特許第5937582号(P5937582)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5937582
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】グルカゴン類似体
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/605 20060101AFI20160609BHJP
   A61K 38/26 20060101ALI20160609BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20160609BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20160609BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20160609BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20160609BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20160609BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   C07K14/605ZNA
   A61K37/28
   A61P3/04
   A61P3/06
   A61P9/12
   A61P9/10 101
   A61P9/10 103
   A61P9/10
   A61P9/00
   A61P43/00 121
【請求項の数】19
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2013-515697(P2013-515697)
(86)(22)【出願日】2011年6月23日
(65)【公表番号】特表2013-534919(P2013-534919A)
(43)【公表日】2013年9月9日
(86)【国際出願番号】DK2011000067
(87)【国際公開番号】WO2011160630
(87)【国際公開日】20111229
【審査請求日】2014年6月4日
(31)【優先権主張番号】61/358,623
(32)【優先日】2010年6月25日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】PA201000550
(32)【優先日】2010年6月23日
(33)【優先権主張国】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】502453045
【氏名又は名称】ジーランド ファーマ アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】エディ メイエール
(72)【発明者】
【氏名】ディッテ リベール
(72)【発明者】
【氏名】イェンス ロセングレン ダウガールド
(72)【発明者】
【氏名】マリエ スコブガールド
【審査官】 松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5635532(JP,B2)
【文献】 国際公開第2008/152403(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 14/605
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
H−HSQGTFTSDYSKYLDE−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−RAKDFIEWLLSA−NH及びH−H−Aib−QGTFTSDYSKYLDE−K(ヘキサデカノイル−イソGlu)−RAKDFIEWLLSA−NHからなる群から選択される化合物。
【請求項2】
請求項に記載の化合物担体と共に含む、組成物。
【請求項3】
組成物が医薬的に許容される組成物であり、担体が医薬的に許容される担体である、請求項に記載の組成物。
【請求項4】
体重増加を防止する又は体重減少を促進するための、請求項に記載の化合物を含む医薬組成物
【請求項5】
循環LDLレベルを低下し、そして/あるいはHDL/LDL比を増大するための、請求項に記載の化合物を含む医薬組成物
【請求項6】
過剰体重によって生じる又は過剰体重を特徴とする疾患治療するための、請求項に記載の化合物を含む医薬組成物
【請求項7】
肥満、病的肥満、術前の病的肥満、肥満関連炎症、肥満関連胆嚢疾患、肥満誘発睡眠時無呼吸、高血圧症、アテローム性脂質異常症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、冠動脈心疾患、末梢動脈疾患、脳卒中又は細小血管障害治療及び/又は予防するための、請求項に記載の化合物を含む医薬組成物
【請求項8】
肥満、脂質異常症又は高血圧症の治療のための薬剤と共に、組み合わせ療法の一部として前記化合物が投与される、請求項4〜7のいずれか1項に記載の医薬組成物
【請求項9】
肥満の治療のための薬剤が、グルカゴン様ペプチド受容体1作動薬、ペプチドYY受容体作動薬又はその類似体、カンナビノイド受容体1アンタゴニスト、リパーゼ阻害剤、メラノコルチン受容体4作動薬、又はメラニン凝集ホルモン受容体1アンタゴニストである、請求項に記載の医薬組成物
【請求項10】
高血圧症の治療のための薬剤が、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、アンジオテンシンII受容体遮断剤、利尿剤、ベータ−遮断剤、又はカルシウムチャネル遮断剤である、請求項に記載の医薬組成物
【請求項11】
脂質異常症の治療のための薬剤が、スタチン、フィブラート、ナイアシン及び/又はコレステロール吸収阻害剤である、請求項に記載の医薬組成物
【請求項12】
体重増加を防止する又は体重減少を促進するための薬剤の製造における、請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項13】
循環LDLレベルを低下し、そして/あるいはHDL/LDL比を増大するための薬剤の製造における、請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項14】
過剰体重によって生じる又は過剰体重を特徴とする疾患を治療するための薬剤の製造における、請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項15】
肥満、病的肥満、術前の病的肥満、肥満関連炎症、肥満関連胆嚢疾患、肥満誘発睡眠時無呼吸、高血圧症、アテローム性脂質異常症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、冠動脈心疾患、末梢動脈疾患、脳卒中又は細小血管障害を治療及び/又は予防するための薬剤の製造における、請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項16】
肥満、脂質異常症又は高血圧症の治療のための薬剤と共に、組み合わせ療法の一部として前記化合物が投与される、請求項12〜15のいずれか1項に記載の使用。
【請求項17】
肥満の治療のための薬剤が、グルカゴン様ペプチド受容体1作動薬、ペプチドYY受容体作動薬又はその類似体、カンナビノイド受容体1アンタゴニスト、リパーゼ阻害剤、メラノコルチン受容体4作動薬、又はメラニン凝集ホルモン受容体1アンタゴニストである、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
高血圧症の治療のための薬剤が、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、アンジオテンシンII受容体遮断剤、利尿剤、ベータ−遮断剤、又はカルシウムチャネル遮断剤である、請求項16に記載の使用。
【請求項19】
脂質異常症の治療のための薬剤が、スタチン、フィブラート、ナイアシン及び/又はコレステロール吸収阻害剤である、請求項16に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、過剰食物摂取、肥満及び過剰体重、コレステロール増加の治療における、血糖コントロールへの影響が全く又はほとんどないグルカゴン類似体及びその医薬用途に関する。
【背景技術】
【0002】
プレプログルカゴンは、158個のアミノ酸の前駆ポリペプチドであり、これは組織において種々の処理を受け、グルカゴン(Glu)、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、グルカゴン様ペプチド-2(GLP-2)、及びオキシントモジュリン(OXM)を含む多数の構造上関連のあるプログルカゴン由来のペプチドを形成する。これらの分子は、グルコース恒常性、インスリン分泌、胃内容排出及び腸成長、及び食物摂取制御を含む様々な生理機能に関与する。
【0003】
グルカゴンは、29個のアミノ酸ペプチドであり、プレプログルカゴンの53〜81のアミノ酸に相当し、配列His-Ser-Gln-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Tyr-Ser-Lys-Tyr-Leu-Asp-Ser-Arg-Arg-Ala-Gln-Asp-Phe-Val-Gln-Trp-Leu-Met-Asn-Thr(配列番号1)を有する。オキシントモジュリン(OXM)は、37個のアミノ酸ペプチドであり、オクタペプチドC末端伸長(配列Lys-Arg-Asn-Arg-Asn-Asn-Ile-Ala(配列番号2)を有するプレプログルカゴンのアミノ酸82〜89であり、「介在ペプチド1」又はIP-1と呼ばれる)を有すると共に、グルカゴンの29個の完全なアミノ酸配列を含み、よってヒトオキシントモジュリンの全配列は、His-Ser-Gln-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Tyr-Ser-Lys-Tyr-Leu-Asp-Ser-Arg-Arg-Ala-Gln-Asp-Phe-Val-Gln-Trp-Leu-Met-Asn-Thr-Lys-Arg-Asn-Arg-Asn-Asn-Ile-Ala(配列番号3)である。GLP-1の主要な生物学的活性のある断片は、30個のアミノ酸、C末端アミド化ペプチドとして生成され、プレプログルカゴンのアミノ酸98〜127に相当する。
【0004】
グルカゴンは、肝細胞上のグルカゴン受容体に結合することによって、グリコーゲン分解を介してグリコーゲンの形態で貯蔵されたグルコースの放出を肝臓に引き起こすので、血中グルコースのレベルの維持に役立つ。これらの貯蔵が枯渇する場合、グルカゴンは肝臓を刺激し、糖新生によってさらにグルコースを合成させる。このグルコースは血流に放出され、低血糖の発生を阻害する。
