特許第5937549号(P5937549)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5937549光酸発生剤化合物、光酸発生剤化合物を含有する末端基を含むポリマー、および製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5937549
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】光酸発生剤化合物、光酸発生剤化合物を含有する末端基を含むポリマー、および製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 327/36 20060101AFI20160609BHJP
   C08F 2/38 20060101ALI20160609BHJP
   C07D 333/76 20060101ALI20160609BHJP
   C07C 381/12 20060101ALI20160609BHJP
   C08F 20/12 20060101ALN20160609BHJP
【FI】
   C07C327/36CSP
   C08F2/38
   C07D333/76
   C07C381/12
   !C08F20/12
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-169042(P2013-169042)
(22)【出願日】2013年8月16日
(65)【公開番号】特開2014-94932(P2014-94932A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2014年12月3日
(31)【優先権主張番号】61/695,733
(32)【優先日】2012年8月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ダブリュ.クレーマー
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ジェイ.アローラ
【審査官】 石井 徹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第03/066685(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/142209(WO,A1)
【文献】 特開2005−156725(JP,A)
【文献】 特開2008−268661(JP,A)
【文献】 実表2000−515181(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07D
C08F 2/38
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
式(I)中、
Zは置換されているかもしくは置換されていないy価の1−20アルキル、C3−20シクロアルキル、C6−20アリール、もしくはC7−20アラルキルであり、
およびAは、それぞれ独立してエステルを含有しているかもしくはエステルを含有しておらず、かつフッ素化されているかもしくはフッ素化されておらず、かつ独立してC1−40アルキレン、C3−40シクロアルキレン、C6−40アリーレンまたはC7−40アラルキレンであり、Aは硫黄との結合点に対してアルファにニトリル、エステルもしくはアリール置換基を含有しており、
Lはヘテロ原子もしくは単結合であり、
は単結合、−O−、−S−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=O)−NR−、−NR−C(=O)−、−NR−C(=O)−NR−、−S(=O)−O−、−O−S(=O)−O−、−NR−S(=O)−、もしくは−S(=O)−NR−であり、
RはH、C1−10アルキル、C3−10シクロアルキルもしくはC6−10アリールであり、
スルホネート、スルフェート、スルホンアミドアニオン、もしくはスルホンイミドアニオン基であり、
式(II):
【化2】
(式中、XはIもしくはSであり、各RおよびRは、独立して置換されているかもしくは置換されておらず、かつ孤立電子対、C1−20アルキル、C1−20フルオロアルキル、C3−20シクロアルキル、C3−20フルオロシクロアルキル、C2−20アルケニル、C2−20フルオロアルケニル、C6−20アリール、C6−20フルオロアリール、C7−20アラルキル、もしくはC7−20フルオロアラルキルであり、
ここで、XがSである場合は、RおよびRは互いに結合していないか、または単結合によって結合されており、
がIである場合は、RもしくはRの一方は孤立電子対であり、並びに
ArはC5−30芳香族含有基である)のカチオンであり、並びに
yは1〜6の整数である
を有する化合物。
【請求項2】
yは1〜4の整数であり、
は硫黄との結合点に対してアルファにCN、C6−10アリール、もしくは1−10アルコールのエステルで置換された、C1−20アルキレン、C3−20シクロアルキレン、C6−20アリーレン、もしくはC7−20アラルキレンであり、および
はフッ素化されているかもしくはフッ素化されておらず、かつC1−20アルキレン、C3−20シクロアルキレン、C6−20アリーレン、もしくはC7−20アラルキレンであ
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記化合物が式(I−a):
【化3】
(式中、L、A、Aおよびは、式(I)に規定した通りであり、Zは置換されているかもしくは置換されていないC1−20アルキル、C3−20シクロアルキル、C6−20アリール、もしくはC7−20アラルキルである)
を有する請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記化合物が式(I−b)もしくは(I−c):
【化4】
【化5】
(式中、L、A、およびは式(I−a)に規定した通りであり、Zは置換されているかもしくは置換されていないC1−10アルキル、C3−10シクロアルキル、C6−10アリール、もしくはC7−10アラルキルであり、R、RおよびRは独立してH、F、C1−10アルキル、C1−10フルオロアルキル、C3−10シクロアルキル、もしくはC3−10フルオロシクロアルキルであり、pは0〜10の整数であり、qは1〜10の整数であり、並びにrは0〜4の整数である)
を有する請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
