特許第5937384号(P5937384)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社 資生堂の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5937384
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】半透明化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/86 20060101AFI20160609BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20160609BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20160609BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20160609BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20160609BHJP
   A61K 8/63 20060101ALI20160609BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20160609BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   A61K8/86
   A61K8/39
   A61K8/37
   A61K8/60
   A61K8/34
   A61K8/63
   A61K8/06
   A61Q19/00
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-58119(P2012-58119)
(22)【出願日】2012年3月15日
(65)【公開番号】特開2013-189408(P2013-189408A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2015年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100092901
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 祐司
(72)【発明者】
【氏名】松藤 陽子
(72)【発明者】
【氏名】勅使河原 喬史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 知子
【審査官】 手島 理
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2004/045566(WO,A1)
【文献】 特開平09−151112(JP,A)
【文献】 特開2007−137822(JP,A)
【文献】 特開2006−342122(JP,A)
【文献】 特開2011−126810(JP,A)
【文献】 特開2011−195509(JP,A)
【文献】 特開2010−248173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8
A61Q
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(a)〜(e)を含むことを特徴とする透明から半透明の化粧水基剤
(a)エチレンオキシドの平均付加モル数が30〜60であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、あるいは、エチレンオキシドの平均付加モル数が8〜20であるイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリルから選ばれる1種以上の親水性界面活性剤
(b)モノイソステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、テトラメチルトリヒドロキシヘキサデカンから選ばれる1種以上の親油性界面活性剤
(c)70℃での抱水率が50%以上である抱水性油分であって、テトラ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット、マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル、及びダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(フィトステリル/ベヘニル/イソステアリル)から選ばれる1以上の抱水性油分
