特許第5937750号(P5937750)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5937750
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】車両制御装置及び車両制御方法
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/02 20060101AFI20160609BHJP
   F16H 59/22 20060101ALI20160609BHJP
   F16H 63/50 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   F16H61/02
   F16H59/22
   F16H63/50
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-505399(P2015-505399)
(86)(22)【出願日】2014年3月3日
(86)【国際出願番号】JP2014055279
(87)【国際公開番号】WO2014141916
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2015年7月15日
(31)【優先権主張番号】特願2013-49405(P2013-49405)
(32)【優先日】2013年3月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100167520
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 良太
(72)【発明者】
【氏名】川本 佳延
【審査官】 久島 弘太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−52640(JP,A)
【文献】 特開2012−184703(JP,A)
【文献】 特開2009−98720(JP,A)
【文献】 特開2006−15724(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/02
F16H 59/22
F16H 59/78
F16H 63/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の自動停止条件が成立すると駆動源を自動停止させる駆動源自動停止手段と、
前記駆動源の自動停止中に駆動される電動オイルポンプとを備えた車両を制御する車両制御装置であって、
前記電動オイルポンプの発熱量に基づいて前記電動オイルポンプの駆動禁止時間を算出する駆動禁止時間算出手段と、
前記電動オイルポンプの駆動終了時点から前記駆動禁止時間が経過するまで前記電動オイルポンプの駆動を禁止する駆動禁止手段と、
前記電動オイルポンプ駆動後の時間を計測する時間計測手段と、
前記時間計測手段によって前記時間の計測を開始してからの前記電動オイルポンプの駆動回数を計測する駆動回数計測手段とを備え、
前記時間計測手段によって計測した前記時間が所定時間以内であり、かつ前記駆動回数計測手段によって計測した前記電動オイルポンプの前記駆動回数が所定回数以上であった場合に、前記駆動禁止時間算出手段は前記時間が短いほど、前記駆動禁止時間を長くする車両制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御装置であって、
前記発熱量は、前記電動オイルポンプの駆動時間に基づいて算出される車両制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両制御装置であって、
前記駆動禁止時間算出手段は、前記電動オイルポンプの前記駆動時間が長いほど、前記電動オイルポンプの前記駆動禁止時間を長くする車両制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の車両制御装置であって、
前記発熱量は、前記駆動源の自動停止時間に基づいて算出される車両制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両制御装置であって、
前記駆動禁止時間算出手段は、前記駆動源の前記自動停止時間が長いほど、前記電動オイルポンプの前記駆動禁止時間を長くする車両制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載の車両制御装置であって、
前記発熱量は、前記電動オイルポンプの温度に基づいて算出される車両制御装置。
【請求項7】
請求項1に記載の車両制御装置であって、
前記発熱量は、前記電動オイルポンプの負荷に基づいて算出される車両制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の車両制御装置であって、
前記負荷は、前記電動オイルポンプに流れる電流の積分値に基づいて算出される車両制御装置。
【請求項9】
請求項7に記載の車両制御装置であって、
