特許第5937554号(P5937554)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電産サンキョー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5937554-モータ 図000002
  • 特許5937554-モータ 図000003
  • 特許5937554-モータ 図000004
  • 特許5937554-モータ 図000005
  • 特許5937554-モータ 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5937554
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/167 20060101AFI20160609BHJP
   H02K 1/18 20060101ALI20160609BHJP
   H02K 21/22 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   H02K5/167 A
   H02K1/18 Z
   H02K21/22 M
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-189135(P2013-189135)
(22)【出願日】2013年9月12日
(62)【分割の表示】特願2008-304995(P2008-304995)の分割
【原出願日】2008年11月28日
(65)【公開番号】特開2013-252054(P2013-252054A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2013年9月12日
【審判番号】不服2015-8041(P2015-8041/J1)
【審判請求日】2015年4月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148301
【弁理士】
【氏名又は名称】竹原 尚彦
(72)【発明者】
【氏名】原田 隆司
(72)【発明者】
【氏名】藤嶋 真
【合議体】
【審判長】 藤井 昇
【審判官】 新海 岳
【審判官】 矢島 伸一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−225045(JP,A)
【文献】 特開2000−324748(JP,A)
【文献】 特開平10−243595(JP,A)
【文献】 実開昭55−173264(JP,U)
【文献】 実開昭58−143456(JP,U)
【文献】 実開昭63−17543(JP,U)
【文献】 実開平2−122554(JP,U)
【文献】 実開昭63−96650(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/167
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通穴を備えてその両端に軸受を保持し、モータ基板に対して垂直方向に配置された軸受ホルダと、
前記軸受ホルダの外周に結合したステータと、
前記軸受ホルダの軸受に支持され前記貫通穴を貫通するシャフト、該シャフトの前記モータ基板と反対側の端に結合されたロータケース、および該ロータケースの内周面に前記ステータの外周面に対向させて設けられたマグネットを備えるロータと、を有し、
前記軸受ホルダの前記モータ基板側では、前記ステータの軸方向の位置決めをするための段差が径方向に張り出して形成されており、
前記ステータは、ステータコアに巻かれたコイルを含んで当該ステータコアの前記モータ基板側の端面を樹脂でモールドした第1の樹脂ブロックを備えるとともに、前記ステータコアおよび前記第1の樹脂ブロックを通して内周面が面一の中心穴を有しており、
前記軸受ホルダは、前記段差を前記樹脂ブロックに当接させた状態で、前記中心穴に圧入されており、
前記軸受ホルダにおける前記ステータの圧入位置と、前記軸受ホルダにおける前記軸受の保持位置とが、前記軸受ホルダの軸方向にオフセットしており、
前記モータ基板は、前記軸受ホルダを貫通させる穴を有すると共に、当該穴の穴縁は、前記径方向で前記軸受ホルダに間隔を置いて対向しており、
前記モータ基板は、前記垂直方向に延びると共に前記径方向に張り出す段差部を有するピンを前記穴縁に備えており、
前記モータ基板は、前記ピンと一体に形成されていると共に、前記ステータに設けた孔に圧入された前記ピンの前記段差部を前記第1の樹脂ブロックの下端面に当接させた状態で、前記ステータに連結されており、
