(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも一方の厚さ面から突出する円柱状の回転軸を有する扉体、及び一方の前記厚さ面と所定の間隙を設けて対向する内壁面を有する枠体を備え、前記回転軸を中心に前記扉体が前記枠体と回転自在に連結した回転式の防火扉であって、
前記枠体は、
当該枠体の内壁面から突出し、前記回転軸を受容して回転自在に連結する軸受穴を開口した円筒状の軸受部と、
前記扉体の一方の面に当接して前記扉体の一方の片翼と前記枠体との間隙を閉塞でき、前記軸受部の外周の第1接線方向から当該軸受部に連続した第1戸当り部と、
前記扉体の他方の面に当接して前記扉体の他方の片翼と前記枠体との間隙を閉塞でき、前記軸受部の外周の第2接線方向から当該軸受部に連続した第2戸当り部と、を備え、
前記扉体は、前記回転軸の外周に連続する円弧壁を形成し、当該扉体の厚さ面から窪んだ一対の溝部を有し、
前記溝部は、
前記軸受部の先端面が当接する第1底面を有し、前記円弧壁に対向する部分円弧壁を有する円弧溝と、
前記円弧溝の第1底面から段差を設けて窪んだ第2底面を有し、前記円弧壁に対向すると共に、前記部分円弧壁に連続する平坦壁を有する異形溝と、を有し、
前記異形溝の平坦壁は、前記第1戸当り部の外壁、又は前記第2戸当り部の外壁に当接して前記枠体に対する前記扉体の回動角度を規定し、
一対の前記円弧溝は、前記扉体の一方の面から他方の面に貫通する隙間ができないように、前記軸受部で閉塞されると共に、前記扉体の一方の面から他方の面に向けて迂回している、回転式の防火扉。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示されたような、鉛直方向に延びる回転軸を有する回転式の防火扉を建物の通路などに設置すれば、回転軸の下端部を支持する軸受を除き、扉本体の案内部材又はスライド部材を床面から突出する必要がないので、いわゆる、バリアフリーになるので、通路の往来が容易になる。
【0011】
一般に、片開き式の防火扉は、床面を除いて扉本体の三方を枠体で囲っている。そして、片開き式の防火扉は、これらの枠体に戸当りを設けて、扉本体の周縁に当接させることで、加熱側から非加熱側に向けて貫通する隙間を無くしている。
【0012】
特許文献1に開示された回転式の防火扉は、扉本体の両側面に対向する一対の枠体に戸当りを設けて、加熱側から非加熱側に向けて貫通する隙間を無くすことができる。
【0013】
しかし、特許文献1に開示された回転式の防火扉は、回転軸を中心に扉本体が回転するので、扉本体の上面に対向する枠体に設ける戸当りが左右に分断され、加熱側から非加熱側に向けて貫通する隙間を無くすことが困難であった。鉛直方向に延びる回転軸を有する回転式の防火扉において、加熱側から非加熱側に向けて貫通する隙間を無くす構造が求められている。
【0014】
又、特許文献2による防火扉は、親扉が開く方向と反対方向に子扉を開くことができるが、施錠を解除しないと子扉を開くことができず、人員の退避が優先される非常時には、子扉の施錠を解除することを期待することが困難である。
【0015】
水平方向に延びる回転軸を有する回転式の子扉を防火扉である親扉に設置することで、人員の退避が優先される非常時に、子扉の施錠を解除することなく、子扉から緊急脱出できる。
【0016】
しかし、水平方向に延びる回転軸を中心に子扉が回転するので、子扉の両側面に対向する枠体に設ける戸当りが上下に分断され、加熱側から非加熱側に向けて貫通する隙間を無くすことが困難であった。水平方向に延びる回転軸を有する回転式の子扉を有する防火扉において、加熱側から非加熱側に向けて貫通する隙間を無くす構造が求められている。そして、以上のことが本発明の課題といってよい。
【0017】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、加熱側から非加熱側に向けて貫通する隙間を無くした回転式の防火扉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者は、一方の厚さ面から突出する回転軸を有する扉体、及び一方の厚さ面と所定の間隙を設けて対向する内壁面を有する枠体を備え、回転軸を中心に扉体が枠体と回転自在に連結した回転式の防火扉であって、回転軸を受容して回転自在に連結する軸受穴を開口した円筒状の軸受部を枠体の内壁面から突出し、扉体の一方の面に当接する第1戸当り部を軸受部の第1接線方向から軸受部に連続させると共に、扉体の他方の面に当接する第2戸当り部を軸受部の第2接線方向から軸受部に連続させることで、加熱側から非加熱側に向けて貫通する隙間を無くすことできると考え、これに基づいて、以下のような新たな回転式の防火扉を発明するに至った。
