(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、耐火性無機酸化物と、前記耐火性無機酸化物上に担持される触媒成分と、金属成分と、を含む排ガス浄化用酸化触媒であって、前記触媒成分が、白金、または白金およびパラジウムであり、前記金属成分が、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムからなる群より選択される1種以上である、ものを含む、排ガス浄化用酸化触媒である(以下、本発明の排ガス浄化用酸化触媒を、単に「酸化触媒」または「触媒」とも称する場合がある。)。
【0012】
すなわち、本発明の排ガス浄化用酸化触媒は、耐火性無機酸化物と、白金、または白金およびパラジウムと、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムからなる群より選択される1種以上の元素と、が必須に存在する。このうち、白金およびパラジウムには酸化活性があるため、排ガス中の窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)や、ガソリンまたは軽油や重油等のディーゼルエンジンの燃料の未燃焼成分である炭化水素(HC)を、無害な二酸化炭素、水、窒素などに変換して、排ガスを浄化する。
【0013】
本発明の排ガス浄化用酸化触媒は、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)を効率よく浄化でき、特に、ディーゼルエンジンからの排ガスの浄化に有効な排ガス浄化用酸化触媒として好適に用いられる。バリウムなどの第2族元素は、たとえば、白金、パラジウムなどの触媒成分と共に、NOx吸蔵触媒や三元触媒として用いられる。具体的には、NOx吸蔵触媒として、白金とバリウムを含む場合、バリウムはNOxの吸蔵が目的で用いられる。しかしながら、このとき、バリウムが白金のリーン側での酸化性能を低下させることが知られている。また、パラジウムを含む三元触媒に、リッチ側におけるNOxの還元性能を向上させるためにバリウムを用いることがある。しかしながら、これらはリーン側での酸化性能を向上させるために用いられるものではない。以上のように、第2族元素は、NOx吸蔵性能やNOxの還元性能を向上するが、リーン側での酸化性能を低下させることが知られている。本発明において、白金、または白金およびパラジウムと、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムからなる群より選択される1種以上の元素と、を含む触媒は、リーン側でHCおよびCOを、CO
2とH
2Oとに酸化する酸化触媒として、特に優れる。上記利点が達成できるメカニズムは不明であるが、以下のように推察される。なお、本発明は、下記推論によって何ら制限されるものではない。
【0014】
白金、または白金およびパラジウムを触媒成分として用いる場合、熱により、白金、または白金およびパラジウム(以下、「PtまたはPt/Pd」と称する。)の粒子が凝集し、該粒子が粗大化することで触媒性能が劣化する傾向があった。本発明において、第2族元素が、熱によるPtまたはPt/Pd粒子の凝集を抑制しているものと推測される。すなわち、PtまたはPt/Pd粒子は、第2族元素と強い相互作用を有するため、第2族元素の存在により、PtまたはPt/Pd粒子の凝集が抑制されていると考えられる。換言すれば、第2族元素が、PtまたはPt/Pd粒子を強く引き付けるため、PtまたはPt/Pd粒子が熱により移動して粒子同士で凝集してしまうのを防いでいると推測される。また、第2族元素の一次粒子も、PtまたはPt/Pd粒子の聞に介在しているため、第2族元素の一次粒子同士の接触が小さく、一次粒子の凝集の進行が十分に防止されると推測される。そのため、PtまたはPt/Pd粒子と、第2族元素の一次粒子と、がそれぞれ、他の粒子との粒成長の進行を抑制しあうために、上記効果が達成されると推測される。このような一次粒子の凝集抑制効果は、PtまたはPt/Pdと、第2族元素とを、共に耐火性無機酸化物に担持させることで、またはPtまたはPt/Pdを耐火性無機酸化物に担持させた後に、当該PtまたはPt/Pdを担持した耐火性無機酸化物に第2族元素を担持させることで、その効果がさらに発揮される。また、触媒成分として、PtおよびPdを併用する場合においては、PtとPdとは、同時に担持させることで、この効果がさらに発揮される。
【0015】
以上のように、PtまたはPt/Pd粒子と第2族元素の一次粒子とが、お互いに、凝集を抑制し、粒成長を抑制しているため、本発明の触媒は、高い耐久性を有すると考えられる。その結果、本発明の酸化触媒は、高温条件下で用いられても触媒活性が維持され、熱履歴が長くなっても、排ガスを効率よく浄化(酸化)することができる。すなわち、貴金属が、排ガス中の窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)やガソリンまたは軽油や重油等のディーゼルエンジンの燃料の未燃焼成分である炭化水素(HC)、特に一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)に効果的に作用して、より良好に排ガスを低温下でも浄化することができる。
【0016】
したがって、本発明の方法によって製造される酸化触媒は、耐久性が高く、低温下でも、排ガス、特に排ガス中の一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)を効率よく浄化できる。このため、本発明に係る酸化触媒は、高温条件下で用いられている場合でも、ディーゼルエンジンの排ガスの低温下での浄化に特に有効である。
【0017】
なお、本発明の酸化触媒において、第2族元素は、特定の含有量でのみ、その効果を有するものである。そのため、特定の含有量未満、または超える場合、その効果は作用しない。
【0018】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明の構成要件および実施の形態等について以下に詳細に説明するが、これらは本発明の実施態様の一例であり、これらの内容に限定されるものではない。
【0019】
<排ガス浄化用酸化触媒>
本発明の排ガス浄化用酸化触媒は、耐火性無機酸化物と、前記耐火性無機酸化物上に担持される触媒成分と、金属成分と、を含む排ガス浄化用酸化触媒であって、前記触媒成分が、白金、または白金およびパラジウムであり、前記金属成分が、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムからなる群より選択される1種以上である、ものを含む。また、本発明の排ガス浄化用酸化触媒は、前記触媒成分と前記金属成分とが、前記耐火性無機酸化物に共に担持されてなる形態、または前記耐火性無機酸化物に順に1回ずつ担持されてなる形態が好ましい。また、本発明の排ガス浄化用酸化触媒は、耐火性無機酸化物と、耐火性無機酸化物上に担持される触媒成分と、金属成分と、が三次元構造体に担持されてなる形態が好ましい。以下、本明細書において「触媒1L当たり」と記載したときは、当該耐火性無機酸化物、触媒成分、金属成分などを三次元構造体に担持した触媒の体積1Lに対することを示すものである。
【0020】
まず、以下に本発明の排ガス浄化用酸化触媒の構成成分について述べる。
【0021】
1.耐火性無機酸化物
本発明の排ガス浄化用酸化触媒は、耐火性無機酸化物を含む。耐火性無機酸化物は、触媒成分(白金、または白金およびパラジウム)を担持する担体として作用することが好ましい。また、耐火性無機酸化物は、そのままの形態で存在してもよい。また、耐火性無機酸化物が、耐火性無機酸化物上に担持される触媒成分と、金属成分と、共に三次元構造体に担持されてなる形態が好ましい。
【0022】
