特許第5937108号(P5937108)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5937108粒子放射線の非電離効果に関連する線量を測定する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5937108
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】粒子放射線の非電離効果に関連する線量を測定する方法
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/02 20060101AFI20160609BHJP
   G01T 1/24 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   G01T1/02 B
   G01T1/24
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-552240(P2013-552240)
(86)(22)【出願日】2012年1月31日
(65)【公表番号】特表2014-508926(P2014-508926A)
(43)【公表日】2014年4月10日
(86)【国際出願番号】FR2012000040
(87)【国際公開番号】WO2012104505
(87)【国際公開日】20120809
【審査請求日】2015年1月29日
(31)【優先権主張番号】1100303
(32)【優先日】2011年2月1日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】509211099
【氏名又は名称】ユニベルシテ・モンペリエ・2・シアンス・エ・テクニク
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE MONTPELLIER 2 SCIENCES ET TECHNIQUES
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100103263
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 康
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】リシャール、アリネロ
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン、メキ
(72)【発明者】
【氏名】アントワーヌ、トゥボール
(72)【発明者】
【氏名】フレデリク、セニュ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン‐ロック、バイル
【審査官】 鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−161480(JP,A)
【文献】 特開昭63−316439(JP,A)
【文献】 特開平02−118421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00 − 1/16
G01T 1/167 − 7/12
H01L 21/822
H01L 27/04
H01L 31/00 −31/02
H01L 31/0232
H01L 31/0248
H01L 31/0264
H01L 31/08
H01L 31/10
H01L 31/107 −31/108
H01L 31/111
H01L 31/18
H01L 51/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子放射線の非電離効果に関連する線量(Φeq)を測定する方法であって、
半導体材料から形成される電極を備えるMOS型の容量素子(2)に放射線を照射するステップと、
基板の電荷キャリアが誘電体/半導体界面へ向けて引き付けられる容量素子のバイアス状態に対応する蓄積状態の前記容量素子のキャパシタンス(C)を測定するステップと、
前記蓄積状態の前記容量素子のキャパシタンスの測定値から非電離効果に関連する線量(Φeq)を決定するステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
最初に、異なる放射線レベルを受ける基準容量素子を用いて、前記キャパシタンス(C)を非電離効果に関連する線量(Φeq)に対して関連付けるチャートを形成するステップと、前記チャートを読み取って、非電離効果に関連する線量(Φeq)を決定するステップとを備える請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子放射線の線量測定に関し、特に、高フルエンス非電離放射線の線量測定に関する。
【背景技術】
【0002】
宇宙環境において、電子システムは、主に陽子や電子から形成される粒子の放射線を受ける。そのような放射線は、電子システム性能の劣化を引き起こす。放射線に対するこの感受性は、電子部品の小型化によって高められる傾向がある。
【0003】
特定の地上用途は、例えばヨーロッパ合同原子核研究機関(CERN)の大型ハドロン衝突型加速器LHCで電子システムのための拘束放射線環境も生み出す。
【0004】
放射線環境における3つのタイプの電子部品障害、すなわち、電離線量効果、シングルイベント効果、および、非電離線量効果を区別することができる。
【0005】
