【文献】
Eishin Morita,Food-Dependent Exercise-Induced Anaphylaxis―Importance of Omega-5 Gliadin and HMW-Glutenin as Causative Antigens for Wheat-Dependent Exercise-Induced Anaphylaxis―,Allergology International,2009年,Vol. 58, No. 4,pp. 493-498
【文献】
Falth-Magnusson K,Elevated levels of serum antibodies to the lectin wheat germ agglutinin in celiac children lend support to the gluten-lectin theory of celiac disease,Pediatr Allergy Immunol,1995年,Vol. 6, No. 2,pp. 98-102
【文献】
Alessandra Camarca,Intestinal T Cell Responses to Gluten Peptides Are Largely Heterogeneous: Implications for a Peptide-Based Therapy in Celiac Disease,J. Immunology,2009年,Vol. 182,pp. 4158-4166
【文献】
DAVID A. NELSEN,Gluten-Sensitive Enteropathy (Celiac Disease): More Common Than You Think,AMERICAN FAMILY PHYSICIAN,2002年,pp. 2259-2266
【文献】
Belen Moron,Sensitive detection of cereal fractions that are toxic to celiac disease patients by using monoclonal antibodies to a main immunogenic wheat peptide,Am J Clin Nutr,2008年,Vol. 87,pp. 405-414
【文献】
DAVID A. NELSEN,Gluten-Sensitive Enteropathy (Celiac Disease): More Common Than You Think,AMERICAN FAMILY PHYSICIAN,2002年12月15日,Vol. 66, No. 12,pp. 2259-2266
【文献】
L. M. SOLLID,Antibodies to wheat germ agglutinin in coeliac disease,Clin. exp. Immunol.,1986年,Vol. 63,pp. 95-100
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0003】
小麦アレルギー、セリアック病およびグルテン感受性は、小麦グリアジンの摂取によって引き起こされる3つの異なる病状である(1、2)。これらの病状では、グルテンに対する反応は、細胞性免疫反応および体液性免疫反応の両方によって媒介され、異なる徴候の症状を引き起こす。例えば、小麦アレルギーでは、グリアジンペプチドの特定配列が、ヒスタミンおよびロイコトリエンなどのメディエーターの放出を誘発する肥満細胞および好塩基球の表面上の2つのIgE分子と架橋結合する(3)。
【0004】
本明細書で説明するこれらの外部資料および全ての他の外部資料は、参照によりその全体が組み込まれる。組み込まれる参考文献中の用語の定義または使用は、本明細書に提供する用語の定義と矛盾しているか、または反している場合には、本明細書に提供するその用語の定義が適用され、参考文献中のその用語の定義は適用されない。
【0005】
セリアック病(CD)は、既知の遺伝子構造およびグリアジンペプチドなどの環境要因による自己免疫疾患である。CDは、一般人口の1〜2%に影響を与える。本願を通して、本文が逆の意味を指示しない限り、本明細書に記載の全ての範囲は、それらのエンドポイントを含むものとして解釈されるべきであり、オープンエンドの範囲は、商業的に実用的な値を含むように解釈されるべきである。同様に、本文が逆の意味を示さない限り、全ての値のリストは、中間値を含むと考えられるべきである。
【0006】
この障害の診断を確認するためのマーカーは、天然の脱アミド化グリアジンペプチドに対するIgAおよびIgA抗組織トランスグルタミナーゼ(tTg)自己抗体である。CDと比較して、グルテン感受性(GS)は、人口の最大30%に影響を及ぼす(4)。Saponeらによって2010年および2011年に公表された2つの論文(5、6)によると、GSの症状は、CDまたは小麦アレルギーに関連付けられている一部の消化器症状に似ているかもしれないが、現在、グルテン感受性についての客観的な診断検査がないことを強調する(5、6)。GSの自然免疫反応と比較して、CDの自然免疫反応を研究している間に、研究者らは、自然免疫に関連付けられているTLR1、TLR2およびTLR4が、CDではなく粘膜GSで上昇している一方で、IFN−g、IL−21およびIL−17Aなどの獲得免疫のバイオマーカーは、GSではなくCDの粘膜組織で発現していることを見出した。非常に侵襲的であり、生検を必要とする方法を用いて、toll様受容体ならびにIFN−γ、IL−21およびIL−17Aを測定することにより、CDとGSとを鑑別することができると彼らは考えた(5、6)。グルテンに対する即時型過敏症はIgEに媒介されるが、グルテンに対する遅延型過敏症は、抗体(IgG、IgA)およびT細胞媒介性反応であり、これは、腸疾患を伴うセリアック病またはグルテン感受性と呼ばれる(7)。tTgに対するIgGおよびIgAの非存在下で、様々な小麦抗原およびペプチドに対するIgGならびにIgAの上昇は、小麦ペプチドに対する粘膜免疫寛容の損失ならびにグルテン感受性の発達を示す(7)。小麦抗原とヒト組織との間の抗原性の類似により、CDとGSの両方は、1型糖尿病、関節炎、甲状腺炎、さらにグルテン運動失調および多発性硬化症などの神経系の自己免疫疾患を含む多くの自己免疫疾患を引き起こし得る(8〜10)。
【0007】
「患者」という用語は、医療専門家の保護下にあるヒトを表すと理解されるべきである。しかし、より広い意味では、本明細書に開示する新規の検査プロトコルおよび分析は、セリアック病、グルテン感受性、および腸関連自己免疫を患い得る非ヒト患者ならびに任意の他の動物に適用することができる。
