(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5937346
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】攪拌粉砕機
(51)【国際特許分類】
B01F 7/24 20060101AFI20160609BHJP
B01F 7/16 20060101ALI20160609BHJP
B02C 18/10 20060101ALI20160609BHJP
B02C 18/18 20060101ALI20160609BHJP
B02C 19/22 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
B01F7/24
B01F7/16 HZAB
B02C18/10
B02C18/18 Z
B02C19/22
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-275792(P2011-275792)
(22)【出願日】2011年12月16日
(65)【公開番号】特開2013-123705(P2013-123705A)
(43)【公開日】2013年6月24日
【審査請求日】2014年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】504453270
【氏名又は名称】株式会社富東宮
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】糸数 青正
【審査官】
西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−159138(JP,A)
【文献】
特開平06−183870(JP,A)
【文献】
特開平07−008830(JP,A)
【文献】
特開2003−245635(JP,A)
【文献】
特開平11−076855(JP,A)
【文献】
特開2002−233786(JP,A)
【文献】
特開2008−246352(JP,A)
【文献】
特開昭57−027149(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第02001517(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 7/16 − 7/32
B02C 18/08 − 18/12
B02C 19/22
B09B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を収容する処理槽と、該処理槽内部に固定された、上端の全部及び下端の一部が開口され、かつその周囲に切断穴が形成されるとともに、下端開口部周囲の一部にスカート状誘導部材を設けた円筒状の撹拌筒と、前記処理槽底部から駆動可能に突設され、上部のスクリュー部分が前記撹拌筒内に回転可能に設けられた撹拌スクリュー機構とを有する攪拌粉砕機であって、前記切断穴が水滴状ないし木の葉状の形状であり、かつ当該水滴状ないし木の葉状の形状の中心線が、攪拌筒の軸線に対し、35ないし62°の角度をなすと共に、前記撹拌筒における前記切断穴の大きさが、撹拌筒の上部に設けられるものほど相対的に小さくなることを特徴とする攪拌粉砕機。
【請求項2】
前記切断穴における水滴状ないし木の葉状の形状の中心線の角度が、前記スクリュー部分の外周線のなす角度と、20ないし30°で交差する請求項1記載の攪拌粉砕機。
【請求項3】
前記撹拌筒における前記切断穴の数が、撹拌筒の上部ほど多くなる請求項2記載の撹拌粉砕機。
【請求項4】
更に前記スカート状部材が、撹拌筒下端開口部周囲の85ないし94°の範囲に設けられている請求項1ないし3の何れかの項記載の攪拌粉砕機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機固形物等を撹拌粉砕する撹拌粉砕機に関し、更に詳細には、食品原料、工業原材料、生ゴミ等の有機固形物を効率よく粉砕、処理することのできる攪拌粉砕機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の粉砕装置としては、被処理物の種類に応じて、ロールミル、円錐クラッシャ、往復式又は回転式のカッターを有するもの、ウォームと有孔円盤の組合せ、スクリュー式回転ドラム型等種々のタイプのものが知られている。また、撹拌装置として回転形式や振動形式のもの等種々のものがあり、これらの粉砕及び撹拌手段を組合せた撹拌粉砕装置も知られている。