前記ピンが圧入される前記孔は、前記第1の樹脂ブロックを貫通して前記ステータコアに及ぶ長さで形成されており、
前記第1の樹脂ブロックの下端面を前記モータ基板に設けた前記ピンの前記段差部に当接させることにより、前記第1の樹脂ブロックの下端面と前記モータ基板とが、隙間を介して対向配置されるように、前記ステータの軸方向の位置決めがされている
ことを特徴とするモータ。
【請求項2】
前記軸受ホルダにおける前記モータ基板とは反対側の前記軸受を保持する部位は、前記径方向で前記ステータに間隙を置いて対向していることを特徴とする請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記ステータコアは、前記軸受ホルダにおける前記モータ基板とは反対側の前記軸受と、前記軸方向において重なっていることを特徴とする請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
前記軸受ホルダにおける前記ステータが圧入される部位の外周と、前記中心孔の内周のうちの一方に、前記軸方向に沿うキー溝を設けると共に、他方に、前記軸方向に沿うキーリブを設け、
前記キー溝を前記キーリブに沿わせて圧入することで、前記ステータを前記軸受ホルダに結合させたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1に記載のモータ。
【請求項5】
前記樹脂がBMCであることを特徴とする請求項1から4の何れか1に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータを支持する軸受を軸受ホルダに保持するとともに、ステータを軸受ホルダに固定した構成のモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のモータ構造として、特許文献1に開示されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−108404号公報
【0004】
特許文献1のモータ構造では、モータ基板に取り付けられた軸受ホルダの外周に、ステータが圧入されて取り付けられている。
軸受ホルダには、その長手方向に貫通して貫通孔が形成されており、貫通孔の長手方向における両端に設けた軸受で、貫通孔に挿入されたロータのシャフトが回転可能に支持されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電気安全面での法規制により、露出するコイルなどの電線と周辺の金属部材との間に所定の間隙を設ける必要がある。上記のようなモータ構造では、シャフトの回転軸方向で隣接するモータ基板とステータとの間に、間隙を設ける必要があり、モータが、隙間の分だけ回転軸方向に大きくなってしまう。
そのため、特許文献1のモータ構造では、回転軸方向の大きさを抑えるために、軸受の径方向外側に、軸受ホルダに圧入されるステータが位置しており、圧入による影響が軸受に及んでしまう。
【0006】
したがって本発明は、上記の問題点に鑑み、高い構造精度で小型化が可能なモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため本発明のモータは、
貫通穴を備えてその両端に軸受を保持し、モータ基板に対して垂直方向に配置された軸受ホルダと、
前記軸受ホルダの外周に結合したステータと、
前記軸受ホルダの軸受に支持され前記貫通穴を貫通するシャフト、該シャフトの前記モータ基板と反対側の端に結合されたロータケース、および該ロータケースの内周面に前記ステータの外周面に対向させて設けられたマグネットを備えるロータと、を有し、
前記軸受ホルダの前記モータ基板側では、前記ステータの軸方向の位置決めをするための段差が径方向に張り出して形成されており、
前記ステータは、ステータコアに巻かれたコイルを含んで当該ステータコアの前記モータ基板側の端面を樹脂でモールドした第1の樹脂ブロックを備えるとともに、前記ステータコアおよび前記第1の樹脂ブロックを通して内周面が面一の中心穴を有しており、
前記軸受ホルダは、前記段差を前記樹脂ブロックに当接させた状態で、前記中心穴に圧入されており、
前記軸受ホルダにおける前記ステータの圧入位置と、前記軸受ホルダにおける前記軸受の保持位置とが、前記軸受ホルダの軸方向にオフセットしており、
前記モータ基板は、前記軸受ホルダを貫通させる穴を有すると共に、当該穴の穴縁は、前記径方向で前記軸受ホルダに間隔を置いて対向しており、
前記モータ基板は、前記垂直方向に延びると共に前記径方向に張り出す段差部を有するピンを前記穴縁に備えており、
