(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5937611
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】パーソナルオーディオデバイスにおける適応ノイズキャンセラの監視制御
(51)【国際特許分類】
G10K 11/178 20060101AFI20160609BHJP
H04M 1/00 20060101ALI20160609BHJP
H04R 3/02 20060101ALI20160609BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
G10K11/16 H
H04M1/00 H
H04R3/02
H04R3/00 320
【請求項の数】57
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2013-542191(P2013-542191)
(86)(22)【出願日】2011年12月1日
(65)【公表番号】特表2014-503844(P2014-503844A)
(43)【公表日】2014年2月13日
(86)【国際出願番号】US2011062968
(87)【国際公開番号】WO2012075343
(87)【国際公開日】20120607
【審査請求日】2014年10月24日
(31)【優先権主張番号】61/493,162
(32)【優先日】2011年6月3日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/309,494
(32)【優先日】2011年12月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/419,527
(32)【優先日】2010年12月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504371240
【氏名又は名称】シラス ロジック、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリックス, ジョー ディー.
(72)【発明者】
【氏名】アブドラーザデー ミラーニ, アリ
(72)【発明者】
【氏名】クワトラ, ニティン
(72)【発明者】
【氏名】ジョー, ダヨン
(72)【発明者】
【氏名】ル, ヤン
(72)【発明者】
【氏名】アルダーソン, ジェフリー
【審査官】
下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−036784(JP,A)
【文献】
特開2007−093962(JP,A)
【文献】
特開平07−104769(JP,A)
【文献】
特開平04−363995(JP,A)
【文献】
特開2010−016429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/00 − 13/00
H04M 1/00
H04R 3/00 − 3/14
H04R 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーソナルオーディオデバイスであって、該パーソナルオーディオデバイスは、
パーソナルオーディオデバイスハウジングと、
オーディオ信号を再生するために該ハウジングに取りつけられている変換器であって、該オーディオ信号は、聞く人へのプレイバックのためのソースオーディオと、該変換器の音響出力における周囲オーディオサウンドの影響を打ち消すためのアンチノイズ信号との両方を含む、変換器と、
該周囲オーディオサウンドを示す基準マイクロフォン信号を提供するために該ハウジングに取りつけられている基準マイクロフォンと、
該変換器の該音響出力および該変換器における該周囲オーディオサウンドを示すエラーマイクロフォン信号を提供するために該変換器に近接して該ハウジングに取りつけられているエラーマイクロフォンと、
少なくとも1つの適応フィルターを実装する処理回路と
を含み、該少なくとも1つの適応フィルターは、該聞く人によって聞かれる該周囲オーディオサウンドの存在を弱めるための該アンチノイズ信号を基準信号から生成する応答を有し、該処理回路は、該適応フィルターの該応答を該エラーマイクロフォンにおける該周囲オーディオサウンドを最小にするように決定する係数を計算することによって、該エラーマイクロフォン信号と該基準マイクロフォン信号とに適合した該少なくとも1つの適応フィルターの該応答を作成する係数制御ブロックを実装し、該処理回路は、該適応フィルターが該アンチノイズ信号において望ましくない成分を生成する原因となりうる周囲オーディオ事象が発生していることを検出して、該係数制御ブロックによる該係数の計算とは独立して該少なくとも1つの適応フィルターの該適応を変化させ、該周囲オーディオ事象は、風ノイズ、該パーソナルオーディオデバイスの該ハウジングをひっかくこと、実質的にトーンの周囲サウンド、該変換器と該基準マイクロフォンとの間の連結の変化による、該基準マイクロフォンを通した正のフィードバックによる信号、または該基準マイクロフォン信号の信号レベルが事前に決定された範囲から外れることである、
パーソナルオーディオデバイス。
【請求項2】
前記処理回路は、前記適応フィルターの少なくとも1つの前記適応を停止させることによって、該適応フィルターの該適応を変化させる、請求項1に記載のパーソナルオーディオデバイス。
【請求項3】
前記処理回路は、前記周囲オーディオ事象中、前記アンチノイズ信号をさらにミュートする、請求項2に記載のパーソナルオーディオデバイス。
【請求項4】
前記処理回路は、前記少なくとも1つの適応フィルターの1つ以上の係数を事前に決定された値にセットすることにより、前記周囲オーディオ事象による該少なくとも1つの適応フィルターの前記応答の前記適応の混乱を改善する、請求項2に記載のパーソナルオーディオデバイス。
【請求項5】
前記周囲オーディオ事象は、風ノイズまたは前記パーソナルオーディオデバイスの前記ハウジングをひっかくことである、請求項2に記載のパーソナルオーディオデバイス。
【請求項6】
前記周囲オーディオ事象は、前記変換器と前記基準マイクロフォンとの間の連結の変化による、該基準マイクロフォンを通した正のフィードバックによる信号であり、前記処理回路は、前記少なくとも1つの適応フィルターの適応を特定の期間停止させて、該特定の期間が経過した後、該適応フィルターの適応を再開する、請求項2に記載のパーソナルオーディオデバイス。
【請求項7】
前記特定の期間は、前記周囲オーディオ事象の各発生に対して増加する、請求項6に記載のパーソナルオーディオデバイス。
【請求項8】
前記周囲オーディオ事象は、前記基準マイクロフォン信号のレベルが事前に決定された範囲から外れることである、請求項2に記載のパーソナルオーディオデバイス。
【請求項9】
前記処理回路は、前記基準マイクロフォン信号の前記レベルが前記事前に決定された範囲から外れていることを決定することに応答して、前記アンチノイズ信号をミュートする、請求項8に記載のパーソナルオーディオデバイス。
【請求項10】
前記周囲オーディオ事象は、実質的にトーンである、請求項2に記載のパーソナルオーディオデバイス。
【請求項11】
前記周囲オーディオ事象は、近端の発話である、請求項2に記載のパーソナルオーディオデバイス。
【請求項12】
前記少なくとも1つの適応フィルターの前記応答の適応制御は、該少なくとも1つの適応フィルターの該応答を事前に決定された応答に特定の変化率で戻す漏れ特性を有し、前記処理回路は、前記周囲オーディオ事象が発生していることを検出することに応答して、該漏れ特性を変化させることにより、該少なくとも1つの適応フィルターの前記適応を変化させる、請求項1に記載のパーソナルオーディオデバイス。
【請求項13】
前記少なくとも1つの適応フィルターは、前記アンチノイズ信号を生成するための前記基準マイクロフォン信号をフィルターにかける適応フィルターを含み、前記処理回路は、前記周囲オーディオ事象を検出することに応答して、該基準マイクロフォン信号をフィルターにかける該適応フィルターの前記適応を変化させる、請求項1に記載のパーソナルオーディオデバイス。
【請求項14】
前記少なくとも1つの適応フィルターは、前記ソースオーディオを作成する第二の経路応答を有する第二の経路適応フィルター、および該ソースオーディオを前記エラーマイクロフォン信号から除去するコンバイナーを含むことにより、アンチノイズと前記聞く人に送達される周囲オーディオサウンドとの組み合わせを示すエラー信号を提供し、前記処理回路は、該適応フィルターを、該第二の経路適応フィルターのコピーの出力と相互に関連づけられる該エラー信号の成分を最小にするように適応させ、該処理回路は、前記周囲オーディオ事象を検出することに応答して、該第二の経路適応フィルターの該適応を変化させる、請求項1に記載のパーソナルオーディオデバイス。
【請求項15】
前記周囲オーディオ事象は、前記ソースオーディオのレベルが事前に決定された範囲から外れることであり、前記処理回路は、該ソースオーディオの該レベルが該事前に決定された範囲から外れていることを決定することに応答して、前記第二の経路適応フィルターの適応を停止させる、請求項14に記載のパーソナルオーディオデバイス。
【請求項16】
パーソナルオーディオデバイスの変換器の近くにおいて周囲オーディオサウンドをキャンセルする方法であって、該方法は、
基準マイクロフォン信号を生成する基準マイクロフォンを用いて周囲オーディオサウンドを測定する第一の測定を行うことと、
エラーマイクロフォンを用いて、該変換器の出力および該変換器における該周囲オーディオサウンドを測定する第二の測定を行うことと、
該変換器の音響出力における周囲オーディオサウンドの影響を打ち消すために、該基準マイクロフォンの出力をフィルターにかける適応フィルターの応答を適応させることによって、該第一の測定を行うことおよび該第二の測定を行うことの結果から適応フィルターの応答を制御する係数を計算することによりアンチノイズ信号を適応的に生成することと、
該変換器に提供されるオーディオ信号を生成するために、前記アンチノイズ信号をソースオーディオ信号と組み合わせることと、
該適応フィルターが該アンチノイズ信号において望ましくない成分を生成する原因となりうる周囲オーディオ事象が発生していることを検出することであって、該周囲オーディオ事象は、風ノイズ、該パーソナルオーディオデバイスのハウジングをひっかくこと、実質的にトーンの周囲サウンド、該変換器と該基準マイクロフォンとの間の連結の変化による、該基準マイクロフォンを通した正のフィードバックによる信号、または該基準マイクロフォン信号の信号レベルが事前に決定された範囲から外れることである、ことと、
該検出することに応答して、該適応フィルターの該応答を制御する該係数の計算とは独立して少なくとも1つの適応フィルターの該適応を変化させることと
を含む、方法。
【請求項17】
