特許第5937571号(P5937571)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5937571エマルション型粘着剤組成物及び再剥離性粘着シート
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  • 特許5937571-エマルション型粘着剤組成物及び再剥離性粘着シート 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5937571
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】エマルション型粘着剤組成物及び再剥離性粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/08 20060101AFI20160609BHJP
   C09J 133/02 20060101ALI20160609BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20160609BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   C09J133/08
   C09J133/02
   C09J11/08
   C09J7/02 Z
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-507546(P2013-507546)
(86)(22)【出願日】2012年3月26日
(86)【国際出願番号】JP2012057700
(87)【国際公開番号】WO2012133273
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2014年12月24日
(31)【優先権主張番号】特願2011-74232(P2011-74232)
(32)【優先日】2011年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108419
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 治仁
(72)【発明者】
【氏名】山岸 正憲
(72)【発明者】
【氏名】池田 文徳
【審査官】 西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−163127(JP,A)
【文献】 特開2008−007693(JP,A)
【文献】 特開2000−319618(JP,A)
【文献】 特開2010−070699(JP,A)
【文献】 特開2010−280835(JP,A)
【文献】 特開2010−280836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2−エチルヘキシルアクリレート、メチルアクリレート及びエチレン性不飽和カルボン酸を含む単官能単量体混合物と、多官能単量体とからなる全単量体混合物に対して、
2−エチルヘキシルアクリレートの含有量が70〜97質量%、メチルアクリレートの含有量が1〜15質量%、及びエチレン性不飽和カルボン酸の含有量が0.1〜15質量%である単官能単量体混合物と、
多官能単量体としてのペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートと
を乳化重合して得られるアクリル系共重合体(A)、並びに、
軟化点が80〜170℃であるロジン系粘着付与樹脂(B)を含むエマルション型粘着剤組成物であって、
ロジン系粘着付与樹脂(B)の添加量が、全単量体混合物100質量部に対して、固形分換算で、1〜9質量部であることを特徴とするエマルション型粘着剤組成物。
【請求項2】
前記多官能単量体の含有量が、全単量体混合物に対して、0.05〜0.5質量%である
請求項1に記載のエマルション型粘着剤組成物。
【請求項3】
さらに、軟化点が25℃以下の粘着付与樹脂(C)(ロジン系粘着付与樹脂(B)を除く。)を含むエマルション型粘着剤組成物であって、
ロジン系粘着付与樹脂(B)と軟化点が25℃以下の粘着付与樹脂(C)の質量比(ロジン系粘着付与樹脂(B):軟化点が25℃以下の粘着付与樹脂(C))が1:2〜3:1である
請求項1に記載のエマルション型粘着剤組成物。
【請求項4】
さらに、軟化点が100〜140℃のテルペン系粘着付与樹脂(D)を含むエマルション型粘着剤組成物であって、
ロジン系粘着付与樹脂(B)と軟化点が100〜140℃のテルペン系粘着付与樹脂(D)の質量比(ロジン系粘着付与樹脂(B):軟化点が100〜140℃のテルペン系粘着付与樹脂(D))が、1:3〜3:1である
請求項1に記載のエマルション型粘着剤組成物。
【請求項5】
基材と粘着剤層とを有する再剥離性粘着シートであって、
前記粘着剤層が、請求項1〜4のいずれか1項に記載のエマルション型粘着剤組成物を用いて得られたものであることを特徴とする再剥離性粘着シート。
【請求項6】
タイヤ貼付用の請求項5に記載の再剥離性粘着シート。
【請求項7】
タイヤのトレッド部貼付用の請求項5に記載の再剥離性粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの表示ラベル等を製造する際に好適に用いられるエマルション型粘着剤組成物及び当該粘着剤組成物を用いる再剥離性粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
商品表示ラベルは、商品名やその他の情報を伝えるために商品等に付されるものである。従来、かかる商品表示ラベルとして、基材上に粘着剤層等を有する粘着シートが広く利用されている。
