特許第5937537号(P5937537)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5937537
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】センサ温度制御装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/26 20060101AFI20160609BHJP
   G01N 27/41 20060101ALI20160609BHJP
   G01N 27/419 20060101ALI20160609BHJP
   G01N 27/409 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   G01N27/26 391Z
   G01N27/46 325Q
   G01N27/46 327Q
   G01N27/58 B
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-67190(P2013-67190)
(22)【出願日】2013年3月27日
(65)【公開番号】特開2014-190863(P2014-190863A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2015年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上村 朋典
【審査官】 黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000-121600(JP,A)
【文献】 特開2004-163273(JP,A)
【文献】 特開平11-6812(JP,A)
【文献】 実開昭62-153566(JP,U)
【文献】 特開2001-108645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26
G01N 27/409
G01N 27/41
G01N 27/419
F02D 41/14
F02D 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ素子部及び上記センサ素子部を加熱するヒータ部を有するセンサにおける上記ヒータ部へのパルス通電を制御して、上記センサ素子部の温度を制御するセンサ温度制御装置であって、
上記ヒータ部への通電をオンオフするスイッチング素子と、
上記センサ素子部が目標温度となるように、上記スイッチング素子に入力する通電制御パルス信号のデューティ比をフィードバック制御する通電制御手段と、
上記スイッチング素子を流れる電流がすべて上記ヒータ部に流れ、かつ、上記センサ素子部が上記目標温度となっている非短絡定温状態における上記デューティ比である第1デューティ比を予め記憶した記憶手段と、
上記センサ素子部が上記目標温度を含む第1温度範囲内の温度になっているか否かを判断する素子温度判断手段と、
上記センサ素子部が上記第1温度範囲内の温度になっている状態で、現在の上記デューティ比である現在デューティ比を、予め記憶した上記第1デューティ比と比較することにより、上記スイッチング素子を流れる電流のうち一部のみが上記ヒータ部に流れ、かつ、上記センサ素子部が上記第1温度範囲内の温度である略短絡第1温度範囲状態が生じているか否かを検知する略短絡検知手段と、を備える
センサ温度制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサ温度制御装置であって、
前記スイッチング素子は、電源電位と前記ヒータ部との間に介在するハイサイド型のスイッチング素子であり、
前記略短絡検知手段は、
前記現在デューティ比を前記第1デューティ比と比較して、上記スイッチング素子と上記ヒータ部の電源側端子とを接続する第1接続路が、抵抗を生じた抵抗接続路を介して接地電位に導通し、前記略短絡第1温度範囲状態となっているか否かを判断する第1判断手段を含む
センサ温度制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載のセンサ温度制御装置であって、
前記スイッチング素子は、前記ヒータ部と接地電位との間に介在するローサイド型のスイッチング素子であり、
前記略短絡検知手段は、
前記現在デューティ比を前記第1デューティ比と比較して、上記ヒータ部の接地側端子と上記スイッチング素子とを接続する第2接続路が、抵抗を生じた抵抗接続路を介して電源電位に導通し、前記略短絡第1温度範囲状態となっているか否かを判断する第2判断手段を備える
センサ温度制御装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のセンサ温度制御装置であって、
前記センサ素子部は、その温度によって、自身の素子抵抗が変化する特性を有し、
前記通電制御手段は、
上記センサ素子部の上記素子抵抗を検知する素子抵抗検知手段と、
検知した上記素子抵抗が目標抵抗値となるように、前記デューティ比をフィードバック制御する素子抵抗制御手段と、を含み、
前記素子温度判断手段は、
上記素子抵抗が上記目標抵抗値を含む第1抵抗範囲内の抵抗値になっているか否かを判断する素子抵抗判断手段であり、
前記略短絡検知手段は、
上記素子抵抗が上記第1抵抗範囲内の抵抗値になっている状態で、前記現在デューティ比を前記第1デューティ比と比較して、前記略短絡第1温度範囲状態が生じているか否かを検知する手段である
センサ温度制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ素子部及びヒータ部を有するセンサにおけるヒータ部へのパルス通電を制御して、センサ素子部の温度を制御するセンサ温度制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
