(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械の代表例である油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体とを備えている。上部旋回体を構成する旋回フレームの前部側には、土砂等の掘削作業を行う作業装置が俯仰動可能に設けられている。
【0003】
ここで、油圧ショベルの作業装置は、基端側が旋回フレームに回動可能に取付けられたブームと、該ブームの先端側に回動可能に取付けられたアームと、該アームの先端側に回動可能に取付けられたバケット等の作業具と、これらブーム、アーム、バケットを駆動するブームシリンダ、アームシリンダ、バケットシリンダとにより大略構成されている。
【0004】
作業装置を構成するアームは、横断面が四角形の閉断面構造を有し、全長が数メートルにも及ぶ長尺な箱型構造体として形成されている。即ち、アームは、左,右の側板と、これら左,右の側板の上端側に溶接により接合された上板と、左,右の側板の下端側に溶接により接合された下板と、左,右の側板と上板との後端側に溶接により接合された後板とにより、横断面が四角形の閉断面構造をなす箱型構造体として形成されている。
【0005】
ここで、アームを構成する左,右の側板の後側にはブーム連結ボスが溶接によって接合され、ブームとアームとの間を回動可能に連結する連結ピンは、ブーム連結ボスに挿通されている。また、アームを構成する後板にはアームシリンダブラケットが溶接によって接合され、このアームシリンダブラケットには、基端側がブームに取付けられたアームシリンダの先端側が連結ピンを介して連結されている。
【0006】
アームを構成する左,右の側板、上板、下板、後板としては、通常、軟鋼材、例えばSS400等の一般構造用圧延鋼材が用いられている。この軟鋼材からなる左,右の側板、上板、下板、後板を互いに溶接することにより、強固な箱型構造体からなるアームを形成することができる。
【0007】
ところで、油圧ショベル等のブームを構成する左,右の側板を、第1部材、第2部材、第3部材の3つの部材(板材)を接合することにより形成したブームが提案されている。このブームは、長さ方向の中間部に位置し座屈が生じやすい第2部材を、第1,第3部材よりも降伏応力の高い材料を用いて形成している。これにより、第1,第2,第3部材を同じ材料を用いて形成する場合に比較して、第2部材の板厚を薄くすることができ、ブームの軽量化を図ることができる(特許文献1)。
【0008】
従って、アームを構成する左,右の側板、上板、下板、後板として、軟鋼材よりも引張り強さが大きな高張力鋼材を用いた場合には、軟鋼材からなる左,右の側板、上板、下板、後板の板厚に比較して、高張力鋼材からなる左,右の側板、上板、下板、後板の板厚を小さくすることができる。このため、高張力鋼材からなる鋼板を用いて形成されたアームは、軟鋼材からなる鋼板を用いて形成されたアームと同等の強度を保ちつつ、軽量化を図ることができる。
【発明の概要】
【0010】
ところで、油圧ショベルの掘削作業時には、アームシリンダの伸縮動作に応じてブームの先端側に連結されたアームが回動する。このため、ブームに対してアームを回動させるときには、アームの後側に設けられたブーム連結ボス及びアームシリンダブラケットの近傍部位に大きな外力が作用する。
【0011】
ここで、アームを軟鋼材からなる左側板、右側板、上板、下板、後板を用いて形成し、このアームにアームシリンダから大きな外力が作用した場合には、ブーム連結ボス及びアームシリンダブラケットの近傍に位置する各板体に作用する降伏応力が低いため、各板体間の溶接部に残留する残留応力は低い。このため、アームシリンダから大きな外力が作用した場合でも、各板体間の溶接部に発生する応力は比較的低い。
【0012】
これに対し、アームを高張力鋼材からなる左側板、右側板、上板、下板、後板を用いて形成した場合には、ブーム連結ボス及びアームシリンダブラケットの近傍に位置する各板体に作用する降伏応力が高く、各板体間の溶接部の残留応力が高い。このため、アームシリンダから大きな外力が作用した場合には、アームシリンダから作用する大きな外力に溶接部の残留応力が加わり、各板体間の溶接部に高い応力が発生してしまう。
【0013】
この場合、アームは、左,右の側板と、上板と、下板とによって囲まれた閉断面構造を有している。このため、例えば左,右の側板の上端側に上板を溶接した後、左,右の側板の下端側に下板を溶接した場合には、上板と左,右の側板とが交わる角すみ部に対して各側板の外側と内側から隅肉溶接を施すことができる。しかし、下板と左,右の側板とが交わる角隅部に対しては各側板の外側からしか隅肉溶接を施すことができない。即ち、各側板の内側からは隅肉溶接を施すことはできない。このため、左,右の側板の内側と下板とが交わる角隅部の内側には、溶接不溶着部が形成されてしまう。
【0014】
このように、左,右の側板と、上板と、下板とによって囲まれた閉断面構造をなすアームは、左,右の側板と上板とが交わる2箇所の角隅部と、左,右の側板と下板とが交わる2箇所の角隅部との合計4箇所の角隅部のうち、いずれか2箇所の角隅部には、左,右の側板の内側に溶接不溶着部が形成されてしまう。
【0015】
