを有する顆粒を形成するようにそれらのサイズを増加し得ることを考えることさえも明らかではない。
【0083】
ナノパウダーは通常、非常に低い嵩密度を有し、ほとんどのナノパウダーのこの嵩密度は、100g/l(すなわち、0.1g/cm
3)未満である。例えば、Degussa社によって作られる酸化チタンTiO
2、参照番号P25は、ナノサイエンスの分野で非常に幅広く使用される試料のナノパウダーであり、0.09g/cm
3の嵩密度を有する。
【0084】
低嵩密度に加えて、ナノパウダー粒子間の引力は、動作中にパウダーの質量(すなわち粒子の組)を設定することが困難であるようなものである。
【0085】
さらに、基本粒子の低質量は、それらのみが低運動エネルギーを有することを意味する。しかしながら、運動エネルギーは、粒子が共に接近することを引き起こし、それらが凝集することを保証するのに十分に効果的な粒子衝突があることを保証するために必要とされる。
【0086】
纏めると、粒子が自発的に凝集する傾向があるけれども、他の物理的な現象は、以上に説明されるように影響を受ける。これは、当業者が、ナノパウダーの山(ベッド)を回転することによる粒子の単純な運動がそれらの凝集を引き起こし得るということを決して考え付かない理由である。
【0087】
一方、ナノサイエンスの団体は、ここに記載された溶液を予測することなく、多かれ少なかれ長期間にわたってナノパウダーを造粒する複雑な方法を試みている。
【0088】
本発明は、本発明による顆粒を形成する実施例及びこれらの粒子の等価の市販の顆粒との比較に関連する以下の詳細な説明を読むことによって、より理解されるだろう。
【0089】
明らかに、これらの実施例は、本発明の対象の例示として単に示され、この主題に全く限定されない。