特許第5937622号(P5937622)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5937622アナキンラを含み、クエン酸塩を含まない薬学的組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5937622
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】アナキンラを含み、クエン酸塩を含まない薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/00 20060101AFI20160609BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20160609BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20160609BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20160609BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20160609BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20160609BHJP
   A61K 47/34 20060101ALI20160609BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20160609BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   A61K37/02
   A61P19/02
   A61P29/00 101
   A61P43/00 111
   A61K9/08
   A61K47/18
   A61K47/34
   A61K47/04
   A61K47/26
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-553397(P2013-553397)
(86)(22)【出願日】2012年2月9日
(65)【公表番号】特表2014-505099(P2014-505099A)
(43)【公表日】2014年2月27日
(86)【国際出願番号】SE2012050124
(87)【国際公開番号】WO2012108828
(87)【国際公開日】20120816
【審査請求日】2014年12月22日
(31)【優先権主張番号】1150109-5
(32)【優先日】2011年2月11日
(33)【優先権主張国】SE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513099072
【氏名又は名称】スウェディッシュ オーファン バイオビトラム パブリーク アクチエボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100114889
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】フランソン ヨナス
(72)【発明者】
【氏名】フロリン‐ロバートソン エバ
【審査官】 安藤 公祐
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−531738(JP,A)
【文献】 特表平08−504755(JP,A)
【文献】 Arch Biochem Biophys.,1996年,331(2),249-58
【文献】 Basic Clin Pharmacol Toxicol.,2006年,98(2),218-21
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00
A61K 9/08
A61K 47/04
A61K 47/10
A61K 47/18
A61K 47/34
A61P 19/02
A61P 29/00
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、注射のための薬学的製剤であって、クエン酸塩を欠く、薬学的製剤
(a)100〜200 mg/mlのアナキンラ;
(b)0.05〜1 mMのEDTA;
(c)0.01〜1%のポリソルベート80;
(d)120〜180 mMのNaCl;
(e)pH 6〜7、1〜50 mMのリン酸ナトリウム;および
(f)5〜50 mg/mlのマンニトール。
【請求項2】
以下を含む、注射のための薬学的製剤であって、クエン酸塩を欠く、薬学的製剤
(a)150 mg/mlのアナキンラ;
(b)0.5 mMのEDTA;
(c)0.1%のポリソルベート80;
(d)145 mMのNaCl;