従って、高張力鋼材からなる左,右の側板、上板、下板、後板を用いて形成されたアームに対し、アームシリンダから大きな外力が作用した場合には、左,右の側板と、上板と、下板とが交わる複数の角隅部のうち各側板の内側に形成された溶接不溶着部に応力が集中する。この結果、この溶接不溶着部から疲労亀裂を発生し易くなり、アームの疲労強度が低下してしまうという問題がある。
【0016】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、左,右の側板と、上板と、下板とを接合してなるアーム全体の軽量化を図り、かつ、疲労強度を高めることができるようにした建設機械用アームを提供することを目的としている。
【0017】
本発明は、左側板と、右側板と、該左,右の側板の上端側に溶接により接合された上板と、前記左,右の側板の下端側に溶接により接合された下板と、前記左,右の側板の後端側と前記上板の後端側とに溶接により接合された後板とにより横断面が四角形をなす箱型構造体として形成され、前記左,右の側板の後部下側に位置して、該左,右の側板と前記下板の後端と前記後板の前端とに溶接により接合されたブーム連結ボスを設け、前記後板の外側面に溶接により接合された左,右一対のアームシリンダブラケットを設けてなる建設機械用アームに適用される。
【0018】
請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記左側板は、前記ブーム連結ボスが接合される後側に位置し板厚が厚い軟鋼材からなる左後厚側板と、該左後厚側板の前側に位置し板厚が薄い高張力鋼材からなる左前薄側板との2部材を接合することにより形成し、前記右側板は、前記ブーム連結ボスが接合される後側に位置し板厚が厚い軟鋼材からなる右後厚側板と、該右後厚側板の前側に位置し板厚が薄い高張力鋼材からなる右前薄側板との2部材を接合することにより形成し、前記上板は、前記後板が接合される後側に位置し板厚が厚い軟鋼材からなる後厚上板と、該後厚上板の前側に位置し板厚が薄い高張力鋼材からなる前薄上板との2部材を接合することにより形成し、前記下板は、前記ブーム連結ボスが接合される後側に位置し板厚が厚い軟鋼材からなる後厚下板と、該後厚下板の前側に位置し板厚が薄い高張力鋼材からなる前薄下板との2部材を接合することにより形成し、前記後板は板厚が厚い軟鋼材を用いて形成したことにある。
【0019】
この構成によれば、左後厚側板と、右後厚側板と、後厚上板と、後厚下板とを板厚が厚い軟鋼材により形成し、左前薄側板と、右前薄側板と、前薄上板と、前薄下板とを板厚が薄い高張力鋼材により形成したので、例えば1枚の軟鋼材からなる左側板、右側板、上板、下板を用いてアームを形成する場合に比較して、アーム全体の軽量化を図ることができる。
【0020】
一方、ブーム連結ボスは、軟鋼材からなる左後厚側板と、右後厚側板と、後厚下板とに接合することができ、アームシリンダブラケットが接合される後板は、軟鋼材からなる左後厚側板と、右後厚側板と、後厚上板とに接合することができる。このため、左後厚側板と、右後厚側板と、後厚上板と、後厚下板と、後板とを互いに接合することにより、これら各板が交わる角隅部の内側に溶接不溶着部が形成されたとしても、ブーム連結ボス及びアームシリンダブラケットを介してアームに外力が作用したときに、軟鋼材からなる左後厚側板、右後厚側板、後厚上板、後厚下板、後板は、降伏応力が低いため適度な撓みを生じることができる。
【0021】
これにより、各板が交わる角隅部の内側に形成された溶接不溶着部に応力が集中するのを抑え、アームの疲労強度を高めることができる。この結果、アームの軽量化と、アームの疲労強度の向上とを両立することができ、アーム全体の信頼性を高めることができる。
【0022】
請求項2の発明
は、前記左後厚側板と前記左前薄側板との間は、外側面と内側面との両面からの両面溶接によって形成された両面溶接ビードにより接合し、前記右後厚側板と前記右前薄側板との間は、外側面と内側面との両面からの両面溶接によって形成された両面溶接ビードにより接合し、前記後厚上板と前記前薄上板との間は、外側面と内側面との両面からの両面溶接によって形成された両面溶接ビードにより接合し、前記後厚下板と前記前薄下板との間は、外側面と内側面との両面からの両面溶接によって形成された両面溶接ビードにより接合する構成としたことにある。
【0023】
この構成によれば、左,右の後厚側板と左,右の前薄側板との接合部に溶接不溶着部が形成されるのを抑え、左後厚側板と左前薄側板とからなる強固な左側板と、右後厚側板と右前薄側板とからなる強固な右側板とを形成することができる。また、後厚上板と前薄上板との接合部に溶接不溶着部が形成されるのを抑え、後厚上板と前薄上板とからなる強固な上板を形成することができる。さらに、後厚下板と前薄下板との接合部に溶接不溶着部が形成されるのを抑え、後厚下板と前薄下板とからなる強固な下板を形成することができる。この結果、左,右の側板と、上板と、下板と、後板とによって囲まれた箱型構造体からなるアーム全体の強度を一層高めることができる。
【0026】
請求項3の発明
は、前記左後厚側板と左前薄側板からなる前記左側板の上端側と前記後厚上板と前薄上板からなる前記上板との間は、その外側面と内側面との両面からの隅肉溶接によって形成された外側ビード部と内側ビード部とが一体化した溶接ビードにより接合し、前記右後厚側板と右前薄側板からなる前記右側板の上端側と前記後厚上板と前薄上板からなる前記上板との間は、その外側面と内側面との両面からの隅肉溶接によって形成された外側ビード部と内側ビード部とが一体化した溶接ビードにより接合し、前記左後厚側板と左前薄側板からなる前記左側板の下端側と前記後厚下板と前薄下板からなる前記下板との間は、その外側面からの隅肉溶接によって形成された溶接ビードにより接合し、前記右後厚側板と右前薄側板からなる前記右側板の下端側と前記後厚下板と前薄下板からなる前記下板との間は、その外側面からの隅肉溶接によって形成された溶接ビードにより接合する構成としている。
