(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
負荷率ごとの更新前の変圧器の損失と、更新後の変圧器の損失とを比較する形式で、表示装置に表示することを特徴する請求項1記載の変圧器の省エネルギー効果算出方法。
単位時間あたりの更新前の変圧器の消費(損失)電力量と、更新後の変圧器の消費(損失)電力量とを比較する形式で、表示装置に表示することを特徴する請求項1記載の変圧器の省エネルギー効果算出方法。
更新前の変圧器の消費(損失)電力量と、更新後の変圧器の消費(損失)電力量から求められる省エネルギー額、または量と契約省エネルギー額,または量を比較する形式で、表示装置に表示することを特徴する請求項1記載の変圧器の省エネルギー効果算出方法。
更新前の変圧器の消費(損失)電力量と、更新後の変圧器の消費(損失)電力量から求められる時間変化につれての積算的な省エネルギー額、または量を、表示装置に表示することを特徴する請求項1記載の変圧器の省エネルギー効果算出方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1は、現状の設備にインバータを導入した場合に、インバータ導入前の積算消費(
損失)電力とインバータ導入前の積算消費(
損失)電力との差から、消費(
損失)電力量を演算し、節約した電気料金を算出する方法が開示されている。
【0007】
しかしながら、変圧器に関しては、発電機や電動機と同じように電気機器に分類されるが発電機や電動機のような回転機とは異なる静止機器ということもあり、それ自体のエネルギー消費(損失)は少なく、効率は高い電気機器である。さらに変圧器の中でも、無負荷損の極めて少ないアモルファス変圧器は、きわめて効率の高い変圧器であり、省エネルギー効果が高いとされてきた。
【0008】
このように変圧器は、エネルギー効率のよい機器(通常、97%以上)であるため、エネルギーの消費量の大きい動力機械とは異なり、変圧器に関しての
時時刻刻変化する消費(損出)電力の変化を監視し、積算的な消費(
損失)電力の節約による経済的な利点を表示するものは存在しなかった。
【0009】
また、特許文献2では、新規の変圧器を導入する場合に、カタログスペック上の消費(
損失)電力の差を計算し、それによる省エネルギー効果をうたっているのみである。
【0010】
しかしながら、この特許文献2では、顧客が新しい変圧器を導入したときに、導入後に、リプレース前と比べてどの位省エネルギー効果、経済的効果があるのかを把握できないという問題点があった。
【0011】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、その目的は、変圧器において、従来の変圧器と新設した変圧器の
時時刻刻変化する消費(
損失)電力の比較を、容易におこなうことができ、積算的な経済的な利点を把握できやすくする変圧器の省エネルギー効果算出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の変圧器の電力評価システムは、負荷と電源装置の間に変圧器が介在して電力を供給するときに、負荷に見合った変圧器の損失を評価する変圧器の電力評価システムであり、負荷に対する有効電力量、力率、電流などの電気的データを収集する電力計測装置と、電力計測装置と接続され、電力計測装置により収集した電気的データを受信するコンピュータとを有している。
【0013】
そして、変圧器の損失を評価する変圧器の省エネルギー効果を算出するときに、前記コンピュータは、更新後の変圧器の稼動時における電気データを受信し、それに基づいて更新後の変圧器の損失を求め、更新前の変圧器における損失との差分を、低減損失として出力する。
【0014】
また、負荷率ごとの更新前の変圧器の損失と、更新後の変圧器の損失とを比較する形式で、表示装置に表示する。
【0015】
また、単位時間あたりの更新前の変圧器の消費(
損失)電力量と、更新後の変圧器の消費(
損失)電力量とを比較する形式で、表示装置に表示する。
【0016】
また、更新前の変圧器の消費(
損失)電力量と、更新後の変圧器の消費(
損失)電力量から求められる省エネルギー額と契約省エネルギー額を比較する形式で、表示装置に表示する。
【0017】
また、更新前の変圧器の消費(
損失)電力量と、更新後の変圧器の消費(
損失)電力量から求められる時間変化につれての積算的な省エネルギー額、または量を、表示装置に表示する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、産業用の変圧器において、従来の変圧器と新設した変圧器の
時時刻刻変化する消費(
損失)電力の比較を、容易におこなうことができ、積算的な経済的な利点を把握できやすくする変圧器の省エネルギー効果算出方法を提供することにある。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る一実施形態を、
図1ないし
図11を用いて説明する。
先ず、
図1を用いて本発明の一実施形態に係る変圧器の電力評価システムの構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る変圧器の電力評価システムの構成図である。