(e)pH 6.5、10 mMのリン酸ナトリウム;および
(f)10 mg/mlのマンニトール。
【請求項3】
IL-1媒介性障害の処置における使用のための、請求項1または2に記載の薬学的製剤。
【請求項4】
前記IL-1媒介性障害が、関節リウマチである、請求項3に記載の薬学的製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クエン酸ナトリウムの非存在下でアナキンラを活性化合物として含む薬学的組成物に関連する。該薬学的組成物は、IL-1媒介性障害の処置のため、およびそのような処置中の侵害受容性疼痛を減少させるために有用である。
【背景技術】
【0002】
非経口送達に適する薬学的製剤は、典型的に、(a)活性分子;(b)溶液のpHを制御するために十分な緩衝能力を有する緩衝剤;および(c)製剤の等張性を提供するための等張化剤を含む。追加的に、特定の活性および意図される用途に応じて必要とされるような、抗酸化剤、特定の安定剤、界面活性剤、保存料などのさらなる成分が、添加されてもよい。
【0003】
製剤成分の選択は、製剤におけるそれらの機能、および最適の安定化能力に関して様々な成分を評価する徹底的な研究に基づかなければならない。さらに、特定の活性分子およびその意図される用途について最適なpHおよびイオン強度などの他の溶液パラメータを同定するために、他の製剤研究が行われなければならない。それぞれの製剤成分の濃度を研究するための研究もまた、行われる。多くの場合、最終的な製剤およびその臨床使用の追加的な局面、例えば、適切な注射容積、生理学的な体液または組織との適合性、粘度、局所耐性などが考慮されなければならない。
【0004】
局所耐性の一つの例は、緩衝剤種の選択に関わる。特定の緩衝剤種は、局所不耐性または注射疼痛を誘発し得ることが公知である。クエン酸ナトリウムは、いくつかの場合、皮下注射時に疼痛を引き起こすことが報告されている(Frenken, 1993、Laursen, 2006)。さらに、緩衝剤濃度は、長期保存中の薬物製剤におけるpH安定性に関して最適であるようにだけでなく、注射部位での生理学的状態に対して最小の影響を有するように、最小化されるべきである(例えば、Fransson and Espander-Jansson, 1996)。非経口送達のための製剤に添加され得る成分のリストは、限定されている(Wang and Kowall, 1980;Nema, 2006)。安全性、ヒトにおける先行経験、供給者からの入手可能性など、多数の局面が、考慮されなければならない。タンパク質薬物のインビボおよびインビトロの安定性は、酸化、アミド分解、凝集などのような複数の分解反応が並行して起きる場合、複雑な事項である。起きる一つの主要な反応は、凝集体の形成である。タンパク質凝集体は、共有結合または非共有結合経路を介して形成し得、かつ可溶性または不溶性の性質であり得る。タンパク質凝集体の存在は、タンパク質の二次構造および三次構造に影響を及ぼし得るため、安全性の観点から主要な関心事である。特定の非天然タンパク質構造の存在は、潜在的に有効性の低下を引き起こし、または、結果として生命を脅かす状態を伴う天然タンパク質に対するインビボの免疫学的反応さえ引き起こす、タンパク質の免疫原性の増大と関連している。
【0005】
インターロイキン-1媒介性疾患は、関節リウマチ(RA)、炎症性腸疾患(IBD)、敗血症、敗血症候群、骨粗鬆症、虚血性損傷、移植片対宿主病、再灌流損傷、喘息、インスリン糖尿病、骨髄性および他の白血病、乾癬、ならびに悪液質を含む。これらのおよび他の炎症性疾患は、インターロイキン-1を含むサイトカインの産生を特徴とする。
【0006】
疾患の病理におけるIL-1の役割が確立されているこれらの症候群について、疾患の臨床的発現は、抗IL-1薬剤での処置により急速に緩和することができる。一つのそのような薬剤がKineret(登録商標)であり、その活性成分であるアナキンラは、天然に存在するIL-1受容体アンタゴニスト(IL-1ra)の組み換えバージョンである。アナキンラは、例えば米国特許第5,075,222号において開示されている。
【0007】
Kineret(登録商標)(注射用のアナキンラ)は、150 mg/mlで、10 mMクエン酸ナトリウム緩衝液(pH 6〜7)および等張化剤としての塩化ナトリウム(140 mM)と共に製剤化されている。さらに、0.5 mM EDTAおよび0.1%(w/w)ポリソルベート80が、安定剤として使用されている。アナキンラのための緩衝剤成分としてのクエン酸ナトリウムの選択は、実時間条件でアナキンラの短期および長期安定性を評価する詳細な研究に基づいた。いくつかの可能性のある緩衝剤成分を評価し、リン酸ナトリウムが一つであり、かつクエン酸ナトリウムを、アナキンラの凝集に関して最適な安定性を提供するとして同定した(Raibekas et al., 2005)。アナキンラの凝集は、緩衝剤成分の選択についての主要な関心事であった。クエン酸ナトリウムの濃度は、局所耐容性を考慮して可能な限り最小化された。
