特許第5937541号(P5937541)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5937541
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】作業機の昇降装置
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/16 20060101AFI20160609BHJP
   B60R 3/02 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   E02F9/16 G
   B60R3/02
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-95502(P2013-95502)
(22)【出願日】2013年4月30日
(65)【公開番号】特開2014-214579(P2014-214579A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2015年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081569
【弁理士】
【氏名又は名称】若田 勝一
(74)【代理人】
【識別番号】100156018
【弁理士】
【氏名又は名称】若田 充史
(72)【発明者】
【氏名】奥田 一晶
(72)【発明者】
【氏名】石井 基寛
【審査官】 富山 博喜
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−278365(JP,A)
【文献】 米国特許第02667296(US,A)
【文献】 特開平06−137052(JP,A)
【文献】 特開2003−019923(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/16
B60R 3/02
E06C 1/00 − 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体上に上部旋回体を設置し、前記上部旋回体に運転室を設けた作業機の昇降装置において、
前記運転室の側方に設けたステップと、
前記ステップの端部に左右に向けて設けた横軸に中間部が枢着され、前記ステップ上に重ねた水平姿勢と起立姿勢とがとり得るように取付けた下梯子と、
前記下梯子の上に下梯子に沿って移動可能に組み合わされた上梯子と、
前記下梯子と前記上梯子の間に設けられ、前記上梯子が前記下梯子に沿って移動する範囲を規制する移動範囲規制機構と、
前記ステップに設けられ、前記下梯子を起立させた状態で下梯子の下部を当接させて起立方向へのさらなる回動を防止するための回動ストッパと、
前記ステップと前記下梯子の間に設けられ、下梯子が水平姿勢の際に、下梯子の浮き上がりを防止する浮上防止機構と、
前記下梯子と前記上梯子の間に設けられ、前記上梯子が前記下梯子に対して収縮して組み合わされている際に、前記上梯子の伸長方向への移動を防止する伸長防止機構とを備えると共に、
前記上梯子は、互いに移動可能に重ねて組み合わされた複数段の上梯子により構成され、かつ、複数段の上梯子を連動して相対的に伸縮させる連動機構を備えたことを特徴とする作業機械の昇降装置。
【請求項2】
下部走行体上に上部旋回体を設置し、前記上部旋回体に運転室を設けた作業機の昇降装置において、
前記運転室の側方に設けたステップと、
前記ステップの端部に左右に向けて設けた横軸に中間部が枢着され、前記ステップ上に重ねた水平姿勢と起立姿勢とがとり得るように取付けた下梯子と、
前記下梯子の上に下梯子に沿って移動可能に組み合わされた上梯子と、
前記下梯子と前記上梯子の間に設けられ、前記上梯子が前記下梯子に沿って移動する範囲を規制する移動範囲規制機構と、
前記ステップに設けられ、前記下梯子を起立させた状態で下梯子の下部を当接させて起立方向へのさらなる回動を防止するための回動ストッパと、
前記ステップと前記下梯子の間に設けられ、下梯子が水平姿勢の際に、下梯子の浮き上がりを防止する浮上防止機構と、
前記下梯子と前記上梯子の間に設けられ、前記上梯子が前記下梯子に対して収縮して組み合わされている際に、前記上梯子の伸長方向への移動を防止する伸長防止機構とを備えると共に、
