(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電池では、レーザ光(エネルギビーム)を用いて電池缶(本体部材)と蓋体(蓋部材)とを溶接する際、本体部材の開口部に形成した段差部(長辺内側突出部,短辺内側突出部)によって、本体部材(開口部)と蓋体との間隙からエネルギビームが本体部材内に進入するのを防ぎ、エネルギビームによる電極体の損傷を防ぐことができる。
しかしながら、本体部材において、この本体部材の深さ方向について、開口部の内側全周にわたり段差部(長辺内側突出部,短辺内側突出部)を同じ位置に形成し難い。このため、本体部材では、長辺内側突出部及び短辺内側突出部の底部からの高さにばらつきが生じ易く、蓋部材を本体部材の開口部に挿入した際、蓋部材が開口部内で傾いて配置されてしまう虞があり、好ましくない。
また、矩形板状の蓋部材は、長手方向に反りが生じ易い。例えば、長手方向の中央部が本体部材の深さ方向に凸状に反った形態の蓋部材を開口部に挿入した場合、蓋部材のうち長手方向中央に位置する部位が長辺内側突出部に支持される一方、長手方向両端に位置する部位(一対の蓋短辺部)が短辺内側突出部から浮いてしまう。そこで、蓋部材全体を開口部に挿入すべく、一対の蓋短辺部を本体部材の深さ方向に押圧すると、蓋部材がねじれるように変形して、蓋部材のうち一方の長辺が長辺内側突出部よりも深さ方向に落ち込んむ場合があるなど、蓋部材を開口部内に適切に配置できない場合がある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであって、エネルギビームの本体部材内への進入による不具合を防ぎ、蓋部材を開口部に適切に配置した電池を提供する。また、このような電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、直方体状の金属製の電池ケース内に電極体を収容してなる電池であって、上記電池ケースは、一対の開口長辺部及び一対の開口短辺部を含む矩形状の開口部を有する、有底角筒状の本体部材と、上記開口部内に挿入されて上記開口部を封口してなり、上記一対の開口長辺部にそれぞれ対向する一対の蓋長辺部、及び、上記一対の開口短辺部にそれぞれ対向する一対の蓋短辺部を有する、矩形板状の蓋部材と、を有し、上記開口長辺部と上記蓋長辺部
とは、及び上記開口短辺部と蓋短辺部と
は溶接されてなり、上記本体部材の上記開口部のうち、上記一対の開口短辺部は、上記開口短辺部全体にわたり、内側に向けて突出し、上記蓋部材の上記蓋短辺部をそれぞれ支持する短辺内側突出部を有し、上記一対の開口長辺部は、上記開口長辺部全体にわたり、内側に向けて突出すると共に、上記短辺内側突出部よりも上記本体部材の深さ方向に低位とされ、上記蓋部材の上記蓋長辺部と離間してなる長辺内側突出部を有
し、前記短辺内側突出部は、前記開口短辺部全体にわたり、前記深さ方向に直交し、前記蓋部材を支持する支持面を有し、前記長辺内側突出部は、前記開口長辺部全体にわたり、内側ほど上記深さ方向に低位となる傾斜面を有する電池である。
【0007】
上述の電池では、一対の開口短辺部においてその全体にわたり短辺内側突出部を有するほか、一対の開口長辺部においてその全体にわたり長辺内側突出部を有する。このため、エネルギビームを用いて溶接する際に、いずれの部位でも、開口部と蓋部材との間隙からエネルギビームが本体部材内に進入するのを防止しているので、エネルギビームの進入に伴う電池内部の損傷のない良好な電池となる。
しかも、短辺内側突出部は長辺内側突出部より本体部材の深さ方向に高位に配置され、蓋部材の蓋短辺部をそれぞれ支持するのに対し、長辺内側突出部は短辺内側突出部よりも本体部材の深さ方向に低位とされ、蓋部材の蓋長辺部と離間してなる。このため、本体部材の開口部において、短辺内側突出部及び長辺内側突出部のうち、短い長さの短辺内側突出部のみを本体部材の深さ方向に精度良く形成することで、蓋部材を開口部に適切に配置した電池となる。また、例えば、長手方向の中央部が本体部材の深さ方向に凸状となる形態に反った蓋部材を用いた場合でも、この蓋部材の蓋長辺部が長辺内側突出部に接触しにくく、蓋部材を適切に配置した電池とすることができる。
