(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ローサイド駆動巻線に、このローサイド駆動巻線に生じる電圧を整流平滑して前記スイッチング制御回路に対する直流電源電圧を発生する整流平滑回路を備えた、請求項2に記載のスイッチング電源装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
《第1の実施形態》
第1の実施形態に係るスイッチング電源装置について、
図2〜
図4を参照して説明する。
図2は第1の実施形態に係るスイッチング電源装置101の回路図である。このスイッチング電源装置101の入力端子PI(+)−PI(−)間に直流入力電源Viの電圧が入力される。そして、スイッチング電源装置101の出力端子PO(+)−PO(−)間に接続される負荷Roへ所定の直流電圧が出力される。
【0020】
入力端子PI(+)−PI(−)間には、キャパシタCr、インダクタLr、トランスTの1次巻線npおよびローサイドスイッチング素子Q1が直列に接続された第1の直列回路が構成されている。ローサイドスイッチング素子Q1はFETからなり、ドレイン端子がトランスTの1次巻線npに接続されている。
【0021】
トランスTの1次巻線npの両端には、ハイサイドスイッチング素子Q2とキャパシタCrおよびインダクタLrが直列に接続された第2の直列回路が構成されている。
【0022】
トランスTの2次巻線ns1,ns2には、ダイオードDs,DfおよびキャパシタCoからなる第1の整流平滑回路が構成されている。この第1の整流平滑回路は2次巻線ns1,ns2から出力される交流電圧を全波整流し平滑して、出力端子PO(+)−PO(−)へ出力する。
【0023】
トランスTは1次巻線np、2次巻線ns1,ns2だけでなく、ローサイド駆動巻線nb1およびハイサイド駆動巻線nb2を有している。
【0024】
トランスTのローサイド駆動巻線nb1には、ダイオードDbおよびキャパシタCbによる整流平滑回路が接続されている。この整流平滑回路によって得られる直流電圧がスイッチング制御用IC84のVCC端子に電源電圧として供給される。
前記スイッチング制御用IC84は、IS端子(電流検出端子)を備えた電流モードで動作する一般的な汎用のICである。
【0025】
出力端子PO(+),PO(−)とスイッチング制御用IC84との間には帰還回路が設けられている。
図2では帰還の経路のみを簡易的に一本の線(Feed back)で表しているが、具体的には出力端子PO(+)−PO(−)間の出力電圧Voの分圧値と基準電圧との比較によって帰還信号を発生し、絶縁状態でスイッチング制御用IC84のFB端子へフィードバック電圧を入力する。このFB端子へ入力されるフィードバック電圧は出力電圧Voが低いほど高くなる。
【0026】
スイッチング制御用IC84のOUT端子には定電流回路CC1およびキャパシタCb1の直列回路が接続されていて、キャパシタCb1の充電電圧がIS端子(電流検出端子)に入力されるように接続されている。
【0027】
ハイサイドスイッチング素子Q2のターンオフによりローサイド駆動巻線nb1に誘起される逆起電力の電圧がZT端子(ゼロ電圧タイミング検出端子)に入力されることにより、スイッチング制御用IC84はOUT端子をハイレベルにする。これにより、ローサイドスイッチング素子Q1がターンオンする。スイッチング制御用IC84のOUT端子は、抵抗R12を介してローサイドスイッチング素子Q1の制御端子に接続されている。
【0028】
定電流回路CC1は、スイッチング制御用IC84のOUT端子の電圧によりキャパシタCb1を定電流で充電する。スイッチング制御用IC84内のコンパレータはキャパシタCb1の電圧とFB端子の電圧とを比較し、IS端子の電圧がFB端子の電圧を超えたときOUT端子の電圧をハイレベルからローレベルとする。したがって、FB端子の電圧が低くなるほど、キャパシタCb1の充電時間は短くなる。すなわち、ローサイドスイッチング素子Q1のオン時間が短くなって、出力電圧Voは定電圧化される。