【0008】
10 mMクエン酸ナトリウム中のアナキンラの臨床使用中に、製剤が、皮下注射部位で局所耐性についての問題点を引き起こすことが見出された(Thaler, 2009)。注射部位反応は、タンパク質薬物の皮下送達で珍しくはなく、一般的な問題であり(Haller, 2008)、多数のタンパク質薬物の臨床使用と関連する。注射にアナキンラを使用した患者の50%より多くが、最初の注射で、ある程度の注射部位反応を経験する。局所反応の性質および機構が調査され、いくつかの結論が出されている(Bendele, 1995)。注射部位反応は、アナキンラ分子自体、および、非常に大きな影響を有する製剤成分であるクエン酸ナトリウムを含む、複数の原因を有することが結論づけられている。
【0009】
従って、安定であり、かつクエン酸ナトリウムを含むアナキンラ組成物での欠点を回避する、注射に適するアナキンラ組成物が必要である。
【発明の概要】
【0010】
発明の開示
本発明に従って、驚くべきことに、注射に適するアナキンラが、クエン酸ナトリウムの使用無しで十分に安定化され得ることが示された。Raibekas ら(2005)による知見と対照的に、アナキンラは、適切な等張化剤および追加的な安定剤を含むが、緩衝剤としてクエン酸ナトリウムを含まない水性溶液において製剤化することができる。適切な調製条件の下で、アナキンラは溶液のpHを本質的に制御すると考えられる。緩衝剤が添加されていない溶液であっても、十分に安定であり得る。
【0011】
従って、第1の局面において、本発明は、有効量のアナキンラを含み、クエン酸塩を欠く薬学的製剤を提供する。
【0012】
本発明の別の局面は、IL-1媒介性障害の処置または予防のための方法であって、そのような処置を必要とするヒトを含む哺乳動物に、有効量のアナキンラを含み、クエン酸塩を含有しない薬学的製剤を投与する工程を含む方法である。
[本発明1001]
有効量のアナキンラを含む薬学的製剤であって、クエン酸塩を欠く、薬学的製剤。
[本発明1002]
アナキンラの皮下注射に適合している、本発明1001の薬学的製剤。
[本発明1003]
前記有効量のアナキンラが、20〜200 mg/mlの間である、本発明1001または1002の薬学的製剤。
[本発明1004]
キレート剤を追加的に含む、本発明1001〜1003のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1005]
前記キレート剤が、0.05〜1 mMの量のEDTAである、本発明1004の薬学的製剤。
[本発明1006]
乳化剤を追加的に含む、本発明1001〜1005のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1007]
前記乳化剤が、0.01〜1%の量の非イオン性界面活性剤ポリソルベート80である、本発明1006の薬学的製剤。
[本発明1008]
150 mg/mlアナキンラ、0.5 mM EDTA、および0.1%ポリソルベート80を含む、本発明1001〜1007のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1009]
製剤の等張性を提供するために十分な量の等張化剤をさらに含む、本発明1001〜1008のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1010]
前記等張化剤が、120〜240 mMの量のNaClである、本発明1009の薬学的製剤。
[本発明1011]
前記等張化剤が、NaClと、単糖類、二糖類、および糖アルコールからなる群より選択される第2の等張化剤との混合物である、本発明1009の薬学的製剤。
[本発明1012]
前記第2の等張化剤が、1〜100 mg/mlの量のマンニトールである、本発明1011の薬学的製剤。
[本発明1013]
追加的な緩衝物質を含まない、本発明1001〜1012のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1014]
追加的な緩衝物質がクエン酸緩衝剤でないという条件で、少なくとも一つの追加的な緩衝物質を含む、本発明1001〜1012のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1015]
前記追加的な緩衝物質が、1〜50 mMの量のリン酸塩である、本発明1014の薬学的製剤。
[本発明1016]
5〜50 mg/mlの量のマンニトールをさらに含む、本発明1015の薬学的製剤。
[本発明1017]
10 mMリン酸塩および10 mg/mlマンニトールを含む、本発明1016の薬学的製剤。
[本発明1018]
以下を含む、本発明1016の薬学的製剤:
(a)アナキンラ(100〜200 mg/ml);