前記変化させることは、前記適応フィルターの少なくとも1つの前記適応を停止させることによって、該適応フィルターの該適応を変化させる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記周囲オーディオ事象中、前記アンチノイズ信号をミュートすることをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記変化させることは、前記少なくとも1つの適応フィルターの1つ以上の係数を事前に決定された値にセットすることにより、前記周囲オーディオ事象による該少なくとも1つの適応フィルターの前記応答の前記適応の混乱を改善する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記周囲オーディオ事象は、風ノイズまたは前記パーソナルオーディオデバイスの前記ハウジングをひっかくことである、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記周囲オーディオ事象は、前記変換器と前記基準マイクロフォンとの間の連結の変化による、該基準マイクロフォンを通した正のフィードバックによる信号であり、前記変化させることは、前記少なくとも1つの適応フィルターの適応を特定の期間停止させ、該特定の期間が経過した後、該適応フィルターの適応を再開することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記特定の期間を前記周囲オーディオ事象の各発生に対して増加させることをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記周囲オーディオ事象は、前記基準マイクロフォン信号のレベルが事前に決定された範囲から外れることである、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記変化させることは、前記基準マイクロフォン信号の前記レベルが前記事前に決定された範囲から外れていることを決定することに応答して、前記アンチノイズ信号をミュートすることを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記周囲オーディオ事象は、実質的にトーンである、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
前記周囲オーディオ事象は、近端の発話である、請求項17に記載の方法。
【請求項27】
前記少なくとも1つの適応フィルターの前記応答の適応制御は、該少なくとも1つの適応フィルターの該応答を事前に決定された応答に特定の変化率で戻す漏れ特性を有し、前記変化させることは、前記周囲オーディオ事象が発生していることを検出することに応答して、該漏れ特性を変化させることにより、該少なくとも1つの適応フィルターの前記適応を変化させる、請求項16に記載の方法。
【請求項28】
前記少なくとも1つの適応フィルターは、前記アンチノイズ信号を生成するための前記基準マイクロフォン信号をフィルターにかける適応フィルターを含み、前記変化させることは、前記周囲オーディオ事象を検出することに応答して、該基準マイクロフォン信号をフィルターにかける該適応フィルターの前記適応を変化させる、請求項16に記載の方法。
【請求項29】
前記少なくとも1つの適応フィルターは、ソースオーディオを作成する第二の経路応答を有する第二の経路適応フィルターを含み、かつ該ソースオーディオをエラーマイクロフォン信号から除去することにより、アンチノイズと聞く人に送達される周囲オーディオサウンドとの組み合わせを示すエラー信号を提供し、前記方法は、該第二の経路適応フィルターの該応答を、該エラー信号と相互に関連づけられる基準信号の成分を最小にするように適応させることを含み、前記変化させることは、前記周囲オーディオ事象を検出することに応答して、該第二の経路適応フィルターの該適応を変化させる、請求項16に記載の方法。
【請求項30】
前記周囲オーディオ事象は、前記ソースオーディオのレベルが事前に決定された範囲から外れることであり、前記変化させることは、該ソースオーディオの該レベルが該事前に決定された範囲から外れていることを決定することに応答して、前記第二の経路適応フィルターの適応を停止させる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
パーソナルオーディオデバイスの少なくとも一部を実装する集積回路であって、該集積回路は、
信号を変換器に提供する出力であって、該信号は、聞く人へのプレイバックのためのソースオーディオと、該変換器の音響出力における周囲オーディオサウンドの影響を打ち消すためのアンチノイズ信号との両方を含む、出力と、
該周囲オーディオサウンドを示す基準マイクロフォン信号を受信する基準マイクロフォンと、
該変換器の該出力および該変換器における該周囲オーディオサウンドを示すエラーマイクロフォン信号を受信するエラーマイクロフォンと、
少なくとも1つの適応フィルターを実装する処理回路と
を含み、該少なくとも1つの適応フィルターは、該聞く人によって聞かれる該周囲オーディオサウンドの存在を弱めるための該アンチノイズ信号を基準信号から生成する応答を有し、該処理回路は、該適応フィルターの該応答を該エラーマイクロフォンにおける該周囲オーディオサウンドを最小にするように決定する係数を計算することによって、該エラーマイクロフォン信号と該基準マイクロフォン信号とに適合した該少なくとも1つの適応フィルターの該応答を作成する係数制御ブロックを実装し、該処理回路は、該適応フィルターが該アンチノイズ信号において望ましくない成分を生成する原因となりうる周囲オーディオ事象が発生していることを検出して、該係数制御ブロックによる該係数の計算とは独立して該少なくとも1つの適応フィルターの該適応を変化させ、該周囲オーディオ事象は、風ノイズ、該パーソナルオーディオデバイスのハウジングをひっかくこと、実質的にトーンの周囲サウンド、該変換器と該基準マイクロフォンとの間の連結の変化による、該基準マイクロフォンを通した正のフィードバックによる信号、または該基準マイクロフォン信号の信号レベルが事前に決定された範囲から外れることである、
集積回路。
【請求項32】
前記処理回路は、前記適応フィルターの少なくとも1つの前記適応を停止させることによって、該適応フィルターの該適応を変化させる、請求項31に記載の集積回路。
【請求項33】
前記処理回路は、前記周囲オーディオ事象中、前記アンチノイズ信号をさらにミュートする、請求項32に記載の集積回路。
【請求項34】
前記処理回路は、前記少なくとも1つの適応フィルターの1つ以上の係数を事前に決定された値にセットすることにより、前記周囲オーディオ事象による該少なくとも1つの適応フィルターの前記応答の前記適応の混乱を改善する、請求項32に記載の集積回路。
【請求項35】
前記周囲オーディオ事象は、風ノイズまたは前記パーソナルオーディオデバイスの前記ハウジングをひっかくことである、請求項32に記載の集積回路。
【請求項36】
前記周囲オーディオ事象は、前記変換器と前記基準マイクロフォンとの間の連結の変化による、該基準マイクロフォンを通した正のフィードバックによる信号であり、前記処理回路は、前記少なくとも1つの適応フィルターの適応を特定の期間停止させて、該特定の期間が経過した後、該適応フィルターの適応を再開する、請求項32に記載の集積回路。
【請求項37】
前記特定の期間は、前記周囲オーディオ事象の各発生に対して増加する、請求項36に記載の集積回路。
【請求項38】
前記周囲オーディオ事象は、前記基準マイクロフォン信号のレベルが事前に決定された範囲から外れることである、請求項32に記載の集積回路。
【請求項39】
前記処理回路は、前記基準マイクロフォン信号の前記レベルが前記事前に決定された範囲から外れていることを決定することに応答して、前記アンチノイズ信号をミュートする、請求項38に記載の集積回路。
【請求項40】
前記周囲オーディオ事象は、実質的にトーンである、請求項32に記載の集積回路。
【請求項41】
前記周囲オーディオ事象は、近端の発話である、請求項32に記載の集積回路。
【請求項42】
前記少なくとも1つの適応フィルターの前記応答の適応制御は、該少なくとも1つの適応フィルターの該応答を事前に決定された応答に特定の変化率で戻す漏れ特性を有し、前記処理回路は、前記周囲オーディオ事象が発生していることを検出することに応答して、該漏れ特性を変化させることにより、該少なくとも1つの適応フィルターの前記適応を変化させる、請求項31に記載の集積回路。
【請求項43】
前記少なくとも1つの適応フィルターは、前記アンチノイズ信号を生成するための前記基準マイクロフォン信号をフィルターにかける適応フィルターを含み、前記処理回路は、前記周囲オーディオ事象を検出することに応答して、該基準マイクロフォン信号をフィルターにかける該適応フィルターの前記適応を変化させる、請求項31に記載の集積回路。
【請求項44】
前記少なくとも1つの適応フィルターは、前記ソースオーディオを作成する第二の経路応答を有する第二の経路適応フィルター、および該ソースオーディオを前記エラーマイクロフォン信号から除去するコンバイナーを含むことにより、アンチノイズと前記聞く人に送達される周囲オーディオサウンドとの組み合わせを示すエラー信号を提供し、前記処理回路は、該適応フィルターを、該第二の経路適応フィルターのコピーの出力と相互に関連づけられる該エラー信号の成分を最小にするように適応させ、該処理回路は、前記周囲オーディオ事象を検出することに応答して、該第二の経路適応フィルターの該適応を変化させる、請求項31に記載の集積回路。
【請求項45】
前記周囲オーディオ事象は、前記ソースオーディオのレベルが事前に決定された範囲から外れることであり、前記処理回路は、該ソースオーディオの該レベルが該事前に決定された範囲から外れていることを決定することに応答して、前記第二の経路適応フィルターの適応を停止させる、請求項44に記載の集積回路。
【請求項46】
パーソナルオーディオデバイスであって、該パーソナルオーディオデバイスは、
パーソナルオーディオデバイスハウジングと、
オーディオ信号を再生するために該ハウジングに取りつけられている変換器であって、該オーディオ信号は、聞く人へのプレイバックのためのソースオーディオと、該変換器の音響出力における周囲オーディオサウンドの影響を打ち消すためのアンチノイズ信号との両方を含む、変換器と、
該周囲オーディオサウンドを示す基準マイクロフォン信号を提供するために該ハウジングに取りつけられている基準マイクロフォンと、
該変換器の該音響出力および該変換器における該周囲オーディオサウンドを示すエラーマイクロフォン信号を提供するために該変換器に近接して該ハウジングに取りつけられているエラーマイクロフォンと、
少なくとも1つの適応フィルターを実装する処理回路と
を含み、該少なくとも1つの適応フィルターは、該聞く人によって聞かれる該周囲オーディオサウンドの存在を弱めるための該アンチノイズ信号を基準信号から生成する応答を有し、該処理回路は、該適応フィルターの該応答を該エラーマイクロフォンにおける該周囲オーディオサウンドを最小にするように決定する係数を計算することによって、該エラーマイクロフォン信号と該基準マイクロフォン信号とに適合した該少なくとも1つの適応フィルターの該応答を作成する係数制御ブロックを実装し、該処理回路は、該少なくとも1つの適応フィルターの係数における変動を検出することによって該アンチノイズ信号が誤っている可能性が高いことを検出する検出器を実装し、該変動を検出したことに応答して、該アンチノイズ信号を該変換器により再生される該オーディオ信号から除去する、
パーソナルオーディオデバイス。
【請求項47】
前記少なくとも1つの適応フィルターは、前記ソースオーディオを作成する第二の経路応答を有する第二の経路適応フィルター、および該ソースオーディオを前記エラーマイクロフォン信号から除去するコンバイナーを含むことにより、アンチノイズと前記聞く人に送達される周囲オーディオサウンドとの組み合わせを示すエラー信号を提供し、前記処理回路は、該適応フィルターを、該第二の経路適応フィルターのコピーの出力と相互に関連づけられる該エラー信号の成分を最小にするように適応させ、該処理回路は、該アンチノイズ信号が誤っている可能性が高いことを検出することに応答して、該アンチノイズ信号を該第二の経路適応フィルターの入力にさらに向け、該アンチノイズ信号を生成するための前記基準マイクロフォン信号をフィルターにかける別の適応フィルターの適応は、連続したままである、請求項46に記載のパーソナルオーディオデバイス。
【請求項48】