なお、ダイオードD9はキャパシタCb1の電荷の放電経路を構成する。すなわち、スイッチング制御用IC84の出力電圧がローレベルになったとき(Q1がターンオフするとき)、キャパシタCb1の電荷はダイオードD9を介して放電される。
【0029】
このようにして、電流モードICであるスイッチング制御用IC84、定電流回路CC1およびキャパシタCb1による回路は、電圧−時間変換回路として作用する。そして、出力電圧Voを検出して基準電圧(目標電圧)との比較により発生される帰還信号の電圧が前記電圧−時間変換回路で変換されて、その時間だけローサイドスイッチング素子Q1がオンされる。
【0030】
トランスTのハイサイド駆動巻線nb2とハイサイドスイッチング素子Q2との間には第2のスイッチング制御回路61が設けられている。この第2のスイッチング制御回路61は特許請求の範囲に記載の「ハイサイドスイッチング素子制御回路」に相当する。具体的には、トランスTのハイサイド駆動巻線nb2の第1端はローサイドスイッチング素子Q1とハイサイドスイッチング素子Q2との接続点(ハイサイドスイッチング素子Q2のソース端子)に接続され、ハイサイド駆動巻線nb2の第2端とハイサイドスイッチング素子Q2のゲート端子との間に第2のスイッチング制御回路61が接続されている。
【0031】
次に述べるように、第2のスイッチング制御回路61はハイサイドスイッチング素子Q2がターンオンした後、ローサイドスイッチング素子Q1のオン時間と同じ時間が経過した時に強制的にハイサイドスイッチング素子Q2をターンオフさせる。
【0032】
前記第2のスイッチング制御回路61は、4つのダイオードD1,D2,D3,D4から構成されるダイオードブリッジ整流回路と、ダイオードD1,D3の接続点とダイオードD2,D4の接続点との間、つまりこのダイオードブリッジ整流回路の出力端間に接続された定電流回路CC2とで構成された双方向定電流回路である。
【0033】
ローサイドスイッチング素子Q1がターンオンすると、ハイサイド駆動巻線nb2に誘起される負電圧で、キャパシタCb2→ダイオードD3→定電流回路CC2→ダイオードD2→ハイサイド駆動巻線nb2の経路で、キャパシタCb2が定電流によって負方向に放電される。
【0034】
その後、ローサイドスイッチング素子Q1がターンオフすると、ハイサイド駆動巻線nb2に誘起される正電圧で抵抗R5を介してハイサイドスイッチング素子Q2に正電圧が印加されて、Q2がターンオンする。また、ハイサイド駆動巻線nb2→ダイオードD1→定電流回路CC2→ダイオードD4→キャパシタCb2の経路で、キャパシタCb2が定電流によって正方向に充電される。キャパシタCb2の電圧がトランジスタのしきい値電圧である約0.6Vを超えた時点でトランジスタ(特許請求の範囲に記載の「スイッチング素子」)Q3がオンし、これにより、ハイサイドスイッチング素子Q2がターンオフする。
【0035】
以上の動作によって、前記キャパシタCb2の放電時間すなわちローサイドスイッチング素子Q1のオン時間と、キャパシタCb2の充電時間すなわちハイサイドスイッチング素子Q2のオン時間は等しくなる。
【0036】
図3は、ローサイドスイッチング素子Q1のゲート・ソース間電圧Vgs1、ハイサイドスイッチング素子Q2のゲート・ソース間電圧Vgs2、ローサイドスイッチング素子Q1のドレイン・ソース間電圧Vds1、およびキャパシタCb2の電圧Vcb2の関係を示す波形図である。
【0037】