前記負荷は、前記電動オイルポンプの回転数の積分値に基づいて算出される車両制御装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一つに記載の車両制御装置であって、
前記時間計測手段によって計測した前記時間が所定時間以内であり、かつ前記駆動回数計測手段によって計測した前記電動オイルポンプの前記駆動回数が所定回数以上であった場合に、前記駆動禁止時間算出手段は前記所定時間内における前記電動オイルポンプの駆動回数が多いほど、前記駆動禁止時間を長くする車両制御装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1つに記載の車両制御装置であって、
前記時間計測手段は、前記電動オイルポンプの駆動に応じて複数の前記時間を計測可能であり、
前記駆動回数計測手段は、複数の前記時間の計測における駆動回数を計測可能であり、
前記電動オイルポンプの停止時間が冷却時間となると、前記時間計測手段は、前記冷却時間となった計測値をリセットし、前記駆動回数計測手段は、各駆動回数から減算する車両制御装置。
【請求項12】
所定の自動停止条件が成立すると駆動源を自動停止させて、
前記駆動源の自動停止中に電動オイルポンプを駆動させる車両制御方法であって、
前記電動オイルポンプの発熱量に基づいて前記電動オイルポンプの駆動禁止時間を算出し、
前記電動オイルポンプ駆動後の時間を計測し、
前記電動オイルポンプ駆動後の前記時間の計測を開始してからの前記電動オイルポンプの駆動回数を計測し、
前記電動オイルポンプの駆動終了時点から前記駆動禁止時間が経過するまで前記電動オイルポンプの駆動を禁止し、
計測した前記時間が所定時間以内であり、かつ計測した前記電動オイルポンプの前記駆動回数が所定回数以上であった場合に、前記時間が短いほど、前記駆動禁止時間を長くする車両制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両制御装置及び車両制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、停止条件が成立するとエンジンを自動停止し、エンジンを自動停止している間は電動オイルポンプを駆動させて必要な油圧を電動オイルポンプによって供給する車両が、JP2012−52640Aに開示されている。
【0003】
電動オイルポンプは、停止条件が不成立となり、エンジンが再始動すると停止する。駆動した電動オイルポンプは、駆動時の発熱により温度が高くなっており、冷却する必要がある。そのため、エンジンが再始動し、電動オイルポンプが停止した後は、電動オイルポンプは所定時間、駆動が禁止される。
【発明の概要】
【0004】
エンジンが自動停止し、電動オイルポンプが駆動している状態から一時的に停止条件が不成立となり、その後すぐに停止条件が成立するシーンでは、停止条件が不成立となることでエンジンが再始動すると共に電動オイルポンプが停止し、その後、再び停止条件が成立することでエンジンが自動停止すると共に電動オイルポンプを駆動することが要求される。
【0005】
上記技術では、停止条件が不成立となり、電動オイルポンプが停止した後に、電動オイルポンプの駆動を禁止する所定時間を固定値としている。そのため、電動オイルポンプの駆動時間が短く、電動オイルポンプの冷却が短時間で終了するような場合でも所定時間の間、電動オイルポンプの駆動が禁止される。これにより、上記シーンにおいては、再度の電動オイルポンプの駆動要求に対し、電動オイルポンプを駆動させることができず、エンジンを自動停止させることができない。このように、電動オイルポンプが十分に冷却され、電動オイルポンプを駆動しても問題がない状態であるにも関わらず、電動オイルポンプの駆動が禁止され、停止条件が成立してもエンジンは自動停止しない。そのため、上記技術では、停止条件が成立し、エンジンを自動停止してエンジンの燃費を向上することができるにも関わらず、エンジンを自動停止することができず、エンジンの燃費を向上することができない場合がある。
【0006】
一方、電動オイルポンプが停止した後に電動オイルポンプの駆動を禁止する所定時間を設定せずに、停止条件が成立するとエンジンを自動停止し、電動オイルポンプを駆動することも考えられる。
【0007】
しかし、電動オイルポンプの冷却が十分に行われておらず、電動オイルポンプが高温となっている状態で停止条件が成立し、エンジンの燃費を優先してエンジンを自動停止し、電動オイルポンプを駆動すると、電動オイルポンプの温度が更に高くなる。そのため、電動オイルポンプの構成部品が劣化し、電動オイルポンプの吐出性能、及び耐久性が悪化するおそれがある。
【0008】
本発明はこのような問題点を解決するために発明されたもので、エンジンの燃費を向上し、電動オイルポンプの吐出性能、及び電動オイルポンプの耐久性の悪化を抑制することを目的とする。
【0009】