(b)EDTA(0.05〜1 mM);
(c)ポリソルベート80(0.01〜1%);
(d)NaCl(120〜180 mM);
(e)リン酸ナトリウム、pH 6〜7(1〜50 mM);
(d)マンニトール(5〜50 mg/ml)。
[本発明1019]
以下を含む、本発明1018の薬学的製剤:
(a)アナキンラ(150 mg/ml);
(b)EDTA(0.5 mM);
(c)ポリソルベート80(0.1%);
(d)NaCl(120〜145 mM);
(e)リン酸ナトリウム、pH 6.3〜6.6(10 mM);
(d)マンニトール(10 mg/ml)。
[本発明1020]
IL-1媒介性障害の処置における使用のための、本発明1001〜1019のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1021]
前記IL-1媒介性障害が、関節リウマチである、本発明1020の薬学的製剤。
[本発明1022]
皮下注射の部位での侵害受容性疼痛が回避されるかまたは低減される、本発明1001〜1019のいずれかの薬学的製剤。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】種々のアナキンラ組成物(E、G、H、O、R、S、T、およびUと称される)の1ml当たりの肉眼では見えない粒子(サイズが5、7.5、および10μmより大きい)の数を示す。
図2】該アナキンラ組成物を1か月間+25℃で保存した後の、図1におけるような粒子の数を示す。
図3】該アナキンラ組成物を3か月間+5℃で保存した後の、図1におけるような粒子の数を示す。
図4】種々のアナキンラ組成物の投与後のオスのSprague-Dawleyラットにおいて、足容積の増大により示される炎症を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に従って、前記製剤は、クエン酸塩の非存在下で安定であり、「安定」という用語は、例えば、凝集体の欠如および/またはpHの安定性が、10 mMクエン酸ナトリウム(pH 6〜7)を含む同様のアナキンラ製剤と少なくともほぼ同等であることを意味する。
【0015】
「アナキンラ」という用語は、とりわけ、NCBI Reference Sequence NP_776214.1(www.ncbi.nlm.nih.gov)中の26〜177位として示されている152アミノ酸の配列を有するIL-1受容体アンタゴニスト(IL-1ra)を意味する。さらに、「アナキンラ」という用語は、アナキンラの改変された形態、例えば、アナキンラのアミノ酸配列と少なくとも90%、95%、97%、または99%同一性を有するアミノ酸変種を含むとして理解されるべきである。結果として生じる分子(「アナキンラ変種」)が生物学的に活性を有する、例えば、IL-1を阻害する能力を有するという条件で、欠失、挿入、逆位、および置換の多くの組み合わせが、アナキンラのアミノ酸配列内でなされ得ることを、当業者は理解するであろう。特定のアナキンラ変種は、例えば、米国特許第5,075,222号;第6,858,409号および第6,599,873号に記載されている。
【0016】
「アナキンラ」という用語は、アナキンラを含む融合タンパク質をさらに含む。アナキンラは、例えば、ポリアルキレングリコール基(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)基)、血清アルブミン、トランスフェリン、トランスフェリン受容体もしくは少なくともそのトランスフェリン結合部分、抗体Fc領域の付加によって、または、抗体ドメインへの結合によって、より大きな流体力学的サイズを有するように整形することができる。
【0017】
「有効量」という用語は、処置される対象に対して治療効果を与える量を指す。治療効果は、客観的(すなわち、いくつかの試験もしくはマーカーにより測定可能である)であってもよく、または主観的(すなわち、対象が効果の徴候を示すかもしくは効果を感じる)であってもよい。
【0018】
好ましくは、アナキンラは、1日当たり0.1〜100 mg/kg、好ましくは、1日当たり0.1〜1 mg/kgの用量で投与される。IL-1媒介性疾患の処置のために好ましい投与量は、1〜1000 ng/mlの間の血中アナキンラ濃度を生じるべきである。従って、最初に、1 mlの血漿当たり5 ngより多いアナキンラの循環レベルをもたらす用量が投与されることが好ましい。
【0019】
本発明による薬学的製剤は、好ましくは、20〜200 mg/mlの間、より好ましくは100〜200 mg/mlの間、例えば150 mg/mlの量のアナキンラを含む。
【0020】