かくして、エネルギビームの本体部材内への進入による不具合を防ぎ、しかも、蓋部材を開口部に適切に配置した電池とすることができる。
【0009】
加えて上述の電池では、短辺内側突出部が開口短辺部全体にわたり、深さ方向に直交する支持面を有する。このため、長手方向の寸法が許容寸法範囲のうちでも短い形態の蓋部材を用いた場合にも、蓋部材の蓋短辺部を本体部材の底部から同じ高さに支持することができる。
その一方、長辺内側突出部が開口長辺部全体にわたり、本体部材の内側ほど深さ方向に低位となる傾斜面を有する。この傾斜面は、深さ方向に直交する短辺内側突出部の支持面よりも加工し易く、本体部材に長辺内側突出部を容易に設けることができる。
【0010】
さらに、本発明の他の一態様は、直方体状の金属製の電池ケース内に電極体を収容してなり、上記電池ケースは、一対の開口長辺部及び一対の開口短辺部を含む矩形状の開口部を有する、有底角筒状の本体部材と、上記開口部内に挿入されて上記開口部を封口してなり、上記一対の開口長辺部にそれぞれ対向する一対の蓋長辺部、及び、上記一対の開口短辺部にそれぞれ対向する一対の蓋短辺部を有する、矩形板状の蓋部材と、を有し、上記開口長辺部と上記蓋長辺部
とは、及び上記開口短辺部と蓋短辺部と
は溶接されてなり、上記本体部材の上記開口部のうち、上記一対の開口短辺部は、上記開口短辺部全体にわたり、内側に向けて突出し、上記蓋部材の上記蓋短辺部をそれぞれ支持する短辺内側突出部を有し、上記一対の開口長辺部は、上記開口長辺部全体にわたり、内側に向けて突出すると共に、上記短辺内側突出部よりも上記本体部材の深さ方向に低位とされ、上記蓋部材の上記蓋長辺部と離間してなる長辺内側突出部を有
し、前記短辺内側突出部は、前記開口短辺部全体にわたり、前記深さ方向に直交し、前記蓋部材を支持する支持面を有し、前記長辺内側突出部は、前記開口長辺部全体にわたり、内側ほど上記深さ方向に低位となる傾斜面を有する電池の製造方法であって、上記本体部材の上記開口部内に上記蓋部材を挿入し、上記蓋部材の上記蓋短辺部を上記本体部材の上記開口短辺部の上記短辺内側突出部に支持させる挿入支持工程と、
エネルギビームを用いて、上記一対の開口長辺部と上記一対の蓋長辺部、及び、上記一対の開口短辺部と上記一対の蓋短辺部とをそれぞれ溶接する溶接工程と、を備える電池の製造方法である。
【0011】
上述の電池の製造方法では、一対の開口短辺部においてその全体にわたり短辺内側突出部を有するほか、一対の開口長辺部においてその全体にわたり長辺内側突出部を有する。このため、溶接工程では、いずれの部位でも、エネルギビームを用いて溶接する際、開口部と蓋部材との間隙からエネルギビームが本体部材内に進入するのを確実に防ぐことができる。
しかも、短辺内側突出部は長辺内側突出部より本体部材の深さ方向に高位に配置され、蓋部材の蓋短辺部をそれぞれ支持するのに対し、長辺内側突出部は短辺内側突出部よりも本体部材の深さ方向に低位とされ、蓋部材の蓋長辺部と離間してなる。このため、本体部材の開口部において、短辺内側突出部及び長辺内側突出部のうち、短い長さの短辺内側突出部のみを本体部材の深さ方向に精度良く形成することで足りるので、形成容易である。また、挿入支持工程では、例えば、長手方向の中央部が本体部材の深さ方向に凸状となる形態に反った蓋部材を用いた場合でも、この蓋部材の蓋長辺部を長辺内側突出部に接触させることなく、蓋部材を適切に配置することができる。
かくして、エネルギビームの本体部材内への進入を防ぎつつ、蓋部材を開口部に適切に配置した電池を製造できる。
【0013】