本発明のある態様に係る車両制御装置は、所定の自動停止条件が成立すると駆動源を自動停止させる駆動源自動停止部と、駆動源の自動停止中に駆動される電動オイルポンプとを備えた車両を制御する車両制御装置であって、電動オイルポンプの発熱量に基づいて電動オイルポンプの駆動禁止時間を算出する駆動禁止時間算出部と、電動オイルポンプの駆動終了時点から駆動禁止時間が経過するまで電動オイルポンプの駆動を禁止する駆動禁止部とを備える。
【0010】
本発明の別の態様に係る車両制御方法は、所定の自動停止条件が成立すると駆動源を自動停止させて、駆動源の自動停止中に電動オイルポンプを駆動させる車両制御方法であって、電動オイルポンプの発熱量に基づいて電動オイルポンプの駆動禁止時間を算出し、電動オイルポンプの駆動終了時点から駆動禁止時間が経過するまで電動オイルポンプの駆動を禁止する。
【0011】
これら態様によると、電動オイルポンプの発熱量に基づいて電動オイルポンプの駆動禁止時間を算出し、駆動禁止時間に基づいて電動オイルポンプの駆動を禁止するので、電動オイルポンプの駆動禁止時間を電動オイルポンプの状態に応じて適宜設定することができる。そのため、自動停止条件が成立した場合にエンジンの自動停止を早く開始してエンジンの燃費を向上することができる。また、電動オイルポンプが過熱状態となることを防止し、電動オイルポンプの吐出性能、及び電動オイルポンプの耐久性の悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は本実施形態における車両の概略構成図である。
図2図2は本実施形態のコントローラの概略構成図である。
図3図3は本実施形態のコーストストップ制御を説明するフローチャートである。
図4図4は電動オイルポンプの発熱状態を判定するためのマップである。
図5図5は駆動回数と冷却タイマの経過時間と駆動禁止時間との関係を示すマップである。
図6図6は電動オイルポンプの発熱量に基づいて電動オイルポンプの駆動禁止時間を算出する場合のタイムチャートである。
図7図7は電動オイルポンプの駆動回数に基づいて電動オイルポンプの駆動禁止時間を算出する場合のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、ある変速機構の「変速比」は、当該変速機構の入力回転速度を当該変速機構の出力回転速度で割って得られる値である。
【0014】
図1は本実施形態に係るエンジン自動停止車両を示す概略構成図である。この車両は駆動源としてエンジン1を備え、エンジン1の出力回転は、ロックアップクラッチ付きトルクコンバータ2、第1ギヤ列3、変速機4、第2ギヤ列5、差動装置6を介して駆動輪7へと伝達される。第2ギヤ列5には駐車時に変速機4の出力軸を機械的に回転不能にロックするパーキング機構8が設けられている。
【0015】
変速機4には、エンジン1の回転が入力されエンジン1の動力の一部を利用して駆動されるメカオイルポンプ10mと、バッテリ13から電力供給を受けて駆動される電動オイルポンプ10eとが設けられている。電動オイルポンプ10eは、オイルポンプ本体と、これを回転駆動する電気モータ及びモータドライバとで構成され、運転負荷を任意の負荷に、あるいは、多段階に制御することができる。また、変速機4には、メカオイルポンプ10mあるいは電動オイルポンプ10eからの油圧(以下、「ライン圧PL」という。)を調圧して変速機4の各部位に供給する油圧制御回路11が設けられている。
【0016】
変速機4は、ベルト式無段変速機構(以下、「バリエータ20」という。)と、バリエータ20に直列に設けられる副変速機構30とを備える。「直列に設けられる」とはエンジン1から駆動輪7に至るまでの動力伝達経路においてバリエータ20と副変速機構30が直列に設けられるという意味である。副変速機構30は、この例のようにバリエータ20の出力軸に直接接続されていてもよいし、その他の変速ないし動力伝達機構(例えば、ギヤ列)を介して接続されていてもよい。あるいは、副変速機構30はバリエータ20の前段(入力軸側)に接続されていてもよい。
【0017】
バリエータ20は、プライマリプーリ21と、セカンダリプーリ22と、プーリ21、22の間に掛け回されるVベルト23とを備える。プーリ21、22は、それぞれ固定円錐板と、この固定円錐板に対してシーブ面を対向させた状態で配置され固定円錐板との間にV溝を形成する可動円錐板と、この可動円錐板の背面に設けられて可動円錐板を軸方向に変位させる油圧シリンダ23a、23bとを備える。油圧シリンダ23a、23bに供給される油圧を調整すると、V溝の幅が変化してVベルト23と各プーリ21、22との接触半径が変化し、バリエータ20の変速比が無段階に変化する。
【0018】
副変速機構30は前進2段・後進1段の変速機構である。副変速機構30は、2つの遊星歯車のキャリアを連結したラビニョウ型遊星歯車機構31と、ラビニョウ型遊星歯車機構31を構成する複数の回転要素に接続され、それらの連係状態を変更する複数の摩擦締結要素(Lowブレーキ32、Highクラッチ33、Revブレーキ34)とを備える。各摩擦締結要素32〜34への供給油圧を調整し、各摩擦締結要素32〜34の締結・解放状態を変更すると、副変速機構30の変速段が変更される。
【0019】