センサ素子部及びヒータ部を有するセンサとして、例えば、排気ガス中の特定ガスのガス濃度を検出する酸素センサや窒素酸化物(NOx)センサなどのガスセンサが知られている。これらのガスセンサでは、ジルコニアを主体とした固体電解質体からなるセンサ素子部、及びこのセンサ素子部を活性化状態に加熱するヒータ部を有しており、センサ素子部を活性化状態にすべく、センサ温度制御装置により、ヒータ部へのパルス通電を制御して、センサ素子部の温度を制御する。
センサ温度制御装置は、ヒータ部への通電をオンオフするスイッチング素子を備えており、センサ素子部が目標温度となるように、スイッチング素子に入力する通電制御パルスのデューティ比をフィードバック制御する。
なお、センサ温度制御装置のスイッチング素子には、電源(電源電位)とヒータ部との間に介在するハイサイド型と、ヒータ部と接地電位との間に介在するローサイド型があり、例えば、特許文献1には、ガス濃度センサを用いるガス濃度検出装置として、このようなハイサイド型(図10)及びローサイド型(図11)のスイッチング素子(スイッチ)を備えたヒータ制御回路が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−292411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなセンサ温度制御装置において、ヒータ部とスイッチング素子とを接続する接続路が、接地電位または電源電位へ接触し導通することにより、いわゆる短絡状態になる場合がある。例えば、ハイサイド型のスイッチング素子を用いたセンサ温度制御装置において、ヒータ部とスイッチング素子とを結ぶケーブルが接地電位の部材に接触し導通する場合や、ローサイド型のスイッチング素子を用いたセンサ温度制御装置において、ヒータ部とスイッチング素子とを結ぶケーブルが電源電位を持つ部材に接触し導通する場合が挙げられる。このような短絡状態が生じたまま、ヒータ部への通電を続けると、エネルギーのロスである上、スイッチング素子の故障にも繋がるため、センサ温度制御装置には、このような短絡状態の発生を適切に検知できることが求められている。
【0005】
しかしながら、このような短絡状態が発生した場合に、ヒータ部とスイッチング素子とを接続する接続路と、接地電位または電源電位との間の短絡した接続経路の抵抗値は、必ずしも低い値であるとは限らず、接触抵抗や配線抵抗などの存在によって、ある程度の大きさの抵抗を有する接続経路を介して接地電位または電源電位へ導通した状態になる場合がある。この状態では、スイッチング素子をオンすると、スイッチング素子を流れる電流のうち一部のみがヒータ部に流れ、残りが抵抗を有する接続経路に流れる。そして、これらヒータ部及び抵抗を有する接続経路に流れる電流が、スイッチング素子に流し得る上限に達していると、スイッチング素子を流れる電流が制限され、スイッチング素子に損失電圧が生じて、ヒータ部に掛かる電圧が低下する。
【0006】
すると、センサ温度制御装置は、フィードバック制御により、スイッチング素子に入力する通電制御パルスのデューティ比を大きくする。このため、ヒータ部に掛かる電圧低下の程度によっては、上述の抵抗を有する接続経路が生じたまま、ヒータ部に与えられる電力が維持されて、センサ素子部の温度を所定の目標温度付近の温度に維持できる場合がある。つまり、この場合には、抵抗を有する接続経路が生じていながらも、センサ素子部の温度からは、これを異常として検知することができない。従って、この抵抗を有する接続経路が生じたまま、センサの温度制御が継続されることがあった。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、スイッチング素子を流れる電流のうち一部のみがヒータ部に流れながらも、センサ素子部の温度が目標温度付近の温度である状態を適切に検知できるセンサ温度制御装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
その一態様は、センサ素子部及び上記センサ素子部を加熱するヒータ部を有するセンサにおける上記ヒータ部へのパルス通電を制御して、上記センサ素子部の温度を制御するセンサ温度制御装置であって、上記ヒータ部への通電をオンオフするスイッチング素子と、上記センサ素子部が目標温度となるように、上記スイッチング素子に入力する通電制御パルス信号のデューティ比をフィードバック制御する通電制御手段と、上記スイッチング素子を流れる電流がすべて上記ヒータ部に流れ、かつ、上記センサ素子部が上記目標温度となっている非短絡定温状態における上記デューティ比である第1デューティ比を予め記憶した記憶手段と、上記センサ素子部が上記目標温度を含む第1温度範囲内の温度になっているか否かを判断する素子温度判断手段と、上記センサ素子部が上記第1温度範囲内の温度になっている状態で、現在の上記デューティ比である現在デューティ比を、予め記憶した上記第1デューティ比と比較することにより、上記スイッチング素子を流れる電流のうち一部のみが上記ヒータ部に流れ、かつ、上記センサ素子部が上記第1温度範囲内の温度である略短絡第1温度範囲状態が生じているか否かを検知する略短絡検知手段と、を備えるセンサ温度制御装置である。
【0009】
前述したように、ヒータ部とスイッチング素子とを接続する接続路に、接地電位または電源電位に抵抗を有しつつ接続する接続経路が生じた状態となって、ヒータ部に掛かる電圧が低下すると、フィードバック制御により、スイッチング素子に入力される通電制御パルスのデューティ比が大きくなる。このため、抵抗を有する接続経路が生じたために、スイッチング素子を流れる電流のうち一部のみがヒータ部に流れる状態(以下、略短絡状態という)でありながらも、センサ素子部が目標温度を含む第1温度範囲内の温度である略短絡第1温度範囲状態では、スイッチング素子を流れる電流がすべてヒータ部に流れ、かつ、センサ素子部が目標温度となっている非短絡定温状態に比べて、通電制御パルスのデューティ比が大きくなっている。