本発明による薬学的製剤は、好ましくは、アナキンラの皮下注射に適合している。好ましくは、薬学的製剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのキレート剤を含む。製剤におけるEDTAの量は、好ましくは0.05〜1 mM、より好ましくはおよそ0.5 mMである。乳化剤、好ましくは、ポリソルベート80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートまたはTween 80(商標)としても公知である)などの非イオン性界面活性剤を、凝集および変性を低減させるため、ならびに溶解性の増大のために製剤へ添加することができる。ポリソルベート80の量は、好ましくは0.01〜1%の間、より好ましくはおよそ0.1%である。従って、本発明による薬学的製剤の好ましい形態は、150 mg/mlアナキンラ、0.5 mM EDTA、および0.1%ポリソルベート80を含む。
【0021】
さらに、本発明による薬学的製剤は、製剤の等張性を提供するために十分な量の等張化剤、例えばNaClを含むことができる。好ましい等張化剤は、120〜240 mMの間、好ましくは約120〜180 mM、例えば約120〜150 mM、または最も好ましくはおよそ140 mMの濃度のNaClである。
【0022】
あるいは、該等張化剤は、NaClと、単糖類、二糖類、および糖アルコールからなる群より選択される第2の等張化剤との混合物であり得る。好ましくは、第2の等張化剤は、スクロース、マンニトール、ソルビトール、グリセロール、イノシトール、およびトレハロースからなる群より選択される。より好ましくは、第2の等張化剤は、マンニトール、ソルビトール、またはグリセロールである。最も好ましくは、第2の等張化剤は、1〜100 mg/ml、好ましくは5〜50 mg/mlの量のマンニトールである。
【0023】
本発明は、薬学的製剤を含み、ここで、活性タンパク質、すなわちアナキンラが、緩衝物質として十分であり、かつpHを望ましいレベル、好ましくは約pH 6.5に維持することができる。従って、本発明による製剤には、追加的な緩衝物質を添加する必要が無い。しかしながら、追加的な緩衝物質がクエン酸緩衝剤でないという条件で、アナキンラおよび少なくとも一つの追加的な緩衝物質を含む薬学的製剤もまた、本発明に含まれる。該追加的な緩衝物質は、例えば、リン酸緩衝剤、またはヒスチジンであり得る。より具体的には、該追加的な緩衝剤は、1〜50 mM、好ましくはおよそ10 mMの量のリン酸ナトリウム、または、5〜50 mM、好ましくはおよそ10 mMの量のヒスチジンであり得る。
【0024】
特に好ましい製剤は、マンニトールとの組み合わせでリン酸緩衝剤を含むものである。そのような製剤において、リン酸ナトリウムなどのリン酸塩の濃度は、好ましくは1〜50 mM(より好ましくはおよそ10 mM)であり、かつマンニトール濃度は、好ましくは5〜50 mg/ml(より好ましくはおよそ10 mg/ml)である。該製剤のpHは、好ましくは6〜7の間、例えば6.3〜6.6の間、またはより好ましくはおよそ6.5である。
【0025】
従って、本発明による好ましい製剤は、以下を含む製剤を含む:
(a)アナキンラ(100〜200 mg/ml);
(b)EDTA(0.05〜1 mM);
(c)ポリソルベート80(0.01〜1%);
(d)NaCl(120〜180 mM);
(e)リン酸ナトリウム、pH 6〜7(1〜50 mM);および
(d)マンニトール(5〜50 mg/ml)。
【0026】
特に好ましい製剤は、以下を含む:
(a)アナキンラ(150 mg/ml);
(b)EDTA(0.5 mM);
(c)ポリソルベート80(0.1%);
(d)NaCl(120〜150 mM、好ましくは140 mM);
(e)リン酸ナトリウム、pH 6.3〜6.6、好ましくはpH 6.5(10 mM);および
(d)マンニトール(10 mg/ml)。
【0027】
本発明による薬学的製剤は、好ましくは、少なくとも一つのIL-1媒介性障害の処置において使用することができる。IL-1媒介性障害の処置のための方法であって、そのような処置を必要とするヒトを含む哺乳動物に、本明細書において定義されるような薬学的製剤を投与する工程を含む方法もまた、本発明に含まれる。「処置」という用語は、IL-1媒介性障害の予防(防御)、または、障害が確立されてからの該障害の改善もしくは排除を含む。
【0028】
疾患または医学的状態は、自発的もしくは実験的な疾患もしくは医学的状態が、体液もしくは組織中の上昇したレベルのIL-1と関連する場合、または、身体から採取された細胞もしくは組織が、培養下において上昇したレベルのIL-1を産生する場合に、「IL-1媒介性障害」であるとみなされる。多くの場合、そのようなインターロイキン-1媒介性疾患はまた、以下の追加的な二つの条件によって認識される:(1)疾患または医学的状態と関連する病理学的所見が、実験的に動物においてIL-1の投与により模倣され得る;ならびに(2)疾患または医学的状態の実験的動物モデルにおいて誘導される病理が、IL-1の作用を阻害する作用物質での処置により阻害され得るかまたは消滅され得る。大部分のインターロイキン-1媒介性疾患において、三つの条件のうち少なくとも二つが満たされ、かつ多くのインターロイキン-1媒介性疾患において、三つの条件すべてが満たされる。