【0021】
本実施形態は、電源が三相交流電源であり、負荷が三相交流で動作する場合のシステムについて説明する。
【0022】
本実施形態に係る変圧器の電力評価システムの構成は、電源00、変圧器10、負荷20、電力計測装置30、IFユニット40、コンピュータ100、表示装置111、キーボード121、マウス122、HDD140からなる。
【0023】
電源00は、例えば、三相交流電源であり、外部電源でも設備の内部電源でもよい。
【0024】
変圧器10は、一次側(入力側)の交流電力の電圧の高さを電磁誘導を利用して変換して、二次側(出力側)に出力する電力機器である。本実施形態では、変圧器は、三相変圧器とする。
【0025】
負荷20は、設備において電力を実際に消費する機器であり、例えば、モータ、圧縮機などである。
【0026】
電力計測装置30は、交流における電流、電圧、電力、電力量を計測し、データを収集するための装置である。
【0027】
IFユニット40は、電力計測装置30と、コンピュータ100を接続するためのユニットであり、電力計測装置30とは、専用の通信線で、コンピュータ100とは、汎用のシリアルIFで接続される。
【0028】
コンピュータ100は、CPU(Central Processing Unit)101、シリアルIF102、主記憶
装置103、グラフィックIF
110、入出力IF
120、補助記憶装置IF
130が、バスにより結合された形態になっている。
【0029】
CPU101は、コンピュータ100の各部を制御し、主記憶装置
103に電力評価のためのプログラムをロードして実行する。
【0030】
シリアルIF
102は、IFユニット40と接続するためのインタフェースである。
【0031】
主記憶
装置103は、通常、RAMなどの揮発メモリで構成され、CPU101が実行するプログラム、参照するデータが記憶される。
【0032】
グラフィックIF
110は、LCD(Liquid Crystal Display)などの表示装置111を接続するためのインタフェースである。
【0033】
入出力IF120は、入出力装置を接続するためのインタフェースである。
図1の例では、キーボード121とポインティングデバイスのマウス122が接続されている。
【0034】
補助記憶装置IF
130は、HDD(Hard Disk Drive)140やDVDドライブ(Digital Versatile Disk)(図示せず)などの補助記憶装置を接続するためのインタフェースである。
【0035】
HDD140は、大容量の記憶容量を有しており、本実施形態を実行するためのデータ収集プログラム141、電力計算プログラム142、表示プログラム
143、電力料金換算プログラム144が格納されている。
【0036】
データ収集プログラム141は、電力計測装置30からデータを収集するためのプログラムである。
【0037】
電力計算プログラム142は、収集されたデータを、集計・加工するためのプログラムである。
【0038】
表示プログラム143は、収集されたデータや加工されたデータを、表やグラフとして表示するためのプログラムである。
【0039】
電力料金換算プログラム144は、消費(
損失)電力量を電気料金に換算するためのプログラムである。
【0040】
次に、
図2ないし
図8を用いて本発明の一実施形態に係る変圧器の電力評価システムによる第一の電力評価方法について説明する。
先ず、
図2および
図3を用いて負荷率の概念と実測について説明する。
図2は、時間毎の負荷率の変動を示す棒グラフである。
図3は、時間毎の負荷率の変動の実際のデータを示した棒グラフである。
【0041】
既存の変圧器から新規導入する変圧器への更新をおこなった際の損失低減効果算出方法として、従来は、更新後の「ある一定期間」の負荷率を計算し、その負荷率を元に更新前の変圧器の損失をカタログスペックから計算し、合わせて更新後の変圧器の損失もカタログスペックから計算し、その差分にて効果を算出するという手法が一般的であった。
【0042】
本来は、等価負荷率を用いてカタログスペックに記載ある「負荷損」、「無負荷損
」から変圧器の損失を計算するが、等価負荷率の計算が面倒であるため、一般的には、平均負荷率を用いる場合が多く、負荷変動が多い場合には正確性に欠く場合が出る。またこの損失の計算も連続的に計算するわけではなく、月に1回、あるいは、年に1回の頻度で人手を介在して損失計算をおこなう場合が多い。
【0043】
そこで、本実施形態では、以下のように、等価負荷率により、コンピュータ100により、自動的に、損失を計算することにする。
【0044】
変圧器のエネルギー損失を測定するためには、負荷率を基準とする。実際の変圧器の稼働時間は、複雑に変化するので、日負荷曲線を単位時間で区切り、階段状の棒グラフに見立てた等価負荷率を計算する。
【0045】
負荷率は、以下の(式1)で表される。
【0046】
負荷率=(皮相電力)/変圧器容量
=(有効電力÷力率)/変圧器容量
≒(有効電力量÷力率)/変圧器容量…(式1)
サンプリング間隔=1時間、期間が1日のときの等価負荷率は、図