【0010】
これに対し、このセンサ温度制御装置では、非短絡定温状態におけるデューティ比である第1デューティ比を記憶手段で予め記憶している。
そして、センサ素子部が第1温度範囲内の温度になっている状態で、現在デューティ比を第1デューティ比と比較することにより、略短絡第1温度範囲状態が生じているか否かを検知する。
これにより、抵抗を有する接続経路を生じ、スイッチング素子を流れる電流のうち一部のみがヒータ部に流れながらも、センサ素子部の温度が目標温度付近の温度になっている状態を適切に検知することができる。
【0011】
なお、スイッチング素子としては、パワートランジスタやパワーMOSFET、IGBTなどのディスクリートのスイッチング素子のほか、過電流や過電圧の保護回路等をスイッチング素子と共に集積したデバイスであるIPD(Intelligent Power Device)などが挙げられる。また、これらのスイッチング素子には、電源電位とヒータ部との間に介在するハイサイド型のものと、ヒータ部と接地電位との間に介在するローサイド型のものとがあり、それぞれの接続経路の生じ方が異なる。
【0012】
また、通電制御手段で、センサ素子部が目標温度となるように、ヒータ部への通電をフィードバック制御する方法としては、例えば、センサ素子部の温度に応じて、センサ素子部の素子抵抗が変化する特性を有するセンサについて、センサ素子部の素子抵抗を検知して、検知した素子抵抗が目標温度に対応する目標抵抗値となるようにフィードバック制御する方法が挙げられる。
また、センサ素子部の素子温度を温度センサで検知して、この検知した素子温度が所定の温度となるようにフィードバック制御する方法も挙げられる。
【0013】
また、記憶手段に記憶する第1デューティ比としては、固定のデューティ比を第1デューティ比として予め記憶しておき、これを継続的に用いても良く、また、前回の運転時に得た非短絡定温状態におけるデューティ比を第1デューティ比として記憶しておき、これを次回の運転時に用いても良い。前回の運転時のデューティ比を用いることにより、劣化等による素子抵抗の変化に応じて、第1デューティ比を適切に変化させることが可能である。
【0014】
また、略短絡検知手段で、現在デューティ比と第1デューティ比とを比較し、略短絡第1温度範囲状態が生じているか否かを検知するための具体的な判定手法としては、例えば、現在デューティ比から第1デューティ比を差し引いた値を算出し、この値が予め定めた閾値よりも大きいか否かを判定する手法が挙げられる。また、第1デューティ比に対する現在デューティ比の比を算出し、この値が予め定めた閾値よりも大きいか否かを判定する手法なども挙げられる。
【0015】
さらに、上述のセンサ温度制御装置であって、前記スイッチング素子は、電源電位と前記ヒータ部との間に介在するハイサイド型のスイッチング素子であり、前記略短絡検知手段は、前記現在デューティ比を前記第1デューティ比と比較して、上記スイッチング素子と上記ヒータ部の電源側端子とを接続する第1接続路が、抵抗を生じた抵抗接続路を介して接地電位に導通し、前記略短絡第1温度範囲状態となっているか否かを判断する第1判断手段を含むセンサ温度制御装置とすると良い。
【0016】
このセンサ温度制御装置では、スイッチング素子は、ハイサイド型のスイッチング素子である。そして、略短絡検知手段は、第1判断手段を備え、現在デューティ比を第1デューティ比と比較して、センサ、センサ温度制御装置及び抵抗接続路が略短絡第1温度範囲状態となっているか否かを判断する。これにより、ハイサイド型のスイッチング素子を用いたセンサ温度制御装置において、略短絡第1温度範囲状態の発生を適切に判断することができる。
【0017】
また、前述のセンサ温度制御装置であって、前記スイッチング素子は、前記ヒータ部と接地電位との間に介在するローサイド型のスイッチング素子であり、前記略短絡検知手段は、前記現在デューティ比を前記第1デューティ比と比較して、上記ヒータ部の接地側端子と上記スイッチング素子とを接続する第2接続路が、抵抗を生じた抵抗接続路を介して電源電位に導通し、前記略短絡第1温度範囲状態となっているか否かを判断する第2判断手段を備えるセンサ温度制御装置とすると良い。
【0018】
このセンサ温度制御装置では、スイッチング素子は、ローサイド型のスイッチング素子である。そして、略短絡検知手段は、第2判断手段を備え、現在デューティ比を第1デューティ比と比較して、センサ、センサ温度制御装置及び抵抗接続路が略短絡第1温度状態となっているか否かを判断する。これにより、ローサイド型のスイッチング素子を用いたセンサ温度制御装置において、略短絡第1温度範囲状態の発生を適切に判断することができる。
【0019】
さらに、上述のいずれかのセンサ温度制御装置であって、前記センサ素子部は、その温度によって、自身の素子抵抗が変化する特性を有し、前記通電制御手段は、上記センサ素子部の上記素子抵抗を検知する素子抵抗検知手段と、検知した上記素子抵抗が目標抵抗値となるように、前記デューティ比をフィードバック制御する素子抵抗制御手段と、を含み、前記素子温度判断手段は、上記素子抵抗が上記目標抵抗値を含む第1抵抗範囲内の抵抗値になっているか否かを判断する素子抵抗判断手段であり、前記略短絡検知手段は、上記素子抵抗が上記第1抵抗範囲内の抵抗値になっている状態で、前記現在デューティ比を前記第1デューティ比と比較して、前記略短絡第1温度範囲状態が生じているか否かを検知する手段であるセンサ温度制御装置とすると良い。