加えて上述の電池の製造方法では、短辺内側突出部が開口短辺部全体にわたり、深さ方向に直交する支持面を有する。このため、挿入支持工程において、例えば、長手方向に反っているために、長手方向の寸法がわずかに短い形態の蓋部材を用いた場合でも、蓋部材の蓋短辺部を本体部材の底部から同じ高さに支持することができる。
また、長辺内側突出部が開口長辺部全体にわたり、本体部材の内側ほど深さ方向に低位となる傾斜面を有する。この傾斜面は、深さ方向に直交する短辺内側突出部の支持面よりも加工し易く、本体部材に長辺内側突出部を容易に設けることができる。
【0014】
さらに、上述
の電池の製造方法であって、前記長辺内側突出部の突出寸法は、前記短辺内側突出部の突出寸法よりも小さくされてなり、前記溶接工程は、前記本体部材の外部から、押圧部材で前記一対の開口長辺部を内側に向けて押圧し、上記一対の開口長辺部と前記一対の蓋長辺部とをそれぞれ当接させて、上記一対の開口長辺部と上記一対の蓋長辺部とを溶接する電池の製造方法とすると良い。
【0015】
上述の電池の製造方法では、長辺内側突出部の突出寸法が、短辺内側突出部の突出寸法よりも小さくされている。このため、開口部の長辺をなす開口長辺部に、長辺内側突出部を容易に形成することができる。
一方、溶接工程では、本体部材の外部から、一対の開口長辺部を内側に向けて押圧し、一対の開口長辺部と一対の蓋長辺部とをそれぞれ当接させる。このため、開口長辺部と蓋長辺部との間に間隙が生じたとしてもその大きさをごく小さくできるため、短辺内側突出部よりも小さな突出寸法の長辺内側突出部でも、エネルギビームの本体部材内への進入を確実に防ぐことができる。
【0016】
さらに、上述の電池の製造方法であって、前記一対の開口長辺部は、上記開口長辺部全体にわたり、外側に向けて突出し、かつ、前記深さ方向に前記開口部の開口端面から前記長辺内側突出部よりも低位の位置まで延びる長辺外側突出部を有し、前記溶接工程は、前記押圧部材で、上記長辺外側突出部のうち、上記開口端面から上記深さ方向に離間した部位を押圧する電池の製造方法とすると良い。
【0017】
溶接工程において、押圧部材で開口長辺部を内側に向けて押圧し、開口長辺部と蓋長辺部とを当接させた状態で、開口長辺部の開口端面及び蓋長辺部にエネルギビームを照射する。このとき、開口長辺部のうち開口端面付近にまで押圧部材を配置すると、エネルギビームの熱が開口長辺部を通じて押圧部材に伝わって(逃げて)しまい、適切に溶接できない場合がある。
【0018】
これに対し、上述の電池の製造方法では、開口長辺部に長辺外側突出部を有する本体部材を用い、溶接工程において、押圧部材で、長辺外側突出部のうち、開口端面から深さ方向に離間した部位を押圧する。このため、溶接の際、エネルギビームの熱が押圧部材に伝わり難い。従って、開口長辺部と蓋長辺部とを適切に溶接することができる。
しかも、長辺外側突出部は、開口長辺部全体にわたり、長辺内側突出部よりも低位の位置まで延びているので、この長辺外側突出部のうち開口端面から深さ方向に離間した部位を押圧部材で内側に向けて押圧しても、開口端面付近で開口長辺部と蓋長辺部との間に隙間を生じることなく、開口長辺部全体にわたって、これと蓋長辺部とを確実に当接させて溶接を行うことができる。
【0019】
なお、押圧部材が蓋長辺部の端面と対向するように、押圧部材を配置して押圧すると良い。開口長辺部の内側面と蓋長辺部の端面とをより確実に当接させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施形態)
次に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
まず、本実施形態にかかる電池100は、捲回型の電極体120、及び、この電極体120を内部に収容する直方体状の金属製の電池ケース110を備えるリチウムイオン二次電池である(
図1参照)。この電池100は、これら電極体120,電池ケース110のほか、正極端子150と負極端子160とを備える(
図1参照)。
【0022】