前記モータ基板は、前記ピンと一体に形成されていると共に、前記ステータに設けた孔に圧入された前記ピンの前記段差部を前記第1の樹脂ブロックの下端面に当接させた状態で、前記ステータに連結されており、
前記ピンが圧入される前記孔は、前記第1の樹脂ブロックを貫通して前記ステータコアに及ぶ長さで形成されており、
前記第1の樹脂ブロックの下端面を前記モータ基板に設けた前記ピンの前記段差部に当接させることにより、前記第1の樹脂ブロックの下端面と前記モータ基板とが、隙間を介して対向配置されるように、前記ステータの軸方向の位置決めがされている
ことを特徴とするモータとした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、軸受ホルダにおけるステータの圧入位置と、軸受ホルダにおける軸受の保持位置とが、軸受ホルダの軸方向にオフセットしているので、圧入による影響が、軸受に及ぶことを好適に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施例にかかるモータの断面図である。
図2】第1の実施例の分解断面図である。
図3】ステータの外観を示す斜視図である。
図4】モータ基板を示す拡大斜視図である。
図5】第2の実施例にかかるモータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の実施の形態を実施例により詳細に説明する。
図1は第1の実施例にかかるモータの断面図、図2はその分解図である。ただし、図2にはモータ基板は省略している。
モータ1は、軸受ホルダ10にステータ20を圧入する一方、ロータ30を支持させ、さらにステータ20をモータ基板2に固定して構成されている。
ステータ20はステータコア21の所定範囲を絶縁材22でカバーした上にコイル23を巻いてあり、このコイル23を樹脂で覆ってステータコア21の上下端面にモールドされた樹脂ブロック24、25を備えている。
絶縁材22はシート状のものを巻きつけてもよく、あるいはステータコア21の外周を覆うように形成された樹脂成形品を被せてもよい。
樹脂ブロック24、25の樹脂材としては、とくに不飽和ポリエステル樹脂を基材とするBMC(Bulk Molding Compound)が好ましい。
【0011】
ステータコア21は公知のように放射状に延びる複数の突極部にコイル23を巻いてあるので、上下の樹脂ブロック24、25は突極部間において互いにつながって一体となっている。
樹脂ブロック24、25の径方向外周面24a、25aは、ステータコア21の外周面21aと面一に整合している。したがって、ステータ20の外周面は全体として一つの円筒面をなし、ステータコア21が上下の樹脂ブロック24、25に挟まれた形態となっている。
【0012】
また、樹脂ブロック24、25の内周面24b、25bもステータコア21の内周面21bと面一に整合して全体として一面をなし、ステータコア21が上下の樹脂ブロック24、25に挟まれた状態で、全体としてステータ20の円筒状の中心穴26を構成している。これによりステータ20は、図3に示すように、全体としてドーナツ状の外観を呈する。
ステータ20の下面には、中心穴26の周囲に沿って、周方向に例えば等間隔など任意の間隔で3箇所の孔27がそれぞれ樹脂ブロック25からステータコア21にかけて形成されている。
【0013】
上述のようにステータコア21とコイル23と樹脂ブロック24、25とが一体となったステータ20は、その中心穴26を軸受ホルダ10に圧入されている。
軸受ホルダ10は、基部11、ステータ圧入部12、および先端の小径部13からなり、基部11はステータ圧入部12よりも大径に形成されて、基部11とステータ圧入部12の間に段差14が形成され、ステータ圧入部12と小径部13の間にも段差15が形成されている。
【0014】
軸受ホルダ10はロータ30のシャフト31を通す貫通穴16を有し、基部11の内周側には軸受を保持するために用いる環状の取付凹部17を備え、先端側の小径部13の内周側にも同様に環状の取付凹部18を備えている。すなわち、取付凹部17、18はいずれも軸方向においてステータ圧入部12と重ならず、ステータ圧入部12両端の段差14、15の位置からそれぞれわずかに離間している。
これらの取付凹部17、18にそれぞれ軸受64、65が保持される。
【0015】
ステータ20は樹脂ブロック25側からその中心穴26を軸受ホルダ10の小径部13に差し込み、ステータ圧入部12方向へ挿入する。樹脂ブロック25の下端面が基部11とステータ圧入部12の間の段差14に突き当たるまで挿入することにより、ステータ20がステータ圧入部12に圧入状態となり、軸受ホルダ10とステータ20相互間が軸方向に位置決めされる。