前記下梯子が起立した状態における前記下梯子の上部位置に、前記横軸を回動の支点とする際の支点の両側の重量バランスをとる錘が設けられていることを特徴とする作業機の昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上部旋回体を有する油圧ショベル等の作業機において、運転室に昇降するための昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下部走行体とその下部走行体に旋回装置を介して取付けられる上部旋回体を有する油圧ショベル等の作業機は、上部旋回体に運転室を有するとともに、地上からその運転室へ昇降するために梯子等の昇降装置を備える。このような昇降装置として、特許文献1には、上部旋回体のサイドウォークの外側に固定梯子を取付け、これに下方に伸長可能に可動梯子を組み合わせたスライド式の梯子からなるものが開示されている。この特許文献1に記載のものは、オペレータ等が運転室に昇降する際には可動梯子を引き下げ、作業機の稼働時には可動梯子を引き上げて旋回時における可動梯子と下部走行体との干渉を防止する。
【0003】
従来の昇降装置の別の例として、特許文献2には、サイドウォークの外側に起立姿勢と垂下姿勢とが取りうるように回動可能に第1の梯子を取付け、この第1の梯子に対して垂下した姿勢と第1の梯子に対して折り畳んだ姿勢が取りうるように回動可能に取付けたものが開示されている。この特許文献2に記載の昇降装置を昇降に使用する場合は、第1の梯子を下方に回動させて垂下姿勢にすると共に、第2の梯子を第1の梯子に対して折り畳んだ結合状態から離して垂下姿勢に変える。オペレータ等が運転室に昇った後は、第1の梯子を回動させて起立させると共に、第2の梯子を第1の梯子に折り畳み状に重ねて結合することにより、梯子と下部走行体との干渉を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−257118号公報
【特許文献2】特開2000−255459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の昇降装置においては、可動梯子を引き下げた使用姿勢と引き上げた退避姿勢との間で人力により昇降させる必要がある。このため、作業機が比較的大型になると、可動梯子の昇降範囲も大きくなり、可動梯子の重量も増大するため、可動梯子を押し上げる際に必要とされる労力が大となる。
【0006】
また、固定梯子の下端の位置は、下部走行体との干渉を回避しない高さとなるように制限されるため、固定梯子の長さも制限を受け、その結果、可動梯子の伸縮範囲も制限され、伸縮範囲の長い昇降装置を実現することが困難である。
【0007】
また、特許文献2に記載のように、サイドウォークに第1の梯子を回動可能に取付けると共に、第1の梯子に対して第2の梯子を垂下状、折り畳み状に変位可能に取付けたものにおいても、やはり作業機の大型化により梯子の重量が増し、特許文献1のものと同様に上に引き上げるための労力が大となる。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑み、梯子を上げ下げするための労力が軽減できると共に、梯子の伸縮範囲も長くすることが可能となる構成の作業機の昇降装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の作業機の昇降装置は、
下部走行体上に上部旋回体を設置し、前記上部旋回体に運転室を設けた作業機の昇降装置において、
前記運転室の側方に設けたステップと、
前記ステップの端部に設けた横軸に中間部が枢着され、前記ステップ上に重ねた水平姿勢と起立姿勢とがとり得るように取付けた下梯子と、
前記下梯子の上に下梯子に沿って移動可能に組み合わされた上梯子と、
前記下梯子と前記上梯子の間に設けられ、前記上梯子が前記下梯子に沿って移動する範囲を規制する移動範囲規制機構と、
前記ステップに設けられ、前記下梯子を起立させた状態で下梯子の下部を当接させて起立方向へのさらなる回動を防止するための回動ストッパと、
前記ステップと前記下梯子の間に設けられ、下梯子が水平姿勢の際に、下梯子の浮き上がりを防止する浮上防止機構と、
前記下梯子と前記上梯子の間に設けられ、前記上梯子が前記下梯子に対して収縮して組み合わされている際に、前記上梯子の伸長方向への移動を防止する伸長防止機構とを備えと共に、