【0019】
(1)本発明による回転式の防火扉は、少なくとも一方の厚さ面から突出する円柱状の回転軸を有する扉体、及び一方の前記厚さ面と所定の間隙を設けて対向する内壁面を有する枠体を備え、前記回転軸を中心に前記扉体が前記枠体と回転自在に連結した回転式の防火扉であって、前記枠体は、当該枠体の内壁面から突出し、前記回転軸を受容して回転自在に連結する軸受穴を開口した円筒状の軸受部と、前記扉体の一方の面に当接して前記扉体の一方の片翼と前記枠体との間隙を閉塞でき、前記軸受部の外周の第1接線方向から当該軸受部に連続した第1戸当り部と、前記扉体の他方の面に当接して前記扉体の他方の片翼と前記枠体との間隙を閉塞でき、前記軸受部の外周の第2接線方向から当該軸受部に連続した第2戸当り部と、を備え、前記扉体は、前記回転軸の外周に連続する円弧壁を形成し、当該扉体の厚さ面から窪んだ一対の溝部を有し、前記溝部は、前記軸受部の先端面が当接する第1底面を有し、前記円弧壁に対向する部分円弧壁を有する円弧溝と、前記円弧溝の第1底面から段差を設けて窪んだ第2底面を有し、前記円弧壁に対向すると共に、前記部分円弧壁に連続する平坦壁を有する異形溝と、を有し、前記異形溝の平坦壁は、前記第1戸当り部の外壁、又は前記第2戸当り部の外壁に当接して前記枠体に対する前記扉体の回動角度を規定し、一対の前記円弧溝は、前記扉体の一方の面から他方の面に貫通する隙間ができないように、前記軸受部で閉塞されると共に、前記扉体の一方の面から他方の面に向けて迂回している。
【0020】
(2)前記回転軸は、その回転中心が鉛直方向に延びる鉛直軸からなり、前記扉体は、建物の開口部を開閉自在な2ウィング型の防火扉本体からなってもよい。
【0021】
(3)前記回転軸は、その回転中心が水平方向に延びる一対の水平軸からなり、前記扉体は、防火扉である親扉に設けた開口部を開閉自在に一対の前記水平軸で連結した子扉からなってもよい。
【0022】
(4)前記回転軸は、その回転中心が水平方向に延びる一対の水平軸からなり、前記扉体は、床面に設けた開口部を開閉自在に一対の前記水平軸で連結した蓋体からなってもよい。
【0023】
(5)前記親扉に設けた開口部は、人の通過が自在な程度に開口されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明による回転式の防火扉は、扉体の厚さ面から突出する回転軸を回転自在に連結する軸受穴を開口した円筒状の軸受部を枠体に設け、扉体の一方の面又は他方の面に当接できる第1戸当り部及び第2戸当り部を軸受部に連続させているので、扉体の一方の面から他方の面に向けて貫通する隙間を無くすことできる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
[第1実施形態]
(回転式の防火扉の構成)
最初に、本発明の第1実施形態による回転式の防火扉の構成を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による回転式の防火扉の構成を示す正面図である。
図2は、第1実施形態による回転式の防火扉の構成を示す横断面図である。
【0027】
図3は、第1実施形態による回転式の防火扉に備わる回転軸の構成を示す図であり、
図3(A)は、回転軸の正面図、
図3(B)は、
図3(A)のA−A矢視断面図、
図3(C)は、
図3(A)のB−B矢視断面図、
図3(D)は、
図3(A)のC−C矢視断面図である。
【0028】
図4は、第1実施形態による回転式の防火扉に備わる回転軸の構成を示す斜視図であり、扉体側に設けた軸部と枠体側に設けた軸受部を対向配置した状態図である。
図5は、第1実施形態による回転式の防火扉に備わる回転軸の構成を示す斜視図であり、扉体側に設けた軸部と枠体側に設けた軸受部を対向配置した状態図である。
【0029】
図6は、第1実施形態による回転式の防火扉に備わる回転軸の構成を示す図であり、
図6(A)は、枠体に対して扉体が直交するように相対的に回転した状態で示す回転軸の正面図、