【0005】
OXMは、食物摂取に応じて且つ食事カロリー量に比例して血中に放出される。OXMは、ヒトにおいて食欲を抑制し、食物摂取を阻害することが示されている(Cohen et al, Journal of Endocrinology and Metabolism, 88, 4696-4701, 2003; 国際公開第2003/022304号)。GLP-1と同様の食欲低下効果に加えて、オキシントモジュリンを処理したラットはペアフィードのラットより少ない体重増加を示すので、OXMは他の機構によってもまた体重に影響するに違いない(Bloom, Endocrinology 2004, 145, 2687)。肥満げっ歯類のOXMでの治療はまた、その糖耐性を改善し(Parlevliet et al, Am J Physiol Endocrinol Metab, 294, E142-7, 2008)、体重増加を抑制する(国際公開第2003/022304号)。
【0006】
OXMはグルカゴン及びGLP-1受容体を共に活性化し、その効力はGLP-1受容体よりもグルカゴン受容体に対する方が2倍高いが、天然のグルカゴン及びGLP-1のそれらの各受容体に関する効力より弱い。ヒトグルカゴンは、GLP-1受容体よりもグルカゴン受容体を強く選択するが、両受容体を活性化することが可能である。一方、GLP-1はグルカゴン受容体を活性化することができない。オキシントモジュリンの作用機構は、十分に理解されていない。特に、ホルモンの一部の肝外効果がGLP-1及びグルカゴン受容体を介して、あるいは1又は2以上の未同定の受容体を介して媒介されるかは分かっていない。
【0007】
他のペプチドでグルカゴン及びGLP-1受容体双方を結合及び活性化し(Hjort et al, Journal of Biological Chemistry, 269, 30121-30124, 1994)、体重増加を抑制し食物摂取を減少するものが示されている(国際公開第2006/134340号、国際公開第2007/100535号、国際公開第2008/10101号、国際公開第2008/152403号、国際公開第2009/155257号及び国際公開第2009/155258号)。
【0008】
肥満は、世界規模で増大している健康問題であり、様々な疾患、特に循環器系疾患(CVD)、2型糖尿病、閉塞性睡眠時無呼吸、特定のタイプの癌、及び変形性関節症に関連する。結果的に、肥満は平均余命を減少することが分かっている。世界保健機関の2005年計画によれば、世界中で四百万人の成人(年齢 > 15)が肥満に分類される。米国では、肥満は喫煙に続いて予防可能な死の第二の主因と考えられている。
【0009】
肥満の増加は、糖尿病の増加に至り、そして2型糖尿病患者の約90%が肥満に分類され得る。世界中で現在2億4600万人の糖尿病患者は、2025年までに3億8000万人になると推測されている。多くの人は、高/異常LDL及びトリグリセリド及び低HDLを含むさらなる循環器系危険因子を有する。
【0010】
従って、肥満治療が医療上強く必要とされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、式
R1-X-Z-R2
[式中、
R1は、H、C1-4アルキル、アセチル、ホルミル、ベンゾイル又はトリフルオロアセチルであり、
R2は、OH又はNH2であり、
Xは、式I:
His-X2-Gln-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Tyr-Ser-Lys-Tyr-Leu-Asp-X16-X17-Arg-Ala-X20-Asp-Phe-Ile-X24-Trp-Leu-X27-X28-X29(I)
{式中、
X2は、Ser及びAibから選択され;
X16は、Glu及びYから選択され;
X17は、Arg及びYから選択され;
X20は、Lys及びYから選択され;
X24は、Glu及びYから選択され;
X27は、Leu及びYから選択され;
X28は、Ser及びYから選択されるか、又は存在せず;
X29は、Alaであるか、又は存在せず、
ここで、X16、X17、X20、X24、X27及びX28の少なくとも1つがYであり;
各残基Yは、Lys、Cys及びOrnから独立して選択され;
Xの少なくとも1つのアミノ酸残基Yの側鎖は、式:
(i)Z1(式中、Z1は、Xの側鎖に直接結合した親油性部分である)、又は
(ii)Z1Z2(式中、Z1は親油性部分であり、Z2はスペーサーであり、Z1がZ2を介してXの側鎖に結合する)
を有する親油性置換基に結合する}
を有するペプチドであり、
Zは、存在しないか、又はAla、Leu、Ser、Thr、Tyr、Cys、Glu、Lys、Arg、Dbu、Dpr及びOrnから成る群から独立して選択される1-20個のアミノ酸単位の配列である]
を有する化合物、又はその医薬的に許容される塩を供する。
【0012】
一例において、Xは配列:
HSQGTFTSDYSKYLDERRAKDFIEWLKSA、
HSQGTFTSDYSKYLDERRAKDFIEWLLSA、
HSQGTFTSDYSKYLDERRAKDFIEWLLKA、
HSQGTFTSDYSKYLDKRRAKDFIEWLLSA、
HSQGTFTSDYSKYLDEKRAKDFIEWLLSA、又は
H-Aib-QGTFTSDYSKYLDEKRAKDFIEWLLSA、
を有することができる。
【0013】
一部の実施形態において、親油性置換基は、位置16、17、20、27又は28でアミノ酸残基に結合する。
【0014】
例えば、本発明の化合物は、配列:
H-HSQGTFTSDYSKYLDERRAKDFIEWL-K(ヘキサデカノイル-イソGlu)-SA-NH2
H-HSQGTFTSDYSKYLDERRA-K(ヘキサデカノイル-イソGlu)-DFIEWLLSA-NH2
H-HSQGTFTSDYSKYLDERRAKDFIEWLL-K(ヘキサデカノイル-イソGlu)-A-NH2
H-HSQGTFTSDYSKYLD-K(ヘキサデカノイル-イソGlu)-RRAKDFIEWLLSA-NH2
H-HSQGTFTSDYSKYLDE-K(ヘキサデカノイル-イソGlu)-RAKDFIEWLLSA-NH、又は
H-H-Aib-QGTFTSDYSKYLDE-K(ヘキサデカノイル-イソGlu)-RAKDFIEWLLSA-NH2
を有することができる。
【0015】
本発明はさらに、本発明の化合物をコードする(DNA又はRNAとすることができる)核酸、このような核酸を含む発現ベクター、及びこのような核酸又は発現ベクターを含む宿主細胞を供する。
【0016】
さらなる態様において、本発明は、本明細書中で定義されるグルカゴン類似体ペプチド、又はその塩又は誘導体、このようなグルカゴン類似体ペプチドをコードする核酸、このような核酸を含む発現ベクター、又はこのような核酸又は発現ベクターを含む宿主細胞を、担体と共に含む組成物を供する。好ましい実施形態において、組成物は医薬的に許容される組成物であり、担体は医薬的に許容される担体である。グルカゴンペプチド類似体は、グルカゴン類似体の医薬的に許容される塩の形態とすることができる。
【0017】
さらなる態様において、本発明は治療方法における使用のための組成物を供する。
【0018】
記載される化合物は、とりわけ、体重増加を防止又は体重減少を促進することにおける使用が発見された。「防止すること」によってとは、未治療と比較した場合に阻害又は減少することを意味し、体重増加の全停止を必ずしも意味しない。ペプチドは、食物摂取の減少及び/又はエネルギー消費の増加を生じる可能性があり、その結果、体重への影響が観察されることとなる。その体重への影響とは無関係に、本発明の化合物は、循環コレステロールレベルへの有益な効果を有することができ、循環LDLレベルを低下し、そしてHDL/LDL比を増大することが可能である。よって、本発明の化合物は、肥満、病的肥満、肥満関連炎症、肥満関連胆嚢疾患、肥満誘発睡眠時無呼吸の治療及び/又は予防等の、過剰体重によって生じる又はそれを特徴とする任意の疾患の直接又は間接的治療に使用可能である。それらは、メタボリックシンドローム、高血圧症、アテローム生成脂質異常症、アテローム性動脈硬化、動脈硬化症、冠動脈心疾患、又は脳卒中の予防にもまた使用できる。これらの疾患におけるそれらの効果は、それらの体重への影響の結果又はその影響と関連するか、又はそれらから独立的とすることができる。
【0019】
特定の実施形態において、記載される化合物は血糖コントロールへの影響が全く又はほとんどなく、体重増加の防止又は体重減少の促進における使用を見出すことができる。本発明において、記載の特定の化合物が確立された動物モデルにおいてHbA1cレベルへの影響が全く又はほとんどなく、体重減少への顕著な影響を有することが分かった。
【0020】
上述の通り、本発明は任意にはその発現を指示する配列と組み合わせた、上記の核酸配列を含む発現ベクター、及び発現ベクターを含む宿主細胞に及ぶ。好ましくは、宿主細胞は本発明の化合物を発現し且つ分泌することが可能である。さらなる態様において、本発明は化合物を生成する方法を供し、斯かる方法は化合物を発現することに適した条件下で宿主細胞を培養してこのように生成された化合物を精製することを含む。
【0021】
本発明はさらに、治療方法における使用のための、本発明の核酸、本発明の発現ベクター、又は本発明の化合物を発現及び分泌することが可能である宿主細胞を供する。核酸、発現ベクター及び宿主細胞は、本発明の化合物で治療することができる本明細書中に記載のいずれかの疾患の治療に使用することができることと理解されたい。よって本発明の化合物を含む治療組成物、本発明の化合物の投与、又は任意のその治療上の使用への言及は、文脈上必要でない限り、本発明の核酸、発現ベクター又は宿主細胞の等価物の使用を含むと解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、db/dbマウスにおける6週間の治療期間に亘るGlu-GLP-1デュアルアゴニスト化合物6の皮下投与の、HbA1cの変化に対する効果を表す。データは、n=11/群の平均+標準誤差として示される。同時点における溶媒との比較による、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
図2図2は、db/dbマウスにおける6週間の治療期間に亘るGlu-GLP-1アゴニスト化合物6の皮下投与の、体重増加への効果を表す。データは、n = 11/群の平均+標準誤差として供する。溶媒との比較による、**p<0.01、***p<0.001。