【0027】
この構成によれば、左側板と上板との間を、外側ビード部と内側ビード部とが一体化した溶接ビードによって強固に接合すると共に、右側板と上板との間を、外側ビード部と内側ビード部とが一体化した溶接ビードによって強固に接合することができる。一方、左側板と下板との間を、左側板の外側面に形成された溶接ビードによって強固に接合すると共に、右側板と下板との間を、右側板の外側面に形成された溶接ビードによって強固に接合することができる。
【0028】
請求項4の発明
は、前記左,右の側板を構成する前記左,右の前薄側板、前記上板を構成する前記前薄上板および前記下板を構成する前記前薄下板の先端には、バケット連結ボスを溶接により接合して設け、前記左,右の側板を構成する前記左,右の前薄側板の前側には、前記バケット連結ボスの後側に隣接してリンク連結ボスを溶接により接合して設け、前記上板を構成する前記後厚上板の外側面には、左,右一対のバケットシリンダブラケットを溶接により接合して設ける構成としている。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る建設機械用アームの実施の形態を、油圧ショベルのアームに適用した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0032】
図中、1は建設機械の代表例としての油圧ショベルを示している。この油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、該上部旋回体3のベースとなる旋回フレーム3Aの前部側に俯仰動可能に設けられた作業装置4とにより構成されている。
【0033】
作業装置4は、基端部が旋回フレーム3Aの前部側に俯仰動可能にピン結合されたブーム5と、基端部がブーム5の先端部に回動可能にピン結合された後述のアーム11と、該アーム11の先端部に回動可能にピン結合されたバケット6と、アーム11の先端側とバケット6との間に設けられたバケットリンク7とを備えている。また、作業装置4は、ブーム5を旋回フレーム3Aに対して俯仰動させるブームシリンダ8と、アーム11をブーム5に対して回動させるアームシリンダ9と、バケット6をアーム11に対して回動させるバケットシリンダ10とを備えている。
【0034】
ここで、ブーム5は、左,右の側板5A(左側のみ図示)と、上板5Bと、下板5Cとを互いに溶接によって接合することにより形成されている。ブーム5は、四角形の閉断面形状を有する箱型構造体として形成され、長さ方向の中央部が山形状に屈曲している。ブーム5の先端側には二又状のブラケット5Dが設けられ、このブラケット5Dと後述するアーム11のブーム連結ボス17とを連結ピン5Eを介して連結することにより、ブーム5の先端側にアーム11が回動可能に支持されている。ブーム5を構成する左,右の側板5A、上板5B、下板5Cは、板厚が厚い軟鋼材、例えばSS400等の一般構造用圧延鋼材を用いて形成され左,右の側板5Aの上端部には、上板5Bが隅肉溶接によって接合され、左,右の側板5Aの下端部には、下板5Cが隅肉溶接によって接合されている。
【0035】
この場合、ブーム5は四角形の閉断面形状を有する箱型構造体であるため、左,右の側板5A、上板5B、下板5Cが交わる4箇所の角隅部のうち2箇所の角隅部の内側(ブーム5の内部側)には溶接不溶着部が形成されることがある。しかし、ブーム5に外力が作用した場合には、軟鋼材からなる左,右の側板5A、上板5B、下板5Cが適度な撓みを生じることにより、これら各板が交わる角隅部の内側に形成された溶接不溶着部に応力が集中するのを抑えることができる。これにより、ブーム5は、左,右の側板5A、上板5B、下板5Cが交わる角隅部の内側に溶接不溶着部が形成されていたとしても、充分な疲労強度を維持することができる。
【0036】
次に、本実施の形態によるアームについて、
図2ないし
図12を参照して説明する。
【0037】
11はブーム5の先端部に回動可能に取付けられたアームを示している。このアーム11は、全体として前,後方向に延びる長尺な箱型構造体として形成され、アームシリンダ9によりブーム5に対して上,下方向に回動するものである。
【0038】
ここで、アーム11は、後述する左,右の側板12,13と、上板14と、下板15と、後板16とにより形成され、該アーム11は、全体として横断面が四角形の閉断面構造を有する箱型構造体をなしている。アーム11の後側(ブーム5側)には、後述のブーム連結ボス17、アームシリンダブラケット22、およびバケットシリンダブラケット23が設けられている。一方、アーム11の前部側(バケット6側)には、後述のバケット連結ボス20とリンク連結ボス21が設けられている。
【0039】
12はアーム11の左側面を構成する左側板を示している。この左側板12は、後述する右側板13と左,右方向で対面しつつ前,後方向に延びている。ここで、
図2および