このような粘着シートには、商品の流通時においては高い粘着力が求められるが、最終的には比較的容易に剥離でき、糊残りが生じないという特性が求められる。
従って、これらの特性が要求される粘着シートにおいては、粘着シートを構成する粘着剤や接着剤などについて、これまでにも様々な検討が行われてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、特定の、アクリル系乳化重合体、陰イオン乳化剤及び非イオン乳化剤から構成される感圧接着剤組成物が開示されている。
また、特許文献2には、特定の、アクリル酸エステル、アクリロニトリル及びα,β−不飽和カルボン酸をアニオン性反応性乳化剤の存在下で乳化重合して得られるアクリルエマルションを含有するアクリルエマルション型感圧接着剤が開示されている。
【0004】
このように、これまでにも粘着剤や粘着シートの性能向上が図られてきたが、被着体の種類によっては、粘着力が十分ではないことがあった。
例えば、タイヤの表示ラベルは、メーカー名、ブランド名、サイズ等が記載され、タイヤのトレッド面に貼付されるが、タイヤのトレッド面には非常に大きな凹凸があることと、さらに、タイヤのトレッド面には、タイヤ成形時に使用される金型の空気抜き口が原因で形成される「スピュー」と呼ばれるヒゲ状突起物が存在するため、接着面積はかなり小さくなる。このようなタイヤ特有の形状は、粘着シートの粘着力を大きく低下させるため、上記文献に記載の接着剤を用いる粘着シートをタイヤのトレッド面に貼付した場合、粘着力が十分でなく剥がれ易くなる。特に、冬場等の低温時においては一般に粘着剤の粘着力が低下する傾向があり、低温時に粘着シートが剥がれ易くなるという問題があった。
【0005】
従来、タイヤ貼付用の粘着シートにおいては、ゴム溶剤系粘着剤が多く用いられてきた。しかしながら、ゴム溶剤系粘着剤を用いる粘着シートは、有機溶剤を多く使用するものであるため、環境に負荷をかけるという問題があった。また、タイヤに対する粘着力を高めるために粘着剤を多量に使用し、粘着剤層の凝集力を低くしたものであるため、剥離後において糊残りの問題もあった。さらには、粘着シートにラベル加工を施す際、切断機のカッターや印刷機のガイド等に粘着剤が付着し、粘着シート等を汚染するという問題もあった。この汚染の問題は、全面塗布方法から部分塗布方法(切断予定箇所には粘着剤が存在しないように、部分的に塗布する方法)に代えることで解消できるが、この場合、生産効率が大きく低下することになる。
【0006】
また、近年においては、ゴム溶剤系粘着剤に代わる新たな粘着剤を用いるタイヤ貼付用の粘着シートも提案されている。例えば、特許文献3には、特定のアクリル系樹脂に液状粘着付与樹脂を配合し、架橋させてなる粘着剤層を有する粘着シートが開示されている。しかしながら、この粘着シートも、粘着剤層も粗面に対する粘着力を高めるために凝集力を低くしたものであり、糊残りの問題を有するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−71563号公報
【特許文献2】特開2000−119617号公報
【特許文献3】特開2000−319618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
タイヤのトレッド面のような粗面に対する粘着力を高めるためには、特許文献3に記載されるように粘着剤層の凝集力を低くする方法が考えられる。しかしながら、このような粘着シートは、剥離後の糊残りの問題や製造時における汚染の問題を引き起こしやすい。したがって、粘着剤層の凝集力を低くすることなく、粗面に対しても高い粘着力を有する粘着シートや、このような粘着シートの粘着剤層を形成できる粘着剤組成物が望まれていた。
【0009】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、粗面に対する高い粘着力と十分な凝集力を有し、かつ、低温時においても優れた粘着性能が維持される粘着剤組成物と、この粘着剤組成物を用いる再剥離性粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルアクリレート及びエチレン性不飽和カルボン酸を特定割合で含む単官能単量体混合物と多官能単量体とを乳化重合して得られるアクリル系共重合体(A)、及び、ロジン系粘着付与樹脂(B)を含有するエマルション型粘着剤組成物は、粗面に対する高い粘着力と十分な凝集力を有し、かつ、低温時においても優れた粘着性能が維持されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
かくして本発明の第1によれば、下記(1)〜(4)のエマルション型粘着剤組成物が提供される。
(1)2−エチルヘキシルアクリレート、メチルアクリレート及びエチレン性不飽和カルボン酸を含む単官能単量体混合物と、多官能単量体とからなる全単量体混合物に対して、2−エチルヘキシルアクリレートの含有量が70〜97質量%、メチルアクリレートの含有量が1〜15質量%、及びエチレン性不飽和カルボン酸の含有量が0.1〜15質量%である単官能単量体混合物と、多官能単量体とを乳化重合して得られるアクリル系共重合体(A)、並びに、ロジン系粘着付与樹脂(B)を含むエマルション型粘着剤組成物であって、ロジン系粘着付与樹脂(B)の添加量が、全単量体混合物100質量部に対して、固形分換算で、1〜9質量部であることを特徴とするエマルション型粘着剤組成物。
【0012】
(2)前記多官能単量体の含有量が、全単量体混合物に対して、0.05〜0.5質量%である(1)に記載のエマルション型粘着剤組成物。