図3図3は、高脂肪食C57BL/6Jマウスにおける、Glu-GLP-1アゴニスト化合物6の皮下投与の、体重への効果を表す。データは、平均+標準誤差として供する。
図4図4は、高脂肪食C57BL/6JマウスにおけるOGTT中の、Glu-GLP-1アゴニスト化合物6の皮下投与の、グルコース曲線下面積(AUC)への効果を表す。データは、平均+標準誤差である。*p<0.05。
図5図5は、1日2回3週間の、脂質への溶媒(PBS)、10 nmol/kg エキセンディン-4又は10 nmol/kgの化合物6での処理(皮下)前に、30週間高脂肪食を給餌したマウスの3週間の処理の効果を表す。CHO: 総コレステロール; HDL: 高密度コレステロール; LDL: 低密度コレステロール; TRIG: トリグリセリド; HDL/LDL: HDLとLDLとの比。
図6図6は、高脂肪食C57BL/6Jマウスにおける、体重増加への化合物6及び化合物7の効果を表す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書を通して、天然生成アミノ酸に関して一般的な1文字及び3文字コードを使用し、他のアミノ酸に関する一般的に認められている3文字コード、Aib(α-アミノイソ酪酸)、Orn(オルニチン)、Dbu(2,4ジアミノ酪酸)及びDpr(2,3-ジアミノプロパン酸)等もまた使用する。
【0024】
用語「天然のグルカゴン」とは、配列H-His-Ser-Gln-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Tyr-Ser-Lys-Tyr-Leu-Asp-Ser-Arg-Arg-Ala-Gln-Asp-Phe-Val-Gln-Trp-Leu-Met-Asn-Thr-OH(配列番号1)を有する天然のヒトグルカゴンを意味する。
【0025】
本発明は、上記化合物を供する。誤解を避けるために、本明細書中で供する定義において、Xの配列は、変更の許容が規定される位置において式Iと異なるのみであることを通常意図する。配列X内のアミノ酸は、通常のN末端からC末端方向に1〜29まで連続して番号付けされているとみなすことができる。X内の「位置」への言及は従って、天然のヒトグルカゴン及び他の分子内の位置への言及と解釈されるべきである。
【0026】
本発明の化合物は、ペプチド配列X内の1又は2以上の分子内架橋を運ぶことができる。このような架橋はそれぞれ、Xの2つのアミノ酸残基の側鎖間に形成され、それらは典型的にはXの直鎖状配列において3つのアミノ酸によって分離される(すなわち、アミノ酸Aとアミノ酸A+4)。
【0027】
より詳細には、架橋は残基対12及び16、16及び20、17及び21、20及び24、又は24及び28の側鎖間に形成することができる。2つの側鎖は、イオン相互作用を介してか、又は共有結合によって互いに結合できる。よって、これらの残基対は、イオン相互作用によって塩橋を形成するために、逆に荷電した側鎖を含むことができる。例えば、残基の1つは、Glu又はAspとすることができ、一方他はLys又はArgとすることができる。対Lys及びGlu並びにLys及びAspはそれぞれ、反応してラクタム環を形成することも可能である。同様に、Tyr及びGlu並びにTyr及びAspは、ラクトン環を形成することが可能である。
【0028】
いかなる特定の理論に束縛されることを望むことなく、このような分子内架橋は分子のアルファフェリックス構造を安定させ、それによりGLP-1受容体において、おそらくグルカゴン受容体においてもまた効力及び/又は選択性を増大すると考えられる。
【0029】
いかなる特定の理論に束縛されることを望むことなく、天然のグルカゴンの位置17及び18におけるアルギニン残基は、グルカゴン受容体に対する顕著な選択性を供するようである。
【0030】
いかなる特定の理論に束縛されることを望むことなく、天然のグルカゴンの位置27、28及び29における残基は、グルカゴン受容体に対するペプチドの顕著な選択性を供するようである。天然のグルカゴン配列に関するこれらの位置1、2又は3つ全てにおける置換は、潜在的にグルカゴン受容体における効力の顕著な減少なく、GLP-1受容体における効力及び/又はGLP-1受容体に対する選択性を増大し得る。特定の例は、位置で27におけるLeu、位置28におけるSer及び位置29におけるAlaを含む。
【0031】
天然に存在するMet残基の位置27における(例えば、Leu又はLys、特にLeuでの)置換はまた、酸化の可能性を低下し、それにより化合物の化学安定性を増大する。
【0032】
天然に存在するAsn残基の位置28での(例えば、Ser、Arg又はAlaによる)置換はまた、酸性溶液において脱アミドの可能性を減少し、化合物の化学安定性を増大する。
【0033】
GLP-1受容体における効力及び/又は選択性は、潜在的にグルカゴン受容体における顕著な効力の喪失なく、両親媒性ヘリックス構造を形成する可能性のある残基の導入よってもまた増大され得る。これは、位置16、20、24、及び28の1又は2以上における荷電残基の導入によって達成できる。よって、位置16及び20における残基は共に荷電することができ、位置16及び24における残基は共に荷電することができ、位置20及び24における残基は共に荷電することができ、位置16、20及び24における残基は全て荷電することができるか、又は位置16、20、24及び28における残基は全て荷電することができる。例えば、位置16における残基は、Glu又はLysとすることができる。位置20における残基は、Lysとすることができる。位置24における残基は、Gluとすることができる。位置28における残基は、Lysとすることができる。
【0034】
天然に存在するGln残基の一方又は双方の位置20及び24における置換はまた、酸性溶液における脱アミドの可能性を減少し、これにより化合物の化学安定性を増大する。
【0035】
位置16、17、20、27及び28における、天然に生じるアミノ酸の荷電アミノ酸での1又は2以上の置換は、親油性置換基への結合を可能にする。例えば、位置16、17、20、27又は28の残基は、Cys、Orn又はLysとすることができる。より詳細には、位置16、17、20、27及び28の残基の1又は2以上はCysとすることができる。さらに、位置16、17、20、27及び28における残基の1又は2以上は、Lysとすることができる。
【0036】
既に開示の通り、本発明の化合物は1-20個のアミノ酸のC末端ペプチド配列Zを含むことができ、例えば、国際公開第99/46283号に記載の通り、例えば、それはグルカゴン類似体ペプチドの立体構造及び/又は二次構造を安定させ、そして/あるいは酵素加水分解に対するグルカゴン類似体ペプチドの抵抗性を高める。
【0037】
存在する場合、Zは、1-20個のアミノ酸残基のペプチド配列、例えば、1-15の範囲内、より好ましくは1-10、特に1-7個のアミノ酸残基の範囲内、例えば、1、2、3、4、5、6又は7個のアミノ酸残基、例えば6個のアミノ酸残基等の、ペプチド配列を表す。ペプチド配列Z中のアミノ酸残基はそれぞれ、Ala、Leu、Ser、Thr、Tyr、Cys、Glu、Lys、Arg、Dbu(2,4ジアミノ酪酸)、Dpr(2,3-ジアミノプロパン酸)及びOrn(オルニチン)から独立して選択することができる。好ましくは、アミノ酸残基は、Ser、Thr、Tyr、Glu、Lys、Arg、Dbu、Dpr及びOrnから選択され、より好ましくはもっぱらGlu、Lys、及びCysから選択される。上記アミノ酸は、D-又はL-配置を有することができるが、好ましくはL-配置を有する。特に好ましい配列Zは、4、5、6又は7個の連続リジン残基(すなわち、Lys3、Lys4、Lys5、Lys6又はLys7)の配列、及び特に5又は6個の連続のリジン残基の配列である。Zの他の代表的な配列は、国際公開第01/04156号に示される。あるいは、配列ZのC末端残基は、Cys残基とすることができる。これは、化合物の修飾(例えば、ペグ化、又はアルブミンへの結合)に役立ち得る。このような実施形態において、配列Zは例えば、たった1つのアミノ酸長(すなわち、Z=Cys)又は2、3、4、5、6又は7個以上のアミノ酸長とすることができる。他のアミノ酸は、よってペプチドXと末端Cys残基との間のスペーサーとして機能する。
【0038】
ペプチド配列Zは、ヒトOXMの対応のIP-1部分の配列(配列Lys-Arg-Asn-Arg-Asn-Asn-Ile-Alaを有する)とわずか25%配列同一性を有する。
【0039】
所定のペプチド又はポリペプチド配列の他のポリペプチド配列(例えば、IP-1)に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、2つの配列が互いに整列される場合に、他方のポリペプチドの対応配列に対応して配置されるアミノ酸残基と同一のアミノ酸残基の、ペプチド配列における割合として計算され、必要であれば最適アライメントのためのギャップを導入する。%同一性値は、WU-BLAST-2を使用して決定することができる(Altschul et al., Methods in Enzymology, 266:460-480(1996))。WU-BLAST-2は、複数のサーチパラメータを使用し、それらのほとんどは初期値に設定される。調節可能なパラメータは、次の値: 重複スパン = 1、重複フラクション= 0.125、ワード閾値(T)= 11で設定される。%アミノ酸配列同一性値は、WU-BLAST-2によって測定されるマッチする同一残基の数を測定し、参照配列の残基総数(アライメントスコアを最大にするために、WU-BLAST-2によって参照配列中に導入されたギャップは無視する)で割り、100を掛けることによって算出される。
【0040】
よって、ZがIP-1の8個のアミノ酸と最適に整列される場合、Zは対応のIP-1のアミノ酸と一致するわずか2個のアミノ酸を有する。
【0041】
特定の実施形態において、本発明はZが不存在の化合物を供する。
【0042】
本発明の化合物中の1又は2以上のアミノ酸側鎖は、親油性置換基に結合できる。親油性置換基は、アミノ酸側鎖の原子に共有結合で結合させることができる、或いはスペーサーによってアミノ酸側鎖に結合させることができる。親油性置換基は、ペプチドXの一部、及び/又はペプチドZの一部であるアミノ酸の側鎖に結合させることができる。
【0043】
いかなる特定の理論に束縛されることを望むことなく、血流において親油性置換基がアルブミンを結合し、これにより酵素分解から本発明の化合物を遮蔽し、そして化合物の半減期を増長することが考えられる。スペーサーは存在する場合、化合物と親油性置換基との間にスペースを供するために使用される。
【0044】