コントローラ12は、エンジン1及び変速機4を統合的に制御するコントローラであり、図2に示すように、CPU121と、RAM・ROMからなる記憶装置122と、入力インターフェース123と、出力インターフェース124と、これらを相互に接続するバス125とから構成される。
【0020】
入力インターフェース123には、アクセルペダルの操作量であるアクセル開度APOを検出するアクセル開度センサ41の出力信号、変速機4の入力回転速度を検出する回転速度センサ42の出力信号、車速VSPを検出する車速センサ43の出力信号、ライン圧PLを検出するライン圧センサ44の出力信号、セレクトレバーの位置を検出するインヒビタスイッチ45の出力信号、ブレーキ液圧を検出するブレーキ液圧センサ46の出力信号、車両の加速度を検出する加速度センサ47の出力信号等が入力される。
【0021】
記憶装置122には、エンジン1の制御プログラム、変速機4の変速制御プログラム、これらプログラムで用いられる各種マップ・テーブルが格納されている。CPU121は、記憶装置122に格納されているプログラムを読み出して実行し、入力インターフェース123を介して入力される各種信号に対して各種演算処理を施して、燃料噴射量信号、点火時期信号、スロットル開度信号、変速制御信号、電動オイルポンプ10eの駆動信号を生成し、生成した信号を出力インターフェース124を介してエンジン1、油圧制御回路11、電動オイルポンプ10eのモータドライバに出力する。CPU121が演算処理で使用する各種値、その演算結果は記憶装置122に適宜格納される。
【0022】
油圧制御回路11は複数の流路、複数の油圧制御弁で構成される。油圧制御回路11は、コントローラ12からの変速制御信号に基づき、複数の油圧制御弁を制御して油圧の供給経路を切り換えるとともにメカオイルポンプ10m又は電動オイルポンプ10eで発生した油圧から必要な油圧を調製し、これを変速機4の各部位に供給する。これにより、バリエータ20の変速比、副変速機構30の変速段が変更され、変速機4の変速が行われる。
【0023】
ここで、メカオイルポンプ10m及び電動オイルポンプ10eについて説明する。
【0024】
メカオイルポンプ10mは、エンジン1の動力の一部を利用して駆動されるので、エンジン1が停止している間は油圧を油圧制御回路11へ供給することができなくなる。そこで、エンジン停止中における油圧を確保するため、エンジン1が停止している間は電動オイルポンプ10eを駆動させる。
【0025】
なお、ここでいう「エンジン1が停止している間」は、車両が駐車状態(キーオフ)である場合は含まず、車両が運転状態(エンジン始動後、キーオンされている状態)であって(車速=0を含む)エンジン1が停止している状態を意味する。また、「エンジン1が停止」はエンジン1の回転が必ずしも完全に停止していることを要件とせず、メカオイルポンプ10mだけでは必要油圧を確保できなくなるような極低速回転も含む。
【0026】
すなわち、電動オイルポンプ10eが作動する場合は、エンジン1がアイドルストップ制御又はコーストストップ制御によって停止している場合である。以下、アイドルストップ制御及びコーストストップ制御について説明する。
【0027】
アイドルストップ制御は、停車中にエンジン1を自動的に停止させて燃料消費量を抑制する制御である。
【0028】
アイドルストップ制御を実行するにあたり、コントローラ12は、例えば、以下に示す条件a1〜a6を判定する。
【0029】
a1:車両が停車中(VSP=0)
a2:ブレーキペダルが踏み込まれている(ブレーキ液圧が所定値以上)
a3:アクセルペダルから足が離されている(アクセル開度APO=0)
a4:エンジン1の水温が所定範囲Xe内
a5:変速機4の油温が所定範囲Xt内
a6:車体の傾斜(≒路面勾配)が所定値以下
【0030】
そして、コントローラ12は、これらの条件a1〜a6が全て成立した場合にアイドルストップ条件成立と判定してアイドルストップ制御を許可し、燃料噴射をカットしてエンジン1を停止させる。
【0031】
エンジン1の水温の所定範囲Xeは、下限値がエンジン1の暖機が完了していると判断される温度に設定され、上限値がエンジン1のアフターアイドルが必要な高温域の下限に設定される。
【0032】
また、アイドルストップ制御中は電動オイルポンプ10eで発生させた油圧で変速機4の摩擦締結要素を締結又はピストンをストロークさせておくことで、エンジン1の再始動後に摩擦締結要素が動力伝達可能となるまでに要する時間を短縮する。このため、変速機4の油温の所定範囲Xtは、作動油の粘度を考慮して電動オイルポンプ10eが正常に回転できる温度範囲に設定される。
【0033】
また、コントローラ12は、アイドルストップ制御中も上記条件a1〜a6がそれぞれ継続して成立しているかを判定し、一つでも成立しなくなるとアイドルストップ条件非成立と判定し、アイドルストップ制御を終了し、エンジン1を再始動する。
【0034】
一方、コーストストップ制御は、車両がコースト状態であって、例えば、ロックアップクラッチが解放されている場合にエンジン1を自動的に停止させる制御である。
【0035】