この際、ステータ圧入部12がステータ20と最初に接触するのは樹脂ブロック25の穴縁であるため、段差15部分の角が削り落とされたり、ステータ圧入部12の外周面が削られてその削り屑が発生することはない。
【0016】
なお、とくに図示しないが、ステータコア21と上下の樹脂ブロック24、25を通してステータ20の中心穴26の内周面には軸方向のキー溝が設けられ、軸受ホルダ10のステータ圧入部12にはこれに対応する軸方向のキーリブが設けられて、キー溝をキーリブに沿わせてステータ20を圧入することにより、周方向(回転方向)も位置決めされるので、ステータ20と軸受ホルダ10間が回り止めされる。
なお、キーリブとキー溝の設定は逆でもよく、キーリブをステータ20の中心穴26に、そしてキー溝を軸受ホルダ10のステータ圧入部12に設けてもよい。
【0017】
モータ基板2は樹脂製で、ステータ連結部2aとコネクタ部2bとからなる。
とくに図4に示すように、ステータ連結部2aは軸受ホルダ10の基部11を貫通させる穴3を有するとともに、その穴縁に沿って周方向等間隔に3本の一体成形のピン4を備えている。ピン4は根元側の大径部4aとその先の細長い小径部4bとからなっている。
各ピン4の位置はステータ20の孔27に対応しており、穴3に軸受ホルダ10の基部11を貫通させながらピン4の小径部4bを、大径部4aとの段差部が樹脂ブロック25に当接するまで、ステータ20の孔27に圧入することにより、モータ基板2がステータ20と連結される。
【0018】
これにより、ステータ連結部2aはステータ20の軸方向に対して垂直な平面配置となり、換言すれば、軸受ホルダ10はステータ20を介してモータ基板2に対して垂直となる。
なお、ステータ20の孔27は樹脂ブロック25からステータコア21の両方にかけてピン4が圧入されるように設定するのが好ましいが、少なくともピン4がステータコア21と圧入関係となるようにするのがよい。
【0019】
コネクタ部2bはステータ連結部2aの平面延長方向に開口するソケット部36を備える。ソケット部36内にはコネクタ端子37が突出して設けられるとともに、コネクタ端子37はステータ連結部2a方向へソケット部36外に延びたあと下方へL字型に折り曲げられて、コイル23から引き出された配線23aとの接続端子38となっている。
配線23aはモータ基板2の接続端子38近傍の位置で樹脂ブロック25から引き出されるように、樹脂ブロック24、25のモールド時に設定されている。
【0020】
ロータ30は、シャフト31と、シャフト31を軸心とする金属製のロータケース32を有する。
ロータケース32は、シャフト31に圧入された円盤部33と円盤部33の外周縁からシャフト31と平行に延びる筒壁34とからなる有底カップ状に形成されており、筒壁34の内面には接着等によりマグネット35を固定してある。
【0021】
とくに図1に示すように、ステータ20の中心穴26の内周面は、樹脂ブロック25を段差14に突き当てた状態で、下側の当該樹脂ブロック25とステータコア21の相当部分がステータ圧入部12上にあり、上側の樹脂ブロック24とステータコア21の一部は小径部13と間隙を置いて対向している。
ロータ30は、そのシャフト31を上方から軸受ホルダ10の軸受65、貫通穴16および軸受64を通して挿し込み、これによりロータケース32の筒壁34がステータ20の外周を囲むように位置させており、このような状態でマグネット35の内周面とステータコア21の外周面とが所定の間隙を介して対向配置されている。
【0022】
ロータ30の円盤部33と軸受65の間にはシャフト31上に第1スラストワッシャ7と第2スラストワッシャ8が設けられている。第1スラストワッシャ7はシャフト31に圧入で固定される一方、第2スラストワッシャ8はシャフト31に対して遊嵌状態とされ、第1スラストワッシャ7と軸受65の間の磨耗軽減を図っている。
この状態で、ロータ30の筒壁34の内面に固定してあるマグネット35は、ステータコア21の外周面のみでなく、その上下両側の樹脂ブロック24、25ともそれらの高さの大部分と、一定間隙で対向している。
【0023】
ここで、コイル23とロータ30の円盤部33間の間隙は、コイル23が樹脂ブロック24内にモールドされているため露出していないから、法規制に沿った間隙Sよりも小さく設定される。同様に、コイル23とモータ基板2間の間隙も小さく設定される。
なお、コイル23の配線23aはモータ基板2の接続端子38近傍の位置で樹脂ブロック25から引き出されるように、樹脂ブロック24、25のモールド時に設定されている。
【0024】