式(I−b−1):
【化6】
(式中、Z、L、A、およびは式(I−b)に規定した通りであり、RはH、F、C1−10アルキル、もしくはC1−10フルオロアルキルであり、pは1〜10の整数であり、並びにqは1〜10の整数である)
を有する、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
前記化合物が式(I−d):
【化7】
(式中、Z、L、Aおよびは式(I−a)に規定した通りであり、各Rは独立してH、CN、C6−10アリール、もしくは−C(=O)−ORであり、RはC1−10アルキルもしくはC3−10シクロアルキルであるが、ただし少なくとも1つのRはHではない、並びにAはエステルを含有しているかまたはエステルを含有しておらず、かつC1−10アルキレン、C3−10シクロアルキレン、C6−10アリーレン、もしくはC7−10アラルキレンである)
を有する、請求項3に記載の化合物。
【請求項7】
式(I−d−1)〜(I−d−6):
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
(式中、Gは、式(I)について規定した通りであり、Rは、CN、Cアリール、もしくは−C(=O)−ORであり、RはC1−3アルキルである)から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
請求項1記載の化合物、不飽和モノマー、および場合によって開始剤の重合によって得られ、
請求項1に記載の化合物の下記の基:
【化14】
が重合された生成物に末端基として含まれる、
ポリマー。
【請求項9】
式(I):
【化15】
式(I)中、
Zは置換されているかもしくは置換されていないy価の1−20アルキル、C3−20シクロアルキル、C6−20アリール、もしくはC7−20アラルキルであり、
およびAは、それぞれ独立してエステルを含有しているかもしくはエステルを含有しておらず、かつフッ素化されているかもしくはフッ素化されておらず、かつ独立してC1−40アルキレン、C3−40シクロアルキレン、C6−40アリーレンまたはC7−40アラルキレンであり、Aは硫黄との結合点に対してアルファにニトリル、エステルもしくはアリール置換基を含有しており、
Lはヘテロ原子もしくは単結合であり、
は単結合、−O−、−S−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=O)−NR−、−NR−C(=O)−、−NR−C(=O)−NR−、−S(=O)−O−、−O−S(=O)−O−、−NR−S(=O)−、もしくは−S(=O)−NR−であり、
RはH、C1−10アルキル、C3−10シクロアルキルもしくはC6−10アリールであり、
スルホネート、スルフェート、スルホンアミドアニオン、もしくはスルホンイミドアニオン基であり、
式(II):
【化16】
(式中、XはIもしくはSであり、各RおよびRは、独立して置換されているかもしくは置換されておらず、かつ孤立電子対、C1−20アルキル、C1−20フルオロアルキル、C3−20シクロアルキル、C3−20フルオロシクロアルキル、C2−20アルケニル、C2−20フルオロアルケニル、C6−20アリール、C6−20フルオロアリール、C7−20アラルキル、もしくはC7−20フルオロアラルキルであり、
ここで、XがSである場合は、RおよびRは互いに結合していないか、または単結合によって結合されており、
がIである場合は、RもしくはRの一方は孤立電子対であり、並びに
ArはC5−30芳香族含有基である)のカチオンであり、並びに
yは1〜6の整数である
を有する化合物、並びに場合によって開始剤の存在下で、1種以上の不飽和モノマーを重合することを含む、ポリマーを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
先進世代マイクロリソグラフィ(つまり、例えば電子ビーム、X線、および13.4nmの波長で作動する極紫外線(EUV)リソグラフィ)のための設計ルールは、例えば30nm以下のはるかに小さな寸法に向かっている。先進世代リソグラフィにおいて使用されるより狭いライン幅およびより薄いレジスト膜は、一貫性の問題、例えばライン幅ラフネス(line width roughness:LWR)を生じさせる可能性があるが、このとき解像度は有意性が増大し、フォトレジストの性能および有用性を制限する。過度のLWRは、例えば、トランジスタおよびゲート構造において不良なエッチングおよびライン幅制御の欠如をもたらす可能性があり、潜在的に、最終デバイスにおける短絡および信号遅延を誘発する場合がある。
【0002】
フォトレジスト膜内の保護された現像可能な基の脱保護を触媒するための光酸発生剤(PAGs)の不均一な分布は、増加したLWR、よって不良な解像度の原因となる可能性がある。PAGsは、PAGおよびフォトレジストポリマーの物理的ブレンドを調製することによってフォトレジスト配合物中に組み込むことができるが、スピンコーティングされると、PAGの不均質な分布がフォトレジスト膜内で発生し、不均一な酸生成およびより大きなラインエッジラフネス(LER)を生じさせることがある。または、PAGは、配合物中の移動性を制限するために、ポリマー主鎖に結合させることができる。この戦略はフォトレジスト膜内のPAG分散を改良し、そこでパターン形成を改良することができるが、それでもPAGsはポリマー鎖間(一部の鎖が他の鎖より多くのPAGを含有する可能性がある)およびポリマー鎖内(一部の鎖領域はPAG含有モノマーの反応性比に依存して他の鎖領域より多くのPAGを含有する可能性がある)で二重に分布させられる。このためより一様なPAG分散法が望ましい。
【0003】
そこで組成、分子量および多分散性の制御がフォトレジスト膜内のPAG分散を改良するために有用である。アクリレートをベースとするEUVフォトレジストポリマーは、モノマーおよび開始剤の供給速度の制御が組成の制御に役立つ変法フリーラジカル重合技術によって合成できるが、停止反応および連鎖移動反応は重合中の様々な時点に異なる組成および分子量の相当に広範囲の分布をもたらす可能性がある。組成における変動はフォトレジスト溶解度に影響を及ぼすので、連鎖全体に及ぶ広範囲の組成分布および広範囲の分子量分布は望ましくない。
【0004】
