特許第5937372号(P5937372)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5937372
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】排水処理システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/78 20060101AFI20160609BHJP
   C02F 1/24 20060101ALI20160609BHJP
   C02F 1/28 20060101ALI20160609BHJP
   C02F 1/50 20060101ALI20160609BHJP
   C02F 9/00 20060101ALI20160609BHJP
   B01D 39/18 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   C02F1/78
   C02F1/24 C
   C02F1/28 D
   C02F1/50 510A
   C02F1/50 520P
   C02F1/50 531R
   C02F1/50 540A
   C02F1/50 550D
   C02F1/50 560B
   C02F1/50 560Z
   C02F9/00 502D
   C02F9/00 502H
   C02F9/00 502R
   C02F9/00 502Z
   C02F9/00 503C
   C02F9/00 504B
   B01D39/18
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-22202(P2012-22202)
(22)【出願日】2012年2月3日
(65)【公開番号】特開2013-158696(P2013-158696A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2014年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】594142263
【氏名又は名称】尾鷲物産株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】512029250
【氏名又は名称】上村 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100108280
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 洋平
(72)【発明者】
【氏名】上村 豊
【審査官】 井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−075703(JP,A)
【文献】 特開2006−289317(JP,A)
【文献】 特開2004−358343(JP,A)
【文献】 特開2006−035178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00〜 1/78
C02F 9/00〜11/20
B01D39/00〜39/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品製造工場の加工工程で生じた排水を処理して再生水を得るための排水処理システムであって、
前記排水を通過させることでゴミ・残渣類を除去してろ過水とする一次フィルタを備えた一次ろ過槽と、この一次ろ過槽に連結され、前記ろ過水に送り込むマイクロバブルを発生させるマイクロバブル発生装置を備え、前記ろ過水を泡沫分離して分離水とするマイクロバブル処理槽と、このマイクロバブル処理槽に連結され、前記分離水に吹き込むオゾンを発生させるオゾン発生装置を備え、前記分離水を酸化処理して殺菌水とするオゾン酸化処理槽と、このオゾン酸化処理槽に連結され、前記殺菌水を処理する活性炭フィルタを備え、前記殺菌水を活性炭で処理して再生水とする活性炭ろ過槽とを備え、