【0008】
CD患者と同様に、GS患者は、グルテンに耐性がなく、同一または類似の一連の胃腸症状を発症し得るが、GSにおけるこの免疫反応は、小腸を損傷させるものではない(5、6)。このGSにおける腸損傷の誘導の欠如、ならびに遺伝子マーカーHLA DQ2/DQ8および小腸損傷とCDとの関連は、GSよりはるかに容易にCDの診断を行う。それほど重症ではないGSの臨床像、tTg自己抗体が存在しないこと、かつ多くの臨床医が、様々な小麦タンパク質およびペプチドに対するIgG自己抗体ならびにIgA自己抗体の上昇の意義を見落とすことにより、GSが非常に危険な障害となる。これは、炎症カスケードの誘導物質と共に、長期間にわたるIgG抗体および/またはIgA抗体の血液中の残留が、最も悪化した自己免疫を引き起こし得るからである。そのような場合には、結果として生じる組織損傷の重症度により、たとえグルテンを含まない食事療法を実施しても、異なる小麦抗原およびペプチドに対するIgG抗体ならびにIgA抗体により誘導される自己免疫反応の過程の逆戻りを支援することができない可能性がある。
【0009】
セリアック病とグルテン免疫反応性/感受性の比較を
図1に示す。このモデルによると、2人の子供達(1人は負の遺伝子構造(HLA DQ2/DQ8
−)を有し、もう1人は正の遺伝子構造(HLA DQ2/DQ8
+)を有する)が、ロタウイルス、菌体内毒素、および一部の薬物などの環境要因またはそれらの相乗効果にさらされている場合、結果として、両方の子供に粘膜免疫寛容の崩壊が起こり得る。グリアジンに対する粘膜免疫寛容の誘導は、天然の小麦タンパク質およびペプチドに対するIgAならびに/またはIgGの産生を引き起こし、これが、HLA DQ2/DQ8
−およびHLA DQ2/DQ8
+である両方の個人におけるグルテン感受性の開始の次のステップである。
【0010】
しかし、正の遺伝子構造を有する個人において、炎症のバイオマーカーと共に、グリアジンに対するIgG抗体およびIgA抗体は、tTgを活性化し、絨毛の損傷を誘導し、絨毛萎縮を引き起こし得る。特定のグリアジンペプチドの脱アミドは、グリアジンペプチドとtTgとの間の複合体の形成につながり、抗原提示細胞によるこの複合体のT細胞およびB細胞への提示は、tTg、脱アミド化グリアジンならびにグリアジン−tTg複合体に対するIgAまたはIgGの産生を引き起こす。これらの抗体の形成およびそれらの血液中での検出は、人口の1〜2%に検出される遺伝性の病状であるCDの特徴である。CDが未治療のままであると、結果として、自己免疫および癌を引き起こし得る。
【0011】
これに対して、HLA DQ2/DQ8が陰性である個人において、この免疫寛容の崩壊、かつ天然の小麦タンパク質およびペプチドに対するIgAならびに/またはIgGの同時産生は、炎症カスケードを活性化し得る。しかし、tTg活性化の非存在下では、絨毛萎縮は発生しない。さらに、グリアジンペプチドは脱アミドを受けず、結果として、IgG抗体およびIgA抗体が、天然の小麦ペプチドおよびグリアジンペプチドに対してのみ産生される。
【0012】
小麦抗原への連続暴露および粘膜免疫寛容の継続により、小麦抗原ならびに反応抗体は、免疫複合体の不自然な相互作用を形成し、重度のグルテン免疫反応性およびグルテン感受性を引き起こす。この免疫反応性および感受性は、人口の最大30%に検出される非遺伝性疾患である。この障害が調べられないままでいると、小麦抗原およびペプチドに対するIgG抗体ならびにIgA抗体への長期曝露、かつそれらの異なる組織抗原との交差反応が、様々な自己免疫障害を引き起こし得る。したがって、CDが存在しなくとも、GSは、さらに、異なる臓器を攻撃する他のグルテン関連自己抗体に生産的な環境を提供する可能性がある。
【0013】
さらに、通常、グルテンを含まない食事療法は、CDの診断基準を満たす人々にのみ推奨されているが、グルテン免疫反応性および感受性を有する人々には推奨されていない。残念ながら、このことが、多くのグルテン感受性の人々を、合併症の危険にさらす非常に重篤な症状で不必要に苦しめているが、彼らが知ってさえいれば、この病状は、グルテンを含まない食事療法で解決される可能性がある。
【0014】
したがって、グルテン免疫反応性およびグルテン感受性、無症候性セリアック病、セリアック病、ならびに腸関連自己免疫を含む様々な腸関連疾患を診断し、それらを鑑別するのに役立つ新たな規範が必要とされている。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の特定の態様によると、小麦抗原およびペプチドの配列に対する抗体を用いる古典的なセリアック病とは対照的に、抗体をバイオマーカーとして用い、グルテン免疫反応性およびグルテン感受性、無症候性セリアック病、クローン病ならびに他の腸関連疾患を診断して、鑑別するのを支援する。
【0025】
本発明の特定の態様において、体液を、全粒小麦抗原、α−グリアジンタンパク質またはその1種類もしくは複数種類のペプチド、γ−グリアジンタンパク質またはその1種類もしくは複数種類のペプチド、ω−グリアジンタンパク質またはその1種類もしくは複数種類のペプチド、グルテニンタンパク質またはその1種類もしくは複数種類のペプチド、1種類もしくは複数種類のオピオイドペプチド、グリアジン−トランスグルタミナーゼ複合体(トランスグルタミナーゼに結合したグリアジン)、トランスグルタミナーゼ、小麦胚芽凝集素、およびそれらの組み合わせのうちの1つまたは複数に対する免疫グロブリンG(IgG)抗体ならびに/または免疫グロブリンA(IgA)抗体について検査する。
【0026】
本発明の特定の態様において、全粒小麦抗原は脱アミド化され、水溶性全粒小麦タンパク質とアルコール可溶性全粒小麦タンパク質を組み合わせることによって調製することができる。α−グリアジンタンパク質またはその1種類もしくは複数種類のペプチドには、α−グリアジン−33−merおよび/またはα−グリアジン−17−merが含まれ、他のα−グリアジンペプチドが企図される。γ−グリアジンタンパク質またはその1種類もしくは複数種類のペプチドには、γ−グリアジン−15−merが含まれ、他のγ−グリアジンペプチドが企図される。ω−グリアジンタンパク質またはその1種類もしくは複数種類のペプチドには、ω−グリアジン−17−merが含まれ、他のω−グリアジンペプチドが企図される。グルテニンタンパク質またはその1種類もしくは複数種類のペプチドには、グルテニン−21−merが含まれ、他のグルテニンペプチドが企図される。1種類または複数種類のオピオイドペプチドには、グルテオモルフィン、プロダイノルフィンおよび/またはダイノルフィンが含まれ、他のエキソルフィンペプチドが企図される。