このうち、正極端子150及び負極端子160は、電池ケース110内で電極体120に接続する一方、電池ケース110の蓋部材113(後述)を貫通して電池ケース110の外部に延出する第1端子部材151,161と、蓋部材113上に配置されて第1端子部材151,161にかしめ固定されたクランク状の第2端子部材152,162とからなる(
図2,3参照)。また、正極端子150及び負極端子160は、これらにバスバや圧着端子など電池100外の接続端子を締結するための金属製の締結部材155,165と共に、蓋部材113の内側(電池ケース110の内側)に配置された樹脂製の第1絶縁部材157,167、及び、蓋部材113の外側(電池ケース110の外側)に配置された樹脂製の第2絶縁部材158,168を介して、蓋部材113に固定されている(
図2,3参照)。
【0023】
また、電極体120は、いずれも帯状の正極板121及び負極板131が、帯状のセパレータ141を介して、捲回軸AXの周りを扁平形状に捲回された形態である。このうち、正極板121は、アルミニウム製の正極箔(図示しない)と、この正極箔の両主面上にそれぞれ形成された2つの正極活物質層(図示しない)とを有している。また、負極板131は、銅製の負極箔(図示しない)と、この負極箔の両主面上にそれぞれ形成された2つの負極活物質層(図示しない)とを有している。
なお、この電極体120は、正極板121の一部が、セパレータ141から捲回軸AXに沿う軸線方向DXの一方側(
図2中、左側)に渦巻状をなして延出しており、前述の正極端子150の第1端子部材151と接続している。また、負極板131の一部が、セパレータ141から軸線方向の他方側(
図2中、右側)に渦巻状をなして延出しており、前述の負極端子160の第1端子部材161と接続している。
【0024】
また、電池ケース110は、アルミニウム製で矩形状の開口部111hを有する有底角筒状の本体部材111と、同じくアルミニウム製で本体部材111の開口部111h内に挿入されて開口部111hを封口する矩形板状の蓋部材113とから構成されている。
このうち本体部材111の矩形状の開口部111hは、一対の開口長辺部111a,111aと、一対の開口短辺部111b,111bと、開口長辺部111aと開口短辺部111bとの間の四隅にそれぞれ位置する1/4円形状の開口R部111cとを有する(
図6参照)。
【0025】
各開口短辺部111b,111bは、
図4に示すように、開口短辺部111b全体にわたり、本体部材111の内側DJ(
図4中、左方から右方)に向けて突出する短辺内側突出部111eを有する(突出寸法Te)。
この短辺内側突出部111eは、蓋部材113の蓋短辺部113bを下方から支持する支持面111nを有すると共に(
図4参照)、短辺内側突出部111eが本体部材111の底部111gまで延長した形態を有する。なお、支持面111nは、本体部材111の深さ方向DDに直交する平面とされている(
図4参照)。
加えて、開口短辺部111bは、この開口短辺部111b全体にわたり、本体部材111の外側DK(
図4中、右方から左方)に向けて突出する短辺外側突出部111yを有する(
図4参照)。
【0026】
また、各開口R部111c,111cには、その全体にわたり、本体部材111の内側DJに向けて突出するR部内側突出部111fを有する(
図6参照)。なお、本実施形態では、このR部内側突出部111fは、短辺内側突出部111eの支持面111nと同じ高さで、深さ方向DDに直交する上方面111pを有する。
また、開口R部111cは、この開口R部111c全体にわたり、本体部材111の外側DK方向に向けて突出するR部外側突出部111zを有している。
【0027】
一方、各開口長辺部111a,111aは、開口長辺部111a全体にわたり、本体部材111の内側DJに向けて突出する長辺内側突出部111dを有する(
図5参照)。なお、この長辺内側突出部111dの突出寸法Tdは、短辺内側突出部111eの突出寸法Teより小さい(Td<Te)。