前記少なくとも1つの適応フィルターは、前記ソースオーディオを作成する第二の経路応答を有する第二の経路適応フィルター、および該ソースオーディオを前記エラーマイクロフォン信号から除去するコンバイナーを含むことにより、アンチノイズと前記聞く人に送達される周囲オーディオサウンドとの組み合わせを示すエラー信号を提供し、前記処理回路は、該適応フィルターを、該第二の経路適応フィルターのコピーの出力と相互に関連づけられる該エラー信号の成分を最小にするように適応させ、該処理回路は、該アンチノイズ信号が誤っている可能性が高いことを検出することに応答して、該アンチノイズ信号を該第二の経路適応フィルターの入力にさらに向け、該アンチノイズ信号を生成するための前記基準マイクロフォン信号をフィルターにかける別の適応フィルターの適応は、停止させられる、請求項46に記載のパーソナルオーディオデバイス。
【請求項49】
パーソナルオーディオデバイスの変換器の近くにおいて周囲オーディオサウンドをキャンセルする方法であって、該方法は、
基準マイクロフォン信号を生成する基準マイクロフォンを用いて周囲オーディオサウンドを測定する第一の測定を行うことと、
エラーマイクロフォンを用いて、該変換器の出力および該変換器における該周囲オーディオサウンドを測定する第二の測定を行うことと、
該変換器の音響出力における周囲オーディオサウンドの影響を打ち消すために、少なくとも1つの適応フィルターの応答を適応させることによって、該第一の測定を行うことおよび該第二の測定を行うことの結果から適応フィルターの応答を制御する係数を計算することによりアンチノイズ信号を適応的に生成することであって、該適応フィルターは、該基準マイクロフォンの出力をフィルターにかけることにより該アンチノイズ信号を生成する、ことと、
該変換器に提供されるオーディオ信号を生成するために、前記アンチノイズ信号をソースオーディオ信号と組み合わせることと、
1つの適応フィルターの係数における変動を検出することによって該アンチノイズ信号が誤っている可能性が高いことを検出することと、
該検出することに応答して、該アンチノイズ信号を該変換器により再生される該オーディオ信号から除去することと
を含む、方法。
【請求項50】
前記少なくとも1つの適応フィルターは、ソースオーディオを作成する第二の経路応答を有する第二の経路適応フィルターを含み、かつ該ソースオーディオをエラーマイクロフォン信号から除去することにより、アンチノイズと聞く人に送達される周囲オーディオサウンドとの組み合わせを示すエラー信号を提供し、前記方法は、
該第二の経路適応フィルターの該応答を、該エラー信号と相互に関連づけられる基準信号の成分を最小にするように適応させることと、
該アンチノイズ信号が誤っている可能性が高いことを検出することに応答して、該アンチノイズ信号を該第二の経路適応フィルターの入力に向けることと、
該アンチノイズ信号を生成するための該基準マイクロフォン信号をフィルターにかける別の適応フィルターの連続した適応を続けることと
をさらに含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記少なくとも1つの適応フィルターは、ソースオーディオを作成する第二の経路応答を有する第二の経路適応フィルターを含み、かつ該ソースオーディオをエラーマイクロフォン信号から除去することにより、アンチノイズと聞く人に送達される周囲オーディオサウンドとの組み合わせを示すエラー信号を提供し、前記方法は、
該第二の経路適応フィルターの該応答を、該エラー信号と相互に関連づけられる基準信号の成分を最小にするように適応させることと、
該アンチノイズ信号が誤っている可能性が高いことを検出することに応答して、該アンチノイズ信号を該第二の経路適応フィルターの入力に向けることと、
該アンチノイズ信号を生成するための該基準マイクロフォン信号をフィルターにかける別の適応フィルターの適応を停止させることと
をさらに含む、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
パーソナルオーディオデバイスの少なくとも一部を実装する集積回路であって、該集積回路は、
信号を変換器に提供する出力であって、該信号は、聞く人へのプレイバックのためのソースオーディオと、該変換器の音響出力における周囲オーディオサウンドの影響を打ち消すためのアンチノイズ信号との両方を含む、出力と、
該周囲オーディオサウンドを示す基準マイクロフォン信号を受信する基準マイクロフォンと、
該変換器の該出力および該変換器における該周囲オーディオサウンドを示すエラーマイクロフォン信号を受信するエラーマイクロフォンと、
少なくとも1つの適応フィルターを実装する処理回路と
を含み、該少なくとも1つの適応フィルターは、該聞く人によって聞かれる該周囲オーディオサウンドの存在を弱めるための該アンチノイズ信号を基準信号から生成する応答を有し、該処理回路は、該適応フィルターの該応答を該エラーマイクロフォンにおける該周囲オーディオサウンドを最小にするように決定する係数を計算することによって、該エラーマイクロフォン信号と該基準マイクロフォン信号とに適合した該少なくとも1つの適応フィルターの該応答を作成する係数制御ブロックを実装し、該処理回路は、該少なくとも1つの適応フィルターの係数における変動を検出することによって該アンチノイズ信号が誤っている可能性が高いことを検出する検出器を実装し、該変動を検出したことに応答して、該アンチノイズ信号を該変換器により再生されるオーディオ信号から除去する、
集積回路。
【請求項53】
前記少なくとも1つの適応フィルターは、前記ソースオーディオを作成する第二の経路応答を有する第二の経路適応フィルター、および該ソースオーディオを前記エラーマイクロフォン信号から除去するコンバイナーを含むことにより、アンチノイズと前記聞く人に送達される周囲オーディオサウンドとの組み合わせを示すエラー信号を提供し、前記処理回路は、該適応フィルターを、該第二の経路適応フィルターのコピーの出力と相互に関連づけられる該エラー信号の成分を最小にするように適応させ、該処理回路は、該アンチノイズ信号が誤っている可能性が高いことを検出することに応答して、該アンチノイズ信号を該第二の経路適応フィルターの入力にさらに向け、該アンチノイズ信号を生成するための前記基準マイクロフォン信号をフィルターにかける別の適応フィルターの適応は、連続したままである、請求項52に記載の集積回路。
【請求項54】
前記少なくとも1つの適応フィルターは、前記ソースオーディオを作成する第二の経路応答を有する第二の経路適応フィルター、および該ソースオーディオを前記エラーマイクロフォン信号から除去するコンバイナーを含むことにより、アンチノイズと前記聞く人に送達される周囲オーディオサウンドとの組み合わせを示すエラー信号を提供し、前記処理回路は、該適応フィルターを、該第二の経路適応フィルターのコピーの出力と相互に関連づけられる該エラー信号の成分を最小にするように適応させ、該処理回路は、該アンチノイズ信号が誤っている可能性が高いことを検出することに応答して、該アンチノイズ信号を該第二の経路適応フィルターの入力にさらに向け、該アンチノイズ信号を生成するための前記基準マイクロフォン信号をフィルターにかける別の適応フィルターの適応は、停止させられる、請求項52に記載の集積回路。
【請求項55】
パーソナルオーディオデバイスであって、該パーソナルオーディオデバイスは、
パーソナルオーディオデバイスハウジングと、
オーディオ信号を再生するために該ハウジングに取りつけられている変換器であって、該オーディオ信号は、聞く人へのプレイバックのためのソースオーディオと、該変換器の音響出力における周囲オーディオサウンドの影響を打ち消すためのアンチノイズ信号との両方を含む、変換器と、
該周囲オーディオサウンドを示す基準マイクロフォン信号を提供するために該ハウジングに取りつけられている基準マイクロフォンと、
該変換器の該音響出力および該変換器における該周囲オーディオサウンドを示すエラーマイクロフォン信号を提供するために該変換器に近接して該ハウジングに取りつけられているエラーマイクロフォンと、
少なくとも1つの適応フィルターを実装する処理回路と
を含み、該少なくとも1つの適応フィルターは、該聞く人によって聞かれる該周囲オーディオサウンドの存在を弱めるための該アンチノイズ信号を基準信号から生成する応答を有し、該少なくとも1つの適応フィルターの該応答の適応制御は、該少なくとも1つの適応フィルターの該応答を事前に決定された応答に特定の変化率で戻す漏れ特性を有し、該処理回路は、該適応フィルターの該応答を該エラーマイクロフォンにおける該周囲オーディオサウンドを最小にするように適応させることによって、該エラーマイクロフォン信号と該基準マイクロフォン信号とに適合した該少なくとも1つの適応フィルターの該応答を作成し、該処理回路は、近端の発話が発生していることを検出することに応答して、該少なくとも1つの適応フィルターの該漏れ特性を変化させる、
パーソナルオーディオデバイス。
【請求項56】
パーソナルオーディオデバイスの変換器の近くにおいて周囲オーディオサウンドをキャンセルする方法であって、該方法は、
基準マイクロフォン信号を生成する基準マイクロフォンを用いて周囲オーディオサウンドを測定する第一の測定を行うことと、
エラーマイクロフォンを用いて、該変換器の出力および該変換器における該周囲オーディオサウンドを測定する第二の測定を行うことと、
該変換器の音響出力における周囲オーディオサウンドの影響を打ち消すために、該基準マイクロフォンの出力をフィルターにかける適応フィルターの応答を適応させることによって、該第一の測定を行うことおよび該第二の測定を行うことの結果からアンチノイズ信号を適応的に生成することであって、該適応フィルターの該応答の適応制御は、該適応フィルターの該応答を事前に決定された応答に特定の変化率で戻す漏れ特性を有する、ことと、
該変換器に提供されるオーディオ信号を生成するために、前記アンチノイズ信号をソースオーディオ信号と組み合わせることと、
近端の発話を検出することと、
該近端の発話を検出することに応答して、該漏れ特性を変化させることと
を含む、方法。
【請求項57】
パーソナルオーディオデバイスの少なくとも一部を実装する集積回路であって、該集積回路は、
信号を変換器に提供する出力であって、該信号は、聞く人へのプレイバックのためのソースオーディオと、該変換器の音響出力における周囲オーディオサウンドの影響を打ち消すためのアンチノイズ信号との両方を含む、出力と、
該周囲オーディオサウンドを示す基準マイクロフォン信号を受信する基準マイクロフォンと、
該変換器の該出力および該変換器における該周囲オーディオサウンドを示すエラーマイクロフォン信号を受信するエラーマイクロフォンと、
少なくとも1つの適応フィルターを実装する処理回路と
を含み、該少なくとも1つの適応フィルターは、該聞く人によって聞かれる該周囲オーディオサウンドの存在を弱めるための該アンチノイズ信号を基準信号から生成する応答を有し、該少なくとも1つの適応フィルターの該応答の適応制御は、該少なくとも1つの適応フィルターの該応答を事前に決定された応答に特定の変化率で戻す漏れ特性を有し、該処理回路は、該適応フィルターの該応答を該エラーマイクロフォンにおける該周囲オーディオサウンドを最小にするように適応させることによって、該エラーマイクロフォン信号と該基準マイクロフォン信号とに適合した該少なくとも1つの適応フィルターの該応答を作成し、該処理回路は、近端の発話が発生していることを検出することに応答して、該少なくとも1つの適応フィルターの該漏れ特性を変化させる、
集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、概して、適応ノイズキャンセル(ANC)を含む無線電話のようなパーソナルオーディオデバイスに関連し、より具体的には、種々の動作条件のもとでパーソナルオーディオデバイスにおけるANCの取扱いに関連する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