(3)さらに、軟化点が25℃以下の粘着付与樹脂(C)(ロジン系粘着付与樹脂(B)を除く。)を含むエマルション型粘着剤組成物であって、ロジン系粘着付与樹脂(B)と軟化点が25℃以下の粘着付与樹脂(C)の質量比(ロジン系粘着付与樹脂(B):軟化点が25℃以下の粘着付与樹脂(C))が1:2〜3:1である(1)に記載のエマルション型粘着剤組成物。
(4)さらに、軟化点が100〜140℃のテルペン系粘着付与樹脂(D)を含むエマルション型粘着剤組成物であって、ロジン系粘着付与樹脂(B)と軟化点が100〜140℃のテルペン系粘着付与樹脂(D)の質量比(ロジン系粘着付与樹脂(B):軟化点が100〜140℃のテルペン系粘着付与樹脂(D))が、1:3〜3:1である(1)に記載のエマルション型粘着剤組成物。
【0013】
本発明の第2によれば、下記(5)〜(7)の再剥離性粘着シートが提供される。
(5)基材と粘着剤層とを有する再剥離性粘着シートであって、前記粘着剤層が、(1)に記載のエマルション型粘着剤組成物を用いて得られたものであることを特徴とする再剥離性粘着シート。
(6)タイヤ貼付用の(5)に記載の再剥離性粘着シート。
(7)タイヤのトレッド部貼付用の(5)に記載の再剥離性粘着シート。
【発明の効果】
【0014】
本発明のエマルション型粘着剤組成物から得られた粘着剤層を有する再剥離性粘着シートは、粗面に対しても高い粘着力を有するため、タイヤのような粘着しにくい粗面を有する被着体に対しても優れた粘着力を有する。特に、この粘着シートは、低温条件下においてもその粘着力が維持されるため、冬場や寒冷地においても好適に用いられる。
また、本発明の粘着剤組成物を用いて得られる粘着剤層は十分な凝集力を有するため、粘着シートを剥離した後に糊残りが生じにくい。
さらに、全面塗布法により再剥離性粘着シートを製造する場合であっても、切断機のカッターや印刷機のガイド等に粘着剤組成物が付着し、粘着シート等を汚染することがない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例(はみ出し試験)で用いた試験片の形状である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を、1)エマルション型粘着剤組成物、及び、2)再剥離性粘着シートに項分けして説明する。
なお、以下の説明において、「高い粘着力を有する粘着剤層を形成できる粘着剤組成物」を「高い粘着力を有する接着剤組成物」、「高い凝集力を有する粘着剤層を形成できる粘着剤組成物」を「高い凝集力を有する接着剤組成物」のように省略して記載することがある。また、他の特性についても同様に省略して記載することがある。
【0017】
1)エマルション型粘着剤組成物
本発明のエマルション型粘着剤組成物は、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルアクリレート及びエチレン性不飽和カルボン酸を含む単官能単量体混合物と、多官能単量体からなる全単量体混合物(以下、「全単量体混合物」という。)に対して、2−エチルヘキシルアクリレートの含有量が70〜97質量%、メチルアクリレートの含有量が1〜15質量%、及びエチレン性不飽和カルボン酸の含有量が0.1〜15質量%である単官能単量体混合物と、多官能単量体とを乳化重合して得られるアクリル系共重合体(A)、並びに、ロジン系粘着付与樹脂の添加量が、全単量体混合物100質量部に対して、固形分換算で、1〜9質量部であることを特徴とする。
本発明のエマルション型粘着剤組成物は、アクリル系共重合体(A)及び粘着付与樹脂(B)が、後述する水系溶媒中に分散されてなる分散液である。
【0018】
[アクリル系共重合体(A)]
本発明に用いるアクリル系共重合体(A)は、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルアクリレート及びエチレン性不飽和カルボン酸を特定割合で含む単官能単量体混合物と多官能単量体とを乳化重合して得られるものである。
【0019】
エチレン性不飽和カルボン酸は、1分子中に少なくとも1つのカルボキシル基と1つの重合性不飽和結合を有する化合物である。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられる。
エチレン性不飽和カルボン酸は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、入手容易性、重合性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
【0020】
2−エチルヘキシルアクリレート、メチルアクリレート及びエチレン性不飽和カルボン酸を特定割合で組み合わせて使用することで、粘着力、凝集力及び再剥離性のバランスに優れる粘着剤組成物を得ることができる。
【0021】
単官能単量体混合物中の各単量体の含有量は、全単量体混合物に対して、2−エチルヘキシルアクリレートが70〜97質量%、メチルアクリレートが1〜15質量%、エチレン性不飽和カルボン酸0.1〜15質量%であり、好ましくは、それぞれ75〜95質量%、3〜13質量%、0.2〜10質量%である。
単官能単量体をこのような割合で含有する単官能単量体を用いることで、粘着力に優れ、かつ、良好な機械的安定性及び塗工性を有する粘着剤組成物を与えるアクリル系共重合体(A)を得ることができる。
【0022】
前記単官能単量体混合物は、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルアクリレート及びエチレン性不飽和カルボン酸に加えて、本発明の効果を妨げない限り、これらの単量体以外の他のエチレン性不飽和単量体を含有していてもよい。
【0023】