この長辺内側突出部111dは、開口長辺部111a全体にわたり、支持面111n及び上方面111pより低位で、かつ、本体部材111の内側DJほど深さ方向DDに低位となる傾斜面111mを有すると共に(
図5参照)、長辺内側突出部111dが底部111gまで延長した形態を有する。なお、長辺内側突出部111dは、前述した短辺内側突出部111eよりも本体部材111の深さ方向DDに低位とされており、長辺内側突出部111dの傾斜面111mは、蓋部材113の蓋長辺部113aと離間している(
図5参照)。また、傾斜面111mと開口R部111cの上方面111pとの間は段差状にされている。
加えて、開口長辺部111aは、この開口長辺部111a全体にわたり、本体部材111の外側DKに向けて突出する長辺外側突出部111xを有する(
図5参照)。
【0028】
矩形板状の蓋部材113のうち、その長手方向DLの中央付近には、非復帰型の安全弁113vが設けられている。また、この安全弁113vの近傍には、電解液(図示しない)を電池ケース110内に注入する際に用いられる注液孔113hが設けられており、封止部材115で気密に封止されている。なお、蓋部材113のうち、その長手方向DLの両端近傍には、前述した正極端子150及び負極端子160が、電池ケース110の内部から外部に延出する形態でそれぞれ固設されている。
【0029】
また、この蓋部材113は、周縁部分に一対の蓋長辺部113a,113aと、一対の蓋短辺部113b,113bとを有している。このうち、蓋長辺部113a,113aは、それぞれ本体部材111の開口長辺部111a,111aと対向している。また、蓋短辺部113b,113bは、それぞれ本体部材111の開口短辺部111b,111bと対向している。
【0030】
なお、本実施形態では、電池ケース110をなす本体部材111と蓋部材113とは、溶接により互いに接合されている。具体的には、開口長辺部111aと蓋長辺部113a、及び、開口短辺部111bと蓋短辺部113bとが、後述するように、蓋部材113の厚み方向外側から(蓋部材113の上方から)照射されたレーザビームLBにより、全周にわたり溶接されている。即ち、開口部111hと蓋部材113とは、開口部111hの一部及び蓋長辺部113a,蓋短辺部113bの一部が一旦溶融した後に固化した平面視ロ字状の溶融固化部112を介して、気密に接合されている(
図4,5参照)。
【0031】
本実施形態にかかる電池100では、一対の開口短辺部111b,111bにおいてその全体にわたり短辺内側突出部111e,111eを有するほか、一対の開口長辺部111a,111aにおいてその全体にわたり長辺内側突出部111d,111dを有する。このため、エネルギビームであるレーザビームLBを用いて溶接する際に、いずれの部位でも、開口部111hと蓋部材113との間隙からレーザビームLBが本体部材111内に進入するのを防止しているので、レーザビームLBの進入に伴う電池内部の損傷のない良好な電池100となる。
【0032】
次いで、本実施形態にかかる電池100の製造方法について説明する。
まず、蓋部材113と、第1端子部材151,161と、第2端子部材152,162と、締結部材155,165と、第1絶縁部材157,167と、第2絶縁部材158,168とをそれぞれ用意する。なお、蓋部材113は、矩形板状をなしており、その周縁に位置する、一対の蓋長辺部113a,113aと、一対の蓋短辺部113b,113bとを有している。
これら蓋部材113,第1端子部材151,161,第2端子部材152,162,締結部材155,165,第1絶縁部材157,167,第2絶縁部材158,168を用いて、蓋部材113に正極端子150及び負極端子160をそれぞれ固設する(
図3参照)。
次に、別途形成した電極体120に、正極端子150及び負極端子160をそれぞれ接続(溶接)する。かくして、正極端子150及び負極端子160と共に、電極体120と一体となった蓋部材113を作製した。
