(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
次亜塩素酸ナトリウムは広域な抗微生物スペクトルを有し、特にウイルスにも有効であり、低残留性を示すことから、病院や高齢者施設、保育施設や飲食店、調理施設等において幅広く感染対策として使用される消毒薬である。
【0003】
例えば、病院をはじめとした医療施設においては、患者の血液や体液、分泌物により汚染された器具や環境周り等の硬質表面を消毒するのに日頃から次亜塩素酸ナトリウムを使用する頻度が高い。しかし、次亜塩素酸ナトリウムは有機物存在下では容易に失活してしまうことから、これらの被汚染物を消毒する際には、予め汚染物を取り除く必要があり、手間がかかると共に、本来の効果が十分に発現しないことが懸念されている。
【0004】
一方、これらの施設においては、ノロウイルスのように殺菌剤に対する耐性が高く、且つ接触感染を主な感染経路とする微生物が施設内に蔓延した場合には、トイレやベッド柵、シンク周り等の様々な硬質表面を次亜塩素酸ナトリウムで消毒する習慣がある。しかし、現在市販されている液状の次亜塩素酸ナトリウム製剤では、このような対象物に適用する場合、一定範囲に留まらせることが難しく、広範囲に液が流れ出したり、飛散したりするなどといった問題があり、確実な消毒効果が得られない可能性がある。
【0005】
また、次亜塩素酸ナトリウムは高温での安定性が低いため、通常冷暗所での保管が必要とされている。しかし、これらの施設において次亜塩素酸ナトリウムを使用する際には、一時的な高温や日光暴露などに曝されることが少なくない。このため、現在市販されている次亜塩素酸ナトリウム製剤の多くは、こういったケースで容易に失活してしまう可能性がある。
【0006】
このような背景から、一時的な高温条件下(例えば50℃)でも次亜塩素酸ナトリウムの保存安定性に優れ、対象物に対して確実に適用可能であり、しかも汚染物の洗浄と被汚染物の消毒が一剤でできる硬質表面洗浄剤が求められている。
【0007】
次亜塩素酸塩を対象物に確実に適用する方法としては、特許文献1のように高い粘性を付与することによって、その場に滞留させる方法が知られている。
【0008】
また、特許文献2では、次亜塩素酸塩とアルキレンオキシ基を有する特定の化合物、アミンオキサイドを含むハイドロトロープ剤、特許文献3では次亜塩素酸塩と陽イオン界面活性剤、アミンオキサイド、脂肪酸塩等をそれぞれ組み合わせることにより、スプレイヤーにより緻密な泡状とすることで、対象物に密着させる方法が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<(A)成分>
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、ノロウイルスを初めとする感染性微生物の殺菌性の観点から、(A)成分として、次亜塩素酸アルカリ金属塩を含有する。次亜塩素酸アルカリ金属塩としては、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸ナトリウムが挙げられ、入手の容易さの観点から次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。
【0018】
<(B)成分>
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、血液汚れ洗浄性の観点から、(B)成分として、炭素数8〜14のアルキル基を有するジメチルアミンオキシドを含有する。(B)成分としては、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0020】
(式中、R
1は炭素数8〜14のアルキル基、R
2は炭素数1〜3のアルキレン基、Xは−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−、−O−から選ばれる基、mは0又は1の数である。)
【0021】
入手の容易さの観点から、一般式(1)中のmは0が好ましい。
【0022】
(B)成分のアルキル基、例えば、一般式(1)中のR
1bは、スプレイヤー使用時の泡吐出性の観点から、炭素数10〜14が好ましく、炭素数10〜12がより好ましく、炭素数12が更に好ましい。
【0023】
(B)成分としては、血液汚れ洗浄性の観点から、オクチルジメチルアミンオキシド、ノニルジメチルアミンオキシド、デシルジメチルアミンオキシド、ウンデシルジメチルアミンオキシド、ドデシルジメチルアミンオキシド、トリデシルジメチルアミンオキシド、テトラデシルジメチルアミンオキシドが好ましく、デシルジメチルアミンオキシド、ウンデシルジメチルアミンオキシド、ドデシルジメチルアミンオキシド、トリデシルジメチルアミンオキシド、テトラデシルジメチルアミンオキシドがより好ましく、ドデシルジメチルアミンオキシド、トリデシルジメチルアミンオキシド、テトラデシルジメチルアミンオキシドがさらに好ましく、ドデシルジメチルアミンオキシドがより更に好ましい。