制御ラジカル重合法は、2.0未満の多分散度を備える(メタ)アクリレート含有ポリマーを調製するために使用されうる。制御ラジカル重合の1つの方法は、分子量分布を制御するためのジチオエステル連鎖移動剤(CTA)の使用を含んでいる。Proc.of SPIE Vol.6923,2008,69232E−I−69232E−9に記載されたように、可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合技術が193nmリソグラフィのためのフォトレジストポリマーを生成するために使用されてきた。正確および特定の分子量はCTAの量に基づいて得ることができ、CTAsは連鎖停止剤であるので、CTAsを使用して製造されたポリマーを末端基官能化することが可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Proc.of SPIE Vol.6923,2008,69232E−I−69232E−9
【発明の概要】
【0006】
先行技術の上述の欠陥やその他の欠陥の1つ以上は、式(I):
【化1】
(式(I)中、Zはy価のC1−20有機基であり、AおよびAは、それぞれ独立してエステルを含有しているかもしくはエステルを含有しておらず、かつフッ素化されているかもしくはフッ素化されておらず、かつ独立してC1−40アルキレン、C3−40シクロアルキレン、C6−40アリーレンまたはC7−40アラルキレンであり、Aは硫黄との結合点に対してアルファにニトリル、エステルもしくはアリール置換基を含有しており、Lはヘテロ原子もしくは単結合であり、Xは単結合、−O−、−S−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=O)−NR−、−NR−C(=O)−、−NR−C(=O)−NR−、−S(=O)−O−、−O−S(=O)−O−、−NR−S(=O)−、もしくは−S(=O)−NR−であり、RはH、C1−10アルキル、C3−10シクロアルキルもしくはC6−10アリールであり、Qはアニオン性基であり、Gは金属カチオンもしくは非金属カチオンであり、並びにyは1〜6の整数である)を有する本発明の化合物によって克服することができる。
【0007】
ポリマーは、式(I)の化合物、不飽和モノマー、および場合により開始剤の反応生成物由来の末端基を含んでいる。
【0008】
ポリマーを製造する方法は、1種以上の不飽和モノマーを式(I):
【化2】
(式(I)中、Zはy価のC1−20有機基であり、AおよびAは、それぞれ独立してエステルを含有しているかもしくはエステルを含有しておらず、かつフッ素化されているかもしくはフッ素化されておらず、かつ独立してC1−40アルキレン、C3−40シクロアルキレン、C6−40アリーレンまたはC7−40アラルキレンであり、Aは、硫黄との結合点に対してアルファにニトリル、エステルもしくはアリール置換基を含有しており、Lはヘテロ原子もしくは単結合であり、Xは単結合、−O−、−S−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=O)−NR−、−NR−C(=O)−、−NR−C(=O)−NR−、−S(=O)−O−、−O−S(=O)−O−、−NR−S(=O)−、もしくは−S(=O)−NR−であり、RはH、C1−10アルキル、C3−10シクロアルキルもしくはC6−10アリールであり、Qはアニオン性基であり、Gは金属カチオンもしくは非金属カチオンであり、yは1〜6の整数である)を有する化合物、および場合によって開始剤の存在下で重合することを含む。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書では、可逆的付加開裂移動(reversible addition fragmentation transfer:RAFT)制御重合反応のための連鎖移動剤(CTA)として使用するための新規な化合物が開示される。CTAは、フラグメント化の際に、利用可能なラジカルと反応する硫黄含有部分(例、ジチオネートもしくは類似部分)に加えて、アニオン性部分および対応するカチオンを含有する。好ましくは、カチオンは、化学線に曝露させられると酸性プロトンを光分解で生成することができるオニウムカチオン、例えばヨードニウムもしくはスルホニウムカチオンである。さらに好ましくは、化合物の硫黄含有部分は、連結基によってアニオン性部分に結合される。本明細書に開示したCTA化合物は、光酸発生末端基を備える狭い多分散度(PDI<2.0)のポリマーを調製するために有用である。そのようなポリマーを使用すると、ひいてはフォトレジストマトリックス内に十分に分散した光酸発生剤部分を有するフォトレジストを調製することができる。
【0010】
本明細書で使用する「ポリマー」には、2種以上の異なるモノマー単位を有するポリマーが含まれ、さらに2種のモノマー単位を有するコポリマー、3種のモノマー単位を有するターポリマー、4種のモノマー単位を有するテトラポリマー、5種のモノマー単位を有するペンタポリマーなどが含まれる。さらに、本明細書に開示したコポリマーは、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、グラジエントコポリマー、交互コポリマー、または2つ以上のこれらのモチーフを含む組み合わせであってよいことも理解されよう。ポリマーは、組成勾配を有することもできる。好ましくは、コポリマーはランダムコポリマーであるが、このとき式によってモノマーの特定の順序は示されていない。
【0011】
本明細書で使用する「アリール」は、芳香族基であり、単環式、例えばフェニル基;多環式、例えばビフェニル基;もしくは縮合多環式、例えばナフチル基であってよく、「アリール」には6個より少ない炭素原子を含む全ての芳香族構造、例えばピラゾール類、チオフェン類、オキサゾール類、ピリジン類などをはじめとする複素環式芳香族化合物が含まれると理解されよう。さらに本明細書で使用する「アルキル」基は、sp混成炭素含有基であり、直鎖状もしくは分枝状であってよく、他に特に規定されない限りシクロアルキルを含むことができる。本明細書で使用する「アラルキル」は、アリール部分およびアルキル部分の両方を含有する基を意味するが、このときアリールもしくはアルキル基のいずれかは、隣接基への結合点である。同様に「アリーレン」、「アルキレン」、「シクロアルキレン」、およびアラルキレン」基は、それぞれ二価のアリール、アルキル、およびアラルキル基である。アラルキレン基は、アリールおよびアルキル部分両方で結合点を有することに留意されたい。さらに、アリール、アリーレン、シクロアルキル、シクロアルキレン、アラルキル、もしくはアラルキレンの1つ以上の構造的(置換基とは対照的に)原子は、1つ以上のヘテロ原子で置換されていてよい。好ましいヘテロ原子には、酸素、窒素、リン、硫黄およびケイ素が挙げられる。