無線電話(たとえば、携帯電話)、コードレス電話、および他の消費者オーディオデバイス(たとえば、mp3プレーヤー)は、幅広く使用されている。そのようなデバイスの明瞭さに関する性能は、ノイズキャンセルを提供することにより向上させられ、そのノイズキャンセルは、周囲の音響事象を測定するマイクロフォンを使用し、それからアンチノイズ信号をデバイスの出力内へ挿入する信号処理を使用することで、周囲の音響事象をキャンセルしうる。
【0003】
無線電話のようなパーソナルオーディオデバイスのまわりの音響環境は、劇的に変化しうるので、存在するノイズソースおよびデバイス自身の位置に応じて、ノイズキャンセルをそのような環境変化を考慮するように適応させることが望ましい。しかし、適応ノイズキャンセル回路は複雑であり、追加の電力を消費し、かつ特定の状況のもとで望ましくない結果を生成しうる。
【0004】
したがって、変動する音響環境においてノイズキャンセルを提供するパーソナルオーディオデバイス(無線電話を含む)を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(本発明の開示)
変動する音響環境においてノイズキャンセルを提供するパーソナルオーディオデバイスを提供する上述の目的は、パーソナルオーディオデバイス、動作方法、および集積回路において達成される。
【0006】
パーソナルオーディオデバイスは、ハウジングを含み、変換器は、オーディオ信号を再生するためにハウジングに取りつけられ、そのオーディオ信号は、聞く人へのプレイバックのためのソースオーディオと、変換器の音響出力における周囲オーディオサウンドの影響を打ち消すためのアンチノイズ信号との両方を含み、そのパーソナルオーディオデバイスは、適応ノイズキャンセル(ANC)機能性を提供する集積回路を含みうる。方法は、パーソナルオーディオデバイスおよび集積回路の動作方法である。基準マイクロフォンは、周囲オーディオサウンドを示す基準マイクロフォン信号を提供するためにハウジングに取りつけられる。パーソナルオーディオデバイスは、アンチノイズ信号が周囲オーディオサウンドの実質的なキャンセルを引き起こすように、1つ以上の適応フィルターを使用して基準マイクロフォン信号からアンチノイズ信号を適応的に生成するために、ハウジング内にANC処理回路をさらに含む。エラーマイクロフォンは、周囲オーディオサウンドをキャンセルするアンチノイズ信号の適応を制御するため、および処理回路の出力から変換器までの電気音響経路について補正するために含まれる。
【0007】
基準およびエラーマイクロフォンから受信されるオーディオを分析することによって、ANC処理回路は、存在する周囲オーディオのタイプに従って制御されうる。特定の状況のもと、ANC処理回路は、周囲オーディオサウンドの効果的なキャンセルを引き起こすアンチノイズ信号を生成することができないことがあり、たとえば、変換器がそのような応答を生成可能でないか、または適切なアンチノイズが決定されることが可能でない。特定の条件は、適応フィルター(単数または複数)が無秩序な動きまたは他の制御されていない動きを示す原因ともなりうる。本発明のANC処理回路は、そのような条件を検出して、そのような事象の影響を弱め、誤ったアンチノイズ信号が生成されることを防ぐために、適応フィルター(単数または複数)に措置をとる。
本願明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
パーソナルオーディオデバイスであって、該パーソナルオーディオデバイスは、
パーソナルオーディオデバイスハウジングと、
オーディオ信号を再生するために該ハウジングに取りつけられている変換器であって、該オーディオ信号は、聞く人へのプレイバックのためのソースオーディオと、該変換器の音響出力における周囲オーディオサウンドの影響を打ち消すためのアンチノイズ信号との両方を含む、変換器と、
該周囲オーディオサウンドを示す基準マイクロフォン信号を提供するために該ハウジングに取りつけられている基準マイクロフォンと、
該変換器の該音響出力および該変換器における該周囲オーディオサウンドを示すエラーマイクロフォン信号を提供するために該変換器に近接して該ハウジングに取りつけられているエラーマイクロフォンと、
少なくとも1つの適応フィルターを実行する処理回路と
を含み、該少なくとも1つの適応フィルターは、該聞く人によって聞かれる該周囲オーディオサウンドの存在を弱めるための該アンチノイズ信号を該基準信号から生成する応答を有し、該処理回路は、該適応フィルターの該応答を該エラーマイクロフォンにおける該周囲オーディオサウンドを最小にするように適応させることによって、該エラーマイクロフォン信号と該基準マイクロフォン信号とに適合した該少なくとも1つの適応フィルターの該応答を作成し、該処理回路は、該適応フィルターが該アンチノイズ信号において望ましくない成分を生成する原因となりうる周囲オーディオ事象が発生していることを検出して、該少なくとも1つの適応フィルターの該適応を変化させる、
パーソナルオーディオデバイス。
(項目2)
前記処理回路は、前記適応フィルターの少なくとも1つの前記適応を停止させることによって、該適応フィルターの該適応を変化させる、項目1に記載のパーソナルオーディオデバイス。
(項目3)
前記処理回路は、前記周囲オーディオ事象中、前記アンチノイズ信号をさらにミュートする、項目2に記載のパーソナルオーディオデバイス。
(項目4)
前記処理回路は、前記少なくとも1つの適応フィルターの1つ以上の係数を事前に決定された値にセットすることにより、前記周囲オーディオ事象による該少なくとも1つの適応フィルターの前記応答の前記適応の混乱を改善する、項目2に記載のパーソナルオーディオデバイス。
(項目5)
前記周囲オーディオ事象は、風ノイズまたは前記パーソナルオーディオデバイスの前記ハウジングをひっかくことである、項目2に記載のパーソナルオーディオデバイス。
(項目6)
前記周囲オーディオ事象は、前記変換器と前記基準マイクロフォンとの間の連結の変化による、該基準マイクロフォンを通した正のフィードバックによる信号であり、前記処理回路は、前記少なくとも1つの適応フィルターの適応を特定の期間停止させて、該特定の期間が経過した後、該適応フィルターの適応を再開する、項目2に記載のパーソナルオーディオデバイス。
(項目7)
前記特定の期間は、前記周囲オーディオ事象の各発生に対して増加する、項目6に記載のパーソナルオーディオデバイス。
(項目8)
前記周囲オーディオ事象は、前記基準マイクロフォン信号のレベルが事前に決定された範囲から外れることである、項目2に記載のパーソナルオーディオデバイス。
(項目9)
前記処理回路は、前記基準マイクロフォン信号の前記レベルが前記事前に決定された範囲から外れていることを決定することに応答して、前記アンチノイズ信号をミュートする、項目8に記載のパーソナルオーディオデバイス。
(項目10)
前記周囲オーディオ事象は、実質的にトーンである、項目2に記載のパーソナルオーディオデバイス。
(項目11)
前記周囲オーディオ事象は、近端の発話である、項目2に記載のパーソナルオーディオデバイス。
(項目12)
前記少なくとも1つの適応フィルターの前記応答の適応制御は、該少なくとも1つの適応フィルターの該応答を事前に決定された応答に特定の変化率で戻す漏れ特性を有し、前記処理回路は、前記周囲オーディオ事象が発生していることを検出することに応答して、該漏れ特性を変化させることにより、該少なくとも1つの適応フィルターの前記適応を変化させる、項目1に記載のパーソナルオーディオデバイス。
(項目13)
前記周囲オーディオ事象は、近端の発話である、項目12に記載のパーソナルオーディオデバイス。
(項目14)
前記少なくとも1つの適応フィルターは、前記アンチノイズ信号を生成するための前記基準マイクロフォン信号をフィルターにかける適応フィルターを含み、前記処理回路は、前記周囲オーディオ事象を検出することに応答して、該基準マイクロフォン信号をフィルターにかける該適応フィルターの前記適応を変化させる、項目1に記載のパーソナルオーディオデバイス。
(項目15)
前記少なくとも1つの適応フィルターは、前記ソースオーディオを作成する第二の経路応答を有する第二の経路適応フィルター、および該ソースオーディオを前記エラーマイクロフォン信号から除去するコンバイナーを含むことにより、アンチノイズと前記聞く人に送達される周囲オーディオサウンドとの組み合わせを示すエラー信号を提供し、前記処理回路は、該適応フィルターを、該第二の経路適応フィルターのコピーの出力と相互に関連づけられる該エラー信号の成分を最小にするように適応させ、該処理回路は、前記周囲オーディオ事象を検出することに応答して、該第二の経路適応フィルターの該適応を変化させる、項目1に記載のパーソナルオーディオデバイス。
(項目16)
前記周囲オーディオ事象は、前記ソースオーディオのレベルが事前に決定された範囲から外れることであり、前記処理回路は、該ソースオーディオの該レベルが該事前に決定された範囲から外れていることを決定することに応答して、前記第二の経路適応フィルターの適応を停止させる、項目15に記載のパーソナルオーディオデバイス。
(項目17)
パーソナルオーディオデバイスの変換器の近くにおいて周囲オーディオサウンドをキャンセルする方法であって、該方法は、
基準マイクロフォン信号を生成するために基準マイクロフォンを用いて周囲オーディオサウンドを測定する第一の測定を行うことと、
エラーマイクロフォンを用いて、該変換器の出力および該変換器における該周囲オーディオサウンドを測定する第二の測定を行うことと、
該変換器の音響出力における該周囲オーディオサウンドの影響を打ち消すために、該基準マイクロフォンの出力をフィルターにかける適応フィルターの応答を適応させることによって、該第一の測定を行うことおよび該第二の測定を行うことの結果からアンチノイズ信号を適応的に生成することと、
該変換器に提供されるオーディオ信号を生成するために、前記アンチノイズ信号をソースオーディオ信号と組み合わせることと、
該適応フィルターが該アンチノイズ信号において望ましくない成分を生成する原因となりうる周囲オーディオ事象が発生していることを検出することと、
該検出することに応答して、該少なくとも一つの適応フィルターの該応答を変化させることと
を含む、方法。
(項目18)
前記変化させることは、前記適応フィルターの少なくとも1つの前記適応を停止させることによって、該適応フィルターの該適応を変化させる、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記周囲オーディオ事象中、前記アンチノイズ信号をミュートすることをさらに含む、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記変化させることは、前記少なくとも1つの適応フィルターの1つ以上の係数を事前に決定された値にセットすることにより、前記周囲オーディオ事象による該少なくとも1つの適応フィルターの前記応答の前記適応の混乱を改善する、項目18に記載の方法。
(項目21)
前記周囲オーディオ事象は、風ノイズまたは前記パーソナルオーディオデバイスのハウジングをひっかくことである、項目18に記載の方法。
(項目22)
前記周囲オーディオ事象は、前記変換器と前記基準マイクロフォンとの間の連結の変化による、該基準マイクロフォンを通した正のフィードバックによる信号であり、前記変化させることは、前記少なくとも1つの適応フィルターの適応を特定の期間停止させ、該特定の期間が経過した後、該適応フィルターの適応を再開することを含む、項目18に記載の方法。
(項目23)
