(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5937504
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】樹脂除去用溶剤組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 7/50 20060101AFI20160609BHJP
C11D 7/30 20060101ALI20160609BHJP
C11D 7/34 20060101ALI20160609BHJP
C11D 7/32 20060101ALI20160609BHJP
C11D 7/26 20060101ALI20160609BHJP
C11D 7/06 20060101ALI20160609BHJP
C11D 7/24 20060101ALI20160609BHJP
B08B 3/08 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
C11D7/50
C11D7/30
C11D7/34
C11D7/32
C11D7/26
C11D7/06
C11D7/24
B08B3/08 Z
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-282868(P2012-282868)
(22)【出願日】2012年12月26日
(65)【公開番号】特開2014-125531(P2014-125531A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年10月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】597115750
【氏名又は名称】株式会社カネコ化学
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(74)【代理人】
【識別番号】100078662
【弁理士】
【氏名又は名称】津国 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100135873
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 圭子
(74)【代理人】
【識別番号】100122747
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 洋子
(74)【代理人】
【識別番号】100149412
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 清
(72)【発明者】
【氏名】金子 旻又
【審査官】
古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−172290(JP,A)
【文献】
特開2012−046689(JP,A)
【文献】
特開2007−145944(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0300433(US,A1)
【文献】
特開2008−050404(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/060778(WO,A1)
【文献】
特開2000−129178(JP,A)
【文献】
特開平08−067643(JP,A)
【文献】
特開平05−278041(JP,A)
【文献】
特表2014−500161(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0310297(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 7/50
B08B 3/08
C11D 7/06
C11D 7/24
C11D 7/26
C11D 7/30
C11D 7/32
C11D 7/34
G03F 7/42
H01L 21/30
C23G 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1−ブロモプロパン100重量部、及び
(b)ジメチルスルホキシド20重量部〜300重量部
を含むことを特徴とする、硬化性樹脂、硬化性樹脂の硬化物又は硬化性樹脂の未硬化物が付着した固体基材から、硬化性樹脂、硬化性樹脂の硬化物又は硬化性樹脂の未硬化物を溶解除去又は剥離除去するための溶剤組成物。
【請求項2】
更に、ニトロアルカン、エポキシド、環状エーテル、防錆剤、モノテルペン、ベンジルアルコール、メトキシスルホン酸ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群より選択される1種以上の(c)添加剤を、溶剤組成物の全量に対して、0.1〜10重量%含む、請求項1記載の溶剤組成物。
【請求項3】
(c)添加剤が、(c1)、(c2)及び(c3):
(c1)ニトロアルカン;