電離放射線は、電子部品の材料中で電荷(イオン)の形成および捕捉を引き起こす。シングルイベント効果(SEE)は、単一粒子により引き起こされる局所電離によって特徴付けられる。最後に、非電離線量効果は、粒子と結晶格子原子核との衝突に起因する半導体材料中の原子の移動に関連付けられる。
【0006】
放射線量は、フルエンス、すなわち、所定の時間にわたる粒子流量によって表すことができる。慣例により、特定のタイプの粒子のフルエンスは、1MeVエネルギーを有する中性子の等価フルエンスへと変換される。これにより、異なる性質の粒子により引き起こされる劣化を比較することができる。LHCでは、10年間にわたる等価フルエンスが10eq/cmと1015eq/cm(1cm当たりの1MeVでの中性子)との間で変化する。
【0007】
電子回路の劣化を評価するためには、部品に蓄積される放射線量を測定することが望ましい。現在の線量計はシリコンPINダイオードから形成される。
【0008】
PINダイオードは、放射線に晒された後に順方向バイアスがかけられる。1mAに等しい振幅と100ms〜700msの範囲の持続時間とを有する電流パルスが一般に印加され、その後、ダイオードの両端間の電圧が測定される。チャートによって、等価フルエンスが順方向電圧から決定される。
【0009】
PINダイオードは、2.1012eq/cm〜4.1014eq/cmの範囲のフルエンスに対して感受性がある。しかしながら、1mAよりも低い電流を検出感度の損失へ注入することによって、このフルエンス範囲を最大で6,3.1015eq/cmまで拡大することができる。
【0010】
LHCの今後の実験においては、最大で1017eq/cmまでの範囲の更に高いフルエンスに達することが期待される。そのような放射線レベルは、原子力発電所で現在直面されるレベルに対応する。そのようなフルエンスにおいては、従来の線量計がもはや適合されない。確かに、PINダイオードの電圧応答は飽和し、それにより、ダイオードを読み取ることが不可能になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、良好な感度をもって高い放射線レベルを測定するための方法を提供する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この必要性は、半導体材料から形成される電極を備える容量素子への放射線照射と、蓄積状態の容量素子のキャパシタンスの測定と、蓄積状態の容量素子のキャパシタンスの測定値からの粒子放射線の非電離効果に関連する線量の決定とを行うことによって満たされるようになる。
【0013】
他の利点および特徴は、単なる非限定的な例示目的のために与えられて添付図面に表される本発明の特定の実施形態の以下の説明から、より明確に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、容量素子を備える、非電離放射線量を測定するための装置を示している。
図2図2は、幾つかの放射線レベルΦeqにおける、放射線を浴びた容量素子のキャパシタンスCと両端間に印加される電圧Vとの間の関係を示すグラフである。
図3図3は、キャパシタンスCと等価フルエンスΦeqとの間の関係を示すチャートである。
図4図4は、基板の寄生抵抗Rと等価フルエンスΦeqとの間の関係を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明者らは、蓄積状態での容量素子のキャパシタンスが粒子放射線の非電離効果に関連する線量にしたがって変化することを認識した。キャパシタンスは、1017eq/cm程度の高フルエンスに至るまで連続的に且つ単調に変化する。ここでは、この認識を生かして、高性能非電離放射線量計を形成するものとする。
【0016】
図1は、容量素子2を備える非電離放射線量計を表している。容量素子2は、金属またはポリシリコンの電極4(ゲート)と、誘電体層6(SiO,Si,HFO,Ta…)と、半導体材料、例えばシリコン基板から形成される電極8とを備える。容量素子は、MOS型、すなわち、金属/酸化物/半導体のキャパシタであることが好ましい。
【0017】
線量計は、素子2の端子に、すなわち、電極4,8に接続されるA.C.電圧発生器10と、素子2を通じて流れる電流Iを測定するための回路12とを更に備える。回路12は、電流の値から蓄積モードの素子2のキャパシタンスを決定する計算機14に接続される。このとき、計算機14は、例えば表16またはチャートにより、キャパシタンス値に対応する放射線量Φeqを決定する。
【0018】
発生器10、測定回路12、および、計算機14(表16を計算機14に組み込むことができる)は、単一の装置、例えば半導体パラメータ分析器を形成してもよい。
【0019】
定義により、蓄積状態は、基板の大部分の電荷キャリア(n型基板の電子およびp型基板の正孔)が誘電体/半導体界面へ向けて引き付けられる容量素子のバイアス状態に対応する。
【0020】
線量を決定するために、蓄積状態の容量素子のキャパシタンスが最初に測定される。そのような測定は、例えば容量素子のC−V曲線の取得によって放射中または放射後に行われてもよい。キャパシタンス測定は、高周波および低周波で行われてもよい。
【0021】
図2は、異なる放射線レベルにおける、基準容量素子のキャパシタンスC対両端間に印加される電圧Vのプロットの例を表している。破線の曲線は、放射線を浴びていない容量素子のキャパシタンスを示している。動作条件は以下の通りである。
【0022】
−容量素子は、1.8MeVで荷電される陽子の流れによって照射される。
【0023】