ローサイドスイッチング素子Q1がオンすると、ハイサイド駆動巻線nb2に負電圧が誘起され、キャパシタCb2の充電電圧Vcb2はしきい値電圧の約0.6Vから低下していく。その後、ローサイドスイッチング素子Q1がターンオフすると、ハイサイド駆動巻線nb2に正電圧が誘起され、キャパシタCb2の充電電圧Vcb2は上昇していく。このキャパシタCb2の充電電圧Vcb2がしきい値電圧の約0.6Vを超えると、トランジスタQ3がオンする。これにより、ハイサイドスイッチング素子Q2のゲート電位が0Vになって、ハイサイドスイッチング素子Q2はターンオフする。キャパシタCb2は同じ電流値の定電流で充放電されるので、充電電圧Vcb2の傾きは等しい。すなわち充放電電流比率Diは1:1である。そのため、ハイサイドスイッチング素子Q2のオン時間はローサイドスイッチング素子Q1のオン時間に等しくなる。
【0038】
図3においてT
Q1ON(1)とT
Q2ON(1)は上述の動作により等しくなっている。ここでローサイドスイッチング素子Q1のオン時間が長くなりT
Q1ON(2)となったとき、Vds1およびVcb2は点線で示された波形図となる。このときもT
Q1ON(2)とT
Q2ON(2)は上述の動作により等しくなっている。
【0039】
図4は、前記ハイサイド駆動巻線nb2の電圧Vnb2と前記キャパシタCb2の電圧Vcb2の関係を示す波形図である。
このように、ローサイドスイッチング素子Q1のオン時間が変化すれば、それに追従して、ハイサイドスイッチング素子Q2のオン時間が変化する。
【0040】
なお、キャパシタCb2の電荷が放電されることで、トランジスタQ3のベース・エミッタに逆バイアス電圧が掛かるが、一般的なトランジスタでは通常−5V程度までの耐圧を有していて、設計余裕を考慮しても−4V〜0.6Vまでの広い範囲で充放電を行うことができる。キャパシタCb2に対する電圧の変動幅を大きくすると、外乱ノイズへの耐量が大きくなり、また温度変化や部品の電気特性のばらつきなどに対しても誤差が小さくなり、安定して動作することが可能になる。
【0041】
第1の実施形態によれば、いわゆる電流モードICを用い、ローサイドスイッチング素子Q1の駆動電圧信号を基にしてキャパシタを略一定電流で充電する定電流回路を外部に設けるだけで
電圧−時間変換回路が構成でき、フィードバック電圧に応じてローサイドスイッチング素子Q1のオン時間を制御できるので、全体の回路を簡素に構成できる。
【0042】
それ以外に、次のような効果を奏する。
(a)ローサイドスイッチング素子Q1とハイサイドスイッチング素子Q2とはほぼ同じオン時間で対称波形で交互にオン・オフ動作させることができる。
【0043】
(b)ローサイドスイッチング素子Q1のオン時間の検出とハイサイドスイッチング素子Q2のターンオンおよびターンオフさせる回路を一体化することができ、最小の部品数のディスクリート部品で第2のスイッチング制御回路を構成できる。
【0044】
(c)ハイサイドスイッチング素子Q2のトランスTの1次巻線に接続されているグランド端子電位はローサイドスイッチング素子Q1のスイッチングによって変動するが、第2のスイッチング制御回路61は、ハイサイド駆動巻線nb2に発生する交流電圧を用いて動作する回路であるため、グランド端子電位の変動にかかわらず誤動作が生じにくい。
【0045】
(d)トランス巻線に発生する電圧変化をトリガに用いてローサイドスイッチング素子Q1およびハイサイドスイッチング素子Q2はターンオンをし、最小のデッドタイムを挟んで交互にオン・オフ動作する。すなわち両スイッチング素子が同時にオンすることがなく、高い信頼性を確保することができる。また、デッドタイムは、ZVS(ゼロ電圧スイッチング)動作を達成できる最小値となるので、高い電力変換効率が得られる。
【0046】
《第2の実施形態》
図5は第2の実施形態に係るスイッチング電源装置102の回路図である。
図2に示したスイッチング電源装置101と異なるのは、第2のスイッチング制御回路62の構成である。この
図5の例では、定電流回路をより具体的に表している。すなわち、第1のトランジスタQ11のベースが第2のトランジスタQ12のコレクタに接続され、第1のトランジスタQ11のエミッタが第2のトランジスタQ12のベースに接続され、第1のトランジスタQ11のコレクタとベース間に抵抗R12が接続され、第2のトランジスタQ12のエミッタとベース間に抵抗R11が接続されることによって、一つの定電流回路が構成されている。