前記特定の期間を前記周囲オーディオ事象の各発生に対して増加させることをさらに含む、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記周囲オーディオ事象は、前記基準マイクロフォン信号のレベルが事前に決定された範囲から外れることである、項目18に記載の方法。
(項目25)
前記変化させることは、前記基準マイクロフォン信号の前記レベルが前記事前に決定された範囲から外れていることを決定することに応答して、前記アンチノイズ信号をミュートすることを含む、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記周囲オーディオ事象は、実質的にトーンである、項目18に記載の方法。
(項目27)
前記周囲オーディオ事象は、近端の発話である、項目18に記載の方法。
(項目28)
前記少なくとも1つの適応フィルターの前記応答の適応制御は、該少なくとも1つの適応フィルターの該応答を事前に決定された応答に特定の変化率で戻す漏れ特性を有し、前記変化させることは、前記周囲オーディオ事象が発生していることを検出することに応答して、該漏れ特性を変化させることにより、該少なくとも1つの適応フィルターの前記適応を変化させる、項目17に記載の方法。
(項目29)
前記周囲オーディオ事象は、近端の発話である、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記少なくとも1つの適応フィルターは、前記アンチノイズ信号を生成するための前記基準マイクロフォン信号をフィルターにかける適応フィルターを含み、前記変化させることは、前記周囲オーディオ事象を検出することに応答して、該基準マイクロフォン信号をフィルターにかける該適応フィルターの前記適応を変化させる、項目17に記載の方法。
(項目31)
前記少なくとも1つの適応フィルターは、前記ソースオーディオを作成する第二の経路応答を有する第二の経路適応フィルターを含み、かつ該ソースオーディオを前記エラーマイクロフォン信号から除去することにより、アンチノイズと聞く人に送達される周囲オーディオサウンドとの組み合わせを示すエラー信号を提供し、前記方法は、該第二の経路適応フィルターの該応答を、該エラー信号と相互に関連づけられる前記基準信号の成分を最小にするように適応させることを含み、前記変化させることは、前記周囲オーディオ事象を検出することに応答して、該第二の経路適応フィルターの該適応を変化させる、項目17に記載の方法。
(項目32)
前記周囲オーディオ事象は、前記ソースオーディオのレベルが事前に決定された範囲から外れることであり、前記変化させることは、該ソースオーディオの該レベルが該事前に決定された範囲から外れていることを決定することに応答して、前記第二の経路適応フィルターの応答を停止させる、項目31に記載の方法。
(項目33)
パーソナルオーディオデバイスの少なくとも一部を実行する集積回路であって、該集積回路は、
信号を変換器に提供する出力であって、該信号は、聞く人へのプレイバックのためのソースオーディオと、該変換器の音響出力における周囲オーディオサウンドの影響を打ち消すためのアンチノイズ信号との両方を含む、出力と、
該周囲オーディオサウンドを示す基準マイクロフォン信号を受信する基準マイクロフォン入力と、
該変換器の該出力および該変換器における該周囲オーディオサウンドを示すエラーマイクロフォン信号を受信するエラーマイクロフォン入力と、
適応フィルターを実行する処理回路と
を含み、該適応フィルターは、該聞く人によって聞かれる該周囲オーディオサウンドの存在を弱めるための該アンチノイズ信号を該基準信号から生成する応答を有し、該処理回路は、該適応フィルターの該応答を該エラーマイクロフォン信号における該周囲オーディオサウンドを最小にするように適応させることによって、該エラーマイクロフォン信号と該基準マイクロフォン信号とに適合した該適応フィルターの該応答を作成し、該処理回路は、該適応フィルターが該アンチノイズ信号において望ましくない成分を生成する原因となりうる周囲オーディオ事象が発生していることを検出して、該少なくとも1つの適応フィルターの該適応を変化させる、
集積回路。
(項目34)
前記処理回路は、前記適応フィルターの少なくとも1つの前記適応を停止させることによって、該適応フィルターの該適応を変化させる、項目33に記載の集積回路。
(項目35)
前記処理回路は、前記周囲オーディオ事象中、前記アンチノイズ信号をさらにミュートする、項目34に記載の集積回路。
(項目36)
前記処理回路は、前記少なくとも1つの適応フィルターの1つ以上の係数を事前に決定された値にセットすることにより、前記周囲オーディオ事象による該少なくとも1つの適応フィルターの前記応答の前記適応の混乱を改善する、項目34に記載の集積回路。
(項目37)
前記周囲オーディオ事象は、風ノイズまたは前記パーソナルオーディオデバイスの前記ハウジングをひっかくことである、項目34に記載の集積回路。
(項目38)
前記周囲オーディオ事象は、前記変換器と前記基準マイクロフォンとの間の連結の変化による、該基準マイクロフォンを通した正のフィードバックによる信号であり、前記処理回路は、前記少なくとも1つの適応フィルターの適応を特定の期間停止させて、該特定の期間が経過した後、該適応フィルターの適応を再開する、項目34に記載の集積回路。
(項目39)
前記特定の期間は、前記周囲オーディオ事象の各発生に対して増加する、項目38に記載の集積回路。
(項目40)
前記周囲オーディオ事象は、前記基準マイクロフォン信号のレベルが事前に決定された範囲から外れることである、項目34に記載の集積回路。
(項目41)
前記処理回路は、前記基準マイクロフォン信号の前記レベルが前記事前に決定された範囲から外れていることを決定することに応答して、前記アンチノイズ信号をミュートする、項目40に記載の集積回路。
(項目42)
前記周囲オーディオ事象は、実質的にトーンである、項目34に記載の集積回路。
(項目43)
前記周囲オーディオ事象は、近端の発話である、項目34に記載の集積回路。
(項目44)
前記少なくとも1つの適応フィルターの前記応答の適応制御は、該少なくとも1つの適応フィルターの該応答を事前に決定された応答に特定の変化率で戻す漏れ特性を有し、前記処理回路は、前記周囲オーディオ事象が発生していることを検出することに応答して、該漏れ特性を変化させることにより、該少なくとも1つの適応フィルターの前記適応を変化させる、項目33に記載の集積回路。
(項目45)
前記周囲オーディオ事象は、近端の発話である、項目44に記載の集積回路。
(項目46)
前記少なくとも1つの適応フィルターは、前記アンチノイズ信号を生成するための前記基準マイクロフォン信号をフィルターにかける適応フィルターを含み、前記処理回路は、前記周囲オーディオ事象を検出することに応答して、該基準マイクロフォン信号をフィルターにかける該適応フィルターの前記適応を変化させる、項目33に記載の集積回路。
(項目47)
前記少なくとも1つの適応フィルターは、前記ソースオーディオを作成する第二の経路応答を有する第二の経路適応フィルター、および該ソースオーディオを前記エラーマイクロフォン信号から除去するコンバイナーを含むことにより、アンチノイズと前記聞く人に送達される周囲オーディオサウンドとの組み合わせを示すエラー信号を提供し、前記処理回路は、該適応フィルターを、該第二の経路適応フィルターのコピーの出力と相互に関連づけられる該エラー信号の成分を最小にするように適応させ、該処理回路は、前記周囲オーディオ事象を検出することに応答して、該第二の経路適応フィルターの該適応を変化させる、項目33に記載の集積回路。
(項目48)
前記周囲オーディオ事象は、前記ソースオーディオのレベルが事前に決定された範囲から外れることであり、前記処理回路は、該ソースオーディオの該レベルが該事前に決定された範囲から外れていることを決定することに応答して、前記第二の経路適応フィルターの適応を停止させる、項目47に記載の集積回路。
(項目49)
パーソナルオーディオデバイスであって、該パーソナルオーディオデバイスは、
パーソナルオーディオデバイスハウジングと、
オーディオ信号を再生するために該ハウジングに取りつけられている変換器であって、該オーディオ信号は、聞く人へのプレイバックのためのソースオーディオと、該変換器の音響出力における周囲オーディオサウンドの影響を打ち消すためのアンチノイズ信号との両方を含む、変換器と、
該周囲オーディオサウンドを示す基準マイクロフォン信号を提供するために該ハウジングに取りつけられている基準マイクロフォンと、
該変換器の該音響出力および該変換器における該周囲オーディオサウンドを示すエラーマイクロフォン信号を提供するために該変換器に近接して該ハウジングに取りつけられているエラーマイクロフォンと、
少なくとも1つの適応フィルターを実行する処理回路と
を含み、該少なくとも1つの適応フィルターは、該聞く人によって聞かれる該周囲オーディオサウンドの存在を弱めるための該アンチノイズ信号を該基準信号から生成する応答を有し、該処理回路は、該適応フィルターの該応答を該エラーマイクロフォンにおける該周囲オーディオサウンドを最小にするように適応させることによって、該エラーマイクロフォン信号と該基準マイクロフォン信号とに適合した該少なくとも1つの適応フィルターの該応答を作成し、該処理回路は、該アンチノイズ信号が誤っている可能性が高いことを検出して、該アンチノイズ信号を該変換器により再生される該オーディオ信号から除去する、
パーソナルオーディオデバイス。
(項目50)
前記処理回路は、前記少なくとも一つの適応フィルターの前記係数における無秩序な動きを検出して、応答における前記アンチノイズ信号を除去する、項目49に記載のパーソナルオーディオデバイス。
(項目51)
前記少なくとも1つの適応フィルターは、前記ソースオーディオを作成する第二の経路応答を有する第二の経路適応フィルター、および該ソースオーディオを前記エラーマイクロフォン信号から除去するコンバイナーを含むことにより、アンチノイズと前記聞く人に送達される周囲オーディオサウンドとの組み合わせを示すエラー信号を提供し、前記処理回路は、該適応フィルターを、該第二の経路適応フィルターのコピーの出力と相互に関連づけられる該エラー信号の成分を最小にするように適応させ、該処理回路は、該アンチノイズ信号が誤っている可能性が高いことを検出することに応答して、該アンチノイズ信号を該第二の経路適応フィルターの入力にさらに向け、該アンチノイズ信号を生成するための前記基準マイクロフォン信号をフィルターにかける別の適応フィルターの適応は、連続したままである、項目49に記載のパーソナルオーディオデバイス。
(項目52)
前記少なくとも1つの適応フィルターは、前記ソースオーディオを作成する第二の経路応答を有する第二の経路適応フィルター、および該ソースオーディオを前記エラーマイクロフォン信号から除去するコンバイナーを含むことにより、アンチノイズと前記聞く人に送達される周囲オーディオサウンドとの組み合わせを示すエラー信号を提供し、前記処理回路は、該適応フィルターを、該第二の経路適応フィルターのコピーの出力と相互に関連づけられる該エラー信号の成分を最小にするように適応させ、該処理回路は、該アンチノイズ信号が誤っている可能性が高いことを検出することに応答して、該アンチノイズ信号を該第二の経路適応フィルターの入力にさらに向け、該アンチノイズ信号を生成するための前記基準マイクロフォン信号をフィルターにかける別の適応フィルターの適応は、停止させられる、項目49に記載のパーソナルオーディオデバイス。
(項目53)
パーソナルオーディオデバイスの変換器の近くにおいて周囲オーディオサウンドをキャンセルする方法であって、該方法は、
基準マイクロフォン信号を生成する基準マイクロフォンを用いて周囲オーディオサウンドを測定する第一の測定を行うことと、
エラーマイクロフォンを用いて、該変換器の出力および該変換器における該周囲オーディオサウンドを測定する第二の測定を行うことと、