【0024】
(B)成分は、1種を用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0025】
<(C)成分>
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、血液汚れ洗浄性及びスプレイヤー使用時の泡吐出性の観点から、(C)成分として、炭素数8〜12の脂肪酸アルカリ金属塩を含有する。血液汚れ洗浄性の観点から、(C)成分の炭素数は10〜12が好ましく、10がより好ましい。
【0026】
また、(C)成分としては、炭素数8〜12の脂肪酸カリウム及び炭素数8〜12の脂肪酸ナトリウムから選ばれる1種以上が好ましく、炭素数8〜12の脂肪酸ナトリウムから選ばれる1種以上がより好ましい。
【0027】
(C)成分としては、n−オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、n−ノナン酸、n−デカン酸、n−ウンデカン酸、及びn−ドデカン酸から選ばれる脂肪酸のアルカリ金属塩が好適に挙げられる。これらのうち、n−デカン酸、及びn−ドデカン酸から選ばれる脂肪酸のアルカリ金属塩がより好ましく、n−デカン酸のアルカリ金属塩がさらに好ましい。
【0028】
(C)成分は、1種を用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0029】
<(D)成分>
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、血液汚れ洗浄性及び(A)成分の保存安定性の観点から、(D)成分として、アルカリ金属の水酸化物を含有する。(D)成分としては、(A)成分の保存安定性の観点から、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムから選ばれる1種以上が好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。
【0030】
<水>
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、水を含有する。使用する水は、イオン交換水、RO水、蒸留水のいずれでもよい。
【0031】
<各成分の含有量等>
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物における(A)成分の含有量は0.05〜1質量%である。(A)成分の含有量は、感染性微生物の殺菌性の観点から、0.05質量%以上であり、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましい。また、(A)成分の含有量は、血液汚れ洗浄性の観点から1質量%以下であり、0.8質量%以下が好ましく、0.7質量%以下がより好ましい。
【0032】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物における(B)成分の含有量は0.3〜2質量%である。(B)成分の含有量は、スプレイヤー使用時の十分な泡吐出量の観点から0.3質量%以上であり、0.5質量%以上が好ましい。また、(B)成分の含有量は、(A)成分の保存安定性の観点から、2質量%以下であり、1質量%以下が好ましく、0.7質量%以下がより好ましい。
【0033】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物における(C)成分の含有量は0.1〜1質量%である。(C)成分の含有量は、スプレイヤー使用時に十分な泡吐出量の観点から、0.1質量%以上であり、0.2質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましい。また、(C)成分の含有量は、(A)成分の保存安定性の観点から、1質量%以下であり、0.6質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。
【0034】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物における(D)成分の含有量は0.1〜1質量%である。(D)成分の含有量は、(A)成分の保存安定性の観点から、0.1質量%以上であり、0.2質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましい。(D)成分の含有量は、金属表面に適用する際に金属表面の腐食を防ぐ観点から、1質量%以下であり、0.8質量%以下が好ましく、0.6質量%以下がより好ましい。