【0003】
しかしながら、これら従来の撹拌又は粉砕装置は、一般に強い力によって強制的に圧窄、切断、押出し、又は剛球等の粉砕媒体と一緒にドラム内で回転させるものであり、それだけ装置を丈夫に作る必要があり、簡易な構造にすることができなかった、また、その動力も大きな出力のものが要求され、設備コストも高いという問題点がある。
【0004】
また、従来の装置は、被処理物に応じた撹拌又は粉砕の専用装置であり、例えば生ゴミ等水分の多い有機処理物の粉砕には、一般に回転刃を有するものが使用されている。しかし、このものでは、単に回転刃により生ゴミを適宜大きさに切断して粉砕するのみである。したがって、このような装置では、例えば生ゴミを発酵処理する場合、微生物による最適な発酵処理条件を得るために、粉砕と同時に水分調整や、酸素濃度の調節あるいは十分な撹拌をすることが難しかった。
【0005】
ところで、攪拌粉砕機のうち、生ゴミ処理に用いられるものは、生ゴミを収容可能な処理槽と、処理槽内に立設された切断穴付きの撹拌筒と、撹拌筒内に回転可能に軸支されたスクリュー部分と、撹拌スクリュー機構を回転させる駆動機構とを備えたものが知られている(特許文献1および2)。これら装置は、スクリュー部分を回転させることにより、処理槽内に投入された生ゴミを撹拌筒内部に導入するとともに撹拌筒内を上昇させ、撹拌筒の切断穴あるいは上端開口部から押し出して処理槽内に落下させるという作業を繰り返しながら生ゴミの連続粉砕、撹拌、発酵を行うものである。
【0006】
しかし、これら特許文献に記載された装置では、例えば、処理槽内に投入された生ゴミの如き有機固形物が撹拌筒内に入り難いだけでなく、切断穴による切断作用も弱いので、生ゴミ等を粉砕するのに長時間を要するという問題があった。また、スクリュー部分の回転によって撹拌筒内を上昇した生ゴミ等が、撹拌筒の上端開口部に引っ掛かって蓄積され、スクリュー部分による上昇圧力で固化してしまうことが多い。このため、処理槽内における生ゴミ等の粉砕、循環が円滑に行われず、粉砕状態も不均一となるという問題もあった。
【0007】
本発明者は先に、被処理物を収容する処理槽と、該処理槽内部に少なくとも下端部が該処理槽内に収容される被処理物内に埋没し、上半部以上が前記被処理物の堆積面よりも上方に位置するように固定して設けられ、上端及び下端が開口しその周囲に切断穴が形成された円筒状の撹拌筒と、前記処理槽底壁に回転駆動可能に設けられ上部が前記撹拌筒内に嵌合している撹拌スクリュー機構とからなり、該撹拌スクリュー機構が回転駆動することにより前記発酵処理槽の下部に堆積している被処理物を撹拌して前記撹拌筒内を上昇させ前記切断穴及び撹拌筒上端から分散落下させる繰り返しにより、被処理物を撹拌粉砕することができる機構を有する生ゴミ処理機を発明し、特許出願した(特許文献3)。
【0008】
この装置は、被処理物を確実に粉砕し、粉砕効率をより高めたものであり、また、撹拌効果も高めたものであるが、実際の使用にあたっては、更に粉砕効率や攪拌効率を高めることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−183870号公報
【特許文献2】特開平7−8830号公報
【特許文献3】特開2006−159138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って本発明は、機構が簡単でありながら、従来の撹拌粉砕機に比べ、より粉砕効率が高く、また攪拌効率も良い実用的な撹拌粉砕機の提供をその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、従来の攪拌粉砕機、特に特許文献3の撹拌粉砕機を改良し、その粉砕効率や攪拌効率を向上させるべく、鋭意検討を行っていたところ、円筒状の攪拌筒に設けられた切断穴の形状を攪拌筒内のスクリュー部分の外周部(刃状部)の形態に合わせることで、粉砕効率が飛躍的に向上することを見出した。また、攪拌筒下部に設けられる被処理物を攪拌筒内に取り込むための誘導部材の形状を特定の形とすることで、被処理物の攪拌筒内への導入効率が上がり、この結果攪拌効率も向上することを見出した。
【0012】