【0012】
さらに、「アニオン結合」は、有機連結基、例えば、アルキル、アリール、アルコキシ、ポリアルコキシ、エステル、カーボネート、アミド、ウレア、スルホネート、フルフェート、スルホンイミド、スルホンアミド、アセタールもしくはケタール含有基、または他の適切な基がPAGのアニオンとRAFT部分の硫黄含有末端基との間の共有結合構造を形成することを意味する。さらに本明細書で使用する「置換(された)」は、置換基、例えばハロゲン(つまり、F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ、アミノ、チオール、カルボキシル、カルボキシレート、アミド、ニトリル、チオール、スルフィド、ジスルフィド、ニトロ、C1−10アルキル、C1−10アルコキシ、C6−10アリール、C6−10アリールオキシ、C7−10アルキルアリール、C7−10アルキルアリールオキシ、または上記の少なくとも1つを含む組み合わせを含むこと意味している。本明細書における式に関連して開示したいずれかの基もしくは構造は、他に特に規定しない限り、またはそのような置換が結果として生じる構造の所望の特性に有意な影響を及ぼさない場合には、そのように置換できることは理解されよう。
【0013】
そこで、RAFT剤は、式(I):
【化3】
(式(I)中、Zはy価のC1−20有機基である)を有する化合物を含んでいる。好ましくは、Zは、C1−20アルキル、C3−20シクロアルキル、C6−20アリール、もしくはC7−20アラルキル基である。典型的なそのような基には、メチル、エチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル、ウンデシル、シクロヘキシル、ネオペンチル、フェニル、ベンジル、シクロへキシレン、フェニレン、ナフチレン、およびキシリレンが挙げられる。好ましくは、yは1〜6の整数であり、好ましくは1〜4である。yの値が基Zについて利用可能な価数を超えないことは理解されよう。
【0014】
さらに式(I)中、AおよびAは、それぞれ独立してエステルを含有しているかもしくはエステルを含有していない、かつフッ素化されているかもしくはフッ素化されていない基であり、かつ独立してC1−40アルキレン、C3−40シクロアルキレン、C6−40アリーレン、もしくはC7−40アラルキレンである。Aが硫黄との結合点に対してアルファにニトリル、エステルもしくはアリール置換基を含むラジカル安定化基を、分子内のこの点の隣に発生するラジカルの共鳴安定性を提供するために含有していることが理解されよう。好ましくは、Aは硫黄との結合点に対してアルファにCN、C6−10アリール、もしくはC1−10アルコールのエステルを有する、C1−20アルキレン、C3−20シクロアルキレン、C6−20アリーレン、もしくはC7−20アルキレンである。また、好ましくは、Aはフッ素化されているかもしくはフッ素化されておらず、かつC1−20アルキレン、C3−20シクロアルキレン、C6−20アリーレン、もしくはC7−20アラルキレンである。
【0015】
本明細書を通して使用される場合、「フルオロ」もしくは「フッ素化(された)」は、1つ以上のフッ素基が関連する基に結合していることを意味する。例えば、この定義により、および他に特に規定しない限り、「フルオロアルキル」は、モノフルオロアルキル、ジフルオロアルキルなど、ならびにアルキル基の実質的に全ての炭素原子がフッ素原子で置換されているパーフルオロアルキルを含んでおり、同様に「フルオロアリール」は、モノフルオロアリール、パーフルオロアリールなどを意味する。この文脈における「実質的に全て」は、炭素に結合した全原子の90%以上、好ましくは95%以上、およびいっそうより特別には98%以上がフッ素原子であることを意味する。
【0016】
さらに式(I)中、Lは、ヘテロ原子もしくは単結合である。この状況において使用されるヘテロ原子には、他に特に規定しない限り、二価もしくは多価ヘテロ原子、例えばO、N、P、S、Siが含まれ、このときヘテロ原子、例えば、N、P、およびSiについては、満たされていない価数はR(例、NR、PR、PR、SR、SiRなど)(式中、RはH、C1−10アルキル、C3−10シクロアルキル、C6−10アリール、もしくはC7−10アラルキルである)で置換される。好ましくは、Xは、−C(=O)−O−もしくは−O−C(=O)−である。
【0017】
式(I)中の連結基Xには、単結合、−O−、−S−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=O)−NR−、−NR−C(=O)−、−NR−C(=O)−NR−、−S(=O)−O−、−O−S(=O)−O−、−NR−S(=O)−、もしくは−S(=O)−NR−が挙げられ、式中、RはH、C1−10アルキル、C3−10シクロアルキルもしくはC6−10アリールである。好ましくは、Xは、単結合、−O−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、もしくは−S(=O)−O−である。
【0018】
式(I)中のQは、アニオン性基であり、スルホネート、スルフェート、スルホンアミドアニオン、もしくはスルホンイミドアニオン基が挙げられる。好ましくは、Qは、スルホネート(−SO)、スルホンアミドのアニオン(−SO(N)R’、式中、R’は、C1−10アルキルもしくはC6−20アリールである)、もしくはスルホンイミドのアニオンをはじめとするアニオン性基である。式中Qがスルホンイミドアニオンである場合、スルホンイミドは一般構造−SO−(N)−SO−R”(式中、R”は、直鎖状もしくは分枝状C1−10フルオロアルキル基である)を有する非対称スルホンイミドであってよい。好ましくは、R”基は、C1−4パーフルオロアルキル基であり、対応する過フッ素化アルカンスルホン酸、例えばトリフルオロメタンスルホン酸もしくはパーフルオロブタンスルホン酸に由来する。
【0019】
式(I)は、カチオンGをさらに含んでいる。Gは、金属もしくは非金属カチオンである。好ましくは、Gは、アルカリ金属カチオン、アンモニウムカチオン、アルキルアンモニウムカチオン、アルキル−芳香族アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、または金属もしくは非金属カチオンであってよいカルボニウムカチオンである。好ましい非金属カチオンには、オニウムカチオン、例えばスルホニウム、オキソニウム、もしくはヨードニウムをベースとするオニウムカチオンが挙げられる。好ましくは、オニウムカチオンは、化学線に対する感受性を強化するためにアリールもしくはフッ素化アリール発色団を含有する。