前記マイクロバブル処理槽には、この処理槽内の水を循環させる第1循環ポンプが設けられており、前記オゾン酸化処理槽には、この処理槽内の水を循環させる第2循環ポンプが設けられており、
前記マイクロバブル処理槽と前記オゾン酸化処理槽との間には第1閉止弁を設けた第1流路が設けられ、この第1流路には前記マイクロバブル処理槽の最高水位よりも低い位置であり、かつ当該第1流路よりも高い位置であって前記第1循環ポンプがマイクロバブル処理槽内の水を循環させられる位置に至ったときに前記第1閉止弁の閉止時において前記分離水を水頭圧で前記マイクロバブル処理槽から前記オゾン酸化処理槽に移送する第1バイパス流路が設けられていると共に、前記オゾン酸化処理槽と前記活性炭ろ過槽との間には第2閉止弁を設けた第2流路が設けられ、この第2流路には前記オゾン酸化処理槽の最高水位よりも低い位置であり、かつ当該第2流路よりも高い位置であって前記第2循環ポンプがオゾン酸化処理槽内の水を循環させられる位置に至ったときに前記第2閉止弁の閉止時において前記殺菌水を水頭圧で前記オゾン酸化処理槽から前記活性炭ろ過槽に移送する第2バイパス流路が設けられていることを特徴とする排水処理システム。
【請求項2】
前記マイクロバブル発生装置には、オゾン発生装置が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の排水処理システム。
【請求項3】
前記第2流路における前記活性炭ろ過槽への開口である殺菌水導入路は、前記活性炭フィルタに連結されており、前記殺菌水は第2流路を経た後に、前記活性炭フィルタを通過して前記活性炭ろ過槽に導入されることを特徴とする請求項1または2に記載の排水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水の循環利用を進める排水処理システムに関し、特に水産品を加工する食品製造工場の加工工程で排出される水を連続して再利用可能とし、更に排水処理入口の水質の向上・負荷軽減に繋げるものに関する。
【背景技術】
【0002】
食品製造工場で使用される水については、食品衛生法上「飲用適の水」を用いることと定められている。このため、一般の食品製造工場で使用される水としては、飲料水である市水(上水)が使用されている。このとき、使用された市水は一回の利用で廃水として処分されるために勿体ないことに加え、排水中には食品の加工工程で発生する汚物が含まれるために、排水処理装置入口の廃水原水の生物化学的酸素要求量(BOD)、化学的酸素要求量(COD)、浮遊物質(SS)、ノルマルヘキサン抽出物質(n-hex)等の値を上昇させて、排水処理に過負荷を与えている。
【0003】
水産食品を処理する水産工場の排水の一部には、魚の冷し込みに使用する氷水や割砕機から排水される水等のように血水混じりが含まれるため、生物化学的酸素要求量(BOD)、化学的酸素要求量(COD)、浮遊物質(SS)及びノルマルヘキサン抽出物質(n-hex)が高濃度に含まれている。例えば、水産品の食品製造工場における排水の一例では、BOD=550mg/L、COD=180mg/L、SS=420mg/L、n-hex=110mg/L であった。この排水をタンクに溜めて置いても沈降分離は行われないため、排水処理装置で処理する必要がある。現状の排水処理装置では、所定の水質基準値(排出水量が50m3/日以上の場合:BOD≦120mg/L、COD≦120mg/L、SS≦150mg/L、n-hex≦30mg/L)を維持するために、ポリ塩化アルミニュウムやアニオン・カチオン等の凝集剤、その他の薬品を使用する必要があるので経費負担も発生してしまう。
【0004】