親油性置換基は、エステル、スルホニルエステル、チオエステル、アミド又はスルホンアミドを介してアミノ酸側鎖又はスペーサーに結合することができる。従って、好適には、親油性置換基は、エステル、スルホニルエステル、チオエステル、アミド又はスルホンアミドの一部を形成するアシル基、スルホニル基、N原子、O原子又はS原子を含むと理解されたい。好適には、親油性置換基中のアシル基は、アミノ酸側鎖又はスペーサーとアミド又はエステルの一部を形成する。
【0045】
親油性置換基は、4〜30個のC原子を有する炭化水素鎖を含むことができる。好ましくは、それは少なくとも8又は12個のC原子、好ましくは、24個のC原子又はそれ以下、又は20個又はそれ以下のC原子を有する。炭化水素鎖は、直鎖又は分岐とすることができ、飽和又は不飽和とすることができる。炭化水素鎖は好ましくは、アミノ酸側鎖又はスペーサーへの結合の一部を形成する部分、例えば、アシル基、スルホニル基、N原子、O原子又はS原子と置換されているものと理解されたい。最も好ましくは、炭化水素鎖は、アシルで置換され、従って、炭化水素鎖は、アルカノイル基、例えば、パルミトイル、カプロイル、ラウロイル、ミリストイル又はステアロイルの一部とすることができる。
【0046】
従って、親油性置換基は、以下の式:
【化1】
を有することができる。
【0047】
Aは、例えば、アシル基、スルホニル基、NH、N-アルキル、O原子又はS原子、好適には、アシルとすることができる。nは、3〜29、好適には、少なくとも7又は少なくとも11、好適には、23以下、より好適には、19以下の整数である。
【0048】
炭化水素鎖は、さらに置換できる。例えば、さらにNH2、OH及びCOOHから選択される最大3つの置換基で置換できる。炭化水素鎖がさらに置換される場合、好ましくは、それはさらにたった1つの置換基で置換される。あるいは、又はさらに、炭化水素鎖はシクロアルカン又はヘテロシクロアルカン、例えば、以下に示す、
【化2】
を含むことができる。
【0049】
好ましくは、シクロアルカン又はヘテロシクロアルカンは、6員環である。最も好ましくは、それはピペリジンである。
【0050】
あるいは、親油性置換基は、シクロペンタノフェナントレン主鎖に基づくことができ、それは一部又は全てが不飽和又は飽和とすることができる。主鎖中の炭素原子はそれぞれMe又はOHで置換できる。例えば、親油性置換基は、コリル、デオキシコリル又はリトコリルとすることができる。
【0051】
上記の通り、親油性置換基はスペーサーによってアミノ酸側鎖に結合できる。スペーサーが存在する場合、スペーサーは親油性置換基及びアミノ酸側鎖に結合する。スペーサーは、エステル、スルホニルエステル、チオエステル、アミド又はスルホンアミドによって、親油性置換基及びアミノ酸側鎖に独立して結合できる。従ってそれは、アシル、スルホニル、N原子、O原子又はS原子からそれぞれ選択される2つの部分を含むことができる。スペーサーは、式:
【化3】
(式中、
B及びDが、アシル、スルホニル、NH、N-アルキル、O原子及びS原子、好ましくは、アシル及びNHからそれぞれ独立して選択される)を有することができる。好ましくは、nは、1〜10、好ましくは、1〜5の整数である。スペーサーはさらに、C0-6アルキル、C0-6アルキルアミン、C0-6アルキルヒドロキシ及びC0-6アルキルカルボキシから選択される1又は2以上の置換基で置換できる。
【0052】
あるいは、スペーサーは上記式の2又は3以上の繰り返し単位を有することができる。B、D及びnは、各繰り返し単位についてそれぞれ独立して選択される。隣接の繰り返し単位は、その各B及びD部分を介して互いに共有結合で結合することができる。例えば、隣接の繰り返し単位のB及びD部分は、エステル、スルホニルエステル、チオエステル、アミド又はスルホンアミドをともに形成することができる。スペーサーの各末端における遊離のB及びD単位は、上記の通りアミノ酸側鎖及び親油性置換基に結合される。
【0053】
好ましくは、スペーサーは5又はそれ以下、4又はそれ以下又は3又はそれ以下の繰り返し単位を有する。最も好ましくは、スペーサーは繰り返し単位を2つ、又は1つ有する。
【0054】
スペーサー(又は繰り返し単位を有する場合、スペーサーの繰り返し単位の1又は2以上)は、例えば天然の又は人工のアミノ酸とすることができる。機能性側鎖を有するアミノ酸に関して、B及び/又はDはアミノ酸の側鎖内の一部分とすることができると理解されたい。スペーサーは、任意の天然に生じる又は人工のアミノ酸とすることができる。例えば、スペーサー(又は繰り返し単位を有する場合、スペーサーの繰り返し単位の1又は2以上)は、Gly、Pro、Ala、Val、Leu、Ile、Met、Cys、Phe、Tyr、Trp、His、Lys、Arg、Gln、Asn、α-Glu、γ-Glu、Asp、Ser、Thr、Gaba、Aib、β-Ala、5-アミノペンタノイル、6-アミノヘキサノイル、7-アミノヘプタノイル、8-アミノオクタノイル、9-アミノノナノイル又は10-アミノデカノイルとすることができる。
【0055】
例えば、スペーサーは、γ-Glu、Gaba、β-Ala及びα-Gluから選択される単一アミノ酸とすることができる。
【0056】
本発明の化合物において親油性置換基は、いずれかのアミノ酸側鎖に結合できる。好ましくはアミノ酸側鎖は、スペーサー又は親油性置換基とエステル、スルホニルエステル、チオエステル、アミド又はスルホンアミドを形成するためのカルボキシ、ヒドロキシル、チオール、アミド又はアミン基を含む。例えば、親油性置換基は、Asn、Asp、Glu、Gln、His、Lys、Arg、Ser、Thr、Tyr、Trp、Cys又はDbu、Dpr又はOrnに結合できる。好ましくは親油性置換基は、Lysに結合される。本明細書中で供される式でLysとして示されるアミノ酸は、例えば親油性置換基が付加されたDbu、Dpr又はOrnで置換することができる。
【0057】
親油性置換基及びスペーサーの例は、以下の式:
【化4】
で示される。
【0058】
ここで、本発明の化合物中のLys残基は、アミド部分を介してγ-Glu(スペーサー)に共有結合される。パルミトイルは、アミド部分を介してγ-Gluスペーサーに共有結合される。
【0059】
あるいは、またはさらに、本発明の化合物中の1又は2以上のアミノ酸側鎖は、例えばインビボ(in vivo)(例えば、血漿中)の溶解性及び/又は半減期及び/又は生物学的利用率を増大するために重合体部分に結合できる。このような修飾はまた、治療用タンパク質及びペプチドのクリアランス(例えば、腎クリアランス)を減少することが知られる。
【0060】
重合体部分は、好ましくは水溶性(両親媒性又は親水性)、無毒性、及び医薬的に不活性である。適した重合体部分は、ポリエチレングリコール(PEG)、PEGのホモ又はコポリマー、PEGのモノメチル置換ポリマー(mPEG)、及びポリオキシエチレングリセロール(POG)を含む。例えば、Int. J. Hematology 68:1(1998); Bioconjugate Chem. 6:150(1995); 及びCrit. Rev. Therap. Drug Carrier Sys. 9:249(1992)を参照されたい。
【0061】
他の適した重合体部分は、ポリリジン、ポリアスパラギン酸及びポリグルタミン酸等のポリアミノ酸を含む(例えば、Gombotz, et al.(1995), Bioconjugate Chem. , vol. 6 : 332-351; Hudecz, et al.(1992), Bioconjugate Chem. , vol. 3, 49-57; Tsukada, et al.(1984), J. Natl. Cancer Inst. , vol 73, : 721-729; 及びPratesi, et al.(1985), Br. J. Cancer, vol. 52: 841-848)を参照されたい)。
【0062】
重合体部分は、直鎖又は分岐鎖とすることができる。それは、分子量500-40,000 Da、例えば、500-10,000 Da、1000-5000 Da、10,000-20,000 Da、又は20,000-40,000Daを有することができる。
【0063】
本発明の化合物は、このような部分全ての総分子量が通常上記範囲内である場合に、2又は3以上のこのような部分を含むことができる。
【0064】
重合体部分は、アミノ酸側鎖のアミノ、カルボキシル又はチオール基に(共有結合によって)結合することができる。好ましい例は、Cys残基のチオール基及びLys残基のイプシロンアミノ基であり、またAsp及びGlu残基のカルボキシル基もまた使用できる。
【0065】
当業者のリーダーは、カップリング反応を行うために使用できる適した技術を熟知するであろう。例えば、メトキシ基を運ぶPEG部分は、Nektar Therapeutics AL.から市販の試薬を使用してマレイミド結合によってCysチオール基に結合することができる。適する化学の詳細に関して、国際公開第2008/101017号、及び上記の参考文献もまた参照されたい。
【0066】
他の態様において、本発明の化合物中の、例えば、ペプチドXにおけるアミノ酸側鎖の1又は2以上は、重合体部分に結合される。
【0067】
さらなる態様において、本発明は担体を混合した、本明細書に記載の本発明の化合物、又はその塩又は誘導体を含む組成物を供する。
【0068】
用語「その誘導体」とは、化合物のいずれか1つの誘導体を意味する。誘導体は、化合物のあらゆる化学修飾、あらゆる保存的変異形、あらゆるプロドラッグ及びあらゆる代謝物を含む。
【0069】
本発明はまた、以下の疾患の治療のための、医薬の調製における本発明の化合物の使用を供する。
【0070】
本発明はまた、組成物が医薬的に許容される組成物であって、担体が医薬的に許容される担体である組成物を供する。
【0071】
ペプチド合成
本発明の化合物は、標準合成方法、組換え発現系、又は他の高度な方法によって製造することができる。よって、グルカゴン類似体は、例えば、
(a)固相又は液相方法によって、段階的に又はフラグメントアセンブリ(fragment assembly)によってペプチドを合成し、最終ペプチド生成物を単離し且つ精製すること; 又は
(b)宿主細胞においてペプチドをコードする核酸コンストラクトを発現し、且つ宿主細胞培養物から発現生成物を回収すること; 又は
(c)ペプチドをコードする核酸コンストラクトの無細胞のインビトロ(in vitro)での発現を生じさせ、発現生成物を回収すること;
を含む方法、
又は(a)、(b)、及び(c)の方法の任意の組み合わせを含み、ペプチドの断片を得て、続いて断片を結合しペプチド得て、ペプチドを回収する方法を包含する多くの態様で合成することができる。
【0072】
固相又は液相ペプチド合成によって本発明の類似体を合成することが好ましい。これに関連して、国際公開第98/11125号、特に、Fields, GB等の, 2002, 「Principles and practice of solid-phase peptide synthesis」. In: Synthetic Peptides (2nd Edition)、及びその実施例を参照されたい。