【0027】
本発明の特定の態様において、ヒトまたは他の動物由来の全血、血清(blood serum)/血清(sera)、唾液または他の体液試料を、(a)小麦抗原、(b)グリアジン抗原、(c)小麦胚芽凝集素、グルテオモルフィン、グルテニン、脱アミド化グルテニン、プロダイノルフィン、およびダイノルフィンのうちの1つまたは複数に対する抗体について検査する。小麦抗原が脱アミド化され、グリアジン抗原が、α−グリアジン−33−mer、α−グリアジン−17−mer、γ−グリアジン−15−mer、ω−グリアジン−17−mer、およびグルテニン−21−merからなる群から選択される場合に、検査結果は特に興味深いと考えられる。検査用プレートおよびキットを、α−グリアジン、γ−グリアジン、ω−グリアジン、グルテニン、小麦胚芽凝集素、グルテオモルフィン、プロダイノルフィン、トランスグルタミナーゼ、およびグリアジン結合トランスグルタミナーゼのうちの少なくとも3つ、5つ、7つまたは全てに対する抗原について有利に検査することができる。
【0028】
本発明の特定の態様において、特に関心のあるアッセイおよびアッセイキットは、1種類もしくは複数種類の小麦抗原、α−グリアジンタンパク質またはその1種類もしくは複数種類のペプチド、例えば、α−グリアジン−33−merおよび/もしくはα−グリアジン−17−mer、γ−グリアジンタンパク質またはその1種類もしくは複数種類のペプチド、例えば、γ−グリアジン−15−mer、ω−グリアジンタンパク質またはその1種類もしくは複数種類のペプチド、例えば、ω−グリアジン−17−mer、小麦胚芽凝集素、グルテオモルフィン、プロダイノルフィンおよび/もしくはダイノルフィンのうちの1つまたは複数などのオピオイドペプチド、グルテニンタンパク質またはその1種類もしくは複数種類のペプチド、例えば、グルテニン−21−mer、脱アミド化グルテニンタンパク質またはその1種類もしくは複数種類のペプチド、グリアジン−トランスグルタミナーゼ複合体、またはそれらの組み合わせに対するIgA抗体ならびに/またはIgG抗体の検査を可能にする。
【0029】
本発明の特定の態様において、抗体の検出には、ELISAアッセイ、RIAアッセイ、ラテックス凝集法、ビーズアッセイ、プロテオミクスアッセイ、および当業者に周知の他の免疫測定法が含まれるが、これらに限定されない免疫測定法を用いて実行することができる。
【0030】
以下は、数人の検査患者についての代表的なアッセイの説明、ならびにそれらの使用および分析である。本明細書に記載の材料および方法と同様または同等の他の材料および方法が、本発明の実施または検査に用いることができるが、好ましい方法および材料については、本発明をさらに説明するために、発明を実施するための形態にこれから記載する。
【0031】
実施例1
ELISAアッセイ
A.材料および方法−プレートおよび試料調製:
小麦抗原およびペプチド。全粒小麦抗原を、水溶性タンパク質とアルコール可溶性タンパク質を混合することによって調製した。α−グリアジン33−mer、α−グリアジン17−mer、γ−グリアジン15−mer、ω−グリアジン17−merを含む異なるグリアジンペプチド、グルテオモルフィン、プロダイノルフィン、トランスグルタミナーゼ、およびトランスグルタミナーゼ結合グリアジン、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD−65)のHPLCグレードを、Bio−Synthesis社(ルイスビル、テキサス州)により合成した。小麦胚芽凝集素(WGA)を、Sigma社/Aldrich社(セントルイス、ミズーリ州)から購入した。
【0032】
抗原およびペプチドを1.0mg/mlの濃度でメタノ−ルに溶解し、次いで、0.1Mの炭酸塩−重炭酸塩緩衝液、pH9.5で1:100に希釈し、その50μlをポリスチレン平底ELISAプレートの各ウェルに添加した。
【0033】
ELISAプレートを、4℃で一晩インキュベートし、次いで、0.05%Tween20(pH7.4)を含むトリス緩衝生理食塩水(TBS)200μlで3回洗浄した。免疫グロブリンの非特異的結合を、TBS中2%ウシ血清アルブミン(BSA)200mLの添加によって防止し、4℃で一晩インキュベートした。プレートを洗浄し、品質管理を行った後、使用するまで4℃に保った。
【0034】
酵素コンジュゲートには以下のものが含まれていた:アフィニティー精製抗体ホスファターゼ標識ヤギ抗ヒトIgG(Jackson ImmunoResearch社、カタログ番号109−055−008)、およびアフィニティー精製抗体ホスファターゼ標識ヤギ抗ヒトIgA(Jackson ImmunoResearch社、カタログ番号109−055−011)。
【0035】
さらに本明細書に記載する方法に含まれる他の追加の試薬および材料には、以下のものが含まれていた:リン酸緩衝生理食塩水粉末(Sigma社、カタログ番号P3813−10PAK)、ウシ血清アルブミン(Biocell社、カタログ番号3203−00)、アジ化ナトリウム(Sigma社、カタログ番号S−2002)、Tween20(Sigma社、カタログ番号P1379−1000ML)、グリセロール(Sigma社、カタログ番号G5516−500ML)、水酸化ナトリウム(Sigma社、カタログ番号S−5881)、塩化マグネシウム(Sigma社、カタログ番号8266)、ジエタノールアミン(Sigma社、カタログ番号D−8885)、1.0Nの塩酸溶液(Sigma社、カタログ番号H3162)、基質錠:p−NPP(パラニトロフェニルリン酸)(Sigma社、カタログ番号S−0942)5mg、および蒸留水(D.H
20)。
【0036】
マイクロウェルプレートを準備し、所望の数の小麦関連抗原および/またはペプチドでコーティングした。以下の実施例では、12種類の異なる小麦関連抗原およびペプチドを、マイクロウェルプレート上にコーティングした。標準物質および陽性対照ならびに希釈した患者試料をこれらのウェルに添加し、異なる小麦抗原を認識する自己抗体は最初のインキュベーション中に結合した。これらのウェルを洗浄し、全ての未結合蛋白質を除去した後、精製したアルカリホスファターゼ標識ウサギ抗ヒトIgG/IgA未結合コンジュゲートを、さらなる洗浄ステップにより除去した。
【0037】
結合したコンジュゲートを、黄色の反応生成物を与えるパラニトロフェニルホスフェート(PNPP)基質で可視化し、この強度は、試料中の自己抗体の濃度に比例する。水酸化ナトリウムを各ウェルに添加し、反応を停止させた。色の強度を405nmで読み取った。
