(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5937265
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】ギター用カバー
(51)【国際特許分類】
G09B 15/00 20060101AFI20160609BHJP
G10G 7/00 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
G09B15/00 Z
G10G7/00 100
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-205341(P2015-205341)
(22)【出願日】2015年10月19日
【審査請求日】2015年12月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503196662
【氏名又は名称】株式会社新上
(74)【代理人】
【識別番号】100074251
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100066223
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 政美
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 大
【審査官】
植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】
実公昭62−46224(JP,Y2)
【文献】
特開2005−300592(JP,A)
【文献】
特許第2585039(JP,B2)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0145095(US,A1)
【文献】
米国特許第4121494(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0221293(US,A1)
【文献】
ギターの弦が錆びないように保管できますか。,鉄のサビ対策情報室!,2013年10月28日,URL,http://sabi.doorblog.jp/archives/34349084.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B15/00−15/08
G10G 1/00− 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギターの弦を覆う柔軟性を有する帯状のカバー体と、該カバー体の長手端部に設けられると共に、ギターのナットの位置又はヘッドの頂部に着脱自在に連結する定位置連結体とを備え、
カバー体は、ギターのネック上に位置する弦の表面を覆うネックカバーと、ギターのボディ上端からブリッジまでに位置する弦の表面を覆うボディカバーとを備え、
該定位置連結体をギターのナットの位置又はヘッドの頂部に連結してギターのヘッドを立てると、ギターの弦に沿って該弦の表面をカバー体が覆うように構成し、
合成樹脂製のシート基材又はフィルム基材に、銅成分を含侵又は混入して形成した防錆シートをカバー体の弦に接触する側に設けたことを特徴とするギター用カバー。
【請求項2】
前記カバー体の前記ボディカバーに装飾部が施された請求項1記載のギター用カバー。
【請求項3】
前記カバー体の前記弦側に、帯板状の嵌合体を設け、該嵌合体に複数条の嵌合溝を形成し、該嵌合溝側の面に前記防錆シートを貼り付けて前記ギターの前記弦の表面を前記カバー体が覆ったときに嵌合体の嵌合溝内に前記弦が収納されるように構成した請求項1記載のギター用カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばケースから出したギターをそのまま部屋に置くのに好適なギター用カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ギターを保存するには、ケースやカバー等に収納し、湿度を遮断して弦の錆び付き等を防止している。このようなケースやカバーは、長期の保存や運搬などに多く使用されており、部屋などで日常的に使用する場合は、ケースから取り出した状態でそのまま部屋に置いている場合が多い。すなわち、日常でギターを頻繁に使用する場合は、ケースからの出し入れが面倒な上に、出し入れの際に、糸巻にケースやカバーが触れると調律した弦が狂ってしまう虞がある。
【0003】
ところが、ギターを頻繁に使用する場合でも、スチール弦が常に外気にさらされている状態では、弦の錆付きが早くなる不都合があった。そこで、スチール弦の錆付き防止する弦楽器のカバーが特許文献1で提案されている。
【0004】
このカバーによると、スポンジ等の弾性材で形成した弦の表面を覆う密封体と、この密封体を任意の位置で支持する剛性の支持体と、該支持体に移動可能に取付けられた固定用のバンドとで構成するもので、支持体に沿って移動するバンドで、弦を覆う密封体を弦楽器の竿及び胴に固定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6-10998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1に記載のカバーは、剛性を有する木製又はプラスチック製の支持体と、この支持体の片面に設けたスポンジ等の密封体を弦に圧着して使用するので、装着時にはギターよりもカバー自体が嵩張ってしまい、日常的に部屋置きするには違和感が生じる虞があった。