前記上梯子は、互いに移動可能に重ねて組み合わされた複数段の上梯子により構成され、かつ、複数段の上梯子を連動して相対的に伸縮させる連動機構を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の作業機の昇降装置は、下部走行体上に上部旋回体を設置し、前記上部旋回体に運転室を設けた作業機の昇降装置において、
前記運転室の側方に設けたステップと、
前記ステップの端部に左右に向けて設けた横軸に中間部が枢着され、前記ステップ上に重ねた水平姿勢と起立姿勢とがとり得るように取付けた下梯子と、
前記下梯子の上に下梯子に沿って移動可能に組み合わされた上梯子と、
前記下梯子と前記上梯子の間に設けられ、前記上梯子が前記下梯子に沿って移動する範囲を規制する移動範囲規制機構と、
前記ステップに設けられ、前記下梯子を起立させた状態で下梯子の下部を当接させて起立方向へのさらなる回動を防止するための回動ストッパと、
前記ステップと前記下梯子の間に設けられ、下梯子が水平姿勢の際に、下梯子の浮き上がりを防止する浮上防止機構と、
前記下梯子と前記上梯子の間に設けられ、前記上梯子が前記下梯子に対して収縮して組み合わされている際に、前記上梯子の伸長方向への移動を防止する伸長防止機構とを備えると共に、
前記下梯子が起立した状態における前記下梯子の上部位置に、前記横軸を回動の支点とする際の支点の両側の重量バランスをとる錘が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、下梯子を水平姿勢と起立姿勢とが取りうるように、下梯子の中間部を、運転室の側部のステップに設けた横軸に枢着したので、オペレータ等がステップに上がった後、上梯子を上げる時は、下梯子と共に上梯子を回動させて水平にして上梯子をスライドさせればよい。ここで、下梯子はステップに中間部を枢着しているので、上下の梯子を回動させる際に必要とされる力は、起立した状態で上梯子を押し上げるのに必要とされる力に比較して小さい力ですむ。また、下梯子を水平にした時に上梯子を水平に移動させる力は押し上げる力に比較して小さい力ですむ。このため、梯子を退避姿勢にするための労力が小さくてすむ。その結果、作業機が大型化しても、人力で容易に操作できる昇降装置が実現できる。
【0012】
また、梯子が水平姿勢にあるときは、梯子が下部走行体に干渉するおそれがないため、下梯子の長さが下部走行体との干渉を回避する上で制限を受けることがなく、下梯子を固定梯子にする場合に比較し、下梯子を長くすることが可能となる。このため、下梯子に対する上梯子の伸縮範囲も長くすることが可能となるので、伸縮範囲の面からも、作業機の大型化に容易に対応することが可能となる。
【0013】
また、上梯子を複数段に構成したので、梯子の伸縮幅が大きくなり、大型化した作業機にもより容易に対応できる。また、複数段の可動梯子の連動機構を設けたので、梯子の伸縮を整然と安定して行なうことができる。
【0014】
請求項の発明によれば、重量バランスを取るための錘を下梯子に設けたので、下梯子を起立姿勢から水平姿勢に回動させるための操作力を小さくすることができる。また、梯子が伸長する際の重量バランスの変化によって、上下の梯子が起立側に急激に回動することが防止され、操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の昇降装置の一実施の形態を示す作業機の側面図である。
図2】本実施の形態の昇降装置の旋回フレームに対する取付け構造を梯子が水平となる格納状態で示す斜視図である。
図3】本実施の形態の昇降装置を梯子が水平となる格納状態で示す斜視図である。
図4】本実施の形態の昇降装置を梯子が水平となる格納状態で示す平面図である。
図5】(A)は図4のA矢視図、(B)は図4のB矢視図である。
図6】本実施の形態の昇降装置を梯子が起立した使用状態で示す斜視図である。
図7図5(B)におけるC−C拡大断面図である。
図8】本実施の形態の上梯子の伸長防止機構を示す側面図である。
図9】本実施の形態の下梯子の浮上防止機構を示す側面図である。
図10】本発明による昇降装置の他の実施の形態を示す側面図である。
図11図10の実施の形態の昇降装置の平面図である。