【0029】
IL-1媒介性障害は、以下を含む:
・アミロイドAアミロイド症
・成人発症スチル病(AOSD)
・喘息
・ベーチェット病
・ブラウ症候群
・悪液質
・ピロリン酸カルシウム二水和物病(CPPD)
・キャッスルマン病
・クリオピリン関連周期性症候群(CAPS)
・インターロイキン-1受容体アンタゴニストの欠損症(DIRA)
・皮膚筋炎
・エルドハイム・チェスター病
・びらん性骨関節炎
・家族性地中海熱
・汎発性膿疱性乾癬
・痛風および偽性痛風
・移植片対宿主病
・化膿性汗腺炎
・高IgD症候群(HIDS)
・特発性寒冷蕁麻疹
・封入体筋炎
・炎症性腸疾患(IBD)
・虚血性損傷
・マクロファージ活性化症候群
・マジード症候群
・メバロン酸キナーゼ欠損症
・骨髄性および他の白血病
・好中球性皮下脂肪組織炎
・骨粗鬆症
・アフタ性口内炎、咽頭炎、および腺炎を伴う周期熱(PFAPA)
・多発性筋炎
・乾癬
・壊疽性膿皮症、集簇性ざ瘡、および無菌性関節炎(PAPA)
・反復性特発性心膜炎
・再発性多発性軟骨炎
・再灌流損傷
・関節リウマチ(RA)
・シュニッツラー症候群
・敗血症;敗血症候群
・くすぶり型骨髄腫
・滑膜炎・ざ瘡・膿疱症・骨化過剰症・骨炎(SAPHO)症候群
・全身型特発性若年性関節炎(SoIJA)
・腫瘍壊死因子受容体関連周期性症候群(TRAPS)
・1型糖尿病
・2型糖尿病
・蕁麻疹様血管炎
・ブドウ膜炎。
【0030】
本発明の好ましい形態において、薬学的製剤は、皮下注射により、それを必要とするヒトを含む哺乳動物へ投与される。本発明に従って、皮下注射の部位での侵害受容性疼痛が回避されるかまたは低減される。「侵害受容性疼痛」という用語は、侵害受容体(疼痛受容体)により開始される神経活動を意味する。
【実施例】
【0031】
実施例1:可視の凝集体に関する安定性
Amgen Manufacturingから得られた、10 mMクエン酸ナトリウム、140 mM NaCl、および0.5 mM EDTA中の凍結アナキンラバルク溶液を融解し、10 kDa複合再生セルロースPLC10 membrane(商標)を有する0.1 m2 Millipore Pellicon 2(商標)Miniカセットを含む、Millipore ProFlux(商標)M12システムを用いて透析濾過(diafiltrate)した(www.millipore.com)。得られた溶液を、標準的な方法に従って限外濾過により濃縮した。
【0032】
表Iに記載される組成物を、上記で得られた、透析濾過されかつ濃縮された溶液から調製した。表Iに示される構成要素に加えて、すべての組成物は、150 mg/mlアナキンラ、0.5 mM EDTA、および0.1%ポリソルベート80を含有した。溶液をシリコーン処理したガラスシリンジ(1 ml)中に充填し、1か月間(+5℃もしくは+25℃)または3か月間(+5℃)保存した。
【0033】
(表I)調査したアナキンラ組成物
【0034】
表I中の溶液を、米国薬局方‐国民医薬品集(USP-NF)905章(www.usp.org)に従うが、少ない試料容積に調整した光遮断技術により、肉眼では見えない粒子について試験した。各時点で、3本のシリンジから試料をプールして試験した。各プールにおいて、サイズが5、7.5、および10μmより大きい粒子の数を決定した。結果を表IIおよび図1〜3に示す。非経口製品における肉眼では見えない粒子についての典型的な結果は、6000個未満の10μmより大きい粒子の範囲である。
【0035】
(表II)アナキンラ製剤中の肉眼では見えない粒子
【0036】
肉眼では見えない粒子の測定された量により、アナキンラの可視の凝集体は比較的少なく、時間とともにわずかに増加し、かつ緩衝剤の存在に依存しないことが示される。データにより、アナキンラは、クエン酸ナトリウム無しでかつ同等の安定性を有して、製剤化され得ることが実証される。
【0037】
実施例2:凝集体の安定性
アナキンラ組成物を、実施例1に記載されるように調製し、かつ保存した。モノマー含量を、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により測定した。各試料を、5 mg/mLのアナキンラ濃度になるように、10 mMクエン酸ナトリウム、140 mM NaCl、0.5 mM EDTAで希釈した。希釈した試料を、TSK-Gel G2000 SWXL Column, 7.8 mm×30 cm(ToSoh Biosciences 08450)上にローディングし、0.5 mL/分の流量で、10 mMクエン酸ナトリウム、140 mM NaCl、および0.5 mM EDTAで溶出した。280 nmでの吸光度を記録し、それぞれのピーク面積からモノマーの%を算出した。