(c2)エポキシド、環状エーテル、又はベンジルアルコール;
(c3)場合により、防錆剤、モノテルペン、メトキシスルホン酸ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群より選択される1種以上の成分;
の混合物であり、(a)成分、(c1)成分、(c2)成分及び(c3)成分の合計100重量%に対して、(a)成分が、95〜99重量%であり、(c1)成分が、0.5〜4.5重量%であり、(c2)成分が、0.5〜4.5重量%であり、そして(c3)成分が、0〜4重量%である、請求項2記載の溶剤組成物。
【請求項4】
(c)成分が、(c1’)、(c2’)及び(c3’):
(c1’)ニトロメタン又はニトロエタン、
(c2’)1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ジオキソラン、又はベンジルアルコール、並びに
(c3’)d−リモネン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミン、メトキシスルホン酸ナトリウム、及び水酸化カリウムからなる群より選択される1以上の成分
の混合物であり、
(a)成分、(c1’)成分、(c2’)成分及び(c3’)成分の合計100重量%に対して、(a)成分が95〜99重量%であり、(c1’)成分が0.5〜4.5重量%であり、(c2’)成分が0.5〜4.5重量%であり、(c3’)成分が0〜4重量%である、請求項2又は3記載の溶剤組成物。
【請求項5】
硬化性樹脂が、ウレタン樹脂である、請求項1〜4いずれか1項記載の溶剤組成物。
【請求項6】
硬化性樹脂、硬化性樹脂の硬化物又は硬化性樹脂の未硬化物が付着した固体基材から、硬化性樹脂、硬化性樹脂の硬化物又は硬化性樹脂の未硬化物を溶解除去又は剥離除去するための方法であって、請求項1〜5のいずれか1項記載の溶剤組成物を該固体基材と接触させる工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
注型機及び硬化性樹脂の吐出加工装置の内部に付着した、硬化性樹脂の未硬化物を溶解除去又は剥離除去するための方法であって、請求項1〜5のいずれか1項記載の溶剤組成物を注型機及び硬化性樹脂の吐出加工装置の内部に投入して、注型機及び硬化性樹脂の吐出加工装置の内部に付着した、硬化性樹脂の未硬化物と接触させる工程と、前記未硬化の硬化性樹脂及び溶剤組成物を排出する工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂、硬化性樹脂の硬化物、又は硬化性樹脂の未硬化物が付着した固体基材から、硬化性樹脂、硬化性樹脂の硬化物、又は硬化性樹脂の未硬化物を溶解除去又は剥離除去するための溶剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の工業製品は、硬化性樹脂と金属等を組み合わせた多種多様な工業製品が市場投入されている。その中で、ウレタン樹脂は塗料の他、電子部品の封止加工、自動車部品など広く産業分野で使用されている。加工の方法はさまざまだが、主剤と硬化剤を加工直前に金属製ノズルや管、容器、型などで混合して、加工する場合が多くあり、加工後、未硬化のウレタン樹脂、硬化後のウレタン樹脂がノズルや管、容器、型などに残る為、次の加工の為に従来は環境負荷の問題があるジクロロメタン(塩化メチレン)などの塩素系溶剤により除去されてきた。しかし近年、環境負荷や人体への影響から、これら塩素系溶剤から塩素を含まない溶剤の開発が望まれていた。
【0003】
DMSO(ジメチルスルホキシド)は、塩素を含まない溶剤であり、単体でも優れた樹脂溶解剤であるが、凝固点が18℃であるため、通常の冬の室温では凝固してしまい溶剤としては使いづらいという欠点があった。そこで、特許文献1には、DMSO及び環状モノケトン類(イソホロン、シクロペンタン、シクロヘキサン、N−メチルピロリドン(NMP))とを混合してなるペイントの剥離除去剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−239604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された環状モノケトン成分は、沸点が非常に高い成分(例えばイソホロンの沸点は215℃であり、NMPの沸点は204℃である)であるか、引火点が非常に低い成分(例えばシクロペンタンの引火点は−37℃であり、シクロヘキサンの引火点は−20℃である)である。また、そのため、ペイントの剥離除去剤の混合割合によっては、沸点が高くなることによって乾燥性が悪くなったり、引火性の危険性が非常に高くなったりする問題があった。そこで、冬の実用温度(5〜10℃)では凝固せず、溶解除去又は剥離除去が困難であるウレタン樹脂等の硬化性樹脂等が付着した固体基材から、硬化性樹脂等を効果的に溶解除去又は剥離除去するための、環状ケトン化合物を含まない新たなDMSOを含む溶剤組成物が望まれていた。
【0006】