コーストストップ制御中は燃料噴射がカットされ、かつロックアップクラッチが解放されているので、エンジン1の回転速度は極低回転であり、これにより、メカオイルポンプ10mの回転も極めて低く、必要な油圧を確保できない。そこで、必要油圧を確保するため、コーストストップ制御時に電動オイルポンプ10eが駆動される。
【0036】
コーストストップ状態を判定するために、コントローラ12は、例えば、以下に示す条件b1〜b4を判定する。
【0037】
b1:車両が走行中(VSP≠0)
b2:車速が所定車速VSP1以下である(VSP≦VSP1)
b3:アクセルペダルから足が離されている(アクセル開度APO=0)
b4:ブレーキペダルが踏み込まれている(ブレーキ液圧が所定値以上)
【0038】
なお、所定車速VSP1は、コースト状態においてロックアップクラッチを解除させる車速以下であってゼロより大きい値に設定される。
【0039】
そして、コントローラ12は、これらの条件b1〜b4が全て成立した場合にコーストストップ条件成立と判定してコーストストップ制御を許可し、燃料噴射をカットする。
【0040】
また、コントローラ12は、コーストストップ制御中も上記条件b1〜b4がそれぞれ継続して成立しているかを判定し、一つでも成立しなくなるとコーストストップ条件非成立と判定し、コーストストップ制御を終了し、エンジン1を再始動する。なお、コーストストップ制御を終了する条件は上記条件b1〜b4に限られない。
【0041】
アイドルストップ制御及びコーストストップ制御は以上のように行われ、いずれか一方が実行されている場合にエンジン1が停止中であると判断して電動オイルポンプ10eを駆動させる。なお、上記条件から明らかなように、コーストストップ制御を実行している状態で車両が停止すると、そのままアイドルストップ制御へと移行するが、この場合エンジン1は停止したまま、すなわち電動オイルポンプ10eは駆動状態のまま、コーストストップ制御からアイドルストップ制御へと移行する。
【0042】
ここで、電動オイルポンプ10eの過熱防止について説明する。
【0043】
電動オイルポンプ10eは、前述のようにオイルポンプ本体と、これを回転駆動する電気モータ及びモータドライバとで構成される。電気モータは駆動すると発熱し、モータドライバは電動オイルポンプ10eをオフ状態からオン状態へと切り替える時に発熱する。発熱により電動オイルポンプ10eの温度が高くなり、電動オイルポンプ10eが過熱状態となると、構成部品の破損及び寿命の低下を招くおそれがあるので、電動オイルポンプ10eが過熱状態となることを防止する必要がある。このため、電動オイルポンプ10eは停止後の駆動禁止時間だけ再駆動を禁止するように制御され、駆動禁止時間が経過するまでは再びオン状態とすることが禁止される。
【0044】
したがって、アイドルストップ条件及びコーストストップ条件が一時的に非成立となり、その直後に再度条件成立となった場合には、駆動禁止時間がまだ経過していないので電動オイルポンプ10eの再駆動が禁止されており、結果としてエンジン1を停止することができない。
【0045】
従来は、駆動禁止時間は電動オイルポンプ10eが十分に冷却できる或る固定時間に設定されていた。そのため、例えば、電動オイルポンプ10eの駆動時間が短く、電動オイルポンプ10eの発熱量が小さい場合、電動オイルポンプ10eの冷却に必要な駆動禁止時間は短いにも関わらず、或る固定時間に設定された駆動禁止時間が経過するまでコーストストップ制御が禁止されていた。そのため、電動オイルポンプ10eの停止後、或る固定時間に設定された駆動禁止時間の経過を待たずとも、電動オイルポンプ10eが十分に冷却されてエンジン1を自動停止し、エンジン1の燃費を向上することができるにも関わらず、或る固定時間に設定された駆動禁止時間が経過するまでエンジン1が自動停止されず、エンジン1の燃費を向上する余地があった。
【0046】
本実施形態では、駆動禁止時間を電動オイルポンプ10eの発熱量に基づいて算出し、電動オイルポンプ10eが過熱状態となることを防ぎつつ、エンジン1の燃費を向上する。なお、電動オイルポンプ10eの発熱量とは、今回の電動オイルポンプ10eの駆動により発生する発熱量のことである。例えば、電動オイルポンプ10eを停止し、その後、電動オイルポンプ10eを駆動した場合、2回目の駆動に基づく発熱量とは、2回目の駆動により生じた発熱量のみであり、1回目の駆動による発熱量の積算ではない(過去の駆動による発熱量は含まれない)。
【0047】
次に本実施形態のコーストストップ制御について図3のフローチャートを用いて説明する。ここでは、コーストストップ制御を行い、電動オイルポンプ10eを駆動する場合について説明するが、アイドルストップ制御を行い、電動オイルポンプ10eを駆動する場合、またはコーストストップ制御及びアイドルストップ制御を連続して行い、電動オイルポンプ10eを駆動する場合についても同様の制御を行う。
【0048】
ステップS100では、コントローラ12は、上記するコーストストップ条件が成立したかどうか判定する。処理は、コーストストップ条件が成立した場合にはステップS101に進み、コーストストップ条件が非成立の場合にはステップS106に進む。