図12図10のD−D断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明の昇降装置の一実施の形態を梯子の格納状態で示す作業機の側面図であり、図2は旋回フレーム3aと昇降装置8の位置関係を説明する斜視図である。図1のとおり、この作業機は、下部走行体1に旋回装置2を介して旋回フレーム3aが取付けられ、旋回フレーム3aに、エンジンや油圧ポンプなどを備えたパワーユニット4、カウンタウエイト5および運転室6が搭載されて上部旋回体3を構成する。図2において、7は旋回フレーム3aに運転室6を取付けるために旋回フレーム3aに設けた取付け穴である。旋回フレーム3aの前部には、例えばブーム、アーム、バケット等の作業具及びそれらを回動させるための油圧シリンダを備えた作業用フロント(不図示)が取付けられる。作業用フロントは、伸縮式アーム等により構成されたものであってもよい。
【0017】
図1図2において、8は昇降装置、9はこの昇降装置8の一部を構成するステップである。このステップ9は、旋回フレーム3aにおける運転室6の周囲に位置する部分に取付けられるものであり、本実施の形態においてはこのステップ9は、図2に示すように、運転室6の側部の前側に位置する第1の側部ステップ9aと、その後部に位置する第2の側部ステップ9bと、運転室6の前部に位置するステップ9cとからなる。10はステップ9bに取付けられる下梯子、11はこの下梯子10に移動可能に組み合わされる上梯子である。
【0018】
図3図5は梯子10,11を格納状態、すなわち梯子10,11が水平となる状態を示すもので、図3はその斜視図、図4はその平面図、図5(A)、(B)はそれぞれ図4のA矢視図、B矢視図である。図6は梯子10,11の使用状態、すなわち梯子10,11が起立しかつ伸長した状態を示す斜視図である。
【0019】
図3において、12はステップ9bの旋回フレーム3a側に設けた取付け板、13は旋回フレーム3aに設けられたステップ取付け用の座板であり、取付け板12をボルト14によって座板13に固定することにより、ステップ9bが旋回フレーム3aに取付けられる。
【0020】
図3図4に示すように、下梯子10は、左右の縦枠10a,10a間にステップバー10bを架設したものであり、図6に起立状態で示すように、ステップバー10bは下梯子10の下半部のみに設け、下梯子10の上部にはステップバー10bを設けず、縦枠10a,10a間を通過可能に構成している。この下梯子10は、図3図4図6に示すように、ステップ9bの後端部に設けられた横軸30に左右の縦枠10a,10aの中間部を回動可能に枢着して取付けられる。
【0021】
上梯子11は左右の縦枠11a,11a間にステップバー11bを架設したものであり、ステップバー11bは縦枠11aのほぼ全長にわたって複数本(図示例は4本)設けられている。
【0022】
図5(A)、(B)に示すように、上梯子11の前端部にはローラ15を設け、このローラ15は、下梯子10の上面に接し、上梯子11の移動により転動する。また、下梯子10の後端にもローラ16を設け、このローラ16は上梯子11の下面に接し、上梯子11の移動により転動する。
【0023】
図3に示すように、上梯子11の縦枠11aは断面形状がコ字形をなす。上梯子11を下梯子10に沿って移動させるため、下梯子10の後端部にはボルト24によりスライドパッド26を有するブラケット22を取付けると共に、上梯子11の前端部には、図5(B)のC−C拡大断面図である図7に示す後述のスライドプレート51を備える。スライドパッド26は、上梯子11の縦枠11aの下板部11cの上面および外縁に当接し、摺動させてガイドの役目を果たすものである。
【0024】
下梯子10における前記スライドパッド26の前側に、ボルト23によりローラ25を有するブラケット21を取付ける。このローラ25は上梯子11の縦枠11aの下板部11c(図5(A),(B)参照)の上面に当接して上梯子11の移動に伴い転動させるもので、上梯子11の下梯子10に対する浮き上がりを防止するものである。
【0025】
図8図9はそれぞれ図5(A)、(B)の部分拡大図である。図7図9において、50はスライドプレート51を取付けるための取付け板であり、この取付け板50は、上梯子11におけるローラ15の軸であるピン57を支持する縦板52にボルト50aにより取付けられる。56はこの取付け板50と縦板52の間を調整するためのシムである。そして取付け板50にボルト55bとナット55aによってスライドプレート51が取付けられる。スライドプレート51は、下梯子10の外側の側面に摺動可能に当接する。
【0026】
図1に示すように、梯子10,11が水平姿勢となる格納状態においては、運転室6のドア6aの下辺の高さhより上梯子11の上面の位置を低くして梯子10,11がドア6aの開閉の邪魔にならないように構成している。