【0020】
このセンサ温度制御装置では、通電制御手段は、素子抵抗検知手段と素子抵抗制御手段とを含み、略短絡検知手段は、素子抵抗が第1抵抗範囲内の抵抗値になっている状態で、略短絡第1温度範囲状態が生じているか否かを検知している。
これにより、素子抵抗を用いて、適切に略短絡第1温度範囲状態を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態1に係るガスセンサ制御装置の概略構成を示す説明図である。
図2】実施形態1に係るガスセンサ制御装置におけるパルス駆動信号、ヒータドライバの出力端電圧及びセンサ素子部の素子抵抗の関係を示すタイミングチャートである。
図3】実施形態1,2に係るガスセンサ制御装置のうち、マイクロプロセッサのヒータ制御及び略短絡第1温度範囲状態の検知処理を示すフローチャートである。
図4】実施形態2に係るガスセンサ制御装置の概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(実施形態1)
以下、本発明の第1の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態1に係るセンサ温度制御装置であるガスセンサ制御装置1の概略構成を示す図である。ガスセンサ制御装置1は、マイクロプロセッサ70、センサ素子部制御回路40及びヒータ部制御回路50を備え、ガスセンサ2に接続して、これを制御する。
なお、ガスセンサ2は、図示しない車両の内燃機関の排気管に装着され、排気ガス中の酸素濃度(空燃比)を検出して、内燃機関における空燃比フィードバック制御に用いる空燃比センサ(全領域酸素センサ)である。このガスセンサ2は、酸素濃度を検知するセンサ素子部3、及びセンサ素子部3を加熱するヒータ部4を有する。
【0023】
ガスセンサ2のセンサ素子部3は、ポンプセル14と起電力セル24とを、排気ガスを導入可能な中空の測定室(図示しない)を構成するスペーサを介して積層した構成を有し、起電力セル24のうち測定室に面する側とは逆側に位置する電極を遮蔽層(図示しない)により閉塞した公知の構成を有するものである。ポンプセル14及び起電力セル24は、それぞれ、板状でジルコニアを主体とした酸素イオン伝導性を有する固体電解質体を基体とし、その両面には多孔質の白金により一対の電極12,16及び一対の電極22,28が、それぞれ形成されている。ポンプセル14の一方の電極16と、起電力セル24の一方の電極22とは、互いに導通すると共に、センサ素子部3の端子COMに接続している。また、ポンプセル14の他方の電極12は、センサ素子部3の端子Ip+に接続し、起電力セル24の他方の電極28は、センサ素子部3の端子Vs+に接続している。
【0024】
また、センサ素子部3は、端子Vs+,Ip+,COMにそれぞれ接続された3本のリード線41,42,43を介して、ガスセンサ制御装置1のセンサ素子部制御回路40に接続されている。センサ素子部制御回路40は、ASICを中心に構成され、センサ素子部3の起電力セル24に微小電流Icpを流しつつ、起電力セル24の両端に発生する起電力セル電圧Vsが450mVになるように、ポンプセル14に流すポンプセル電流Ipを制御して、測定室に導入された排気ガス中の酸素の汲み入れ汲み出しを行う。なお、ポンプセル14に流れるポンプセル電流Ipの電流値及び電流の方向は、排気ガス中の酸素濃度(空燃比)に応じて変化することから、このポンプセル電流Ipに基づいて排気ガス中の酸素濃度を算出することが可能である。
【0025】
このセンサ素子部制御回路40では、ポンプセル電流Ipの大きさは、アナログの電圧信号に変換されたガス検出信号Vipとして検出され、出力端子44から出力される。また、センサ素子部制御回路40は、ガス検出信号Vipの検出の他に、センサ素子部3の起電力セル24の素子抵抗Rpvsに応じて変化する電圧変化量ΔVsを検出する機能を有する。マイクロプロセッサ70のシリアル送信ポート73は、センサ素子部制御回路40のコマンド受信ポート46と接続されており、センサ素子部制御回路40は、マイクロプロセッサ70からの指示により、起電力セル24に一時的に定電流を流して、電圧変化量ΔVsを検出し、出力端子45から出力する。そして、マイクロプロセッサ70は、ガス検出信号Vip及び電圧変化量ΔVsを、A/D入力ポート71,72を通じて入力可能とされている。
【0026】
マイクロプロセッサ70は、電圧変化量ΔVsから、起電力セル24の素子抵抗Rpvsを算出すると共に、この算出した素子抵抗Rpvsが目標抵抗値RT(例えばRT=75Ω)となるように、次述するヒータ部制御回路50により、ヒータ部4への通電をフィードバック制御する。なお、ガス検出信号Vip及び電圧変化量ΔVsを検出するためのセンサ素子部制御回路40の回路構成やその動作については、例えば、特開2008−203190に開示されており、公知のものであるため、詳細については説明を省略する。
【0027】
次いで、ヒータ部制御回路50について説明する。
図1に示すように、ヒータ部制御回路50は、パワーMOS−FETを内蔵するヒータドライバ51を備えており、このヒータドライバ51のドレイン51Dは、リード線52を介して、ガスセンサ2のヒータ部4の電源側端子4Pに接続されている。また、ヒータドライバ51のソース51Sは、電源電位VBを出力する電源BTの+端子に接続されている。なお、電源BTは12V仕様のバッテリである。
一方、ヒータ部4の接地側端子4Nは、リード線53を介してヒータ部制御回路50に接続され、このヒータ部制御回路50内で接地電位GNDに接続されている。すなわち、ヒータドライバ51は、電源BT(電源電位VB)とヒータ部4との間に介在するハイサイド型のスイッチング素子である。