本発明において使用される耐火性無機酸化物は、通常内燃機関用の触媒に用いられるものであれば、特に制限されず何れのものであってもよい。具体的には、本発明に用いられる耐火性無機酸化物としては、通常、触媒担体として用いられるものであれば何れでもよく、たとえば、α−アルミナ、γ−アルミナ、δ−アルミナ、η−アルミナ、θ−アルミナなどの活性アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化珪素(シリカ)などの単独酸化物、アルミナ−チタニア、ジルコニア−アルミナ、チタニア−ジルコニア、ゼオライト、シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニア、シリカ−アルミナ、ランタン−アルミナなどの複合酸化物または微細混合物、およびこれらの混合物が挙げられる。白金、または白金およびパラジウムを担持させるという観点から、より好ましくは、アルミナ、ジルコニア−アルミナ、シリカ−アルミナ、ランタン−アルミナである。さらに好ましくは、ジルコニア−アルミナ、シリカ−アルミナ、ランタン−アルミナである。このとき、シリカ−アルミナを用いる場合、シリカ含有率が、特に制限されないが、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは1〜8質量%、さらに好ましくは2〜7質量%であるものが特に好ましく用いられる。ジルコニア−アルミナを用いる場合、ジルコニア含有率が、特に制限されないが、2〜15質量%であるものが特に好ましく用いられる。ランタン−アルミナを用いる場合、ランタン含有率が、特に制限されないが、0.1〜10質量%であるものが特に好ましく用いられる。
【0023】
上記耐火性無機酸化物は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0024】
耐火性無機酸化物の形態などは特に制限されないが、下記形態が好ましい。たとえば、耐火性無機酸化物のBET(Brunauer−Emmett−Teller)比表面積は、特に制限されないが、比表面積が大きいことが好ましい。好ましくは30〜350m
2/g、より好ましくは70〜250m
2/g、さらに好ましくは75〜200m
2/gである。耐火性無機酸化物粉末の細孔容積は、特に制限されないが、好ましくは0.2〜3mL/g、より好ましくは0.3〜2mL/g、さらに好ましくは0.5〜1.5mL/gである。また、耐火性無機酸化物粉末の平均粒径もまた、特に制限されないが、スラリーの均一性などを考慮すると、好ましくは0.5〜150μm、より好ましくは1〜100μm、さらに好ましくは2〜50μmである。なお、本明細書中、「平均粒径」は、レーザー回折法や動的光散乱法などの公知の方法によって測定される耐火性無機酸化物粉末の粒子径の平均値により測定することができる。
【0025】
耐火性無機酸化物の使用量(担持量)は、特に制限されない。耐火性無機酸化物の使用量(担持量)は、触媒(たとえば、三次元構造体)1リットル(L)当たり、好ましくは20〜300g、より好ましくは60〜250gである。20g未満であると、触媒成分(白金、または白金およびパラジウムの化合物)が十分に分散できず、触媒性能や耐久性などが十分でない可能性がある。逆に、300gを超えると、耐火性無機酸化物の添加に見合う効果が認められず、また、触媒成分の効果が十分発揮できず、活性が低下したり、圧力損失が大きくなったりする可能性がある。
【0026】
また、本発明の排ガス浄化用酸化触媒は、触媒(三次元構造体)に、さらに耐火性無機酸化物をそのままの形態で担持させるのが好ましい。なお、ここで担持される耐火性無機酸化物は、貴金属、鉄、銅、セリウムなどを担持していてもよい。以下、触媒(三次元構造体)にそのままの形態で担持される耐火性無機酸化物を、「耐火性無機酸化物(担持成分)」と称する。耐火性無機酸化物(担持成分)の担持時期は、特に制限されないが、触媒成分担持後が好ましく、金属成分担持後がより好ましい。
【0027】
耐火性無機酸化物(担持成分)としては、たとえば、上記耐火性無機酸化物で述べた単独酸化物、複合酸化物が用いられうる。これらのうち、好ましくは、ゼオライト、γ−アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、セリアなどの単独酸化物、シリカ−アルミナ、ランタン−アルミナ、ジルコニア−アルミナ、セリア−ジルコニアなどの複合酸化物または微細混合物、およびこれらの混合物が使用される。より好ましくはゼオライトであり、さらに好ましくはβゼオライトである。ゼオライトは、炭化水素の吸着材であり、触媒が活性化する前の低温の時に排出される重質な炭化水素(HC)を吸着することができる。このとき、βゼオライトを用いる場合、シリカとアルミナのモル比(シリカ/アルミナモル比)は、特に制限されないが、好ましくは15〜500、より好ましくは20〜250、さらに好ましくは25〜200であるものが特に好ましく用いられる。上記耐火性無機酸化物は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0028】
耐火性無機酸化物(担持成分)の形態などは特に制限されないが、下記形態が好ましい。たとえば、耐火性無機酸化物(担持成分)のBET(Brunauer−Emmett−Teller)比表面積は、特に制限されないが、比表面積が大きいことが好ましい。好ましくは100〜650m
2/g、より好ましくは150〜600m
2/g、さらに好ましくは200〜550m
2/gである。また、耐火性無機酸化物粉末(担持成分)の平均粒径もまた、特に制限されないが、スラリーの均一性などを考慮すると、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.2〜5μm、さらに好ましくは0.3〜3μmである。
【0029】
耐火性無機酸化物(担持成分)を含む場合、耐火性無機酸化物(担持成分)の使用量(担持量)は、触媒(たとえば、三次元構造体)1リットル(L)当たり、好ましくは1〜250g、より好ましくは10〜150g、さらに好ましくは15〜100gである。耐火性無機酸化物(担持成分)が当該範囲で含有される場合、重質な炭化水素の吸着剤としての性能とコストが見合う。なお、当該担持量は、上述した担体としての耐火性無機酸化物の担持量を含まず、別途、三次元構造体に担持させる耐火性無機酸化物の量である。
【0030】
2.触媒成分(白金、または白金およびパラジウム)
本発明の排ガス浄化用酸化触媒は、触媒成分として白金、または白金およびパラジウムを含む。以下、「白金、または白金およびパラジウム」を単に「触媒成分」と称し、「白金」を「Pt」と称し、パラジウムを「Pd」と称し、「白金、または白金およびパラジウム」を「PtまたはPt/Pd」と称する場合がある。
【0031】
本発明の白金、または白金およびパラジウムは、担体である上述の耐火性無機酸化物上に担持される。耐火性無機酸化物への担持方法については、下記触媒の調製方法で述べる。なお、本発明において、触媒成分として白金およびパラジウムを用いる場合は、耐火性無機酸化物上に共に担持される。本明細書中、「共に担持される」とは、少なくとも一部の白金およびパラジウムが同一担体上に担持されることを意味する。より具体的には、白金およびパラジウムを、同時に担持させることを意味する。
【0032】
耐火性無機酸化物への触媒成分(白金、または白金およびパラジウム)の担持量(使用量)は、特に制限されず、浄化(除去)する有害成分の濃度によって適宜選択できる。なお、本発明は、触媒成分として白金およびパラジウムを併用する場合の担持量は、白金およびパラジウムの合計量を意味する。具体的には、触媒成分(白金、または白金およびパラジウム)の担持量(使用量;貴金属(Pt、Pd)換算)は、耐火性無機酸化物に対して、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.3〜8質量%、さらに好ましくは0.5〜5質量%、特に好ましくは1〜3質量%の量で、用いることができる。このような範囲であれば、有害成分を十分除去(浄化)しうる。また、本発明において、触媒成分として白金およびパラジウムは、白金とパラジウムの質量比(それぞれ、Pt、Pd換算)が、1/0〜1/1の混合比で用いるのが好ましい。なお、白金とパラジウムの質量比が1/0とは、パラジウムを含有しないことを意味する。
【0033】
触媒成分が、白金およびパラジウムであるとき、白金/パラジウム(金属質量比)が、40/1〜1/1であるのが好ましい。すなわち、白金およびパラジウムを併用する場合は、白金とパラジウムの質量比(貴金属換算)が40/1〜1/1であるのが好ましく、20/1〜1/1がより好ましく、4/1〜1/1であるのがさらに好ましく、2/1〜1/1であるのが特に好ましい。本発明の排ガス浄化用酸化触媒は、触媒成分として白金のみを用いた場合でも、低温下での酸化性能は十分に優れる。また、触媒成分として白金およびパラジウムを併用する場合においても、低温下での酸化性能は十分に優れる。白金およびパラジウムを併用する利点としては、パラジウムは白金に比べ安価なことが挙げられる。本発明の排ガス浄化用酸化触媒は、触媒成分として白金の量を減らしても、パラジウムを添加することで性能が維持されうる。よって、コストの削減につながる。白金およびパラジウムを併用する場合、質量比が40/1〜1/1の範囲であるとコストに見合った効果が発揮されるため好ましい。
【0034】