【0027】
図3図6に示すように、上梯子11の移動範囲を規制するための移動範囲規制機構として、下梯子10に収縮側ストッパ17と伸長側ストッパ19が設けられる。収縮側ストッパ17は下梯子10の前端部に設けられ、上梯子11の前端部11dを当接させて収縮位置を規制する。伸長側ストッパ19は、下梯子10の後部の外側の側面に設けられ、図6に示すように、上梯子11を伸長させた際に、上梯子11の前部の外側の側面に突出させて設けた係止板32を当接させるものである。これらのストッパ17,19には、緩衝のためにゴム等の弾性材が用いられる。
【0028】
図3図5図6において、18は下梯子10が水平姿勢から起立姿勢へ移行する際の回動において、下梯子10を当接させて回動限界位置を規制する回動ストッパである。この回動ストッパ18は、ステップ9bの後端部に後方に突出させて設けられる。この回動ストッパ18にも緩衝のためにゴム等の弾性材が用いられる。60は下梯子10が起立状態から水平姿勢に回動する際に、ステップ9bに当接した際の衝撃を緩和するため、ステップ9b上に設けたゴム等からなる緩衝材である。
【0029】
図6に示すように梯子10,11が起立した状態において、梯子10,11が起立姿勢側から水平姿勢側に回動することを防止するため、下梯子10とステップ9bとの間に回動防止機構を構成するリンク28が設ける。このリンク28は、図3図5に示すように、上梯子11の旋回フレーム3aの反対側の縦枠11aにピン28bを中心として回動可能に取付けられる。27はステップ9bに固着されたガイド板であり、このガイド板はリンク28の自由端に設けたピン28aを移動可能に嵌合するガイド溝27aを有する。ガイド溝27aの後端部には、梯子10,11が起立した際にピン28aを嵌めてリンク28を固定するための凹部27bを有する。
【0030】
図3図5に示すように、梯子10,11が水平となる格納状態においては、リンク28の自由端に設けたピン28aはガイド板27のガイド溝27aの前端部に嵌合されている。一方、リンク28をこの水平姿勢から起立側に回動させると、リンク28が次第に起立しながらピン28aがガイド溝27aに沿って摺動する。そして図6に示すような起立姿勢になると、ピン28aは凹部27bに嵌合される。このため、梯子10,11に起立姿勢側から水平姿勢側に回動する力が加わってもピン28aの位置が動かず、リンク28が固定される。このリンク28に設けたピン28aと凹部27bとの嵌合による回動防止機構によって、昇降時に下梯子10が回動することが防止される。
【0031】
図2図4において、44は下梯子10の前端部に取付けられた錘である。この錘44は、図4に示すように、下梯子10の外側の縦枠10aの外側の側面に設けた取付け部材41にボルト44aによって取付けられる。この錘44は、下梯子10を起立姿勢から水平姿勢にするときの回動力を低減することができる。また、上梯子11が下梯子10に沿って伸長して、横軸30から上梯子11の後端までの距離が長くなり、横軸30より後側の重量が増す際に、この前端の錘44によって重量のバランスをとって、急激に梯子10,11が起立姿勢へ回動することを防止する。
【0032】
図5(A)において、35は梯子10,11が水平姿勢となる格納状態において、上梯子11が下梯子10に対して伸長する方向に移動しないようにする伸長防止機構を構成する金具である。この伸長防止金具35は、図8に示すように、下梯子10の側面にピン36を中心に回動可能に取付けられ、上梯子11が下梯子10に対して収縮した状態において、受部である係止板32を係止して、上梯子11の伸長方向の移動を防止するものである。この伸長防止金具35は上梯子11の係止板32を当接させて伸長防止金具35を回動させる傾斜面35bと、係止板32を係止する係止部35cとを有する。37はコイルばねであり、このコイルばね37はピン36に巻装され、かつ下梯子10の縦部材10cと伸長防止金具35に設けたピン35aに両端を掛けて取付けられ、伸長防止金具35を矢印61の方向に付勢する。10dは伸長防止金具35による係止板32の係止が解除された状態でも伸長防止金具35を適当な位置に保持するため、下梯子10の側面に設けた保持部材である。
【0033】