【0038】
無地の赤の上端またはレッドタイガー(red tiger)の上端(SSTチューブ)を検体採取に用いたが、特定の態様では、他の検体採取器具が、このアッセイのために企図される。
【0039】
血液試料を、無菌静脈穿刺技術を用いて採取し、血清を、標準的な手順を用いて得た。特定の態様では、このアッセイのための血清は最小値が約50μlであることが好ましく、したがって、これは、血液の約0.5ml以上に相当する。
【0040】
B.検査アッセイ手順
グルテン免疫反応性およびグルテン感受性、無症候性セリアック病、クローン病ならびに他の腸関連疾患を診断し、検出するのを支援するためのIgG抗体アレイおよび/またはIgA抗体アレイのための分析手順について、これから説明する。いくつかの態様において、検査アッセイを開始する前に、全ての試薬を室温に戻した。この検査アッセイ手順には、所望の数および所望の種類の小麦関連抗原ならびに/またはペプチドでコーティングした所望の数のウェルもしくはプレートの準備が含まれる。マイクロタイターウェルを準備した後、1:100に希釈した対照標準物質約100μlを、マルチチャネルピペッターを用いて、
図3に示すように、マイクロタイタープレートのA列およびB列に添加する。1:100に希釈した患者の検査試料(ここでは血清)約100μlを、臨床検体1のC列およびD列、臨床検体2のE列およびF列、ならびに臨床検体3のG列およびH列の2つ組のウェルに添加した。
【0041】
図4に示すように、別々のプレート上で、2つ組の臨床検体と同様に周期的な陰性対照および陽性対照の実験を行った。
【0042】
次いで、これらのプレートを室温で60分間インキュベートした。インキュベーション後、ウェルを空にして、ELISA洗浄器を用いてPBSで4回洗浄した。最適に希釈したアルカリホスファターゼ標識ヤギ抗ヒトIgA約100μlを、IgAプレートに添加し、酵素標識IgG約100μlを最適な希釈でIgGプレートに添加した。
【0043】
次いで、それぞれのプレートを室温で30〜60分間インキュベートした。コンジュゲートのインキュベーション終了約10分前に、錠剤が完全に溶解するまでよく混合した基質緩衝液5mlとp−ニトロフェニルリン酸錠剤5mgを混合することによって、基質溶液を調製した。ELISA洗浄器を用いて、PBSでの洗浄を4回繰り返した。次いで、基質溶液約100μlを各ウェルに添加した。次いで、このプレートを、直射日光への暴露を回避しながら、室温で30分間インキュベートした。3NのNaOH約50μlを添加することにより反応を停止した。これらのウェルの色の強度を、マイクロタイタープレートリーダーを用いてブランクウェルに対して405nmで読み取り、標準物質、対照および未知試料の吸光度値を記録した。
【0044】
C.結果の計算
プレートを405nmで読み取り、光学濃度値(OD405)を得た後、陰性対照の平均OD値、陽性対照の平均OD値ならびに各臨床検体の平均OD値を、A列およびB列の標準物質の平均OD値で割ることにより、それぞれの指数の値(IV)を得た。
【0045】
2つ組の各試料の平均OD値を、標準物質対照の平均OD値で割ることにより、12種類の異なる抗原に対する各抗体の指数の値(IV)を計算した(例えば、C1とD1のウェルの平均OD値をA1とB1のウェルの平均OD値で割る、C2とD2のウェルの平均OD値をA2とB2のウェルの平均OD値で割る、C3とD3のウェルの平均OD値をA3とB3のウェルの平均OD値で割るなど)。
【0046】
次いで、これらの結果を、確立された基準範囲と比較した。
【0047】
(数1)
指数=患者の平均OD値/標準物質の平均OD値
【0049】
D.結果の解釈
セリアック病の3人の患者、グルテン免疫反応性およびグルテン感受性の3人の患者、ならびにグルテン感受性と重複するクローン病の3人の患者のIgG抗体パターンならびにIgA抗体パターンの例を表2〜表7に示す。限局性腸炎としても知られるクローン病は、強い遺伝的要素を有する炎症性腸疾患の一種である。クローン病は、自己免疫疾患として説明される場合が多いが、免疫不全の疾患と考える人もいる。
【0050】
セリアック病とグルテン免疫反応性/感受性/自己免疫間のデータの解釈および実験の違いを表8に示す。特に、現在、セリアック病は、以下のとおりに、無症候性セリアック病、グルテン免疫反応性/感受性および/またはグルテン関連自己免疫と鑑別することができると考えられている。
【0051】
a.検査結果に、小麦タンパク質、α−グリアジン33−mer、脱アミド化α−グリアジン33−mer、α−グリアジン25−mer、α−グリアジン18−mer、α−グリアジン17−mer、γ−グリアジン15−mer、ω−グリアジン17−mer、グルテニン、脱アミド化グルテニン、グルテオモルフィン、プロダイノルフィンおよび小麦胚芽凝集素のうちのいずれかまたはそれらの組み合わせに対するIgAおよび/またはIgGの陽性の結果、ならびにトランスグルタミナーゼ−2に対する陰性の結果、トランスグルタミナーゼ−3およびトランスグルタミナーゼ−6のうちの少なくとも1つに対して検査結果が陽性のIgAおよびIgGのうちの少なくとも1つが含まれる場合に、無症候性セリアック病の血清パターンが示される。
【0052】
b.検査結果に、小麦抗原、特に、脱アミド化α−グリアジンおよびトランスグルタミナーゼ−2ではなく、天然のα−グリアジン、γ−グリアジン、ω−グリアジン、グルテニン、脱アミド化グルテニン、グルテオモルフィン、および小麦胚芽凝集素に対するIgGならびに/またはIgAについて陽性の結果が含まれる場合に、グルテン免疫反応性およびグルテン感受性の血清パターンが示される。
【0053】
c.検査結果に、小麦抗原、特に、天然のα−グリアジン、γ−グリアジン、ω−グリアジン、グルテニン、脱アミド化グルテニン、グルテオモルフィン、および小麦胚芽凝集素に対するIgGならびに/またはIgAについての陽性の結果、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、小脳組織抗原もしくはペプチドまたは他の組織抗原に対する任意のIgG、IgAまたはIgMについての陽性の結果、ならびに脱アミド化α−グリアジン、脱アミド化グルテニンまたはトランスグルタミナーゼ−2に対するIgAについての陰性の結果、トランスグルタミナーゼ−3および/もしくはトランスグルタミナーゼ−6に対するIgAまたはIgGについての陽性の結果が含まれる場合に、グルテン免疫反応性/感受性ならびに自己免疫に関連する診断が指示される。