本実施例では、樹脂ブロック25が発明における第1の樹脂ブロックに該当し、樹脂ブロック24が第2の樹脂ブロックに該当する。また、段差14が発明における段差に該当する。
【0025】
本実施例のモータ1は以上のように構成され、
軸受ホルダ10は、モータ基板2側に径方向に張り出す段差14を有し、ステータ20は、ステータコア21に巻かれたコイル23を含んで当該ステータコア21のモータ基板2側の端面を樹脂でモールドした樹脂ブロック25を備えるとともに、ステータコア21および樹脂ブロック25を通して内周面が面一の中心穴26を有しており、
ステータ20は、樹脂ブロック25が段差14に当接するまで、中心穴26に軸受ホルダ10に圧入して、軸受ホルダ10に結合されており、
軸受ホルダ10におけるステータ20の圧入位置と、軸受ホルダ10における軸受65の保持位置とが、軸受ホルダ10の軸方向にオフセットしている構成とし、
モータ基板2は、軸受ホルダ10を貫通させる穴3を有すると共に、当該穴3の穴縁は、径方向で軸受ホルダ10の基部11に間隔を置いて対向しており、
モータ基板2は、垂直方向に延びるピン4を穴縁に備えると共に、ピン4をステータ20に設けた孔27に圧入して、ステータ20に連結されており、
ピン4が圧入される孔27は、樹脂ブロック25を貫通してステータコア21に及ぶ長さで形成されている構成とした。
【0026】
このように構成すると、ステータ20のコイル23とモータ基板2間の間隙をコイル23が露出している場合の法規制に沿う間隙(S)よりも小さくすることができ、モータ1の軸方向サイズを小型化できる。
さらに、圧入による影響が、軸受65に及ぶことを好適に防止できる。
【0027】
特に、軸受ホルダ10におけるモータ基板2側の軸受64を保持する部位(基部11)が、軸受ホルダ10の径方向でモータ基板2に間隙を置いて対向している構成にすると共に、モータ基板2に設けたピン4を、ステータ20に設けた孔27に圧入して、モータ基板2をステータ20に位置決めする構成としたので、軸受ホルダ10の基部11にモータ基板2を圧入して位置決めする場合に比べて、圧入による影響が軸受64に及ぶことを好適に防止できる。
【0028】
軸受ホルダ10におけるモータ基板2とは反対側の軸受65を保持する部位は、軸受ホルダ10の径方向でステータ30に間隙を置いて対向している構成としたので、このことによっても、圧入による影響が軸受65に及ぶことを好適に防止できる。
【0029】
軸受ホルダ10におけるステータ20が圧入される部位の外周と、中心穴26の内周のうちの一方に、軸受ホルダ10の軸方向に沿うキー溝を設けると共に、他方に、軸方向に沿うキーリブを設け、キー溝をキーリブに沿わせて圧入することで、ステータを軸受ホルダに結合させる構成としたので、キー溝をキーリブに沿わせてステータ20を圧入することにより、周方向(回転方向)も位置決めされるので、ステータ20と軸受ホルダ10間が回り止めされる。
【0030】
また、ステータ20を軸受ホルダ10に圧入する際、ステータ20の圧入方向先端が樹脂ブロック25であるため、その中心穴26の穴縁で軸受ホルダ10の外周面を削ることがない。したがって削り屑が段差14部分に溜まってステータ20が軸受ホルダ10の段差14に当接するのを邪魔することもないから、軸受ホルダ10とステータ20間の正確な位置決めができる。
【0031】
ステータ20は、さらにモータ基板2側と反対側の端面を樹脂でモールドした樹脂ブロック24も備えるので、ステータ20のコイル23とロータ30のロータケース32(円盤部33)間の間隙も小さくすることができ、モータ1の軸方向サイズを一層小型化することができる。
これにより、軸受ホルダ10の長さが短くなるに加えて、ステータコア21とコイル23を樹脂ブロック24、25にモールドしたことにより、樹脂ブロック24、25自体も従来のステータコアに重ねた絶縁体ボビン42、43よりも軸方向のサイズを小さくできる。
【0032】
なお、この結果、上側においてステータコア21が軸受65の略半分と軸方向において重なっているが、前述のように、ステータ圧入部12は軸受65を保持する取付凹部18と重なっていないので、軸受65に影響を及ぼさない。
さらに、下側でも圧入されるステータ20の端部が樹脂ブロック25であるため、ステータ20を突き当てる段差14を軸方向において取付凹部17に接近した位置に設定しても軸受64に影響を与えないので、この面でもモータ1の軸方向のサイズが小さくなっている。
【0033】
そして、樹脂ブロック24と樹脂ブロック25は一体につながっているから、樹脂ブロック24、25がステータコア21から剥がれるおそれもない。