よって、本発明は、塩素を含まず、実用温度では凝固せず、硬化性樹脂又はその硬化物若しくは未硬化物が付着した固体基材から、硬化性樹脂又はその硬化物若しくは未硬化物を効果的に除去するための溶剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ジメチルスルホキシド及び1−ブロモプロパンを含む溶剤組成物が、実用温度では凝固しない、硬化性樹脂又はその硬化物若しくは未硬化物が付着した固体基材から、硬化性樹脂又はその硬化物若しくは未硬化物を効果的に除去するための溶剤組成物であることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、(a)1−ブロモプロパン100重量部、及び(b)ジメチルスルホキシド20重量部〜300重量部を含むことを特徴とする、硬化性樹脂又はその硬化物が付着した固体基材から、硬化性樹脂又はその硬化物を溶解除去又は剥離除去するための溶剤組成物に関する。
本発明は、更に、ニトロアルカン、エポキシド、環状エーテル、防錆剤、モノテルペン、ベンジルアルコール、メトキシスルホン酸ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群より選択される1種以上の(c)添加剤を、溶剤組成物の全量に対して、0.1〜10重量%含む、前記に記載の溶剤組成物に関する。
本発明は、(c)添加剤が、(c1)、(c2)及び(c3):(c1)ニトロアルカン;(c2)エポキシド、環状エーテル、又はベンジルアルコール;(c3)場合により、防錆剤、モノテルペン、メトキシスルホン酸ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群より選択される1種以上の成分;の混合物であり、(a)成分、(c1)成分、(c2)成分及び(c3)成分の合計100重量%に対して、(a)成分が、95〜99重量%であり、(c1)成分が、0.5〜4.5重量%であり、(c2)成分が、0.5〜4.5重量%であり、そして(c3)成分が、0〜4重量%である、前記に記載の溶剤組成物に関する。
本発明は、(c)成分が、(c1’)、(c2’)及び(c3’):(c1’)ニトロメタン又はニトロエタン、(c2’)1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ジオキソラン、又はベンジルアルコール、並びに(c3’)d−リモネン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミン、メトキシスルホン酸ナトリウム、及び水酸化カリウムからなる群より選択される1以上の成分の混合物であり、(a)成分、(c1’)成分、(c2’)成分及び(c3’)成分の合計100重量%に対して、(a)成分が95〜99重量%であり、(c1’)成分が0.5〜4.5重量%であり、(c2’)成分が0.5〜4.5重量%であり、(c3’)成分が0〜4重量%である、前記に記載の溶剤組成物に関する。
本発明は、硬化性樹脂が、ウレタン樹脂である、前記に記載の溶剤組成物に関する。
本発明は、硬化性樹脂、硬化性樹脂の硬化物又は硬化性樹脂の未硬化物が付着した固体基材から、硬化性樹脂、硬化性樹脂の硬化物又は硬化性樹脂の未硬化物を溶解除去又は剥離除去するための方法であって、前記に記載の溶剤組成物を該固体基材と接触させる工程を含むことを特徴とする方法に関する。
本発明は、注型機及び硬化性樹脂の吐出加工装置の内部に付着した、硬化性樹脂の未硬化物を除去するための方法であって、前記に記載の溶剤組成物を注型機及び硬化性樹脂の吐出加工装置の内部に投入して、注型機及び硬化性樹脂の吐出加工装置の内部に付着した、硬化性樹脂の未硬化物と接触させる工程と、前記未硬化の硬化性樹脂及び溶剤組成物を排出する工程を含む、方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、本発明は、塩素を含まず、実用温度では凝固せず、硬化性樹脂又はその硬化物若しくは未硬化物が付着した固体基材から、硬化性樹脂又はその硬化物若しくは未硬化物を効果的に除去するための溶剤組成物が提供される。
【0010】
なお、本明細書において、「硬化性樹脂、硬化性樹脂の硬化物又は硬化性樹脂の未硬化物」を、「硬化性樹脂等」という場合がある。本明細書において、「剥離除去又は溶解除去」を、「除去」という場合がある。「実用温度」とは、5〜10℃の温度をいう。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、(a)1−ブロモプロパン(ノルマルプロピルブロマイド、NPBともいう)を100重量部、及び(b)ジメチルスルホキシド(DMSO)20重量部〜300重量部含む、硬化性樹脂等が付着した固体基材から、硬化性樹脂等を除去するための溶剤組成物である。
【0012】
本発明の溶剤組成物は、NPB及びDMSOを所定の割合で併用しているため、実用温度では凝固せず、DMSO単独と比べて乾燥性が良好である。なお、本発明の溶剤組成物は、1−ブロモプロパンの製造工程において生成する2−ブロモプロパンを不可避的な量で含み得る。