【0020】
好ましくは、カチオンGは、式(II):
【化4】
(式中、Xは、IもしくはSであり、各RおよびRは、独立して置換されているかもしくは置換されておらず、かつC1−20アルキル、C1−20フルオロアルキル、C3−20シクロアルキル、C3−20フルオロシクロアルキル、C2−20アルケニル、C2−20フルオロアルケニル、C5−20アリール、C6−20フルオロアリール、C7−20アラルキル、もしくはC7−20フルオロアラルキルであり、XがSである場合は、RおよびRは互いに結合していないか、または単結合によって互いに結合されており、XがIである場合は、RもしくはRの一方は孤立電子対であり、並びにArはC5−30芳香族含有基である)を有するオニウムカチオンである。好ましくは、RおよびRは、独立してC3−20シクロアルキルもしくはC6−20アリールである。
【0021】
好ましいカチオンGは、式(III)もしくは(IV):
【化5】
【化6】
(式中、Xは、IもしくはSである;R、R、R、およびRは、それぞれ独立してヒドロキシ、ニトリル、ハロゲン、C1−10アルキル、C1−10フルオロアルキル、C1−10アルコキシ、C1−10フルオロアルコキシ、C6−20アリール、C6−20フルオロアリール、C6−20アリールオキシ、もしくはC6−20フルオロアリールオキシである;uは、2もしくは3の整数であり、XがIである場合は、uは2であり、およびXがSである場合は、uは3であり、wおよびrはそれぞれ独立して0〜5の整数であり、sおよびtは、それぞれ独立して0〜4の整数である)を有する。
【0022】
RAFT剤として使用するために好ましい化合物は、式(I−a):
【化7】
(式中、L、A、AおよびGは、式(I)に規定した通りであり、Zは、置換されているかもしくは置換されていないC1−20アルキル、C3−20シクロアルキル、C6−20アリール、もしくはC7−20アラルキルである)を有する。
【0023】
また、好ましくは、このRAFT化合物は、式(I−b)もしくは(I−c):
【化8】
【化9】
(式中、L、A、およびGは、式(I−a)に規定した通りであり、Zは、置換されているかもしくは置換されていないC1−10アルキル、C3−10シクロアルキル、C6−10アリール、もしくはC7−10アラルキルであり、R、RおよびRは、独立してH、F、C1−10アルキル、C1−10フルオロアルキル、C3−10シクロアルキル、もしくはC3−10フルオロシクロアルキルであり、pは0〜10の整数であり、qは1〜10の整数であり、rは0〜4の整数である)を有する。好ましくは、RおよびRの少なくとも1つは、フッ素を含有する。
【0024】
有用なRAFT化合物には、式(I−b−1):
【化10】
(式中、Z、L、A、およびGは式(I−b)に規定した通りであり、Rは、H、F、C1−10アルキル、もしくはC1−10フルオロアルキルであり、pは1〜10の整数であり、qは1〜10の整数である)を有する化合物が挙げられる。
【0025】
または、RAFT化合物には、式(I−d):
【化11】
(式中、Z、L、AおよびGは、式(I)に規定した通りであり、各Rは、独立してH、CN、C1−10アルキル、C6−10アリール、もしくは−C(=O)−OR(式中、Rは、C1−10アルキルもしくはC3−10シクロアルキルであるが、ただし、少なくとも1つのRはHではない、並びにAはエステルを含有しているかまたはエステルを含有しておらず、かつC1−10アルキレン、C3−10シクロアルキレン、C6−10アリーレン、もしくはC7−10アラルキレンである)を有する化合物が挙げられる。好ましくは、1つのRは、CN、Cアリール、もしくは−C(=O)−ORであり、ここで、RはC1−3アルキルであり、残りのRはHもしくはC1−3アルキルであり、並びにAはC1−10アルキレン、C3−10シクロアルキレン、C6−10アリーレン、もしくはC7−10アラルキレンである。
【0026】
典型的なRAFT化合物には、式(I−d−1)から(I−d−6):
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
(式中、Gは、式(I)について規定した通りであり、並びにRはCN、Cアリール、もしくは−C(=O)−ORであり、RはC1−3アルキルである)から選択される化合物が挙げられる。
【0027】
さらに、RAFT化合物、不飽和モノマー、および場合によって開始剤の反応生成物由来の末端基を含むポリマーを調製できる。
【0028】
本明細書に規定した「不飽和モノマー」には、重合可能な二重もしくは三重結合を有するモノマー、例えばエチレン、プロピレン、テトラフルオロエチレンなどを含むオレフィン類、アセチレン、プロピン、例えばノルボルネン類をベースとする環状オレフィン類、芳香族不飽和化合物、例えばスチレン類およびスチルベン類、アルファ−ベータ不飽和化合物、例えばそれらの親酸を含む(メタ)アクリレート類、クロトン酸塩類、マレイン酸よびフマル酸誘導体、例えばマレイン酸無水物などが含まれる。RAFT重合プロセスと適合性の好ましい不飽和モノマーには、スチレン類および(メタ)アクリレート類が含まれる。本明細書で使用する用語「(メタ)アクリレート類」には、アクリレート類およびメタクリレート類の両方が含まれることに留意されたい。
【0029】
ポリマーを製造する方法は、1つ以上の不飽和モノマーを式(I)の化合物、および場合により開始剤の存在下で重合する工程を含んでいる。RAFT条件下で共重合可能なあらゆるモノマーは、モノマーを調製する際に有用な可能性がある。好ましくは、ポリマーは、塩基可溶性官能基、例えばフェノール基もしくはカルボン酸基を遮蔽する酸不安定性保護基を有する酸脱保護可能なモノマー、例えば第3級環式もしくは非環式アルキルエステル類、ケタール類、アセタール類、およびベンジルエステル類;塩基可溶性官能基、例えばフェノール基、カルボン酸基、もしくはヘキサフルオロイソプロパノール基を有する塩基可溶性基;ラクトン含有モノマー:および場合によって光酸発生性モノマーを含んでいる。
【0030】