前記他のエチレン性不飽和単量体としては、2−エチルヘキシルアクリレートとメチルアクリレート以外の、(メタ)アクリル酸エステル、水酸基を含有する(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、スチレン等が挙げられる。
2−エチルヘキシルアクリレートとメチルアクリレート以外の(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチルメタクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等が挙げられる。
水酸基を含有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
これらの他のエチレン性不飽和単量体は、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
他のエチレン性不飽和単量体の含有量は、全単量体混合物に対して、0〜20質量%が好ましく、0〜15質量%がより好ましい。
【0024】
多官能単量体は、分子内に、2以上の重合性基を有する化合物であり、2以上の重合性不飽和基(炭素−炭素二重結合)を有する化合物が好ましい。
多官能単量体としては、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メチレンビスアクリルアミド、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
これらの中でも、凝集力に優れる粘着剤組成物が得られることから、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが好ましい。
多官能単量体は、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
多官能単量体の含有量は、全単量体混合物に対して、0.01〜2質量%が好ましく、0.05〜0.5質量%がより好ましい。0.01質量%以上であることで凝集力に優れる粘着剤組成物が得られ、2質量%以下であることで粘着力に優れる粘着剤組成物が得られる。
【0026】
前記単量体混合物と多官能単量体とを乳化重合する方法は特に制限されず、通常の乳化重合法を採用することができる。例えば、水系溶媒中、界面活性剤及び重合開始剤の存在下に、前記単官能単量体混合物と多官能単量体とを乳化重合させる方法が挙げられる。
【0027】
用いる界面活性剤としては、特に制限されず、例えば、アニオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤、反応性乳化剤等が挙げられる。
アニオン系乳化剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0028】
反応性乳化剤としては、プロペニル基やアクリロイル基等の反応性基を有する乳化剤であれば、特に限定されない。例えば、アニオン型反応性乳化剤やノニオン型反応性乳化剤が挙げられる。
【0029】
アニオン型反応性乳化剤としては、「アデカリアソープSE−20N」、「アデカリアソープSE−10N」、「アデカリアソープPP−70」、「アデカリアソープPP−710」、「アデカリアソープSR−10」、「アデカリアソープSR−20」〔以上、旭電化工業社製〕、「エレミノールJS−2」、「エレミノールRS−30」〔以上、三洋化成工業社製〕、「ラテムルE−118B」、「ラテムルS−180A」、「ラテムルS−180」、「ラテムルPD−104」〔以上、花王社製〕、「アクアロンBC−05」、「アクアロンBC−10」、「アクアロンBC−20」、「アクアロンHS−05」、「アクアロンHS−10」、「アクアロンHS−20」、「ニューフロンティアS−510」、「アクアロンKH−05」、「アクアロンKH−10」〔以上、第一工業製薬社製〕、「フォスフィノールTX」〔東邦化学工業社製〕等の市販品が挙げられる。
【0030】
ノニオン型反応性乳化剤としては、「アデカリアソープNE−10」、「アデカリアソープNE−20」、「アデカリアソープNE−30」、「アデカリアソープNE−40」、「アデカリアソープER−10」、「アデカリアソープER−20」、「アデカリアソープER−30」、「アデカリアソープER−40」〔以上、旭電化工業社製〕、「アクアロンRN−10」、「アクアロンRN−20」、「アクアロンRN−30」、「アクアロンRN−50」〔以上、第一工業製薬社製〕等の市販品が挙げられる。
これらの界面活性剤は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
界面活性剤の添加量は、単量体混合物100質量部に対して、0.4〜1.2質量部が好ましく、0.4〜1.0質量部がより好ましい。0.4質量部以上であることで、粘着力に優れ、かつ、良好な機械的安定性及び塗工性を有する粘着剤組成物を得ることができる。一方、1.2質量部以下であることで、機械的安定性及び塗工性に優れ、かつ、十分な粘着力を有する粘着剤組成物を得ることができる。
【0032】
用いる重合開始剤としては、アゾ系重合開始剤、過硫酸塩系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤、レドックス系重合開始剤等が挙げられる。
アゾ系重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド等が挙げられる。
過硫酸塩系重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
過酸化物系重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素等が挙げられる。