この問題を解決するための技術開発が行われている。例えば、特許文献1には、一般家庭や、食品製造工場等から排出される廃液中に含まれる有機物を効率よく酸化分解する装置が開示されている。この廃液の処理装置には、有機物含有廃液にオゾンガスを溶解させ有機物を酸化分解処理する処理槽と、オゾンガスを発生するオゾン発生装置により処理槽から加圧ポンプによって圧送される有機物含有廃液を混合してオゾンガスの気泡径を微細化するマイクロバブル発生装置と、処理槽の下部に処理槽内の有機物含有廃液を攪拌する攪拌装置とが備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−321959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記廃液の処理装置は、廃液を溜めて処理するバッチ方式であり、限られた容器の量を処理した後に、次の廃液を溜め処理しなければならず、処理時間と処理量に問題があった。
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、より多量の排水を短時間で処理可能な連続方式の排水処理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
食品製造工場で使用される水については、食品衛生法上「飲用適の水であること」が要求されている。その為、排水の再利用に関する研究開発にはリスクがあるとして技術開発が行われておらず、排水の末端処理施設である排水処理装置に技術開発の目が向けられていた。本発明者は、上記課題に鑑み、排水殺菌・循環(中水化)処理を行うことにより、排水を再利用可能な再生水とする研究開発を行った。この発明により、従来の川下処理から川上での排水処理が可能となるので、再利用水の使用先(用途)を「食品等に与えるリスクが無い」箇所に差別した専用配管を敷設することでリスク回避と節水を行い、水道経費の軽減と排水処理の負荷軽減するためのシステムを提供できる。
【0008】
こうして、上記目的を達成するための第一の発明に係る排水処理システムは、食品製造工場の加工工程で生じた排水を処理して再生水を得るためのものであって、前記排水を通過させることでゴミ・残渣類を除去してろ過水とする一次フィルタを備えた一次ろ過槽と、この一次ろ過槽に連結され、前記ろ過水に送り込むマイクロバブルを発生させるマイクロバブル発生装置を備え、前記ろ過水を泡沫分離して分離水とするマイクロバブル処理槽と、このマイクロバブル処理槽に連結され、前記分離水に吹き込むオゾンを発生させるオゾン発生装置を備え、前記分離水を酸化処理して殺菌水とするオゾン酸化処理槽と、このオゾン酸化処理槽に連結され、前記殺菌水を処理する活性炭フィルタを備え、前記殺菌水を活性炭で処理して再生水とする活性炭ろ過槽とを備え、前記マイクロバブル処理槽には、この処理槽内の水を循環させる第1循環ポンプが設けられており、前記オゾン酸化処理槽には、この処理槽内の水を循環させる第2循環ポンプが設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明において、前記マイクロバブル発生装置には、オゾン発生装置が設けられていることが好ましい。
また、前記マイクロバブル処理槽と前記オゾン酸化処理槽との間には第1閉止弁を設けた第1流路が設けられ、この第1流路には前記マイクロバブル処理槽の最高水位よりも低い位置であり、かつ当該第1流路よりも高い位置であって前記第1循環ポンプがマイクロバブル処理槽内の水を循環させられる位置に至ったときに前記第1閉止弁の閉止時において前記分離水を水頭圧で前記マイクロバブル処理槽から前記オゾン酸化処理槽に移送する第1バイパス流路が設けられていると共に、前記オゾン酸化処理槽と前記活性炭ろ過槽との間には第2閉止弁を設けた第2流路が設けられ、この第2流路には前記オゾン酸化処理槽の最高水位よりも低い位置であり、かつ当該第2流路よりも高い位置であって前記第2循環ポンプがオゾン酸化処理槽内の水を循環させられる位置に至ったときに前記第2閉止弁の閉止時において前記殺菌水を水頭圧で前記オゾン酸化処理槽から前記活性炭ろ過槽に移送する第2バイパス流路が設けられていることが好ましい。
【0010】
また、前記マイクロバブル処理槽の水面付近には、マイクロバブル処理によって水面付近に浮遊する夾雑物を当該処理槽の外方に導出する樋部が設けられていることが好ましい。また、前記オゾン酸化処理槽の水面付近にも前記樋部を設けることが好ましい。