該変換器の音響出力における該周囲オーディオサウンドの影響を打ち消すために、該基準マイクロフォンの出力をフィルターにかける適応フィルターの応答を適応させることによって、該第一の測定を行うことおよび該第二の測定を行うことの結果からアンチノイズ信号を適応的に生成することと、
該変換器に提供されるオーディオ信号を生成するために、前記アンチノイズ信号をソースオーディオ信号と組み合わせることと、
該アンチノイズ信号が誤っている可能性が高いことを検出することと、
該検出することに応答して、該アンチノイズ信号を該変換器により再生される該オーディオ信号から除去することと
を含む、方法。
(項目54)
前記検出することは、前記少なくとも1つの適応フィルターの係数における無秩序な動きを検出する、項目53に記載の方法。
(項目55)
前記少なくとも1つの適応フィルターは、前記ソースオーディオを作成する第二の経路応答を有する第二の経路適応フィルターを含み、かつ該ソースオーディオを前記エラーマイクロフォン信号から除去することにより、アンチノイズと聞く人に送達される周囲オーディオサウンドとの組み合わせを示すエラー信号を提供し、前記方法は、
該第二の経路適応フィルターの該応答を、該エラー信号と相互に関連づけられる前記基準信号の成分を最小にするように適応させることと、
該アンチノイズ信号が誤っている可能性が高いことを検出することに応答して、該アンチノイズ信号を該第二の経路適応フィルターの入力に向けることと、
該アンチノイズ信号を生成するための該基準マイクロフォン信号をフィルターにかける別の適応フィルターの連続した適応を続けることと
をさらに含む、項目53に記載の方法。
(項目56)
前記少なくとも1つの適応フィルターは、前記ソースオーディオを作成する第二の経路応答を有する第二の経路適応フィルターを含み、かつ該ソースオーディオを前記エラーマイクロフォン信号から除去することにより、アンチノイズと聞く人に送達される周囲オーディオサウンドとの組み合わせを示すエラー信号を提供し、前記方法は、
該第二の経路適応フィルターの該応答を、該エラー信号と相互に関連づけられる前記基準信号の成分を最小にするように適応させることと、
該アンチノイズ信号が誤っている可能性が高いことを検出することに応答して、該アンチノイズ信号を該第二の経路適応フィルターの入力に向けることと、
該アンチノイズ信号を生成するための該基準マイクロフォン信号をフィルターにかける別の適応フィルターの適応を停止させることと
をさらに含む、項目53に記載のパーソナルオーディオデバイス。
(項目57)
パーソナルオーディオデバイスの少なくとも一部を実行する集積回路であって、該集積回路は、
信号を変換器に提供する出力であって、該信号は、聞く人へのプレイバックのためのソースオーディオと、該変換器の音響出力における周囲オーディオサウンドの影響を打ち消すためのアンチノイズ信号との両方を含む、出力と、
該周囲オーディオサウンドを示す基準マイクロフォン信号を受信する基準マイクロフォン入力と、
該変換器の該出力および該変換器における該周囲オーディオサウンドを示すエラーマイクロフォン信号を受信するエラーマイクロフォン入力と、
少なくとも1つの適応フィルターを実行する処理回路と
を含み、該少なくとも1つの適応フィルターは、該聞く人によって聞かれる該周囲オーディオサウンドの存在を弱めるための該アンチノイズ信号を該基準信号から生成する応答を有し、該処理回路は、該適応フィルターの該応答を該エラーマイクロフォン信号における該周囲オーディオサウンドを最小にするように適応させることによって、該エラーマイクロフォン信号と該基準マイクロフォン信号とに適合した該少なくとも1つの適応フィルターの該応答を作成し、該処理回路は、該アンチノイズ信号が誤っている可能性が高いことを検出して、該アンチノイズ信号を該変換器により再生される該オーディオ信号から除去する、
集積回路。
(項目58)
前記処理回路は、前記少なくとも1つの適応フィルターの係数における無秩序な動きを検出して、応答における前記アンチノイズ信号を除去する、項目57に記載の集積回路。
(項目59)
前記少なくとも1つの適応フィルターは、前記ソースオーディオを作成する第二の経路応答を有する第二の経路適応フィルター、および該ソースオーディオを前記エラーマイクロフォン信号から除去するコンバイナーを含むことにより、アンチノイズと前記聞く人に送達される周囲オーディオサウンドとの組み合わせを示すエラー信号を提供し、前記処理回路は、該適応フィルターを、該第二の経路適応フィルターのコピーの出力と相互に関連づけられる該エラー信号の成分を最小にするように適応させ、該処理回路は、該アンチノイズ信号が誤っている可能性が高いことを検出することに応答して、該アンチノイズ信号を該第二の経路適応フィルターの入力にさらに向け、該アンチノイズ信号を生成するための前記基準マイクロフォン信号をフィルターにかける別の適応フィルターの適応は、連続したままである、項目57に記載の集積回路。
(項目60)
前記少なくとも1つの適応フィルターは、前記ソースオーディオを作成する第二の経路応答を有する第二の経路適応フィルター、および該ソースオーディオを前記エラーマイクロフォン信号から除去するコンバイナーを含むことにより、アンチノイズと前記聞く人に送達される周囲オーディオサウンドとの組み合わせを示すエラー信号を提供し、前記処理回路は、該適応フィルターを、該第二の経路適応フィルターのコピーの出力と相互に関連づけられる該エラー信号の成分を最小にするように適応させ、該処理回路は、該アンチノイズ信号が誤っている可能性が高いことを検出することに応答して、該アンチノイズ信号を該第二の経路適応フィルターの入力にさらに向け、該アンチノイズ信号を生成するための前記基準マイクロフォン信号をフィルターにかける別の適応フィルターの適応は、停止させられる、項目57に記載の集積回路。
【0008】
本発明の前記および他の目的、特徴および利点は、添付の図面に図示されるような、下記の本発明の好ましい実施形態のより詳細な説明から明白である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に従う、無線電話10の例証である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に従う、無線電話10内の回路のブロック線図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に従う、
図2のCODEC集積回路20のANC回路30内の信号処理回路および機能的なブロックを描写するブロック線図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に従う、
図3の回路における周囲オーディオ事象検出およびANC制御と関連づけられる機能的なブロックを図示するブロック線図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に従う、ANC動作が望ましくないアンチノイズを生成しそうであるか、または不適当に適応しそうであることを検出し、適切な措置をとる方法のフローチャートである。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に従う、集積回路内の信号処理回路および機能的なブロックを描写するブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(発明を実施する最良のモード)
本発明は、無線電話のようなパーソナルオーディオデバイスにおいて実行されうるノイズキャンセル技術および回路を包含する。パーソナルオーディオデバイスは、周囲の音響環境を測定し、かつ信号を生成する適応ノイズキャンセル(ANC)回路を含み、その信号は、スピーカー(または他の変換器)の出力内に注入されることで、周囲の音響事象をキャンセルする。基準マイクロフォンは、周囲の音響環境を測定するために提供され、エラーマイクロフォンは、周囲オーディオサウンドをキャンセルするアンチノイズ信号の適応を制御するため、および処理回路の出力から変換器までの電気音響経路について補正するために含まれる。しかし、特定の音響条件のもとで、(たとえば、特定の音響条件または事象が発生する場合)、ANC回路は、不適当に、または不安定/無秩序な態様で動作しうる。本発明は、そのような条件の影響を防ぎ、かつ/または最小にする仕組みを提供する。
【0011】
そこで
図1を参照すると、無線電話10は、本発明の実施形態に従って図示され、ヒトの耳5に近接して示される。図示された無線電話10は、本発明の実施形態に従って技術が用いられうるデバイスの例であるが、図示された無線電話10、または後の例証に描写される回路に具体化された要素または形態のすべてが、特許請求の範囲に列挙されている発明を実施するために要求されるわけではないということが理解される。無線電話10は、スピーカーSPKRのような変換器を含み、その変換器は、無線電話10によって受信される遠方からの発話を、着信音、記憶されたオーディオ番組素材、バランスのとれた会話の知覚を提供するために近端の発話(near−end speech)(つまり、無線電話10のユーザーの発話)を注入すること、ならびに無線電話10による再生を要求する他のオーディオ(たとえば、無線電話10により受信されるウェブページまたは他のネットワーク通信からのソースおよびバッテリー低下および他のシステム事象の通知のようなオーディオ表示)のような他の局所的なオーディオ事象と一緒に再生する。近発話(near−speech)マイクロフォンNSは、近端の発話を捕捉するために提供され、その近端の発話は、無線電話10から他の会話の参加者(単数または複数)に送られる。
【0012】
無線電話10は、スピーカーSPKRにより再生される遠方からの発話および他のオーディオの明瞭さを向上させるために、適応ノイズキャンセル(ANC)回路、およびアンチノイズ信号をスピーカーSPKR内に注入するという特徴を含む。基準マイクロフォンRは、周囲の音響環境を測定するために提供され、ユーザーの口の典型的な位置から離れて位置づけられ、その結果、近端の発話は、基準マイクロフォンRにより生成される信号において最小にされる。第三のマイクロフォン、エラーマイクロフォンEは、無線電話10が耳5にきわめて近接している場合、耳5に近いスピーカーSPKRにより再生されるオーディオと組み合わせた周囲オーディオの測定を提供することによりANC動作をさらに向上させるために提供される。無線電話10内の例示的な回路14は、基準マイクロフォンR、近発話マイクロフォンNS、およびエラーマイクロフォンEからの信号を受信するオーディオCODEC集積回路20を含み、無線電話トランシーバーを含むRF集積回路12のような他の集積回路とインターフェースで接続する。本発明の他の実施形態において、本明細書中に開示される回路および技術は、単一の集積回路(たとえば、チップ上MP3プレーヤー集積回路)に組み込まれ、その集積回路は、制御回路およびパーソナルオーディオデバイスの全体を実行する他の機能性を含みうる。
【0013】