図6(B)は、
図6(A)のA−A矢視断面図、
図6(C)は、
図6(A)のB−B矢視断面図、
図6(D)は、
図6(A)のC−C矢視断面図である。
【0030】
(全体構成)
図1又は
図2を参照すると、本発明の第1実施形態による回転式の防火扉(以下、防火扉と略称する)10は、扉体となる2ウィング型の防火扉本体1と枠体2を備えている。防火扉本体1は、建物に設けた開口部1hを開閉できる。枠体2は、防火扉本体1の底面を除く三方を囲っている。枠体2は、水平方向に延びる枠体21fと鉛直方向に延びる一対の枠体22f・22fで構成している。一対の枠体22f・22fは、防火壁Wに固定されている(
図2参照)。
【0031】
又、
図1又は
図2を参照すると、防火扉10は、一組の回転軸3・4を備えている。一組の回転軸3・4は、その仮想の回転中心Qが鉛直方向に延びる鉛直軸からなっている。上部の回転軸3は、枠体21fと回転自在に連結している。下部の回転軸4は、床面FLに埋設された軸受部材41と回転自在に連結している。
【0032】
図2を参照すると、防火扉本体1は、通路Gを閉塞している。
図2に示した状態において、一方の通路G側で火災が発生すると、他方の通路G側に火炎が侵入することを防止できる。回転中心Qを中心に、防火扉本体1を反時計方向に回転することで、通路Gを往来できる。
【0033】
(扉体の構成)
次に、扉体となる防火扉本体の構成を説明する。
図1又は
図2を参照すると、防火扉本体1は、鋼板を折り曲げ加工及び溶接加工して、所定の厚さを有するように、内部に空洞を有する袋状に形成している。防火扉本体1の内部には、断熱材を収容しておくことが好ましい。
【0034】
図1又は
図2を参照すると、防火扉本体1は、一対の四角柱状の縦枠部材11・11を備えている。一対の縦枠部材11・11は、防火扉本体1の両側面に固定している。又、防火扉本体1は、四角柱状の中間横枠部材30と一対の四角柱状の横枠部材13f・13fを備えている(
図3参照)。中間横枠部材30及び一対の横枠部材13f・13fは、防火扉本体1の上面に固定している。
【0035】
図2を参照して、防火扉本体1の右半部1Rh側に固定した縦枠部材11が第1戸当り部21sの縦枠21vに当接することで、開口部1hの内壁と防火扉本体1の右半部1Rhとの隙間dを閉塞できる。防火扉本体1の左半部1Lh側に固定した縦枠部材11が第2戸当り部22sの縦枠22vに当接することで、開口部1hの内壁と防火扉本体1の左半部1Lhとの隙間dを閉塞できる。
【0036】
図3を参照すると、中間横枠部材30は、その両端部に凸部を形成している。一方、横枠部材13fは、その端部に凹部を形成している。中間横枠部材30の凸部と横枠部材13fの凹部が嵌合するように、防火扉本体1の上面に配置することで、防火扉本体1の一方の面から他方の面に向けて貫通する隙間ができないように構成している。
【0037】
図1を参照すると、防火扉本体1は、ドアノブ14を右半部1Rhに配置している。ドアノブ14を回転させることで、防火扉本体1と枠体22fを連結しているラッチボルト(図示せず)が解除され、防火扉本体1を開くことができる。防火扉本体1を閉じると、ラッチボルト(図示せず)が自動復帰して、風圧などで防火扉本体1が容易に開かないようにすることができる。なお、防火扉本体1の左半部1Lhにもドアノブ15を配置している。
【0038】
図1を参照して、右半部1Rhのドアノブ14を把持して、ドアノブ14を押すと、防火扉本体1を開くことができる。同様に、左半部1Lhのドアノブ15を把持して、ドアノブ14を引くと、防火扉本体1を開くことができる。
図1の紙面と反対側にもドアノブ14・15を設けており、これらのドアノブ14・15のいずれか一方を把持して、防火扉本体1を回転できる。
【0039】
(回転軸の構成)
次に、枠体の構成を補足しながら、回転軸の構成を説明する。
図3から
図6を参照すると、回転軸3は、円筒状の軸受部31と円柱状のボス32で構成している。軸受部31は、枠体2に設けた枠体21fの内壁から突出している。又、軸受部31は、ボス32を受容して回転自在に連結する円形の軸受穴31hを開口している。
【0040】
図6から