(d)エチレンオキシドの平均付加モル数が10であるポリオキシエチレンメチルグルコシド及び/又はグリセリン
(e)水
【請求項2】
請求項1に記載の化粧水基剤において、質量%で表した成分(a)〜(d)の配合比が、
(a):(b):(c):(d)=0.01〜10%:0.003〜5%:0.01〜40%:0.03〜50%、
であることを特徴とする化粧水基剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の化粧水基剤において、成分(a)と成分(b)の質量における配合比が、(a)/(b)=1〜4であることを特徴とする化粧水基剤。
【請求項4】
請求項1−3のいずれかに記載の化粧水基剤において、L値が1−95であることを特徴とする化粧水基剤。
【請求項5】
請求項1−4のいずれかに記載の化粧水基剤において、該化粧水基剤に含まれる乳化粒子の平均粒子径が10〜300nmであることを特徴とする化粧水基剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧水基剤に関し、さらに詳しくは、抱水性油分を安定に配合することで優れた効果感(しっとりさ、ふっくらさ)及び使用感(べたつきのなさ、やわらかさ)を奏し、長期安定性にも優れ、且つ簡便に製造可能な透明から半透明化粧水基剤を提供する。
【背景技術】
【0002】
肌にしっとりさやふっくらさ、そしてやわらかさを付与することは、化粧料に期待される極めて重要な効果である。前記効果は主に油分及び保湿剤の配合により得られるが、これらの成分の多量配合はべたつき感を増大させるという問題がある。
そこで、クリームや乳液においては、配合する油分の一部を、油自体が水を抱え込むことができる抱水性油分に置き換えることが行われている。抱水性油分は多量配合してもべたつきが少なく、うるおいや柔軟効果を付与できるという優れた利点を有しているからである。
しかしながら、抱水性油分は一般に分子サイズが大きいので、ミセル内に取り込ませて可溶化するには大きなエネルギーが必要となる。さらに、抱水性油分は通常高い極性を有するため、抱水性油分の存在下では界面活性剤の油相への分配が促進され、界面活性剤として機能し得る分子数の減少が引き起こされる。従って、抱水性油分には、可溶化及び乳化のいずれもが難しいという大きな欠点があった。
【0003】
そこで、抱水性油分の前記化粧料への配合にはさまざまな工夫が施されている。特許文献1では、抱水性油分であるワセリンを、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体ジアルキルエーテルを活性助剤として、親水性及び親油性界面活性剤とイソステアリン酸の共存在下で乳化させることで、しっとりさとエモリエント効果を備えた液状化粧料を作製している。しかし、前記化粧料ではイソステアリン酸が全油分中20%以上であることが必須であるため、抱水性油分の配合量が制限されるという問題があった。
【0004】
また、特許文献2では、抱水性油分としてペンタエリスリトール安息香酸エステルを、高級アルコールと親水性界面活性剤の共存下で配合した水中油型化粧料が開示されている。前記クリームはべたつきがなく長時間の保湿効果に優れるが、安定性の維持には高級アルコールの配合が欠かせないという問題があった。そして、特許文献3では、界面活性剤としてイソステアリン酸グリセリン及び/又はオレイン酸グリセリンを用いることで、抱水性油分が安定に乳化した油中水型化粧料を作製している。しかし、前記方法は水中油型乳化化粧料には応用できない方法である。
【0005】
このように、抱水性油分を配合したクリームや乳液は多数製造されているが、可溶化及び乳化の難しさから、化粧水のような水系化粧料への配合はほとんど行われていなかった。しかし、皮脂量の多い人や男性の消費者では、油分が多くべたつくというイメージからクリームや乳液は敬遠される傾向が知られている。さらに、皮脂の分泌が盛んになる夏季においては、一般の消費者においても乳液やクリームの使用量を控える傾向があり、化粧水のみの使用で十分な効果感(しっとりさ、ふっくらさ)や使用性(べたつきのなさ、やわらかさ)が得られることが強く望まれている。よって、抱水性油分を安定に十分量配合した化粧水基剤の作製が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−173999号公報
【特許文献2】特開2007−314430号公報