また、ヒータドライバ51のゲート51Gは、マイクロプロセッサ70のPWM出力ポート74に接続されており、このPWM出力ポート74から出力されるパルス駆動信号PSに従って、ヒータドライバ51がオンオフされて、ヒータ部4への通電が制御される。なお、ヒータドライバ51は、図示しないが、パワーMOS−FETのゲートドライブ回路を内蔵しており、パルス駆動信号PSがHレベルのときに、ヒータドライバ51がオンし、パルス駆動信号PSがLレベルのときに、ヒータドライバ51がオフする。
また、ヒータ部4は、ガスセンサ2のセンサ素子部3に一体化されており、ヒータ部4による加熱で、センサ素子部3のポンプセル14及び起電力セル24を活性化させることで、酸素濃度の検出が可能となる。
【0028】
なお、ヒータ部4への通電を行っているときに、ヒータドライバ51のドレイン51Dとヒータ部4の電源側端子4Pとを接続するリード線52が、図1に破線で示すように、ある程度の大きさの抵抗を生じた抵抗接続路RRGを介して接地電位GNDに導通し、ヒータドライバ51を流れる電流のうち一部のみがヒータ部4に流れ、残りは抵抗接続路RRGに流れる状態(以下、略短絡状態ともいう)が発生することがある。
以下、図2のタイミングチャートを参照しつつ、素子抵抗Rpvsが目標抵抗値RT(RT=75Ω)となるように、ヒータ部4の通電制御が行われている状態で、リード線52が接地電位GNDに対して、略短絡状態になった場合を考える。なお、図2のタイミングチャートは、内燃機関の運転状態が安定した状況下において、リード線52が接地電位GNDに対して、略短絡状態になった場合を表したものである。
図2において、(a)は、マイクロプロセッサ70のPWM出力ポート74から出力されるパルス駆動信号PS〔HまたはL〕を表し、また、(b)は、ヒータドライバ51のドレイン51Dの電圧レベルである出力端電圧VO〔V〕を、(c)は、センサ素子部3(起電力セル24)の素子抵抗Rpvs〔Ω〕をそれぞれ表す。また、(a)〜(c)の横軸は、いずれも時間(時刻)t〔sec〕を表す。
【0029】
この図2中、Aの期間は、抵抗接続路RRGが存在しておらず、ヒータドライバ51を流れる電流がすべてヒータ部4に流れる状態(以下、非短絡状態ともいう)である。そして、素子抵抗Rpvsが目標抵抗値RT(RT=75Ω)となるように、正常にヒータ部4の通電制御が行われて、センサ素子部3が目標抵抗値RTが対応する目標温度(具体的には、この目標温度を含む後述する第1温度範囲内の温度)に維持されている。すなわち、Aの期間は、ヒータドライバ51を流れる電流がすべてヒータ部4に流れる状態(非短絡状態)で、かつ、センサ素子部3が目標温度となっている状態(非短絡定温状態)である。このとき、この非短絡定温状態におけるパルス駆動信号PSのデューティ比DT(パルス駆動信号PSの周期Tに対するオン期間d1の比)を、第1デューティ比DT1とする(DT=DT1(=d1/T))。また、この非短絡定温状態において、出力端電圧VOのうち、ヒータドライバ51がオンしている期間のパルス電圧の高さはV1となっており、これは電源電位VBにほぼ等しい(V1≒VB)。
【0030】
次いで、図2の時刻t=Sにおいて、リード線52が、図1に破線で示すように、抵抗を生じた抵抗接続路RRGを介して接地電位GNDに導通し、略短絡状態になったとする。この略短絡状態では、前述したように、ヒータドライバ51を流れる電流のうち一部のみがヒータ部4に流れ、残りは抵抗接続路RRGに流れる。このため、ヒータドライバ51がオンしたときに、このヒータドライバ51を通じてヒータ部4及び抵抗接続路RRGに流れる電流が、ヒータドライバ51が流し得る上限に達していると、ヒータドライバ51に流れる電流が制限され、出力端電圧VOのパルス電圧の高さがV1からV2に低下する。
【0031】
すると、図2のBの期間では、出力端電圧VOが下がったことにより、ヒータ部4に供給される電力が低下し、これと共にセンサ素子部3の温度が低下して、素子抵抗Rpvsが上昇する。しかし、素子抵抗Rpvsが目標抵抗値RT(RT=75Ω)となるようにフィードバック制御されているので、Bの期間の後半に示すように、パルス駆動信号PSのデューティ比DTが大きくされ、再びセンサ素子部3の温度が上昇して素子抵抗Rpvsが下がる。そして、Cの期間に示すように、略短絡状態でありながら、素子抵抗Rpvsが目標抵抗値RT(具体的には、この目標抵抗値RTを含む第1温度範囲に対応する第1抵抗範囲RR1(目標抵抗値RT±α)内の抵抗値)となり、センサ素子部3が目標温度(具体的には、この目標温度を含む第1温度範囲内の温度)を維持している状態(略短絡第1温度範囲状態)で再び安定する。なお、この略短絡第1温度範囲状態となったCの期間でのパルス駆動信号PSのデューティ比DT(周期Tに対するオン期間d2の比)を、現在デューティ比DT2とすると(DT=DT2(=d2/T))、この現在デューティ比DT2は、非短絡定温状態の第1デューティ比DT1に比べて大きな値となっている。
【0032】
なお、ヒータドライバ51を流れる電流のうち一部のみがヒータ部4に流れる略短絡状態のうちでも、図2のCの期間のようにはならず、出力端電圧VOが大きく低下し、センサ素子部3の温度が低下して、たとえ、デューティ比DTを上限(100%近く)まで上昇させても、目標温度を含む第1温度範囲内の温度(素子抵抗Rpvs=目標抵抗値RT±α)を維持出来ない場合がある。この場合には、この第1温度範囲内の温度を維持出来ないことをもって、何らかの異常が発生したことが検知できる。しかし、図2のCの期間のように、略短絡状態でありながら、素子抵抗Rpvsが第1抵抗範囲RR1内の抵抗値(目標抵抗値RT±α)となり、センサ素子部3が目標温度を含む第1温度範囲内の温度を維持している略短絡第1温度範囲状態では、異常の発生を検知できないまま、ヒータ部4への通電制御が継続されてしまう。しかるに、このような略短絡第1温度範囲状態のまま通電を続けると、ヒータドライバ51には、流し得る上限の電流が流れ続けた状態となり、エネルギーのロスである上、ヒータドライバ51の故障にも繋がる。