【0007】
しかも、このカバーをギターの弦に装着するには、密着体を使用のたびに弦の適位置に合わせながら支持体に装着しているバンドの位置を調整してギターに取付ける作業になる。そのため、日常的に頻繁に使用するには装着作業に多くの手間を要する不都合があった。
【0008】
また、このカバーは、木製やプラスチック製の支持体の片側にスポンジ等の密封体を設けた構造であるから、弦に装着したカバーは極めて嵩張るものになる。そのため、ギターをケース等に収納する際に、このカバーが妨げになり、カバーを装着した状態で収納できなくなる不都合もある。
【0009】
更に、このカバーは、スポンジ等の柔軟で弾力性のある密封体をネックに押し当てて弦を被覆し、外気を遮断することで、弦の錆付きを遅延化しようとするものである。ところが、このようなスポンジ等の密封体にも多くの空気が含まれているので、この密封体で弦を被覆したとしても、弦の錆び付き防止効果を長時間持続させることは困難である。
【0010】
そこで本発明は、上述の課題を解消すべく案出されたもので、ギターへの取付け作業が極めて容易で、しかも、弦の錆び付き防止効果を長時間持続させることができ、日常的に部屋置きする場合やケース等に収納する場合でも弦の錆付きを防止することができる弦楽器用カバーの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成すべく本発明における第1の手段は、ギター10の弦11を覆う柔軟性を有する帯状のカバー体1と、該カバー体1の長手端部に設けられると共に、ギター10のナット12の位置又はヘッド13の頂部に着脱自在に連結する定位置連結体2とを備え、
カバー体1は、ギター10のネック14上に位置する弦11の表面を覆うネックカバー1Aと、ギター10のボディ15上端からブリッジ16までに位置する弦11の表面を覆うボディカバー1Bとを備え、
該定位置連結体2をギター10のナット12の位置又はヘッド13の頂部に連結してギター10のヘッド13を立てると、ギター10の弦11に沿って該弦11の表面をカバー体1が覆うように構成し、
合成樹脂製のシート基材又はフィルム基材に、銅成分を含侵又は混入して形成した防錆シートSをカバー体1の弦11に接触する側に設けたことにある。
【0013】
第
2の手段において、前記カバー体の前記ボディカバー1Bに装飾部1Cが施されたものである。
【0014】
第
3の手段は、前記カバー体1の前記弦11側に、帯板状の嵌合体4を設け、該嵌合体4に複数条の嵌合溝4Aを形成し、
該嵌合溝4A側の面に前記防錆シートSを貼り付けて前記ギター10の前記弦11の表面を前記カバー体1が覆ったときに嵌合体4の嵌合溝4A内に前記弦11が収納されるように構成したものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1のごとく、定位置連結体2をギター10のナット12の位置又はヘッド13の頂部に連結してギター10のヘッド13を立てるとギター10の弦11に沿って該弦11の表面をカバー体1が覆うように構成したことにより、ギターへの取付け作業が極めて容易になった。この結果、従来のように、密着体を弦の位置に合わせたり、バンドの位置を調整しながらギターに取付けたりする作業は不要になり、定位置連結体2を定位置に連結するだけで簡単に着脱できるので、日常でギターを頻繁に使用する場合でも、極めて簡単に着脱することができる。
【0016】
しかも、カバー体1の弦11に接触する側に防錆シートSを設けているので、弦の錆び付き防止効果を長時間持続させることができる。したがって、ギター10を長期間使用しない場合でも、弦11の発錆を防止することができる。
【0017】
更に、防錆シートSは、合成樹脂製のシート基材又はフィルム基材に、銅成分を含侵又は混入して形成されたものであるから、銅成分が有する防錆効果を防錆シートSの接触部位及び防錆シートSの近傍周辺まで及ぼすものになる。この結果、防錆シートSにて接触している弦11はもとより、防錆シートSの周囲まで防錆効果を及ぼすことができる。
【0018】
また、カバー体1は、ネックカバー1Aとボディカバー1Bとを備えているので、ギター10の弦11を位置別に被覆するので、ネック14上の弦11からボディ15上に至る弦11までを確実に覆うことかできる。
【0019】
請求項2のごとく、ギター10のボディ15上端からブリッジ16までに位置する弦11の表面を覆うボディカバー1Bに装飾部1Cを施しているので、装着時にはギターの装飾効果を有するので日常的に部屋置きする場合でも違和感なく使用することができる。
【0020】
請求項
3のごとく、カバー体1の弦11側に、帯板状の嵌合体4を設け、該嵌合体4に複数条の嵌合溝4Aを形成し、ギター10の弦11の表面をカバー体1が覆ったときに嵌合体4の嵌合溝4A内に弦11が収納されるように構成したことで、より密着性の高い被覆効果が得られる。したがって、弦11の錆び付き防止の効果を高めることができる。
【0021】
しかも、この嵌合体4の嵌合溝4Aの内部に弦11が収納する作業においても、定位置連結体2を定位置に連結するだけで、嵌合溝4Aの位置が決定されるから、極めて簡単な作業で済む。
【0022】
このように本発明によると、ギターへの取付け作業が極めて容易で、しかも、弦の錆付きを防止することができるなどといった当初の目的を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】本発明のカバー体の一実施例を示す断面図である。
【
図5】本発明の他の実施例を示す使用状態の要部断面図である。
【
図6】本発明の他の実施例を示す使用状態の斜視図である。
