【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するため、本発明に係る二次電池は、ニッケル水素二次電池において、
二次電池内部に酸素を供給するため、酸素注入口を有する管路
と, 前記管路の途中に、並列に配置された
第一制御弁と第二制御弁と,を備え、前記第一制御弁は、二次電池内部から前記酸素注入口に向けた流れを許容し、前記第二制御弁は、前記酸素注入口から二次電池内部に向けた流れを許容し,前記管路は、前記第一制御弁を通過する第一経路と、前記第二制御弁を通過する第二経路とを有することを特徴とする(CL1)。
【0017】
この構成によれば、二次電池の通常運用時におけるメンテナンス等においても、管路に酸素ボンベなどの酸素供給源を接続するだけで、容易に二次電池内部に酸素を供給できる。これにより、負極に蓄積された放電リザーブである水素が酸素と反応して水(H
2O)となり、負極の放電リザーブを低減することができ、充放電サイクル寿命を延ばすことができる。また、電解液のドライアウトも防止できる。さらに、酸素供給をメンテナンス等で行うことで、通常運用時の充放電サイクルで蓄積された放電リザーブを低減することができ、充放電サイクル寿命を向上することができる。
【0018】
また、管路の途中に流れ方向を逆にした一対の制御弁を設けているため、二次電池内部への酸素供給用管路として使用できることはもとより、例えば二次電池内部から排ガスを排出するガス排出用管路としても使用でき、管路を共用できる。これにより、ガス排出用管路とは別に、酸素供給用管路を設けずともよく、電池の体積や重量を抑制できる。
【0019】
本発明に係る二次電池は、前記管路が、二次電池内部のガスを排出するガス排出用の管路としても機能し、前記酸素注入口が、ガス排出口としても機能することを特徴とする(CL2)。
【0020】
この構成によれば、酸素供給用の管路とガス排出用の管路とを共用でき、酸素供給用の酸素注入口とガス排出口とを共用できる。
【0021】
この場合、酸素は酸素注入口から二次電池内向きの制御弁を通り、二次電池内部へ供給される。一方、排ガスは二次電池内部から二次電池外向きの制御弁を通り、ガス排出口より外部へ排出される。なお、二次電池外向きの制御弁は、ガス排出弁などと呼ばれ、過充電等により大量の酸素ガスや水素ガスが発生し、二次電池内部の圧力が急上昇して一定の圧力に達した場合に作動する。通常は、二次電池内部がこの圧力に達する前に、インターロックが作動して電池を停止させるため、ガス排出弁が作動するのは極めて希である。したがって、通常使用されないガス排出用管路を酸素供給用の管路として利用することができ、有用である。
【0022】
本発明に係る二次電池は、
前記第一制御弁にかえて、破裂板を用いてもよい(CL3)。
【0023】
ここで、二次電池外向きの流れとは、二次電池内部で発生したガスを外側に排出する方向をいう。また、破裂板とは、ラプチャーディスクなどと呼ばれるもので、一定の圧力で破壊する金属製の薄板やゴムやプラスチックなどを設けておき、これが破裂することで二次電池内部のガスを放出するものである。つまり、二次電池内部の圧力が所定圧力に達した場合に、これが破裂して外部へガスを排出する。破裂板は制御弁に比べて構造が簡単なため、弁の開き始めから全開になるまで瞬間で動作するので、たとえば異常圧力が発生した場合に効果的に働くほか、安価である。
【0024】
本発明に係る二次電池は、前記二次電池は、複数の単位電池からなる電池モジュールとして構成され、前記各単位電池の内部が連通されたことを特徴とする(CL4)。
【0025】
この構成によれば、複数の単位電池からなる電池モジュールとして構成された二次電池においても、各単位電池の内部に容易に酸素を供給することができる。ここで、各単位電池の内部が連通されたとは、例えば隣り合う単位電池どうしを連通管によって連通させ、各単位電池の内部を連通した状態をいう。
【0026】
本発明に係る二次電池システムは、請求項1〜
4のいずれか一項に記載の二次電池を複数備え、 夫々の
前記酸素注入口が一つの集合配管に接続され、前記集合配管が
前記管路に設けられた前記酸素注入口とは異なる第二酸素注入口を有することを特徴とする(CL5)。
【0027】
この構成によれば、複数の二次電池に設けられた管路が一つの集合配管に接続されているため、集合配管の酸素注入口から酸素を供給すれば、各二次電池の内部に酸素を供給することができる。これにより、各二次電池毎に酸素を供給する手間が省け、一度に酸素を供給できるため、作業性がよい。
【0028】
本発明に係る二次電池システムは、前記集合配管にフレームアレスタが接続されていることが好ましい(CL6)。
【0029】
ここで、フレームアレスタとは、逆火防止装置のことであり、気体や液体の流れは許容するが、火炎伝達を防ぐことができる。これを集合配管に接続することで、火災等があった場合にも、フレームアレスタによって火炎伝達を防ぎ、二次電池の火災を防ぐことができる。なお、フレームアレスタの接続は、集合配管の酸素注入口とは別の口にストップバルブを介して接続したり、集合配管の酸素注入口に三方バルブを取り付け、一つの口をフレームアレスタに接続するとよい。
【0030】
本発明に係る二次電池システムは、前記
第二酸素注入口が三方バルブ
の第一の口に接続され
て第二の口が酸素注入口として機能し、
第三の口に前記フレームアレスタが接続されてもよい(CL7)。
【0031】
この構成によれば、三方バルブの一方の口を酸素注入口として、他方の口をガス排出口として用いて、ガス排出口側にフレームアレスタを接続する。ガス排出口から排出されるガスには可燃性の水素が含まれるため、フレームアレスタを接続することで、二次電池の火災を予防して、二次電池を安全に運用できる。