【0013】
DMSOの量が20重量部未満であると、硬化性樹脂等を固体基材から効率よく除去することが難しく、300重量部を超えると、実用温度において凝固してしまう。硬化性樹脂等の除去効果の向上及び実用温度での使い易さの点から、DMSOの含有量は、NPB100重量部に対して、好ましくは25重量部〜240重量部であり、さらに好ましくは100重量部〜150重量部である。
【0014】
本発明において、(a)成分及び(b)成分の合計量は、溶剤組成物全量に対して、好ましくは90重量%以上であり、より好ましくは95重量%以上であり、さらに好ましくは96重量%以上である。このような範囲であれば、硬化性樹脂等に対する除去力が高くなり、固体基材と溶剤組成物との接触時間が短くなる点で良好である。
【0015】
溶剤組成物は、更に、ニトロアルカン、エポキシド、環状エーテル、防錆剤、モノテルペン、ベンジルアルコール、メトキシスルホン酸ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群より選択される1種以上の(c)添加剤を含むことが好ましい。添加剤は、単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0016】
ニトロアルカンとしては、例えばニトロメタン、ニトロエタン、1−ニトロプロパン及び2−ニトロプロパンが挙げられ、ニトロメタン及びニトロエタンが好ましい。これらのニトロアルカンは、単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0017】
エポキシドとしては、例えばプロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、グリシジルメチルエーテル、グリシジルメタクレート、ペンテンオキサイド、シクロペンテンオキサイド及びシクロヘキセンオキサイドが挙げられ、1,2−ブチレンオキサイドが好ましい。これらのエポキシドは、単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0018】
環状エーテルとしては、例えば1,3−ジオキソラン及び1,4−ジオキサンが挙げられ、1,3−ジオキソランが好ましい。これらの環状エーテルは、単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0019】
防錆剤としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、アミノメチルプロパノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン及びN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミンが挙げられ、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミンが特に好ましい。これらの防錆剤は、単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0020】
モノテルペンとしては、メンタン、d−リモネン、l−リモネン、フェランドレン、テルピノレン、テルピネン、α−ピネン、β−ピネン、シメンが挙げられ、d−リモネンが特に好ましい。これらのモノテルペンは、単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0021】
本発明において、(c)添加剤が、(c1)、(c2)及び(c3):
(c1)ニトロアルカン、
(c2)エポキシド、環状エーテル、又はベンジルアルコール、及び
(c3)場合により、防錆剤、モノテルペン、メトキシスルホン酸ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群より選択される1種以上の成分
の混合物であるのが好ましい。
【0022】
本発明において、(c)添加剤が、(c1’)、(c2’)及び(c3’):
(c1’)ニトロメタン又はニトロエタン、
(c2’)1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ジオキソラン、又はベンジルアルコール、及び
(c3’)場合により、d−リモネン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミン、メトキシスルホン酸ナトリウム又は水酸化カリウム
の混合物であるのがより好ましい。
【0023】
(c)成分の量は、(a)成分及び(b)成分の合計100重量部に対して、好ましくは0.01〜11重量部であり、より好ましくは0.01〜5重量部である。また、(c)成分の量は、溶剤組成物の全量に対して、好ましくは0〜10重量%以下であり、より好ましくは0.1〜10重量%であり、さらに好ましくは0.25〜5重量%である。よって、(a)成分、(b)成分及び(c)成分からなる溶剤組成物であって、(a)成分、(b)成分及び(c)成分の合計100重量%に対して、(a)成分及び(b)成分の合計が90〜100重量%であり、(c)成分が0〜10重量%であるのが好ましく、(a)成分及び(b)成分の合計が90〜99.9重量%であり、(c)成分が0.1〜10重量%である溶剤組成物がより好ましい。