【特許文献3】特開2010−248173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来技術の課題を鑑み行われたものであり、抱水性油分を安定に配合することで効果感(しっとりさ、ふっくらさ)及び使用感(べたつきのなさ、やわらかさ)に優れ、長期安定性が高く、且つ簡便に製造可能な透明から半透明化粧水基剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、特定の親水性及び親油性界面活性剤の組み合わせによって界面張力を大幅に低下させ、さらに特定のグルコシド及び/又はグリセリンを共配合することにより、極性が高く分子サイズの大きい抱水性油分であっても安定に可溶化できること、さらには、任意の水性成分で希釈後には安定な微細乳化物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明に係る化粧水基剤は、次の(a)〜(e)を含むことを特徴とする。
(a)エチレンオキシドの平均付加モル数が30〜60であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、あるいは、エチレンオキシドの平均付加モル数が8〜20であるイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリルから選ばれる1種以上の親水性界面活性剤
(b)モノイソステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、テトラメチルトリヒドロキシヘキサデカンから選ばれる1種以上の親油性界面活性剤
(c)70℃での抱水率が50%以上である抱水性油分
(d)エチレンオキシドの平均付加モル数が10であるポリオキシエチレンメチルグルコシド及び/又はグリセリン
【0010】
本発明に係る化粧水基剤においては、成分(a)〜(d)を、質量%での配合比が、(a):(b):(c):(d)=0.01〜10%:0.003〜5%:0.01〜40%:0.03〜50%、の範囲で配合することが好適である。
【0011】
さらに、本発明に係る化粧水基剤においては、成分(a)と成分(b)の質量%での配合比は、(a)/(b)=1〜4であることが好適である。
【0012】
本発明に係る化粧水基剤においては、L値が1−95であることが好適である。
【0013】
本発明に係る化粧水基剤に含まれる乳化粒子の平均粒子径は、10〜300nmであることが好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、抱水性油分を安定に配合することで優れた効果感(しっとりさ、ふっくらさ)及び使用感(べたつきのなさ、やわらかさ)を奏し、長期安定性にも優れ、且つ簡便に製造可能な透明から半透明化粧水基剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の最良の実施の形態について説明する。
(a)親水性界面活性剤
本発明に用いられる親水性界面活性剤(HLB10〜15)は、エチレンオキシドの平均付加モル数が30〜60であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、あるいは、エチレンオキシドの平均付加モル数が8〜20であるイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリルが好ましく用いられる。上記以外の親水性界面活性剤を用いた場合には、(c)抱水性油分の安定な可溶化は困難となる傾向がある。
当該ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、ニッコールHCO−30〜60(日光ケミカルズ社製)、当該イソステアリン酸ポリオキシエチレン(20、10、又は8)グリセリルとしては、エマレックスGWIS−120、エマレックスGWIS−110、又はエマレックスGWIS−108(日本エマルジョン(株)社製)を使用することができる。
【0016】
(b)親油性界面活性剤
本発明に用いられる親油性界面活性剤(HLB2〜5)は、モノイソステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、又はテトラメチルトリヒドロキシヘキサデカンのいずれかが用いられる。モノイソステアリン酸グリセリルは、市販品でもよいが、モノ体の含量が80%以上のものが安定性の点で好ましく用いることができる。上記以外の親油性界面活性剤を用いた場合には、(c)抱水性油分の安定な可溶化は困難となる場合がある。市販されているものとしては、モノオレイン酸グリセリル(サンソフトO−30S、太陽化学(株)社製)、又はテトラメチルトリヒドロキシヘキサデカン(フィタントリオール、DSMニュートリションジャパン社製)が挙げられる。
【0017】
(c)抱水性油分
本発明に用いられる抱水性油分とは、以下の抱水性試験方法を行い、式(1)によって計算される抱水率が50%以上の油分である。