適切な開始剤には、当分野において有用な任意のラジカル開始剤、例えばペルオキシ開始剤、ジアゾ開始剤などをあげることができる。例えば、ペルオキシ開始剤、例えばtert−ブチルヒドロペルオキシド、tert−ブチルペルオキシ2−エチルヘキサノエート(tert−ブチルパーオクトエート)、t−ブチルペルオキシピバレート、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、ジ−ベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシイソブチレート、ジアゾ開始剤、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)など。好ましい開始剤には、DuPont社による商品名VAZOで販売された開始剤、例えばVAZO52、VAZO67、VAZO88、およびWako社からのV−601開始剤が含まれる。または、重合は、熱開始反応(例、約120℃超、より好ましくは約150℃超)によって実施することができる。好ましくは、熱開始反応は、1つ以上の成分モノマーがスチレン系である場合に使用できる。
【0031】
そこでポリマーは、脱気された溶媒中において上述した可逆的付加開裂移動(RAFT)プロセスを使用して連鎖移動剤の存在下でモノマーのラジカルもしくは熱開始重合によって調製することができる。重合は、バッチモードで、連鎖移動添加物を含有する反応混合物へのモノマーおよび/または開始剤のバッチ添加によって、反応混合物への、モノマーおよび/または開始剤および/または連鎖移動剤の1つ以上の別個の供給物の定量添加によって、または反応物質を一緒にするための任意の他の適切な方法によって実施することができる。ブロックコポリマーが各ブロックのためのモノマーを反応混合物へ逐次添加することによって製造できる、または段階的組成を有するポリマーが、経時的に供給物中のモノマー比率および/または組成を段階的に変化させることによって形成できることは理解されよう。RAFT法によって調製できる全てのそのようなポリマーは、本明細書の中で企図されている。
【0032】
ポリマーは、1,000〜100,000g/mol、好ましくは1,500〜50,000g/mol、より好ましくは2,000〜25,000g/mol、およびいっそうより好ましくは3,000〜15,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有していてよい。ポリマーは、500〜100,000g/mol、好ましくは1,000〜50,000g/mol、より好ましくは1,500〜25,000g/mol、およびいっそうより好ましくは2,000〜15,000g/molの数平均分子量(Mn)をさらに有していてよい。分子量は、いずれか適切な方法、例えばゲル透過クロマトグラフィ(GPC)を使用して、万能補正によってポリスチレン標準物質に較正した架橋スチレン−ジビニルベンゼンカラムを用いて約1mL/分の流速で決定することができる。ポリマー多分散度(Mw/Mn)は、好ましくは2.0未満、より好ましくは1.8以下、より好ましくは1.6以下、およびより好ましくは1.5以下である。
【0033】
本発明を以下の実施例によってさらに説明する。以下で使用する全化合物および試薬は、手順が提供されている場合を除いて市販で入手できる。トリフェニルスルホニウム1,1−ジフルオロ−2−(メタクリロイルオキシ)エタン−1−スルホネート(TPS F2 PAGモノマー)は、Central Glass社から市販で入手した。
【0034】
構造的特性解析は、核磁気共鳴(NMR)分光測定法によって、それぞれVarian社製のINOVA 500 NMR分光計(Hに対しては500MHz、13Cに対しては125MHzで操作する)またはINOVA 400−MR NMR分光計(Hに対しては400MHzおよび19Fに対しては376MHzで操作する)上で実施した。ポリマー組成は、125MHzでの定量的13C NMRによってNOEサプレッション技術(つまり、Cr(アセチルアセトネート)および2秒間のパルス遅延)を使用して決定した。分子量(Mw)および多分散度(PD)は、1mg/mLのサンプル濃度およびポリスチレン標準物質で較正した万能較正曲線を用いる架橋スチレン−ジビニルベンゼンカラムを用いて、1mL/分の流量で0.2wt%の硝酸リチウムを含有するテトラヒドロフランを用いて溶出させたゲル透過クロマトグラフィ(GPC)によって決定した。
【0035】
PAG官能化連鎖移動剤CTA1の合成は、下記の手順にしたがって、およびスキーム1に例示したように実施した(本明細書で使用される場合、「TPS」は「トリフェニルスルホニウム」を意味することに留意されたい)。
【0036】
【化18】
【0037】
4−シアノ−4−(チオベンゾイルチオ)ペンタン酸(0.550g、1.97mmol)を不活性雰囲気下で20mLバイアルへ移し、2gの無水THF中に溶解させた。生じた赤色溶液に、KH(0.158g、3.94mmol)を少量ずつ5分間かけて加えた。添加後、発泡を停止させると、過剰なKHがアニオンの暗赤色溶液中に残留した。
【0038】
蒸留された3,3,4,4−テトラフルオロブタンスルトン(0.451g、2.17mmol)を20mLバイアルに加えた。カリウム酸溶液をフリットに通してスルトンを含有するバイアル内にろ過し、混合液を室温で2時間撹拌し、この時点で溶液をグローブボックスから取り出し、粗生成物をヘキサン(およそ10g)を用いて洗浄した。粗生成物の下相は赤色油として分離した。上方の明るいピンク色のヘキサン溶液を廃棄し、赤色油性粗生成物をTHF中に再溶解させ、ヘキサンを用いて2度目の抽出をした。結果として生じた2回抽出油は、それ以上の精製を行わずに次の工程において使用した。
【0039】
その後の(メタセシス)工程において、赤色油をCHCl(5mL)中に溶解させ、臭化トリフェニルスルホニウム水溶液(0.743g、2.166mmol、脱イオン水5mL中に溶解)を加えた。この二相混合液はそれらの相を混合するために強力に振とうし、この混合液を室温で一晩撹拌した。水相の色は最初はピンクであったが、時間が経つと無色になった。18時間後、水相を除去し、有機相をDI水で2回洗浄した。次に有機相をMgSOで乾燥させ、回転蒸発によって溶媒を除去すると、粘稠赤色油が得られた(1.27g、収率86%)。この生成物をHおよび19F NMR分光計によって分析した。H NMR(400MHz,CDCl):δ7.91(d,J=8.5Hz,2H),7.66−7.78(m,15H),7.55(t,J=7.5Hz,1H),7.37(t,J=7.4Hz,2H),4.4(t,J=6,6Hz,2H),2.40−2.85(m,6H),1.9(s,3H).19F NMR(CDCl):−112.3(m,2F),−118.3(m,2F).