また、白金およびパラジウムを併用する場合は、白金とパラジウムとが合金化したものが好ましい。ここで、合金化とは、電子顕微鏡下で、白金とパラジウムとが、同一粒子中に存在することを意味し、白金とパラジウムとが、ある規則性をもって均一に分散されている状態であればよい。合金化する方法としては、特に制限されないが、たとえば、白金を含む化合物とパラジウムを含む化合物とを、上記範囲になるように混合したものを用いればよい。すなわち、白金およびパラジウムを含む溶液に担体を含浸させることで、白金およびパラジウムが合金化されたものが担体に担持される、後述の実施例の方法で調製されたものが好ましい。
【0035】
本発明の触媒成分の耐火性無機酸化物上に担持される形態としては、触媒成分のみが耐火性無機酸化物上に担持される形態の他に、触媒成分が、金属成分と共に、耐火性無機酸化物上に担持される形態も好ましい。また、耐火性無機酸化物への触媒成分の担持回数は、1回であることが好ましい。なお、本明細書中、「共に担持される」とは、少なくとも一部の触媒成分と金属成分とが同一担体上に担持されることを意味する。より具体的には、触媒成分と金属成分とを、同時に担持させることを意味する。
【0036】
触媒(三次元構造体)への触媒成分(白金、または白金およびパラジウム)の担持量(使用量)は、特に制限されず、浄化(除去)する有害成分の濃度によって適宜選択できる。具体的には、触媒成分(白金、または白金およびパラジウム)の使用量(担持量;貴金属(Pt、Pd)換算)は、触媒(三次元構造体)1リットル(L)当たり、好ましくは0.1〜10g、より好ましくは0.3〜7gの量で、用いることができる。このような範囲であれば、有害成分を十分除去(浄化)しうる。なお、本発明は、触媒成分として白金およびパラジウムを併用する場合の担持量は、白金およびパラジウムの合計量を意味する。
【0037】
3.金属成分
本発明の排ガス浄化用酸化触媒は、金属成分として、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムからなる群より選択される1種以上の元素を用いるものである。好ましくは、当該金属成分は金属、または金属の炭酸塩もしくは酸化物である。また、本発明の酸化触媒において、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムからなる群より選択される1種以上の金属の炭酸塩または酸化物を含むのがさらに好ましい。
【0038】
以下、「マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムからなる群より選択される1種以上の元素」を、単に「金属成分」と称する場合もある。また、当該金属成分の代表例として、金属、または金属の炭酸塩もしくは酸化物に関して説明する。
【0039】
金属としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムからなる群より選択される1種以上の金属、または前記金属の炭酸塩もしくは酸化物が好ましい。炭酸塩としては、炭酸マグネシウム(MgCO
3)、炭酸カルシウム(CaCO
3)、炭酸ストロンチウム(SrCO
3)および炭酸バリウム(BaCO
3)、酸化物としては、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)および酸化バリウム(BaO)である。これらの金属のうち、好ましくは、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、炭酸バリウムが使用され、酸化ストロンチウム、炭酸バリウムがより好ましい。
【0040】
本発明の金属成分は、好ましい形態としては、担体である上述の耐火性無機酸化物上に担持される。本発明の排ガス浄化用酸化触媒のより好ましい形態としては、金属成分が、触媒成分と共に、耐火性無機酸化物上に担持される形態、または金属成分が、触媒成分が担持された耐火性無機酸化物上に担持される形態である。また、金属成分が、触媒成分が担持された耐火性無機酸化物上に担持される形態としては、金属成分の担持回数は、1回であることがさらに好ましい。耐火性無機酸化物への担持方法については、下記触媒の調製方法で述べる。
【0041】
耐火性無機酸化物への金属成分(マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムからなる群より選択される1種以上の元素、たとえば、前記元素の金属、または前記金属の炭酸塩もしくは酸化物)の担持量(使用量)は、特に制限されず、浄化(除去)する有害成分の濃度によって適宜選択できる。なお、本発明は、金属成分としての担持量は、金属成分の合計量を意味する。金属成分の担持量(使用量;金属(たとえば、Mg)換算)は、たとえば、耐火性無機酸化物に対して、好ましくは0.01〜30質量%、より好ましくは0.01〜20質量%の量で、用いることができる。具体的には、それぞれの金属成分について、以下の量が担持される。
【0042】
マグネシウム、炭酸マグネシウムまたは酸化マグネシウムが耐火性無機酸化物に担持される場合、マグネシウム担持量は、Mg換算で、耐火性無機酸化物に対して、好ましくは0.01〜3質量%、より好ましくは0.02〜2.5質量%、さらに好ましくは0.05〜2.3質量%、特に好ましくは0.1〜2質量%、もっとも好ましくは0.2〜1.8質量%である。
【0043】
カルシウム、炭酸カルシウムまたは酸化カルシウムが耐火性無機酸化物に担持される場合、カルシウム担持量は、Ca換算で、耐火性無機酸化物に対して、好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.02〜4.5質量%、さらに好ましくは0.05〜4質量%、特に好ましくは0.1〜3.5質量%、もっとも好ましくは0.2〜2.5質量%である。
【0044】
ストロンチウム、炭酸ストロンチウムまたは酸化ストロンチウムが耐火性無機酸化物に担持される場合、ストロンチウム担持量は、Sr換算で、耐火性無機酸化物に対して、好ましくは0.01〜12質量%、より好ましくは0.05〜10質量%、さらに好ましくは0.1〜8質量%、特に好ましくは0.2〜7質量%、もっとも好ましくは0.5〜5質量%である。
【0045】
バリウム、炭酸バリウムまたは酸化バリウムが耐火性無機酸化物に担持される場合、バリウム担持量は、Ba換算で、耐火性無機酸化物に対して、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.015質量%以上、特に好ましくは0.1質量%以上、もっとも好ましくは0.2質量%以上である。このとき、上限は好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
【0046】
それぞれの金属が、上述のような範囲であれば、有害成分を十分除去(浄化)でき、低温下での浄化に特に有効である。
【0047】
触媒(三次元構造体)への金属成分(金属、または前記金属の炭酸塩もしくは酸化物)の担持量(使用量)は、特に制限されず、浄化(除去)する有害成分の濃度によって適宜選択できる。本発明において、好ましい形態としては、金属成分の担持量(担持量;金属(たとえば、Mg)換算)は、触媒(三次元構造体)1リットル(L)当たり、好ましくは0.001〜0.12モル、より好ましくは0.005〜0.1モルの量で、用いることができるが、用いる金属によって量を適宜選択するのが好ましい。上記金属は、単独で使用されてもあるいは2種以上を組み合わせて使用されてもよい。また、2種以上を組み合わせる場合は合計量を意味する。具体的には、それぞれの金属成分について、以下の量が担持される。
【0048】
マグネシウム、炭酸マグネシウムまたは酸化マグネシウムが触媒(三次元構造体)に担持される場合、マグネシウム担持量は、Mg換算で、触媒(三次元構造体)1リットル(L)当たり、好ましくは0.001〜0.12モル、より好ましくは0.005〜0.1モル、さらに好ましくは0.01〜0.09モル、特に好ましくは0.015〜0.08モル、もっとも好ましくは0.02〜0.075モルである。
【0049】
カルシウム、炭酸カルシウムまたは酸化カルシウムが触媒(三次元構造体)に担持される場合、カルシウム担持量は、Ca換算で、触媒(三次元構造体)1リットル(L)当たり、好ましくは0.001〜0.12モル、より好ましくは0.005〜0.1モル、さらに好ましくは0.01〜0.09モル、特に好ましくは0.015〜0.08モル、もっとも好ましくは0.02〜0.055モルである。
【0050】