【0033】
そこで、本実施形態1のガスセンサ制御装置1では、ヒータドライバ51を流れる電流がすべてヒータ部4に流れ、かつ、素子抵抗Rpvs=目標抵抗値RTとなり、センサ素子部3が目標温度となっている非短絡定温状態におけるデューティ比DTである第1デューティ比DT1(固定値)を不揮発性メモリ75に予め記憶している。そして、素子抵抗Rpvsが、素子抵抗Rpvs=目標抵抗値RT±α(例えば、α=25Ω)となる第1抵抗範囲RR1内の抵抗値(50〜100Ω)となり、センサ素子部3が目標温度を含む第1温度範囲内の温度を維持している状態で、マイクロプロセッサ70のPWM出力ポート74から出力されているパルス駆動信号PSの現在のデューティ比DTである現在デューティ比DT2を、記憶した第1デューティ比DT1と比較する。そして、現在デューティ比DT2が第1デューティ比DT1よりも十分に大きい場合、具体的には、現在デューティ比DT2から第1デューティ比DT1を差し引いた値が所定の閾値よりも大きい場合には、リード線52が、抵抗を生じた抵抗接続路RRGを介して接地電位GNDに導通し、略短絡第1温度範囲状態となっていると判断する。
これにより、センサ素子部3が目標温度を含む第1温度範囲内の温度に維持された状態で、ガスセンサ2、ガスセンサ制御装置1及び抵抗接続路RRGが略短絡第1温度範囲状態となっているか否かを適切に検知することができる。
【0034】
次いで、本実施形態1に係るガスセンサ制御装置1のうち、マイクロプロセッサ70による略短絡第1温度範囲状態の検知処理を、図3のフローチャートを参照して説明する。
本実施形態1では、図3に示すように、ヒータ部を通電制御するヒータ制御ルーチンの中で、略短絡第1温度範囲状態の検知を行う。
まず、ステップS1では、センサ素子部制御回路40の出力端子45から出力され、A/D入力ポート72を通じてマイクロプロセッサ70に入力される電圧変化量ΔVsから、素子抵抗Rpvsを検知(算出)する。続くステップS2では、検知した素子抵抗Rpvsが目標抵抗値RT(=75Ω)となるように、ヒータ部制御回路50により、ヒータ部4への通電をフィードバック制御する。
【0035】
次いで、ステップS3では、検知した素子抵抗Rpvsが目標抵抗値RT(=75Ω)を含む第1抵抗範囲RR1内の抵抗値(素子抵抗Rpvs=目標抵抗値RT±α)となっているか否かを判断する(例えば、α=25Ω)。
素子抵抗Rpvsが第1抵抗範囲RR1内の抵抗値(50〜100Ω)になっていない場合(No)には、略短絡第1温度範囲状態の検知を飛ばして、ステップS7に進む。一方、素子抵抗Rpvsが第1抵抗範囲RR1内の抵抗値(50〜100Ω)になっている場合(Yes)には、ステップS4に進み、略短絡第1温度範囲状態の検知を行う。
【0036】
ステップS4では、マイクロプロセッサ70のPWM出力ポート74から出力されているパルス駆動信号PSの現在デューティ比DT2を取得する。
次いで、ステップS5では、ステップS4で取得した現在デューティ比DT2と不揮発性メモリ75に記憶した第1デューティ比DT1とを比較する。具体的には、現在デューティ比DT2から第1デューティ比DT1を差し引いた値(DT2−DT1)を算出し、この値が予め定めた閾値よりも大きいか否かを判定する。そして、(DT2−DT1)が閾値よりも大きい場合には、Yesとなって、ステップS6に進む。
ステップS6では、リード線52が、抵抗を生じた抵抗接続路RRGを介して接地電位GNDに導通し、略短絡第1温度範囲状態となっていると判断できるので、この略短絡第1温度範囲状態の発生を外部(ECU)に通知する。
そして、続くステップS7では、外部(ECU)からのヒータ制御終了の指示を確認し、終了指示がなければ(No)、ステップS1に戻ってヒータ部の通電制御を継続する。一方、ヒータ制御終了の指示があれば(Yes)、本ヒータ制御ルーチンを終了する。
【0037】
本実施形態1において、ヒータドライバ51がスイッチング素子に相当する。また、このヒータドライバ51を含むヒータ部制御回路50のほか、PWM出力ポート74、センサ素子部制御回路40、A/D入力ポート72、及びステップS1〜S2を実行しているマイクロプロセッサ70が通電制御手段に相当する。さらに、この通電制御手段のうち、センサ素子部制御回路40、A/D入力ポート72、及びステップS1を実行しているマイクロプロセッサ70が素子抵抗検知手段に相当し、ステップS2を実行しているマイクロプロセッサ70が素子抵抗制御手段に相当する。
また、不揮発性メモリ75が記憶手段に相当し、ステップS3を実行しているマイクロプロセッサ70が素子抵抗判断手段(素子温度判断手段)に相当する。また、ステップS4〜S6を実行しているマイクロプロセッサ70が略短絡検知手段に相当し、このうち、ステップS6を実行しているマイクロプロセッサ70が第1判断手段に相当する。
また、ヒータドライバ51のドレイン51Dとヒータ部4の電源側端子4Pとを接続するリード線52が第1接続路に相当する。
【0038】
以上で説明したように、本実施形態1のセンサ温度制御装置であるガスセンサ制御装置1では、ヒータドライバ51を流れる電流がすべてヒータ部4に流れ(非短絡状態)、かつ、センサ素子部3が目標温度となっている非短絡定温状態におけるデューティ比DTである第1デューティ比DT1を不揮発性メモリ75(記憶手段)に予め記憶している。
そして、素子抵抗Rpvsが目標抵抗値RTを含む第1抵抗範囲RR1内の抵抗値(素子抵抗Rpvs=目標抵抗値RT±α(50〜100Ω))となっている状態(ステップS3でYesのとき)で、現在デューティ比DT2を、予め記憶した第1デューティ比DT1と比較することにより、略短絡第1温度範囲状態となっているか否かを検知する。