一般に、本発明のANC技術は、基準マイクロフォンRに影響を与える(スピーカーSPKRの出力および/または近端の発話に対立するものとしての)周囲の音響事象を測定し、エラーマイクロフォンEに影響を与える同じ周囲の音響事象も測定することによって、図示された無線電話10のANC処理回路は、基準マイクロフォンRの出力から生成されるアンチノイズ信号を、周囲の音響事象の振幅をエラーマイクロフォンEで最小にするという特性を有するように適応させる。音響経路P(z)が、基準マイクロフォンRからエラーマイクロフォンEに延びるので、ANC回路は、電気音響経路S(z)の影響を除去することと組み合わせた音響経路P(z)を本質的に推定しており、その電気音響経路S(z)は、CODEC IC20のオーディオ出力回路の応答、および特定の音響環境におけるスピーカーSPKRとエラーマイクロフォンEとの間の連結を含むスピーカーSPKRの音響/電気の伝達関数を表し、この特定の音響環境は、無線電話が耳5にしっかり押しつけられない場合、耳5の近さおよび構造ならびに無線電話10に近接しうる他の身体対象およびヒトの頭の構造による影響を受ける。図示された無線電話10は、第三の近発話マイクロフォンNSと共に2つのマイクロフォンANCシステムを含む一方、本発明のいくつかの局面は、別個のエラーおよび基準マイクロフォンを含まないか、または無線電話が基準マイクロフォンRの機能を果たす近発話マイクロフォンNSを使用するシステムにおいて実施されうる。そのうえ、本発明の範囲を変化させずに、検出機構を含むマイクロフォンへの入力に提供される選択肢を制限することとは別に、オーディオプレイバックのためだけに設計されたパーソナルオーディオデバイスにおいて、近発話マイクロフォンNSは、概して、含まれず、以下でさらに詳細に説明される回路の近発話信号経路は、省略されうる。
【0014】
そこで
図2を参照すると、無線電話10内の回路は、ブロック線図に示される。CODEC集積回路20は、基準マイクロフォン信号を受信し、かつ基準マイクロフォン信号のデジタル表現refを生成するアナログデジタル変換器(ADC)21A、エラーマイクロフォン信号を受信し、かつエラーマイクロフォン信号のデジタル表現errを生成するADC21B、および近発話マイクロフォン信号を受信し、かつエラーマイクロフォン信号のデジタル表現nsを生成するADC21Cを含む。CODEC IC20は、駆動スピーカーSPKRのための出力を増幅器A1から生成し、その増幅器A1は、コンバイナー26の出力を受信するデジタルアナログ変換機(DAC)23の出力を増幅する。コンバイナー26は、内部オーディオソース24からのオーディオ信号と、ANC回路30により生成されるアンチノイズ信号(アンチノイズ信号は、慣行に従って、基準マイクロフォン信号refのノイズと同じ極性を有し、したがってコンバイナー26により引かれる)と、無線電話10のユーザーがダウンリンク発話dsに適切に関係した自身の声を聞くように近発話信号nsの一部とを組み合わせ、そのダウンリンク発話dsは、ラジオ周波数(RF)集積回路22から受信され、さらにコンバイナー26によって組み合わせられる。近発話信号nsはRF集積回路22にも提供され、アップリンク発話としてサービスプロバイダーにアンテナANT経由で送られる。
【0015】
そこで
図3を参照すると、ANC回路30の詳細は、本発明の実施形態に従って示される。適応フィルター32は、基準マイクロフォン信号refを受信し、かつ理想的な状況のもとで、その伝達関数W(z)をアンチノイズ信号を生成するP(z)/S(z)になるように適応させ、そのアンチノイズ信号は、
図2のコンバイナー26により例示されるように、アンチノイズ信号を変換器により再生されるオーディオと組み合わせる出力コンバイナーに提供される。ミューティングゲート回路G1は、アンチノイズ信号が誤っているか、または効果がないと予期される場合、以下でさらに詳細に説明されるような特定の条件のもとでアンチノイズ信号をミュートする。本発明のいくつかの実施形態に従って、別のゲート回路G2は、アンチノイズ信号をコンバイナー36B内へ向け直すことを制御し、そのコンバイナー36Bは、入力信号を第二の経路の適応フィルター34Aに提供し、以下で説明されるような特定の周囲の音響条件の中アンチノイズ信号がミュートされる間、W(z)が適応し続けることを可能にする。適応フィルター32の係数は、W係数制御ブロック31により制御され、そのW係数制御ブロック31は、2つの信号の相関を使用することで、適応フィルター32の応答を決定し、その適応フィルター32は、エラーマイクロフォン信号errに存在する基準マイクロフォン信号refの成分の間のエラーを、最小2乗平均の意味で、概して最小にする。W係数制御ブロック31により比較される信号は、フィルター34Bにより提供される、経路S(z)の応答の推定のコピーにより作成されるような基準マイクロフォン信号ref、およびエラーマイクロフォン信号errを含む別の信号である。基準マイクロフォン信号refを、経路S(z)の応答の推定のコピーSE
COPY(z)を用いて変換すること、および結果として生じる信号とエラーマイクロフォン信号errとの間の差を最小にすることにより、適応フィルター32は、P(z)/S(z)の所望される応答に適応する。エラーマイクロフォン信号errに加えて、W係数制御ブロック31によりフィルター34Bの出力と比較される信号は、フィルター応答SE(z)により処理されたダウンリンクオーディオ信号dsの反転した量を含み、応答SE
COPY(z)はフィルター応答SE(z)のコピーである。ダウンリンクオーディオ信号dsの反転した量を注入することにより、適応フィルター32は、エラーマイクロフォン信号errに存在する比較的大きな量のダウンリンクオーディオに適応するのを妨げられ、電気および音響の経路S(z)が、ダウンリンクオーディオ信号dsがエラーマイクロフォンEに到達するのに必要な経路であるので、ダウンリンクオーディオ信号dsの反転したコピーを、経路S(z)の応答の推定を用いて変換することにより、比較の前にエラーマイクロフォン信号errから除去されるダウンリンクオーディオは、エラーマイクロフォン信号errで再生されるダウンリンクオーディオ信号dsの予期されたバージョンに一致するはずである。フィルター34Bは、それ自体が適応フィルターではないが、適応フィルター34Aの応答に一致するように調整される調節可能な応答を有し、その結果、フィルター34Bの応答は、適応フィルター34Aの適応の跡を追う。
【0016】
上記を実行するために、適応フィルター34Aは、SE係数制御ブロック33により制御される係数を有し、そのSE係数制御ブロック33は、ダウンリンクオーディオ信号dsを、上記で説明された、フィルターにかけられたダウンリンクオーディオ信号dsの除去後のエラーマイクロフォン信号errと比較し、その上記で説明された、フィルターにかけられたダウンリンクオーディオ信号dsは、適応フィルター34Aによりフィルターにかけられることで、エラーマイクロフォンEに送達される予期されたダウンリンクオーディオを表し、その予期されたダウンリンクオーディオは、コンバイナー36Aにより適応フィルター34Aの出力から除去される。SE係数制御ブロック33は、実際のダウンリンク発話信号dsを、エラーマイクロフォン信号errに存在するダウンリンクオーディオ信号dsの成分と相互に関連づける。
【0017】
それによって、適応フィルター34Aは、ダウンリンクオーディオ信号ds(および、必要に応じて、上記で説明されたようなミューティング条件中、コンバイナー36Bにより組み合わせられたアンチノイズ信号)から信号を生成するように適応させられ、その信号は、エラーマイクロフォン信号errから引かれる場合、ダウンリンクオーディオ信号dsによるものでないエラーマイクロフォン信号errの内容を含む。事象検出39および監視制御論理38は、以下でさらに詳細に開示されるように、本発明の種々の実施形態と適合した種々の事象に応答して、種々の動作を行う。
【0018】
以下の表1は、
図1の無線電話10の環境に発生しうる周囲の事象または条件、ANC動作と共に起こる問題、および特定の周囲の事象または条件が検出された場合にANC処理回路により採られる応答のリストを描写する。
【0019】
【表1】
図3に図示されるように、W係数制御ブロック31は、係数の情報を計算ブロック37に提供し、その計算ブロック37は、適応フィルター32の応答を作成する係数W
n(z)の大きさの和Σ|W
n(z)|の時間微分係数を計算し、その時間微分係数は、適応フィルター32の応答のすべてのゲインの変動の表示である。和Σ|W
n(z)|の大きな変動は、機械的ノイズ(たとえば、基準マイクロフォンRに起こりがちな風または無線電話10のハウジング上の機械的な接触の変化(たとえばひっかくこと)により生成されたノイズ)または他の条件(たとえば、あまりに大きく、かつ不安定な動作の原因となる適応ステップサイズが、システムにおいて使用された)を示す。コンパレーターK1は、和Σ|W
n(z)|の時間微分係数をしきい値と比較することで、機械的ノイズ条件の表示を監視制御38に提供し、その表示は、和Σ|W
n(z)|の変動が、無線電話10に存在する近端の発話のエネルギーの変動によるものであると示しうる近端の発話信号nsのエネルギーに大きな変化があるかどうかの、事象検出39による検出を用いて修正されうる。
【0020】
そこで、
図4を参照すると、本発明の実施形態に従い、
図3の事象検出回路39内の詳細が示される。基準マイクロフォン信号ref、エラーマイクロフォン信号err、近発話信号ns、およびダウンリンク発話dsの各々は、それぞれ、対応するFFT処理ブロック60A〜60Dに提供される。対応するトーン検出器62A〜62Dは、それらの対応するFFT処理ブロック60A〜60Dからの出力を受信し、フラグ(tone_ref、tone_err、tone_ns、およびtone_ds)を生成し、そのフラグは、トーンの存在を示す、入力信号のスペクトル内の一貫した明確なピークの存在または不在を示す。トーン検出器62A〜62Dは、検出されたトーンの周波数の表示(freq_ref、freq_err、freq_ns、およびfreq_ds)も提供する。基準マイクロフォン信号ref、エラーマイクロフォン信号err、近発話信号ns、およびダウンリンク発話dsの各々は、それぞれ、対応するレベル検出器64A〜64Dにも提供され、そのレベル検出器64A〜64Dは、対応する入力信号レベルのレベルが事前に決定された下限より下に下がる場合に表示(ref_low、err_low、ns_low、およびds_low)を生成し、対応する入力信号が事前に決定された上限を超える場合に別の表示(ref_hi、err_hi、ns_hi、およびds_hi)を生成する。事象検出器39により生成された情報を用いて、監視制御38は、(変換器と基準マイクロフォンrefとの間に手をカップ状にすることにより引き起こされうるような)変換器と基準マイクロフォンrefとの間の正のフィードバックによるハウリングを含む強烈なトーンが存在するかどうかを決定し、ANC処理回路内で適切な措置をとる。ハウリングは、トーンがマイクロフォン入力の各々に存在する(つまり、tone_ref、tone_err、およびtone_nsが全てセットされる)ことと、トーンの周波数がすべて等しく(freq_ref=freq_err=freq_ns)、トーンの基本値域の値域レベルが、エラーマイクロフォンチャンネルerr内で、基準マイクロフォンチャンネルrefおよび発話チャンネルns内よりも、対応するしきい値分大きいということと、err_freqの値がds_freqに等しくないということ(これらのことは、トーンがダウンリンクdsに起因しているということを示す)とを決定することで検出され、かつ再生されるはずである。監視制御38は、存在しうる他のタイプのトーンも識別し、他の措置をとりうる。監視制御38は、負荷をかけすぎるノイズが存在するかどうか、または周囲の環境が静かであるかどうかを決定するために基準マイクロフォン信号レベル表示(ref_lowおよびref_hi)と、近発話が存在することを示す近発話レベル表示ns_hiと、ダウンリンクオーディオが不在であるかどうかを決定するためにダウンリンクオーディオレベル表示ds_lowとをモニターする。上記に列挙された条件の各々は表1の行に対応し、監視制御は、列挙されるように、特定の条件が検出された場合、適切な措置をとる。
【0021】
そこで