ストロンチウム、炭酸ストロンチウムまたは酸化ストロンチウムが触媒(三次元構造体)に担持される場合、ストロンチウム担持量は、Sr換算で、触媒(三次元構造体)1リットル(L)当たり、好ましくは0.001〜0.12モル、より好ましくは0.005〜0.1モル、さらに好ましくは0.01〜0.09モル、特に好ましくは0.015〜0.08モル、もっとも好ましくは0.02〜0.055モルである。
【0051】
バリウム、炭酸バリウムまたは酸化バリウムが触媒(三次元構造体)に担持される場合、バリウム担持量は、Ba換算で、触媒(三次元構造体)1リットル(L)当たり、好ましくは0.001モル以上、より好ましくは0.005モル以上、さらに好ましくは0.01モル以上、特に好ましくは0.015モル以上、もっとも好ましくは0.02モル以上である。このとき、上限は好ましくは0.2以下、より好ましくは0.15以下、さらに好ましくは0.12以下、特に好ましくは0.1以下である。
【0052】
それぞれの金属が、上述のような範囲であれば、有害成分を十分除去(浄化)でき、低温下での浄化に特に有効である。
【0053】
4.その他
本発明の排ガス浄化用酸化触媒は、上記耐火性無機酸化物、触媒成分(白金、または白金およびパラジウム)、ならびに金属成分(マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムからなる群より選択される1種以上の元素、たとえば、前記元素の金属、または金属の炭酸塩もしくは酸化物)に加えて、他の成分を添加してもよい。このような添加成分としては特に制限されないが、たとえば、アルカリ金属、希土類元素およびマンガン;ならびにこれらの酸化物が挙げられる。ここで用いられるアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムが挙げられる。希土類元素としては、たとえば、セリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウムなどが挙げられる。上記添加成分は、金属そのままの形態であってもあるいは酸化物の形態であってもよい。また、上記添加成分は、そのままの形態で使用されてもよいが、耐火性無機酸化物上に担持されることが好ましい。この際、ランタン、セリウム、ネオジムなどの希土類元素およびその酸化物を添加することによって、耐熱性が向上できる。また、アルカリ金属、希土類元素は、窒素酸化物(NOx)を吸着することができる。ここで、上記添加成分は、単独であってもあるいは2種以上の混合物であってもよい。また、添加成分の担持量(使用量)は、特に制限されない。耐火性無機酸化物への添加成分の担持量(使用量)は、特に制限されず、浄化(除去)する有害成分の濃度によって適宜選択できる。なお、本発明は、添加成分としての担持量は、添加成分の合計量を意味する。添加成分の担持量(使用量;酸化物換算)は、たとえば、耐火性無機酸化物に対して、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.3〜5質量%の量で、用いることができる。また、添加成分の担持量(使用量;酸化物換算)は、触媒(三次元構造体)1リットル(L)当たり、好ましくは1〜100g、より好ましくは1〜50gの量で、用いることができる。
【0054】
<排ガス浄化用酸化触媒の製造方法>
本発明の排ガス浄化用酸化触媒を調製する方法としては、特に制限されないが、たとえば、つぎの方法がある。
【0055】
本発明の担体(耐火性無機酸化物)は、公知の方法で得られたものが用いられ、市販品を用いることができる。
【0056】
担体(耐火性無機酸化物)への触媒成分と金属成分との担持方法としては、特に制限されないが、触媒成分と金属成分とを、共に(同時に)担持させても、別に担持させてもよい。触媒成分と金属成分とを別に担持させる場合、担持回数は、1回ずつ担持させても、複数回ずつ担持させてもよい。また、触媒成分と金属成分とを担持する順序も特に制限されず、(a)触媒成分、金属成分の順、(b)金属成分、触媒成分の順、(c)触媒成分、金属成分、触媒成分の順、(d)触媒成分、触媒成分、金属成分の順、(e)触媒成分、金属成分、金属成分の順、(f)金属成分、金属成分、触媒成分の順等、が挙げられる。これらのうち、共に担持させる方法、(a)触媒成分、金属成分の順に1回ずつ担持させる方法、(c)触媒成分、金属成分、触媒成分の順に担持させる方法、が好ましく、共に担持させる方法、(a)触媒成分、金属成分の順に1回ずつ担持させる方法、がより好ましい。
【0057】
また、本発明の排ガス浄化用酸化触媒の好ましい形態は、触媒成分と金属成分とが担持された耐火性無機酸化物を、さらに三次元構造体に担持する。
【0058】
担体(耐火性無機酸化物)に、触媒成分(白金、または白金およびパラジウム)、および金属成分(マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムからなる群より選択される1種以上の元素、たとえば、前記元素の金属、または金属の炭酸塩もしくは酸化物)を担持させる方法としては、触媒成分(PtまたはPt/Pd)の化合物(原料)の水溶液と、金属成分(マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムからなる群より選択される1種以上の元素、たとえば、前記元素の金属、または金属の炭酸塩もしくは酸化物)の化合物(原料)の水溶液と、を用いるのが好ましい。具体的には、以下に述べる方法が挙げられる。
【0059】
(1)触媒成分(PtまたはPt/Pd)の化合物(原料)の水溶液に、担体(耐火性無機酸化物)を加え、十分に混合した後、乾燥し、必要により焼成し、触媒成分担持担体(以下、「PtまたはPt/Pd担持担体」とも称する。)の粉体を得る。当該PtまたはPt/Pd担持担体の粉体に、金属成分の化合物(原料)の水溶液を加え、十分に混合した後、乾燥し、必要により焼成し、触媒成分および金属成分担持担体(以下、「(PtまたはPt/Pd)M担持担体」とも称する。)の粉体を得る。さらに、水に、当該(PtまたはPt/Pd)M担持担体の粉体と、必要により耐火性無機酸化物(担持成分)とを混合して、これを湿式粉砕して水性スラリーとし、該水性スラリーを三次元構造体に被覆し、ついで乾燥し、必要により焼成し完成触媒とする方法、
(2)触媒成分(PtまたはPt/Pd)の化合物(原料)の水溶液、および金属成分の化合物(原料)の水溶液の混合溶液に、担体(耐火性無機酸化物)を加え、十分に混合した後、乾燥し、必要により焼成し、触媒成分および金属成分担持担体の粉体(以下、「(PtまたはPt/Pd)/M担持担体」とも称する。)を得る。さらに、水に、当該(PtまたはPt/Pd)/M担持担体と、必要により耐火性無機酸化物(担持成分)とを混合して、これを湿式粉砕して水性スラリーとし、該水性スラリーを三次元構造体に被覆し、ついで乾燥し、必要により焼成し完成触媒とする方法、
(3)触媒成分(Pt、PdまたはPt/Pd)の化合物(原料)の水溶液に、担体(耐火性無機酸化物)を加え、十分に混合した後、乾燥し、必要により焼成し、触媒成分担持担体(以下、「PtまたはPd担持担体」とも称する。)の粉体を得る。当該PtまたはPd担持担体の粉体に、金属成分の化合物(原料)の水溶液を加え、十分に混合した後、乾燥し、必要により焼成し、触媒成分および金属成分担持担体(以下、「(PtまたはPd)M担持担体」とも称する。)の粉体を得る。さらに、水に、当該(PtまたはPd)M担持担体の粉体と、触媒成分(Pt、PdまたはPt/Pd)の化合物(原料)の水溶液と、必要により耐火性無機酸化物(担持成分)とを混合して、これを湿式粉砕して水性スラリーとし、該水性スラリーを三次元構造体に被覆し、ついで乾燥し、必要により焼成し完成触媒とする方法、
などがある。
【0060】
なお、触媒成分(PtまたはPt/Pd)の化合物(原料)の水溶液とは、触媒成分として白金のみの場合はPtの化合物(原料)を含有する水溶液のことを意味する。また、触媒成分として白金およびパラジウムを併用する場合は、Ptの化合物(原料)とPdの化合物(原料)を含有する水溶液のことを意味し、このとき当該水溶液は、Ptの化合物(原料)の水溶液とPdの化合物(原料)の水溶液との混合溶液であってもよいし、Ptの化合物(原料)とPdの化合物(原料)を同じ溶液に溶解させたものであってもよい。また、(3)で用いられる触媒成分(Pt、PdまたはPt/Pd)の化合物(原料)の水溶液とは、Pt、PdまたはPt/Pdの化合物(原料)の水溶液のうち、触媒成分として最終的に得られる触媒に含有される触媒成分がPtまたはPt/Pdとなるように、各担持段階で用いる水溶液を選択すればよい。
【0061】