3の場合には、以下の(式2)で求められる。
【0048】
また、
図3の場合の平均負荷率は、以下の(式3)で求められる。
【0050】
次に、
図4ないし
図6を用いて負荷率より変圧器の更新による損失の変化を求める処理について説明する。
図4は、1時間の有効電力量から力率を考慮して負荷率を算出する場合を説明するグラフである。
図5は、所定のサンプリング間隔における電流から負荷率を算出する場合を説明するグラフである。
図6は、等価負荷率から変圧器の更新前と更新後の損失の差を求める処理を示すフローチャートである。
【0051】
負荷率を求める第一の方法としては、電力計測装置30が、有効電力量と、力率を収集し、それにより求める方法である。ここで、有効電力量は、
図4に示されるように、1時間の有効電力量となる。
【0052】
負荷率を求める第二の方法としては、電力計測装置30が、所定サンプリング間隔における電流を収集し、それにより求める方法である。
【0053】
図5に示されるように、電流を求めるのは、負荷率の考え方から言えば、本来の方法だが、サンプリング間隔が限られてしまうので、第一の方法と比べて簡易的な方法としての位置づけとなる。
【0054】
次に、
図6を用いて変圧器の更新前と更新後の損失の差を求める処理について説明する。
【0055】
先ず、以下の(式4)により、更新後の変圧器の等価負荷率を、上記で述べた方法により求める(S01)。なお、更新前の負荷率は、外部から与えられるものであってもよいし、上で述べた方法で計測し、求めておいたものを用いてもよい。
【0057】
ここで、Peは、求める等価負荷率、Piは、区間iにおける負荷率またはサンプリングi番目の負荷率であり、それがN個あるものとする。例えば、上の例では、Piは、1時間の区間における負荷率であり、期間が1日なので、N=24である。
【0058】
次に、以下の(式5)により、等価負荷率から更新後の変圧器の全損失W1[kW]を算出する(S02)。
【0059】
W1={無負荷損[W]+負荷損[W]×(等価負荷率)
2}/1000×N
…(式5)
次に、以下の(式6)により、等価負荷率から更新前の変圧器の全損失W2[kW]を算出する(S03)。
【0060】
W2={無負荷損[W]+負荷損[W]×(等価負荷率)
2}/1000×N
…(式6)
次に、以下の(式7)により、変圧器の更新前後の低減損失ΔW[kW]を求める(S04)。
【0061】
ΔW=W2−W1 …(式7)
そして、グラフや帳票に低減損失ΔW[kW]を表示する(S05)。
【0062】
次に、
図7および
図8を用いて変圧器を更新することによる省エネルギーの効果を表示する例について説明する。
図7は、負荷率を変化させたときの更新前と更新後の変圧器の損失を対比して示したグラフである。
図8は、負荷率を変化させたときの低減損失を示したグラフである。
【0063】
図7に示されるように、変圧器の損失は、負荷率に対して二次関数のグラフであらわされる。負荷率=0%のときの損失は、負荷がかかっていないときにも生じる損失である無負荷損(鉄損)である。これを抑えるために、変圧器の鉄心に損失の少ない材料を用いることが必要であり、変圧器の鉄心にアモルファスを用いたアモルファス変圧器では、この無負荷損を最大限に抑えることができる。
【0064】
負荷率=100%のときに、負荷損(銅損)が最大となり、変圧器の損失も最大となる。
【0065】
変圧器の更新前後の低減損失ΔWは、
図8に示されるようになる。
【0066】
負荷率=0%のときの損失の差w2が一番大きく、それから二次曲線を描
いて負荷率=
100%のときの損失の差w1まで減少していく。
【0067】
これを、システムの表示装置111に表示してやれば、ユーザは、視覚的に省エネルギー効果を捉えることができる。
【0068】
次に、
図9および
図11を用いて本発明の一実施形態に係る変圧器の電力評価システムによる第二の電力評価方法について説明する。
【0069】
図9は、単位時間あたりの省エネルギー量の効果の変化を示すグラフである。
【0070】
図10は、変圧器の更新に際して、契約分の省エネルギー量との比較を対比するためのグラフである。
【0071】
図11は、省エネルギーによる積算的な効果を示すグラフである。
【0072】
変圧器を更新したときの単位時間あたり節約できた消費(
損失)電力量(省エネルギー量)の変化を、
図9に示すように、表示装置111に表示する。これにより、変圧器の導入によるメリットを直接視覚的に把握することができる。更新前の変圧器の消費(
損失)電力は、
図1に示したデータを用いてもよいし、カタログスペックによって求めてもよい。
【0073】
また、変圧器の導入する際に、顧客との間で、省エネルギー額の契約がある場合に、
図10に示すように、時間の変化における省エネルギー額を表示する。省エネルギー額は、収集した消費(
損失)電力データにより、料金換算プログラム144がおこなう。顧客との間で、省エネルギー額は、P[円]であるものとする。
【0074】
さらに、
図11に示すように、変圧器を導入することによる積算的な省エネルギー額を示すことにより、顧客が新型の省エネルギー効果の高い変圧器を導入することのメリットを視覚的に把握できる。