この構成によれば、最小の部品数のディスクリート部品で第2のスイッチング制御回路を構成できる。
【0047】
なお、
図5に示した例では、抵抗R6とダイオードD6との直列回路が抵抗R5に対して並列に接続されている。そのため、ハイサイド駆動巻線nb2に発生した電圧でハイサイドスイッチング素子Q2の入力容量に電荷を充電してハイサイドスイッチング素子Q2をターンオンする際の充電経路と、ハイサイドスイッチング素子Q2の入力容量から電荷を放電する際の放電経路とを変えてインピーダンスに差を持たせることができる。そのため、ハイサイド駆動巻線nb2に電圧変化が発生した時点からの遅延時間を調整することができ、ハイサイドスイッチング素子Q2を最適なタイミングでターンオンできるように設計できる。
【0048】
《第3の実施形態》
図6は第3の実施形態に係るスイッチング電源装置103の回路図である。
図2に示したスイッチング電源装置101と異なるのは、ローサイドのスイッチング制御回路の構成および第2のスイッチング制御回路63の構成である。
【0049】
この実施形態のローサイドのスイッチング制御回路において、スイッチング制御用IC84のOUT端子には、抵抗R13およびツェナーダイオードDz4からなる定電圧回路が構成されている。このツェナーダイオードDz4には、抵抗R14およびキャパシタCb1による時定数回路が接続されている。キャパシタCb1の両端には、抵抗R15,R16による抵抗分割回路が接続されている。そしてこの抵抗分割回路の出力電圧がスイッチング制御用IC84のIS端子に入力されるように構成されている。
このように、定電圧で時定数回路を充電するようにしてもよい。また、時定数設定用のキャパシタCb1の電圧を抵抗分圧してスイッチング制御用ICのIS端子に入力するようにしてもよい。
【0050】
この実施形態の第2のスイッチング制御回路63には、ダイオードD1,D2,D3,D4のそれぞれに並列にキャパシタC1,C2,C3,C4が接続されている。
【0051】
このように、定電流回路CC2の入出力電流を整流するダイオードにキャパシタを並列接続することにより、整流ダイオードに逆方向電圧が印加されている期間において、キャパシタC1,C2,C3,C4に電荷を蓄え、ハイサイド駆動巻線nb2の電圧が変化するデッドタイムにおいて、キャパシタC1,C2,C3,C4に蓄えられた電荷を放電することができ、結果的にダイオードよりも進み位相で電流を流すことができる。これによりキャパシタCb2への充放電の電流量を調整することが可能となり、デッドタイム、特にキャパシタCb2への充放電電流の方向が変化する際における充放電電流の歪みをキャパシタC1,C2,C3,C4で補正できる。なおキャパシタは、必ずしもダイオードD1〜D4の全てと並列に接続する必要はなく、少なくとも1つと並列に接続すれば、充放電電流の歪みを補正することができる。
【0052】
《第4の実施形態》
図7は第4の実施形態に係るスイッチング電源装置104の回路図である。
図2に示したスイッチング電源装置101と異なるのは、第2のスイッチング制御回路65の構成である。この例では、ダイオードD1,D2のそれぞれに並列にキャパシタC1,C2が接続されている。また、ダイオードD3,D4のそれぞれに並列に抵抗R3,R4が接続されている。
【0053】