【0049】
ステップS101では、コントローラ12は、電動オイルポンプ10eの駆動が禁止されているかどうか判定する。具体的には、コントローラ12は、詳しくは後述する電動オイルポンプ駆動禁止フラグが1であるかどうか判定する。処理は、電動オイルポンプ駆動禁止フラグが1であり、電動オイルポンプ10eの駆動が禁止されている場合にはステップS115に進み、電動オイルポンプ駆動禁止フラグがゼロであり、電動オイルポンプ10eの駆動が禁止されていない場合にはステップS102に進む。
【0050】
ステップS102では、コントローラ12は、エンジン1を自動停止し、電動オイルポンプ10eを駆動し、コーストストップ制御を実行する。
【0051】
ステップS103では、コントローラ12は、今回の電動オイルポンプ10eの駆動による電動オイルポンプ10eの発熱量を算出する。具体的には、コントローラ12は、今回の電動オイルポンプ10eの駆動時間を計測し、駆動時間に基づいて発熱量を算出する。発熱量は、電動オイルポンプ10eの駆動時間が長いほど、大きくなる。
【0052】
ステップS104では、コントローラ12は、発熱量が所定量以上であるかどうか判定する。所定量は、電動オイルポンプ10eの駆動時間が長くなり、電動オイルポンプ10eの駆動を禁止する必要があると判断可能な発熱量であり、予め設定されている。処理は、発熱量が所定量以上である場合にはステップS105に進み、発熱量が所定量よりも低い場合にはステップS118に進む。
【0053】
ステップS105では、コントローラ12は、電動オイルポンプ10eの駆動を禁止し、電動オイルポンプ駆動禁止フラグを1に設定する。
【0054】
ステップS100によってコーストストップ条件が非成立であると判定された場合には、ステップS106において、コントローラ12は、前回制御時にコーストストップ条件が成立していたかどうか判定する。即ち、前回制御時にコーストストップ条件が成立していたが、今回制御時にコーストストップ条件が非成立となった場合にはステップS107に進み、前回制御時にコーストストップ条件が成立していなかった場合にはステップS114に進む。
【0055】
ステップS107では、コントローラ12は、エンジン1を再始動し、電動オイルポンプ10eを停止し、エンジン1を始動し、コーストストップ制御を終了する。
【0056】
ステップS108では、コントローラ12は、今回制御における電動オイルポンプ10eの停止に対するインターバルタイマ、及び冷却タイマによるカウントを開始する。コントローラ12は、今回の電動オイルポンプ10eの停止に対してインターバルタイマ、及び冷却タイマによるカウントを新たに開始する。インターバルタイマは、電動オイルポンプ10eが停止してから駆動禁止時間が経過するかどうかを判定するタイマである。冷却タイマは、電動オイルポンプ10eを駆動した際に発生する熱を十分に放熱することができたかどうかを判定するタイマである。コントローラ12は、同時に複数の冷却タイマを作動させることができる。そのため、電動オイルポンプ10eの駆動、停止が繰り返し行われると、コントローラ12は各電動オイルポンプ10eの各停止に応じて複数の冷却タイマによってカウントを行う。
【0057】
ステップS109では、コントローラ12は、電動オイルポンプ10eの駆動回数をインクリメントする。コントローラ12は、複数の冷却タイマによってカウントが行われている場合には、各冷却タイマに対して駆動回数をインクリメントする。例えば、コントローラ12が今回の電動オイルポンプ10eの停止よりも1つ前の電動オイルポンプ10eの停止に対しても冷却タイマによってカウントを行っている場合には、今回の電動オイルポンプ10eの停止によって作動した冷却タイマにおける駆動回数を1とし、1つ前の電動オイルポンプ10eの停止によって作動した冷却タイマにおける駆動回数を2とする。
【0058】
ステップS110では、コントローラ12は、冷却タイマの経過時間が所定時間以内であり、かつ冷却タイマにおける駆動回数が所定回数以上となっているかどうか判定する。所定回数、及び所定時間は予め設定されている。コントローラ12は、冷却タイマの経過時間が所定時間以内であり、かつ冷却タイマにおける駆動回数が所定回数以上である場合に、電動オイルポンプ10eをオフ状態からオン状態とする場合に生じる発熱量の積算値が大きいと判定する。処理は、冷却タイマの経過時間が所定時間以内であり、かつ冷却タイマにおける駆動回数が所定回数以上である場合にはステップS111へ進み、これ以外の場合にステップS112へ進む。なお、この判定は、複数の冷却タイマが作動している場合には、各冷却タイマに対して行われ、複数の冷却タイマの経過時間のうち1つでも経過時間が所定時間以内であり、かつ駆動回数が所定回数以上となると、処理はステップS111に進む。コントローラ12は、冷却タイマの経過時間と駆動回数とに基づいて例えば図4に示すマップからこの判定を行う。図4は電動オイルポンプ10eの発熱量の積算値が大きいかどうか判定するためのマップである。