【0033】
また別途、矩形状の開口部111hを有する有底角筒状の本体部材111を用意した。
この本体部材111の開口部111hは、開口端面111sを有すると共に、一対の開口長辺部111a,111aと、一対の開口短辺部111b,111bとを有している(
図6〜8参照)。
このうち、各開口短辺部111b,111bは、この開口短辺部111b全体にわたり、本体部材111の内側DJ(
図7中、左方から右方)に向けて突出する短辺内側突出部111eを有する(突出寸法Te)。この短辺内側突出部111eは、蓋部材113の蓋短辺部113bを下方から支持する支持面111nを有する(
図7参照)。なお、この支持面111nは、本体部材111の深さ方向DDに直交する平面とされている(
図7参照)。このため、後述する挿入支持工程において、蓋部材113の蓋短辺部113bが、本体部材111の内側DKに位置ずれしても、蓋部材113の深さ方向DDの位置に変動が生じ難い。
【0034】
また、開口短辺部111bは、この開口短辺部111b全体にわたり、本体部材111の外側DK(
図7中、右方から左方)に向けて突出する短辺外側突出部111yを有する(
図7参照)。この短辺外側突出部111yは、
図7に示すように、深さ方向DDに、開口部111hの開口端面111sから短辺内側突出部111eよりも高位の位置まで延びている。つまり、開口短辺部111bでは、短辺外側突出部111yの深さ方向DDの寸法Tyが、開口端面111sから短辺内側突出部111eまでの深さ寸法Tnより小さい(Ty<Tn)。このような形態の開口短辺部11bでは、短辺内側突出部111eの支持面111nが、深さ方向DDに直交する平面とされ、しかも、深さ方向DDの位置が精度良好に形成されている。
【0035】
一方、各開口長辺部111a,111aは、この開口長辺部111a全体にわたり、本体部材111の内側DJに向けて突出する長辺内側突出部111dを有する(
図8参照)。なお、この長辺内側突出部111dの突出寸法Tdは、短辺内側突出部111eの突出寸法Teより小さい(Td<Te)。
この長辺内側突出部111dは、開口長辺部111a全体にわたり、本体部材111の内側DJほど深さ方向DDに低位となる傾斜面111mを有する。なお、開口長辺部111aにおいて、開口端面111sから長辺内側突出部111dまでの深さ寸法Tmは、前述した開口短辺部111bにおける深さ寸法Tnよりも大きい(Tm>Tn)。つまり、長辺内側突出部111dは、前述した短辺内側突出部111eよりも本体部材111の深さ方向DDに低位とされている(
図8参照)。
【0036】
また、開口長辺部111aは、この開口長辺部111a全体にわたり、本体部材111の外側DKに向けて突出する長辺外側突出部111xを有する(
図8参照)。この長辺外側突出部111xは、
図8に示すように、深さ方向DDに、開口端面111sから長辺内側突出部111dよりも低位の位置まで延びている。つまり、開口長辺部111aでは、長辺外側突出部111xの深さ方向DDの寸法Txが、開口端面111sから長辺内側突出部111dまでの深さ寸法Tmより大きい(Tx>Tm)。
【0037】
続いて、本実施形態にかかる電池100の製造方法のうち挿入支持工程について説明する。
この挿入支持工程では、本体部材111内に電極体120を収容すると共に、本体部材111の開口部111h内に蓋部材113を挿入し、蓋部材113の蓋短辺部113bを本体部材111の短辺内側突出部111eの支持面111nに支持させた。
【0038】
なお、このとき、本体部材111の開口部111hと蓋部材113の周縁(蓋長辺部113a,蓋短辺部113b)との間には、全周にわたり隙間ができる。具体的には、開口長辺部111a,111aと蓋長辺部113a,113aとは、それぞれ隙間KG1を介して互いに離間して配置される(
図8参照)。また、開口短辺部111b,111bと蓋短辺部113b,113bとは、それぞれ隙間KG2を介して互いに離間して配置される(