この抵抗R3,R4の抵抗値を異ならせることによって、キャパシタCb2に対する充電経路と放電経路のインピーダンス(時定数)を異ならせることができる。そのため、ローサイドスイッチング素子Q1とハイサイドスイッチング素子Q2の若干のオン時間の差分を補正することができる。また、抵抗R3,R4を用いて抵抗値を調整することにより、入力電圧若しくは出力電圧が変化した際に必要となる若干のオン時間の差分を補正することができる。すなわち、ハイサイド駆動巻線nb2の電圧が変化することを利用して、抵抗R3,R4を用いて抵抗値を調整する。定電流回路により決まる電流にハイサイド駆動巻線nb2の電圧と抵抗R3または抵抗R4により決まる電流を加算して重畳し、キャパシタCb2に対する充電または放電の電流とすることにより、入出力電圧が変化した際の補正を行うことができる。これらにより、ローサイドスイッチング素子Q1とハイサイドスイッチング素子Q2のオン時間をより高精度に等しくできる。なお、抵抗はダイオードD1〜D4の少なくとも1つと並列に接続すればよい。なお抵抗を並列に接続しない箇所には、代わりにキャパシタを接続してもよい。
【0054】
《第5の実施形態》
図8は第5の実施形態に係るスイッチング電源装置105の回路図である。
第1の実施形態で
図2に示したスイッチング電源装置と異なるのは、トランスTの二次側の構成である。
【0055】
第5の実施形態では、トランスTの2次巻線nsに、ダイオードD21,D22,D23,D24によるダイオードブリッジ回路及びキャパシタCoが接続されている。
このようにダイオードブリッジ回路で全波整流してもよい。
【0056】
《第6の実施形態》
図9は第6の実施形態に係るスイッチング電源装置106の回路図である。
第1の実施形態で
図2に示したスイッチング電源装置と異なるのは、トランスTの二次側の構成である。
【0057】
第6の実施形態では、トランスTの2次巻線ns1,ns2の両端に、ダイオードDs,DfおよびキャパシタCo1,Co2が接続され、キャパシタCo1,Co2の接続点が2次巻線ns1,ns2の接続点に接続されている。そして出力端子PO(+)−PO(−)間にキャパシタCo3が接続されている。
このように倍電圧整流回路としてもよい。
【0058】
《第7の実施形態》
図10は第7の実施形態に係るスイッチング電源装置107の回路図である。
第1の実施形態で
図2に示したスイッチング電源装置と異なるのはキャパシタCrの位置である。
【0059】
共振キャパシタCrは、ローサイドスイッチング素子Q1のオフ時にインダクタLrに電流が流れる、その電流の経路に挿入されていればよいので、キャパシタCrは
図10のように、1次巻線npの一端とハイサイドスイッチング素子Q2のソースとの間に接続されていてもよい。
【0060】
《第8の実施形態》
図11は第8の実施形態に係るスイッチング電源装置108の回路図である。
第1の実施形態で
図2に示したスイッチング電源装置と異なるのは、キャパシタCrの位置である。
【0061】
共振キャパシタCrは、ローサイドスイッチング素子Q1のオフ時にインダクタLrに電流が流れる、その電流の経路に挿入されていればよい。そのため、キャパシタCrは
図11のように、ハイサイドスイッチング素子Q2のドレインと入力端子PI(+)との間に接続されていてもよい。
【0062】
《第9の実施形態》
図12は第9の実施形態に係るスイッチング電源装置109の回路図である。
第1の実施形態で
図2に示したスイッチング電源装置と異なるのは、スイッチング素子Q2のドレインとトランスTの1次巻線npの一端との間にキャパシタCr1とインダクタLrの直列回路を設けるだけでなく、キャパシタCr1とインダクタLrとの接続点とグランドラインとの間にキャパシタCr2を設けた点である。
【0063】
インダクタLr、1次巻線np、ハイサイドスイッチング素子Q2、キャパシタCr1が閉ループを構成するように、キャパシタCr1が設けられている。また、ハイサイドスイッチング素子Q2およびキャパシタCr1に対して直列にCr2が接続されている。
【0064】
このように、キャパシタCr2を接続することにより、電源電圧Viから供給される電流は、ローサイドスイッチング素子Q1のオン時間とハイサイドスイッチング素子Q2のオン時間の双方の期間において流れ、ローサイドスイッチング素子Q1のオン時間しか流れない回路構成と比較して、電源電圧Viから供給される電流の実効電流が低減される。これにより、電源電圧Viから供給される電流による導通損を低減することができる。