また、前記第2流路における前記活性炭ろ過槽への開口である殺菌水導入路は、前記活性炭フィルタに連結されており、前記殺菌水は第2流路を経た後に、前記活性炭フィルタを通過して前記活性炭ろ過槽に導入されることが好ましい。
また、前記フィルタは、ゴミ・残渣類の捕獲率の優れたヤシ柄マットであることが好ましい。
【0011】
第二の発明に係る排水処理方法は、食品製造工場の加工工程で生じた排水を処理して再生水を得るためのものであって、(1)前記排水に浮遊する塵芥・残渣類を一次フィルタで処理してろ過水とする一次ろ過工程、(2)前記ろ過水にマイクロバブルを送り込んで、油分・タンパク質を泡に付着させて水表面に浮かせることで泡沫分離し、分離水とするマイクロバブル処理工程、(3)前記分離水中にオゾンを吹き込み、オゾン酸化を行うことで微生物を殺菌して殺菌水とするオゾン酸化処理工程、及び(4)前記殺菌水を活性炭で処理することにより再生水を得る活性炭処理工程、を含むことを特徴とする。
このとき、前記(2)マイクロバブル処理工程においては、オゾンを含有する空気でマイクロバブルを発生させることが好ましい。
【0012】
食品とは、食事の材料として使用されるものであり、動物性食品(肉類、魚介類、卵類、牛乳など)、植物性食品(穀類、豆類、芋類、野菜、山菜、海藻、種実類、果物、ハーブなど)、加工食品(漬け物、佃煮、乾物、練り製品、粉類、缶詰、冷凍食品、レトルト食品、インスタント食品、乳製品など)、嗜好食品(菓子、嗜好品など)調味用材料(油脂、甘味料、調味料、香辛料など)、健康食品(サプリメント、保健用食品など)、飲料(ジュース、茶、コーヒー、清涼飲料水など)、加工材料(ゲル化剤、膨張剤、食品添加物など)などが含まれる。本発明においては、上記食品のうち、特に、血・液体・肉などのタンパク質を含む排水が排出される食品製造工場において好適に使用される。
マイクロバブルとは、直径が50μm〜5μm程度の気泡を意味する。一般的な気泡(あわ)とは異なり、長時間に渡って水中に滞在し、表面電位特性によって反発しあい、自己圧壊作用により水・窒素などが分解されてラジカルが生成されるなどの特性がある。マイクロバブルを製造するには、大きく分けて、加圧減圧法(高圧下で気体を大量に溶解させ、減圧により再気泡化する方法)と、気液剪断法(渦流を作って、気体を巻き込ませ、ファンにより切断・粉砕させる方法)とがある。本発明においては、いずれの方法を用いて作成されたマイクロバブルも使用できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、食品製造工場の加工工程から排出される排水を殺菌浄化し、再利用できるので、使用水量の削減と、排水される水質の向上が図れる。すなわち、本発明は、排水処理装置入口原水の水質向上による負荷軽減によって、凝集剤や薬品類のコスト削減に寄与する川上型の排水浄化システムであり、先進的な環境浄化に貢献できる。
また、排水中に浮遊するゴミ・残渣類の捕獲に使用する一次フィルタとしてヤシ柄マットを、懸濁物を除去するフィルタとして活性炭フィルタを用いた場合には、いずれも汎用品であり、安価かつ安定供給が可能であるため、排水処理システムの実施に要する媒体として、薬品等は一切使用せず、ポンプ類を回す電気のみを必要とするローコストシステムとなる。
こうして、本発明によれば、食品製造工場内の施設で生じる排水を連続的に、短時間かつ大量に処理して、再利用可能な再生水とするシステムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態の排水処理システムの全体を模式的に示す平面図である。
図2】排水処理システムの前半部分を示す斜視図である。
図3】排水処理システムの後半部分を示す斜視図である。
図4】樋部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態について、図表を参照しつつ説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施することができる。
