特許第5937299号(P5937299)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京都の特許一覧 ▶ 東京都下水道サービス株式会社の特許一覧 ▶ 日本工営株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5937299-排水装置用渦流式水面制御装置 図000003
  • 特許5937299-排水装置用渦流式水面制御装置 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5937299
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】排水装置用渦流式水面制御装置
(51)【国際特許分類】
   E03F 5/10 20060101AFI20160609BHJP
   E03F 5/14 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   E03F5/10 A
   E03F5/14
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2010-278329(P2010-278329)
(22)【出願日】2010年12月14日
(65)【公開番号】特開2011-226246(P2011-226246A)
(43)【公開日】2011年11月10日
【審査請求日】2013年8月21日
【審判番号】不服2015-11599(P2015-11599/J1)
【審判請求日】2015年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】591043581
【氏名又は名称】東京都
(73)【特許権者】
【識別番号】000220675
【氏名又は名称】東京都下水道サービス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000230973
【氏名又は名称】日本工営株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100113354
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 総
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 広己
(72)【発明者】
【氏名】小松 寛
(72)【発明者】
【氏名】西村 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】塚田 繁
【合議体】
【審判長】 赤木 啓二
【審判官】 小野 忠悦
【審判官】 住田 秀弘
(56)【参考文献】
【文献】 合流式下水道雨水吐からの夾雑物削減対策,日本,株式会社日水コン,2006年 4月27日,URL,http://web.archive.org/web/20060427202818/http://www.nissuicon.co.jp/service/gesui/usuibaki.html
【文献】 合流式下水道の改善における夾雑物対策を対象とした水面制御装置技術資料2009年3月,日本,財団法人下水道新技術推進機構,2009年3月31日,P37−38,P49,P64−66
【文献】 施工技術分野−合流改善技術 水面制御装置,月刊下水道,日本,株式会社環境新聞社,2005年2月15日,vol.29 No.3,P50−51
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入管、遮集管および放流管に接続された雨水吐き室を有する排水装置用渦流式水面制御装置であって、
前記雨水吐き室が、前記流入管および前記遮集管と、前記放流管とを隔てている分水堰を有し、
前記遮集管が前記雨水吐き室に対して開口する開口部の前方に配置された制御板を備え、
前記制御板は、縦型制御板であって、その下端は前記遮集管に夾雑物が引き込まれるような高さに配置されており、
前記開口部の内径をDとし、
前記制御板が前記開口部に対して張り出した長さをXとし、
前記制御板と前記開口部との距離をYとした場合に、
0.5D≦X≦0.6Dかつ0.83D<Y<1.5Dである、
排水装置用渦流式水面制御装置。
【請求項2】
流入管、遮集管および放流管に接続された雨水吐き室を有する排水装置用渦流式水面制御装置であって、
前記雨水吐き室が、前記流入管および前記遮集管と、前記放流管とを隔てている分水堰を有し、
前記遮集管が前記雨水吐き室に対して開口する開口部の前方に配置された制御板を備え、