すなわち本発明は、被処理物を収容する処理槽と、該処理槽内部に固定された、上端の全部及び下端の一部が開口され、かつその周囲に切断穴が形成されるとともに、下端開口部周囲の一部にスカート状誘導部材を設けた円筒状の撹拌筒と、前記処理槽底部から駆動可能に突設され、上部のスクリュー部分が前記撹拌筒内に回転可能に設けられた撹拌スクリュー機構とを有する攪拌粉砕機であって、前記切断穴が水滴状ないし木の葉状の形状であり、かつ当該水滴状ないし木の葉状の形状の中心線が、攪拌筒の軸線に対し、35ないし62°の角度をなすことを特徴とする攪拌粉砕機である。
【0013】
また本発明は、更に前記スカート状誘導部材が、撹拌筒下端開口部周囲の85ないし94°の範囲に設けられている上記攪拌粉砕機である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の攪拌粉砕機は、処理槽に収納した被処理物を、スクリュー部分の回転により、攪拌筒の底部からスクリューコンベヤ作用によって攪拌筒上部へと圧送されるが、その際、被処理物の一部は、撹拌筒の内周壁を摺動しながら送られることによって円筒壁に形成された切断穴から押し出されることで粉砕されるのであるが、この粉砕孔の形状を本発明のように形成することで、粉砕孔の側面とスクリュー部分の外周部が形成する角度が小さくなり、はさみの刃のように被処理物を挟み込み、切断することが可能となって粉砕効率が格段に向上するのである。
【0015】
また、前記スカート状部材が、撹拌筒下端開口部周囲の85ないし94°の範囲に設けられている本発明の攪拌粉砕機では、被処理物を攪拌筒内に導入する効率が上がり、攪拌効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の攪拌粉砕機の一実施態様を示す正面図である。
【
図4】
図1に示す攪拌粉砕機の一部切欠正面図である。
【
図5】攪拌粉砕機の処理槽内部を示す部分斜視図である。
【
図10】本発明の攪拌粉砕機の粉砕機構を説明する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて、本発明の一態様について説明する。
図1は本発明の攪拌粉砕機の外観の正面図、
図2はその側面図、
図3はその平面図であり、
図4は
図1に示す攪拌粉砕機の一部切欠正面図である。
【0018】
図1〜
図4に示すように、本実施形態の攪拌粉砕機1は、生ゴミ等の有機固形物(被処理物)を収容可能な略円筒形状の処理槽2と、当該処理槽2内に上端および下端部を開口した状態で立設された撹拌筒13と、当該撹拌筒13内で回転可能に軸支された撹拌スクリュー機構12とを備えたものである。
【0019】
上記処理槽2の上部には、略円錐筒状の屋根部4が設けられ、屋根部4の頂上に処理槽2と連通する排気筒5が立設されている。処理槽2の正面上部には背面側に向かって上り勾配をなす傾斜部2sが設けられ、この傾斜部2sには、被処理物を投入するための投入口6aと、投入口6aを開閉するための開閉扉6bとが設けられている。また、処理槽2の側面部には、攪拌粉砕された被処理物取り出すための排出口9が設けられており、当該排出口9には、回転ハンドル9aによって開閉可能となっている。更に、処理槽2の背面下部には、処理槽2内の清掃などの際に使用する清掃口8が設けられ、清掃口8には開閉扉8aが取り付けられている。
【0020】
一方、当該処理槽2内に立設された撹拌筒13は、
図6に示すように主円筒部13aと、その下端開口部13gにおいて、一部が開口したスカート状誘導部材(以下、「誘導部材」という)13bを設けたものである。また、その主円筒部13aの周壁には、複数の切断穴13cが上部まで設けられ、更にその上に複数の排出穴13fが設けられている。
【0021】
更に、この撹拌筒13は、その上端外周に放射状に配置された複数の板状固定部材13eを、処理槽2の天井部分に配設された板状の固定部材2bに取り付けることによって上部は固定されている。しかし、その下端部と処理槽2の底部2aとの間には、後述する旋回部材14が通過可能な隙間が設けられており、下部は固定されていない。すなわち、撹拌筒13は、上端のみで固定されており、下端開口部13gは処理槽2の底部2aから離れた位置に配置されている。
【0022】