【0073】
組換え発現に関して、本発明の核酸断片は通常適したベクター中に挿入され、本発明の断片を運搬するクローニング又は発現ベクターを形成し、このような新規ベクターもまた本発明の一部である。ベクターは、適用の目的及びタイプに基づき、プラスミド、ファージ、コスミド、ミニ染色体、又はウイルスの形態とすることができるが、特定の細胞において単に一過性に表現されているネイキッドDNAもまた重要なベクターである。本発明の好ましいクローニング及び発現ベクター(プラスミドベクター)は自己複製が可能であり、これにより高レベルの発現又は続くクローニング用の高レベル複製のための、高いコピー数が可能である。
【0074】
概要としては、発現ベクターは5'から3'方向への特徴及び操作可能な結合における次の特徴: 本発明の核酸断片の発現を開始するためのプロモーター、任意には(細胞外相へ又は、適用可能な場合、ペリプラズマ中への)分泌を可能にするリーダーペプチドをコードする核酸配列、本発明のペプチドをコードする核酸断片、及び任意にはターミネーターをコードする核酸配列を含む。それらは、選択可能なマーカー及び複製開始点等のさらなる特徴を含むことができる。生産株又は細胞株中で発現ベクターで操作する場合、ベクターが宿主細胞ゲノム中に組み込まれることが可能なことが好ましいとすることができる。当業者は適したベクターを非常に熟知しており、特定の必要性に応じて設計することが可能である。
【0075】
本発明のベクターは、本発明の化合物を生成する宿主細胞を形質転換するために使用される。このような形質転換された細胞(本発明の一部でもある)は、本発明の核酸断片及びベクターの増殖に使用されるか、又は本発明のペプチドの組換え生成に使用される培養細胞又は細胞株とすることができる。
【0076】
本発明の好ましい形質転換細胞は、細菌(大腸菌(例えば、大腸菌(E. coli))、桿菌(例えば、枯草菌(Bacillus subtilis))、サルモネラ菌、又はマイコバクテリア(好ましくは、非病原性、例えば、マイコバクテリウム・ボビスBCG(M. bovis BCG))、酵母(例えば、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)及びピキア・パストリス(Pichia pastoris)等)、及び原生動物等の微生物である。あるいは、形質転換細胞は、多細胞生物由来とすることができ、すなわち、真菌細胞、昆虫細胞、藻類細胞、植物細胞、又は哺乳類細胞等の動物細胞とすることができる。クローニング及び/又は最適化発現の目的には、形質転換細胞が本発明の核酸断片を複製可能であることが好ましい。核断片を発現している細胞は本発明の有用な実施形態であり、それらは本発明のペプチドの小規模又は大規模調製に使用可能である。
【0077】
形質転換細胞によって本発明のペプチドを生成する場合、決して必須ではないが、発現生成物が培地中に分泌されることが好都合である。
【0078】
効果
関連化合物のGLP-1又はグルカゴン(Glu)受容体への結合は、アゴニスト活性の指標として使用できるが、通常関連受容体への化合物の結合によって生じる細胞内シグナル伝達を測定する生物検定を使用することが好ましい。例えば、グルカゴンアゴニストによるグルカゴン受容体の活性化は、細胞性サイクリックAMP(cAMP)形成を刺激し得る。同様に、GLP-1アゴニストによるGLP-1受容体の活性化は、細胞性cAMP形成を刺激し得る。よって、これらの2つの受容体の1つを発現している適した細胞におけるcAMPの生成は、関連受容体の活性をモニターすることに使用できる。よってそれぞれ1つの受容体を発現しているが他方は発現していない細胞型の適した対の使用は、両方の受容体型へのアゴニスト活性を測定することに使用できる。
【0079】
当業者は適したアッセイ型を認識できるであろう。そして、実施例を後述する。GLP-1受容体及び/又はグルカゴン受容体は、実施例に記載される受容体の配列を有することができる。例えば、アッセイは、初期受入番号GI:4503947を有するヒトグルカゴン受容体(グルカゴン-R)及び/又は初期受入番号GI:166795283を有するヒトグルカゴン様ペプチド1受容体(GLP-1R)を使用することができる(前駆物質のタンパク質配列に言及する場合、当然アッセイはシグナル配列が欠如した成熟タンパク質を利用することができると理解すべきである)。
【0080】
EC50値は、所定の受容体におけるアゴニスト効力の数値尺度として使用できる。EC50値は特定のアッセイにおいて、その化合物の最大活性の半分を達成するのに必要な化合物の濃度尺度である。よって、例えば特定のアッセイにおけるグルカゴンのEC50[GLP-1]未満のEC50[GLP-1]を有する化合物は、グルカゴンより大きなGLP-1受容体作動薬効力を有するとみなさすことができる。
【0081】
本明細書に記載される化合物は、典型的にはGlu-GLP-1デュアルアゴニストであり、グルカゴン受容体とGLP-1受容体双方においてcAMP形成を刺激することが可能であるという観察によってそれらは測定できる。各受容体の刺激は、別個のアッセイで測定し、その後互いに比較できる。
【0082】
所定の化合物に関してグルカゴン受容体に関するEC50値(EC50[グルカゴン-R])を、GLP-1受容体に関するEC50値(EC50[GLP-1R])と比較することによって、斯かる化合物の相対的グルカゴン選択性(%)は次の通り理解できる:
【0083】
相対的グルカゴン-R選択性[化合物]=(1/EC50[グルカゴン-R])x100 /(1/EC50[グルカゴン-R]+ 1/EC50[GLP-1R])
【0084】
相対的GLP-1R選択性は、同様に理解できる:
【0085】
相対的GLP-1R選択性[化合物]=(1/EC50[GLP-1R])x100 /(1/EC50[グルカゴン-R]+ 1/EC50[GLP-1R])
【0086】
化合物の相対的選択性により、GLP-1又はグルカゴン受容体へのその効果を、他の受容体へのその効果と直接比較することができる。例えば、相対的GLP-1選択性がより高い化合物は、グルカゴン受容体と比較してGLP-1受容体により有効である。
【0087】
以下に記載されるアッセイを使用して、ヒトグルカゴンに関して相対的GLP-1選択性が約5%であることを今回我々は発見した。
【0088】
本発明の化合物は、グルカゴン-Rアゴニスト活性の特定のレベルに関して、ヒトグルカゴンより高い相対的GLP-1R選択性を有し、化合物はグルカゴンより高いGLP-1Rアゴニスト活性のレベル(すなわち、GLP-1受容体においてより大きな効力)を示すであろう。グルカゴン及びGLP-1受容体における特定の化合物の絶対効力は、適した相対的GLP-1R選択性が達成される限り、天然のヒトグルカゴンより大きい、小さい又はほぼ同等とすることができると理解されたい。
【0089】
しかしながら、本発明の化合物はヒトグルカゴンより低いEC50[GLP-1R]を有することができる。化合物は、ヒトグルカゴンの10倍未満、5倍未満、又は2倍未満であるEC50[グルカゴン-R]を維持しながら、グルカゴンより低いEC50[GLP-1-R]有することができる。
【0090】
本発明の化合物は、ヒトグルカゴンの2倍未満のEC50[グルカゴン-R]を有することができる。化合物は、ヒトグルカゴンの2倍未満のEC50[グルカゴン-R]及びヒトグルカゴンの半分未満、ヒトグルカゴンの5分の1未満、又は10分の1未満のEC50[GLP-1R]を有することができる。
【0091】
化合物の相対的GLP-1R選択性は、5%〜95%とすることができる。例えば、化合物は、相対的選択性5-20%、10-30%、20-50%、30-70%、又は50-80%; 又は30-50%、40-60,%、50-70%又は75-95%を有することができる。
【0092】
本発明の化合物はまた、カルシトニン遺伝子関連ペプチド1(CGRP1)、副腎皮質刺激ホルモン放出因子1及び2(CRF1及びCRF2)、胃抑制ポリペプチド(GIP)、グルカゴン様ペプチド1及び2(GLP-1及びGLP-2、グルカゴン(GCGR)、セクレチン、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)、副甲状腺ホルモン1及び2(PTH1及びPTH2)、血管作用性小腸ペプチド(VPAC1及びVPAC2)に限定されない他のクラスB GPCR受容体への効果を有することができる。
【0093】
治療上の使用
本発明の化合物は、とりわけ、肥満及び代謝性疾患のための魅力的な治療選択を供することができる。
【0094】
メタボリックシンドロームは、個人における一群の代謝性危険因子を特徴とする。それらは、腹部肥満(腹部内臓周囲の過剰脂肪組織)、アテローム生成脂質異常症(動脈壁におけるプラーク発達を助長する、高トリグリセリド、低HDLコレステロール及び/又は高LDLコレステロールを含む血中脂質疾患)、血圧上昇(高血圧症)、インスリン抵抗性及びグルコース不耐性、血栓形成促進状態(例えば、血中の高いフィブリノーゲン又はプラスミノーゲン活性化因子阻害因子-1)、及び炎症誘発状態(例えば、血中におけるC反応性タンパク質の増加)を含む。
【0095】
メタボリックシンドロームに罹患する個人は、冠動脈心疾患及び他の動脈硬化症(例えば、、脳卒中及び末梢血管疾患)の顕性化に関連する他の疾患のリスクが増大している。斯かるシンドロームの根底にある主たる危険因子は、腹部肥満のように思われる。
【0096】
いかなる特定の理論に束縛されることを望むことなく、本発明の化合物はGluGLP-1デュアルアゴニストとして作用すると考えられる。デュアルアゴニストは、グルカゴンの脂肪代謝への効果とGLP-1の食物摂取への効果とを兼ね備える。従ってそれらは相乗的に作用し、過剰脂肪沈着の排出を促進し持続可能な体重減少を誘発し得る。
【0097】
デュアルGluGLP-1アゴニストの相乗効果は、それらの体重への効果とは完全に別個となり得る高コレステロール及びLDL等の循環器系危険因子の減少もまた生じることができる。
【0098】
よって、本発明の化合物は(例えば、食欲、摂食、食物摂取、カロリー摂取、及び/又はエネルギー消費の制御によって)体重増加を予防、体重減少を促進、過剰体重を減少又は病的肥満を含む肥満、及び肥満関連炎症、肥満関連胆嚢疾患及び肥満誘発睡眠時無呼吸を含むが、それらに限定されない関連疾患及び健康状態を治療するための医薬品として使用できる。本発明の化合物はまた、メタボリックシンドローム、高血圧症、アテローム性脂質異常症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、冠動脈心疾患及び脳卒中の治療に使用できる。これらは、肥満と関連し得るあらゆる疾患である。しかしながら、本発明の化合物のこれらの疾患への効果は、体重への効果を介して全体的に又は部分的に媒介され得るか、又はそれとは独立したものとすることができる。