図3に示すように、左側板12は、前,後方向の後側に位置する左後厚側板12Aと、前,後方向の前側に位置する左前薄側板12Bとの2部材を接合することにより形成されている。左後厚側板12Aには、後述のブーム連結ボス17が接合され、左前薄側板12Bには、後述のバケット連結ボス20、リンク連結ボス21が接合される。
【0040】
左後厚側板12Aは、板厚が厚い軟鋼材、例えばSS400等の一般構造用圧延鋼材を用いて形成されている。ここで、軟鋼材とは、例えば炭素の含有量が0.1%以上で0.3%未満の低炭素鋼材を指し、溶接用の鋼材として広く用いられるものである。左後厚側板12Aは、上板当接部12A1と、下板当接部12A2と、後板当接部12A3と、前薄側板当接部12A4とによって囲まれた六角形状をなしている。この場合、前薄側板当接部12A4は、上板当接部12A1から下板当接部12A2に向けて斜め前方に延びることにより、左後厚側板12Aと左前薄側板12Bとの接合部の長さを大きく確保している。また、下板当接部12A2と後板当接部12A3とが交わる角隅部には、円弧状に切欠かれたボス嵌合溝12A5が設けられ、該ボス嵌合溝12A5には、ブーム連結ボス17のフランジ部17Bが嵌合するものである。
【0041】
一方、左前薄側板12Bは、左後厚側板12Aよりも板厚が薄い高張力鋼材、例えばSM570等の高張力鋼材を用いて形成されている。ここで、高張力鋼材とは、軟鋼に対する熱処理、合金元素の添加等によって強度が高められた引張り強さが50Kgf/mm
2(491N/mm
2)以上の鋼材を指し、溶接用の鋼材として広く用いられるものである。左前薄側板12Bは、上板当接部12B1と、下板当接部12B2と、バケット連結ボス当接部12B3と、後厚側板当接部12B4とによって囲まれた四角形状をなしている。この場合、後厚側板当接部12B4は、上板当接部12B1から下板当接部12B2に向けて斜め前方に延びている。左前薄側板12Bの前端側には、円形状のボス嵌合孔12B5が設けられ、該ボス嵌合孔12B5には、後リンク連結ボス21のフランジ部21Bが嵌合するものである。
【0042】
左後厚側板12Aの前薄側板当接部12A4と、左前薄側板12Bの後厚側板当接部12B4とを突合せた状態で、これら前薄側板当接部12A4と後厚側板当接部12B4とに外側面と内側面との両面からの両面溶接を施す。これにより、左後厚側板12Aと左前薄側板12Bとの2部材が、溶接不溶着部がない両面溶接ビード12Cによって強固に接合された左側板12が形成されている。
【0043】
この場合、
図6に示すように、高張力鋼材を用いて形成された左前薄側板12Bの板厚12Btは、軟鋼材を用いて形成された左後厚側板12Aの板厚12Atよりも薄く設定されている(12Bt<12At)。これにより、軟鋼材のみを用いて左側板を形成する場合に比較して、左側板12を軽量化することができる。
【0044】
次に、13はアーム11の右側面を構成する右側板を示し、該右側板13は、左側板12と同一形状を有している。即ち、右側板13は、前,後方向の後側に位置する右後厚側板13Aと、前,後方向の前側に位置する右前薄側板13Bとの2部材を接合することにより形成されている。右後厚側板13Aには、後述のブーム連結ボス17が接合され、右前薄側板13Bには、後述のバケット連結ボス20、後リンク連結ボス21が接合される。
【0045】
右後厚側板13Aは、板厚が厚い軟鋼材を用いて形成され、上板当接部13A1と、下板当接部13A2と、後板当接部13A3と、前薄側板当接部13A4とによって囲まれた六角形状をなしている。下板当接部13A2と後板当接部13A3とが交わる角隅部には、円弧状に切欠かれたボス嵌合溝13A5が設けられている。
【0046】
一方、右前薄側板13Bは、右後厚側板13Aよりも板厚が薄い高張力鋼材を用いて形成され、上板当接部13B1と、下板当接部13B2と、バケット連結ボス当接部13B3と、後厚側板当接部13B4とによって囲まれた四角形状をなしている。右前薄側板13Bの前端側には円形状のボス嵌合孔13B5が設けられている。
【0047】
右後厚側板13Aの前薄側板当接部13A4と、右前薄側板13Bの後厚側板当接部13B4とを突合せた状態で、これら前薄側板当接部13A4と後厚側板当接部13B4とに外側面と内側面との両面からの両面溶接を施す。これにより、右後厚側板13Aと右前薄側板13Bとの2部材が、溶接不溶着部がない両面溶接ビード13Cによって強固に接合された右側板13が形成されている。
【0048】
この場合、高張力鋼材を用いて形成された右前薄側板13Bの板厚13Btは、軟鋼材を用いて形成された右後厚側板13Aの板厚13Atよりも薄く設定されている(13Bt<13At)。これにより、軟鋼材のみを用いて右側板を形成する場合に比較して、右側板13を軽量化することができる。
【0049】
次に、14はアーム11の上面を構成する上板を示している。この上板14は、左,右の側板12,13の上端側に接合され、前,後方向に延びるものである。ここで、上板14は、前,後方向の後側に位置する後厚上板14Aと、前,後方向の前側に位置する前薄上板14Bとの2部材を接合することにより形成され、後厚上板14Aには後述のバケットシリンダブラケット23が接合されている。
【0050】