そして、上記撹拌筒13の下端開口部13gは、その撹拌筒13の下端円周部の一部に誘導部材13bが設けられ、他の部分は開口した状態となっている。この誘導部材13bが設けられる範囲は、撹拌筒13の下端円周部の40ないし180°範囲であり、好ましくは、85ないし94°である。
【0023】
また、主円筒部周壁13aに設けられた複数の切断穴13cは、主円筒部周壁13aの展開図である
図7に示すように主円筒部13aの下からほぼ半分ないし4分の3程度の部分までの周壁に設けられたものである。この切断穴13cの形状は、水滴状(上側は尖り、下側は円形)、あるいは木の葉状(上側も下側も尖った形状)で、しかもその穴の中心線は、撹拌筒13の軸線に対し、35ないし62°程度、好ましくは40ないし50の傾きとなっている。この切断穴13cは、
図7に示すように全て同じ大きさであっても良いが、
図8に示すように下から上に向かって切断穴を順次大きいものから小さいものとすることも好ましく、この際、下の大きい切断穴(13c)の数は少なく、上の小さい切断穴(13d)の数を多くすることが好ましい。また、排出穴13fは、ほぼ正方形ないし長方形の穴であって良く、主円筒部13aの上から4分の1程度の位置までに設けることが好ましい。
【0024】
更に、前記撹拌筒13中に回転可能に軸支された撹拌スクリュー機構12は、
図9に示すように、主軸12a、これに取り付けた螺旋形状のスクリュー部分12bおよびスクリュー部分12bの下に補助スクリュー部分12cを設けたものである。この補助スクリュー部分12cは、上記誘導部材13bの周壁内面に沿って螺旋状に拡径したものである。更に、補助スクリュー部分12cの外周には、鋸刃状の切断部12sが複数設けられていても良い。
【0025】
上記、補助スクリュー部分12cの下には、
図6に示すように、主軸12aの下端付近に、これに伴って回転する旋回部材14が処理槽2の半径方向に取り付けられ、更に、この旋回部材14の中央付近には、誘導部材13bの周壁外面に沿って旋回部材14とともに回転する削落部材15が取り付けられている。
【0026】
更にまた、旋回部材14と主軸12aとの接合部分の下方には、処理槽底1aと旋回部材14の間の摩擦を低下させるための円板状のスペーサ12gが取り付けられている。この旋回部材14は、その断面形状が主軸12aの回転方向Rに向かって楔形状とすることが好ましく、効率的に被処理物を攪拌できるようになっている。
【0027】
一方、撹拌スクリュー機構12のスクリュー部分12bの上端部には、被処理物のさらなる上昇を抑制するための円板状のストッパ12dが設けられており、撹拌筒13中を上ってきた被処理物を、撹拌筒13の上部に設けられた前記排出口13fより排出できるようになっている。
【0028】
上記撹拌スクリュー機構12の動力源としては、例えば、架台2上に固定されたモータ10と、減速機19と、駆動軸11よりなる駆動源を利用することができる。この駆動軸11は、撹拌スクリュー機構12の主軸12aと、処理槽底部2aに設けられた穴を介して連接されている。
【0029】
次に、本発明攪拌粉砕機1の使用方法について、これを形成する各部材の作用と共に説明する。
【0030】
本発明の攪拌粉砕機1を使用し有機固形物を攪拌粉砕するには、まず、処理槽2の投入口6aから被処理物を投入する。投入する被処理物の量は、特に制約はないが、被処理物の循環を良くし、撹拌切断の効果を上げるため、その上面が撹拌筒13に設けた排出口13gより低い位置となるようにすることが好ましい。
【0031】
次いで、モータ10を作動させることにより、主軸12aが回転し、更に、これに取り付けられたスクリュー部分12bおよび補助スクリュー部分12cが、撹拌筒13および誘導部材13b内においてこれと接するか、極めて近い位置で回転方向Rに回転する。また、これに併せて、処理槽2の底部1aの近傍上部において旋回部材14が回転方向Rに旋回する。
【0032】
そして、撹拌スクリュー機構12の、主軸12aに取り付けられたスクリュー部分12bおよび補助スクリュー部分12cは、共に螺旋状になっており、この螺旋は回転により上方向に移動するので、撹拌筒13内の被処理物は、この撹拌スクリュー機構12の回転により上に向かって送られる。その際、一部の被処理物は補助スクリュー部分12cに形成された切断部12sによって破砕される。
【0033】