【0024】
(c)成分が、前記(c1)、(c2)及び(c3)の混合物である溶剤組成物は、(a)成分及び(c)成分の合計100重量%に対して、(a)成分が、95〜99重量%であり、(c1)が、0.5〜4.5重量%であり、(c2)が、0.5〜4.5重量%であり、そして(c3)が、0〜4重量%であるのが好ましい。また、(c)成分が、前記(c1’)、(c2’)及び(c3’)の混合物である溶剤組成物は、(a)成分及び(c)成分の合計100重量%に対して、(a)成分が95〜99重量%であり、(c1’)が0.5〜4.5重量%であり、(c2’)が0.5〜4.5重量%であり、及び(c3’)が0〜4重量%であるのが好ましい。
【0025】
本発明において、(a)成分、(b)成分及び(c)成分からなる溶剤組成物であって、(a)成分100重量部に対して、(b)成分が20重量部〜300重量部であり、(a)成分及び(c)成分の合計100重量%に対して、(c)成分が0〜5重量%であるのが好ましく、(c)成分が1〜5重量%であるのがより好ましい。ここで、(c)成分が(c1)〜(c3)又は(c1’)〜(c3’)である場合は、(c)成分として、前記の(c1)〜(c3)又は(c1’)〜(c3’)の含有量が適用されるのが好ましい。
【0026】
本発明の溶剤組成物は、原料成分である(a)1−ブロモプロパン及び(b)ジメチルスルホキシド、並びに場合により更に含まれる添加剤を混合することにより製造することができる。
【0027】
本発明の溶剤組成物は、固体基材に付着した硬化性樹脂等を除去するために用いられる。本発明において、固体基材に付着した硬化性樹脂には、硬化性樹脂のほかに、硬化性樹脂に配合される添加剤を含む硬化性樹脂が含まれる。
【0028】
本発明において、硬化性樹脂としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂及びエポキシ樹脂が挙げられる。
【0029】
また、硬化性樹脂に配合される添加剤としては、硬化性樹脂に通常用いられている添加剤であれば、特に限定されるものではなく、硬化剤、硬化促進剤、充填剤、乳化剤、発泡剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、着色剤、帯電性付与剤、褶動性改良剤、耐衝撃性改良剤、及び反応希釈剤が挙げられる。
【0030】
ウレタン樹脂としては、トリレンジイソシアナート(TDI)、及びジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)等のジイソシアナート、並びにポリプロピレングリコール等のポリオール類との反応生成物が挙げられる。ウレタン樹脂は、軟質フォーム、半硬質フォーム、硬質フォームのいずれであってもよい。本発明において、ウレタン樹脂に配合される添加剤としては、硬化剤、硬化促進剤、乳化剤、発泡剤、安定剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤、褶動性改良剤、及び耐衝撃性改良剤が挙げられる。
【0031】
アクリル樹脂としては、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を有する化合物が挙げられ、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、及び2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ここで、(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートをいう。アクリル樹脂に配合される添加剤としては、硬化剤、硬化促進剤、充填剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、着色剤、帯電性付与剤、褶動性改良剤、耐衝撃性改良剤、及び反応希釈剤等の添加剤が挙げられる。
【0032】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、多価アルコールのポリグリシジルエーテル、多塩基酸のポリグリシジルエステル、3,4−エポキシシクロヘキシル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、及びヒダントイン環を有するエポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂に配合される添加剤としては、硬化剤、硬化促進剤、充填剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、着色剤、帯電性付与剤、褶動性改良剤、耐衝撃性改良剤、及び反応希釈剤等の添加剤が挙げられる。