後厚上板14Aは、板厚が厚い軟鋼材、例えばSS400等の一般構造用圧延鋼材を用いて、前,後方向に延びる長方形の板状に形成されている。後厚上板14Aは、バケットシリンダブラケット23よりも後側の部位が斜め下向きに屈曲している。後厚上板14Aの後端縁は、後述の後板16に接合される後板当接部14A1となり、後厚上板14Aの前端縁は、前薄上板14Bに接合される前薄上板当接部14A2となっている。
【0051】
一方、前薄上板14Bは、後厚上板14Aよりも板厚が薄い高張力鋼材、例えばSM570等の高張力鋼材を用いて、前,後方向に延びる長方形の平板状に形成されている。前薄上板14Bの後端縁は後厚上板当接部14B1となり、前薄上板14Bの前端縁はバケット連結ボス当接部14B2となっている。このバケット連結ボス当接部14B2には、後述するバケット連結ボス20が接合される。
【0052】
後厚上板14Aの前薄上板当接部14A2と、前薄上板14Bの後厚上板当接部14B1とを突合せた状態で、これら前薄上板当接部14A2と後厚上板当接部14B1とに外側面と内側面との両面からの両面溶接を施す。これにより、後厚上板14Aと前薄上板14Bとの2部材が、溶接不溶着部がない両面溶接ビード14Cによって強固に接合された上板14が形成されている。
【0053】
この場合、
図5に示すように、高張力鋼材を用いて形成された前薄上板14Bの板厚14Btは、軟鋼材を用いて形成された後厚上板14Aの板厚14Atよりも薄く設定されている(14Bt<14At)。これにより、軟鋼材のみを用いて上板を形成する場合に比較して、上板14を軽量化することができる。
【0054】
次に、15はアーム11の下面を構成する下板を示している。この下板15は、左,右の側板12,13の下端側に接合され、前,後方向に延びるものである。ここで、下板15は、前,後方向の後側に位置する後厚下板15Aと、前,後方向の前側に位置する前薄下板15Bとの2部材を接合することにより形成されている。
【0055】
後厚下板15Aは、板厚が厚い軟鋼材、例えばSS400等の一般構造用圧延鋼材を用いて、前,後方向に延びる長方形の板状に形成されている。後厚下板15Aの後端縁は、ブーム連結ボス当接部15A1となり、該ブーム連結ボス当接部15A1は、後述のブーム連結ボス17に接合される。後厚下板15Aの前端縁は、前薄下板当接部15A2となり、該前薄下板当接部15A2は、前薄下板15Bに接合される。
【0056】
一方、前薄下板15Bは、後厚下板15Aよりも板厚が薄い高張力鋼材、例えばSM570等の高張力鋼材を用いて、前,後方向に延びる長方形の平板状に形成されている。前薄下板15Bの後端縁は、後厚下板当接部15B1となり、前薄下板15Bの前端縁は、バケット連結ボス当接部15B2となっている。このバケット連結ボス当接部15B2には、後述のバケット連結ボス20が接合される。
【0057】
後厚下板15Aの前薄下板当接部15A2と、前薄下板15Bの後厚下板当接部15B1とを突合せた状態で、これら前薄下板当接部15A2と後厚下板当接部15B1とに外側面と内側面との両面からの両面溶接を施す。これにより、後厚下板15Aと前薄下板15Bとの2部材が、溶接不溶着部がない両面溶接ビード15Cによって強固に接合された下板15が形成されている。
【0058】
この場合、
図5に示すように、高張力鋼材を用いて形成された前薄下板15Bの板厚15Btは、軟鋼材を用いて形成された後厚下板15Aの板厚15Atよりも薄く設定されている(15Bt<15At)。これにより、軟鋼材のみを用いて下板を形成する場合に比較して、下板15を軽量化することができる。
【0059】
次に、16はアーム11の後面を構成する後板を示している。この後板16は、板厚が厚い軟鋼材、例えばSS400等の一般構造用圧延鋼材を用いて長方形の板状に形成され、長さ方向の中央部が山形状に屈曲している。ここで、後板16は、左,右の側板12,13と上板14との後端側に溶接によって接合され、中空なアーム11の後端部を閉塞している。
【0060】
この場合、後板16は、左側板12を構成する左後厚側板12Aの後板当接部12A3と、右側板13を構成する右後厚側板13Aの後板当接部13A3と、上板14を構成する後厚上板14Aの後板当接部14A1とに溶接によって接合されている。後板16の前端縁は、ブーム連結ボス当接部16Aとなり、該ブーム連結ボス当接部16Aは、後述のブーム連結ボス17に接合される。一方、後板16の外側面には、後述するアームシリンダブラケット22が固定される。
【0061】
次に、17は左,右の側板12,13の後部下側に設けられたブーム連結ボスを示している。該ブーム連結ボス17は、
図1に示すブーム5とアーム11との間を回動可能に連結する連結ピン5Eが挿通されるものである。ここで、ブーム連結ボス17は、左,右方向に延びる中空な円筒ボス部17Aと、該円筒ボス部17Aの左,右方向の両端側に設けられた円弧状の平板からなる左,右のフランジ部17Bとにより構成されている。
【0062】
ブーム連結ボス17の円筒ボス部17Aは、下板15を構成する後厚下板15Aのブーム連結ボス当接部15A1と、後板16のブーム連結ボス当接部16Aとに溶接によって接合されている。一方、ブーム連結ボス17の左,右のフランジ部17Bは、左側板12を構成する左後厚側板12Aのボス嵌合溝12A5と、右側板13を構成する右後厚側板13Aのボス嵌合溝13A5とに、それぞれ溶接によって接合されている。
【0063】