一方、処理槽2内で、撹拌筒13外の被処理物も、旋回部材14や剥落部材15の撹拌によって、撹拌筒13の下に集められ、これが誘導部材13b内で回転する螺旋状の補助スクリュー部分12cにより、誘導部材13bの存在しない部分(開口部分)から、下端開口部13gを経て撹拌筒13内へ導かれ、更にスクリュー部分12bの回転に伴い撹拌筒13内を圧送され、上昇していく。
【0034】
このようにして、撹拌筒13内に取り込まれた被処理物は、スクリュー部分12bの働きにより、その中を、主円筒部13aの周壁を摺動しながら上に送られる。この上昇過程で、その一部は主円筒部13aの周壁に開設された複数の切断穴13cから押し出される。この押し出しの際に、サイズの大きな被処理物は、切断穴13cの内周部分と、刃状になった撹拌スクリュー機構12のスクリュー部分12bの外周部分との間に挟まれ、その剪断作用で切断されながら撹拌筒13の外部に排出され、処理槽2内に戻る。
【0035】
また、貫通孔13cから排出されなかった被処理物は、最終的にストッパ12dで上昇を止められ、更に羽根板12eの回転力により外周方向へ誘導され、排出穴13fから撹拌筒13の外部に排出され、処理槽2内に戻る。そして、処理槽2に戻った被処理物は、処理槽2内を循環、下降し、再度螺旋状の補助スクリュー部分12cにより、下端開口部13gから撹拌筒13内へ導入され、スクリュー部分12bの回転に伴い上へ圧送されていく。なお、ストッパ12d近傍の主軸12aには、長短一対の突出片12fが設けられており、処理物中の長い繊維状物が主軸12aに巻き付くことを防いでいる。
【0036】
本発明の攪拌粉砕機1は、上記のように被処理物について、
(1)補助スクリュー部分13cの回転による撹拌筒13内への導入、
(2)スクリュー部分12bによる撹拌筒13内での持上げ、
(3)12bの外周部と撹拌筒13の切断穴13cの周壁部分(内周部)とによる切断、
(4)切断穴13cまたは排出穴13fからの排出、
(5)処理槽2内の循環
の工程を反復実施するため、時間の経過とともに被処理物の切断による細粒化が進み、攪拌粉砕が行われるのである。
【0037】
ところで本発明の攪拌粉砕機1における特徴は、上記切断穴13cの形状を、水滴状あるいは木の葉状(図示せず)とし、しかもその穴の中心線(
図10中、p1)を、撹拌筒13の軸線(同、p2)に対し、35ないし62°の傾き(同、θ)とした点である。すなわち、前記の工程(3)に示したように、被処理物は、スクリュー部分12bの外周部と切断穴13cの内周部で挟み込み、切断するのであるが、この際、切断穴13cの中心線が撹拌筒13の軸線と一致する場合には、切断穴13内周部の切断線は、相対的に大きな角度(例えば、40ないし50°)でスクリュー部分12bの外周線(刃状部分)と交差する。これに対し、切断穴13cの中心線が撹拌筒13の軸線と35ないし62°(好ましくは、40ないし50°)で傾いている場合には、まず、
図10のx線で示す12bの外周線が、切断穴13内周部の切断線と、相対的に広い角度(90〜60°程度)で交差するが、スクリュー部分12bが上昇するに伴い、12bの外周線は、y線で示すように相対的に小さな角度(例えば、20ないし30°)で交差するようになり、これがz線で示すように切断線の端部まで続く。この結果、被処理物の挟み込みが確実になり、また切断効率の高い狭い角度での交差が長く続くので、切断力も上がるのである。
【0038】
更に、
図8に示すように、ほぼ同じ形状でその面積が下から上に向かって小さくし、また、その数が下から上に向かって多くなるようにすると、異なる大きさの被処理物が、一回の被処理物の処理過程で処理できるので、より攪拌粉砕効率が向上する。
【0039】
また、本発明の攪拌粉砕機1では、スカート状の誘導部材13bを、撹拌筒13の下端開口部13gの全てにわたって取り付けるのではなく、特許文献3でも示したように180°(半円周)程度で取り付けても良いが、例えば、
図6に示すように更にその一部、例えば、85ないし94°程度、好ましくは、85ないし90°の角度で部分的にスカート状(あるいは傘状)の板として取り付けることができ、これも特徴とすることができる。すなわち、被処理物は、下端開口部13gから撹拌筒13内に取り込まれなければならないが、誘導部材13bがなければ、螺旋状の補助スクリュー部分12cの上に乗った被処理物は単に回転するだけで、うまく撹拌筒13内に送り込まれない。
【0040】