【0038】
結果(表III)により、すべての研究したアナキンラ組成物において、アナキンラのモノマーのレベルは3か月間安定のままであったことが示される。
【0039】
(表III)種々のアナキンラ製剤の安定性
【0040】
実施例3:pH安定性
アナキンラ組成物を、実施例1に記載されるように調製し、かつ保存した。標準的な手段に従って、pHを測定した。結果(表IV)により、すべての研究したアナキンラ組成物において、pHは3か月間安定のままであったことが示される。
【0041】
(表IV)種々のアナキンラ製剤のpH安定性
【0042】
実施例4:リン酸塩およびマンニトールを含むアナキンラ組成物の安定性
社内で得られた、10 mMクエン酸ナトリウム、140 mM NaCl、および0.5 mM EDTA中の凍結アナキンラバルク溶液を融解し、10 kDa複合再生セルロースPLC10 membrane(商標)を有する0.1 m2 Millipore Pellicon 2(商標)Miniカセットを含む、Millipore ProFlux(商標)M12システムを用いて透析濾過した(www.millipore.com)。得られた溶液を、標準的な方法に従って限外濾過により濃縮した。
【0043】
表Vに記載される組成物を、上記で得られた、透析濾過されかつ濃縮された溶液から調製した。表Vに示される構成要素に加えて、すべての組成物は、150 mg/mlアナキンラを含有した。溶液をシリコーン処理したガラスシリンジ(1 ml)中に充填し、これらの製剤におけるアナキンラの安定性を試験するために様々な温度で保存した。試料を、1か月間+30℃で、2および4か月間+25℃で保存した。
【0044】
(表V)調査したアナキンラ組成物
【0045】
各温度での保存後に、モノマー含量を、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により測定した。各試料を、5 mg/mLのアナキンラ濃度になるように、10 mMクエン酸ナトリウム、140 mM NaCl、0.5 mM EDTAで希釈した。希釈した試料を、TSK-Gel G2000 SWXL Column, 7.8 mm×30 cm(ToSoh Biosciences 08450)上にローディングし、0.5 mL/分の流量で、10 mMクエン酸ナトリウム、140 mM NaCl、および0.5 mM EDTAで溶出した。280 nmでの吸光度を記録し、それぞれのピーク面積からモノマーの%を算出した。表VIに提示されるサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析の結果により、すべての研究したアナキンラ組成物において、アナキンラのモノマーのレベルは4か月までの間安定なままであったことが示される。
【0046】
(表VI)調査したアナキンラ製剤の安定性
【0047】
さらに、アナキンラなどのタンパク質は、典型的に、pHの変化に感受性である。行った研究においてアナキンラに対するpHの任意の効果を評価するために、製剤におけるpH値を記録した。結果が表VIIに示され、時間に伴うpHの増大を示すが、この変化は製剤とは独立しており、表VI中に示されるモノマー含量の差は、pHの差によっては引き起こされない。
【0048】
(表VII)調査したアナキンラ製剤の溶液のpH
【0049】
実施例5:Hargreaves試験におけるアナキンラ組成物の効果
これらの研究の目的は、オスのSprague-Dawleyラットにおいて熱痛覚閾値および後足容積に対するアナキンラの様々な製剤(クエン酸緩衝液またはリン酸/マンニトール緩衝液)の効果を比較することであった(Hargreaves et al, 1988)。
【0050】
ヒスタミン(50μl/足、3 mg/ml)、アナキンラ(150 mg/ml)を含むかまたは含まないクエン酸緩衝液(10 mM pH 6.3)またはリン酸緩衝液(10 mM、pH 6.3、+マンニトール10 mg/ml)の足底内投与を、右後足に行った。2時間後に足容積の増大として測定された浮腫形成により、クエン酸緩衝液およびクエン酸緩衝アナキンラ、ならびにリン酸/マンニトール緩衝アナキンラは、急性炎症を引き起こすことが示された(図4)。リン酸/マンニトール緩衝液は、急性炎症を引き起こさなかった。陽性対照として使用したヒスタミン(0.15 mg/足)は、熱痛覚過敏および浮腫形成を誘導した。
【0051】
結論として、クエン酸緩衝液とリン酸/マンニトール緩衝液単独との間に、2時間後の足腫脹において明らかな差があった。さらに、注射2時間後の足容積測定により、リン酸/マンニトール緩衝アナキンラが、クエン酸緩衝アナキンラと比較して少ない浮腫形成を引き起こす傾向が示された。
【0052】
実施例6:ラットにおけるエバンスブルー透過性に対するアナキンラ組成物の効果