図7参照)。このように、開口部111hと蓋部材113との間に隙間KG1、KG2ができる形態とすることで、この挿入支持工程において、開口部111hと蓋部材113とが衝突したり強く接触して、金属粉などの異物が生じるのを防止できる。
また、
図8に示すように、蓋部材113の蓋長辺部113aは、支持面111nより深さ方向DDに低位にされている、開口長辺部111aの長辺内側突出部111d(傾斜面111m)に接触していない。
【0039】
次に、本実施形態にかかる電池100の製造方法のうち溶接工程について説明する。この溶接工程では、エネルギビームであるレーザビームLBと、金属製で矩形板状の一対の押圧部材200,200とを用いる。
この溶接工程では、まず、上述の一対の押圧部材200,200を用いて、一対の開口長辺部111a,111aをそれぞれ内側DJに向けて押圧して、開口長辺部111aと蓋長辺部113aとを当接させた(
図9参照)。なお、
図9に示すように、押圧部材200は、長辺外側突出部111xのうち、開口端面111sから深さ方向DDに離間した部位111xpを押圧するように配置する。
その後、一対の押圧部材200,200で開口長辺部111aと蓋長辺部113aとを押圧しつつ、蓋部材113の厚み方向外側(
図9中、上方)から、レーザビームLBを照射して、本体部材111の開口部111hと蓋部材113とを全周にわたり溶接する。
なお、このレーザビームLBの照射には、光ファイバを媒質に用いたファイバレーザを、連続的にレーザ光を出すCWレーザ(countinuous wave laser)として用いた。これにより、開口部111hの一部及び蓋部材113の周縁(蓋長辺部113a,蓋短辺部113b)の一部が溶融した後に固化して平面視ロ字状の溶融固化部112が形成され(
図4,5参照)、この溶融固化部112を介して、開口部111hと蓋部材113とが全周にわたり気密に接合する。
【0040】
溶接した後、電解液を注液孔から電池ケース110内に注液し、封止部材で注液孔を気密に封止する。その後、この電池100について、初充電やエージング、各種検査を行う。かくして、電池100が完成する。
【0041】
以上で説明したように、本実施形態にかかる電池100の製造方法では、一対の開口短辺部111b,111bにおいてその全体にわたり短辺内側突出部111e,111eを有するほか、一対の開口長辺部111a,111aにおいてその全体にわたり長辺内側突出部111d,111dを有する。このため、溶接工程では、いずれの部位でも、レーザビームLBを用いて溶接する際、開口部111hと蓋部材113との間隙からレーザビームLBが本体部材111内に進入するのを防ぐことができる。
【0042】
しかも、短辺内側突出部111eは長辺内側突出部111dより本体部材111の深さ方向DDに高位に配置され、蓋部材113の蓋短辺部113bをそれぞれ支持するのに対し、長辺内側突出部111dは短辺内側突出部111eよりも本体部材111の深さ方向DDに低位とされ、蓋部材113の蓋長辺部113aと離間してなる。このため、本体部材111の開口部111hにおいて、短辺内側突出部111e及び長辺内側突出部111dのうち、短い長さの短辺内側突出部111eのみを本体部材111の深さ方向DDに精度良く形成することで足りるので、形成容易である。また、挿入支持工程では、蓋部材113として、例えば、長手方向DLの中央部が本体部材111の深さ方向DDに凸状となる形態に反った蓋部材を用いた場合でも、この蓋部材の蓋長辺部113aを長辺内側突出部111dに接触させることなく、蓋部材113を適切に配置することができる。
かくして、レーザビームLBの本体部材111内への進入を防ぎつつ、蓋部材113を開口部111hに適切に配置した電池100を製造できる。
また、レーザビームLBの本体部材111内への進入による不具合を防ぎ、しかも、蓋部材113を開口部111hに適切に配置した電池100とすることができる。