レドックス系重合開始剤としては、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組み合わせや、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムとの組み合わせ等が挙げられる。
これらの重合開始剤は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
重合開始剤の添加量は、全単量体混合物100質量部に対して、0.01〜5質量部が好ましく、0.01〜3質量部がより好ましい。
【0034】
水系溶媒は、水、又は水及び水と混和性の有機溶媒からなる混合溶媒である。水と混和性の有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等の炭素数1〜3のアルコールが挙げられ、これらは一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
水系溶媒の使用量は、単量体混合物100質量部に対して、50〜200質量部が好ましく、50〜150質量部がより好ましい。
【0035】
また、乳化重合は、粘着付与樹脂の存在下で行ってもよい。この粘着付与樹脂は、本発明の(B)〜(D)成分の粘着付与樹脂であってもよく、また、これら以外の粘着付与樹脂であってもよい。重合系内に粘着付与樹脂が存在することで、粘着剤組成物の粘着力向上に寄与するとともに、重合反応の制御にも役立つ。これらの粘着付与樹脂については後述する。
【0036】
さらに、重合反応系内には、他の各種添加剤が存在していてもよい。例えば、連鎖移動剤、防腐剤、防カビ剤、増粘剤、濡れ剤、消泡剤、可塑剤、pH調整剤等が挙げられる。なお、これらの添加剤は、乳化重合終了後に添加することもできる。
【0037】
連鎖移動剤としては、例えば、チオグリコール酸、ブチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、2−エチルヘキシルチオグリコレート、2−メルカプトエタノール等が挙げられる。連鎖移動剤は、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
乳化重合は、通常、反応器内を不活性ガスで置換した後、全容を撹拌しながら所定温度まで昇温して行う。重合温度は40〜100℃程度が好ましく、50〜80℃であることがより好ましい。反応時間は、通常、昇温開始後1〜8時間程度、好ましくは2〜5時間である。
反応終了後は、所望により、反応液にアンモニア水等を添加して、反応液のpH調整(例えば、反応液のpHを8程度に調整する)ことにより、アクリル系共重合体(A)を含有するエマルションを得ることができる。
【0039】
[ロジン系粘着付与樹脂(B)]
本発明に用いるロジン系粘着付与樹脂(B)は、好ましくは80〜170℃、より好ましくは130〜170℃の軟化点を有するものである。ロジン系粘着付与樹脂(B)を含有させることで、タイヤのトレッド部のような被着体に対しても優れた粘着力を有する粘着剤組成物を得ることができる。
【0040】
ロジン系粘着付与樹脂(B)は、ロジン又はロジン誘導体である。ロジンとしては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等が挙げられる。ロジン誘導体としては、例えば、重合ロジン、不均化ロジン、水素化ロジン、強化ロジン、ロジンエステル、重合ロジンエステル、ロジンフェノール等が挙げられる。なお、エステル化に使用する多価アルコールとしてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等が使用できる。
【0041】
ロジン系粘着付与樹脂(B)は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。ロジン系粘着付与樹脂(B)の添加量は、全単量体混合物100質量部に対して、固形分換算で、1〜9質量部であり、3〜7質量部が好ましく、4〜6質量部がより好ましい。1質量部未満のときは、得られる粘着剤組成物から形成される粘着剤層がタイヤのトレッド部のような被着体に対する粘着力が劣るおそれがある。一方、9質量部を超えると、得られる粘着剤組成物の塗工安定性が劣るおそれがある。
【0042】
[粘着剤組成物]
本発明の粘着剤組成物は、アクリル系共重合体(A)及びロジン系粘着付与樹脂(B)に加えて、さらに、軟化点が25℃以下の粘着付与樹脂(C)(ただし、ロジン系粘着付与樹脂(B)を除く。)(以下、「粘着付与樹脂(C)」という。)や、軟化点が100〜140℃のテルペン系粘着付与樹脂(D)(以下、「粘着付与樹脂(D)」という。)を含有することが好ましい。
【0043】
粘着付与樹脂(C)としては、軟化点が25℃以下のものである限り特に制限されない。粘着付与樹脂(C)を含有することで、低温時においても優れた粘着力を有する粘着剤組成物が得られる。
粘着付与樹脂(C)としては、例えば、石油系樹脂、テルペン系樹脂、アルキルフェノール樹脂、クマロン樹脂、クマロンインデン樹脂、スチレン樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。
石油系樹脂としては、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5−C9共重合系石油樹脂、ピュアモノマー樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂及びこれらの水素化物等が挙げられる。