18は左,右の後厚側板12A,13Aとブーム連結ボス17の左,右のフランジ部17Bの内側面に設けられた左,右の裏当て材を示している。この裏当て材18は、円弧状に湾曲した帯状の鋼板材からなり、左後厚側板12Aのボス嵌合溝12A5とブーム連結ボス17の左側のフランジ部17Bとの境界部に沿って配置されると共に、右後厚側板13Aのボス嵌合溝13A5とブーム連結ボス17の右側のフランジ部17Bとの境界部に沿って配置されている。左後厚側板12Aとブーム連結ボス17の左側のフランジ部17Bとの間には、内側面に裏当て材18を当接させた状態で外側面から片面溶接が施される。一方、右後厚側板13Aとブーム連結ボス17の右側のフランジ部17Bとの間には、内側面に裏当て材18を当接させた状態で外側面から片面溶接が施される。これにより、
図7に示すように、左,右の後厚側板12A,13Aとブーム連結ボス17の左,右のフランジ部17Bとの間は、片面溶接ビード17Cによって強固に接合されている。
【0064】
19は上板14の後厚上板14Aの内側面とブーム連結ボス17との間に設けられた内部隔壁を示している。この内部隔壁19は、アーム11内に2つの閉空間を形成するように配置され、アーム11の剛性を高めるものである。ここで、内部隔壁19は、左,右の側板12,13の間隔とほぼ等しい左,右方向の幅寸法を有する長方形の平板からなっている。内部隔壁19の上端部は、後厚上板14Aに溶接によって接合され、内部隔壁19の下端部は、ブーム連結ボス17の円筒ボス部17Aに溶接によって接合されている。
【0065】
次に、20は左,右の側板12,13、上板14および下板15の前端部に設けられたバケット連結ボスを示している。このバケット連結ボス20は、
図1に示すバケット6とアーム11との間を回動可能に連結する連結ピンが挿通されるものである。ここで、バケット連結ボス20は、中空な円筒ボス部20Aと、該円筒ボス部20Aの両端側に設けられた平板状の左,右の鍔部20Bとにより構成されている。バケット連結ボス20の円筒ボス部20Aは、前薄上板14Bのバケット連結ボス当接部14B2と、前薄下板15Bのバケット連結ボス当接部15B2とに溶接によって接合される。一方、左側の鍔部20Bは、左前薄側板12Bのバケット連結ボス当接部12B3に溶接によって接合され、右側の鍔部20Bは、右前薄側板13Bのバケット連結ボス当接部13B3に溶接によって接合される。
【0066】
21はバケット連結ボス20の後側に隣接して左,右の側板12,13の前端側に設けられたリンク連結ボスを示している。このリンク連結ボス21は、
図1に示すバケットリンク7とアーム11との間を連結する連結ピンが挿通されるものである。ここで、リンク連結ボス21は、中空な円筒ボス部21Aと、該円筒ボス部21Aの両端側に設けられた左,右のフランジ部21Bとにより構成されている。リンク連結ボス21の左側のフランジ部21Bは、左前薄側板12Bのボス嵌合孔12B5に溶接によって接合され、リンク連結ボス21の右側のフランジ部21Bは、右前薄側板13Bのボス嵌合孔13B5に溶接によって接合される。
【0067】
次に、22は後板16の外側面に設けられた左,右一対のアームシリンダブラケットを示している。これら各アームシリンダブラケット22は、
図1に示すアームシリンダ9のロッド先端が、連結ピンを介して回動可能に連結されるものである。ここで、各アームシリンダブラケット22は、ほぼ三角形状をなす板体として形成され、その先端側にはピン挿通孔22Aが穿設されている。アームシリンダブラケット22は、左,右方向に一定の間隔を保った状態で後板16の外側面に溶接によって接合されている。
【0068】
23は上板14の後端側の外側面に設けられた左,右一対のバケットシリンダブラケットを示している。これら各バケットシリンダブラケット23は、
図1に示すバケットシリンダ10のボトム側が連結ピンを介して回動可能に連結されるものである。ここで、各バケットシリンダブラケット23は、鋼板材等の板材を用いてほぼ三角形状をなす板体として形成され、その先端側にはピン挿通孔23Aが穿設されている。バケットシリンダブラケット23は、左,右方向に一定の間隔を保った状態で後厚上板14Aの外側面に溶接によって接合されている。
【0069】
本実施の形態によるアーム11は上述の如き構成を有するもので、次に、アーム11を製造する手順の一例を説明する。
【0070】
まず、左後厚側板12Aの前薄側板当接部12A4と、左前薄側板12Bの後厚側板当接部12B4とを突合せた状態で、両者間に外側面と内側面との両面からの両面溶接を施す。これにより、
図6ないし
図8に示すように、左後厚側板12Aの前薄側板当接部12A4と左前薄側板12Bの後厚側板当接部12B4との間に、溶接不溶着部がない両面溶接ビード12Cを形成することができる。この結果、左後厚側板12Aと左前薄側板12Bとの2部材が強固に接合された左側板12を形成することができる。
【0071】
一方、右後厚側板13Aの前薄側板当接部13A4と、右前薄側板13Bの後厚側板当接部13B4とを突合せた状態で、両者間に外側面と内側面との両面からの両面溶接を施す。これにより、右後厚側板13Aの前薄側板当接部13A4と右前薄側板13Bの後厚側板当接部13B4との間に、溶接不溶着部がない両面溶接ビード13Cを形成することができる。この結果、右後厚側板13Aと右前薄側板13Bとの2部材が強固に接合された右側板13を形成することができる。
【0072】