前記制御板は、縦型制御板であって、その下端は前記遮集管に夾雑物が引き込まれるような高さに配置されており、
前記開口部の内径をDとし、
前記制御板が前記開口部に対して張り出した長さをXとし、
前記制御板と前記開口部との距離をYとした場合に、
0.4D≦X<0.5Dかつ1.0D≦Y≦1.5Dである、
排水装置用渦流式水面制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の排水装置用渦流式水面制御装置であって、
前記流入管および前記遮集管と、前記放流管とを隔てるガイドウォールを備え、
前記ガイドウォールの天端は、前記分水堰の天端よりも高い、
排水装置用渦流式水面制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、雨水と汚水を同一の管渠で排水処理する合流式下水道において、汚水と雨水を分水する雨水吐き室内で夾雑物が河川等に流出することを抑制する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
雨水吐き室における夾雑物の流出抑制対策として、従来より、特許文献1(要約、図1を参照)に記載のような縦型制御板6が設けることが知られている。この縦型制御板6により、遮集管3の開口付近に渦流が発生する。この渦流に、浮遊する夾雑物5が引き込まれ、遮集管3に夾雑物5が引き込まれていく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−238833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、縦型制御板6をいかなる位置に設ければ、遮集管3に夾雑物5が引き込みやすくなるかは必ずしも明確とはいえない。
【0005】
そこで、本発明は、雨水吐き室に制御板を好適な位置に設けることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる排水装置用渦流式水面制御装置は、流入管、遮集管および放流管に接続された雨水吐き室を有する排水装置用渦流式水面制御装置であって、前記遮集管が前記雨水吐き室に対して開口する開口部の前方に配置された制御板を備え、前記開口部の内径をDとし、前記制御板が前記開口部に対して張り出した長さをXとし、前記制御板と前記開口部との距離をYとした場合に、(1)0.5D≦X≦0.7Dかつ0.83D≦Y≦1.5Dである、または、(2)0.4D≦X<0.5Dかつ1.0D≦Y≦1.5Dであるように構成される。
【0007】
上記のように構成された排水装置用渦流式水面制御装置は、流入管、遮集管および放流管に接続された雨水吐き室を有する。制御板は、前記遮集管が前記雨水吐き室に対して開口する開口部の前方に配置されている。前記開口部の内径をDとし、前記制御板が前記開口部に対して張り出した長さをXとし、前記制御板と前記開口部との距離をYとした場合に、(1)0.5D≦X≦0.7Dかつ0.83D≦Y≦1.5Dである、または、(2)0.4D≦X<0.5Dかつ1.0D≦Y≦1.5Dである。
【0008】
本発明にかかる排水装置用渦流式水面制御装置は、流入管、遮集管および放流管に接続された雨水吐き室を有する排水装置用渦流式水面制御装置であって、前記遮集管が前記雨水吐き室に対して開口する開口部の前方に配置された制御板を備え、前記開口部の内径をDとし、前記制御板が前記開口部に対して張り出した長さをXとした場合に、0.4D≦X≦0.7Dであるように構成される。
【0009】
本発明にかかる排水装置用渦流式水面制御装置は、流入管、遮集管および放流管に接続された雨水吐き室を有する排水装置用渦流式水面制御装置であって、前記遮集管が前記雨水吐き室に対して開口する開口部の前方に配置された制御板を備え、前記開口部の内径をDとし、前記制御板と前記開口部との距離をYとした場合に、0.83D≦Y≦1.5Dであるように構成される。
【0010】
なお、本発明にかかる排水装置用渦流式水面制御装置は、前記雨水吐き室が、前記流入管および前記遮集管と、前記放流管とを隔てる分水堰を有するようにしてもよい。
【0011】
なお、本発明にかかる排水装置用渦流式水面制御装置は、前記流入管および前記遮集管と、前記放流管とを隔てるガイドウォールを備え、前記ガイドウォールの天端は、前記分水堰の天端よりも高いようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態にかかる雨水吐き室10の平面図である。
図2】本発明の実施形態にかかる雨水吐き室10の正面透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態にかかる雨水吐き室10の平面図である。図2は、本発明の実施形態にかかる雨水吐き室10の正面透視図である。ただし、図2において、放流管4近傍は図示省略している。