図9を参照すると、ボス32は、中間横枠部材30の一方の面から突出している。中間横枠部材30は、防火扉本体1の上面に配置された一対の横枠部材13f・13fの間に配置している。又、中間横枠部材30は、一対の雌ねじ部30s・30sを設けている。ボルト部材30bを用いて、子扉6の内部から雌ねじ部30sに螺合することで、中間横枠部材30を防火扉本体1の上面に固定できる(
図3(D)参照)。
【0041】
図3(B)又は
図4及び
図6(B)を参照すると、軸受部31は、その円環状の肉厚部31wが第1戸当り部21sの横枠21hに第1接線方向から連続している。第1戸当り部21sの横枠21hは、中間横枠部材30及び横枠部材13fの一方の面に当接して、防火扉本体1の右半部1Rhと枠体21fとの間隙を閉塞できる(
図1参照)。
【0042】
又、
図3(B)又は
図4及び
図6(B)を参照すると、軸受部31は、その円環状の肉厚部31wが第2戸当り部22sの横枠22hに第2接線方向から連続している。第2戸当り部22sの横枠22hは、中間横枠部材30及び横枠部材13fの他方の面に当接して、防火扉本体1の左半部1Lhと枠体21fとの間隙を閉塞できる(
図1参照)。
【0043】
このように、軸受部31は、防火扉本体1の一方の面から他方の面に向けて貫通する隙間ができないように、第1戸当り部21s及び第2戸当り部22sで遮蔽されている。
【0044】
図3(C)又は
図5及び
図6(C)を参照すると、中間横枠部材30は、ボス32の外周から窪んだ一対の溝部30d・30dを形成している。溝部30dに形成された円弧壁は、ボス32の外周に連続している。そして、一対の溝部30d・30dは、軸受部31の外周を案内できる。
【0045】
図3(C)又は
図5及び
図6(C)を参照すると、溝部30dは、円弧溝31dと異形溝32dで構成している。円弧溝31dは、軸受部31の先端面が当接する第1底面を有している。又、円弧溝31dは、溝部30dの円弧壁に対向する部分円弧壁を有している。異形溝32dは、円弧溝31dの第1底面から段差を設けて窪んだ第2底面を有している。又、異形溝32dは、溝部30dの円弧壁に対向すると共に、円弧溝31dの部分円弧壁に連続する平坦壁32wを有している(
図3(C)参照)。
【0046】
図6(B)を参照すると、異形溝32dに形成された平坦壁32wが、横枠21h及び横枠22hに当接することで、枠体2に対する防火扉本体1の回動角度を規定できる(
図2参照)。
【0047】
又、
図3(C)又は
図5及び
図6(C)を参照すると、一対の円弧溝31d・31dは、防火扉本体1の一方の面から他方の面に貫通する隙間ができないように、軸受部31で閉塞されている。更に、一対の円弧溝31d・31dは、防火扉本体1の一方の面から他方の面に貫通する隙間ができないように、中間横枠部材30の一方の面から他方の面に向けて迂回している。
【0048】
(回転式の防火扉の作用)
次に、第1実施形態による防火扉10の作用及び効果を説明する。
図1から
図6を参照して、防火扉10は、防火扉本体1の上面(厚さ面)から突出するボス32を設けている。又、防火扉10は、ボス32と回転自在に連結する円筒状の軸受部31を水平方向に配置された枠体21fに設けている。そして、防火扉10は、防火扉本体1の一方の面又は他方の面に当接できる第1戸当り部21s及び第2戸当り部22sを軸受部31に連続させているので、防火扉本体1の一方の面から他方の面に向けて貫通する隙間を無くすことできる。
【0049】
図4を参照すると、第1戸当り部21sの横枠21hと第2戸当り部22sの横枠22hは、軸受部31の先端面から段差をもって僅かに突出している。そして、横枠21hと横枠22hは、それらの延びる方向に断絶している。しかし、
図3に示すように、軸受部31にボス32を挿入することで、横枠21hと横枠22hの隙間をボス32で遮蔽できる。これにより、防火扉本体1の一方の面から他方の面に向けて貫通する隙間を無くすことできる。
【0050】
一方、
図4を参照して、横枠21hと横枠22hには、軸受部31の先端面から段差をもって僅かに突出させているので、枠体21fに対して防火扉本体1を90度回転しようとすると、横枠21hと横枠22hの突出部に当接して、回転が困難になる。そこで、一対の異形溝32d・32dを設けて(
図3(C)参照)、横枠21hと横枠22hの突出部を逃げることにした。このように、第1実施形態による防火扉10は、ボス32と軸受部31の形状を工夫することで、防火扉本体1の一方の面から他方の面に向けて貫通する隙間を無くすと共に、防火扉本体1を回転自在とした。
