【実施例】
【0031】
実施例1:可視の凝集体に関する安定性
Amgen Manufacturingから得られた、10 mMクエン酸ナトリウム、140 mM NaCl、および0.5 mM EDTA中の凍結アナキンラバルク溶液を融解し、10 kDa複合再生セルロースPLC10 membrane(商標)を有する0.1 m
2 Millipore Pellicon 2(商標)Miniカセットを含む、Millipore ProFlux(商標)M12システムを用いて透析濾過(diafiltrate)した(www.millipore.com)。得られた溶液を、標準的な方法に従って限外濾過により濃縮した。
【0032】
表Iに記載される組成物を、上記で得られた、透析濾過されかつ濃縮された溶液から調製した。表Iに示される構成要素に加えて、すべての組成物は、150 mg/mlアナキンラ、0.5 mM EDTA、および0.1%ポリソルベート80を含有した。溶液をシリコーン処理したガラスシリンジ(1 ml)中に充填し、1か月間(+5℃もしくは+25℃)または3か月間(+5℃)保存した。
【0033】
(表I)調査したアナキンラ組成物
【0034】
表I中の溶液を、米国薬局方‐国民医薬品集(USP-NF)905章(www.usp.org)に従うが、少ない試料容積に調整した光遮断技術により、肉眼では見えない粒子について試験した。各時点で、3本のシリンジから試料をプールして試験した。各プールにおいて、サイズが5、7.5、および10μmより大きい粒子の数を決定した。結果を表IIおよび
図1〜3に示す。非経口製品における肉眼では見えない粒子についての典型的な結果は、6000個未満の10μmより大きい粒子の範囲である。
【0035】
(表II)アナキンラ製剤中の肉眼では見えない粒子
【0036】
肉眼では見えない粒子の測定された量により、アナキンラの可視の凝集体は比較的少なく、時間とともにわずかに増加し、かつ緩衝剤の存在に依存しないことが示される。データにより、アナキンラは、クエン酸ナトリウム無しでかつ同等の安定性を有して、製剤化され得ることが実証される。
【0037】
実施例2:凝集体の安定性
アナキンラ組成物を、実施例1に記載されるように調製し、かつ保存した。モノマー含量を、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により測定した。各試料を、5 mg/mLのアナキンラ濃度になるように、10 mMクエン酸ナトリウム、140 mM NaCl、0.5 mM EDTAで希釈した。希釈した試料を、TSK-Gel G2000 SWXL Column, 7.8 mm×30 cm(ToSoh Biosciences 08450)上にローディングし、0.5 mL/分の流量で、10 mMクエン酸ナトリウム、140 mM NaCl、および0.5 mM EDTAで溶出した。280 nmでの吸光度を記録し、それぞれのピーク面積からモノマーの%を算出した。
【0038】
結果(表III)により、すべての研究したアナキンラ組成物において、アナキンラのモノマーのレベルは3か月間安定のままであったことが示される。
【0039】
(表III)種々のアナキンラ製剤の安定性
【0040】
実施例3:pH安定性
アナキンラ組成物を、実施例1に記載されるように調製し、かつ保存した。標準的な手段に従って、pHを測定した。結果(表IV)により、すべての研究したアナキンラ組成物において、pHは3か月間安定のままであったことが示される。
【0041】
(表IV)種々のアナキンラ製剤のpH安定性
【0042】
実施例4:リン酸塩およびマンニトールを含むアナキンラ組成物の安定性
社内で得られた、10 mMクエン酸ナトリウム、140 mM NaCl、および0.5 mM EDTA中の凍結アナキンラバルク溶液を融解し、10 kDa複合再生セルロースPLC10 membrane(商標)を有する0.1 m
2 Millipore Pellicon 2(商標)Miniカセットを含む、Millipore ProFlux(商標)M12システムを用いて透析濾過した(www.millipore.com)。得られた溶液を、標準的な方法に従って限外濾過により濃縮した。
【0043】