【0054】
随時更新され得る報告すべき範囲および基準範囲を表1に示す。読者は、平均値を上回る2つの標準物質で確立された基準範囲と比較して、tTgおよびグリアジン−tTg複合体に対するIgA抗体は極めて陽性である(CDの診断を裏付ける)が、IgG抗体およびIgA抗体のパターンならびに強度は、抗原ごとに変化する。例えば、セリアック病の全3人の患者において、小麦抗原に対するIgGとIgAの両方は基準範囲よりも4〜6倍高いが、α−グリアジン33−merに対するIgGおよびIgAを測定すると、3人の患者のうちの1人においてIgG抗体レベルが顕著に上昇し、3人の患者のうちの2人においてはIgA抗体レベルが顕著に上昇していた(表2、表3)。
【0055】
セリアック病の患者と比較した場合、グルテン免疫反応性およびグルテン感受性を有する患者において、3人の患者はいずれもtTgおよびグリアジン−tTg複合体に対する顕著なIgA反応性を示さないが、小麦抗原および1種類または複数種類の小麦ペプチド(α−グリアジン、γ−グリアジン、ω−グリアジン、グルテニン、グルテオモルフィン、プロダイノルフィンと小麦胚芽凝集素)と組み合わせた小麦抗原に対するIgG抗体ならびにIgA抗体は、顕著に上昇した。tTgおよびグリアジン−tTg複合体と組み合わせた小麦抗原ならびにペプチドに対するIgA免疫反応性は、セリアック病とグルテン免疫反応性/感受性を明確に鑑別し、その際、様々な小麦抗原およびペプチドに対するIgG抗体ならびに/またはIgA抗体は反応性を示すが、tTgおよびグリアジン−tTg複合体に対するIgG抗体ならびに/またはIgA抗体は反応性を示さない(表4、表5)。
【0056】
表6および表7は、クローン病の3人の患者の結果を示す。tTgおよびグリアジン−tTg複合体に対するIgG抗体ならびにIgA抗体のパターンは、クローン病に加えて、これらの患者が、グルテン免疫反応性/感受性も患い、セリアック病も患う可能性があることを明確に示す(表6、表7)。
【0057】
症例研究の例
4つの異なる症例報告、第1はセリアック病の患者、第2はグルテン感受性のある患者、第3はグルテン感受性および自己免疫の患者、および第4はクローン病と重複するグルテン感受性のある患者についての報告を以下に示す。
【0058】
A.症例報告1:グリアジンおよび組織トランスグルタミナーゼに対するIgAの使用による高齢者のセリアック病の診断ならびにグルテンを含まない食事療法による改善
長期にわたる胃腸障害、消化不良、疲労および急激な体重減少を患う76歳の男性は、胃腸評価が行われた。血液検査は、低濃度の葉酸およびビタミンB−12による大球性貧血を示した。患者のヘモグロビン濃度は79g/L、アルブミン濃度は32g/L、かつトランスグルタミナーゼ濃度は212μg/mL(正常範囲=0〜10μg/mL)であった。緊急の大腸内視鏡検査および十二指腸生検が行われ、巨視的に正常な結果が得られた。このレベルで、彼のグリアジンおよびトランスグルタミナーゼに対するIgGならびにIgAの濃度を、FDAに承認されたキットを用いて検査した。α−グリアジンに対するIgGとIgAの両方は非常に高く、トランスグルタミナーゼに対しては、IgGではなくIgAが基準範囲よりも3.8倍高かった。グリアジンおよびトランスグルタミナーゼに対するIgA陽性ならびにセリアック病の診断を考慮して、彼は、パック詰めされた細胞2単位が輸血され、毎日、グルテンを含まない食事とプレドニゾン20mgの両方を摂取した。6ヶ月後、彼は約12ポンド増え、GI症状は示さなかった。この改善により、この患者は、グルテンを含まない食事に傾倒し始めた。グリアジンおよびトランスグルタミナーゼに対するIgG抗体検査ならびにIgA抗体検査の最初の実施後1年の時点で、これらの抗体についての繰り返し検査は陰性であった。疾病管理とグルテンを含まない食事療法が、この無症候性セリアック病の高齢患者の治療に役立ったことがさらに示された。
【0059】
考察:Catassiら(1、11)によると、セリアック病(CD)は、欧米諸国の中で最も一般的な生涯疾患のうちの1つである。しかし、CDのほとんどの症例は、かかりつけの医師がこの重要な苦痛に関して認識が貧しいことにより、大抵、診断されないままである(Catassi C,et al.,Am J Gastroenterol,102:1454−1460,2007)。セリアック病は、吸収不良を伴うGI症状を呈すると理解されている。しかし、セリアック病患者の多くは、GI症状を示さない。これらの個人は、無症候性セリアック病または特殊なセリアック病を有している可能性があり、この病状は、鉄欠乏、貧血、肝酵素の増加、骨粗しょう症または神経症状を呈する可能性がある(12)。本明細書で使用する「特殊なセリアック病」という用語は、ほんのわずかな症状を有する患者のセリアック病を指し、「無症候性セリアック病」という用語は、無症候性の患者のセリアック病を指す。
【0060】
セリアック病の認識の高まりは、より高い感受性および特異性を有する新たな血清学的アッセイの使用のおかげである。最近まで、セリアック病は珍しい病気で、主に、乳児期または小児期に認められる病気として誤って理解されていた。しかし、現在では、CDのほとんどの症例が40〜60歳の成人で発症する認識されている。この年齢層の患者は、不規則に、彼らの症状、実験室の検査結果および他の検査の兆候を示し得る。実際に、最近の公表文献によると、7人の患者のうちのだれ一人としてCDと正しく診断されていない(13)。
【0061】
その結果、この症例が示すとおり、成人患者が、吸収不良を示唆する症状および徴候を呈する場合、グリアジンおよびトランスグルタミナーゼに対するIgA抗体についての検査を考慮する必要がある。その後、検査結果が陽性である場合は、セリアック病は鑑別診断の一部がなされるべきであり、これに基づいて、グルテンを含まない食事療法が推奨されるべきである。グルテンを含まない食事療法が症状を改善させると考えられる場合には、その患者は、年齢に関係なくこの食事療法に従うべきである。
【0062】
B.症例報告2:麻酔薬、抗生物質および鎮痛剤の組み合わせによって誘発されるグルテン免疫反応性およびグルテン感受性