【0016】
図1には、本実施形態の排水処理システムの全体を模式的に示した。この排水処理システムは、食品製造工場(例えば、魚類)における食品の加工工程で生じた排水を処理して、再生水を得るためのものである。この排水処理システムには、一次ろ過槽10と、マイクロバブル処理槽20と、オゾン酸化処理槽30と、活性炭ろ過槽40と、循環ポンプ槽50とが備えられている。一次ろ過槽10には、食品製造工場の加工工程で生じた排水を導入する移送配管11と、一次フィルタ12と、水中ポンプ19が設けられている。一次フィルタ12は、排水中のゴミ・残渣類を除去するためのものであり、例えばヤシ柄マットを用いて製造できる。水中ポンプ19は、一次ろ過槽10の水をこの槽内で循環させると共に、一次ろ過済のろ過水を次のマイクロバブル処理槽20に移送するために使用される。水中ポンプ19から吐出するための配管17は、槽内循環のための循環用配管16と、次槽への移送のための移送用配管14に分離されており、各配管16,14の途中には、それぞれ流量の調節が可能な流量調整弁15,13が設けられている。
【0017】
マイクロバブル処理槽20には、ろ過水を移送するための移送用配管14と、マイクロバブルを発生させると共に、これをマイクロバブル処理槽20内に循環させる第1循環ポンプとしての循環用ポンプ29と、バッフルプレート24が設けられている。バッフルプレート24は、マイクロバブル処理槽20内のろ過水を適当な時間だけマイクロバブル処理槽20内でマイクロバブル処理を行い、自由には次のオゾン酸化処理槽30に送らないための邪魔板として機能する。バッフルプレート24の下端部分には、潜り堰25が設けられている。循環用ポンプ29には、オゾン発生装置70で発生するオゾンの一部を供給するためのオゾン供給管71が注入ノズル22を介して連結されている。循環用ポンプ29は、吸入配管21を通じて、マイクロバブル処理槽20内の水を吸入し、オゾンガスを含み得るマイクロバブルを吐出配管23を通じてマイクロバブル処理槽20に吐出する。
【0018】
また、マイクロバブル処理槽20には、水面付近に泡と共に浮遊する夾雑物をマイクロバブル処理槽20の外方に導出するための樋部60が設けられている。樋部60は、図4に示すように、マイクロバブル処理槽20の水面付近に配置される一対の第一樋61,61と、マイクロバブル処理槽20の外方において、第一樋61の下方に配置される第二樋63と、この第二樋63から排出される夾雑物を吐き出す導出樋62とを備えている。第一樋61は、上方に開放すると共に、第二樋63の方向に開口65を備えて、平面が長方形状に形成されており、左右両側の壁面には、それぞれ3ヶ所の凹部64が設けられている。第一樋61は、マイクロバブル処理槽20から第二樋63側に傾斜する傾斜面を備えて構成されている。第二樋63は、導出樋62側に傾斜する傾斜面を備えて、断面が半円状に形成されている。両第一樋61は、槽内の壁面から少し(例えば、約50mm程度)離れた個所に設置することにより、水循環時の水面の揺動による泡沫の回収性を効率よくさせるようになっている。水面付近にマイクロバブルと共に泡沫分離された夾雑物は、凹部64から第一樋61に進入し、傾斜面に沿って第一樋61を通過した後、開口65から第二樋63に落下し、傾斜面に沿って導出樋62方向に進んで外方に廃棄される。
【0019】
マイクロバブル処理槽20の一端側(移送用配管14が設けられる側とは逆側)の下端には、ノズル26が開放されており、ここには分離水を次槽に移送するための第1流路としての移送配管27Aが設けられている。移送配管27Aの途中には、第1閉止弁28が設けられていると共に、この第1閉止弁28を跨ぐようにして第1バイパス流路としてのバイパス配管27Bが設けられている。バイパス配管27Bは、サイフォン構造の一種であり、移送配管27Aよりも高い位置であり、かつマイクロバブル処理槽20の最高水位よりも低い位置であって、循環用ポンプ29がマイクロバブル処理槽20内の水を循環可能な高さ位置に至ったときに、第1閉止弁28を閉止した状態で、マイクロバブル処理槽20によって処理済みの分離水を水頭圧でオゾン酸化処理槽30に移送するようになっている。