電動オイルポンプ10eがオフ状態からオン状態へ切り替わる時に、モータドライバに流れる電流が大きく、電動オイルポンプ10eの発熱量が大きくなる。そのため、短い時間で電動オイルポンプ10eの駆動回数が多くなると、電動オイルポンプ10eの発熱量の積算値が大きくなる。図4では電動オイルポンプ10eをオフ状態からオン状態とする場合に生じる発熱量の積算値が大きいと判定される領域を斜線で示す。例えば、図4において、駆動回数がN1となった時の冷却タイマの経過時間が所定時間T1であった場合には、コントローラ12は電動オイルポンプ10eをオフ状態からオン状態とする場合に生じる発熱量の積算値が大きいと判定する。一方、図4において、駆動回数がN1となった時の冷却タイマの経過時間が所定時間T2(T2>T1)であった場合には、コントローラ12は電動オイルポンプ10eをオフ状態からオン状態とする場合に生じる発熱量の積算値が小さいと判定する。
【0059】
ステップS111では、コントローラ12は、駆動回数と冷却タイマの経過時間とに基づいて図5のマップから駆動禁止時間を算出する。図5は、駆動回数と冷却タイマの経過時間と駆動禁止時間との関係を示すマップである。駆動禁止時間は駆動回数が多いほど、または冷却タイマの経過時間が短くなるほど、長くなる。なお、ここで用いる駆動回数は、所定時間内に所定回数以上となった駆動回数である。
【0060】
ステップS112では、コントローラ12は、ステップS103によって算出した電動オイルポンプ10eの発熱量に基づいて駆動禁止時間を算出する。駆動禁止時間は、電動オイルポンプ10eの発熱量が大きいほど、長くなる。
【0061】
ステップS113では、コントローラ12は、電動オイルポンプ10eの駆動を禁止し、電動オイルポンプ駆動禁止フラグを1に設定する。
【0062】
ステップS106によって前回制御時にコーストストップ条件が成立していないと判定された場合には、ステップS114において、コントローラ12は、電動オイルポンプ10eの駆動が禁止されているかどうか判定する。具体的には、コントローラ12は、電動オイルポンプ駆動禁止フラグが1であるかどうか判定する。処理は、電動オイルポンプ10eの駆動が禁止されている場合にはステップS115に進み、電動オイルポンプ10eの駆動が禁止されていない場合にはステップS118に進む。
【0063】
ステップS115では、コントローラ12は、インターバルタイマのカウントが駆動禁止時間となったかどうか判定する。処理は、インターバルタイマのカウントが駆動禁止時間となるとステップS116に進み、インターバルタイマのカウントが駆動禁止時間となっていない場合にはステップS118に進む。
【0064】
ステップS116では、コントローラ12は、電動オイルポンプ10eの駆動禁止を解除し、電動オイルポンプ駆動禁止フラグをゼロにする。
【0065】
ステップS117では、コントローラ12は、インターバルタイマをリセットとする。
【0066】
ステップS118では、コントローラ12は、電動オイルポンプ10eの冷却時間となった冷却タイマがあるかどうか判定する。コントローラ12は、複数の冷却タイマを作動させている場合には、冷却タイマごとに冷却時間となったかどうか判定する。処理は、冷却時間となった冷却タイマがある場合にはステップS119に進み、冷却時間となった冷却タイマがない場合には本制御を終了する。冷却時間は予め設定されており、電動オイルポンプ10eが停止してから十分に時間が経過し、電動オイルポンプ10eの駆動によって発生した熱が十分に放熱されると判定できる時間である。
【0067】
ステップS119では、冷却時間となった冷却タイマをリセットする。電動オイルポンプ10eの駆動、停止が繰り返された場合でも、電動オイルポンプ10eの熱は時間の経過とともに放熱される。ここでは、例えば、今回の電動オイルポンプ10eの停止よりも1つ前の電動オイルポンプ10eの停止における冷却タイマが冷却時間となると、1つ前の電動オイルポンプ10eの停止における冷却タイマがリセットされる。
【0068】
ステップS120では、冷却時間となった冷却タイマに応じて駆動回数から1を減算する。これらにより、次回からの電動オイルポンプ10eの駆動、停止に対して、冷却時間が経過した電動オイルポンプ10eの駆動による発熱の影響を受けずに電動オイルポンプ10eの駆動禁止時間が算出される。なお、減算する駆動回数は1に限られず、2以上の値に設定してもよい。
【0069】
次にコーストストップ制御についてタイムチャートを用いて説明する。
【0070】
まず、電動オイルポンプ10eの発熱量に基づいて電動オイルポンプ10eの駆動禁止時間を算出する場合について図6のタイムチャートを用いて説明する。
【0071】
時間t0において、コーストストップ条件が成立し、コーストストップ制御が実行される。コーストストップ制御が実行されると電動オイルポンプ10eが駆動し、電動オイルポンプ10eの駆動時間(発熱量)が計測される。
【0072】