【0051】
(回転式の防火扉の適用例)
次に、第1実施形態による防火扉10の適用例を説明する。
図7は、第1実施形態による回転式の防火扉を互いに直交するように交差した一組の通路の交差部に配置した状態を示す平面図である。
【0052】
図7を参照すると、防火扉10は、通路Gaから通路Gc又は通路Gdに至る経路を封鎖する第1の状態と、通路Gaから通路Gc又は通路Gbに至る経路を封鎖する第2の状に切り換えることができる。防火扉10の第1の状態では、通路Gbから通路Gc又は通路Gdに至る経路を封鎖しているが、通路Gaと通路Gbとを往来できる。一方、防火扉10の第2の状態では、通路Gdから通路Gc又は通路Gbに至る経路を封鎖しているが、通路Gaと通路Gdとを往来できる。
【0053】
図7を参照して、例えば、防火扉10の第1の状態を通常の通行経路に設定し、通路Gb側、又は通路Gc側で火災が発生したときに、防火扉本体1を反時計方向に90度回転することで、通路Gaから通路Gdに至る経路を避難経路とすることができる。又、通路Gdから通路Gaに至る経路を避難経路とすることができる。このように、第1実施形態による防火扉10は、通常の通行経路と避難経路を容易に切り換えることができる。
【0054】
[第2実施形態]
(回転式の防火扉の構成)
次に、本発明の第2実施形態による回転式の防火扉の構成を説明する。
図8は、本発明の第2実施形態による回転式の防火扉の構成を示す正面図である。
図9は、第2実施形態による回転式の防火扉の構成を示す横断面図である。
【0055】
図10は、第2実施形態による回転式の防火扉の構成を示す縦断面図であり、親扉に設けた開口部を子扉が閉止した状態図である。
図11は、第2実施形態による回転式の防火扉の構成を示す縦断面図であり、親扉に対して子扉が一方の方向に回転した状態図である。
【0056】
(全体構成)
図8から
図10を参照すると、本発明の第2実施形態による防火扉20は、片開き式の親扉5と扉体となる2ウィング型の回転式の子扉6を備えている。親扉5は、室Rmの内部から廊下Ha側に向けて開くことが困難に設置されている(
図9又は
図10参照)。以下、室Rmの内部を「室内」と呼称し、廊下Ha側を「室外」と呼称する。
【0057】
図8から
図11を参照すると、子扉6は、親扉5の中央部に設けた開口部5hを閉塞している。又、子扉6は、その上半部6shを室外から室内に向けて開くと、下半部6ihが室内から室外に向けて開くように、親扉5と回転自在に連結している。そして、子扉6の下半部6ihから緊急脱出することもできる(
図8参照)。
【0058】
又、
図8から
図11を参照すると、防火扉20は、一対の回転軸7・7と錘8を備えている。一対の回転軸7・7は、それらの回転中心Qが水平方向に延びるように配置された水平軸となっている。又、回転軸7は、開口部5hの内壁と子扉6の側面を回転自在に連結している。
【0059】
図8から
図11を参照すると、錘8は、子扉6の下端部に配置されている。錘8は、子扉6の下半部6ihが室内から室外に向けて開いた状態から、子扉6の下半部6ihが室外から室内に向けて回転する力を付勢している(
図11参照)。
【0060】
図8又は
図9を参照すると、親扉5は、矩形の開口部5hを中央部に形成している。開口部5hは、後述するように、子扉6で閉塞することができる。そして、開口部5hを人が通過できる程度の大きさに開口することで、災害時に、子扉6を開いて開口部5hの下部から緊急脱出することもできる。
【0061】
(親扉の構成)
次に、親扉の構成を説明する。
図8から
図11を参照すると、親扉5は、鋼板を折り曲げ加工及び溶接加工して、所定の厚さを有するように、内部に空洞を有する袋状に形成している。親扉5の内部には、断熱材を収容しておくことが好ましい。親扉5は、その外形を規格の寸法にすることが好ましく、1818mm×764mm(高さ×幅)とすることができ、1818mm×812mm(高さ×幅)とすることができる。
【0062】
図8又は
図9を参照すると、親扉5は、その底面を除く三方がドア枠51fで囲われている。これらのドア枠51fは、防火壁Wに固定されている。鉛直方向に延びる一方のドア枠51fと親扉5の一方の側面を複数のヒンジ51bで回転自在に連結することで、片開き式の親扉5とすることができる。
【0063】
図9から