【0020】
次のオゾン酸化処理槽30には、バイパス配管27Bの他端部が接続されて、分離水を受け入れるノズル31と、オゾンを発生させるオゾン発生装置70と、オゾンを吹き込むための循環ポンプ39が設けられている。循環ポンプ39には、オゾン酸化処理槽30内の水を吸入するための吸入配管32と、吸入された水にオゾンを吹き込みつつオゾン酸化処理槽30内に戻す吐出配管34が設けられている。オゾン発生装置70からのオゾン供給管72は、循環ポンプ39の吐出管付近において、注入ノズル33を介して連結されている。また、オゾン酸化処理槽30には、前述の樋部60と同構造のものが設けられている。また、オゾン酸化処理槽30の一端側(バイパス配管27Bが設けられる側とは逆側)の下端には、ノズル35が開放されており、ここにはオゾン酸化処理槽30にて処理済みの殺菌水を次槽に移送するための第2流路としての移送配管36が設けられている。
【0021】
移送配管36の途中には、第2閉止弁38が設けられており、この第2閉止弁38を跨ぐようにして第2バイパス流路としてのバイパス配管37が設けられている。これらの構造36,37,38は、先に説明した構造27A,27B,28と同様の構造を備えたサイフォンの一種として作用する。こうして、第2閉止弁38を閉止した状態で、オゾン酸化処理後の殺菌水は、水頭圧で活性炭ろ過槽40に移送されるようになっている。
活性炭ろ過槽40には、バイパス配管37の他端部が接続されて、殺菌水を受け入れるノズル41と、殺菌水をろ過する活性炭フィルタ43が備えられている。活性炭フィルタ43としては、粒状活性炭を繊維で包んだもの、ネットに木炭や竹炭を入れ、予め水洗し微粉末やゴミ等の汚れを取り除いた物をろ過槽内に敷き詰めたものなどのように、安価に入手可能なものが使用できる。
【0022】
ノズル41の活性炭ろ過槽40側には、ろ過槽40の底面側に配置される冠状の分流配管42が連結されており、この分流配管42の適所から上側に向かって分流管44が設けられ、その分流管44の先端に活性炭フィルタ43が設けられている。こうして、オゾン酸化処理槽30から移送された殺菌水は、活性炭ろ過槽40への開口としての殺菌水導入路であるノズル41と、分流配管42と分流管44とを介して活性炭フィルタ43に連結されている。なお、活性炭フィルタ43の上面は、バイパス配管47の高さよりも低い位置となるように設定することが好ましい。こうして、殺菌水は、直ぐにろ過槽40に溜められるのではなく、まず活性炭フィルタ43によるろ過処理を受けた後に、再生水としてろ過槽40に溜められることになる。
また、活性炭ろ過槽40の一端側(バイパス配管37が設けられる側とは逆側)の下端には、ノズル45が開放されており、ここにはろ過槽40にて処理済みの再生水を次の循環ポンプ槽50に移送するための第3流路としての移送配管46が設けられている。
【0023】
移送配管46の途中には、第3閉止弁48が設けられており、この第3閉止弁48を跨ぐようにして第3バイパス流路としてのバイパス配管47が設けられている。これらの構造46,47,48は、先に説明した構造27A,27B,28と同様の構造を備えたサイフォンの一種として作用する。こうして、第3閉止弁48を閉止した状態で、活性炭ろ過槽40内の再生水は、水頭圧で循環ポンプ槽50に移送されるようになっている。
循環ポンプ槽50には、バイパス配管47の一端側が接続されるノズル51と、再生水を食品製造工場に移送するための水中ポンプ52が設けられている。水中ポンプ52には、吐出配管53と、吐出流量を調整可能な水位調整弁54が設けられている。
【0024】
次に、上記のように構成された排水処理システムによって、排水を処理するときの工程について説明する。なお、次の工程においては、約1000L容量の一次ろ過槽10と、それぞれ約500L容量のマイクロバブル処理槽20、オゾン酸化処理槽、及び活性炭ろ過槽40を用いた。