【0040】
ポリマー(ポリマー実施例1)は、以下の方法にしたがって、およびスキーム2に示したようにPAG末端基化合物CTAIを使用して調製した。
【0041】
【化19】
【0042】
モノマー混合物を提供するために、2−フェニル−2−プロピルメタクリレート(PPMA;1.50g、7.34mmol)、アルファ−(ガンマ−ブチロラクトン)メタクリレート(a−GBLMA、1.82g、10.7mmol)、3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−2−イル)シクロヘキシルメタクリレート(di−HFAMA、1.41g、2.83mmol)、およびトリフェニルスルホニウム1,1−ジフルオロ−2−(メタクリロイルオキシ)エタン−1−スルホネート(TPS−F2 MA、0.832g、1.69mmol)を不活性雰囲気下で20mLバイアルへ移した。8.3gの溶媒混合液は、CHCN:無水テトラヒドロフラン(THF)を2:1(v/v)の比率で一緒にすることによって調製された。この溶媒混合液の約半分はモノマーを完全に溶解させるためにモノマーに加え、生じたモノマー溶液はオーブンで乾燥させた中性アルミナのプラグに通して直接新たなバイアルへろ過され、その後にプラグを残りの溶媒を用いて洗浄した。
【0043】
次にCTA1の溶液(0.991g、0.661mmol、無水THF中の50wt%溶液)をこのバイアルに加え、溶解させると赤色の均質溶液が得られた。2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(AIBN;0.660mL、0.132mmol、トルエン中で0.2M)を加え、このバイアルにキャップを嵌め、72時間にわたり60℃へ加熱した。この溶液を室温に冷却し、100mLの90:10(v/v)メチルtert−ブチルエーテル/イソプロパノール(MTBE:iPrOH)中へ2回沈殿させ、ここで沈殿したポリマーをろ過によって収集し、沈殿の間に6mLのTHF中に再溶解させた。第2回の沈殿後、固体ポリマーを真空ろ過によって収集し、45℃の真空オーブン中で一晩乾燥させると、ピンク色の固体としてポリマーが産生した。13C NMR(100MHz、アセトン−d)組成、それぞれ、25:42:12:21モル%比のPPMA/a−GBLMA/di−HFAMA/TPS−F2 PAG;Mn=6,600g/mol、Mw=7,600g/mol、PDI=1.15。
【0044】
第2ポリマー(ポリマー実施例2)は、PAGモノマーを用いずに、しかしCTA1を用いて、以下の手順およびスキーム3にしたがって調製した。
【0045】
【化20】
【0046】
2−フェニル−2−プロピルメタクリレート(PPMA、1.50g、7.34mmol)、アルファ−(ガンマ−ブチロラクトン)メタクリレート(a−GBLMA、1.87g、11.0mmol)、および3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−2−イル)シクロヘキシルメタクリレート(di−HFAMA、1.28g、2.56mmol)を不活性雰囲気下で20mLバイアルに移した。7.0gの溶媒混合液は、CHCN:THFを2:1(v/v)の比率で一緒にすることによって調製した。この溶媒混合液の約半分はモノマーを完全に溶解させるためにそれらに加え、モノマー溶液は、オーブンで乾燥させた中性アルミナのプラグに通して直接新たなバイアルへろ過され、その後に残りの溶媒をアルミナに通した。
【0047】
CTA1の溶液(0.903g、0.602mmol、無水THF中の50wt%溶液)をバイアルに移すと、赤色の均質溶液が形成された。2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)の溶液(AIBN;0.603mL、0.121mmol、トルエン中で0.2M)を加え、このバイアルにキャップを嵌め、72時間にわたり60℃へ加熱した。この溶液を室温に冷却し、100mLの90:10(v/v)メチルtert−ブチルエーテル/イソプロパノール(MTBE:iPrOH)中へ2回沈殿させ、ここで沈殿したポリマーをろ過によって収集し、沈殿の間に6mLのTHF中に再溶解させた。第2回の沈殿後、固体ポリマーを真空ろ過によって収集し、45℃の真空オーブン中で一晩乾燥させると、ピンク色の固体としてポリマーが産生した。13C NMR(100MHz、アセトン−d)組成、それぞれ、25:42:12:21モル%比のPPMA/a−GBLMA/di−HFAMA、Mn=7,200g/mol、Mw=8,600g/mol、PDI=1.20。
【0048】
フェニルジベンゾチオフェニウム(PDBT)カチオンを有する第2PAG官能化連鎖移動剤(CTA2)は、以下の手順にしたがって、スキーム2に示したように調製した。
【0049】
【化21】
【0050】
4−シアノ−4−(チオベンゾイルチオ)ペンタン酸(1.00g、3.58mmol)は、不活性雰囲気下で20mLバイアルへ移し、4gの無水THF中に溶解させた。この赤色溶液に、KH(0.287g、7.16mmol)を少量ずつ5分間かけて加えた。この溶液の赤色は、KHの添加中に暗色化した。
【0051】