図11を参照すると、ドア枠51fは、戸当りとなる段差511を設けている。親扉5が段差511に当接することで、室内を閉止できる。ドア枠51fの内壁と親扉5の側面との隙間dに対して段差511を突出させることで、室内で発生した火炎が室外に侵入することを遮断できる。又、段差511には、緩衝部材51dを取り付けている。緩衝部材51dは、親扉5を閉めたときの衝撃を緩和すると共に、隙間dを気密封止している。又、床面FLには、親扉5の底面がスライド自在なフラット下枠52fを取り付けている(
図10又は
図11参照)。
【0064】
図8を参照すると、親扉5は、複数のヒンジ51bと反対側にドアノブ52を配置している。ドアノブ52を回転させることで、親扉5とドア枠51fを連結しているラッチボルト(図示せず)が解除され、親扉5を開くことができる。親扉5を閉じると、ラッチボルト(図示せず)が自動復帰して、風圧などで親扉5が容易に開かないようにすることができる。ドアノブ52は、施錠機能を有しているものを用いることが好ましい。
【0065】
図7を参照すると、親扉5は、ドアクローザー53を上部のヒンジ51b寄りに取り付けている。ドアクローザー53は、人為的に開けられた親扉5を解放すると、自動的に閉める機能を有している。又、ドアクローザー53は、その本体に充填された緩衝油とダンパ機構に作用により、親扉5が急激に閉じることがないように、又は、風圧などで親扉5が急激に開くことがないように、親扉5の回転速度を緩慢にする機能を有している。
【0066】
このように構成された親扉5を室Rmの開口部に配置し、火災発生時には、親扉5で開口部を閉鎖することで、火炎を遮ることができる。そして、室内からの火災の拡大を防止でき、又は、室外からの延焼を防止できる。
【0067】
(子扉の構成)
次に、子扉の構成を説明する。
図2から
図5を参照すると、子扉6は、鋼板を折り曲げ加工及び溶接加工して、所定の厚さを有するように、内部に空洞を有する袋状に形成している。子扉6の内部には、断熱材を収容しておくことが好ましい。子扉6は、親扉5の中央部に形成された矩形の開口部1hを通常、塞ぐように配置されている。
【0068】
図8から
図11を参照すると、親扉5は、第1戸当り部51sと第2戸当り部52sを備えている。第1戸当り部51sは、上枠51uと一対の縦枠51v・51vで構成している。上枠51uは、開口部5hの上側から突出している。一対の縦枠51v・51vは、開口部5hの両側面から突出している。
【0069】
図11に示した状態から、仮想の回転中心Qを中心に、子扉6を時計方向(矢印R方向)に回転すると、子扉6の上面に固定した上枠部材61fが上枠51uに当接すると共に、子扉6の側面に固定した縦枠部材63fが縦枠51vに当接することで、子扉6の回転を停止できる(
図10参照)。
図10に示した状態では、第1戸当り部51sは、開口部6hの内壁と子扉6の上半部6shとの隙間を閉塞している。
【0070】
図8から
図11を参照すると、第2戸当り部52sは、下枠52dと一対の縦枠52v・52vで構成している。下枠52dは、開口部5hの下側から突出している。一対の縦枠52v・52vは、開口部5hの両側面から突出している。
【0071】
図11に示した状態から、仮想の回転中心Qを中心に、子扉6を時計方向(矢印R方向)に回転すると、子扉6の下面に固定した下枠部材62fが下枠52dに当接すると共に、子扉6の側面に固定した縦枠部材23fが縦枠52vに当接することで、子扉6の回転を停止できる(
図10参照)。
図10に示した状態では、第2戸当り部52sは、開口部5hの内壁と子扉6の下半部6ihとの隙間を閉塞している。
【0072】
図8を参照すると、子扉6は、ドアノブ62nを上半部6shに配置している。上半部6shのドアノブ62nを把持して、室内側からドアノブ62nを引くと、上半部6shが室外から室内に向けて開くと共に、下半部6ihが室内から室外に向けて開くように子扉6を回転できる(
図11参照)。
【0073】
同様に、
図8を参照すると、子扉6は、ドアノブ62nを下半部6ihに配置している。下半部6ihのドアノブ62nを把持して、室内側からドアノブ62nを押すと、上半部6shが室外から室内に向けて開くと共に、下半部6ihが室内から室外に向けて開くように子扉6を回転できる(
図11参照)。