表Vに記載される組成物を、上記で得られた、透析濾過されかつ濃縮された溶液から調製した。表Vに示される構成要素に加えて、すべての組成物は、150 mg/mlアナキンラを含有した。溶液をシリコーン処理したガラスシリンジ(1 ml)中に充填し、これらの製剤におけるアナキンラの安定性を試験するために様々な温度で保存した。試料を、1か月間+30℃で、2および4か月間+25℃で保存した。
【0044】
(表V)調査したアナキンラ組成物
【0045】
各温度での保存後に、モノマー含量を、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により測定した。各試料を、5 mg/mLのアナキンラ濃度になるように、10 mMクエン酸ナトリウム、140 mM NaCl、0.5 mM EDTAで希釈した。希釈した試料を、TSK-Gel G2000 SWXL Column, 7.8 mm×30 cm(ToSoh Biosciences 08450)上にローディングし、0.5 mL/分の流量で、10 mMクエン酸ナトリウム、140 mM NaCl、および0.5 mM EDTAで溶出した。280 nmでの吸光度を記録し、それぞれのピーク面積からモノマーの%を算出した。表VIに提示されるサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析の結果により、すべての研究したアナキンラ組成物において、アナキンラのモノマーのレベルは4か月までの間安定なままであったことが示される。
【0046】
(表VI)調査したアナキンラ製剤の安定性
【0047】
さらに、アナキンラなどのタンパク質は、典型的に、pHの変化に感受性である。行った研究においてアナキンラに対するpHの任意の効果を評価するために、製剤におけるpH値を記録した。結果が表VIIに示され、時間に伴うpHの増大を示すが、この変化は製剤とは独立しており、表VI中に示されるモノマー含量の差は、pHの差によっては引き起こされない。
【0048】
(表VII)調査したアナキンラ製剤の溶液のpH
【0049】
実施例5:Hargreaves試験におけるアナキンラ組成物の効果
これらの研究の目的は、オスのSprague-Dawleyラットにおいて熱痛覚閾値および後足容積に対するアナキンラの様々な製剤(クエン酸緩衝液またはリン酸/マンニトール緩衝液)の効果を比較することであった(Hargreaves et al, 1988)。
【0050】
ヒスタミン(50μl/足、3 mg/ml)、アナキンラ(150 mg/ml)を含むかまたは含まないクエン酸緩衝液(10 mM pH 6.3)またはリン酸緩衝液(10 mM、pH 6.3、+マンニトール10 mg/ml)の足底内投与を、右後足に行った。2時間後に足容積の増大として測定された浮腫形成により、クエン酸緩衝液およびクエン酸緩衝アナキンラ、ならびにリン酸/マンニトール緩衝アナキンラは、急性炎症を引き起こすことが示された(
図4)。リン酸/マンニトール緩衝液は、急性炎症を引き起こさなかった。陽性対照として使用したヒスタミン(0.15 mg/足)は、熱痛覚過敏および浮腫形成を誘導した。
【0051】
結論として、クエン酸緩衝液とリン酸/マンニトール緩衝液単独との間に、2時間後の足腫脹において明らかな差があった。さらに、注射2時間後の足容積測定により、リン酸/マンニトール緩衝アナキンラが、クエン酸緩衝アナキンラと比較して少ない浮腫形成を引き起こす傾向が示された。
【0052】
実施例6:ラットにおけるエバンスブルー透過性に対するアナキンラ組成物の効果
オスのラットをイソフルランで麻酔し、背中および脇腹上の毛を、注意深く外傷を避けて、バリカンで慎重に剃る。背中および脇腹上の露出した皮膚上に、マーカーで8個の正方形を有する格子を描く。格子で仕切られた正方形内の無作為のパターンでのアナキンラ試験溶液(1000μl)の皮下注射の前に、エバンスブルー溶液(1 mg/kg;Sigma-Aldrich)を、外側尾静脈中に注射により投与する。注射後に、動物をケージ中に戻し、麻酔から回復させる。注射の6時間後に、動物を二酸化炭素への曝露により安楽死させる。皮膚を背中から切除し、脂肪および結合組織を除去し、毛の側を下にして板上に貼り付ける。溢出したエバンスブルー色素の区域のミリメートルのサイズを、センチメートル定規により測定し、色素染色の強度に基づいて、0〜4にわたる主観的なスコアを、溢出反応に割り当てる。