オスのラットをイソフルランで麻酔し、背中および脇腹上の毛を、注意深く外傷を避けて、バリカンで慎重に剃る。背中および脇腹上の露出した皮膚上に、マーカーで8個の正方形を有する格子を描く。格子で仕切られた正方形内の無作為のパターンでのアナキンラ試験溶液(1000μl)の皮下注射の前に、エバンスブルー溶液(1 mg/kg;Sigma-Aldrich)を、外側尾静脈中に注射により投与する。注射後に、動物をケージ中に戻し、麻酔から回復させる。注射の6時間後に、動物を二酸化炭素への曝露により安楽死させる。皮膚を背中から切除し、脂肪および結合組織を除去し、毛の側を下にして板上に貼り付ける。溢出したエバンスブルー色素の区域のミリメートルのサイズを、センチメートル定規により測定し、色素染色の強度に基づいて、0〜4にわたる主観的なスコアを、溢出反応に割り当てる。
【0053】
「CSEP」(10 mMクエン酸ナトリウム;0.5 mM EDTA、0.1%ポリソルベート80、および140 mM NaCl、pH 6.5)中のアナキンラを含む種々のアナキンラ組成物、ならびに対照としてのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を投与する。測定された透過性の変化により、1 ml PBS単独の注射は、注射の部位からエバンスブルー色素の軽微な漏出のみを結果としてもたらすことが示される。対照的に、CSEP中に100 mg/mlで溶解したアナキンラの注射は、透過性を強く増大させる。
【0054】
実施例7:マウス侵害受容行動に対するアナキンラ組成物の効果
注射の部位での様々なアナキンラ組成物の痛覚発生作用を評価するために、マウス後足リッキング(licking)モデル(Piovezan et al., 1998)を用いる。動物を個々にチャンバー(透明なガラスシリンダー)中に置き、CSEP(実施例6参照)中のアナキンラを含む種々の試験アナキンラ組成物、および対照としてのPBSの足底下(sub-plantar)注射の前に少なくとも20分間、順化させる。チャレンジ後、マウスを個々に15〜30分間観察する。注射された足を舐めるのに費やされる時間量をストップウォッチで測定し、侵害受容行動を示すとみなす。
【0055】
実施例8:ホットプレート試験におけるアナキンラ組成物の効果
注射の部位での様々なアナキンラ組成物の痛覚発生作用を評価するために、マウス熱痛覚過敏モデル(Kanaan et al., 1996)を用いる。動物を、試験の前の1〜2日、30℃に予熱したホットプレート機器(Ugo Basil, Italy)に順化させる。試験の日に、動物は、CSEP(実施例6参照)中のアナキンラを含む種々の試験アナキンラ組成物、および対照としてのPBSの足底下注射を受ける。実験者は処置について盲目であり、マウスを+52℃にセットしたホットプレート上で試験する。反応潜伏時間を、後足を舐めるかまたは跳び上がるのに要する時間として決定する。
【0056】
実施例9:インビトロの肥満細胞脱顆粒に対する様々なアナキンラ製剤の効果
A23187(カルシウムイオノフォア)および用量反応IgE-抗IgEが、肥満細胞活性化についての陽性対照として働く。10人の異なる個体(臍帯血より5人および成人個体より5人)由来の肥満細胞を単離する。肥満細胞を、造血細胞のCD34選択(フローサイトメトリー)により単離し、その後、37℃、5%CO2で、血清除去状態の下、ヒト組み換え幹細胞因子(Stemgen(登録商標))およびIL-6の存在下で6〜8週間増殖させる(Gulliksson, M, et al., 2010)。細胞を様々なアナキンラ製剤に供した後の肥満細胞脱顆粒の程度を、ヒスタミンおよびPGD2の測定により評価する。肥満細胞脱顆粒における変化は、肥満細胞の活性化レベルにおける変質の尺度であり、急性炎症性疼痛の機構についてのマーカーである。
【0057】
実施例10:微小透析法を用いた注射の部位での細胞外疼痛メディエーター放出に対する皮下アナキンラ組成物の効果
CSEP(実施例6参照)中のアナキンラを含む種々のアナキンラ組成物、および対照としてのPBSの注射の急性効果を調査するために、生化学的疼痛メディエーター(例えば、神経伝達物質、神経調節物質、ならびに急性炎症性サイトカインおよびケモカイン)の細胞外濃度の決定のための周知の微小透析法を用いる。動物を、実験中、イソフルランの吸入により麻酔する。微小透析プローブを、各動物の首上部の皮膚の真皮中に挿入する。微小透析プローブの注入チューブを、微量注入ポンプに接続し、クレブス・リンガー溶液を、1〜10 ml/分の流速でポンプで送る。各個々の実験について、試料を収集し、疼痛メディエーターを(例えばELISAにより)分析する(Weidner C., et al., 2000およびYoshitake T. et al., 2012)。
【0058】
参照文献
図1
図2
図3
図4