次に、左側板12の左後厚側板12Aに設けたボス嵌合溝12A5と、右側板13の右後厚側板13Aに設けたボス嵌合溝13A5とに対し、ブーム連結ボス17の左,右のフランジ部17Bをそれぞれ溶接によって接合する。この場合、各フランジ部17Bの内側面には予め裏当て材18が固定されており、フランジ部17Bの外周縁部から突出した裏当て材18を左,右の後厚側板12A,13Aの内側面に当接させる。この状態で、左後厚側板12Aとフランジ部17Bとの間に、左後厚側板12Aの外側面から片面溶接を施す。一方、右後厚側板13Aとフランジ部17Bとの間に、右後厚側板13Aの外側面から片面溶接を施す。これにより、左,右の後厚側板12A,13Aとブーム連結ボス17の左,右のフランジ部17Bとの間を、片面溶接ビード17Cを介して強固に接合することができる。この場合、左,右の後厚側板12A,13Aにブーム連結ボス17の左,右のフランジ部17Bを溶接する作業は、左,右の後厚側板12A,13Aの外側面から行うことができ、その作業性を高めることができる。
【0073】
次に、左側板12の左前薄側板12Bに設けたボス嵌合孔12B5と、右側板13の右前薄側板13Bに設けたボス嵌合孔13B5とに対し、リンク連結ボス21の左,右のフランジ部21Bをそれぞれ溶接によって接合する。さらに、左側板12の左前薄側板12Bに設けたバケット連結ボス当接部12B3と、右側板13の右前薄側板13Bに設けたバケット連結ボス当接部13B3とに対し、バケット連結ボス20の左,右の鍔部20Bをそれぞれ溶接によって接合する。
【0074】
一方、後厚上板14Aの前薄上板当接部14A2と、前薄上板14Bの後厚上板当接部14B1とを突合せた状態で、両者間に外側面と内側面との両面からの両面溶接を施す。これにより、
図5及び
図9に示すように、後厚上板14Aの前薄上板当接部14A2と前薄上板14Bの後厚上板当接部14B1との間に、溶接不溶着部がない両面溶接ビード14Cを形成することができる。この結果、後厚上板14Aと前薄上板14Bとの2部材が強固に接合された上板14を形成することができる。
【0075】
さらに、後厚下板15Aの前薄下板当接部15A2と、前薄下板15Bの後厚下板当接部15B1とを突合せた状態で、両者間に外側面と内側面との両面からの両面溶接を施す。これにより、
図5に示すように、後厚下板15Aの前薄下板当接部15A2と前薄下板15Bの後厚下板当接部15B1との間に、溶接不溶着部がない両面溶接ビード15Cを形成することができる。この結果、後厚下板15Aと前薄下板15Bとの2部材が強固に接合された下板15を形成することができる。
【0076】
次に、左側板12と右側板13との上端側に上板14を配置した状態で、左側板12を構成する左後厚側板12Aの上板当接部12A1と上板14の後厚上板14Aとの間に、その外側面と内側面との両面から隅肉溶接を施す。一方、左前薄側板12Bの上板当接部12B1と上板14の後厚上板14A及び前薄上板14Bとの間に、その外側面と内側面との両面から隅肉溶接を施す。これと同様に、右側板13を構成する右後厚側板13Aの上板当接部13A1と上板14の後厚上板14Aとの間に、その外側面と内側面との両面から隅肉溶接を施す。一方、右前薄側板13Bの上板当接部13B1と上板14の後厚上板14A及び前薄上板14Bとの間に、その外側面と内側面との両面から隅肉溶接を施す。
【0077】
これにより、
図6及び
図10に示すように、左側板12と上板14とが交わる角隅部に対し、左側板12の外側から形成された外側ビード部24Aと左側板12の内側から形成された内側ビード部24Bとが溶込んで一体化した溶接不溶着部がない溶接ビード24を形成することができる。これと同様に、
図6に示すように、右側板13と上板14とが交わる角隅部に対し、右側板13の外側から形成された外側ビード部25Aと右側板13の内側から形成された内側ビード部25Bとが溶込んで一体化した溶接不溶着部がない溶接ビード25を形成することができる。
【0078】
次に、
図4、
図5に示すように、内部隔壁19の上端部19Aを、上板14を構成する後厚上板14Aの前部位置に溶接すると共に、内部隔壁19の下端部19Bを、ブーム連結ボス17の円筒ボス部17Aに溶接する。一方、
図6に示すように、内部隔壁19の左,右の側端部19Cを、左側板12の内側面と右側板13の内側面にそれぞれ溶接する。
【0079】
次に、左側板12と右側板13との下端側に下板15を配置した状態で、左後厚側板12Aの下板当接部12A2と下板15の後厚下板15Aとの間に、その外側面から隅肉溶接を施すと共に、左前薄側板12Bの下板当接部12B2と下板15の後厚下板15A及び前薄下板15Bとの間に、その外側面から隅肉溶接を施す。一方、右後厚側板13Aの下板当接部13A2と下板15の後厚下板15Aとの間に、その外側面から隅肉溶接を施すと共に、右前薄側板13Bの下板当接部13B2と下板15の後厚下板15A及び前薄下板15Bとの間に、その外側面から隅肉溶接を施す。
【0080】
これにより、
図6及び
図11に示すように、左側板12と下板15とが交わる角隅部に対し、左側板12の外側から溶接ビード26を形成することができる。また、右側板13と下板15とが交わる角隅部に対し、右側板13の外側から溶接ビード27を形成することができる。この場合、左,右の側板12,13に下板15を接合するときには、左,右の側板12,13、上板14、下板15によって囲まれる閉空間が下板15によって施蓋される。このため、左側板12と下板15とが交わる角隅部に対して左側板12の内側から溶接ビードを形成することはできず、右側板13と下板15とが交わる角隅部に対して右側板13の内側から溶接ビードを形成することはできない。