本発明では、上述の触媒成分と金属成分とを担体に担持させる方法において、上述のような効果、すなわち、金属成分が触媒成分の凝集を抑制するためには、触媒成分を担体に担持させた後に焼成して粉体とし、さらに該担体に金属成分を担持させて焼成する(1)の方法、または触媒成分と金属成分とを共に担持させて焼成する(2)の方法で製造することが好ましい。
【0062】
すなわち、本発明の排ガス浄化用酸化触媒の製造方法は、耐火性無機酸化物に、触媒成分の原料である水溶性貴金属塩および金属成分の原料である水溶性金属塩を含む溶液を添加して混合し、触媒成分および金属成分担持担体を得る工程を含む、または耐火性無機酸化物に、触媒成分の原料である水溶性貴金属塩を含む溶液を添加して混合し、触媒成分担持担体を得る工程と、前記触媒成分担持担体に、金属成分の原料である水溶性金属塩を含む溶液を添加して混合し、触媒成分および金属成分担持担体を得る工程と、をそれぞれ1工程含む。また、本発明の排ガス浄化用酸化触媒の製造方法は、前記触媒成分および金属成分担持担体、ならびに耐火性無機酸化物(担持成分)を含むスラリーを調製し、前記スラリーを三次元構造体にコートする工程をさらに含むのがより好ましい。
【0063】
上述の調製方法において使用される触媒成分の化合物としては、特に制限されず、白金、または白金およびパラジウムを、そのままの形態で添加して、あるいは他の形態で添加して、その後所望の形態(Pt、またはPtおよびPdの形態)に変換してもよい。本発明では、白金の化合物、または白金の化合物およびパラジウムの化合物を水性媒体に添加するため、白金、または白金およびパラジウムは、他の形態、特に水溶性貴金属塩の形態で添加されることが好ましい。以下、触媒成分(白金、または白金およびパラジウム)の化合物を「水溶性貴金属塩」とも称する。ここで、水溶性貴金属塩は、特に制限されることなく、排ガスの浄化の分野で用いられている原料を用いることができる。具体的には、たとえば、白金の場合には、たとえば、白金;臭化白金、塩化白金などのハロゲン化物;白金の、ジニトロジアンミン塩、ヘキサアンミン塩、ヘキサヒドロキソ酸塩、テトラアンミン塩、テトラニトロ酸塩などの、無機塩類;酢酸塩などのカルボン酸塩;および水酸化物、アルコキサイド、酸化物などが挙げられる。好ましくは、ジニトロジアンミン塩、ヘキサアンミン塩、ヘキサヒドロキソ酸塩、テトラアンミン塩、が挙げられ、ジニトロジアンミン塩(ジニトロジアンミン白金)、テトラアンミン塩、がより好ましい。また、パラジウムの場合には、パラジウム;塩化パラジウムなどのハロゲン化物;パラジウムの、硝酸塩、硫酸塩、ジニトロジアンミン塩、ヘキサアンミン塩、テトラアンミン塩、ヘキサシアノ酸塩などの、無機塩類;酢酸塩などのカルボン酸塩;および水酸化物、アルコキサイド、酸化物などが挙げられる。好ましくは、硝酸塩、ヘキサアンミン塩、テトラアンミン塩、が挙げられ、硝酸塩(硝酸パラジウム)、テトラアンミン塩がより好ましい。なお、本発明では、上記白金およびパラジウムの化合物(白金およびパラジウム源)は、それぞれ、単独の化合物を用いても、2種以上の混合物を用いてもよい。
【0064】
白金、または白金およびパラジウムの化合物の使用量(担持量)は、特に制限されず、浄化(除去)する有害成分の濃度によって適宜選択できる。具体的には、上記白金、または白金およびパラジウムの使用量(担持量;貴金属換算)となるような量である。
【0065】
上述の調製方法において使用される金属成分(金属、または金属の炭酸塩もしくは酸化物)の化合物(原料)としては、特に制限されず、金属、または金属の炭酸塩もしくは酸化物を、そのままの形態で添加して、あるいは他の形態で添加して、その後所望の形態(たとえば、金属、または金属の炭酸塩もしくは酸化物の形態)に変換してもよい。本発明では、金属成分(金属、または金属の炭酸塩もしくは酸化物)の化合物を水性媒体に添加するため、金属、または金属の炭酸塩もしくは酸化物は、他の形態、特に水溶性金属塩の形態で添加されることが好ましい。以下、金属成分(金属、または金属の炭酸塩もしくは酸化物)の化合物を「水溶性金属塩」とも称する。ここで、水溶性金属塩は、特に制限されることなく、排ガスの浄化の分野で用いられている原料を用いることができる。具体的には、たとえば、マグネシウムの場合には、マグネシウム;塩化マグネシウムなどのハロゲン化物;マグネシウムの、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩などの、無機塩類;酢酸塩などのカルボン酸塩;および水酸化物、アルコキサイド、酸化物などが挙げられる。好ましくは硝酸塩、酢酸塩が挙げられ、硝酸塩(硝酸マグネシウム)がより好ましい。また、カルシウムの場合には、カルシウム;塩化カルシウムなどのハロゲン化物;カルシウムの、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩などの、無機塩類;酢酸塩などのカルボン酸塩;および水酸化物、アルコキサイド、酸化物などが挙げられる。好ましくは硝酸塩、酢酸塩が挙げられ、硝酸塩(硝酸カルシウム)がより好ましい。また、ストロンチウムの場合には、ストロンチウム;塩化ストロンチウムなどのハロゲン化物;ストロンチウムの、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩などの、無機塩類;酢酸塩などのカルボン酸塩;および水酸化物、アルコキサイド、酸化物などが挙げられる。好ましくは硝酸塩、酢酸塩が挙げられ、硝酸塩(硝酸ストロンチウム)がより好ましい。また、バリウムの場合には、バリウム;塩化バリウムなどのハロゲン化物;バリウムの、硝酸塩、炭酸塩などの、無機塩類;酢酸塩などのカルボン酸塩;および水酸化物、アルコキサイド、酸化物などが挙げられる。好ましくは硝酸塩、酢酸塩が挙げられ、硝酸塩(硝酸バリウム)がより好ましい。なお、本発明では、上記金属成分の化合物(金属成分源)は、それぞれ、単独の化合物を用いても、2種以上の混合物を用いてもよい。
【0066】
金属成分の化合物の使用量(担持量)は、特に制限されず、浄化(除去)する有害成分の濃度によって適宜選択できる。具体的には、上記金属成分の使用量(担持量;金属換算)となるような量である。
【0067】
上述の水溶性貴金属塩、水溶性金属塩を均一に溶解する溶媒としては、水、アルコールおよびこれらの混合物が使用できる。アルコールとしては、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールが用いられうる。溶媒中の水溶性金属塩の濃度(含有量)は、特に制限されず、触媒成分や金属成分を担持させる量によって適宜選択できる。たとえば、溶液中の水溶性貴金属塩または水溶性金属塩の含有量が、0.01〜80質量%であるのが好ましい。
【0068】
担体に、触媒成分を担持させる好ましい形態として、以下の方法が挙げられる。上述した水溶性貴金属塩の水溶液に担体(耐火性無機酸化物)を加え、十分に混合した後、80〜200℃で1〜20時間乾燥させて、さらに、得られたものを、大気中、100〜1200℃、好ましくは300〜1100℃、より好ましくは400〜1000℃で、1〜20時間、焼成を行い、PtまたはPt/Pd担持担体の粉体を得る。また、大気中での焼成の前に、窒素ガスなどの不活性ガス気流中で仮焼してもよい。
【0069】
また、PtまたはPt/Pd担持担体に、金属成分を担持させる好ましい形態として、以下の方法が挙げられる。PtまたはPt/Pd担持担体の粉体に、水溶性金属塩の水溶液に加え、十分に混合した後、80〜200℃で1〜20時間乾燥させる。さらに、得られたものを、大気中、100〜1200℃、好ましくは300〜1100℃、より好ましくは400〜1000℃で、1〜20時間、焼成を行い、(PtまたはPt/Pd)M担持担体の粉体を得る(Mは、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、またはバリウムを表す)。
【0070】
また、本発明において、好ましい形態では、触媒成分および金属成分を担持した耐火性無機酸化物((PtまたはPt/Pd)M担持担体)と、耐火性無機酸化物(担持成分)とを三次元構造体上に担持させる。
【0071】