テルペン系樹脂としては、テルペン重合体、β−ピネン重合体、テルペンフェノール樹脂及び芳香族変性テルペン重合体等が挙げられる。
粘着付与樹脂(C)は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
粘着付与樹脂(C)の添加量は、全単量体混合物100質量部に対して、固形分換算で、1〜7質量部が好ましく、2〜5質量部がより好ましい。粘着付与樹脂(C)を1質量部以上含有させることで、タイヤのトレッド部のような被着体に対しても優れた粘着力を有する粘着剤組成物が得られ、また7質量部以下とすることで、粘着シートを被着体に貼付したときの粘着剤層のはみ出しが抑制される。
【0045】
粘着付与樹脂(B)と粘着付与樹脂(C)の含有割合は、(粘着付与樹脂(B):粘着付与樹脂(C))の質量比で1:2〜3:1であることが好ましく、1:1〜2:1であることがより好ましい。粘着付与樹脂(B)と粘着付与樹脂(C)の含有割合がこの範囲内にあることで、低温時においても優れた粘着力を有し、かつ、糊残りが生じにくい粘着剤組成物が得られる。
【0046】
粘着付与樹脂(D)は、軟化点が100〜140℃のテルペン系粘着付与樹脂、好ましくは110〜140℃のテルペン系粘着付与樹脂である。粘着付与樹脂(D)を含むことで、タイヤのトレッド部のような被着体に対しても優れた粘着力を有する粘着剤組成物が得られる。粘着付与樹脂(D)の具体例としては、粘着付与樹脂(C)のテルペン系粘着付与樹脂として先に例示したものが挙げられる。
粘着付与樹脂(D)は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
粘着付与樹脂(D)の添加量は、全単量体混合物100質量部に対して、固形分換算で、3〜7質量部が好ましく、4〜6質量部がより好ましい。粘着付与樹脂(D)を3質量部以上含有させることで、タイヤのトレッド部のような被着体に対しても優れた粘着力を有する粘着剤組成物が得られ、7質量部以下とすることで、塗工安定性に優れる粘着剤組成物を得ることができる。
粘着付与樹脂(B)と粘着付与樹脂(D)の含有割合は、(粘着付与樹脂(B):粘着付与樹脂(D))の質量比で1:3〜3:1であることが好ましく、1:2〜2:1であることがより好ましい。粘着付与樹脂(B)と粘着付与樹脂(D)の含有割合がこの範囲内にあることで、低温時においても優れた粘着力を有し、かつ、糊残りが生じにくい粘着剤組成物が得られる。なお、いずれの粘着付与樹脂においても、樹脂自体をそのまま用いてもよいし、予め乳化したものを用いてもよい。
【0048】
また、本発明のエマルション型粘着剤組成物は、本発明の効果を妨げない限りにおいて、その他の添加剤を含有することができる。添加剤としては、防腐剤、防カビ剤、増粘剤、濡れ剤、消泡剤、可塑剤、pH調整剤、顔料、染料等が挙げられる。
これらの添加剤は、アクリル系共重合体(A)の乳化重合反応液に添加してもよいし、アクリル系共重合体(A)を製造する際に乳化重合系内にあらかじめ添加してもよい。
【0049】
本発明のエマルション型粘着剤組成物を製造する方法は特に限定されず、例えば、
(i)アクリル系共重合体(A)を乳化重合法により製造した重合反応液に、乳化された粘着付与樹脂(B)及び所望により粘着付与樹脂(C)又は(D)の所定量を混合して、エマルション型粘着剤組成物を製造する方法、
(ii)アクリル系共重合体(A)を製造する際に乳化重合系内にあらかじめ粘着付与樹脂(B)及び所望により粘着付与樹脂(C)又は(D)を存在させ、そのまま乳化重合を行うことにより、エマルション型粘着剤組成物を製造する方法、
(iii)アクリル系共重合体(A)を製造する際に乳化重合系内にあらかじめ粘着付与樹脂(C)又は(D)を存在させて乳化重合を行い、重合反応終了後に、乳化された粘着付与樹脂(B)を混合してエマルション型粘着剤組成物を製造する方法等が挙げられる。これらの中でも、重合反応を制御することができ、また、粘着付与樹脂(B)の特性が失われることもないことから、上記の(iii)の方法が好ましい。
【0050】
本発明のエマルション型粘着剤組成物は十分な凝集力を有するため、粘着剤層の凝集力を低下させて粗面に対する追従性を高めた従来の粘着シートと異なり、粘着シートの剥離後に糊残りの問題が生じにくい。また、このエマルション型粘着剤組成物は、低温時においても優れた粘着力が失われない。
また、ラベル加工時に切断機のカッターや印刷機のガイド等に粘着剤組成物が付着し、粘着シート等を汚染することがない。
【0051】
2)再剥離性粘着シート
本発明の再剥離性粘着シートは、少なくとも基材と粘着剤層とを有する、再剥離性の粘着シートであって、前記粘着剤層が、本発明のエマルション型粘着剤組成物を用いて得られたものであることを特徴とする。
本発明の再剥離性粘着シートは、粘着剤層を介して被着体に粘着させた後、被着体から再剥離可能な粘着シートである。
【0052】
[基材]
本発明に用いる基材としては、特に限定されるものではなく、公知のプラスチックフィルムや紙、合成紙等を使用することができる。なかでも、機械的強度に優れ、剥離時における基材の破壊を有効に防止できることから、プラスチックフィルム又は合成紙であることが好ましい。
プラスチックフィルムの材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ナイロン等のポリアミド;ポリスチレン;等が挙げられる。
合成紙としては、例えば、合成樹脂と充填剤及び添加剤を溶融混合後、押出しして成膜された内部にボイドを有する単層又は複層の合成紙等が挙げられる。
【0053】