【0081】
従って、
図6及び
図11に示すように、左側板12と下板15とが交わる角隅部に形成された溶接ビード26は、左側板12の内側面において溶接不溶着部26Aを含むことがある。また、
図6に示すように、右側板13と下板15とが交わる角隅部に形成された溶接ビード27は、右側板13の内側面において溶接不溶着部27Aを含むことがある。
【0082】
次に、左,右の側板12,13の上端側に上板14を接合し、下端側に下板15を接合した後には、左後厚側板12Aの後板当接部12A3と後板16との間に隅肉溶接を施すと共に、右後厚側板13Aの後板当接部13A3と後板16との間に隅肉溶接を施す。一方、上板14を構成する後厚上板14Aの後板当接部14A1と後板16との間に隅肉溶接を施すと共に、後板16のブーム連結ボス当接部16Aを、ブーム連結ボス17の円筒ボス部17Aに溶接する。
【0083】
次に、後板16の外側面に左,右一対のアームシリンダブラケット22を溶接によって接合し、上板14を構成する後厚上板14Aの外側面に、左,右一対のバケットシリンダブラケット23を溶接によって接合する。
【0084】
このようにして、左側板12、右側板13、上板14、下板15、後板16を互いに溶接することにより、横断面が四角形の閉断面構造をなす箱型構造体のアーム11を形成することができる。
【0085】
ここで、本実施の形態によるアーム11は、左側板12を構成する左後厚側板12Aと、右側板13を構成する右後厚側板13Aと、上板14を構成する後厚上板14Aと、下板15を構成する後厚下板15Aとを、それぞれ板厚が厚い軟鋼材を用いて形成している。一方、左前薄側板12Bと、右前薄側板13Bと、前薄上板14Bと、前薄下板15Bとを、それぞれ板厚が薄い高張力鋼材を用いて形成している。これにより、例えば1枚の軟鋼材からなる上板、下板、左側板、右側板を用いてアームを形成する場合に比較して、アーム11全体の軽量化を図ることができる。
【0086】
一方、本実施の形態によるアーム11によれば、ブーム5とアーム11との間を連結する連結ピン5Eが挿通されるブーム連結ボス17を、軟鋼材からなる左後厚側板12Aと、右後厚側板13Aと、後厚下板15Aと、後板16とに接合することができる。また、アームシリンダブラケット22が接合される後板16を、軟鋼材からなる左後厚側板12Aと、右後厚側板13Aと、後厚上板14Aとに接合することができる。
【0087】
このため、ブーム連結ボス17及びアームシリンダブラケット22を介してアーム11に外力が作用したときに、軟鋼材からなる左後厚側板12A、右後厚側板13A、後厚上板14A、後厚下板15A、後板16は、外力に応じて適度な撓みを生じることができる。
【0088】
これにより、
図6に示すように、例えば左後厚側板12Aと後厚下板15Aとが交わる角隅部の内側に溶接不溶着部26Aが形成され、右後厚側板13Aと後厚下板15Aとが交わる角隅部の内側に溶接不溶着部27Aが形成されたとしても、この溶接不溶着部26A,27Aに応力が集中するのを抑えることができ、アーム11の疲労強度を高めることができる。この結果、本実施の形態によれば、アーム11の軽量化と、アーム11の疲労強度の向上とを両立することができ、アーム11全体の信頼性を高めることができる。
【0089】
しかも、本実施の形態によるアーム11は、左後厚側板12Aと左前薄側板12Bとの間、右後厚側板13Aと右前薄側板13Bとの間、後厚上板14Aと前薄上板14Bとの間、後厚下板15Aと前薄下板15Bとの間を、それぞれ外側面と内側面との両面からの両面溶接によって接合している。
【0090】
これにより、左後厚側板12Aと左前薄側板12Bとが両面溶接ビード12Cによって接合された左側板12を形成することができる。右後厚側板13Aと右前薄側板13Bとが両面溶接ビード13Cによって接合された右側板13とを形成することができる。一方、後厚上板14Aと前薄上板14Bとが両面溶接ビード14Cによって接合された上板14を形成することができる。さらに、後厚下板15Aと前薄下板15Bとが両面溶接ビード15Cによって接合された下板15とを形成することができる。この結果、左側板12と、右側板13と、上板14と、下板15と、後板16とによって囲まれた箱型構造体からなるアーム11全体の強度を一層高めることができる。
【0091】
なお、上述した実施の形態では、アーム11を組立てる手順の一例として、左,右の側板12,13にブーム連結ボス17、バケット連結ボス20、リンク連結ボス21を接合した後、各側板12,13に上板14を接合する。次に、上板14とブーム連結ボス17との間に内部隔壁19を接合した後、各側板12,13に下板15と後板16とを接合した場合を例示している。しかし、本発明によるアーム11の組立手順はこれに限るものではなく、アーム11を組立てる手順は適宜に変更することができるものである。
【0092】
また、上述した実施の形態では、建設機械としてクローラ式の油圧ショベル1を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例えばホイール式油圧ショベルに用いられるアーム等の他の建設機械用のアームにも広く適用することができる。