抱水性試験方法:抱水率を測定する試料(油性成分)を秤量(初期量)し、70℃に加温した後、70℃に加熱した水を各試料に徐々に添加しながら攪拌する。前記試料表面に水が浮き出してきた時点を終点とし、終点までに添加した水の量を測定した。
式(1):抱水率=[添加した水の量(g)/試料の初期量(g)]×100
【0018】
本発明に用いられる抱水性油分としては、テトラ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット(サラコスP−B822、味の素タカラコーポレーション社製、抱水率50%)、マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル(YOFCO−MAS、日本精化工業(株)社製、抱水率250%)、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(フィトステリル/ベヘニル/イソステアリル)(PLANDOOL−G、日本精化工業(株)社製、抱水率200%)等が好適である。
【0019】
本発明の化粧水基剤には、上記抱水性油分以外の油分を配合する必要がないので、油分のすべてを抱水性油分とすることができる。なお、本発明の効果を妨げない範囲で、通常化粧水に用いられる油分を配合してもよい。
【0020】
(d)エチレンオキシドの平均付加モル数が10であるポリオキシエチレンメチルグルコシド及び/又はグリセリン
本発明では(c)抱水性油分を可溶化するために、前記(a)親水性界面活性及び(b)親油性界面活性剤に加えて、さらにエチレンオキシドの平均付加モル数が10であるポリオキシエチレンメチルグルコシド及び/又はグリセリンを配合する。ポリオキシエチレン(10)メチルグルコシド及びグリセリンはいずれも保湿剤として公知慣例の成分であるが、本発明においては可溶化助剤としての機能を発揮すると考えられる。
【0021】
本発明の化粧水基剤における上記成分(a)〜(d)の配合比は、質量%で表すと、(a):(b):(c):(d)=0.01〜10%:0.003〜5%:0.01〜40%:0.03〜50%の範囲で配合することができる。好ましくは、(a):(b):(c):(d)=0.1〜1%:0.1〜1%:0.05〜5%:2〜5%であり、最も好ましくは、(a):(b):(c):(d)=0.75%:0.3〜0.4%:1〜2.5%:3〜4%である。本発明の化粧水基剤の製造方法においては、成分(a)〜(d)は水相で任意の濃度に希釈することができるので、上記各成分の配合比が重要である。
【0022】
本発明の化粧水基剤には、その効果を損なわない範囲において、通常化粧水に用いられるその他の各種成分、例えばpH調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、保湿剤、防腐剤、抗菌剤、増粘剤、中和剤、植物抽出液、香料、色素、薬効成分等を配合することができる。
【0023】
本発明の化粧水基剤は、(a)〜(d)と(e)の一部を60℃以上で加熱混合し、透明状態となったものを、残余の(e)及び/又は前記通常化粧水に用いられるその他の各種成分からなる室温の水相に希釈することで、複雑な製造工程を要せず簡便に調整することができる。なお、前記室温の水相には、本発明の効果を損なわない範囲で、前記成分(d)として規定した以外のポリオキシエチレン(10)メチルグルコシド及び/又はグリセリンを保湿剤として含むことができる。
【0024】
本発明の化粧水基剤は、L値が1〜95であることが好ましい。ここでL値とは、濁り度合いを表す尺度で、分光光度計(グレタグマクベスGE−700A:グレタグマクベス社製)を用い、ガラスセルに精製水5mlを入れて光を透過させたときの透明度を100とし、光を完全に遮断して透過光がないときの透明度を0として測定したときの値である。
【0025】
本発明の化粧水基剤は、スキンケアを目的とした化粧水、美容液に用いる他、サンスクリーンに用いることもできる。
【0026】
以下に、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、この実施例により本発明の範囲が限定されるべきものではない。また、本実施例における配合量は、特に断りがない限り、質量%である。
実施例の説明に先立ち、実施例の化粧水基剤の製造方法及び評価方法について説明する。
【0027】
(製造方法)
(a)〜(d)と(e)の一部を60℃以上で加熱混合し、透明状態となったものを、残りの配合成分からなる室温の水相に希釈することで化粧水基剤を作製した。
【0028】
(評価方法1:粒子径)