図8の紙面と反対側にもドアノブ62nを設けており、このドアノブ62nを把持して、室外側から子扉6を回転できる。なお、ドアノブ62nは、図示されたシリンダタイプに限定されることなく、レバータイプでもよい。
【0074】
図8又は
図10及び
図11を参照すると、子扉6は、一対のマグネットキャッチ64・64を上部に配置している。
図4に示すように、子扉6の上半部6shが上枠51uに当接した状態では、一対のマグネットキャッチ64・64は、上枠51uを吸着している。そして、一対のマグネットキャッチ64・64は、風圧などに抗して、親扉5に対する子扉6の閉止状態を維持できる。
【0075】
(錘の構成)
次に、錘の構成を説明する。
図8又は
図10及び
図11を参照すると、子扉6は、その下端部に帯板状の錘8を取り付けている。錘8は、水平方向に分割して配置してもよい。子扉6の下端部に錘8を取り付けることで、子扉6を自閉できる。
【0076】
図11に示すように、子扉6の下半部6ihが室内から室外に向けて開いた状態では、錘8が無いと、上半部6shの重量と下半部6ihの重量が均衡しているので、子扉6は、時計方向(矢印R方向)、又は反時計方向(矢印L方向)に容易に回転できる。そこで、子扉6の下端部に錘8を設けて、子扉6の下半部6ihが室外から室内に向けて開口部5hを閉じるように、子扉6を時計方向に回転するようにした(
図10参照)。
【0077】
(回転軸の構成)
次に、回転軸の構成を説明する。
図12は、第2実施形態による回転式の防火扉に備わる回転軸の構成を示す図であり、
図12(A)は、回転軸の正面図、
図12(B)は、
図12(A)のA−A矢視断面図、
図12(C)は、
図12(A)のB−B矢視断面図、
図12(D)は、
図12(A)のC−C矢視断面図である。
【0078】
図13は、第2実施形態による回転式の防火扉に備わる回転軸の構成を示す斜視図であり、子扉側に設けた軸部と親扉側に設けた軸受部を対向配置した状態図である。
【0079】
図14は、第2実施形態による回転式の防火扉に備わる回転軸の構成を示す斜視図であり、子扉側に設けた軸部と親扉側に設けた軸受部を対向配置した状態図である。
【0080】
図15は、第2実施形態による回転式の防火扉に備わる回転軸の構成を示す図であり、
図15(A)は、親扉に対して子扉を直角に傾倒した状態で示す回転軸の正面図、
図15(B)は、
図15(A)のA−A矢視断面図、
図15(C)は、
図15(A)のB−B矢視断面図、
図15(D)は、
図15(A)のC−C矢視断面図である。
【0081】
図8を参照すると、一対の回転軸7・7は、子扉6の左右に線対称に配置されているので、右側の回転軸7を代表して、以下、回転軸7の構成を説明する。
【0082】
図12から
図15を参照すると、回転軸7は、円筒状の軸受部71と円柱状のボス72で構成している。軸受部71は、親扉5に設けた開口部5hの側面の内壁から突出している。又、軸受部71は、ボス72を受容して回転自在に連結する円形の軸受穴71hを開口している。
【0083】
図12から
図15を参照すると、ボス72は、四角柱状の中間縦枠部材70の一方の面から突出している。中間縦枠部材70は、子扉6の側面に配置された縦枠部材63fの中間部に配置している。又、中間縦枠部材70は、一対の雌ねじ部70s・70sを設けている。ボルト部材70bを用いて、子扉6の内部から雌ねじ部70sに螺合することで、中間縦枠部材70を子扉6の側面に固定できる(
図12(D)参照)。
【0084】
図12(B)又は
図13及び
図15(B)を参照すると、軸受部71は、その円環状の肉厚部71wが第1戸当り部51sの縦枠51vに第1接線方向から連続している。第1戸当り部51sの縦枠51vは、中間縦枠部材70及び縦枠部材63fの一方の面に当接して、子扉6の上半部6shの側面と開口部5hの内壁との間隙を閉塞できる(
図8参照)。
【0085】
又、
図12(B)又は
図13及び
図15(B)を参照すると、軸受部71は、その円環状の肉厚部31wが第2戸当り部52sの縦枠52vに第2接線方向から連続している。第2戸当り部52sの縦枠52vは、中間縦枠部材70及び縦枠部材63fの他方の面に当接して、子扉6の下半部6ihの側面と開口部5hの内壁との間隙を閉塞できる(
図8参照)。
【0086】
このように、軸受部71は、親扉5の一方の面から他方の面に向けて貫通する隙間ができないように、第1戸当り部51s及び第2戸当り部52sで遮蔽されている。