蒸留された3,3,4,4−テトラフルオロブタンスルトン(0.820g、3.94mmol)を第2の20mLバイアルに加えた。RAFT剤のカリウム塩を含有する赤色溶液をフリットに通してスルトンを含有するバイアル内にろ過し、この混合液を周囲温度で2時間撹拌した。粗生成物をヘキサン(およそ10g)で抽出した。粗生成物は、赤色油として分離した。明るいピンク色のヘキサン溶液を廃棄し、赤色油状残留物をTHF中に再溶解させ、ヘキサンを用いて2度目の抽出をした。
【0052】
その後、赤色油をCHCl(10mL)中に溶解させ、臭化フェニルジベンゾチオフェニウムの水溶液(PDBTBr;1.34g、3.94mmol、30mLの脱イオン水中に溶解)を加え、この組み合わせ物を強力に振とうし、混合液を周囲温度で12時間撹拌した。水相は最初はピンク色であったが、無色になった。
【0053】
水相を除去し、有機相はDI水を用いて洗浄し(2×30mL)、MgSOで乾燥させ、回転蒸発させることによって溶媒を除去するとPAG官能化連鎖移動剤(CTA2)が粘稠赤色油として得られた。収率:2.24g(83.7%)。生成物は、Hおよび19F NMR分光法によって分析した。H NMR(400MHz,CDCl):δ8.16(dd,J=8.0Hz,J=26Hz,4H),7.80−7.90(m,4H),7.47−7.68(m,8H),7.35−7.40(m,2H),4.41(t,J=6.6Hz,2H),2.36−2.87(m,6H),1.91(s,3H).19F NMR(CDCl):−112.3(m,2F),−118.3(m,2F).
【0054】
PDBTカチオンを備えるPAG官能化CTAを含有する第3ポリマー(ポリマー実施例3)は、以下の手順にしたがって、スキーム5に示したよう調製した。
【0055】
【化22】
【0056】
全モノマー(PPMA:2.00g、9.79mmol;di−HFAMA:1.70g、3.41mmol;a−GBLMA:2.50g、14.7mmol)は、不活性雰囲気下で20mLバイアルへ移した。第2の20mLバイアルに9.3gの2:1(v/v)CHCN:THFの(40%固形分混合物を提供するために十分な)溶媒混合液を装填した。この溶媒混合液の約半分はモノマーを溶解させるためにモノマーに加え、モノマー溶液は直接的にオーブンで乾燥させた中性アルミナ(約2cm)のプラグに通して直接に新たなバイアルへろ過した。アルミナプラグは、残りの溶媒混合液を用いて溶出し、溶離液をバイアル内に採取した。CTA2の溶液(1.32g、0.881mmol、無水THF中の50wt%溶液)をモノマー含有バイアルに移すと、赤色の均質溶液が生成された。2,2’−アゾビス(メチル2−メチルプロピオネート)(V601開始剤、Wako社から入手可能;0.0406mL、0.176mmol)の溶液をモノマー溶液に加え、バイアルにキャップを嵌め、撹拌しながら26時間にわたり60℃へ加熱した。変換はアリコートの粗H NMR分光法に基づくと適正であると見なされ、ポリマーは90mLのジイソプロピルエーテル(i−PrO)内へ沈殿させ、ろ過し、40℃で一晩かけて真空下で乾燥させると5.9gのポリマーが産生した。ポリマーは、GPCによって分析した:Mn=6,300g/mol、Mw=7,100g/mol、PDI=1.12。
【0057】
ポリマー実施例3は、以下のようにジチオエステルRAFT末端基を除去するための条件下でさらに処理した。ポリマー(5.9g、0.931mmol)、V601開始剤(2.14g、9.31mmol)、およびラウロイルペルオキシド(0.742g、1.86mmol)を不活性雰囲気下で100mLの丸底フラスコ内で一緒にした。15gの無水CHCNを加え、全固体が完全に溶解するまで撹拌しながら加熱した。このフラスコを還流させるために80℃で強力に撹拌しながら2.5時間還流加熱された。その時点の後、色は明るい橙色に変化し、フラスコを加熱から取り外して室温に冷却した。硫黄を含有しないポリマーを150mLのi−PrO中に沈殿させ、オフホワイトの固体を明るいピンク色の溶液からろ過によって収集した。収集したポリマーをジエチルエーテル(2×10mL)を用いて洗浄すると、白色固体が得られた。この固体を40℃のN雰囲気および真空下で乾燥させると、4.5gのポリマーが産生した。GPC分析:Mn=7,100g/mol、Mw=8,300g/mol、PDI=1.18。13C NMR積分からの相対モノマー比;PPMA:32%、a−GBLMA:57%、di−HFA:11%。
【0058】
本明細書に開示した全範囲は、端点を含んでおり、端点は独立して互いに組み合わせることができる。「場合による」もしくは「場合によって」は、その後に記載される事象もしくは状況が発生する、または発生しない可能性があること、およびこの説明は事象が発生する場合および事象が発生しない場合を含むことを意味している。本明細書で使用する「組み合わせ」は、ブレンド、混合物、合金、または反応生成物を含んでいる。全参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0059】
さらに、本明細書の用語「第1」、「第2」などは任意の順序、量、または重要性を意味するものではなく、むしろ1つの要素を他の要素から区別するために使用される。