製造直後の化粧水基剤について、ALV−5000/EPP Multiple Tan Digital Correlator(丸文株式会社製)で乳化粒子の平均粒子径を測定した。なお、水相と油相の相分離を起こして測定できなかったものは「−」と記載した。
【0029】
(評価方法2:振とう安定性)
輸送及び使用中の振動や振とう後の安定性は、100mlガラス容器に化粧水基剤を半充填したものを井内盛栄堂株式会社のシェーカーにセットし、4cmの距離を300回/分で20分間振とうした後の平均粒子径を測定し、以下の基準に従って評価した。
◎:平均粒子径が150nm以下。
○:平均粒子径が150nmを超え、300nm以下。
△:平均粒子径が300nmを超え、1000nm以下。
×:平均粒子径が1000nmを超える。
なお、水相と油相の相分離を起こしたものについては、測定不能のため「分離」と記載した。
【0030】
(評価方法3:長期安定性)
長期安定性は、0℃で3ヶ月間保存した化粧水基剤について、次の基準に従い評価した。
◎:分離、クリーミング、平均粒子径の変化などが全くみられない。
○:分離、クリーミング、平均粒子径の変化がわずかに認められるが、析出は認められない。
△:分離、クリーミング、平均粒子径の変化がわずかに認められ、析出も認められる。
×:分離、クリーミング、平均粒子径の変化、及び析出が認められる。
【0031】
(評価方法4:使用感・効果感)
専門パネル10名に、夜の洗顔後に当該化粧水基剤を顔面に使用してもらい、塗布直後と翌朝の肌に対する効果感(しっとりさ、ふっくらさ)及び使用感(べたつきのなさ、やわらかさ)を評価してもらった。塗布直後では、しっとりさ、肌のやわらかさ、べたつきのなさについて、翌朝では肌のふっくら感について回答してもらった。
【0032】
(評価基準)
(1)翌朝の肌のふっくら感
◎:肌がふっくらしたと評価したパネルが8名以上
○:肌がふっくらしたと評価したパネルが4名以上8名未満
×:肌がふっくらしたと評価したパネルが4名未満
(2)塗布直後の肌のしっとりさ
◎:肌がしっとりしたと評価したパネルが8名以上
○:肌がしっとりしたと評価したパネルが4名以上8名未満
×:肌がしっとりしたと評価したパネルが4名未満
(3)塗布直後の肌のやわらかさ
◎:肌がやわらかくなったと評価したパネルが8名以上
○:肌がやわらかくなったと評価したパネルが4名以上8名未満
×:肌がやわらかくなったと評価したパネルが4名未満
(4)塗布直後の肌のべたつきのなさ
◎:肌がべたつかないと評価したパネルが8名以上
○:肌がべたつかないと評価したパネルが4名以上8名未満
×:肌がべたつかないと評価したパネルが4名未満
【0033】
表1〜4において(※)、使用した製品名を以下に示す。
※1:ニッコール HCO−60(日光ケミカルズ社製)
※2:ニッコール HCO−50(日光ケミカルズ社製)
※3:ニッコール HCO−40(日光ケミカルズ社製)
※4:ニッコール HCO−30(日光ケミカルズ社製)
※5:エマレックス GWIS−120(日光エマルジョン(株)社製)
※6:エマレックス GWIS−110(日光エマルジョン(株)社製)
※7:エマレックス GWIS−108(日光エマルジョン(株)社製)
※8:モノイソステアリン酸グリセリル(モノ体含量90%)
※9:WOGEL−18DV(松本製薬工業社製)
※10:サラコスP−B822(味の素タカラコーポレーション社製)
※11:グルカムE−10(レギュラー)、(アマコール社製)
※12:RA−G−308(日本精化社製)
なお、表中のPOEはポリオキシエチレンを表し、POEの後の括弧内の数字は当該ポリオキシエチレン鎖に含まれるエチレンオキシドの平均付加モル数を示す。
【0034】
次に、表1に記載した組成からなる化粧水基剤を作製し、上述した方法に従って評価を行った。
【0035】
【表1】
【0036】
本願の成分(a)−(e)をすべて配合した化粧水基剤(実施例1−7)は、半透明の優れた外観を呈し、さらに、安定性(振とう安定性、経時安定性)、効果感(ふっくらさ、しっとりさ)、及び、使用感(べたつきのなさ、やわらかさ)のすべてにおいて非常に優れることが示された。これに対し、成分(a)又は(b)のみを含まない化粧水基剤を作製したところ、乳化系が不安定ですぐに相分離を起こし、粒子径の測定及び性能評価を行うことができなかった(比較例1、2)。さらに、本発明の成分(a)を、前記従来技術で抱水性油分の乳化に使用された親水性界面活性剤のPOE(30)フィトステロール(特許文献1、比較例3)、N−ステアロイル−Nメチルタウリンナトリウム(特許文献2、比較例4)、あるいは、汎用の親水性界面活性剤であるモノステアリン酸ペンタグリセリル(比較例5)に代えた基剤では、親水性界面活性剤を含んでいない基剤(比較例1)と同程度にまで当該安定性が悪化した。同様に、本願の成分(b)を、特許文献1で使用された親油性界面活性剤のセスキイソステアリン酸ソルビタンに代えた基剤でも(比較例6)、当該安定性が親油性界面活性剤を含まない基剤(比較例2)と同程度にまで悪化することがわかった。