【0035】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物における(B)成分と(C)成分の合計含有量に対する(A)成分の含有量の質量比(A)/〔(B)+(C)〕は、血液汚れ洗浄性と(A)成分の保存安定性の観点から、0.1〜0.9である。血液汚れ洗浄性の観点から、質量比(A)/〔(B)+(C)〕は0.1〜0.8が好ましく、0.1〜0.75がより好ましい。
【0036】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物における(B)成分の含有量と(C)成分の含有量の質量比(B)/(C)は、血液汚れ洗浄性の観点から、1/5〜5/1が好ましく、1/3〜3/1がより好ましく、1/2〜2/1が更に好ましい。
【0037】
<他の任意成分>
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、金属表面の腐食を防止するために、(E)成分として、珪酸アルカリ金属塩を含有することが好ましい。(E)成分としては、本発明の硬質表面用洗浄剤組成物の高温(例えば50℃)での保存安定性の観点から、オルト珪酸アルカリ金属塩、メタ珪酸アルカリ金属塩、1号珪酸アルカリ金属塩、2号珪酸アルカリ金属塩、及び3号珪酸アルカリ金属塩から選ばれる化合物が好ましく、オルト珪酸アルカリ金属塩、メタ珪酸アルカリ金属塩、及び1号珪酸アルカリ金属塩から選ばれる化合物がより好ましく、メタ珪酸アルカリ金属塩が更に好ましい。(E)成分としては、珪酸カリウム塩及び珪酸ナトリウム塩から選ばれる化合物が好ましく、珪酸ナトリウム塩がより好ましい。
【0038】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物における(E)成分の含有量は、金属腐食を防止する観点から、0.01〜0.3質量%が好ましく、0.03〜0.15質量%がより好ましい。
【0039】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、その他の任意成分として、本発明の効果を妨げない範囲において一般に洗浄剤に配合される成分を含有することができる。例えば、溶剤、キレート剤、ハイドロトロープ剤、分散剤、pH調整剤((D)成分を除く)、粘度調整剤、香料、着色剤、酸化防止剤、防腐剤などが挙げられる。
【0040】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、更に、(B)成分、(C)成分以外の界面活性剤(以下、「他の界面活性剤」と呼ぶ)を含有することができる。他の界面活性剤は、特に制限されるものではないが、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩やアルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルホン酸塩等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリアルキレングリコール、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸ポリオキシエチレンエステル、脂肪酸ソルビタンエステル、脂肪酸ポリオキシアルキレンソルビタンエステル、脂肪酸サッカライドエステル、アルキルポリサッカライド、アルキルグリセリルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン等のベタイン、及びアミドアミノ酸(イミダゾリン系ベタイン)等の両性界面活性剤、及びアルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、ポリエチレンポリアミン、塩化ベンゼトニウム等のカチオン性界面活性剤等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0041】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物における他の界面活性剤の含有量は、血液汚れ洗浄性の観点から、0.1〜3質量%が好ましく、0.3〜1.5質量%がより好ましい。
【0042】
<pH>