【0033】
エポキシ樹脂硬化剤としては、エポキシ樹脂の硬化剤として通常使用されているものであればいずれであってもよく、例えばフェノールノボラック、ビフェノール型ノボラック、及びビスフェノールA型ノボラック等のノボラック、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、及び無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸等の酸無水物、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、メタフェニレンジアミン、及びヘキサメチレンテトラミン等のアミン類、並びにポリアミドアミン等のアミド樹脂等が挙げられる。硬化促進剤としては、例えば第三級アミン類又は有機リン化合物が挙げられる。
【0034】
本発明において、固体基材に付着した硬化性樹脂の硬化物には、硬化性樹脂の硬化反応が促進することにより硬化する硬化物のほかに、反応希釈剤等の硬化性樹脂に配合された添加剤が揮発し、粘度が上昇するによって固化した固化物も含まれる。また、本発明において、硬化性樹脂の未硬化物は、硬化反応が進行している硬化物をその一部に含む組成物をいう。
【0035】
本発明の溶剤組成物を用いて処理される固体基材として、硬化性樹脂を取り扱うために用いられる装置、例えば、容器、混合機、成形機、貯蔵タンク、加工機、混合槽、注型機(例えば、2液混合型注型機(ディスペンサー)のミキサー部や先端部)、硬化性樹脂の吐出加工装置、注入機、硬化性樹脂の塗布装置及び封入機;並びに、硬化性樹脂の加工物、例えばウレタン樹脂の加工物(例えば自動車部品及び電子部品など)、アクリル樹脂の加工物(例えば電子部品、配管部品及び自動車部品、光学部品など)、及びエポキシ樹脂の加工物(例えば電子部品、配管部品及び自動車部品など)が挙げられる。
【0036】
硬化性樹脂を取り扱うために用いられる装置には、樹脂成分の充填及び混合、硬化成型などの樹脂の加工工程、及び装置の洗浄を繰り返して使用されるものが含まれる。また、成型器及び容器等は、一般に、原料成分の注入、硬化成型及び洗浄を繰り返して使用される。また、注型機及び硬化性樹脂の吐出加工装置は、いわゆる二液硬化型樹脂の原料成分を充填する容器及び原料成分を吐出するノズルを含み、ノズル穴から未硬化の硬化性樹脂を吐出させて、目的物の表面で硬化させる装置である。注型機及び硬化性樹脂の吐出加工装置は、一般に、原料成分の注入、吐出、及びノズル及び容器の洗浄を繰り返して使用される。硬化性樹脂の塗布装置は、硬化性樹脂を塗布するための配管を有する。硬化性樹脂の塗布装置は、一般に、硬化性樹脂の注入、塗布、及び配管の洗浄を繰り返して使用される。
【0037】
硬化性樹脂の加工物、例えばウレタン樹脂の加工物、アクリル樹脂の加工物及びエポキシ樹脂の加工物は、加工物の成型の際に用いられたウレタン樹脂、アクリル樹脂及びエポキシ樹脂以外の素材を再利用する目的で用いられる物が含まれる。具体的には、これらウレタン樹脂の加工物、アクリル樹脂の加工物及びエポキシ樹脂の加工物に不良が発生した場合、ウレタン樹脂、アクリル樹脂及びエポキシ樹脂以外の素材を、ウレタン樹脂の硬化物、アクリル樹脂の硬化物及びエポキシ樹脂の硬化物から分離して再利用する。
【0038】
このような素材として、例えば、ステンレス等の各種金属部品がある。すなわち、自動車用のシャフトやフレーム部品、外装部品等に用いられる金属製部品をはじめ、プリンタ等の電子機器に用いられるローラーシャフトやフレーム部品、さらにパイプ等の配管部品などがある。これらの金属製部品は、板状部材に限らず、断面円形状や矩形状のパイプ状部材や長尺部材であったり、その他、複雑な形状を有する部材であったりする。
【0039】
よって、本発明の溶剤組成物は、硬化性樹脂の溶解剤及び剥離剤として用いることができる。また、本発明の樹脂除去用溶剤組成物は、前記の固体基材の洗浄剤として用いることができる。好ましくは、本発明の溶解剤組成物は、硬化性樹脂を塗布する装置の塗布部分の配管に付着する未硬化の硬化性樹脂を除去するための、洗浄剤である。ここで、洗浄とは、被洗浄物である固体基材から硬化性樹脂等を除去することを意味する。
【0040】
本発明において、硬化性樹脂、硬化性樹脂の硬化物又は硬化性樹脂の未硬化物が付着した固体基材から、硬化性樹脂、硬化性樹脂の硬化物又は硬化性樹脂の未硬化物を除去する方法は、本発明の溶剤組成物を、前記固体基材と接触させる工程を含む。本発明において、本発明の溶剤組成物を固体基材に接触させる工程において、固体基材に付着した硬化性樹脂、硬化性樹脂の硬化物又は硬化性樹脂は、固体基材から溶解除去又は剥離除去される。
【0041】