<一次ろ過工程>
海生魚類の食品製造工場で回収された排水を移送配管11を通じて適当な移送速度(例えば、10L/min)で一次ろ過槽10に移送し、槽内のヤシ柄マット製の一次フィルタ12により、排水中に含まれるゴミ・残渣類を一次ろ過した。このろ過水を水中ポンプ19の駆動によって、配管17,14を通じて、マイクロバブル処理槽20に転送した。ろ過水の転送速度は、排水の移送速度に整合させる(例えば、10L/min)ように、流量調整弁13,15の開度によって調整した。なお、余剰水は、循環用配管16から一次ろ過槽10に戻した。
【0025】
<マイクロバブル処理工程>
一次フィルタ12で処理済みのろ過水をマイクロバブル処理槽20に転送した。マイクロバブル処理槽20(500L槽)の容量に対して、20%〜30%(500L槽の場合100L〜150L)の水位になった時点で、循環用ポンプ29を起動させ、吸入配管21からろ過水を吸入し、吐出配管23からマイクロバブル処理槽20に循環させた。その際、ノズル26に連結される移送配管27Aの第1閉止弁28は閉止状態とした。マイクロバブル処理槽20の水位が30%以上になったところで、循環用ポンプ29のノズル22からオゾンガス(例えば10L/min処理の場合、オゾン発生量:12g/h、オゾンガス流量:2L/min、オゾン濃度:100g/Nm3)を注入つつ、マイクロバブルを発生させて、循環水の泡沫分離性を向上させた。泡沫分離処理された水(分離水)は、バッフルプレート24下部に設けた潜り堰25を流路として、ノズル26から所定の高さ(例えば、500Lのマイクロバブル処理槽20の場合、300L〜350L程度を水頭レベルとした配管高さ)に設けたバイパス配管27Bを経て、次槽のオゾン酸化処理槽30に転送した。
マイクロバブル処理槽20内で泡沫分離されて、水表面に浮上してきた夾雑物は、槽内の両サイド喫水部に設置した樋部60(泡沫浮遊物質回収トラフ(△ノッチ又は□ノッチ(凹部64)をトラフ両サイドに開け、5%程度の勾配としたもの)を通じて、処理槽外部の第二樋63及び導出樋62から周辺の廃水ピット(図示せず)へ廃水した。第一樋61は、槽内壁より約50mm程度離れた個所に設置し、水循環時の水面の揺動による泡沫の回収性を効率よくさせた。
【0026】
<オゾン酸化処理工程>
バイパス配管27Bを通じて、オゾン酸化処理槽30に転送されてきた分離水は、ノズル31から処理槽内に流入された後、上記マイクロバブル処理槽20における循環用ポンプ29の駆動水位と同様の水位(処理槽30(500L槽)の容量に対して、20%〜30%の100L〜150L)になった時点で、循環ポンプ39を起動させ、吸入配管32から分離水を吸引し、吐出配管34から処理槽30に循環させた。その際、ノズル36の途中に設けられている第2閉止弁38は閉止状態とした。オゾン酸化処理槽30の水位が30%以上になったところで、循環ポンプ39の注入ノズル33からオゾンガス(例えば10L/min処理の場合、オゾン発生量:18g/h、オゾンガス流量:3L/min、オゾン濃度100g/Nm3)を注入し、微生物などの殺菌処理を開始した。オゾン処理後の殺菌水は、所定の高さ(例えば、500Lの処理槽30の場合、300L〜350L程度を水頭レベルとした配管高さ)に配置したバイパス配管37を通じて、次の活性炭ろ過槽40に転送されるようにした。また、前マイクロバブル処理槽20からキャリーオーバーされた泡沫分離物質は、前マイクロバブル処理槽20と同様に槽内の両サイド喫水部に設置した樋部60を通じて導出樋62から周辺の廃水ピット(図示せず)へ廃水した。
【0027】
<活性炭処理工程>