46歳の女性は、彼女の内科医によって毎年健康診断を受けていた。彼女の健康診察および正常なCBC、肝酵素を含む化学、ならびに自己免疫プロファイルに基づいて、彼女は健康な人として分類されていた。グルテン抗体は、その時点で測定されなかった。数ヶ月後、彼女は、歯根管、骨移植および歯科インプラントの準備のために彼女の歯科医のもとに行った。10日間にわたる5回の別々の訪問の間に、彼女は、麻酔材料(メピバカイン)、抗生物質および鎮痛剤で治療された。4ヶ月後、歯科インプラント手順は、リドカインの局所麻酔、続いて、抗生物質(アモキシシリン)および鎮痛剤の処方後に完了した。4時間後、彼女は、局所性浮腫、特に、唇および眼窩周囲の腫れを伴う重度のアレルギー反応を発症した。この患者は動揺し、全身的に、特に、彼女の顔、手および足にかゆみが現れた。喘鳴および呼吸困難を伴う胸の圧迫感は、使用された薬のうちの1種類または複数種類にアレルギー反応を示すものであった。彼女は、直ちに、アドレナリンを体重1kg当り0.01mLで治療され、抗ヒスタミン治療薬が筋肉内投与された。しかし、アレルギー反応は抑えられるが、この患者は、激しい嘔吐および激しい腹痛を伴う下痢を発症し、これらは8日間続いた。2週間後、下痢は改善したが、この患者は、腫脹および過敏性腸症候群を伴う腹部の不快感について不満を表し続けた。彼女は、精密検査の際、全く注意書きに気付かなかったGI専門家に付託された。その後、グルテン感受性の可能性が考慮され、この患者は、HLAタイピング、IgG抗グリアジン抗体およびIgG抗トランスグルタミナーゼ抗体ならびにIgA抗グリアジン抗体およびIgA抗トランスグルタミナーゼ抗体について検査された。免疫学的検査は、以下の結果を示した:IgG抗グリアジン6.8U/mL(正常範囲<20U/mL)、IgA抗グリアジン4.1U/mL(正常範囲<20U/mL)、IgG抗tTg2.1U/mL(正常範囲<6U/mL)、IgA抗tTg1.2U/mL(正常範囲<4U/mL)、およびHLA DQ2およびHLA DQ8については陰性。これらの所見に基づき、グルテン感受性およびセリアック病は除外され、この患者は、麻酔薬およびその抗生物質との相乗効果に対する反応と関連付けられている心因性反応または特異体質反応を患っていると結論付けられた。90日後、彼女の経過観察の訪問時に、この患者は、腫脹および、特に、毎食後1〜3時間の時の腹痛にまだ不満をもらしていた。繰り返し検査が命じられ、疑わしいクローン病および潰瘍性大腸炎について提案された検査である、ASCA IgGおよびp−ANCA IgGと共に抗グリアジンIgGおよび抗グリアジンIgAならびに抗tTg IgGおよび抗tTg IgAについての基本的な検査と包括的な検査の両方が命じられた。興味深いことに、最初のGI不快後約100日目に、ASCAおよびp−ANCAは完全に正常範囲内であったが、グリアジンに対するIgGおよびIgAの両方は、基準範囲を4〜9倍超えていた(グリアジンIgG=79U/mL;IgA=54U/mL)。しかし、tTgに対するIgG抗体およびIgA抗体は正常範囲内であった。さらに、数々の小麦のグリアジン、グルテニン、小麦胚芽凝集素、グリアジン−tTg複合体およびtTgの抗原に対するIgG抗体ならびにIgA抗体の検査が行われた。12種類の検査抗原中8種類に対するIgGおよび12種類の検査抗原中6種類に対するIgAが、確立された基準範囲より2〜7倍高く検出された。tTgおよびグリアジン−tTg複合体に対するIgGとIgAの両方は陰性であった(表4および5の試料1参照)。これらの結果は、トランスグルタミナーゼに対してでなはく、グリアジンに対する基本的なIgG検査およびIgA検査が陽性であったことと共に、環境要因に対するアレルギー反応により、この患者が、小麦抗原に対する耐性を失っており、セリアック病ではなくグルテン感受性を発症したことを示した。tTgに対するIgGレベルおよびIgAレベルが上昇しないにもかかわらず、WGAレベルもIgGとIgAの両方について上昇したので、連続的なGI不快感ならびにグリアジンに対するIgGおよびIgAの上昇により、グルテンを含まない食事療法が推奨され、栄養士は、この患者に、プロバイオティクスを取ることと、グルテンおよびレクチンを含まない制限食を続けるように助言した。この食事療法およびプロバイオティクスの導入後6ヶ月の時に、この患者のGI不快感がおさまり、彼女は正常な健康状態に戻った。
【0063】
考察:グルテン感受性という用語は、トランスグルタミナーゼではなくグリアジンに対するIgG、IgA、またはその両方の上昇によって示されるとおり、グルテンに対する増大した免疫反応の状態を表す(14)。グルテン感受性は、粘膜免疫恒常性に影響を与える環境要因により、小麦抗原およびペプチドに対する粘膜免疫寛容の喪失から始まる。
【0064】
この症例では、トリガー因子が小麦および関連抗原に対する彼女の免疫寛容の状態に影響を与えてから約100日後に、グルテン感受性は、GI症状および免疫学的検査、特に、グリアジン、その関連タンパク質およびペプチドに対するIgGならびにIgAに基づいて確認された。この患者において、麻酔薬、抗生物質および鎮痛剤の相乗効果が、彼女の粘膜免疫系の調節不全、続いて、小麦ならびに他の食事のタンパク質およびペプチドに対する免疫寛容の崩壊を引き起こしたように思える。これは、消化酵素の活性に対する環境要因の影響と組み合わさって、密着結合の開口ならびに粘膜下層、リンパ節、および血液循環への未消化の小麦タンパク質およびペプチドの侵入の誘導を引き起こした可能性がある。その後、これらの抗原は、抗原提示細胞によってT細胞およびB細胞へ提示された。このプロセスの間に、グリアジン特異的B細胞は、グリアジン特異的T細胞によって支援され、B細胞のクローン性増殖を引き起こし、かつグリアジン、関連タンパク質およびペプチドに対するIgG抗体ならびにIgA抗体の放出を引き起こし、これらは、この症例において、最初の外傷体験後約100日目に検出された。
【0065】
麻酔薬および抗生物質の使用に関連したGI不快感を有する患者におけるグルテン感受性のスクリーニングは、グリアジンならびに関連タンパク質およびペプチドに対する循環IgGおよび循環IgAを測定することによって、容易かつ低コストで行われ得ると本明細書で結論付ける。これを怠ると、正確な診断およびグルテンを含まない食事療法の実行による適切な治療を患者から奪うことになるだけでなく、それらに関連する副作用と共に不必要な医学的介入も引き起こし得る。
【0066】
C.症例報告3:グルテン免疫反応性、グルテン感受性および自己免疫
ここでは、最初の症状が、過敏性腸症候群の誤診断につながり、不正確な医学的介入を引き起こした症例報告について記載する。グルテン免疫反応性およびグルテン感受性の正しい診断は、治療ミスの数年後に行われた。
【0067】