【0015】
雨水吐き室10には、流入管2、遮集管3および放流管4が接続されている。生活排水や汚水、雨水等の流入水が、流入管2を流れて、雨水吐き室10に流入する。雨水吐き室10に流入した流入水は、遮集管3により、下水処理場に案内される。
【0016】
なお、図1において、流入管2、遮集管3、放流管4の配置は次のように説明できるが、全ての雨水吐き室において、そのような配置になっているとは限らない。流入管2の延伸方向と、遮集管3の延伸方向とは同じである。放流管4の延伸方向は、流入管2および遮集管3の延伸方向と直交する。流入管2の開口と、遮集管3の開口とは平行に向き合っている。流入管2の開口から見て右側に、放流管4の開口が配置されている。雨水吐き室10の左側に、流入管2および遮集管3の開口がある。雨水吐き室10の右側に、放流管4の開口がある。
【0017】
分水堰1は、流入管2および遮集管3と、放流管4とを隔てている。降雨時等の流入水の増加により分水堰1を越えた流入水は、放流管4により河川等に放流される。
【0018】
遮集管3が雨水吐き室10に対して開口する開口部を、開口部3aという。開口部3aの前方に制御板6が配置されている。なお、制御板6の下端は、例えば、遮集管3の頂部と同じ高さに配置されているが、必ずしも同じ高さには限定しない。
【0019】
ガイドウォール7は、流入管2および遮集管3と、放流管4とを隔てている。ガイドウォール7の下端は、分水堰1の天端からやや下方に配置されている。ガイドウォール7の天端は、分水堰1の天端よりも高い。
【0020】
なお、本発明の実施形態にかかる排水装置用渦流式水面制御装置は、雨水吐き室10と、制御板6と、ガイドウォール7とを有する。雨水吐き室10は、分水堰1を有する。
【0021】
次に、本発明の実施形態にかかる雨水吐き室10における水流の状態を説明する。
【0022】
図1に示す矢印は、流入管2から流入した流入水の流れを図示したものである。流入水は、遮集管3へと向かって流れる。ここで、降雨等により、流入水の水位が増し、制御板6の下端をある程度超えたとする。すると、制御板6により、流入水の一部が遮られる。さらに、制御板6と分水堰1とは離れており、その部分を流れた流入水は、制御板6を回り込もうとする。これにより、制御板6近傍で渦が発生する。この渦が、流入水に浮遊する夾雑物を引き込む。渦に引き込まれた夾雑物は、遮集管3に引き込まれていく。
【0023】
ここで、制御板6と開口部3a(または遮集管3が開口する雨水吐き室10の内壁面)との距離(「設置位置」という)をYとする。制御板6が開口部3aに対して張り出した長さ(「張出長」という)をXとする。なお、張出長Xは、図2を参照して、制御板6の右端と、開口部3aの左端との距離であるといえる。また、開口部3aの内径をDとする。
【0024】
張出長Xおよび設置位置Yを色々な値にして、遮集管3に夾雑物が流入していくか否かを実験した結果を、以下の表1に示す。
【0025】
【表1】
この実験結果より、
(1)0.5D≦X≦0.7Dかつ0.83D≦Y≦1.5Dである、または、
(2)0.4D≦X<0.5Dかつ1.0D≦Y≦1.5Dである、
ことが好ましいことがわかる。
【0026】
張出長Xが0.4Dまたは0.5D未満であると、遮集管3へと向かう流れを遮る効果が充分には得られず、夾雑物を引き込む程の強力な渦が発生しにくくなる。張出長Xが0.7Dを超えると、制御板6の材料費が高くつく。しかも、制御板6と、分水堰1との間が狭くなり、夾雑物がはさまってしまうといった問題が生ずる。
【0027】
設置位置Yが1.5Dを超えると、渦が発生する位置が、遮集管3の開口部3aから離れてしまい、遮集管3へ夾雑物を引き込むことが難しくなる。設置位置Yが0.83Dまたは1.0D未満となると、夾雑物が、制御板6と、遮集管3が開口する雨水吐き室10の内壁面との間にはさまってしまう等の問題が生ずる。
【0028】
なお、分水堰1の天端を流入水の水面が上回る場合には、ガイドウォール7付近で水面が盛り上がり、流入管2から分水堰1に向かう水面勾配が形成されない。これにより、夾雑物はガイドウォール7に沿って流れ、開口部3aの付近にまで誘導される。誘導された夾雑物は、制御板6によって発生する渦に引き込まれて、遮集管3に流入することから、夾雑物を引き込む効率が高くなる。
【符号の説明】
【0029】
10 雨水吐き室
1 分水堰
2 流入管
3 遮集管
3a 開口部
4 放流管
6 制御板
7 ガイドウォール
D 内径
X 張出長
Y 設置位置
図1
図2