同じく、樹脂ブロック24、25とステータコア21、コイル23が一体にモールドされ、全体として円筒状の外形を有しているので、形状精度の高いステータ20を形成することができる。したがって、上記精度向上により、ステータ20の外周面とマグネット35間の間隙を小さく設定することができるから、モータの軸方向サイズの小型化に加えて径方向サイズもより小型化できる。
【0034】
また、樹脂ブロック24、25をBMCで形成しているので、エポキシによるポッティングが例えば硬化時間が1〜2時間、線膨張係数が(3〜7)×10-5/℃であるのに対して、硬化時間が90〜300secで工程時間が短縮されるとともに、線膨張係数が(1〜4)×10-5/℃と小さくなって冷熱衝撃にも強いものとなっている。
【0035】
つぎに第2の実施例について説明する。これは第1の実施例に対して、ステータの構成を異ならせたものである。
図5は第2の実施例の断面図である。
第1の実施例におけるステータ20は、ステータコア21を上下の樹脂ブロック24、25で挟んでモールドし、ステータコア21の内周面および外周面は露出させていたが、第2の実施例のモータ1'では、ステータ20Aは、ステータコア21'の全表面をBMC樹脂で覆って、これにより上下の樹脂ブロック24、25と一体で連続する内周樹脂壁28および外周樹脂壁29をも有する構成としている。
その他の構成は第1の実施例と同じである。
本実施例でも、樹脂ブロック25が発明における第1の樹脂ブロックに該当し、樹脂ブロック24が第2の樹脂ブロックに該当する。また、段差14が発明における段差に該当する。
【0036】
本実施例によれば、ステータコア21'が完全に樹脂内に埋め込まれ、ステータ20Aの外観はドーナツ状の樹脂の塊である。この結果、ステータ20Aの上下端面、外周面および中心穴の内周面はすべて樹脂モールドの成形型により高い寸法精度をもつものとなっている。
したがって、第1の実施例に対して、さらにステータ20Aの上端面とロータ30の円盤部33間の間隙、ステータ20Aの下端面とモータ基板2間の間隙、およびステータ20Aの外周面とマグネット35間の間隙も、それぞれ一層小さく設定することができて、モータ1'の軸方向サイズをより小型化できる。
【0037】
また、ステータ20Aの中心穴26の内周面がステータコア21'の軸方向全長にわたって内周樹脂壁28となっているので、軸受ホルダ10に圧入されたとき、ステータコアが直接圧入された場合に局部的な集中加重が及ぼされるのと比較して、ステータ圧入部12に対する圧縮力の局部性が緩和され、平準化される。したがって、軸受ホルダ10のステータ圧入部12の肉厚を薄く(すなわち、ステータ圧入部12の外径を細く)しても軸受64、65の取付凹部17、18に変形をもたらさないので、モータ1'の径方向もさらに小型化できるという利点を有する。
同じく、ステータコア21'が完全に樹脂内に埋め込まれているので、錆の発生が防止されるとともに、BMCの材質特性に基づく放熱効果による発熱ロスの低減が得られる。
そしてさらに、ステータコア21'の電磁振動による騒音の放出も低減されるという利点を有する。
【0038】
なお、各実施例では回転するロータに対する固定側へのモータ基板2の取り付けを、モータ基板2に設けたピン4をステータ21(21')の孔27に圧入して結合するものとしたが、これに限らず、軸受ホルダの基部にモータ基板を結合したり、あるいはさらに、モータ基板を軸受ホルダと一体に成形することもできる。
【0039】
また、接続端子38と配線23aの接続部を除いてモータ基板2上の回路配線部分、あるいはモータ基板2全体をBMCでカバーしてもよく、これにより一層の電気的安全性を向上させることができる。
さらに、第2の実施例では、ステータ20Aが内周樹脂壁28および外周樹脂壁29の双方を備えてステータコア21'が完全に樹脂内に埋め込まれたものとしたが、内周樹脂壁28と外周樹脂壁29は仕様要求に応じてそのいずれか一方のみを備えるものとしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1、1' モータ
2 モータ基板
2a ステータ連結部
2b コネクタ部
3 穴
4 ピン
10 軸受ホルダ
11 基部
12 ステータ圧入部
13 小径部
14、15 段差
16 貫通穴
17、18 取付凹部
20、20A ステータ
21、21' ステータコア
22 絶縁材
23 コイル
24、25 樹脂ブロック
26 中心穴
27 孔
28 内周樹脂壁
29 外周樹脂壁
30 ロータ
31 シャフト
32 ロータケース
33 円盤部
34 筒壁
35 マグネット
36 ソケット部
37 コネクタ端子
38 接続端子
64、65 軸受
図1
図2
図3
図4
図5