【0099】
特に、本発明に記載される化合物は、糖耐性への影響がない又はほとんどなく、体重増加の防止又は体重減少の促進における使用を見出すことができる。記載の化合物が、適した血糖コントロール動物モデルにおいて、HbA1cレベルへの影響がない又はほとんどなく、体重減少への顕著な効果を有することが分かっている。
【0100】
よって本発明は、上記の疾患の治療において、それを必要とする個体における本発明の化合物の使用を供する。
【0101】
本発明はまた、治療方法における使用、特に上記疾患の治療方法における使用のための本発明の化合物を供する。
【0102】
好ましい態様において、記載の化合物は、体重増加の防止又は体重減少の促進に使用することができる。
【0103】
特定の実施形態において、本発明は体重増加の防止又は体重減少の促進のための、それを必要とする個体における化合物の使用を含む。
【0104】
特定の実施形態において、本発明は、過剰体重によって生じる又はそれを特徴とする疾患の治療方法、例えば、肥満、病的肥満、術前の病的肥満、肥満関連炎症、肥満関連胆嚢疾患、肥満誘発睡眠時無呼吸、高血圧症、アテローム性脂質異常症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、冠動脈心疾患、末梢動脈疾患、脳卒中又は細小血管障害の治療及び/又は予防において、それを必要とする個体における化合物の使用を含む。
【0105】
他の態様において、記載の化合物は、循環LDLレベルの低下、及び/又はHDL/LDL比の増大方法において使用することができる。
【0106】
特定の実施形態において、本発明は循環LDLレベルの低下、及び/又はHDL/LDL比の増大方法における、それを必要とする個体における、化合物の使用を含む。
【0107】
医薬組成物
本発明の化合物、又はその塩は、典型的には医薬的に許容される担体と共に本発明の化合物、又はその塩の治療上有効量を含む、保存又は投与のために調製される医薬組成物として製剤することができる。
【0108】
本発明の化合物の治療上有効量は、検討中の投与経路、治療される哺乳類のタイプ、及び特定の哺乳類の身体的特性に依存するであろう。これらの因子及びそれらの斯かる量の決定への関係性は、医学分野の当業者に周知である。斯かる量及び投与方法は、最適効果を達成するよう適合させることができ、体重、食事、併用薬物及び当医学分野の当業者に周知の他の因子等の因子に依存的とすることができる。ヒトでの使用に最も適した投与サイズ及び投与計画は、本発明によって得られた結果によって導き出すことができ、適切に設計された臨床試験で確認できる。
【0109】
有効な投与量及び治療プロトコールは、実験動物において少量から開始し続いて効果をモニターしながら投与量を増大し、さらに投与計画を体系的に変化させる通常の手段によって決定することができる。所定の対象に関して最適投与量を決定する場合に、多くの因子を臨床医は考慮することができる。このような考慮は、当業者に周知である。
【0110】
用語「医薬的に許容される担体」とは、任意の標準的医薬担体を含む。治療上の使用のための医薬的に許容される担体は医薬分野で周知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.(A. R. Gennaro edit. 1985)に記載される。例えば、弱酸性又は生理的pHの無菌生理食塩水及びリン酸緩衝生理食塩水を使用することができる。pH緩衝剤は、リン酸、クエン酸、酢酸、トリス/ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス)、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノプロパンスルホン酸(TAPS)、炭酸水素アンモニウム、ジエタノールアミン、ヒスチジン(好ましい緩衝剤である)、アルギニン、リジン、又は酢酸又はそれらの混合物とすることができる。斯かる用語はさらに、ヒトを含む動物における使用に関する米国薬局方に収載される任意の薬剤を含む。
【0111】
用語「医薬的に許容される塩」とは、化合物のいずれか1つの塩を意味する。塩は、酸付加塩及び塩基性塩等の医薬的に許容される塩を含む。酸付加塩の例は、塩酸塩、クエン酸塩及び酢酸塩を含む。塩基性塩の例は、カチオンが、ナトリウム及びカリウム等のアルカリ金属、カルシウム等のアルカリ土類金属、及びアンモニウムイオン+N(R33(R4)(式中、R3及びR4が、任意には置換C1-6-アルキル、任意には置換C2-6-アルケニル、任意には置換アリール、又は任意には置換ヘテロアリールとして独立して設計される)から選択される塩を含む。医薬的に許容される塩の他の例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」 ,17th edition. Ed. Alfonso R. Gennaro(Ed.), Mark Publishing Company, Easton, PA, U.S.A., 1985及びより最新の号、並びにEncyclopaedia of Pharmaceutical Technologyに記載される。
【0112】
「治療」は、有益な又は所望の臨床結果を得るためのアプローチである。本発明の目的に関して、有益な又は所望の臨床結果は、検出可能又は検出不可能にかかわらず、症状の緩和、疾患程度の軽減、疾患の安定化(すなわち、悪化していない)状態、疾患進行の遅延又は減速、疾患状態の回復又は寛解、及び鎮静(部分的又は全体的)を含むがそれらに限定されない。「治療」とは、治療を受けない場合の予期寿命と比較した寿命の延長もまた意味し得る。「治療」は、疾患の発生の予防又は病態の変更を意図して実施される治療介入である。従って、「治療」は治療及び予防(prophylactic)又は予防(preventive)の両方の処置を意味する。治療を必要とする人とは、既に疾患に罹患している人、及び疾患を予防すべき人を含む。
【0113】
医薬組成物は、単位剤形とすることができる。このような形態において、組成物は、活性成分の適量を含む単位用量に分けられる。単位剤形は、パッケージ化された調製物とすることができ、斯かるパッケージは、調製物の個々の量を含むもの、例えば、パッケージ化された個包錠剤、カプセル剤、及びバイアル又はアンプル中の粉末とすることができる。単位剤形は、1つのカプセル剤、カシェー、又はその錠剤とすることができるか、又はこれらのパッケージ化された形態の任意の適した数とすることができる。それは、単一用量の注射可能な形態、例えば、ペン形態で供することができる。特定の実施形態において、パッケージ化された形態は、使用説明を伴うラベル又はインサートを含む。組成物は、任意の適した投与経路及び手段のために製剤することができる。医薬的に許容される担体又は希釈剤は、経口、直腸、経鼻、局所(バッカル及び舌下を含む)、経膣又は非経口(皮下、筋内、静脈内、皮内、及び経皮を含む)投与に適した製剤で使用されるものを含む。製剤は、好都合に単位剤形で提示でき、薬学分野で周知の任意の方法で調製することができる。
【0114】
皮下又は経皮投与モードは、特に本明細書中に記載の化合物に適したものとすることができる。
【0115】
本発明の組成物は、さらに化合物の安定性を増大、生物学的利用率を増加、溶解性を増大、有害作用を減少、当業者に周知の時間治療を達成し、且つ患者コンプライアンスを増大する又はそれらのいずれかの組み合わせを達成するために、例えば、共有結合性、疎水性及び静電気的相互作用を介して、薬剤担体、薬剤送達システム及び高度の薬剤送達システムにさらに配合、又は結合させることができる。担体、薬剤送達システム及び高度の薬剤送達システムの例は、ポリマー、例えば、セルロース及び誘導体、多糖、例えば、デキストラン及び誘導体、デンプン及び誘導体、ポリ(ビニルアルコール)、アクリル酸及びメタクリル酸ポリマー、ポリ乳酸及びポリグリコール酸及びそれらのブロックコポリマー、ポリエチレングリコール、担体タンパク質、例えば、アルブミン、ゲル、例えば、熱ゲル化システム、例えば、当業者に周知のブロック共重合体システム、ミセル、リポソーム、微粒子、ナノ微粒子、液晶及びその分散、脂質-水システムにおける相挙動分野の当業者に周知の、L2相及びその分散、重合体ミセル、多相エマルション、自己エマルション化、自己マイクロエマルション化、シクロデキストリン及びその誘導体、及びデンドリマーを含むが、それらに限定されない。
【0116】
組み合わせ療法
上記の通り、以下の本発明の化合物への言及は、医薬的に許容される塩又はその溶媒和物及び1つ以上の本発明の異なる化合物を含む組成物にもまた及ぶことと理解されたい。
【0117】
本発明の化合物は、組み合わせ療法の一部として、肥満、高血圧症脂質異常症又は糖尿病の治療用薬剤と共に投与することができる。
【0118】
このような場合、2つの活性薬剤は共に又は別々に、そして同一の医薬製剤の一部として又は別々の製剤として供することができる。
【0119】
よって、化合物又はその塩は、グルカゴン様ペプチド受容体1作動薬、ペプチドYY又はその類似体、カンナビノイド受容体1アンタゴニスト、リパーゼ阻害剤、メラノコルチン受容体4作動薬、又はメラニン凝集ホルモン受容体1アンタゴニストを含むが、それらに限定されない抗肥満剤と組み合わせてさらに使用できる。
【0120】
本発明の化合物又はその塩は、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、アンジオテンシンII受容体遮断剤、利尿剤、ベータ-遮断剤、又はカルシウムチャネル遮断剤を含むが、それらに限定されない降圧薬と組み合わせて使用できる。
【0121】
本発明の化合物又はその塩は、スタチン、フィブラート、ナイアシン及び/又はコレステロール吸収阻害剤を含むが、それらに限定されない脂質異常症薬と組み合わせて使用できる。
【0122】
さらに、本発明の化合物又はその塩は、メトホルミン、スルホニル尿素、グリニド、DPP-IV阻害剤、グリタゾン、異なるGLP-1アゴニスト又はインスリンを含むが、それらに限定されない抗糖尿病薬と組み合わせて使用できる。好ましい実施形態において、化合物又はその塩は、適切な血糖コントロールを達成するために、インスリン、DPP-IV阻害剤、スルホニル尿素又はメトホルミン、特にスルホニル尿素又はメトホルミンと組み合わせて使用される。より好ましい実施形態において、化合物又はその塩は、適切な血糖コントロールを達成するためにインスリン又はインスリン類似体と組み合わせて使用される。インスリン類似体の例は、ランタス、ノボラピッド、ヒューマログ、ノボミックス、及びアクトラファン(Actraphane)HMを含むがそれらに限定されない。