【0043】
また、短辺内側突出部111eが開口短辺部111b全体にわたり、深さ方向DDに直交する支持面111nを有する。このため、挿入支持工程において、蓋部材113に、例えば、長手方向DLに反っているために、長手方向DLの寸法が許容寸法範囲のうちでも短い形態の蓋部材を用いた場合にも、蓋部材113の蓋短辺部113bを本体部材111の底部111gから同じ高さに支持することができる。
その一方、長辺内側突出部111dが開口長辺部111a全体にわたり、本体部材111の内側DJほど深さ方向DDに低位となる傾斜面111mを有する。この傾斜面111mは、深さ方向DDに直交する短辺内側突出部111eの支持面111nよりも加工し易く、本体部材111に長辺内側突出部111dを容易に設けることができる。また、このように蓋部材113を支持した電池100となる。
【0044】
また、長辺内側突出部111dの突出寸法Tdが、短辺内側突出部111eの突出寸法Teよりも小さくされている。このため、開口部111hの長辺をなす開口長辺部111aに、長辺内側突出部111dを容易に形成することができる。
また、溶接工程では、本体部材111の外部から、一対の開口長辺部111a,111aを内側DJに向けて押圧し、一対の開口長辺部111a,111aと一対の蓋長辺部113a,113aとをそれぞれ当接させる。このため、開口長辺部111aと蓋長辺部113aとの間に間隙が生じたとしてもその大きさをごく小さくできるため、短辺内側突出部111eの突出寸法Teよりも小さな突出寸法Tdの長辺内側突出部111dでも、レーザビームLBの本体部材111内への進入を確実に防ぐことができる。
【0045】
また、開口長辺部111aに長辺外側突出部111xを有する本体部材111を用い、溶接工程において、一対の押圧部材200,200で、長辺外側突出部111xのうち、開口端面111sから深さ方向DDに離間した部位111xpを押圧する。このため、溶接の際、レーザビームLBの熱が押圧部材200に伝わり難い。従って、開口長辺部111aと蓋長辺部113aとを適切に溶接することができる。
しかも、長辺外側突出部111xは、開口長辺部111a全体にわたり、長辺内側突出部111dよりも低位の位置まで延びているので、この長辺外側突出部111xのうち開口端面111sから深さ方向DDに離間した部位111xpを押圧部材200で内側に向けて押圧しても、開口端面111s付近で開口長辺部111aと蓋長辺部113aとの間に隙間を生じることなく、開口長辺部111a全体にわたって、これと蓋長辺部113aとを確実に当接させて溶接を行うことができる。
【0046】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば、実施形態では、溶接に用いるエネルギビームとして、レーザビームLBを用いたが、このほかに、電子ビームを用いても良い。また、レーザビームLBとしてCWレーザを用いたが、YAGレーザなどのパルスレーザを用いても良い。
また、実施形態では、開口R部111cのR部内側突出部111fにおける上方面111pを、開口短辺部111bの短辺内側突出部111eにおける支持面111nと同一の平面をなし、傾斜面111mとは段差をなす形態とした。しかし、例えば、開口R部111cのR部内側突出部111fにおける上方面111pを、開口長辺部111aの長辺内側突出部111dにおける傾斜面111mをR部内側突出部111fに延長した形態としても良い。また、例えば、R部内側突出部111fの上方面111pを、短辺内側突出部111eの支持面111nと、長辺内側突出部111dの支持面mとを漸近的に繋ぐスロープ状の連結面としても良い。なお、この中でも、本実施形態に示すように、上方面111pを支持面111nと同一の平面として形成するのが好ましい。開口R部111cにおいてもエネルギビームの本体部材111内への進入を確実に防ぐことができるからである。