これにより、センサ素子部3が目標温度を含む第1温度範囲内の温度に維持された状態で、略短絡第1温度範囲状態が生じているか否かを適切に検知することができる。
【0039】
さらに、本実施形態1のガスセンサ制御装置1では、ヒータドライバ51は、電源BT(電源電位VB)とヒータ部4との間に介在するハイサイド型のスイッチング素子である。そして、略短絡検知手段は、第1判断手段を備え、現在デューティ比DT2を第1デューティ比DT1と比較して、ヒータドライバ51のドレイン51Dとヒータ部4の電源側端子4Pとを接続するリード線52(第1接続路)が、抵抗を生じた抵抗接続路RRGを介して接地電位GNDに導通し、ガスセンサ2、ガスセンサ制御装置1及び抵抗接続路RRGが略短絡第1温度範囲状態となっているか否かを判断する。これにより、ハイサイド型のスイッチング素子を用いたセンサ温度制御装置であるガスセンサ制御装置1において、略短絡第1温度範囲状態の発生を適切に判断することができる。
【0040】
さらに、本実施形態1のガスセンサ制御装置1では、通電制御手段(ステップS1〜S2)は、素子抵抗検知手段(ステップS1)と素子抵抗制御手段(ステップS2)とを含み、検知した素子抵抗Rpvsが目標温度に対応する目標抵抗値RTとなるように、通電パルスPSのデューティ比DTをフィードバック制御している。また、素子温度判断手段である素子抵抗判断手段(ステップS3)は、素子抵抗Rpvsが目標抵抗値RTを含む第1温度範囲に対応する第1抵抗範囲RR1内の抵抗値(素子抵抗Rpvs=目標抵抗値RT±α(50〜100Ω))になっているか否かを判断している。そして、略短絡検知手段(ステップS4〜S6)は、素子抵抗Rpvsが第1抵抗範囲RR1内の抵抗値(50〜100Ω)になっている状態で、略短絡第1温度範囲状態が生じているか否かを検知している。
これにより、素子抵抗Rpvsを用いて、適切に略短絡第1温度範囲状態を検知することができる。
【0041】
(実施形態2)
次に、本発明の第2の実施の形態について、図4を参照して説明する。実施形態1に係るセンサ温度制御装置であるガスセンサ制御装置1では、ヒータ部制御回路50が備えるヒータドライバ51は、電源BT(電源電位VB)とヒータ部4との間に介在するハイサイド型のスイッチング素子であった。
これに対し、本実施形態2に係るセンサ温度制御装置であるガスセンサ制御装置1Aでは、ヒータ部制御回路150が備えるヒータドライバ151は、ヒータ部4と接地電位GNDとの間に介在するローサイド型のスイッチング素子である点が異なる。
【0042】
図4に示すように、ヒータ部制御回路150は、パワーMOS−FETを内蔵するヒータドライバ151を備えており、このヒータドライバ151のドレイン151Dは、リード線153を介して、ガスセンサ2のヒータ部4の接地側端子4Nに接続されている。また、ヒータドライバ151のソース151Sは、接地電位GNDに接続されている。
一方、ヒータ部4の電源側端子4Pは、リード線152を介してヒータ部制御回路150に接続され、このヒータ部制御回路150内で電源電位VBを出力する電源BTの+端子に接続されている。なお、電源BTは12V仕様のバッテリである。すなわち、ヒータドライバ151は、ヒータ部4と接地電位GNDとの間に介在するローサイド型のスイッチング素子である。
また、ヒータドライバ151のゲート151Gは、マイクロプロセッサ70のPWM出力ポート74に接続されており、このPWM出力ポート74から出力されるパルス駆動信号PSに従って、ヒータドライバ151がオンオフされて、ヒータ部4への通電が制御される。
【0043】
本実施形態2のガスセンサ制御装置1Aでは、ヒータ部4への通電を行っているときに、ヒータドライバ151のドレイン151Dとヒータ部4の接地側端子4Nとを接続するリード線153が、図4に点線で示すように、抵抗を生じた抵抗接続路RRVを介して電源電位VBに導通し、ヒータドライバ151を流れる電流のうち一部のみがヒータ部4に流れ、残りは抵抗接続路RRVに流れる略短絡状態が発生することがある。
そこで、本実施形態2のガスセンサ制御装置1Aでは、実施形態1と同様に、第1デューティ比DT1(固定値)を不揮発性メモリ75に予め記憶し、素子抵抗Rpvsが、素子抵抗Rpvs=目標抵抗値RT±αとなる第1抵抗範囲RR1内の抵抗値(50〜100Ω)となり、センサ素子部3が目標温度を含む第1温度範囲内の温度を維持している状態で、マイクロプロセッサ70のPWM出力ポート74から出力されているパルス駆動信号PSの現在のデューティ比DTである現在デューティ比DT2を、記憶した第1デューティ比DT1と比較する。そして、現在デューティ比DT2が第1デューティ比DT1よりも十分に大きい場合、具体的には、現在デューティ比DT2から第1デューティ比DT1を差し引いた値が所定の閾値よりも大きい場合には、リード線153が、抵抗を生じた抵抗接続路RRVを介して電源電位VBに導通し、略短絡第1温度範囲状態となっていると判断する。
これにより、センサ素子部3が目標温度に維持された状態で、ガスセンサ2、ガスセンサ制御装置1A及び抵抗接続路RRVが略短絡第1温度範囲状態となっているか否かを適切に検知することができる。
【0044】
また、本実施形態2に係るガスセンサ制御装置1Aのうち、マイクロプロセッサ70による略短絡第1温度範囲状態の検知処理動作は、図3に示した実施形態1のフローチャートと同様である。
本実施形態2では、ステップS6において、リード線153が、抵抗を生じた抵抗接続路RRVを介して電源電位VBに導通し、略短絡第1温度状態となっていると判断でき、この略短絡第1温度範囲状態の発生を外部(ECU)に通知する。