腹痛、便秘、酸逆流および頭痛を患う49歳の女性が、内科医によって調べられた。調査では、正常なCBC、10.8g/dlのヘモグロビンおよび肝酵素を含む正常な化学プロファイルが明らかになった。数回の訪問にわたり、ANA、リウマチ因子、T3、T4、およびTSHのレベルを含む詳細な生化学的および免疫学的プロファイルが行われ、全ての検査は正常範囲内であった。GI不快感についての度重なる苦情の後、この患者はGI評価が行われた。内視鏡検査およびピロリ菌検査の両方の結果は正常であった。この患者は、過敏性腸症候群と診断され、β遮断薬およびネキシウムが処方され、これらが適度に彼女の徴候を改善した。しかし、4年後、彼女は、以前からのGI症状および頭痛に加えて、倦怠感、かすみ目および顔の発疹の症状を呈した。彼女は、断続的な眠気を催し、過敏であり、呼吸障害を経験した。さらなる実験室検査により、彼女のヘモグロビンは9.7g/dl、MCVは72fLであること、赤血球沈降速度は上昇し(46mm/最初の1時間)、ANAは1:80(正常範囲<40)であり、IgAの平滑筋抗体が少し上昇したこと、二本鎖DNAおよび抽出可能な核抗体は陰性であることが明らかになった。利用可能な証拠に基づいて、リウマチ専門医によって、全身性エリテマトーデス(SLE)と診断され、ステロイドによる治療が開始された。彼女のESRは変動する一方で、彼女のヘモグロビンレベルの低下が続いたが、彼女の全体的な状態にいくらかの改善があった。2年後、彼女は、体幹および脚におけるうずきおよび感覚障害を伴う排尿障害が発症し、これにより、彼女は神経科医に付託された。詳細な質問により、体幹に帯の様な感覚があり、視力が低下し(右目8/46、左目8/23)、眼痛が少しあるが、目の動きは正常であることが明らかになった。実験室の調査により、低ヘモグロビン、異常なMCV、および14μg/Lの低血清フェリチン(正常範囲10〜150μg/L)が明らかになり、鉄欠乏が確認された。脳のMRIスキャンは、多発性硬化症に特有ではない広範な白質の異常を示したが、CSF検査では異常は検出されなかった。血液およびCSF検査は、梅毒、マイコバクテリア、ボレリア菌、EBV、CMV、HTLV、およびヘルペス6型を含む細菌感染ならびにウイルス感染の証拠を示さなかったが、視覚誘発電位は、両方の視神経の遅延を示した。これらの異常を考慮し、かつグルテン感受性の検査が、最初の調査の間に行われなかったので、グルテン感受性の可能性が考えられた。小麦タンパク質およびペプチドのレパートリー、ならびにtTgおよび様々な組織抗原に対する包括的なIgGおよびIgAのパネルが順序づけされた。この包括的なグルテン感受性およびグルテン免疫反応性のスクリーニングにより、小麦抗原、α−グリアジン33−mer、α−グリアジン17−mer、γ−グリアジンおよびω−グリアジン、グルテニン、グルテオモルフィン、プロダイノルフィン、グリアジン−tTg複合体、小麦胚芽凝集素、ならびにグルタミン酸デカルボキシラーゼ65(GAD−65)に対するIgGが明らかになった。小麦抗原および小麦胚芽凝集素に対するIgA抗体が検出された(表4および表5の試料3参照)。興味深いことに、検査されたtTgに対するIgAとIgGの両方は、正常範囲内であった。
【0068】
さらに、ガングリオシド、小脳、シナプシン、ミエリン塩基性タンパク質、コラーゲン、サイログロブリンおよび甲状腺ペルオキシダーゼに対する抗体が検査され、全て、基準範囲を2〜4倍上回った。上部GI内視鏡検査および生検により、正常な組織構造および上皮内リンパ球が明らかにされた。全体的にみて、この患者は、グルテン感受性、ならびにグルテン運動失調、頭痛、白質の異常および視神経脊髄炎を含むグルテン感受性に関連する自己免疫を有すると診断された。5日間の静脈内メチルプレドニゾロンが実施され、徐々に、感覚症状、運動症状および視覚症状が改善された。さらに、小麦抗原およびペプチドのレパートリーに対する非常に高レベルのIgG抗体およびいくらかのIgA抗体に基づき、グルテンを含まない食事が導入され、12週間後に、この患者の臨床徴候に顕著な改善が観察された。彼女は、栄養士の観察の下、100%グルテンを含まない食事療法を継続し、ステロイド治療を中断した。この食事療法の導入後6ヶ月の時点で、小麦抗原、ペプチド、およびヒト組織に対する抗体検査が繰り返され、抗体レベルにおいて60%を上回る減少が観察され、この患者は、ほとんど無症状になった。
【0069】
考察:このデータから、患者は、異常な組織の組織構造または扁平びらん性胃炎、およびtTgに対する抗体を有していなくても、グルテン免疫反応性およびグルテン感受性を患う可能性があり、これに基づいて、セリアック病の診断は正常に行われると結論付けた。グルテン感受性およびグルテン免疫反応性を有する患者において、適切な実験室の検査に基づき、特に、小麦タンパク質およびペプチドのレパートリーに対するIgG抗体およびIgA抗体が時間内に検出されない場合は、患者の徴候は、ループス、MS様症候群、視神経脊髄炎、および多くの他の自己免疫疾患のために患者を治療しなければいけないと多くの臨床医を誤解させる可能性がある。したがって、小麦抗原およびペプチドのレパートリーに対するIgG抗体およびIgA抗体の測定が、自己免疫の徴候および症状のある患者に推奨され、その結果、グルテンを含まない食事療法による治療介入が、グルテン免疫反応性およびグルテン感受性に関連付けられている自己免疫疾患を逆戻りさせるのに役立つであろう。そうでなければ、未治療および/または医療ミスを招き、患者は複数の自己免疫疾患を発症するであろう。
【0070】
D.症例報告4:クローン病と重複するグルテン免疫反応性およびグルテン感受性
クローン病は、患者の3分の2以上の回腸末端に影響を与え、人生の20代または30代の間に現れる場合が多い炎症性疾患である(15)。腸管内菌叢のシフトおよびそれらに対する機能不全反応を含む遺伝的要因および環境要因の組み合わせは、免疫の調節不全、腸のバリア機能の変化、および自己免疫の可能性につながると考えられている(16)。
【0071】