【0032】
本発明に係る二次電池システムは、二次電池温度を監視する電池監視装置と、二次電池内部に酸素を供給する酸素供給装置と、
前記酸素供給装
置に接続されたマスフローコントローラと
,前記電池監視装置とマスフローコントローラの間に配されるマスフローコントローラ制御ユニットとを備え、二次電池の温度によって、酸素の供給量を調節可能なことが望ましい(CL8)。
【0033】
酸素と水素との反応は発熱反応であるため、二次電池内部に酸素を供給すると、水素と反応して水が生成される際に反応熱が発生する。これにより、二次電池の温度が上昇する。電池温度の上昇は、電池を構成する材料(正極材、負極材、バインダーなど)の劣化を招き、電池性能の低下を招くおそれがある。そのため、電池監視装置によって二次電池温度を監視し、温度に応じて酸素供給量を調節することで、電池性能の低下を抑制でき、二次電池の充放電サイクル寿命を向上することができる。なお、酸素供給量の調節はマスフローコントローラにより行う。
【0034】
また、一般的に二次電池は、電池を構成する材料の劣化等の観点から、60℃以下で運用される。したがって、酸素供給時の二次電池の温度は50℃以下となるよう調節することが好ましく、より好ましくは40℃以下である。なお、温度上昇は酸素供給の速度を遅くしたり、酸素注入圧力を低くしたりするなどで抑えられる。
【0035】
なお、複数の二次電池より構成される二次電池システムにおいては、各二次電池の温度を監視して、いずれかの二次電池が所定温度に達した場合に酸素供給量を調節する。
【0036】
本発明に係る二次電池は、前記電池モジュールは、複数の単位電池が少なくとも2つに区画されて構成され、区画毎に複数の単位電池の内部が連通され、区画毎に
前記酸素注入口を有する管路が夫々接続され、前記各管路の途中に流れ方向を互いに逆にして並列に配置された一対の制御弁を備え、前記各管路の
前記酸素注入口が一つの集合管路に接続され、集合管路が
前記管路に設けられた前記酸素注入口とは異なる第二酸素注入口を有することとしてもよい(CL9)。
【0037】
この構成によれば、電池モジュール内の複数の単位電池を2以上に区画して夫々に管路を接続することで、単位電池どうしを繋ぐ連通管の管路抵抗による圧損を抑制できる。具体的には、例えば30個の単位電池からなる電池モジュールに1つの管路を接続して酸素供給すると、各単位電池に酸素を行き渡らせるためには最大で29の連通管を通過することとなる。これを単位電池15個ずつの2つに区画して、夫々の区画に管路を接続して酸素供給すれば、各単位電池に酸素を行き渡らせる場合に最大でも14の連通管を通過することとなる。これにより連通管の管路抵抗による圧損を抑制でき、連通管の径を小さくすることもできる。
【0038】
本発明に係る二次電池の放電リザーブ低減方法は、複数の単位電池からなる電池モジュールとして構成され、前記各単位電池の内部が連通され
,二次電池内部の電池モジュールに酸素を供給するため、酸素注入口を有する管路が接続され、前記管路の途中に流れ方向を互いに逆にして並列に配置された一対の制御弁を備えた二次電池の放電リザーブ低減方法であり、前記酸素注入口に酸素供給源を接続して、前記二次電池内部に酸素を供給することによって、負極に吸蔵された放電リザーブである水素と酸素とを反応させる工程を備えることを特徴とする(CL10)。
【0039】
この構成によれば、管路に酸素ボンベなどの酸素供給源を接続するだけで、容易に二次電池内部に酸素を供給できる。これにより、負極に蓄積された放電リザーブである水素が酸素と反応して水(H
2O)となり、負極の放電リザーブを低減することができ、充放電サイクル寿命を向上することができる。また、電解液のドライアウトも防止できる。
【0040】
また、酸素供給を二次電池の定期メンテナンス等で行うことで、通常運用時の充放電サイクルで蓄積された放電リザーブを低減することができ、充放電サイクル寿命をより向上することができる。
【0041】
また、管路の途中に流れ方向を逆にした一対の制御弁を設けているため、二次電池内部への酸素供給用管路として使用できることはもとより、二次電池内部から排ガスを排出するガス排出用管路としても使用でき、管路を共用できる。酸素注入口も同様に、ガス排出口と共用できる。つまり、定期メンテナンス等の酸素供給時に、別途酸素供給用管路を二次電池に繋ぐことなく、ガス排出用管路のガス排出口に酸素供給源を繋ぐだけで、二次電池内部に酸素を供給することができる。これにより、作業の手間と時間を省略することができる。
【0042】
本発明に係る二次電池システムの放電リザーブ低減方法は、複数の単位電池からなる電池モジュールとして構成され、前記各単位電池の内部が連通され
,二次電池内部の電池モジュールに酸素を供給するため、酸素注入口を有する管路が接続され、前記管路の途中に流れ方向を互いに逆にして並列に配置された一対の制御弁を備えた二次電池を複数備え、夫々の
前記酸素注入口が一つの集合配管に接続され、前記集合配管が
前記管路に設けられた前記酸素注入口とは異なる第二酸素注入口を有する二次電池システムの放電リザーブ低減方法であり、前記
第二酸素注入口に酸素供給源を接続して、前記各二次電池内部に酸素を供給することによって、各負極に吸蔵された放電リザーブである水素と酸素とを反応させる工程を備える(CL11)。
【0043】
この構成によれば、複数の二次電池(電池モジュール)からなる二次電池システムにおいて、集合配管の酸素注入口から酸素注入すれば、各二次電池に一度に酸素供給でき、非常に効率が良い。