【0087】
図12(C)又は
図14及び
図15(C)を参照すると、中間縦枠部材70は、ボス72の外周から窪んだ一対の溝部70d・70dを形成している。溝部70dに形成された円弧壁は、ボス72の外周に連続している。そして、一対の溝部70d・70dは、軸受部71の外周を案内できる。
【0088】
図12(C)又は
図14及び
図15(C)を参照すると、溝部70dは、円弧溝71dと異形溝72dで構成している。円弧溝71dは、軸受部71の先端面が当接する第1底面を有している。又、円弧溝71dは、溝部70dの円弧壁に対向する部分円弧壁を有している。異形溝72dは、円弧溝71dの第1底面から段差を設けて窪んだ第2底面を有している。又、異形溝72dは、溝部70dの円弧壁に対向すると共に、円弧溝71dの部分円弧壁に連続する平坦壁72wを有している(
図12(C)参照)。
【0089】
図15(B)を参照すると、異形溝72dに形成された平坦壁72wが、縦枠51v及び縦枠52vに当接することで、親扉5に対する子扉6の回動角度を規定できる(
図11参照)。
【0090】
又、
図12(C)又は
図14及び
図15(C)を参照すると、一対の円弧溝71d・71dは、子扉6の一方の面から他方の面に貫通する隙間ができないように、軸受部71で閉塞されている。更に、一対の円弧溝71d・71dは、子扉6の一方の面から他方の面に貫通する隙間ができないように、中間縦枠部材70の一方の面から他方の面に向けて迂回している。
【0091】
(回転式の防火扉の作用)
次に、第2実施形態による防火扉20の作用及び効果を説明する。
図8から
図15を参照して、防火扉20は、子扉6の側面(厚さ面)から突出するボス72を設けている。又、防火扉20は、ボス72と回転自在に連結する円筒状の軸受部71を鉛直方向に配置された縦枠51vと縦枠52vの中間部に設けている。そして、防火扉20は、子扉6の一方の面又は他方の面に当接できる第1戸当り部51s及び第2戸当り部52sを軸受部71に連続させているので、子扉6の一方の面から他方の面に向けて貫通する隙間を無くすことできる。
【0092】
図13を参照すると、第1戸当り部51sの縦枠51vと第2戸当り部25sの縦枠52vは、軸受部71の先端面から段差をもって僅かに突出している。そして、縦枠51vと縦枠52vは、それらの延びる方向に断絶している。しかし、
図12に示すように、軸受部71にボス72を挿入することで、縦枠51vと縦枠52vの隙間をボス72で遮蔽できる。これにより、子扉6の一方の面から他方の面に向けて貫通する隙間を無くすことできる。
【0093】
一方、
図13を参照して、縦枠51vと縦枠52vには、軸受部71の先端面から段差をもって僅かに突出させているので、親扉5に対して子扉6を90度回転しようとすると、縦枠51vと縦枠52vの突出部に当接して、回転が困難になる。そこで、一対の異形溝72d・72dを設けて(
図12(C)参照)、縦枠51vと縦枠52vの突出部を逃げることにした。このように、第2実施形態による防火扉20は、ボス72と軸受部71の形状を工夫することで、子扉6の一方の面から他方の面に向けて貫通する隙間を無くすと共に、子扉6を回転自在とした。
【0094】
図8から
図15を参照すると、第2実施形態による防火扉20は、災害時に、子扉6を開いて開口部5hの下部から緊急脱出することもできる。
図8から
図11を参照すると、防火扉20は、子扉6が、親扉5の厚さ方向に突出しないように、一対の回転軸7・7で連結されているので、ドアクローザー53を取り外して、引き戸式の防火扉にも適用できる。
【0095】
第2実施形態による防火扉20は、既設の防火扉と交換することが可能であり、改造工事を安価にすることが期待される。
【0096】
本発明による回転式の防火扉は、回転中心が鉛直方向に延びる鉛直軸からなる第1実施形態と、回転中心が水平方向に延びる一対の水平軸からなる第2実施形態を開示したが、床面に設けた開口部を開閉自在に一対の水平軸で連結した蓋体からなる回転式の防火扉とすることもできる。
【0097】
本発明による回転式の防火扉は、回転軸の近傍で、加熱側から非加熱側に向けて貫通する隙間を無くすことが従来では困難であったが、回転軸と軸受部の形状を工夫することで、この問題を解決した。本発明による回転式の防火扉の適用範囲が拡大することが期待される。