【0065】
《第10の実施形態》
図13は第10の実施形態に係るスイッチング電源装置110の回路図である。
第1の実施形態で
図2に示したスイッチング電源装置と異なるのは、ハイサイドスイッチング素子Q2およびキャパシタCrの位置である。
【0066】
共振キャパシタCrは、ローサイドスイッチング素子Q1のオフ時にインダクタLrに電流が流れる、その電流の経路に挿入されていればよいので、キャパシタCrは図
13のように、ハイサイドスイッチング素子Q2のドレインと入力端子PI(−)との間に接続されていてもよい。
【0067】
《第11の実施形態》
図14は第11の実施形態に係るスイッチング電源装置111の回路図である。このスイッチング電源装置111は力率改善コンバータ(PFCコンバータ)として作用するものである。
【0068】
このスイッチング電源装置111は、商用交流電源ACの交流電圧を入力して全波整流するダイオードブリッジ回路DBを備える。また、ローパスフィルタとしてのコンデンサCiを備える。ローサイドスイッチング素子Q1はFETからなり、ドレイン端子がトランスTの1次巻線npに接続されている。トランスTの2次巻線ns1には、ダイオードDsおよびキャパシタCoからなる整流平滑回路が構成されている。この整流平滑回路は2次巻線ns1から出力される交流電圧を整流し平滑して、出力端子PO(+)−PO(−)へ出力する。
【0069】
トランスTのローサイド駆動巻線nb1には、ダイオードDbおよびキャパシタCbによる整流平滑回路が接続されている。この整流平滑回路によって得られる直流電圧がスイッチング制御用IC84のVCC端子に電源電圧として供給される。
【0070】
出力端子PO(+),PO(−)とスイッチング制御用IC84との間には帰還回路が設けられている。
図14では帰還の経路のみを簡易的に一本の線(Feed back)で表している。
【0071】
スイッチング制御用IC84のOUT端子には定電流回路CC1およびキャパシタCb1の直列回路が接続されていて、キャパシタCb1の充電電圧がIS端子(電流検出端子)に入力されるように接続されている。
ローサイドスイッチング素子Q1のゲートに接続されているスイッチング制御回路は第1の実施形態で示したものと同じである。
【0072】
いま、キャパシタCb1の充電電圧がFB端子への入力電圧より低ければ、OUT端子がハイレベルになり、スイッチング素子Q1はターンオンする。また、このOUT端子のハイレベルの電圧は定電流回路CC1に印加されて、キャパシタCb1は定電流で充電される。キャパシタCb1の電位がFB端子の電位を超えればOUT端子はローレベルに反転する。これによってスイッチング素子Q1はターンオフする。また、キャパシタCb1の電荷はダイオードD9を介して放電される。
【0073】
その後、キャパシタCb1の電荷放電によりIS端子の電位がFB端子の電位より低下すればOUT端子がハイレベルとなって、スイッチング素子Q1は再びターンオンする。
【0074】
以上の動作の繰り返しによって、スイッチング素子Q1は断続され、そのオン時間はフィードバック電圧に応じて変化することになる。商用交流電源の周波数オーダーではスイッチング素子Q1のオン時間は一定であるので、商用交流電源の入力電圧の変動に応じて電力変換回路に流れる電流のピーク値が変化し、ピーク値の包絡線が正弦波状となる。このときローパスフィルタを介して流入する入力電流の外形は正弦波状となっており、入力電流には、高調波電流成分がほとんど含まれなくなり、コンバータは入力電流の高調波電流成分を大きく抑制する力率改善(PFC)コンバータとして動作する。
【0075】
なお、以上に示した各実施形態では、トランスTの二次側の回路にダイオードによる整流回路を構成したが、このダイオードに代えて整流用のFETを設けて同期整流してもよい。このことにより、二次側の回路の損失を低減することができる。