上記誘導部材13bは、これと補助スクリュー部分12cとで被処理物を挟み込み、更に撹拌スクリュー機構12の回転力で上に送り、被処理物を撹拌筒13内に取り込むのであるが、この誘導部材13bが下端開口部13gの全周を覆っていると、これが屋根と同様に働き、撹拌筒13下端部には被処理物が集まりにくくなり、結果的に被処理物をうまく撹拌筒13に送り込むことができなくなる。これに対し本発明においては、誘導部材13bの取り付けを下端開口部13gの円周部の一部とすることで、被処理物が集まりにくくなる作用を防ぎながら、かつ十分な撹拌筒13内に被処理物を送り込める作用を奏するようにしたのである。そして、誘導部材13bの大きさとしては、40°ないし180°の範囲、好ましくは85ないし94°、特に好ましくは85ないし90°の範囲であることを見出したのである。
【0041】
更にまた、本発明の攪拌切断機1においては、スクリュー部分12bの螺旋ピッチを、上方に向かって徐々に小さくすることができ、こうすることで、撹拌スクリュー機構12の回転で上昇する被処理物の速度が上方に行くほど遅くなり、スクリュー部分12bの外周部と切断穴13cとによる切断の場において圧力が高まって切断作用が確実に行われ、全体的な粉砕速度を高めることもできる。
【0042】
本発明の攪拌切断機1は、種々の有機固形物を切断処理する場合に利用されるが、その利用方法の好ましい一例としては、生ゴミ処理が挙げられる。
【0043】
本発明の攪拌切断機1を用いて生ゴミを処理する場合は、まず、予め処理槽2の内部に発酵微生物を植種した発酵促進剤を適量収容しておく。この状態で、生ゴミを投入し、上記した撹拌スクリュー機構12を作動させると、処理槽2内に投入された生ゴミは、撹拌スクリュー機構12の回転により、撹拌筒13内への取込、上昇、切断、排出が反復されるため、時間の経過とともに大きな生ゴミは切断され、細粒化されると共に、発酵処理剤中の微生物が作用しておよび発酵処理が進む。このようにして生ゴミは最終的には堆肥化されるのであるが、本発明の攪拌切断機1では、上記したように切断効率が良いため、処理槽2内に投入された生ゴミを比較的短時間で粉砕し、堆肥化することができるのである。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の撹拌粉砕装置は、上記したように被処理物を処理槽下部から撹拌筒内を上昇させ、この撹拌筒内の切断穴から排出される際に切断、粉砕し、再び処理槽内に戻すという循環を繰り返しながら撹拌及び粉砕を行うものである。それゆえ、被処理物に無理な力を加えることなく、非常にソフトな形で撹拌粉砕ができる。しかも、撹拌スクリュー機構と自然な排出の相互作用により、撹拌効果が非常に高く均一な状態で撹拌される。
【0045】
また、粉砕度も撹拌筒の切断穴の大きさを適度に選定し、撹拌スクリュー機構の作動時間を調節することによって任意に調節することができる。また、基本的に撹拌筒とこれに適合する撹拌スクリュー機構を処理槽中に設置するという簡易な構造であるため、従来のものと比べて設備コストを格段に低減することができる。
【0046】
従って、本発明の撹拌粉砕装置は、形状や粒度の違う1種又は2種以上被処理物の混合物の撹拌粉砕に最適であり、例えば堆肥製造や飼料製造のための生ゴミや植物等の有機固形物の処理装置、菓子やその他の食品原料の撹拌粉砕や混練装置として、また、工業用原料の撹拌粉砕装置として種々の用途に適用できる。
【符号の説明】
【0047】
1 … … 攪拌処理機
2 … … 処理槽
2a … 底部
2b … 固定部材
2s … 斜部
3 … … 架台
4 … … 屋根部
5 … … 排気筒
6a … 投入口
6b … 開閉扉
7 … … 配電盤
8 … … 清掃口
8a … 開閉扉
9 … … 排出口
9a … 回転ハンドル
9b … 開閉扉
10 … … モータ
11 … … 駆動軸
11a … 軸受部
12 … … 撹拌スクリュー機構
12a … 主軸
12b … スクリュー部分
12c … 補助スクリュー部分
12d … ストッパ
12e … 羽根板
12f … 板状突起
12g … スペーサ
12s … 切断部
13 … … 撹拌筒
13a … 周壁
13b … 誘導部材
13c,13d … 切断穴
13f … 排出穴
13g … 下端開口部
13p … 板材
14 … … 旋回部材
14a … 傾斜面
15 … … 削落部材
R … … 回転方向