上述の方法で得られた(PtまたはPt/Pd)M担持担体と、耐火性無機酸化物(担持成分)とを三次元構造体上に担持させる方法としては、特に制限されないが、湿式粉砕により担持させるのが好ましい。湿式粉砕は、通常公知の方法によって行われ、特に制限されないが、ボールミルなどが好ましく使用される。または、アトライター、ホモジナイザ、超音波分散装置、サンドミル、ジェットミル、ビーズミルなどの従来公知の手段を用いることができる。ここで、湿式粉砕条件は、特に制限されない。たとえば、湿式粉砕時の温度は、通常、5〜40℃、好ましくは室温(25℃)程度である。また、湿式粉砕時間は、通常、10分〜20時間である。なお、湿式粉砕時間は、使用する湿式粉砕装置によって異なり、たとえば、アトライター等の粉砕効率の高い装置を使用した場合には、10〜60分程度であり、ボールミル等を使用した場合には、5〜20時間程度である。なお、湿式粉砕の際に用いられる溶媒としては、水、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどのアルコールが使用でき、特に水が好ましい。湿式粉砕の際の溶媒中の担持成分((PtまたはPt/Pd)M担持担体と耐火性無機酸化物(担持成分))の濃度(含有量)は、特に制限されず、(PtまたはPt/Pd)M担持担体と耐火性無機酸化物(担持成分)を担持させる量によって適宜選択できる。たとえば、溶液中の(PtまたはPt/Pd)M担持担体と耐火性無機酸化物(担持成分)の含有量の合計が、0.5〜60質量%であるのが好ましい。
【0072】
上述の湿式粉砕で得られた水性スラリーを三次元構造体に被覆させる方法としては、該水性スラリーに三次元構造体を浸漬し、余剰のスラリーを除き、焼成することにより、触媒成分が三次元構造体に担持された排ガス浄化用酸化触媒が製造されうる。水性スラリーに三次元構造体を投入・浸漬する際の、浸漬条件は、水性スラリー中の担体((Pt/Pd)M担持担体)と耐火性無機酸化物とが三次元構造体と十分均一に接触して、次の乾燥・焼成工程でこれらの成分が十分、三次元構造体に担持される条件であれば特に制限されない。
【0073】
このとき、三次元構造体に担持させる耐火性無機酸化物(担持成分)としては、通常内燃機関用の触媒に用いられるものであれば、特に制限されず何れのものであってもよいが、上述したように、炭化水素の吸着材であるゼオライトが好ましい。耐火性無機酸化物(担持成分)としては、公知の方法で得られたものが用いられ、市販品を用いることができ、具体的には、上述した耐火性無機酸化物がそのままの形態で添加される。耐火性無機酸化物(担持成分)の使用量(担持量)は、特に制限されず、浄化(除去)する有害成分の濃度によって適宜選択できる。具体的には、上記耐火性無機酸化物(担持成分)の使用量となるような量である。
【0074】
ここで、三次元構造体は、特に制限されず、一般的に排気ガス浄化用触媒の調製に使用されるのと同様のものが使用できる。たとえば、三次元構造体としては、ハニカム担体などの耐熱性担体が挙げられるが、一体成型のハニカム構造体(ハニカム担体)が好ましく、たとえば、モノリスハニカム担体、プラグハニカム担体などが挙げられる。
【0075】
モノリス担体としては、通常、セラミックハニカム担体と称されるものであればよく、特に、炭化ケイ素(SiC)、コージェライト、ムライト、ペタライト、アルミナ(α−アルミナ)、シリカ、ジルコニア、チタニア、リン酸チタン、アルミニウムチタネー卜、スポジュメン、アルミノシリケー卜、マグネシウムシリケー卜、ゼオライトなどを材料とするハニカム担体が好ましく、なかでもコージェライト質のものが特に好ましい。その他、ステンレス鋼、Fe−Cr−AI合金などの酸化抵抗性の耐熱性金属を用いて一体構造体とした、いわゆるメタルハニ力ム担体も用いられる。また、三次元構造体は、ガスがそのまま通過しうるフロースルー型(オープンフロー型)、排ガス中のススをこすことができるフィルター型、プラグ型など、いずれのタイプを使用してもよい。また、三次元一体構造体ではなくても、ペレッ卜担体等も挙げることができる。ここで、プラグ型のハニカムとは、多数の通孔を有しかつガスの導入面に市松状に開孔と閉孔を有し、通孔の一方が開孔であれば同一の通孔の他方が閉孔となっているハニカムである。当該プラグハニカム担体には各孔間の壁に微細な孔があり、排ガスは開孔からハニカムに入り、当該微細な孔を通して他の孔を通りハニカム外に出るものである。
【0076】
これらのハニカム担体は、押出成型法やシート状素子を巻き固める方法などで製造される。そのガス通過口(セル形状)の形は、六角形、四角形、三角形またはコルゲーション形のいずれであってもよい。セル密度(セル数/単位断面積)は100〜1200セル/平方インチであれば十分に使用可能であり、好ましくは200〜900セル/平方インチ、より好ましくは300〜600セル/平方インチである。
【0077】
(Pt/Pd)M担持担体と耐火性無機酸化物(担持成分)とを三次元構造体に担持させる好ましい形態として、以下の方法が挙げられる。上述のようにして得られた(Pt/Pd)M担持担体の粉体に、耐火性無機酸化物(担持成分)を混合して、これを湿式粉砕して水性スラリーとし、該水性スラリーを三次元構造体にウォッシュコートして被覆し、ついで0〜200℃で1分〜3時間乾燥させる。さらに、得られたものを、大気中、100〜1200℃、好ましくは300〜1100℃、より好ましくは400〜1000℃で、1〜20時間、焼成を行い、さらに、必要に応じて、上記焼成工程中または上記焼成工程後に、三次元構造体を還元ガスの気流中(たとえば、水素5%、窒素95%の気流下)で、200〜800℃、好ましく300〜700℃の温度で1〜10時間、好ましくは2〜5時間を用いて処理するのが好ましい。ここで、還元ガスとして水素ガス、一酸化炭素ガス等を用いることができ、水素ガスが好ましい。還元ガスは、上記ガスを単独で使用してもあるいは上記2種のガスを混合して使用してもあるいは上記1種もしくは2種のガスを他のガスと混合して使用してもよい。上記ガスを他のガスと混合して使用することが好ましく、水素ガスを窒素ガスで希釈して使用することがより好ましい。この場合の還元ガスの添加量は、乾燥した三次元構造体を所望の程度に処理できる量であれば特に制限されないが、三次元構造体の処理雰囲気が、1〜10体積%の還元ガスを含むことが好ましく、3〜5体積%の還元ガスを含むことがより好ましい。また、乾燥した三次元構造体の還元ガスによる処理条件は、特に制限されない。たとえば、乾燥した三次元構造体を、上記した還元ガスを10〜100ml/分で流通しながら、150〜600℃で1〜10時間、処理することが好ましい。
【0078】
本発明では、上述の触媒成分と金属成分とを担体に担持させる方法において、(2)の方法で製造する場合でも、上記(1)の製造方法で述べた原料、方法、条件を適宜採用することができる。すなわち、触媒成分(PtまたはPt/Pd)の化合物(原料)の水溶液と、金属成分の化合物(原料)の水溶液とを混合して、該混合溶液に、担体(耐火性無機酸化物)を加え、十分に混合した後、乾燥し、必要により焼成し、触媒成分および金属成分担持担体((PtまたはPt/Pd)/M担持担体)の粉体を得ることができる。このときの触媒成分の化合物の水溶液、金属成分の化合物の水溶液は上記述べたものを用いることができ、乾燥、焼成も上記述べた方法を用いることができる。また、さらに得られた触媒成分および金属成分担持担体((PtまたはPt/Pd)/M担持担体)の粉体に、耐火性無機酸化物(担持成分)を混合して、これを湿式粉砕して水性スラリーとし、該水性スラリーを三次元構造体に被覆し、ついで乾燥し、必要により焼成し完成触媒とする方法についても、上述した(1)の方法が適用できる。また、(3)の方法で製造する場合でも、同様に、上記(1)の製造方法で述べた原料、方法、条件を適宜採用することができる。
【0079】
上述したように、本発明の排ガス浄化用酸化触媒は、耐久性が高く、排ガス中の窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)やガソリンまたは軽油や重油等のディーゼルエンジンの燃料の未燃焼成分である炭化水素(HC)、特に一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)の、低温下での浄化能に優れる。したがって、本発明の排ガス浄化用酸化触媒の排ガスの浄化能は、たとえば、一酸化炭素(CO)については、50%CO転化率を示す温度が、好ましくは200℃以下、より好ましくは195℃以下、さらに好ましくは190℃、特に好ましくは180℃以下である。なお、50%CO転化率の下限温度は、低いほど好ましいが、触媒性能を一定に維持するために、好ましくは140℃以上である。また、炭化水素(HC)については、50%HC転化率を示す温度が、好ましくは200℃以下、より好ましくは195℃以下、さらに好ましくは190℃、特に好ましくは180℃以下である。なお、50%HC転化率の下限温度は、低いほど好ましいが、触媒性能を一定に維持するために、好ましくは140℃以上である。なお、上述の50%CO転化率および50%HC転化率の測定は、後述の実施例の方法に従ったものである。
【0080】