図5を参照すると、本発明の実施形態に従い、監視制御アルゴリズムが、図示される。フィルター応答W(z)の適応(つまり、フィルター応答W(z)の係数の値の制御)が、不安定であると決定される場合(決定70)、アンチノイズは、ミュートされ、フィルター応答W(z)は、リセットされ、かつさらなる適応からフリーズされる(ステップ71)。なおそのうえ、応答SE(z)は、必要に応じて、リセットされ、かつフリーズされる。あるいは、上記で言及されたように、応答W(z)の適応をフリーズすることではなく、アンチノイズ信号は、適応フィルター34A内に向け直されうる。トーンが検出され(決定72)、かつ正のフィードバックハウリング条件が示された場合(決定73)、アンチノイズは、ミュートされ、応答W(z)およびSE(z)はさらなる適応からフリーズされ、W(z)は、リセットされ、なおそのうえ、SE(z)は、必要に応じてリセットされる(ステップ75)。タイムアウト待ちが、用いられ、かつ後の繰返しのために増加されうる(ステップ76)。そうでなく、トーンが検出され(決定72)、かつハウリング条件が示されなかった場合(決定73)、応答W(z)は、フリーズされる(ステップ74)。基準マイクロフォンレベルが低い(ref_lowセット)場合(決定77)、アンチノイズは、ミュートされ、応答W(z)は、さらなる適応からフリーズされる(ステップ78)。基準マイクロフォンレベルが高い(ref_hiセット)場合(決定79)、応答W(z)は、さらなる適応からフリーズされるか、または適応フィルターの漏れが増加される(ステップ78)。並行適応フィルター配置における漏れは、
図6に関して以下に説明される。基準マイクロフォンチャンネルrefのレベルがあまりに高い(ref_hiがセットされる)場合(決定79)、応答W(z)およびSE(z)は、さらなる応答からフリーズされ、必要に応じて、アンチノイズ信号は、ミュートされる(ステップ80)。近端の発話が検出される(ns_hiがセットされる)場合(決定81)、応答W(z)がさらなる応答からフリーズされるか、漏れの量が増加されるかのどちらかがなされる(ステップ82)。ダウンリンクオーディオdsレベルが低い(ds_lowがセットされる)場合、応答SE(z)が整えうるダウンリンクオーディオ信号がないので、応答SE(z)は、さらなる応答からフリーズされる(ステップ84)。ANC処理が終わる(ステップ85)まで、ステップ70〜85の工程は、動作が、
図5に図示されるアルゴリズムによって検出される望ましくない条件に反応する時間を有すること、およびいくつかの場合、停止させることを可能にする追加の遅延86と共に、繰り返される。
【0022】
そこで
図6を参照すると、ANCシステムのブロック線図が、本発明の実施形態に従って、CODEC集積回路20内で実行されうるようなANC技術を図示するために示される。基準マイクロフォン信号refは、64倍オーバーサンプリングで動作するデルタ―シグマADC41Aにより生成され、そのデルタ―シグマADC41Aの出力は、デシメーター42Aにより2倍に縮小化させられ、32倍オーバーサンプリング信号を生む。デルタ―シグマシェーパー43Aは、イメージのエネルギーを、並行する一対のフィルターステージ44Aおよび44Bの結果として生じる応答が有意な応答を有するバンドの外に広げる。フィルターステージ44Bは、固定された応答W
FIXED(z)を有し、その固定された応答W
FIXED(z)は、概して、典型的なユーザーのための無線電話10の特定の設計についてのP(z)/S(z)の推定で起点を提供するように、事前に決定される。P(z)/S(z)の推定の応答の適応部分W
ADAPT(z)は、適応フィルター44Aにより提供され、その適応フィルター44Aは、漏れ最小2乗平均(LMS)係数制御器54Aにより制御される。漏れLMS係数制御器54Aは、応答が平らになるように標準化するか、またはそうでなければ、エラー入力がない間、事前に決定された応答が、漏れLMS係数制御器54Aに適応させるために提供されるという点で漏れやすい。漏れ制御器を提供することは、特定の環境条件のもとで生じうる長期不安定を防ぎ、一般に、システムをANC応答の特定の感度に対してより強固にする。例示的な漏れ制御方程式は、
【0023】
【数1】
により与えられ、ここでμ=2
−normalized_stepsizeであり、normalized_stepsizeは、kの各々の増加の間のステップを制御する制御値であり、Γ=2
−normalized_leakageであり、normalized_leakageは、漏れの量を決定する制御値であり、e
kはエラー信号の大きさであり、X
kは基準マイクロフォン信号refの大きさであり、W
kはフィルター44Aの振幅応答の始まる大きさであり、W
k+1はフィルター44Aの振幅応答の大きさの更新された値である。上記で言及されたように、LMS係数制御器54Aの漏れの増加は、近端の発話が検出される場合に行われえ、その結果、アンチノイズ信号は、結局、近端の発話が終わり、適応フィルターが、聞く人の耳で周囲の環境をキャンセルするように再び適応しうるまで固定された応答から生成される。
【0024】
図6に描写されるシステムにおいて、基準マイクロフォン信号は、経路S(z)の応答の推定のコピーSE
COPY(z)により、応答SE
COPY(z)を有するフィルター51によりフィルターにかけられ、そのフィルター51の出力は、デシメーター52Aにより32倍に縮小化させられ、無限インパルス応答(IIR)フィルター53Aを通って漏れLMS54Aに提供されるベースバンドオーディオ信号を生む。フィルター51は、それ自体が適応フィルターではないが、フィルター55Aおよび55Bの組み合わせた応答に一致するように調整される調節可能な応答を有し、その結果、フィルター51の応答はSE(z)の適応の跡を追う。エラーマイクロフォン信号errは、64倍オーバーサンプリングで動作するデルタ―シグマADC41Cにより生成され、そのデルタ―シグマADC41Cの出力はデシメーター42Bにより2倍に縮小化させられ、32倍オーバーサンプリング信号を生む。
図3のシステムにおけるように、応答S(z)に適応するように適応フィルターによりフィルターにかけられたダウンリンクオーディオdsの量は、コンバイナー46Cによりエラーマイクロフォン信号errから除去され、そのコンバイナー46Cの出力は、デシメーター52Cにより32倍に縮小化させられ、無限インパルス応答(IIR)フィルター53Bを通って漏れLMS54Aに提供されるベースバンドオーディオ信号を生む。応答S(z)は、フィルターステージ55Aおよび55Bの別の並行するセットにより生成され、その1つ、フィルターステージ55Bは、固定された応答SE
FIXED(z)を有し、そのもう1つ、フィルターステージ55Aは、漏れLMS係数制御器54Bにより制御される適応応答SE
ADAPT(z)を有する。フィルターステージ55Aおよび55Bの出力は、コンバイナー46Eにより組み合わせられる。上記で説明されたフィルター応答W(z)の実行と同様に、応答SE
FIXED(z)は、概して、種々の動作条件のもとで電気/音響経路S(z)に適切な起点を提供するということが知られる、事前に決定された応答である。フィルター51は、適応フィルター55A/55Bのコピーであるが、それ自身は適応フィルターではなく、つまりフィルター51は、自分の出力に応答して単独に適応せず、フィルター51は、単一のステージまたは2つのステージを使用して実行されうる。別個の制御値が、フィルター51の応答を制御するために
図6のシステムに提供され、そのフィルター51は、単一の適応フィルターステージとして示される。しかし、フィルター51は、その代わりに、2つの並行したステージを使用することで実行され、それから適応フィルターステージ55Aを制御するために使用される同じ制御値が、フィルター51の実行における調節可能なフィルター部分を制御するために使用されうる。漏れLMS制御ブロック54Bへの入力はまた、ベースバンドで、ダウンリンクオーディオ信号dsと内部オーディオiaとの組み合わせを縮小化することで提供され、32倍に縮小化するデシメーター52Bにより、コンバイナー46Hにより生成され、別の入力は、適応フィルターステージ55Aおよびフィルターステージ55Bの組み合わせた出力から生成される信号を除去したコンバイナー46Cの出力を縮小化することで提供され、その組み合わせた出力は別のコンバイナー46Eにより組み合わせられる。コンバイナー46Cの出力は、ダウンリンクオーディオ信号dsによるものである成分を除去されたエラーマイクロフォン信号errを表し、そのコンバイナー46Cの出力は、デシメーター52Cによる縮小化後LMS制御ブロック54Bに提供される。LMS制御ブロック54Bへの他の入力は、デシメーター52Bにより提供されるベースバンド信号である。
【0025】
上記ベースバンドの配置およびオーバーサンプリング信号を送ることは、簡単化された制御および適応制御ブロック(たとえば、漏れLMS制御器54Aおよび54B)において消費される減少した電力に備える一方、適応フィルターステージ44A〜44B、55A〜55Bおよびフィルター51をオーバーサンプリングレートで実行することによって与えられるタップ順応性を提供している。
図6のシステムの残りは、ダウンリンクオーディオdsを内部オーディオiaと組み合わせるコンバイナー46Hを含み、そのコンバイナー46Hの出力は、コンバイナー46Dの入力に提供され、そのコンバイナー46Dは、シグマ‐デルタADC41Bにより生成され、かつフィードバック条件を防ぐために側音減衰器56によりフィルターにかけられた近くでのマイクロフォン信号nsの一部を追加する。コンバイナー46Dの出力は、入力をフィルターステージ55Aおよび55Bに提供し、イメージをフィルターステージ55Aおよび55Bが有意な応答を有するバンドの外に移動させるように作成されたシグマ‐デルタシェイパー43Bにより作成される。
【0026】
本発明の実施形態に従って、コンバイナー46Dの出力は、制御チェーンにより処理された、適応フィルターステージ44A〜44Bの出力とも組み合わせられ、その制御チェーンは、フィルターステージのそれぞれについて対応するハードミュートブロック45A、45Bと、ハードミュートブロック45A、45Bの出力を組み合わせるコンバイナー46Aと、ソフトミュート47と、それからソフトリミッター48とを含み、コンバイナー46Dのソースオーディオ出力を用いてコンバイナー46Bにより引かれるアンチノイズ信号を生成する。コンバイナー46Bの出力は、インターポレーター49により2倍に補間され、それから64倍オーバーサンプリングレートで動作するシグマ‐デルタDAC50により再生される。DAC50の出力は、スピーカーSPKRに送達される信号を生成する増幅器A1に提供される。
【0027】
図2および
図3の例示的な回路のみならず
図6のシステムにおける要素の各々または一部は、直接論理において、または動作(たとえば、適応フィルターにかけることおよびLMS係数の計算)を行うプログラム命令を実行するデジタル信号処理(DSP)コアのようなプロセッサーにより実行されうる。DACおよびADCステージは、概して、専用の混合信号回路を用いて実行されるが、本発明のANCシステムのアーキテクチャは、概して、ハイブリッドアプローチに適しており、そのハイブリッドアプローチにおいて、たとえばロジックが、設計の高度なオーバーサンプリング区画に使用されうる一方、プログラムコードまたはマイクロコードによって動く処理要素が、より複雑であるが、より低いレートの動作(たとえば、適応フィルターのためのタップを計算することおよび/または本明細書中に説明された事象のような検出された事象に応答すること)に選ばれる。
【0028】
本発明は、特に、本発明の好ましい実施形態に関して示され、かつ説明されてきたが、前記および他の形態および詳細についての変化は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく本発明についてなされうるということが、当業者によって理解される。