ここでは、毎月2〜3回、胃腸の不快感および下痢を呈する32歳の男性について紹介する。化学パネル、CBC、鉄、フェリチン、トランスフェリン、ビタミンB−12、甲状腺機能、および尿分析を含む検査結果は、正常範囲の中央値内であった。2回目の訪問で、GI症状が続いていたため、彼は、追加の実験室検査を命じたGI専門家に付託された。これらの検査は、糞便の微生物学的評価ならびにH.ピロリ菌、サッカロミセスおよびグリアジンに対する抗体についての血液検査であった。サルモネラ菌、赤痢菌、エルシニア菌、カンピロバクター菌、病原性および腸管出血性の大腸菌またはクロストリジウムディフィシルの検出に関する糞便検査は、陰性であった。血液中の抗体検査については、ピロリ菌に対するIgGおよびサッカロミセス属およびグリアジンに対するIgAは陰性であったが、グリアジンに対するIgGは、59U/mL(正常値≦20U/mL)であり、適度に上昇していた。IgG抗体の上昇は、非特異的または保護的と考えられ、この患者は鎮痛剤が処方され、いかなる特定の障害の診断もなされずに家に送られた。水様性の下痢の頻度が1日に3〜5回に増加し、最後の2ヶ月で体重が12ポンド減ったことが観察されてから3年後、この患者は、セカンドオピニオンを求めて別のGI専門家のもとに行った。胃および十二指腸の生検および内視鏡検査が行われた。上部GI管の内視鏡検査では、幽門洞の胃炎が明らかにされたが、組織学的に、胃および十二指腸の生検は陰性であることが判明した。D−キシロース吸収試験が行われ、尿中1.89g/5hの結果の値は、吸収不良を示唆した。免疫血清学的ANAタイターは1:40を下回り、p−ANCAおよびc−ANCAは陰性であったが、抗サッカロミセス抗原(ASCA)のIgAは85U/mL(正常≦10U/mL)で陽性であった。水様性の下痢の頻度の増加、異常なD−キシロース吸収、陽性のIgA抗ASCAに基づき、クローン病の診断が行われた。コレスチラミンを用いた治療試験が開始されたが、下痢の頻度は変わらなかった。さらに、この患者は、メチルプレドニゾロン230mg、およびメサラジン2×1000mgで治療された。この治療後2年すると、この患者は、S字結腸疾患(sigmoid affection)と共に回腸末端に腸−腸管瘻孔が明らかにされた。入院後、回腸結腸切除が行われ、回腸の22cmが切除された。彼の退院の際、メサラジン3×500mgによる寛解維持が行われた。
【0072】
この治療後8年間、この患者は、水様性の下痢の頻度の増加に苦しみ続け、さらに14ポンド減少した。この期間中に、アスピリン、ロペラミド、およびブデソニドを用いるいくつかの追加の治療の試みがなされたが、残念なことに、有意な臨床的改善はなかった。さらに、この患者は、月単位でさらに体重を失った。病歴を徹底的に調べなおすと、約13年前に、グリアジンIgG抗体が上昇していた事実が明らかになり、これはその当時正常とみなされていた。クローン病のための全ての古典的な治療は、数年にわたりこの臨床像を改善することに失敗したので、グルテン免疫反応性およびグルテン感受性を評価するための包括的な検査が命じられた。これには、小麦、天然かつ脱アミド化されたα−グリアジンペプチド、γ−グリアジン、ω−グリアジン、グルテニン、グルテオモルフィン、プロダイノルフィン、グリアジン−tTg複合体、トランスグルタミナーゼ、小麦胚芽凝集素、およびGAD−65に対するIgGならびにIgAが含まれていた。
【0073】
表6および表7の試料3に示す結果は、この患者において、12種類の検査抗原中11種類に対するIgG抗体が有意に上昇したことを示し、小麦、α−グリアジン33−mer、ω−グリアジン、プロダイノルフィン、胚芽凝集素およびGAD−65に対するIgA抗体は、正常範囲を2〜5倍上回って検出された。これらの結果に基づき、クローン病に加えて、グルテン感受性の診断も行われた。米、ジャガイモ、他のグルテンを含まない/酵母を含まない食品からなる食事療法がすぐに開始され、6週間後に、下痢が完全に止まった。グルテンを含まない食事療法を継続すると、便の硬さが正常になるだけでなく、この患者の体重も増え始めた。経過観察の一年後に、この患者は、正常状態に戻り、彼の失った体重を80%超取り戻していた。
【0074】
考察:この症例は、セリアック病ではなくグルテン感受性とクローン病との関連性について報告している。グルテンを含まない食事療法に対する目覚ましい臨床反応ならびに様々な小麦抗原に対するIgG抗体およびIgA抗体の検出に基づき、かつ14年前に検出されたIgG抗体レベルの再評価に際し、二次的な吸収不良およびグルテン感受性を有するクローン病の診断が、ついに確立された。トランスグルタミナーゼではなくグリアジンに対するIgG抗体が検出されたので、この患者の疾患は、クローン病ではなくグルテン感受性から始まったと主張することができる。グルテンへの暴露の期間および自己免疫疾患のリスクの証明が1999年に公表された(Ventura A et al.,Gastroenterol,117:303−310,1999)という事実にもかかわらず、残念ながら、これは無視され、クローン病の初期診断が行われた。
【0075】
長期間にわたる小麦抗原などの環境要因への連続暴露が炎症を誘導し、炎症性腸疾患またはクローン病を引き起こすということが本明細書で考察される。
【0076】
症例報告に関する結論
前述の症例研究は、セリアック病、グルテン免疫反応性/感受性、および自己免疫の診断を確認するための適切な実験室検査の重要性を示している。前述の症例研究は、何年にもわたる誤った検査および誤診が、何年も苦しみを引き起こし得ることを示している。一方の病状と他方の病状とを鑑別するために、最も正確な情報および最も正確な診断を得ることが重要である。
図5および
図6は、現在の検査状態の概要、ならびにVoltaらによって提案されたセリアック病の診断(17)のより高い精度について提案された今後の方向性を示す。
図7は、本発明の特定の態様に係る本発明のプロトコルを要約し、セリアック病、クローン病、グルテン免疫反応性/感受性および自己免疫の最も正確な情報ならびに確証を提供するために、小麦抗原およびペプチドのレパートリーに対する検査を提案する。
【0077】
本明細書に記載の本発明の概念から逸脱することなく、すでに説明したもの以外の、はるかに多くの改良が可能であることは当業者には明らかである。したがって、本発明の主題は、添付の特許請求の範囲を除き限定されるものではない。さらに、本明細書および特許請求の範囲の両方を解釈する際に、全ての用語は、文脈と一致する、最も広い可能な方法で解釈されるべきである。特に、「含む(comprise)」および「含む(comprising)」という用語は、要素、構成要素、もしくは工程を包括的な方法で表すと解釈されるべきであり、言及される要素、構成要素、もしくは工程が提示されるか、利用されるか、またははっきりと言及されない他の要素、構成要素、もしくは工程と組み合わさることができることを示す。本明細書の特許請求の範囲が、A、B、C・・・およびNからなる群から選択されるもののうちの少なくとも1つについて言及する場合、本文は、AとN、またはBとNなどではなく、この群から1つのみの要素を必要とすると解釈されるべきである。
【0078】
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【0079】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】