【
図7】本発明の他の実施例を示し、(イ)は正面図、(ロ)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施例を説明する。本発明の基本構成はカバー体1と定位置連結体2とで構成されている(
図1参照)。
【0025】
カバー体1は、柔軟性を有する帯状の部材で、ギター10の特にスチール製の弦11を覆うように構成している。カバー体1の材質は、例えは織物や不織布等の他、合成樹脂製のシート材など、任意に選択することが可能である。図示のカバー体1は、撥水性の生地1aの片面に不織布1bを設けた二重構造を成している(
図2参照)。
【0026】
更に、カバー体1の弦11に接する側に、防錆シートSを設けている(
図2参照)。この防錆シートSは、例えば、ポリマー樹脂等の合成樹脂製のシート基材又はフィルム基材に、銅成分を含侵又は混入するなどして、銅素材が有する防錆効果を防錆シートSの全面に有するものであり、既に知られている防錆シートSから自由に選択することができる。
【0027】
図示の防錆シートSは、生地1aと不織布1bとで二重構造を成したカバー体1の不織布1b側の面に縫い付けたものである(
図2参照)。このように、不織布1b側に防錆シートSを設けることで、弦11を覆ったときに、不織布1bが弦11を柔らかに包み込むので、弦11の側面まで防錆シートSが接触可能になり、しかも、耐衝撃性も備えることになる。また、防錆シートSの取付け手段は、この外、生地1aに直接貼り付けるなど、カバー体1の材質に応じて任意の手段で設けることができる。
【0028】
一方、定位置連結体2は、このカバー体1の長手端部に設けられている連結部材で、カバー体1をギター10の所定の位置に連結するように構成している。
図1に示す定位置連結体2は、紐状の定位置連結体2を示しているが、面ファスナーを利用した定位置連結体2を設けることも可能である(
図8参照)。このように、定位置連結体2の構成は任意に変更できる。
【0029】
ギター10に連結する所定位置とは、ギター10のナット12の位置又はヘッド13の頂部のいずれかより選択される。すなわち、ギター10のナット12は、ヘッド13とネック14との境界部分にある弦11を支持する部材である。このナット12の位置に定位置連結体2を連結する(
図3参照)。
【0030】
また、ヘッド13の頂部とは、文字どおりギター10のヘッド13の頂点に位置する部位で、ヘッド13の両側又は片側にペグ17と称する弦11を巻き付ける部材が設けられている(
図6参照)。このようなヘッド13の頂部に連結する定位置連結体2は、袋状を成しており、ヘッド13の頂部に被せるだけで装着できるものである(
図6、7参照)。
【0031】
そして、定位置連結体2をギター10のナット12の位置又はヘッド13の頂部に連結し、この状態でヘッド13を立てると、定位置連結体2に連結されているカバー体1がギター10の弦11に沿って該弦11の表面を覆うように構成している(
図3、
図6参照)。
【0032】
カバー体1は、ネックカバー1Aとボディカバー1Bとを備えている(
図1参照)。ネックカバー1Aは、ギター10のネック14上に位置する前記弦11の表面を覆う部位である。図示のネックカバー1Aには補助連結体3を設けている。この補助連結体3は、ネック14の下端部分に連結する部材で、ネックカバー1Aの位置ずれを防止する。尤も、定位置連結体2を連結してギター10のヘッド13を立てると、カバー体1が自然に弦11を覆うことになる。
【0033】
一方、ボディカバー1Bは、ギター10のボディ15上端からブリッジ16までに位置する前記弦11の表面を覆う部位を示している(
図3参照)。このボディカバー1Bには装飾部1Cが施されている。図示の装飾部1Cは、ボディカバー1Bをネクタイに見立てた装飾を施しているが、この装飾部1Cは自由に変更することができる。
【0034】
カバー体1は、生地やシートのまま使用する他、このカバー体1の弦11側に、帯板状の嵌合体4を設けることも可能である(
図4参照)。嵌合体4は、例えばスポンジ材や発泡樹脂材等の柔らかい材質で形成されるもので、複数条の嵌合溝4Aを形成し、この嵌合溝4A側の面に防錆シートSを貼り付けている。この嵌合溝4Aは、ギター10の弦11の表面をカバー体1が覆ったときに、弦11が収納されるように構成したものである(
図5参照)。このとき、補助連結体3にてネックカバー1Aをネック14に固定することで、弦11と嵌合体4とを一体化することが可能になる。
【0035】
尚、本発明において図示例に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で設計変更は自由に行える。また本発明の使用例も限定されるものではない。
【符号の説明】
【0036】
S 防錆シート
1 カバー体
1a 生地
1b 不織布
1A ネックカバー
1B ボディカバー
1C 装飾部
2 定位置連結体
3 補助連結体
4 嵌合体
4A 嵌合溝
10 ギター
11 弦
12 ナット
13 ヘッド
14 ネック
15 ボディ
16 ブリッジ
17 ペグ
【要約】
【課題】ギターへの取付け作業が極めて容易で、弦の錆付きを長期間防止することができる弦楽器用カバーを提供する。
【解決手段】ギター10の弦11を覆う柔軟性を有する帯状のカバー体1を設ける。カバー体1の長手端部に定位置連結体2を設ける。定位置連結体2をギター10のナット12の位置又はヘッド13の頂部に連結する。定位置連結体2を連結してヘッド13を立てると弦11の表面をカバー体1が覆うように構成する。カバー体1の弦11に接触する側に防錆シートSを設ける。
【選択図】
図1