ゆえに、本発明の方法によって製造される排ガス浄化用酸化触媒は、内燃機関の排ガス(特に、HC、CO)の浄化に好適に使用されうる。ゆえに、本発明に係る触媒は、内燃機関の排気ガス中に還元性ガスを含む排気ガスを処理するのに好適に使用でき、特にガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関からの加速時などの還元性の高い排気ガス中に含まれる炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)の浄化に優れた効果を奏する。
【0081】
したがって、本発明は、本発明に係る排ガス浄化用酸化触媒に対し、排ガスを接触させることを有する、排ガスの浄化方法をも提供する。
【0082】
本発明による触媒は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関、特にディーゼルエンジンの排気ガスの浄化に使用され、そのときの排ガスおよび触媒は、空間速度が好ましくは1,000〜500,000hr
-1、より好ましくは5,000〜150,000hr
-1、ガス線速が好ましくは0.1〜8.5m/秒、より好ましくは0.2〜4.2m/秒で接触させることが好ましい。
【0083】
また、本発明による触媒は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関、特にディーゼルエンジンの排気ガスの浄化に使用され、リーン雰囲気下において、たとえば、排ガス中にCOが、好ましくは10〜50,000質量ppm、より好ましくは50〜15,000質量ppm、さらに好ましくは50〜5,000質量ppm含まれている場合に、好適にCOを酸化することができる。また、リーン雰囲気下において、たとえば、排ガス中にHCが、好ましくは10〜50,000質量ppm、より好ましくは10〜10,000質量ppm、さらに好ましくは10〜5,000質量ppm含まれている場合(炭素(C1)換算)に、好適にHCを酸化することができる。
【0084】
また、本発明に係る触媒の前段(流入側)または後段(流出側)に同様の、または異なる排気ガス浄化触媒を配置してもよい。
【実施例】
【0085】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。なお、下記の製造例において、特に断らない限り、「%」および「ppm」は質量基準である。
【0086】
〔実施例1〕
白金1.333gに相当する量のジニトロジアンミン白金水溶液11.80gおよびパラジウム0.667gに相当する硝酸パラジウム溶液4.70gの混合溶液を、シリカ−アルミナ(BET比表面積150m
2/g、細孔容積0.8mL/g、シリカ含有率5質量%、平均粒子径6μm)100.0gに含浸させた。その後、白金およびパラジウム溶液を含浸させたシリカ−アルミナ粉体を、120℃で8時間乾燥させ、さらに得られた粉体を、500℃で1時間焼成し、Pt/Pd担持シリカ−アルミナ粉体を得た。このPt/Pd担持シリカ−アルミナ粉体に、さらに硝酸マグネシウム水溶液(硝酸マグネシウム六水和物5.24gを水95gに溶解)を含浸させた後120℃で8時間乾燥させた粉体を、500℃で1時間焼成し、(Pt/Pd)Mg担持シリカ−アルミナ粉体得た。この際、マグネシウムは、酸化マグネシウムの形態で存在する。水183gに、得られた(Pt/Pd)Mg担持シリカ−アルミナ粉体、βゼオライト20g(シリカ/アルミナモル比=35、表面積543m
2/g、平均粒子径0.6μm)を混合して湿式粉砕することで水性スラリーを得た。このスラリーに、直径24mm、長さ67mmの円柱状に切り出した(容量0.0303L)のコージェライト担体(商品名「Celcor」コーニング社製、セルの数:断面積1平方インチ当たりセル400個)を浸漬してウォッシュコートし、150℃で5分乾燥後、500℃で1時間の空気焼成を行い、さらに水素5体積%窒素95体積%気流下で、500℃、3時間処理して、担体の容量1L当たり白金1.333g、パラジウム0.667g、マグネシウム0.497g、シリカ−アルミナ100g、βゼオライト20gの成分がコートされた触媒aを得た。
【0087】
同様にしてマグネシウムの添加量の異なる触媒b、cを作製した。なお、触媒b、cの組成は、マグネシウムの量以外は、触媒aと同じであり、マグネシウム量は表1に記載した。
【0088】
〔実施例2〕
白金1.333gに相当する量のジニトロジアンミン白金水溶液11.80gおよびパラジウム0.667gに相当する硝酸パラジウム溶液4.70gの混合溶液を、シリカ−アルミナ(BET比表面積150m
2/g、細孔容積0.8mL/g、シリカ含有率5質量%、平均粒子径6μm)100.0gに含浸させた。その後、白金およびパラジウム溶液を含浸させたシリカ−アルミナ粉体を、120℃で8時間乾燥させ、さらに得られた粉体を、500℃で1時間焼成し、Pt/Pd担持シリカ−アルミナ粉体を得た。このPt/Pd担持シリカ−アルミナ粉体に、硝酸カルシウム水溶液(硝酸カルシウム四水和物4.83gを水95gに溶解)を含浸させた後120℃で8時間乾燥させた粉体を、500℃で1時間焼成し、(Pt/Pd)Ca担持シリカ−アルミナ粉体を得た。この際、カルシウムは、酸化カルシウムの形態で存在する。水183gに、得られた(Pt/Pd)Ca担持シリカ−アルミナ粉体、βゼオライト20g(シリカ/アルミナモル比=35、表面積543m
2/g、平均粒子径0.6μm)を混合して湿式粉砕することで水性スラリーを得た。このスラリーに、直径24mm、長さ67mmの円柱状に切り出した(容量0.0303L)のコージェライト担体(商品名「Celcor」コーニング社製、セルの数:断面積1平方インチ当たりセル400個)を浸漬してウォッシュコートし、150℃で5分乾燥後、500℃で1時間の空気焼成を行い、さらに水素5体積%窒素95体積%気流下で、500℃、3時間処理して、担体の容量1L当たり白金1.333g、パラジウム0.667g、カルシウム0.820g、シリカ−アルミナ100g、βゼオライト20gの成分がコートされた触媒dを得た。
【0089】
同様にしてカルシウムの添加量の異なる触媒e、f、gを作製した。なお、触媒e、f、gの組成は、カルシウムの量以外は、触媒dと同じであり、カルシウム量は表2に記載した。
【0090】
〔実施例3〕
白金1.333gに相当する量のジニトロジアンミン白金水溶液11.80gおよびパラジウム0.667gに相当する硝酸パラジウム溶液4.70gの混合溶液を、シリカ−アルミナ(BET比表面積150m
2/g、細孔容積0.8mL/g、シリカ含有率5質量%、平均粒子径6μm)100.0gに含浸させた。その後、白金およびパラジウム溶液を含浸させたシリカ−アルミナ粉体を、120℃で8時間乾燥させ、さらに得られた粉体を、500℃で1時間焼成し、Pt/Pd担持シリカ−アルミナ粉体を得た。このPt/Pd担持シリカ−アルミナ粉体に、硝酸ストロンチウム水溶液(硝酸ストロンチウム4.32gを水95gに溶解)を含浸させた後120℃で8時間乾燥させた粉体を、500℃で1時間焼成し、(Pt/Pd)Sr担持シリカ−アルミナ粉体を得た。この際、ストロンチウムは、酸化ストロンチウムの形態で存在する。水183gに、得られた(Pt/Pd)Sr担持シリカ−アルミナ粉体、βゼオライト20g(シリカ/アルミナモル比=35、表面積543m
2/g、平均粒子径0.6μm)を混合して湿式粉砕することで水性スラリーを得た。このスラリーに、直径24mm、長さ67mmの円柱状に切り出した(容量0.0303L)のコージェライト担体(商品名「Celcor」コーニング社製、セルの数:断面積1平方インチ当たりセル400個)を浸漬してウォッシュコートし、150℃で5分乾燥後、500℃で1時間の空気焼成を行い、さらに水素5体積%窒素95体積%気流下で、500℃、3時間処理して、担体の容量1L当たり白金1.33g、パラジウム0.667g、ストロンチウム1.79g、シリカ−アルミナ100g、βゼオライト20gの成分がコートされた触媒hを得た。
【0091】
同様にしてストロンチウムの添加量の異なる触媒i、j、kを作製した。なお、触媒i、j、kの組成は、ストロンチウムの量以外は、触媒hと同じであり、ストロンチウム量は表3に記載した。
【0092】
〔実施例4〕
白金1.333gに相当する量のジニトロジアンミン白金水溶液11.80gおよびパラジウム0.667gに相当する硝酸パラジウム溶液4.70gの混合溶液を、シリカ−アルミナ(BET比表面積150m