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物の25℃におけるpHは、血液汚れ洗浄性の観点から、12〜14である。更に、金属表面に適用する際に金属表面の腐食を防ぐ観点から12.3〜13.5が好ましく、12.5〜13がより好ましい。尚、本発明の硬質表面用洗浄剤組成物の25℃におけるpHは、HORIBA pH Meter F-21((株)堀場製作所製)を用いて測定することができる。
【0043】
<粘度>
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、スプレイヤーによる吐出性の観点から、25℃における粘度が10mPa・s以下であることが好ましく、7mPa・s以下であることがより好ましく、5mPa・s以下であることが更に好ましい。また、本発明の硬質表面用洗浄剤組成物の25℃における粘度は0.5mPa・s以上であることが好ましく、0.8mPa・sであることがより好ましく、1mPa・sであることが更に好ましい。ここで粘度は、B型粘度計によりNo.1ローターを用いて、25℃、回転数60rpmの条件で1分攪拌後の値を測定したものである。
【0044】
<適用方法>
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、剤型や使用方法が特に制限されるものでは無いが、液状又は泡状となって対象物に適用できる剤型とすることが好ましい。本発明の組成物は、特に該組成物の硬質表面への付着、及びその後の除去を伴う洗浄方法に用いるのが好ましく、液状に調整したものをそのまま対象に適用することもできるが、作業性、簡便性の点から、本発明の組成物を紙や布、ガーゼ、ペーパータオルに含浸させ、対象物を拭き取るように適用する方法や、泡形成機構を有するスプレイヤーによって、泡状に吐出して対象に適用する方法等で使用することが好ましい。
【0045】
<硬質表面洗浄剤物品>
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、泡形成機構を有するスプレイヤーを備える吐出容器に充填して用いることができる。スプレイヤーを備える吐出容器としてはトリガー式スプレイヤーを備える吐出容器が好ましく、トリガー式スプレイヤーとしては実公平6−34858号公報、特公昭63−2668号公報に記載のもの等が挙げられる。よって、本発明により、本発明の硬質表面用洗浄剤組成物を、トリガー式スプレイヤーを備える吐出容器に充填してなる、硬質表面用洗浄剤物品が提供される。本発明の硬質表面用洗浄剤組成物を、スプレイヤーを備える吐出容器に充填して用いる場合には、硬質表面、若しくは硬質表面に付着した汚れに泡状に付着させた後、一定時間静置してから水で洗い流したり、水を含んだ紙や布、ガーゼ、ペーパータオル等によりふき取ったりすることで、硬質表面、若しくは硬質表面に付着した汚れを洗浄・除菌することができる。
【0046】
泡形成機構としては、好ましくはスピンエレメント及び直径4〜8mmの円形状の空間部分に棒状の突起を数個設置された液体通過板を有するものが好適である。ここでスピンエレメントとは、スピンエレメントを通じて液状物の流れにスピンを与え、最後にノズルから噴出する機構であり、その詳細な構造としては特開平8−332422号公報や特開平8−108102号公報の
図4(b)、特開2002−68265号公報の
図1などを参考にすることができる。
【0047】
泡形成機構のもう一つの部材である液体通過板は、直径5〜7mmの円形状の空間部分に棒状の突起を好ましくは3〜8個設置されたものであり、通過する板を平面で見た場合に、好ましくは幅0.8〜1.2mm、長さ2〜4mmの長方形状の棒状の突起が好適である。また、棒状の突起を除いた空間部分に対する棒状の突起の占める面積は30〜90面積%が好ましく、40〜80面積%がより好ましく、40〜70面積%が更に好ましく、このような液体通過板を設置することで、垂直表面への泡の付着滞留性が良好になる。
【0048】
泡形成機構を有するスプレイヤーを備える吐出容器としては、一般に使用されている容器を用いることができる。例えば、ポリエチレンを原料として得られるものであり、ブロー成型などによって製造することができる。容器の肉厚は底面と側面と異なってもよく、0.05〜3.0mmが好ましく、容器の容量は200〜1000mLが好ましい。(A)成分の次亜塩素酸塩を配合する場合、光による分解を抑制するために容器は不透明であるのが好ましい。不透明化のために容器に酸化チタン等を含有するものが用いられるのが好ましく、その場合、容器は多層構造を有するものが好ましく、特に最内側の液体漂白剤組成物と接触する層は、金属物を含まないものが用いられるのが好ましい。
【0049】
<使用場面>