バイパス配管37を経て、活性炭ろ過槽40に転送されてきた殺菌水は、ノズル41から分流配管42を通じて、各分流管44の先端に設けた活性炭フィルタ43に送り込んだ。活性炭フィルタ43としては、分流管44の配管口径が20Aの場合には、少なくとも穴径6〜8φmm程度の孔部を千鳥状に多数配置した配管に粒状活性炭を繊維で包んだフィルタ(例えば60φmm外径×250mmL、内筒径20A(27.2mm+1〜2mm))を挿管し、配管先端部をキャップ又はプラグで閉止したもの(先端部は取り外しが可能なVP配管を未接着状態とした)を用いた。活性炭フィルタ43の上端面は、予め設定した最高水位の水頭レベル(例えば、500Lろ過槽40の場合、300L〜350L程度を水頭レベルに設定する)下に位置するように設定した。活性炭フィルタ43は、内部配管の先端部のキャップ又はプラグ部を取り外してフィルタ交換ができるようにした。活性炭フィルタ43による処理後の再生水は、ノズル45から適度な高さ(例えば500L活性炭ろ過槽40の場合、300L〜350L程度を水頭レベルとした配管高さ)に設けたバイパス配管47を経て、循環ポンプ槽50に転送した。その際、移送配管46の途中に設けた第3閉止弁48は閉止状態とした。
【0028】
<循環工程>
バイパス配管47を経由してノズル51から循環ポンプ槽50に張り込まれた再生水は、ポンプ槽50の水位が30%以上になった時点で、水中ポンプ52を運転することで吐出配管53から食品製造工場に移送できる。吐出配管53からの吐出量は循環ポンプ槽50の水位(例えば、500L循環ポンプ槽の場合、300L〜350L程度のレベル)が安定するように、レベル調整弁54の開度を調整しながら設定した。
なお、排水処理システムの稼働終了後には、各槽及び配管類の洗浄操作を行った。このとき、各槽10,20,30,40の出口側の配管14,27A,38,46に設置するバルブ13,28,38,48を開放することにより、上流側から各槽内を洗浄した廃水を各槽内に滞留させることなく、最下流の循環ポンプ槽50に移送させた後、水中ポンプ52の吐管に仮設ホースを設置して、廃水ピット(図示せず)に導くことで、排水処理システム全体の連続清水置換が可能な構造となっている。
【0029】
上記<一次ろ過工程>〜<活性炭処理工程>を実施することにより、海産物の食品製造工場の加工工程で生じた排水(血水成分である油分やタンパク物質等を含有する血水混じりの茶褐色排水(COD=115mg/L、TOC(全有機炭素)=55mg/L、色度≧50、濁度≧50、一般細菌数=1.2×104、大腸菌群数=50))を再使用可能な再生水(COD=63mg/L、TOC=41mg/L、色度=10、濁度=10、一般細菌数≦100、大腸菌群数:陰性)とすることができた。なお、処理する工場排水の汚れ度合いに応じて、マイクロバブル循環量及びオゾンガス注入量を調整することにより、各種の排水処理を行える。
【0030】
このように、本実施形態によれば、食品製造工場の加工工程から排出される排水を殺菌浄化し、再利用することができたので、使用水の削減と、排水される水質の向上、すなわち排水処理装置入口原水の水質向上による負荷軽減から凝集剤や薬品類のコスト削減に寄与する川上型の排水浄化システムであり、先進的な環境浄化と産業上の利用に貢献することができた。
また、排水中に浮遊するゴミ・残渣類の捕獲に使用する一次フィルタ(ヤシ柄マット)と懸濁物を除去する活性炭フィルタは、汎用品であり、安価かつ安定供給が可能である。このため、排水処理システムの実施に要する媒体として、薬品等は一切使用せず、ポンプ類を回す電気のみを必要としたローコストシステムを提供できた。
こうして、本実施形態によれば、食品製造工場内の施設で生じる排水を連続的に、短時間かつ大量に処理して、再利用可能な再生水とするシステムを提供することができた。
【符号の説明】
【0031】
10…一次ろ過槽
12…一次フィルタ(ヤシ柄マット)
20…マイクロバブル処理槽
27A…移送配管(第1流路)
27B…バイパス配管(第1バイパス流路)
28…第1閉止弁
29…循環用ポンプ(マイクロバブル発生装置、第1循環ポンプ)
30…オゾン酸化処理槽
36…移送配管(第2流路)
37…バイパス配管(第2バイパス流路)
38…第2閉止弁
39…循環ポンプ(第2循環ポンプ)
40…活性炭ろ過槽
41…ノズル(殺菌水導入路)
42…分流配管(殺菌水導入路)
43…活性炭フィルタ(活性炭)
44…分流管(殺菌水導入路)
60…樋部
70…オゾン発生装置
図4
図1
図2
図3