−陽子フルエンスは1012cm−2と5.1013cm−2との間で変化し、これは、1,8.1013eq/cm〜9.1014eq/cmの範囲の等価フルエンスに対応する(17,9程度の換算率k)。
【0024】
−容量素子のゲートがポリシリコンから形成され、二酸化ケイ素誘電体層が7nm厚を有し、また、シリコン基板がn型ドープされる。そのドーピングレベルは1015cm−2に等しい。
【0025】
−基板厚さは540μmであり、容量素子の表面積は500×500μmに等しい。
【0026】
−基板は、放射線に晒されている間にわたって接地される。
【0027】
等価フルエンスφeqごとに、キャパシタンスCは、プラス電圧Vにおいて最大値Cに達する。n型容量素子、すなわち、n型ドープされた基板上に形成される素子の場合には、これらの電圧が蓄積モードに対応する。したがって、フルエンスφeqが増大するにつれて蓄積状態のキャパシタンス値Cが減少するのが分かる。
【0028】
この現象を説明するため、本発明者らは、陽子フルエンスごとに等価X線量を計算した。X線は専ら電離しているにすぎない。本発明者らは、その後、容量素子(前述した容量素子と同一)をそのようなX線量に晒して、容量素子のキャパシタンスの変化がないことを観察した。
【0029】
したがって、キャパシタンスCの減少は、非電離線量効果のみに起因しているように思われる。ここで、非電離放射線は、電荷キャリアの移動性およびそれらの寿命を低下させる基板中の原子の移動によって特徴付けられる。これは、基板抵抗率の増大をもたらす。
【0030】
したがって、キャパシタンスCの減少は、放射線量と共に増大する基板の寄生抵抗に帰属させられてもよい。論文[「Note on the analysis of C−V curves for high resistivity substrates」,Estrada Del Cueto,Solid−State Electronics,39(10),p.1519,1996]から引用される以下のモデルにより、線量計により測定されるキャパシタンスCとこの抵抗との間の関係を得ることができる。
【0031】
蓄積状態では、基板と関連付けられるキャパシタンスを無視できる。その結果、容量素子を酸化物キャパシタンスCOXおよび直列の基板抵抗Rの形態でモデリングできる。キャパシタンスCOXは、酸化物の性質および厚さにしたがって変化する。先の例では、キャパシタンスCOXの理論値が1200pFに等しい。
【0032】
このモデルは、論文[「High−energy proton irradiation effects on tunelling MOS capacitors」,Fleta et al.,Microelectronics Engineering,72,pp.85−89,2004]においても使用された。著者は、MOSキャパシタンスを陽子流に晒している最中の直列抵抗の出現を強調する。しかしながら、彼は、それを、基板抵抗率の増大によってではなく、基板の背面接点の劣化によって説明する。これは、直列抵抗がキャパシタンス表面積とは無関係だからである。
【0033】
このモデルを用いると、キャパシタンスCの測定中に容量素子を通じて流れる電流Iは、以下の関係により与えられる。
【数1】
【0034】
ACは、測定装置によってゲートに印加されるA.C.信号の振幅であり、また、ωはその角周波数である。
【0035】
このとき、電流の虚数部分は以下のように書き表される。
【数2】
【0036】
これは、蓄積状態で測定されるキャパシタンスCと直列抵抗Rとの間の関係を与える。
【数3】
【0037】
図2の曲線に基づき、蓄積キャパシタンスCと非電離放射線量Φeqとの間の関係を示すチャートを形成することができる。
【0038】
図3はそのようなチャートを表している。キャパシタンスCの測定後、チャートを読み取ることにより、容量素子に蓄積される対応する線量Φeqを決定することができる。
【0039】
非電離放射線量にしたがった容量素子のキャパシタンスの変化は、ほぼ5.1012eq/cm〜1016eq/cmの範囲のフルエンスにおいて形成される場合がある。検出下限および検出上限は、容量素子の性質および寸法にしたがって、特に容量素子の表面積にしたがって変化する場合がある。したがって、容量素子は、原子力発電所で直面される放射線レベルなど、高い放射線レベルを測定できるようにする。
【0040】
図4は、線量を読み取るために使用されてもよい第2のチャートを表している。このチャートは、直列抵抗Rを等価フルエンスφeqに関連付ける。そのチャートは、関係(3)と図2のキャパシタンスCの値とから抵抗Rの値を計算することによって得られた。検出閾値を発端として直列抵抗Rがフルエンスと共に直線的に変化するのが分かる。図4の例では、この閾値が約7.1013eq/cmである。
【0041】
容量素子の応答は一般に直線的であり、そのため、線量計の読み取りが更に容易になり、線量計の信頼性が高まる。MOS容量素子は有用なマイクロエレクトロニクス部品である。したがって、線量計の形成が容易である。PINダイオードとは反対に、MOS容量素子は、約20.10cm−2.Ωの良好な感度を維持しつつ高いフルエンス(直列抵抗単位当たりのフルエンス)を測定できるようにする。
【0042】
線量計の多くの変形および改良を当業者が想起できる。確かに、線量計は特定の容量素子構造に限定されない。容量素子は、特に、例えばn型またはp型ドープされたゲルマニウムまたはシリコン−ゲルマニウム合金から成る様々な性質の半導体基板上に形成されてもよい。
図1
図4
図2
図3