【0037】
よって、(c)抱水性油分を可溶化し、希釈により微細乳化物を得ることは、本発明の成分(a)と(b)の組み合わせによって得られる効果であり、(a)又は(b)を他の親水性界面活性剤又は親油性界面活性剤と組み合わせても発現し得ない効果であることがわかる。
なお、表1では割愛したが、成分(b)として、モノオレイン酸グリセリル、又はテトラメチルトリヒドロキシヘキサデカンを配合した化粧水基剤においても、実施例1−7と同程度の優れた安定性、使用感、及び効果感が得られることを確認している。
【0038】
従って、抱水性油分を可溶化するには、POE(30〜60)硬化ヒマシ油又はイソステアリン酸ポリオキシエチレン(8〜20)グリセリルから選ばれる親水性界面活性剤と、モノイソステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、又はテトラメチルトリヒドロキシヘキサデカンから選ばれる親油性界面活性剤の併用が非常に有効であることが明らかとなった。これは、性質の異なる上記(a)、(b)の界面活性剤が共存することで、界面張力及び界面エネルギーの大幅な低下が引き起こされるためと考えられる。
次に、本発明の成分(c)及び(d)について検討した結果を示す。
【0039】
【表2】
【0040】
油分を含まない化粧水基剤(比較例8)は、使用感・効果感のいずれの評価項目においても大変劣るものであった。また、油分として、抱水性油分ではないが化粧料に汎用される油分であるメチルポリシロキサン(6cs、比較例9)又は2−エチルヘキサン酸(比較例10)を配合した基剤では、当該油分が安定に乳化されているにも関わらず、使用感・効果感に大変低かった。
これに対し、油分として(c)抱水性のテトラ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリットを配合した本願化粧水基剤(実施例8)では、使用感・効果感のすべての評価項目において非常に優れていた。従って、(c)抱水性油分が微細乳化した化粧水は、化粧水でありながらも、翌朝のふっくら感、しっとりさ、やわらかさ、及びべたつきのなさといった優れた使用感及び効果感が発現することが示された。
【0041】
次に、本発明の成分(d)を含まない化粧水基剤を作製したところ、抱水性油分を可溶化することはできず、希釈後の当該乳化系は極めて不安定ですぐに相分離が認められた(比較例11)。よって、本発明において成分(d)は、(c)抱水性油分を安定に可溶化するために必須の成分であることがわかる。
成分(d)ポリオキシエチレン(10)メチルグルコシド及びグリセリンは、いずれも化粧料に汎用される保湿剤として公知慣例の成分である。そこで、本願化粧水基剤(実施例8、9)における成分(d)を、公知慣例の他保湿剤成分である1,3−ジブチレングリコール(比較例12)、又はジプロピレングリコール(比較例13)に代えたところ、(c)抱水性油分を可溶化することができず、希釈後すぐに相分離を起こす結果となった。
従って、本発明の成分(d)は、いわゆる保湿剤としてではなく、本発明の界面活性剤(a)及び(b)と協調して(c)抱水性油分の可溶化を行う可溶化助剤として機能していると考えられる。
【0042】
以上の結果より、本発明の(a)親水性界面活性剤及び(b)親油性界面活性剤を可溶化剤として、さらに(d)ポリオキシエチレン(10)メチルグルコシド又はグリセリンを可溶化助剤として用いることで、(c)抱水性油分の可溶化及び水系においては微細乳化が可能となり、使用感(べたつきのなさ・やわらかさ)及び効果感(しっとりさ、ふっくらさ)に優れた化粧水基剤が作製できることが示された。
【0043】
【表3】
【0044】
前述したように、本発明の(c)抱水性油分の可溶化は、成分(a)、(b)、(d)の共配合効果によって得られるものである。よって、本発明においては、成分(a)〜(d)の配合比が重要であるため、当該配合比の検討を行った。
実施例10−13は、成分(a)を0.005〜15質量%、(b)を0.002〜8質量%、(c)を0.009〜42質量%、(d)を0.03〜58質量%の範囲で配合した化粧水基剤であり、いずれの基剤においても優れた安定性、使用感、及び効果感が得られている。よって、本発明においては、成分(a)〜(d)を、(a):(b):(c):(d)=0.01〜10%:0.003〜5%:0.01〜40%:0.03〜50%の範囲で配合できることがわかる。さらに、表3では、成分(a)を0.53〜1.50質量%、(b)を0.21〜0.60質量%、(c)を0.98〜2.8質量%、(d)を5.1〜9.0質量%の範囲にすると、当該安定性、使用感、及び使用感において一段と優れることが示されている(実施例11及び12)。従って、成分(a)〜(d)の配合比は、好ましくは、(a):(b):(c):(d)=0.1〜1%:0.1〜1%:0.05〜5%:2〜5%であり、最も好ましくは、(a):(b):(c):(d)=0.75%:0.3〜0.4%:1〜2.5%:3〜4%である。