【0053】
「CSEP」(10 mMクエン酸ナトリウム;0.5 mM EDTA、0.1%ポリソルベート80、および140 mM NaCl、pH 6.5)中のアナキンラを含む種々のアナキンラ組成物、ならびに対照としてのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を投与する。測定された透過性の変化により、1 ml PBS単独の注射は、注射の部位からエバンスブルー色素の軽微な漏出のみを結果としてもたらすことが示される。対照的に、CSEP中に100 mg/mlで溶解したアナキンラの注射は、透過性を強く増大させる。
【0054】
実施例7:マウス侵害受容行動に対するアナキンラ組成物の効果
注射の部位での様々なアナキンラ組成物の痛覚発生作用を評価するために、マウス後足リッキング(licking)モデル(Piovezan et al., 1998)を用いる。動物を個々にチャンバー(透明なガラスシリンダー)中に置き、CSEP(実施例6参照)中のアナキンラを含む種々の試験アナキンラ組成物、および対照としてのPBSの足底下(sub-plantar)注射の前に少なくとも20分間、順化させる。チャレンジ後、マウスを個々に15〜30分間観察する。注射された足を舐めるのに費やされる時間量をストップウォッチで測定し、侵害受容行動を示すとみなす。
【0055】
実施例8:ホットプレート試験におけるアナキンラ組成物の効果
注射の部位での様々なアナキンラ組成物の痛覚発生作用を評価するために、マウス熱痛覚過敏モデル(Kanaan et al., 1996)を用いる。動物を、試験の前の1〜2日、30℃に予熱したホットプレート機器(Ugo Basil, Italy)に順化させる。試験の日に、動物は、CSEP(実施例6参照)中のアナキンラを含む種々の試験アナキンラ組成物、および対照としてのPBSの足底下注射を受ける。実験者は処置について盲目であり、マウスを+52℃にセットしたホットプレート上で試験する。反応潜伏時間を、後足を舐めるかまたは跳び上がるのに要する時間として決定する。
【0056】
実施例9:インビトロの肥満細胞脱顆粒に対する様々なアナキンラ製剤の効果
A23187(カルシウムイオノフォア)および用量反応IgE-抗IgEが、肥満細胞活性化についての陽性対照として働く。10人の異なる個体(臍帯血より5人および成人個体より5人)由来の肥満細胞を単離する。肥満細胞を、造血細胞のCD34選択(フローサイトメトリー)により単離し、その後、37℃、5%CO
2で、血清除去状態の下、ヒト組み換え幹細胞因子(Stemgen(登録商標))およびIL-6の存在下で6〜8週間増殖させる(Gulliksson, M, et al., 2010)。細胞を様々なアナキンラ製剤に供した後の肥満細胞脱顆粒の程度を、ヒスタミンおよびPGD2の測定により評価する。肥満細胞脱顆粒における変化は、肥満細胞の活性化レベルにおける変質の尺度であり、急性炎症性疼痛の機構についてのマーカーである。
【0057】
実施例10:微小透析法を用いた注射の部位での細胞外疼痛メディエーター放出に対する皮下アナキンラ組成物の効果
CSEP(実施例6参照)中のアナキンラを含む種々のアナキンラ組成物、および対照としてのPBSの注射の急性効果を調査するために、生化学的疼痛メディエーター(例えば、神経伝達物質、神経調節物質、ならびに急性炎症性サイトカインおよびケモカイン)の細胞外濃度の決定のための周知の微小透析法を用いる。動物を、実験中、イソフルランの吸入により麻酔する。微小透析プローブを、各動物の首上部の皮膚の真皮中に挿入する。微小透析プローブの注入チューブを、微量注入ポンプに接続し、クレブス・リンガー溶液を、1〜10 ml/分の流速でポンプで送る。各個々の実験について、試料を収集し、疼痛メディエーターを(例えばELISAにより)分析する(Weidner C., et al., 2000およびYoshitake T. et al., 2012)。
【0058】
参照文献