【0123】
方法
グルカゴン類似体の一般的な合成
固相ペプチド合成(SPPS)を、NMP中のポリスチレン樹脂(TentaGel S Ram)上で標準のFmoc法を使用して、マイクロウェーブ補助シンセサイザー上で行った。塩基としてのDIPEAと共に、HATUをカップリング剤として使用した。ピペリジン(NMP中20%)を、脱保護に使用した。擬似プロリン(pseudoproline): 適用可能な場合に、Fmoc-Phe-Thr(.Psi. Me, Me pro)-OH及びFmoc-Asp-Ser(.Psi., Me, Me pro)-OH(NovaBiochemから購入)を使用した。
【0124】
使用した略語は以下の通りである。
ivDde:1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキシリデン)3-メチル-ブチル
Dde:1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキシリデン)-エチル
DCM:ジクロロメタン
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
DIPEA:ジイソプロピルエチルアミン
EtOH:エタノール
Et2O:ジエチルエーテル
HATU:N-[(ジメチルアミノ)-1H-1,2,3-トリアゾル(triazol)[4,5-b]ピリジン-1-イルメチレン]-N-メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェイトN-オキサイド
MeCN:アセトニトリル
NMP:N-メチルピロリドン
TFA:トリフルオロ酢酸
TIS:トリイソプロピルシラン
【0125】
切断:
未精製ペプチドを、2時間の室温で95/2.5/2.5%(v/v)TFA/TIS/水の処理によって樹脂から切断した。配列にメチオニンを有するペプチドに関して、95/5 %(v/v)TFA/EDT混合物を使用した。ほとんどのTFAを減圧下で除去し、未精製ペプチドを沈殿させジエチルエーテルで洗浄し、常温で乾燥させ一定重量とした。
【0126】
アシル化グルカゴン類似体の一般的合成
アシル化されるリジン上のイプシロンアミンを除いて、側鎖基上で樹脂にさらに結合させ完全に保護したペプチドでリジン残基の側鎖上でアシル化したことを除いて、ペプチド主鎖をグルカゴン類似体の一般的合成に関する上記の通り合成した。アシル化するリジンは、Fmoc-Lys(ivDde)-OH又はFmoc-Lys(Dde)-OHを使用して取り込んだ。ペプチドのN末端を、NMP中でBoc2Oを使用してBoc基で保護した。ペプチドを樹脂に結合させたまま、NMP中の5%ヒドラジン水和物を使用してivDde保護基を選択的に切断した。続いて、上記の標準ペプチドカップリング方法を使用してピペリジンで脱保護し脂肪酸でアシル化した、Fmoc-Glu-OtBuのようなスペーサーアミノ酸と最初に、脱保護されたリジン側鎖を結合させた。あるいは、N末端におけるヒスチジンをBoc-His(Boc)-OHとして最初から取り込むことができる。樹脂からの切断及び精製を上記の通り行った。
【0127】
ヒトグルカゴン-及びGLP-1受容体を発現している細胞株の産生
ヒトグルカゴン受容体(グルカゴン-R)(初期受入番号P47871)又はヒトグルカゴン様ペプチド1受容体(GLP-1R)(初期受入番号P43220)をコードするcDNAを、cDNAクローンBC104854(MGC:132514/IMAGE:8143857)又はBC112126(MGC:138331/IMAGE:8327594)からそれぞれクローン化した。グルカゴン-R又はGLP-1-RをコードしているDNAを、サブクローニングに関する末端制限部位をコードするプライマーを使用してPCRで増幅させた。5’末端プライマーはさらに効率的な翻訳を保証する隣接Kozakコンセンサス配列をコードした。グルカゴン-R及びGLP-1-RをコードするDNAのフィデリティーを、DNA配列決定によって確認した。グルカゴン-R又はGLP-1-RをコードするPCR生成物を、ネオマイシン(G418)抵抗性マーカーを含む哺乳類発現ベクター中にサブクローニングした。
グルカゴン-R又はGLP-1-Rをコードする哺乳類発現ベクターを、標準リン酸カルシウムトランスフェクション法によってHEK293細胞中にトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、細胞を限定希釈クローニングのために播種し、培地中で1 mg/ml G418で選択した。3週間後、グルカゴン-R及びGLP-1-R発現細胞の12個の生存コロニーを取り出し、増殖させそして以下のグルカゴン-R及びGLP-1-R効果アッセイ中で試験した。1つのグルカゴン-R発現クローン及び1つのGLP-1-R発現クローンを、化合物プロファイリングのために選択した。
【0128】
グルカゴン受容体及びGLP-1-受容体効果アッセイ
ヒトグルカゴン-R、又はヒトGLP-1-Rを発現するHEK293細胞を、0.01%ポリL-リジンでコーティングした96ウェルのマイクロタイタープレート中でウェルあたり40,000細胞で播種し、100μl成長培地中で培養中で1日間成長させた。分析の日に、成長培地を除去し細胞を一度200 μlのタイロード緩衝剤で洗浄した。増大濃度の試験ペプチド、100 μM IBMX、及び6 mMグルコースを含む100 μlタイロード緩衝剤中で、細胞を37℃で最長15分間インキュベートした。反応を25μlの0.5 M HClの添加によって終了し、60分間氷上でインキュベートした。Perkin-Elmer由来のFlashPlate(登録商標)cAMPキットを使用して、製造者の使用説明書に従ってcAMP含有量を評価した。EC50及び参照化合物(グルカゴン及びGLP-1)と比較した相対的効力を、コンピューターエイドのカーブフィッティングによって評価した。
【0129】
HbA1c測定
ヘモグロビンA1C(HbA1c)のレベルを測定することによって、化合物の対象のグルコースレベルへの長期効果を評価することが可能である。HbA1cは、細胞中のレベルが、生存期間中細胞が暴露されているグルコースの平均レベルを反映するヘモグロビンのグリコシル化形態である。マウスにおいて、HbA1cへの転換は赤血球の約47日の寿命によって制限されているので、HbA1cはその前4週間の平均血糖値に関する関連バイオマーカーである(Abbrecht & Littell, 1972; J. Appl. Physiol. 32, 443-445)。
HbA1cの測定は、試料中のHbA1cが抗HbA1cと反応して可溶性抗原抗体複合体を形成する免疫阻害比濁法(TINIA)に基づく。ポリハプテンの添加は、過剰抗HbA1c抗体と反応し、不溶性抗体ポリハプテン複合体を形成し、それは比濁法で測定できる。溶血試料中の遊離ヘモグロビンは、特徴的な吸収スペクトルを有する誘導体へ転換され、プレインキュベーション段階中に二色で(bichromatically)測定される。最終結果が総ヘモグロビンのパーセントHbA1cとして表現される(Cobas(登録商標)Application note A1C-2)。
【0130】
コレステロールレベル測定
アッセイは、酵素比色分析方法である。マグネシウムイオンの存在下で、デキストラン硫酸は選択的にLDL、VLDLA及びカイロミクロンと水溶性複合体を形成し、これらはPEG-修飾酵素に抵抗性がある。HDLコレステロールは、PEGを用いてアミノ基へ結合したコレステロールエステラーゼ及びコレステロールオキシダーゼによって酵素的に測定される。コレステロールエステルは定量的に分解され、遊離のコレステロール及び脂肪酸となる。HDLコレステロールはコレスト-4-エン-3-オン及びH2O2に酵素的に酸化され、形成されたH2O2は比色測定で測定される(Cobas(登録商標); Application note HDLC3)。
【0131】
LDLの直接測定は、非イオン性界面活性剤及び糖化合物及びリポタンパク質(VLDL及びカイロミクロン)の相互作用による、LDLの選択的ミセル性可溶化を利用する。界面活性剤との糖化合物の組み合わせによって、血漿中のLDLの選択的測定が可能となる。試験原理は、コレステロール及びHDLのものと同一であるが、糖と界面活性剤のみのLDL-コレステロールエステルは分解され遊離コレステロール及び脂肪酸となることに起因する。続いて、遊離コレステロールは酸化され、形成されたH2O2を比色測定で測定する(Application note LDL_C, Cobas(登録商標))。
【0132】
試験GPCR-B標的
カルシトニン遺伝子関連ペプチド1(CGRP1)、副腎皮質刺激ホルモン放出因子1及び2(CRF1及びCRF2)、胃抑制ポリペプチド(GIP)、グルカゴン様ペプチド1及び2(GLP-1及びGLP-2、グルカゴン(GCGR)、セクレチン、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)、副甲状腺ホルモン1及び2(PTH1及びPTH2)、血管作用性小腸ペプチド(VPAC1及びVPAC2)に関する受容体。
【0133】
他のクラスB受容体のためのアッセイデザイン
アゴニストの活性化割合測定を、試料化合物(グルカゴン類似体)をアッセイし、各特性化GPCRに関するEmaxコントロールを参照することによって行った。アンタゴニスト阻害割合測定を、試料化合物をアッセイし、各特性化GPCRに関するコントロールEC80ウェルを参照することによって行った。アゴニスト及びアンタゴニストアッセイの実行に関する「二重添加」アッセイプロトコールを使用して、試料を流した。プロトコールデザインは、次の通りである。
【0134】
化合物調製のマスターストック溶液
他に特定しない限り、100% 無水DMSO中で試料化合物を希釈し、あらゆる希釈が含まれる。試料化合物を異なる溶媒に供する場合、あらゆるマスターストックの希釈は、特定の溶媒中で行う。全ての対照のウェルは、試料化合物ウェルと同一の溶媒最終濃度を含んだ。
【0135】
アッセイのための化合物プレート
グルカゴン類似体を、マスターストック溶液からアッセイにおいて使用した娘プレート中に移した。各試料化合物を、アッセイ緩衝剤中に適した濃度で希釈し(20mM HEPES及び2.5mM Probenecidで1x HBSS)、最終の特定濃度を得た。
【0136】
カルシウムFLUXアッセイアゴニストアッセイフォーマット
グルカゴン類似体を100nM及び1nMの2通り蒔いた。本明細書に記載の濃度は、アンタゴニストアッセイ中の化合物の最終濃度を反映する。参照アゴニストは、上記の通り扱いアッセイ対照として役立った。参照アゴニストは、Emaxに関する上記の通り取扱った。FLIPRTETRAを使用してアッセイを90秒間解読した。
【0137】