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、病院をはじめとした医療施設等において、血液や体液といった次亜塩素酸塩による消毒が必要とされる汚れに汚染された硬質表面や、ノロウイルス等の微生物による汚染が懸念される環境表面を洗浄・除菌する際に好適に用いることができる。
【実施例】
【0050】
表1に示す組成の硬質表面用洗浄剤組成物を調製し、上記方法にて25℃のpH及び25℃の粘度を測定した。表1中の組成は全て有効分濃度に基づく。また、表1の硬質表面用洗浄剤組成物について、血液汚れ洗浄性、次亜塩素酸アルカリ金属塩の保存安定性、泡吐出量を、それぞれ下記の方法で評価した。結果を表1に示した。なお、表1の硬質表面用洗浄剤組成物については、下記の方法で医療施設での感染が問題とされる病原体の中でも特に殺菌剤に対する耐性の高い、芽胞形成菌(Clostridium difficile)に対して短時間で高い殺菌効果が得られている。
【0051】
[芽胞形成菌に対する殺菌性評価方法]
・芽胞液の作成
タウロコール酸添加BHIA培地で37℃±1℃、7日間嫌気培養した試験菌の菌体を精製水に懸濁させ、60℃±1℃、20分間加熱し、栄養細胞を死滅させた。この懸濁液を遠心分離して上澄み液を除いた後、菌体を再度精製水に懸濁させ、菌数が10
7〜10
8cfu/mLとなるように調整し、芽胞液とした。
【0052】
・殺菌性評価
表1の硬質表面用洗浄剤組成物10mLに芽胞液を0.1mL接種し、試験液とした。室温で保存し、5分後に試験液をSCDLP培地(日本製薬株式会社)で直ちに10倍又は100倍に希釈した。この希釈液の生菌数を、菌数測定用培地を用いて測定し、測定限界以下(10
2cfu/mL以下)まで菌数が低減した場合を合格とした。
【0053】
[血液汚れ洗浄性の評価方法]
(1)血液汚れの付着した基盤の作成方法
ヘパリン処理ヒツジ血液(コージンバイオ社)に硫酸プロタミン(ノボ・静注用)を15μg/血液1mLの比で添加し、十分に混和した。次に上記血液20mgをポリプロピレン製基盤(上面(縦80mm、横30mm)、厚さ1mm)の上面全体に10mg/cm
2の割合で塗布した後、25℃にて2時間乾燥して汚れの付着した基盤を作成した。
【0054】
(2)洗浄方法
(1)で作成した血液汚れ全体に硬質表面用洗浄剤組成物1mLを適用し、25℃にて静置し5分間経過後、基盤の上面を25℃の水10mLで濯いだ。
【0055】
(3)血液汚れ洗浄率の計算方法
洗浄前後の基盤の質量変化から下記計算式により血液汚れ洗浄率(%)を算出し、表1にその値を記載した。洗浄率70%以上であれば良好に洗浄できたものと判断する。
血液汚れ洗浄率(%)=[((洗浄前の基盤質量)−(洗浄後の基盤質量))/((洗浄前の基盤質量)−(血液汚れを付着する前の基盤質量)]×100
【0056】
[次亜塩素酸アルカリ金属塩の保存安定性の評価方法]
洗浄剤組成物100mLをポリプロピレン製容器に入れ、50℃で1ヶ月保存し、残存する有効塩素濃度を下記の方法で測定した。また、初期有効塩素濃度に対する保存後の残存有効塩素濃度の割合を有効塩素残存率とした。
【0057】
有効塩素濃度測定方法:洗浄剤組成物5gにイオン交換水50mL、よう化カリウム0.5g(和光純薬)、10%硫酸(和光純薬)20mL、デンプン指示薬(シグマアルドリッチ)5滴を加えて溶解させ、滴定用ビュレットを用いて0.1Mチオ硫酸ナトリウム(和光純薬)で滴定を行った。滴定に用いたチオ硫酸ナトリウムの量から洗浄液中に含まれる有効塩素濃度を算出した。有効塩素残存率50%以上であれば、実際の使用で想定される保管条件では問題ないレベルであり、良好な保存安定性を示すものと判断する。
【0058】
[泡吐出量の測定方法]
表1の洗浄剤組成物をキッチン泡ハイター(花王(株)製)容器(吐出量 1g/回、トリガー式スプレイヤーを備える吐出容器)に充填し、100mLメスシリンダーに上から10回噴霧した際にできる泡の容量(mL)を測定した。この操作を3回行い、その平均値を表に記載した。泡吐出量が70mL以上であれば、汚れの洗浄・除菌に必要な時間、良好な泡を保持できるものと判断する。
【0059】
【表1】
【0060】
[表1の化合物]
表1記載の各成分を下記に示す。表1では、これらの製品の有効分が表1中の数値となるように用いた。
・次亜塩素酸ナトリウム:「低食次亜塩素酸ソーダ」(南海化学株式会社、有効塩素濃度12%)
・ドデシルジメチルアミンオキシド:「アンヒトール20N」(花王株式会社)
・n−デカン酸ナトリウム:n−デカン酸(「ルナック10−98」(花王株式会社))のナトリウム塩
・NaOH:「25%か性ソーダ」(南海化学株式会社)
・メタ珪酸ナトリウム:「無水メタ珪酸ナトリウム」(広栄化学工業株式会社)