本発明において、固体基材が、注型機及び硬化性樹脂の吐出加工装置である場合、硬化性樹脂を注型及び吐出後に、注型機及び硬化性樹脂の吐出加工装置の容器及びノズル内部には、硬化性樹脂の未硬化物が付着している。よって、本発明の方法は、注型機及び硬化性樹脂の吐出加工装置の内部に付着した、硬化性樹脂の未硬化物を除去するための方法であって、本発明の溶剤組成物を、注型機及び硬化性樹脂の吐出加工装置の内部に投入して、注型機及び硬化性樹脂の吐出加工装置の内部に付着した、硬化性樹脂の未硬化物と接触させる工程と、前記未硬化の硬化性樹脂及び溶剤組成物を排出する工程を含む、方法である。ここで、溶剤組成物と硬化性樹脂の未硬化物と接触させる工程によって、注型機及び硬化性樹脂の吐出加工装置の内部に付着した、硬化性樹脂の未硬化物は、注型機及び硬化性樹脂の吐出加工装置から、剥離除去又は溶解除去される。
【0042】
本発明の溶剤組成物と、硬化性樹脂等が付着した固体基材とを接触させるための方法としては、特に制限はなく、溶剤組成物への固体基材の浸漬、溶剤組成物を含浸したスポンジによる固体基材の拭き取り、及び固体基材に対する溶剤組成物のスプレー等が挙げられ、浸漬による方法が好ましい。また、浸漬による方法において、溶解及び剥離効果を高めるために、浸漬と同時に、攪拌、揺動、超音波振動、又はエアバブリング等による手段を組み合わせることが好ましく、超音波振動による手段を組み合わせることがより好ましい。
【0043】
本発明において、溶剤組成物及び固体基材の接触時間は、固体基材に付着した硬化性樹脂等を除去できる時間であれば特に制限されない。例えば、超音波振動を組み合わせた浸漬による方法における接触時間は、硬化前の硬化性樹脂が付着した固体基材から、硬化前の硬化性樹脂を除去するために、好ましくは5秒間〜2時間、特に好ましくは10秒間〜1時間であり、硬化性樹脂の硬化物が付着した固体基材から、硬化性樹脂の硬化物を除去するために、好ましくは10分間〜10時間、特に好ましくは30分間〜2時間である。上記時間未満である場合は、付着した硬化性樹脂等を固体基材から十分に除去できない場合があり、一方、上記接触時間を超えた場合は、除去効果が格別向上しない。
【0044】
本発明において、硬化性樹脂等が付着した固体基材と溶剤組成物とを接触させるときの溶剤組成物の温度は、好ましくは5〜120℃であり、より好ましくは20℃〜100℃である。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0046】
実施例1〜7及び比較例1〜6の溶剤組成物を、表1及び表2で示される組成で各成分を混合することにより調製した。ここで、1−ブロモプロパン組成物(NPB組成物)として、1−ブロモプロパン98.0質量%、ニトロエタン0.5質量%、1,2−ブチレンオキサイド0.5質量%、及びd−リモネン1.0質量%からなる組成物を用いた。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
(1)ウレタン樹脂の硬化物の除去試験
(1−1)ウレタン樹脂の硬化物が付着したステンレス板の作製
ウレタン樹脂として、一液性発泡硬質ウレタンフォーム((株)ジョイフル本田製)を用いた。このウレタン樹脂は、吐出後、室温において約900秒で表面の硬化が開始する。4cm×4cm、厚さ0.4cmのステンレス板に、前記ウレタン樹脂を厚さ40mmほど塗布し、1時間放置して、ウレタン樹脂の硬化物が付着したステンレス板を得た。
【0050】
(1−2)除去試験
200ミリリットルのビーカーに、各溶剤組成物150gを入れた。ウレタン樹脂の硬化物が付着したステンレス板を、浸漬させて、約1時間放置した。その後、ステンレス板を取り出してウレタン樹脂の硬化物が剥離除去又は溶解除去できているかどうかを目視により判定した。
【0051】
除去効果は目視にて確認した。ウレタン樹脂の硬化物がステンレス板から除去された場合、すなわち、ウレタン樹脂の硬化物がステンレス板から剥離した又はウレタン樹脂の硬化物が溶解した場合を○とし、ウレタン樹脂の硬化物が残存した場合を×とする。
【0052】
(2)凝固試験
実施例1〜7及び比較例1〜6の溶剤組成物150gを、5〜10℃の冷蔵庫内に5時間静置して、溶剤組成物の凝固を目視にて確認した。凝固した場合を×、凝固しない場合を○とした。
【0053】
除去試験及び凝固試験の結果を表3及び表4に示す。
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
本願発明の溶剤組成物である実施例1〜7の溶剤組成物を用いた場合は、優れたウレタン樹脂の除去力を示していた。さらに、5〜10℃の実用温度条件下であっても凝固しなかった。また、硬化後の樹脂は固体基材に対する付着力が高いことから、実施例1〜7及び比較例1〜4の溶剤組成物は、ウレタン樹脂及びウレタン樹脂の未硬化物の除去試験においても同じ結果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の溶剤組成物は、1−ブロモプロパンを含むため、実用温度では凝固せず、また広範囲な硬化性樹脂又はその硬化物が付着した固体基材に対して良好な溶解除去及び/又は剥離除去の効果を有し、特にウレタン樹脂又はその硬化物が付着した固体基材に対して良好な溶解除去及び/又は剥離除去の効果を有する。よって、本発明の溶剤組成物は、硬化性樹脂の溶解剤及び剥離剤として工業的に極めて有用である。