また、前記基材は金属層を有することが好ましい。金属層としては、例えば、アルミニウム蒸着層等が挙げられる。金属層が存在しない場合、タイヤの成分であるアミン系老化防止剤や芳香族系オイル等が、粘着剤層を通過して基材まで移行し、それが原因となって、基材表面(粘着剤層と接する側の反対面)が黒色化する場合があるが、金属層を存在させることで当該成分の移行を妨げ、基材表面の黒色化を防止することができる。そのため金属層は、基材の粘着剤層と接する側に設けられることが好ましい。
【0054】
さらに、基材表面には、印刷層を形成しやすくするための易接着層や、熱転写記録やインキジェット記録などの記録を可能にするための受理層を設けてもよく、それらの表面を保護するためのオーバーコートもしくはオーバーラミネートを行ってもよい。
【0055】
基材の厚みは特に限定されないが、10〜150μmが好ましく、10〜120μmがより好ましい。10μm未満になると、取り扱いが困難になったり、貼り付け時にシワになったり、剥離時に基材が破壊する場合がある。一方、150μmを超えると、柔軟性が低下するのに伴い、タイヤ等の粗面への追従性が低下し、再剥離性粘着シートが剥がれやすくなる場合がある。なお、上記の好ましい基材の厚さは、金属層、易接着層、受理層等を有する場合は、これらの層を含めた全体の厚さである。
【0056】
[粘着剤層]
粘着剤層は、本発明のエマルション型粘着剤組成物を用いて形成されたものである。
粘着剤層の厚みは、通常、1〜50μm、好ましくは、5〜40μmである。粘着剤層の厚みを1μm以上とすることにより、必要な粘着力及び凝集力(保持力)を確保することができ、50μm以下とすることにより、コストアップを防ぐとともに、粘着剤層が端部からはみ出すのを防止することができる。
【0057】
粘着剤層のゲル分率は、40〜80質量%が好ましく、50〜75質量%がより好ましい。40質量%以上であることで、十分な凝集力が得られ、80質量%以下であることで高い粘着力が得られる。
上記のゲル分率は、粘着剤の乾燥被膜の酢酸エチルに対する不溶解分の比率を表し、後述する測定により求めることができる。
【0058】
[剥離材]
本発明の再剥離性粘着シートの粘着剤層の片面は、剥離材で保護されていることが好ましい。用いる剥離材の材質は、特に限定されるものではなく、例えば、上質紙、グラシン紙、ラミネート紙等の紙基材や、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン;等のフィルム基材が挙げられる。
剥離材としては、通常、上記基材の片面または両面を剥離剤で剥離処理を施したものを使用する。
用いる剥離剤としては、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、長鎖アルキル基含有カルバメート等が挙げられる。
剥離材の厚みは特に限定されないが、通常10〜250μm、好ましくは20〜200μmである。
【0059】
[再剥離性粘着シート]
本発明の再剥離性粘着シートは、(i)本発明のエマルション型粘着剤組成物を基材表面に塗布し、得られた塗膜を乾燥後、この塗膜上に剥離材を貼り合わせる方法、又は、(ii)本発明のエマルション型粘着剤組成物を剥離材表面に塗布し、得られた塗膜を乾燥後、この塗膜上に基材を貼り合わせる方法により形成することができる。
【0060】
基材又は剥離材表面にエマルション型粘着剤組成物を塗布する方法としては、グラビアコート法、バーコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ロールコート法、ダイコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、カーテンコート法等の従来公知の塗工方法が挙げられる。
【0061】
エマルション型粘着剤組成物の塗膜を乾燥させる温度は、通常80〜120℃程度、好ましくは90〜110℃であり、乾燥時間は、通常、30秒から15分、好ましくは3〜7分程度である。
【0062】
本発明の再剥離性粘着シートの粘着剤層は、粗面に対して高い粘着力を有する。したがって、タイヤ貼付用の再剥離性粘着シートとして好ましく利用され、特にタイヤのトレッド部貼付用の再剥離性粘着シートとして好ましく利用される。特に、この粘着シートは、低温条件下においてもその粘着力が維持されるため、冬場や寒冷地において好適に用いられる。
また、本発明の粘着剤組成物を用いて得られる粘着剤層は十分な凝集力を有するため、粘着シートを剥離した後に糊残りが生じにくい。
さらに、ラベル加工を施す際、切断機のカッターや印刷機のガイド等に粘着剤組成物が付着し、粘着シート等を汚染することがない。
【実施例】
【0063】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
実施例及び比較例において用いた試薬は、次の通りである。
・アクリル酸2−エチルヘキシル:三菱化学社製(第1表中、「2EHA」と表す。)
・アクリル酸ブチル:三菱化学社製(第1表中、「BA」と表す。)
・アクリル酸:三菱化学社製(第1表中、「AA」と表す。)
・アクリル酸メチル:三菱化学社製(第1表中、「MA」と表す。)
・ペンタエリスリトールトリアクリレート:ダイセル・サイテック社製、商品名「PETIA」
・アニオン系界面活性剤:第一工業製薬社製、商品名「ニューフロンティアA−229E」
【0064】
・粘着付与樹脂(B)−1:ハリマ化成社製、商品名「ハリエスターSK−816E」、ロジン系樹脂、軟化点145℃
・粘着付与樹脂(B)−2:荒川化学工業社製、商品名「スーパーエステルE−720」、ロジン系樹脂、軟化点100℃
・粘着付与樹脂(C):ヤスハラケミカル社製、商品名「マルカクリアH」、石油系樹脂、軟化点−23℃
・粘着付与樹脂(D)−1:ヤスハラケミカル社製、商品名「YSレジンPX1250」、テルペン系樹脂、軟化点125℃