【0045】
さらに、本発明で用いる(a)親水性界面活性剤と(b)親油性界面活性剤の配合比についても検討を行った。
【0046】
【表4】
【0047】
成分(a)と(b)の配合比、すなわち、(a)/(b)が0.8〜5.0の化粧水基剤では、いずれも安定性、使用感、及び効果感のすべてにおいて優れていた(実施例14〜17)。さらに、(a)/(b)が2.1〜4.0の化粧水基剤(実施例15、16)では、当該安定性、使用感、及び効果感のすべてにおいて一段と優れる結果が得られた。
よって、本発明に係る化粧水基剤に配合する界面活性剤(a)及び(b)の配合比は、(a)/(b)=0.8〜5.0の範囲が好ましく、さらに好ましくは、(a)/(b)=1〜4である。
【0048】
本発明の実施形態は実施例によって制限されるものではないが、前記実施例では、乳化粒子の平均粒子径が35nm(実施例10)〜44nm(実施例5、7)で、L値が44(実施例2)〜62(実施例1、3、11)である透明〜半透明の化粧水基剤が、安定性(振とう安定性、長期安定性)、使用感(しっとりさ、ふっくらさ)、及び、効果感(べたつきのなさ、やわらかさ)のすべてに優れることが示されている(表1〜4)。このことから、本発明に係る化粧水基剤の乳化粒子の平均粒子径は10〜300nm、L値は1〜95であることが好ましいと考えられる。
【0049】
以下に、本発明の化粧水基剤を用いた化粧水の処方例を挙げるが、本発明はこれらの処方例によって限定されるものではない。
【0050】
処方例1 半透明化粧水
(処方)
配合成分 質量%
(a)POE(60)硬化ヒマシ油 0.75
(b)モノイソステアリン酸グリセリル 0.35
(c)テトラ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット 1.6
(d)ポリオキシエチレン(10)メチルグルコシド 3.0
(d)グリセリン 2.0
(e)イオン交換水 残余
1、3−ブチレングリコール 4.0
ジプロピレングリコール 7.0
ポリエチレングリコール 1500 3.0
キサンタンガム 0.15
フェノキシエタノール 0.35
クエン酸 0.02
クエン酸Na 0.08
エデト酸3Na 0.03
香料 0.03
(製法)
(a)〜(d)と(e)の一部を混合したものを60℃に加熱し、残りの配合成分からなる室温の水相に希釈させる。
【0051】
処方例2 半透明化粧水
配合成分 質量%
(a)POE(60)硬化ヒマシ油 0.075
(b)イソステアリン酸グリセリル 0.035
(c)テトラ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット 0.016
(d)グリセリン 0.3
(e)イオン交換水 残余
ジプロピレングリコール 1.0
1、3−ブチレングリコール 2.0
ポリエチレングリコール 1500 2.0
95%エタノール 7.0
キサンタンガム 0.05
トラネキサム酸 2.0
フェノキシエタノール 0.3
クエン酸 0.14
クエン酸Na 0.06
エデト酸3Na 0.03
香料 0.03
(製法)
(a)〜(d)と(e)の一部を混合したものを60℃に加熱し、残りの配合成分からなる室温の水相に希釈させる。
【0052】
処方例3 半透明美容液
(処方)
配合成分 質量%
(a)POE(60)硬化ヒマシ油 0.75
(b)モノイソステアリン酸グリセリル 0.35
(c)テトラ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット 1.6
(d)ポリオキシエチレン(10)メチルグルコシド 3.0
(d)グリセリン 5.0
(e)イオン交換水 残余
1、3−ブチレングリコール 8.0
ジプロピレングリコール 5.0
還元麦芽糖 1.0
ポリオキシエチレン(14)ポリオキシプロピレン(7)ジメチルエーテル 0.1
ヒアルロン酸ナトリウム 0.1
キサンタンガム 0.03
カルボキシビニルポリマー 0.13
苛性カリ(試薬特級) 0.05
フェノキシエタノール 0.5
エデト酸2Na 0.02
香料 0.006
(製法)
(a)〜(d)と(e)の一部を混合したものを60℃に加熱し、残りの配合成分からなる室温の水相に希釈させる。