【0045】
本実施形態2において、ヒータドライバ151がスイッチング素子に相当する。また、このヒータドライバ151を含むヒータ部制御回路150のほか、PWM出力ポート74、センサ素子部制御回路40、A/D入力ポート72、及びステップS1〜S2を実行しているマイクロプロセッサ70が通電制御手段に相当する。さらに、この通電制御手段のうち、センサ素子部制御回路40、A/D入力ポート72、及びステップS1を実行しているマイクロプロセッサ70が素子抵抗検知手段に相当し、ステップS2を実行しているマイクロプロセッサ70が素子抵抗制御手段に相当する。
また、不揮発性メモリ75が記憶手段に相当し、ステップS3を実行しているマイクロプロセッサ70が素子抵抗判断手段(素子温度判断手段)に相当する。また、ステップS4〜S6を実行しているマイクロプロセッサ70が略短絡検知手段に相当し、このうち、ステップS6を実行しているマイクロプロセッサ70が第2判断手段に相当する。
ヒータドライバ151のドレイン151Dとヒータ部4の接地側端子4Nとを接続するリード線153が第2接続路に相当する。
【0046】
以上で説明したように、本実施形態2のセンサ温度制御装置であるガスセンサ制御装置1Aは、実施形態1のガスセンサ制御装置1と同様に、素子抵抗Rpvsが目標抵抗値RTを含む第1抵抗範囲RR1内の抵抗値(素子抵抗Rpvs=目標抵抗値RT±α(50〜100Ω))となっている状態で、現在デューティ比DT2を、予め記憶した第1デューティ比DT1と比較することにより、略短絡第1温度範囲状態となっているか否かを検知する。
これにより、実施形態1と同様に、センサ素子部3が目標温度を含む第1温度範囲内の温度に維持された状態で、略短絡第1温度範囲状態が生じているか否かを適切に検知することができる。
【0047】
さらに、本実施形態2のガスセンサ制御装置1Aでは、ヒータドライバ151は、ヒータ部4と接地電位GNDとの間に介在するローサイド型のスイッチング素子である。そして、略短絡検知手段は、第2判断手段を備え、現在デューティ比DT2を第1デューティ比DT1と比較して、ヒータドライバ151のドレイン151Dとヒータ部4の接地側端子4Nとを接続するリード線153(第2接続路)が、抵抗を生じた抵抗接続路RRVを介して電源電位VBに導通し、ガスセンサ2、ガスセンサ制御装置1A及び抵抗接続路RRVが略短絡第1温度範囲状態となっているか否かを判断する。これにより、ローサイド型のスイッチング素子を用いたセンサ温度制御装置であるガスセンサ制御装置1Aにおいて、略短絡第1温度範囲状態の発生を適切に判断することができる。
【0048】
さらに、本実施形態2のガスセンサ制御装置1Aでは、実施形態1と同様に、通電制御手段(ステップS1〜S2)は、素子抵抗検知手段(ステップS1)と素子抵抗制御手段(ステップS2)とを含み、検知した素子抵抗Rpvsが目標温度に対応する目標抵抗値RTとなるように、通電パルスPSのデューティ比DTをフィードバック制御している。また、素子温度判断手段である素子抵抗判断手段(ステップS3)は、素子抵抗Rpvsが目標抵抗値RTを含む第1温度範囲に対応する第1抵抗範囲RR1内の抵抗値(素子抵抗Rpvs=目標抵抗値RT±α(50〜100Ω))になっているか否かを判断している。そして、略短絡検知手段(ステップS4〜S6)は、素子抵抗Rpvsが第1抵抗範囲RR1内の抵抗値(50〜100Ω)になっている状態で、略短絡第1温度範囲状態が生じているか否かを検知している。
これにより、素子抵抗Rpvsを用いて、適切に略短絡第1温度範囲状態を検知することができる。
【0049】
以上において、本発明のセンサ温度制御装置を、実施形態1,2のガスセンサ制御装置1,1Aに即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、実施形態1,2では、センサ素子部及びヒータ部を有するセンサとして、排気ガス中の酸素濃度(空燃比)を検出する空燃比センサであるガスセンサ2を用いた。しかし、ヒータ部を有するセンサは、これに限られず、酸素濃度の濃淡(リッチ/リーン)を検出する酸素センサ、窒素酸化物(NOx)の濃度を検出するNOxセンサなどであっても良い。
【0050】
また、実施形態1,2では、不揮発性メモリ75(記憶手段)に第1デューティ比DT1として、固定値を記憶し、これを継続的に用いた。しかし、これに代えて、前回の運転時に得た非短絡定温状態の正常なデューティ比DTを第1デューティ比DT1として記憶しておき、これを次回の運転時に用いても良い。前回の運転時のデューティ比DTを用いることにより、劣化等による素子抵抗Rpvsの変化に応じて、第1デューティ比DT1を変化させることが可能である。
【符号の説明】
【0051】
1,1A ガスセンサ制御装置(センサ温度制御装置)
2 ガスセンサ
3 センサ素子部
4 ヒータ部
4P 電源側端子
4N 接地側端子
Rpvs 素子抵抗
RT 目標抵抗値
40 センサ素子部制御回路(素子抵抗検知手段,通電制御手段)
50,150 ヒータ部制御回路(通電制御手段)
51,151 ヒータドライバ(スイッチング素子)
52,152 リード線(第1接続路)
53,153 リード線(第2接続路)
70 マイクロプロセッサ
72 A/D入力ポート(素子抵抗検知手段,通電制御手段)
74 PWM出力ポート(通電制御手段)
75 不揮発性メモリ(記憶手段)
BT 電源(バッテリ)
PS パルス駆動信号
DT デューティ比
DT1 第1デューティ比
DT2 現在デューティ比
RR1 第1抵抗範囲
S1 素子抵抗検知手段(通電制御手段)
S2 素子抵抗制御手段(通電制御手段)
S3 素子抵抗判断手段(素子温度判断手段)
S4〜S6 略短絡検知手段
S6 第1判断手段,第2判断手段
図1
図2
図3
図4