図8において、上梯子11が下梯子10に対して伸長した状態から矢印62に示すように収縮方向に移動させた際に、上梯子11の係止板32が伸長防止金具35の傾斜面35bに至ると、伸長防止金具35はコイルばね37の力に抗して矢印61の反対方向に回動する。そしてさらに係止板32が傾斜面35bを越えると、伸長防止金具35がばね37の力により矢印61の方向に回動して原位置に復帰し、係止板32が係止部35cに係止され、上梯子11が矢印62の反対方向、すなわち伸長方向に移動することが防止される。伸長防止金具35の傾斜面35b側をコイルばね37の弾力に抗して下方に押せば、伸長防止金具35による係止板32の係止が解かれ、上梯子11が伸長方向に移動可能となる。
【0034】
図5(B)および図6において、40は梯子10,11が水平姿勢をとっている際にこれらの梯子10,11の前部の浮き上がりを防止する浮上防止機構を構成する金具である。この浮上防止金具40は、図9に示すように、ステップ9bにピン46を中心に回動可能に取付けられる。ピン46にはコイルばね45が巻装され、その一端を浮上防止金具40に設けたピン40aに掛け、他端をステップ9bに掛けることにより、浮上防止金具40はコイルばね45により矢印58で示す回動方向に付勢される。矢印58方向の回動範囲は、浮上防止金具40に設けた足片40dがステップ9bの上面に当接することにより、規制される。43は下梯子10に取付け板41,42により取付けた係止ロッドであり、この係止ロッド43は浮上防止金具40に設けた傾斜面40bに摺動させ、係止部40cに係止させるものである。
【0035】
図9において、下梯子10が起立した姿勢から矢印59で示すように下梯子10の前部を降下させる方向に回動させると、係止ロッド43が浮上防止金具40の傾斜面40bに当接し、コイルばね45の力に抗して浮上防止金具40を矢印58の反対方向に回動させる。そして係止ロッド43が傾斜面40bを越えると、浮上防止金具40がコイルばね45の力で矢印58の方向に回動して原位置に復帰し、係止ロッド43が浮上防止金具40の係止部40cにより係止され、梯子10,11の浮き上がりが防止される。この状態から浮上防止金具40を矢印58の反対方向に回せば、浮上防止金具による係止ロッド43の拘束が解かれ、これらの梯子10,11の前部が浮上するように回動させることができる。
【0036】
このように、この実施の形態においては、下梯子10を水平姿勢と起立姿勢とが取りうるように、下梯子10の中間部を、運転室6の側部ステップ9bの端部に設けた横軸30により枢着したので、オペレータ等がステップ9bに上がった後、上梯子11を上げる時は、下梯子10と共に上梯子11を回動させて水平にし、その後、上梯子11を収縮方向にスライドさせればよい。ここで、下梯子10はステップ9bに中間部を枢着しているので、上下の梯子10,11を回動させる際に必要とされる力は、起立した状態で上梯子11を押し上げるのに必要とされる力に比較して小さい力ですむ。また、下梯子10を水平にした時に上梯子11を水平に移動させる力は押し上げる力に比較して小さい力ですむ。このため、梯子を格納状態にするための労力が小さくてすむ。
【0037】
また、梯子10,11が水平姿勢にあるときは、梯子10,11が下部走行体1に干渉するおそれがないため、下梯子10の長さが下部走行体1との干渉を回避する上で制限を受けることがなく、従来のように下梯子10を固定梯子にする場合に比較し、下梯子10を長くすることが可能となる。このため、下梯子10に対する上梯子11も長くすることが可能となる。
【0038】
また、下梯子10に上梯子11が重ねられるので、格納時はコンパクトとなり、作業やドア開閉の障害にならず、使用時のみ起立させて使用させることができ、収縮状態を維持しながら回動させることができるため、その回動の範囲を狭くすることができ、非伸縮型の回動式梯子よりも少ないスペースで回動することができる。
【0039】
また、下梯子10に重量バランスを取るための錘44を設けたので、下梯子10を起立姿勢から水平姿勢にするときに要する操作力を小さくすることができる。また、上梯子11が伸長する際の重量バランスの変化によって、上下の梯子10,11が急激に回動することが防止され、操作性が向上する。
【0040】
また、梯子10,11が水平となる格納状態である際に、運転室6のドア6aの下辺よりも梯子10,11が低い位置となるように設定したので、梯子10,11が水平姿勢の格納状態において、ドア6aの開閉に梯子10,11が障害になることがない。このため、梯子10,11を運転室6に近接した位置に取付けることができ、コンパクトな構成を実現できる。
【0041】