・粘着付与樹脂(D)−2:ヤスハラケミカル社製、商品名「YSレジンPX1000」、テルペン系樹脂、軟化点100℃
【0065】
(製造例1〜5)
第1表に記載の質量部で単量体を混合し、単官能単量体混合物を調製した。
【0066】
【表1】
【0067】
(実施例1)
製造例1で得た単官能単量体混合物99.7質量部に、ペンタエリスリトールトリアクリレート0.3質量部、粘着付与樹脂(C)3質量部を加え混合した。得られた混合物を、攪拌機、温度計、還流冷却器及び滴下ロートを備えた反応容器に投入し、約30℃に保ちながら、30分間攪拌し溶解させた。
次いで、アニオン系界面活性剤0.6質量部をイオン交換水57質量部に分散させた分散液を、約30℃で加え、全容を30分間攪拌して単量体混合物等を含む乳化物を調製した。
【0068】
別途、攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを備えた反応容器に脱イオン水40質量部を投入し、窒素を流入させながら、反応容器内の温度を80℃まで昇温させ、濃度が5質量%になるように過硫酸カリウムを仕込んで溶解させた。この中に、前記単量体混合物等を含む乳化物を80〜83℃に保ちながら3時間かけて滴下した。また、乳化物の滴下と並行して濃度5質量%の過硫酸カリウム水溶液を滴下して、反応容器内の温度を80〜83℃に保持しながら3時間攪拌して乳化重合を行なった。さらに、前記過硫酸カリウム水溶液の滴下終了後、1時間目及び2時間目に、それぞれ過硫酸カリウム1質量部ずつ添加して重合を完結させ、同温度で3時間熟成させた。反応終了後、室温に冷却して、反応液に25質量%アンモニア水を加えてpHが8.0となるように調整し、アクリル系共重合体(A)を含有するエマルションを得た。
上記のエマルションに、粘着付与樹脂(B)−1を5質量部添加して、エマルション型粘着剤組成物1を得た。
【0069】
(実施例2〜5、比較例1〜5)
第2表に記載の原料を用いたことを除き、実施例1と同様にしてエマルション型粘着剤組成物2〜10を製造した。
【0070】
[ゲル分率の測定]
上記の方法で得られたエマルション型粘着剤組成物1〜10のそれぞれを、乾燥後の膜厚が0.3mmとなるようにガラス板上に塗工し、25℃で24時間乾燥した後、ガラス板から剥離し、更に100℃で5分間乾燥したものを50mm角に切り取り、試料とした。
次いで、上記試料の質量(G1)を測定し、次に、試料を酢酸エチル中に常温で24時間浸漬し、不溶解分を300メッシュ金網を用いて濾過して分離した。110℃で1時間乾燥した後の残渣の質量(G2)を測定し、以下の式に従って、ゲル分率を算出した。
測定結果を第2表に示す。
【0071】
【数1】
【0072】
【表2】
【0073】
(実施例6〜10、比較例6〜10)
実施例1〜5及び比較例1〜5で得られたエマルション型粘着剤組成物1〜10のそれぞれを、ポリエチレンをラミネートした上質紙の片面に剥離処理を施した剥離紙(リンテック社製、「SP−8EAアイボリー」)上に、乾燥後に30μmの厚さになるように塗工し、90℃で2分間乾燥することで粘着剤層を形成した。次いで、表面基材として、アルミニウム蒸着層を備えた白コートポリエチレンテレフタレートフィルム[白コート(エチレン酢酸ビニル樹脂及び酸化チタンを含む)1μm/ポリエチレンテレフタレートフィルム12μm/アルミニウム蒸着層]のアルミニウム蒸着層と、得られた粘着剤層とを貼り合わせ、粘着シート1〜10を得た。
【0074】
(実施例11)
表面基材に厚さ60μmの二軸延伸白色ポリプロピレンフィルムを用いたことを除き、実施例6と同様にして、粘着シート11を得た。
【0075】
(実貼り評価試験)
実施例6〜11及び比較例6〜10で得られた粘着シート1〜11から、5cm×10cmの小片を切り出して、剥離紙を剥離した後、それをラジアルタイヤ(ブリヂストン社製、Playz)に対して、−10℃、0℃、23℃(50%RH)及び40℃の環境下でそれぞれ貼り付けた。そのまま72時間それぞれ放置した後、タイヤから粘着シートを手で引き剥がし、以下の基準によって剥離強度を評価した。評価結果を第3表に示す。
【0076】
{剥離強度の評価}
◎:十分な接着強度を有する。
○:やや接着強度が劣るものの実用上問題ないレベルである。
△:接着強度が弱く簡単に剥がれる。
×:ほとんど接着強度がない。
【0077】
(はみ出し評価試験)
実施例6〜11及び比較例6〜10で得られた粘着シート1〜11から、10cm×10cmの小片を切り出し、さらに粘着剤層と基材を1cm×10cmの大きさで部分的に除去し、図1に記載の形状を有する試験片を作製した。図1において、(a)は試験片を上から見た図であり、(b)は試験片を横方向から見た図である。図1中、1は剥離フィルム、2は粘着剤層、3は基材をそれぞれ示す。
この試験片を、40℃、20kN/60cmの圧力下に24時間静置し、このときの端部の粘着剤層のはみ出しを観察し、以下の基準によって評価した。評価結果を第3表に示す。
【0078】
{はみ出しの評価}
◎:はみ出しがない。
○:1mm以下のはみ出しがある。
△:1mm超、3mm以下のはみ出しがある。
×:3mm超、5mm以下のはみ出しがある。
【0079】
【表3】
【0080】
第3表に示されるように、実施例6〜11の粘着シートは、−10〜+40℃までの幅広い温度範囲において剥離強度に優れ、かつ、はみ出し試験結果も良好で、はみ出しがほとんど認められなかった。一方、比較例6及び8〜10の粘着シートは、剥離強度に劣っていた。また、比較例7の粘着シートは、高温時の粘着力に劣り、さらには、3mmを超えるはみ出しが認められた。
【符号の説明】
【0081】
1・・・剥離フィルム
2・・・粘着剤層
3・・・基材
図1