アンタゴニストアッセイフォーマット
前もって測定したEC80値を使用して、参照アゴニストのEC80でプレインキュベートした全試料化合物及び参照アンタゴニスト(適用可能な場合)のウェルを刺激した。
FLIPRTETRAを使用して180秒間解読し(斯かる追加において、参照アゴニストを各ウェルへ添加した)、続いて蛍光測定値を回収し、IC50-値を算出した。
【0138】
カニクイザルにおけるPK
カニクイザル(オス、N=2)に、20 nmolの化合物6/kgを静脈内にそして20 nmolの化合物 6/kgを皮下に単一用量として、1日目及び8日目にそれぞれ投与した。血漿試料を次の時点、投与前、静脈内投与後5、10、30分、1、2、4、8、12、24及び36時、及び投与前、皮下投与後10、30分、1、2、4、8、12、24、36及び48時に回収した。溶媒は、pH 7.4の25 mMリン酸緩衝生理食塩水から構成された(25 mMリン酸ナトリウム、25 mM NaCl)。タンパク質沈殿、続いて固相抽出及びLC-MS/MS分析を使用して血漿試料を分析した。WinNonLin version 4.1でノンコンパートメント分析を使用して、薬物動態パラメータをを算出した。
【0139】
db/dbマウスにおける、Glu-GLP-1アゴニスト化合物6の6週間皮下投与のHbA1cへの効果
5-6週齢のdb/db(BKS.Cg-m +/+ Leprdb/J)オスマウスを、Charles River Laboratories,Germanyから入手し、標準的な固形飼料及び水にフリーアクセスできる状態で、新規環境に順化させた。動物を同様の平均HbA1cでグループ分けし、1日2回皮下に化合物6(1、2.5、及び5 nmol/kg)又は溶媒を6週間処置した。試験を通して、体重を毎日記録しペプチドの体重修正用量の投与に使用した。HbA1cレベルを血液試料上で治療前に、その後試験中週に一度測定した。最終の血液試料採取後すぐ、全ての動物を屠殺した。
【0140】
食事性肥満マウス(30週間の高脂肪食)における、デュアルGlu-GLP-1アゴニスト化合物6での3週間の治療の経口糖耐性及び体重への効果。
6 週齢のC57Bl/6Jオスマウスを、高脂肪食及び水へフリーアクセスの新規環境で順化させた。36 週齢時に、動物を同様の平均空腹時(6時間)血中グルコース(尾部の先端から採取した血液試料から評価)で無作為にグループ分けした。マウスに、1日2回皮下に3週間化合物6又は溶媒を処理した。体重を毎日記録した。ペプチド治療後、動物を6時間の絶食に供した後、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を行った。午前中に動物にペプチド又は溶媒を投与した。約4時間後、最初の血液試料(空腹時血中グルコースレベル)を採取した。その後、動物に経口投与量のグルコースを投与し、ホームケージに戻した(t=0)。BGをt=15分、t=30分、t=60分、t=90分及びt=120分に測定した。血液採取後すぐに、CO2麻酔、続いて頸椎脱臼によって全動物を屠殺した。
【実施例】
【0141】
以下の実施例によって、本発明をさらに説明する。
実施例1: グルカゴン及びGLP-1受容体への効果
【0142】
【表1】
表 1: EC50 値を上記の通り測定した。
【0143】
実施例2. サルにおける皮下及び静脈内投与後の薬物動態試験
化合物6をサルに投与し、薬物動態及び生物学的利用率を(ヒトにおける目的の経路である)皮下投与後に試験した。化合物6は、43% ± 8.1の生物学的利用率、8.2 h ± 2.0のt1/2及び4〜8時の間にtmaxを示した。化合物 6の薬物動態特性は、1日1回の皮下経路による投与可能な用量の投与後に、ヒトにおいてグルカゴン及びGLP-1受容体双方でEC50以上の一定の暴露を予測できる可能性がある。
【0144】
実施例3: db/dbマウスにおける、Glu-GLP-1アゴニスト化合物6の6週間の皮下投与の、HbA1cへの効果
動物に100 μlの溶媒を(1日1度)3日間皮下注射し、動物をハンドリング及び注射に順化させた。動物を同様の平均HbA1cによって無作為にグループ分けした。続いて、マウスに1日2回皮下に化合物6(1、2.5、又は5 nmol/kg)又は溶媒を処理した。処理前及び処理後1週間に1度を6週間、血液試料を後眼窩静脈叢から採取した。
【0145】
血液試料をHbA1cに関して、Cobas c111分析器(Roche Diagnostics, Mannheim, Germany)を使用して分析した。HbA1c分析のための試料を、試料採取後24時間内に分析した。
【0146】
試験を通して、体重を毎日記録しペプチドの体重修正用量の投与に使用した。溶液を投与直前に調製した。
【0147】
期待される通り、db/dbマウスモデルから経時でHbA1cの増大が観察された(図1)。6週間の処置中、溶媒群で27 %のHbA1cの増大を観察した。
【0148】
溶媒処理動物において経時で見られるHbA1cの増加に関する減少は、全ての用量の化合物6についていずれの時点でも見られなかった(図1)。
【0149】
6週間の処理中、溶媒群で22%の体重増加が観察された。化合物6(5 nmol/kg)は、溶媒と比較して体重増加を顕著に減少した(p<0.0001、図2)。
【0150】
デュアルGlu-GLP-1アゴニスト化合物6での6週間の処理の、血糖コントロールへの効果を、db/dbマウスにおいてHbA1cによる評価で調べた。
【0151】
予想通りに、db/dbマウスモデルは、経時でHbA1cの増加を示した。化合物6の6週間の処置は、溶媒処置db/dbマウスにおいて経時で見られるHbA1cの増加に関して顕著な減少を示さなかった。
【0152】
6週間の化合物6での処理(5 nmol/kg)は、溶媒処理db/dbマウスで経時で見られる体重の増加を顕著に減少した。
【0153】
実施例4: 食事性肥満C57BL/6Jマウス(6月間の高脂肪食)における、Glu-GLP-1アゴニスト化合物6の3週間の皮下投与の、経口ブドウ糖負荷及び体重への効果
体重
化合物6は、体重を38.7 %減少した(p<0.05)(図3)。興味深いことに、3週間化合物6を処理した高脂肪食動物によって得られた体重は、標準固形飼料で飼育の未処置の対照動物によって得られる同体重に安定化した(図3)。
【0154】
OGTT(経口糖耐性試験)
3週間の化合物6の処置は、糖耐性への顕著な効果(AUCで減少として測定)を有しなかった(図4)。
【0155】
化合物6は、食事性肥満マウス(30週間の高脂肪食)において、標準固形飼料で飼育の未処置の対照動物で見られるレベルまで顕著に体重を減少した(図3)。化合物6の効果は、空腹時血中グルコースを顕著に減少した。化合物6は、経口ブドウ糖負荷は顕著に増加しなかった。
【0156】
体重減少及びグルコース調整におけるこれらの違いは、Glu-GLP-1アゴニスト化合物 6の効力(表 1)及び/又はGLP-1受容体への暴露を反映し得る。斯かる違いは、作用機序におけるGLP-1及びGLP-1類似体とGlu-GLP-1アゴニストとの間の違いに関係し得る。エキセンディン-4及び他のGLP-1類似体は、グルコース依存性インスリン分泌の刺激、胃内容排出の阻害、及びグルカゴン分泌の阻害を介して血中グルコースを制御することが知られている。これらのGLP-1受容体への効果に加えて、化合物6はまたGluRと結合し活性化する(表1を参照)。
【0157】
食事性肥満マウスにおいて、化合物6は体重を顕著に減少した。化合物6は、経口ブドウ糖負荷試験中測定される糖耐性を改善しなかった。
【0158】
実施例5: 30週間高脂肪食を給餌したマウスにおける、3週間のGlu-GLP-1アゴニスト化合物6の皮下投与の、脂質への効果。
処置前に30週間高脂肪食で飼育したマウスの、溶媒(PBS)、10 nmol/kg エキセンディン-4又は10 nmol/kg 化合物6の1日2回、3週間処置(皮下)の脂質への効果(図5)。LDL、HDL及びトリグリセリドへの効果を測定した(CHO: 総コレステロール; HDL: 高密度コレステロール; LDL: 低密度コレステロール; TRIG: トリグリセリド; HDL/LDL: HDLとLDLとの比)。
【0159】
化合物6は、総コレステロール、HDL、LDL(P < 0.001)及びトリグリセリドの顕著な減少を示したが(P < 0.05)、HDL/LDL比は、顕著に増大した(p < 0.001)(図5)。HDL/LDL比は、心疾患に関するリスク指標とみなされる。斯かる比が大きければ大きいほど、心発作又は他の循環器問題のリスクは低い。
【0160】
実施例6: CGRP及び他の受容体に対する化合物6のカウンタースクリーン(Counterscreen)
1(1.25)、100(125)及び10,000(12,500)nMのカルシトニン遺伝子関連ペプチド1(CGRP1)、副腎皮質刺激ホルモン放出因子1及び2(CRF1及びCRF2)、胃抑制ポリペプチド(GIP)、グルカゴン様ペプチド1及び2(GLP-1及びGLP-2、グルカゴン(GCGR)、セクレチン、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)、副甲状腺ホルモン1及び2(PTH1及びPTH2)、血管作用性小腸ペプチド(VPAC1及びVPAC2)に対するアゴニスト及びアンタゴニスト活性に関して、化合物6を試験した。
次の受容体に対するアゴニスト活性を観察した:
GLP-1受容体: 化合物6は、12.5 μM及び125 nMでアゴニスト活性を示した。
グルカゴン受容体: 化合物6は、12.5 μM及び125 nMでアゴニスト活性を示した。
次の受容体に対するアンタゴニスト活性を観察した:
CRF2受容体: 化合物6は、10 μMでアンタゴニスト活性を示した。
GIP 受容体: 化合物6は、10 μM及び100 nMでアンタゴニスト活性を示した。
セクレチン受容体: 化合物6は、10 μMでアンタゴニスト活性を示した。
【0161】
実施例7: 高脂肪食C57BL/6Jマウスにおける、化合物6及び7の体重増加への効果。
C57BL/6Jマウスを、高脂肪食及び水にフリーアクセスの新規環境に4週間順化させた。続いて、マウスに1日2回皮下に化合物6及び化合物7(0.5及び5 nmol/kgの2回用量で)又は溶媒を10日間処置した。試験を通して、体重を毎日記録し、体重修正したペプチドの用量の投与のために使用した(図6)。マウスを頸椎脱臼によって屠殺した。
化合物6及び化合物7は、高脂肪食C57BL/6Jマウスにおいて両用量(0.5及び5 nmol/kg)で体重増加を顕著に減少した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
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