また、梯子10,11が起立した状態において、リンク28からなる梯子10,11の回動を防止する機構を設けたので、梯子10,11の起立姿勢からの意図しない回動が防止され、安全性が向上する。
【0042】
図10は本発明の昇降装置の他の実施の形態を示す側面図である。図11はその平面図、図12図10のD−D断面図である。図10図12において、図1図9と同じ符号は同じ構成部品または構成要素を示す。この実施の形態は、下梯子10上に重ねる上梯子を、互いに移動可能に重ねる複数段(図示例は2段)の梯子11,71により構成したものである。下側に位置する第1の上梯子11は前記実施の形態の構造と同様であり、この第1の上梯子11と下梯子10との組合わせ構造も前記実施の形態と同様である。上側に位置する第2の上梯子71は左右の縦枠71a,71a間にステップバー71bを設けたものである。
【0043】
第1の上梯子11は前述のように断面が略コの字状をなす。第2の上梯子71の前部(図10の左側)には間隔を有して2組のブラケット22Aをボルト24Aにより取付け、図12に示すように、各ブラケット24Aにそれぞれスライドパッド26Aを設け、各スライドパッド26Aを第1の上梯子11の縦枠11aの上板部11gの下面と外縁に摺動可能に係合させる。また、第1の上梯子11の後端部にローラ16Aを設け、このローラ16Aに第2の上梯子71の下面を転動可能に当接させ、かつ第2の上梯子71の前端部にローラ15Aを設け、このローラ15Aを第1の上梯子11の上面に転動可能に当接させることにより、第1の上梯子11に対して第2の上梯子71を移動可能に組み合わせる。
【0044】
76,77は第1の上梯子11に第2の上梯子71を相対的に連動して伸縮させるために設けたプーリであり、78,79はそれぞれプーリ76,77に掛け回したワイヤである。プーリ76に掛け回すワイヤ78は、その一端を、下梯子10の側面に固着したブラケット81に接続具83により接続し、他端を、第2の上梯子71の側面に固着したブラケット82に接続具84により接続する。プーリ77に掛け回すワイヤ79は、その一端を、下梯子10の側面に固着したブラケット81に接続具85により接続し、他端を、第2の上梯子71の側面に固着したブラケット82に接続具86により接続する。このような連動機構により、第1の上梯子11の移動量に対して第2の上梯子71は2倍の移動量で伸縮する。
【0045】
図10図11において、19Aは第2の上梯子71が第1の上梯子11に対して伸長する範囲を規制するために第1の上梯子11の側面に設けた伸長ストッパであり、32Aは第2の上梯子71の側面に設けられ、伸長時に伸長ストッパ19Aに当接させる係止板である。
【0046】
図11図12において、29は第2の上梯子71の第1の上梯子11に対する収縮側の限界位置を規制するために、第1の上梯子11の縦枠11aの内側の面に固着して設けた係止板であり、17Aは第2の上梯子71の縦枠71aの内側の固着して設けたブラケット87に設けられ、収縮時に係止板29に当接させる収縮側ストッパである。
【0047】
図10図12の実施の形態によれば、上梯子を2段の梯子11,71により構成したので、梯子全体の伸縮幅が大きくすることが可能となる。また、これらの梯子11,71を相対的に伸縮方向に連動させる連動機構を設けたので、梯子の伸縮を整然と安定して行なうことができる。
【0048】
尚、本実施の形態においては、梯子が3段となる昇降装置としたが、更に4段以上の昇降装置としてもよい。また、上記実施の形態においては、いずれもステップ9bの後端に下梯子10を配置する構成としたが、ステップ9の前端部に下梯子10を取付けてもよく、ステップの側部としてもよい。その他、本発明を実施する場合、上記実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更、付加が可能である。
【符号の説明】
【0049】
1:下部走行体、2:旋回装置、3:上部旋回体、6:運転室、6a:運転室のドア、8:昇降装置、9:ステップ、10:下梯子、11,71:上梯子、15,15A,16,16A:ローラ、17,17A:収縮側ストッパ、18:回動ストッパ、19,19A:伸長側ストッパ、29,32,32A:係止板、35:伸長防止金具、40:浮上防止金具、44:錘、76,77:プーリ、78,79:ワイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12