2/g、細孔容積0.8mL/g、シリカ含有率5質量%、平均粒子径6μm)100.0gに含浸させた。その後、白金およびパラジウム溶液を含浸させたシリカ−アルミナ粉体を、120℃で8時間乾燥させ、さらに得られた粉体を、500℃で1時間焼成し、Pt/Pd担持シリカ−アルミナ粉体を得た。このPt/Pd担持シリカ−アルミナ粉体に硝酸バリウム水溶液(硝酸バリウム3.56gを水95gに溶解)を含浸させた後120℃で8時間乾燥させた粉体を、500℃で1時間焼成し、(Pt/Pd)Ba担持シリカ―アルミナ粉体を得た。この際、バリウムは、炭酸バリウムまたは酸化バリウムの形態で存在する。水183gに、得られた(Pt/Pd)Ba担持シリカ―アルミナ粉体、βゼオライト20g(シリカ/アルミナモル比=35、表面積543m
2/g、平均粒子径0.6μm)を混合して湿式粉砕することで水性スラリーを得た。このスラリーに、直径24mm、長さ67mmの円柱状に切り出した(容量0.0303L)のコージェライト担体(商品名「Celcor」コーニング社製、セルの数:断面積1平方インチ当たりセル400個)を浸漬してウォッシュコートし、150℃で5分乾燥後、500℃で1時間の空気焼成を行い、さらに水素5体積%窒素95体積%気流下で、500℃、3時間処理して、担体の容量1L当たり白金1.33g、パラジウム0.667g、バリウム1.87g、シリカ―アルミナ100g、βゼオライト20gの成分がコートされた触媒lを得た。
【0093】
同様にしてバリウムの添加量の異なる触媒m、n、oを作製した。なお、触媒m、n、oの組成は、バリウムの量以外は、触媒lと同じであり、バリウム量は表4に記載した。
【0094】
〔実施例5〕
白金1.333gに相当する量のジニトロジアンミン白金水溶液11.80g、パラジウム0.667gに相当する硝酸パラジウム溶液4.70gおよび硝酸バリウム7.12gの混合溶液を、シリカ−アルミナ(BET比表面積150m
2/g、細孔容積0.8mL/g、シリカ含有率5質量%、平均粒子径6μm)100.0gに含浸させた。その後、白金、パラジウムおよびバリウム溶液を含浸させたシリカ−アルミナ粉体を、120℃で8時間乾燥させ、さらに得られた粉体を、500℃で1時間焼成し、Pt/Pd/Ba担持シリカ−アルミナ粉体を得た。この際、バリウムは、炭酸バリウムまたは酸化バリウムの形態で存在する。水183gに、得られたPt/Pd/Ba担持シリカ−アルミナ粉体、βゼオライト20g(シリカ/アルミナモル比=35、表面積543m
2/g、平均粒子径0.6μm)を混合して湿式粉砕することで水性スラリーを得た。このスラリーに、直径24mm、長さ67mmの円柱状に切り出した(容量0.0303L)のコージェライト担体(商品名「Celcor」コーニング社製、セルの数:断面積1平方インチ当たりセル400個)を浸漬してウォッシュコートし、150℃で5分乾燥後、500℃で1時間の空気焼成を行い、さらに水素5体積%窒素95体積%気流下で、500℃、3時間処理して、担体の容量1L当たり白金1.33g、パラジウム0.667g、バリウム3.74g、シリカ−アルミナ100g、βゼオライト20gの成分がコートされた触媒pを得た。
【0095】
同様にしてバリウムの添加量の異なる触媒qを作製した。なお、触媒qの組成は、バリウムの量以外は、触媒pと同じであり、バリウム量は表4に記載した。
【0096】
〔実施例6〕
パラジウム0.667gに相当するテトラアンミンパラジウムアセテート溶液4.00gをシリカ−アルミナ(BET比表面積150m
2/g、細孔容積0.8mL/g、シリカ含有率5質量%、平均粒子径6μm)100.0gに含浸させた。その後、パラジウム溶液を含浸させたシリカ−アルミナ粉体を、120℃で8時間乾燥させ、さらに得られた粉体を、500℃で1時間焼成し、Pd担持シリカ−アルミナ粉体を得た。このPd担持シリカ−アルミナ粉体に、さらに硝酸マグネシウム水溶液(硝酸マグネシウム六水和物5.24gを水95gに溶解)を含浸させた後120℃で8時間乾燥させた粉体を、500℃で1時間焼成し、(Pd)Mg担持シリカ−アルミナ粉体得た。この際、マグネシウムは、酸化マグネシウムの形態で存在する。水170gに、得られた(Pd)Mg担持シリカ−アルミナ粉体、βゼオライト20g(シリカ/アルミナモル比=35、表面積543m
2/g、平均粒子径0.6μm)、白金1.333gに相当する量のビスエタノールアミン白金水溶液14.81gを混合して湿式粉砕することで水性スラリーを得た。このスラリーに、直径24mm、長さ67mmの円柱状に切り出した(容量0.0303L)のコージェライト担体(商品名「Celcor」コーニング社製、セルの数:断面積1平方インチ当たりセル400個)を浸漬してウォッシュコートし、150℃で5分乾燥後、500℃で1時間の空気焼成を行い、担体の容量1L当たり白金1.333g、パラジウム0.667g、マグネシウム0.497g、シリカ−アルミナ100g、βゼオライト20gの成分がコートされた触媒rを得た。
【0097】
なお、触媒rの組成は、触媒aと同じであり、マグネシウム量は表1に記載した。
【0098】
〔比較例1〕
白金1.333gに相当する量のジニトロジアンミン白金水溶液11.80gおよびパラジウム0.667gに相当する硝酸パラジウム溶液4.70gの混合溶液を、シリカ−アルミナ(BET比表面積150m
2/g、細孔容積0.8mL/g、シリカ含有率5質量%、平均粒子径6μm)100.0gに含浸させた。その後、白金およびパラジウム溶液を含浸させたシリカ−アルミナ粉体を、120℃で8時間乾燥させ、さらに得られた粉体を、500℃で1時間焼成し、Pt/Pd担持シリカ−アルミナ粉体を得た。このPt/Pd担持シリカ―アルミナ粉体にβゼオライト20g(シリカ/アルミナモル比=35、表面積543m
2/g、平均粒子径0.6μm)、水183gを混合して湿式粉砕することで水性スラリーを得た。このスラリーに、直径24mm、長さ67mmの円柱状に切り出した(容量0.0303L)のコージェライト担体(商品名「Celcor」コーニング社製、セルの数:断面積1平方インチ当たりセル400個)を浸漬してウォッシュコートし、150℃で5分乾燥後、500℃で1時間の空気焼成を行い、さらに水素5体積%窒素95体積%気流下で、500℃、3時間処理して、担体の容量1L当たり白金1.33g、パラジウム0.667g、シリカ―アルミナ100g、βゼオライト20gの成分がコートされた触媒sを得た。
【0099】
<耐久処理>
上記実施例で得られた触媒a〜r、比較例で得られた触媒sの各触媒を、電気炉にて700℃で50時間、大気雰囲気下で熱処理を行うことで耐久処理を行った。これはディーゼルエンジンでの使用を想定した耐久試験である。
【0100】
<排気ガス浄化触媒の性能評価>
上記耐久処理後の各触媒を、表5の条件のガス(空間速度40000hr
-1、ガス線速0.75m/秒)を流通させながら20℃/分の昇温速度でガスを昇温した際に、触媒出口において一酸化炭素が50%浄化された時点の触媒の入口温度をCOT50、同様にプロピレンが50%浄化された時点の触媒の入口温度をHCT50として、それぞれの触媒中のマグネシウム、カルシウム、ストロンチウムまたはバリウム添加量(mol/L)に対してプロットしたグラフを
図1〜10に示した。なお、
図1〜8の金属成分の添加量が0(mol/L)のプロットは、比較例1の触媒sの性能を表す。
図1および
図2は、それぞれ、実施例1の触媒a〜cのCOT50およびHCT50を表す。
図3および
図4は、それぞれ、実施例2の触媒d〜gのCOT50およびHCT50を表す。
図5および
図6は、それぞれ、実施例3の触媒h〜kのCOT50およびHCT50を表す。
図7および
図8は、それぞれ、実施例4の触媒l〜oのCOT50およびHCT50を表す。
図9および
図10は、それぞれ、実施例5の触媒p、qのCOT50およびHCT50を表す。
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
【表3】
【0104】
【表4】
【0105】
【表5】
【0106】
【表6】
【0107】
図1〜10に示したように、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムまたはバリウムを添加した実施例の触媒a〜rは、比較例sの触媒に対してより低温からCO、プロピレンを酸化することができることが確認できた。マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムについては担体の容量1L当たり0.205mol/Lまで添加すると、比較例sの触媒に対してかえって性能が低下してしまうが、バリウムについては担体の容量1L当たり0.205mol/L添加しても、比較例の触媒sに対してより低温からCO、プロピレンを酸化することができた。
【0108】
なお、本出願は、2011年3月24日に出願された日本国特許出願第2011−066583号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。