時間t1において、コーストストップ条件が非成立となると、コーストストップ制御を終了し、電動オイルポンプ10eを停止する。また、インターバルタイマによるカウントを開始し、電動オイルポンプ10eの駆動時間に基づいて電動オイルポンプ10eの駆動禁止時間が算出され、電動オイルポンプ10eの駆動が禁止される。
【0073】
インターバルタイマのカウントが駆動禁止時間となるまでは電動オイルポンプ10eの駆動が禁止されるので、駆動禁止時間の間である時間t2にコーストストップ条件が成立しても、コーストストップ制御は実行されない。
【0074】
時間t3においてインターバルタイマのカウントが駆動禁止時間となると、電動オイルポンプ10eの駆動が許可される。
【0075】
時間t4において、再びコーストストップ条件が成立すると、コーストストップ制御が実行される。
【0076】
時間t5において、コーストストップ条件が非成立となると、コーストストップ制御を終了し、電動オイルポンプ10eを停止する。今回のコーストストップ制御は前回のコーストストップ制御よりも長い時間実行され、電動オイルポンプ10eの発熱量が前回よりも大きい。そのため、駆動禁止時間は、前回の駆動禁止時間よりも長くなる。
【0077】
時間t6において、インターバルタイマのカウントが駆動禁止時間となると、電動オイルポンプ10eの駆動が許可される。
【0078】
次に電動オイルポンプ10eの駆動回数に基づいて電動オイルポンプ10eの駆動禁止時間を算出する場合について図7のタイムチャートを用いて説明する。
【0079】
時間t0において、コーストストップ条件が成立し、コーストストップ制御が実行される。コーストストップ制御が実行されると、電動オイルポンプ10eが駆動し、電動オイルポンプ10eの駆動時間が計測される。
【0080】
時間t1においてコーストストップ条件が非成立となると、コーストストップ制御を終了し、電動オイルポンプ10eを停止する。また、インターバルタイマ、及び冷却タイマによるカウントを開始し、電動オイルポンプ10eの駆動時間に基づいて電動オイルポンプ10eの駆動禁止時間が算出され、電動オイルポンプ10eの駆動が禁止される。なお、説明のため、時間t1において作動する冷却タイマを以下において第1冷却タイマとする。
【0081】
時間t2において、インターバルタイマのカウントが駆動禁止時間となると電動オイルポンプ10eの駆動が許可される。
【0082】
時間t3において、コーストストップ条件が成立し、コーストストップ制御が実行される。コーストストップ制御が実行されると、電動オイルポンプ10eが駆動し、電動オイルポンプ10eの駆動時間が計測される。
【0083】
時間t4において、コーストストップ条件が非成立となると、コーストストップ制御を終了し、電動オイルポンプ10eを停止する。また、インターバルタイマ、及び冷却タイマによるカウントを開始し、電動オイルポンプ10eの駆動時間に基づいて電動オイルポンプ10eの駆動禁止時間が算出され、電動オイルポンプ10eの駆動が禁止される。なお、説明のため、時間t4において作動する冷却タイマを以下において第2冷却タイマとする。ここでは、第1冷却タイマと第2冷却タイマとが作動しており、第1冷却タイマにおける駆動回数は2であり、第2冷却タイマにおける駆動回数は1である。
【0084】
時間t5において、インターバルタイマのカウントが駆動禁止時間となると電動オイルポンプ10eの駆動が許可される。
【0085】
時間t6において、コーストストップ条件が成立し、コーストストップ制御が実行される。コーストストップ制御が実行されると、電動オイルポンプ10eが駆動し、電動オイルポンプ10eの駆動時間が計測される。
【0086】
時間t7において、コーストストップ条件が非成立となると、コーストストップ制御を終了し、電動オイルポンプ10eを停止する。また、インターバルタイマ、及び冷却タイマによるカウントを開始する。説明のため、時間t7において作動する冷却タイマを以下において第3冷却タイマとする。ここでは、第1冷却タイマ、第2冷却タイマ、及び第3冷却タイマが作動しており、第1冷却タイマにおける駆動回数は3であり、第2冷却タイマにおける駆動回数は2であり、第3冷却タイマにおける駆動回数は1である。ここで、短い時間で電動オイルポンプ10eの駆動、停止が繰り返され、第1冷却タイマに対する駆動回数が所定時間内に所定回数(3回)となる。そのため、電動オイルポンプ10eの駆動禁止時間が所定時間、及び所定回数に基づいて算出され、電動オイルポンプ10eの駆動が禁止される。
【0087】
時間t8において、インターバルタイマのカウントが駆動禁止時間となると電動オイルポンプ10eの駆動が許可される。
【0088】
時間t9において第1冷却タイマのカウントが冷却時間となり、時間t10において第2冷却タイマのカウントが冷却時間となり、時間t11において第3冷却タイマのカウントが冷却時間となると各冷却タイマがリセットされる。
【0089】
本発明の実施形態の効果について説明する。
【0090】
電動オイルポンプ10eを冷却するために必要な駆動禁止時間を電動オイルポンプ10eの発熱量に基づいて算出する。これにより、電動オイルポンプ10eの駆動時間が短く、電動オイルポンプ10eの発熱量が小さい場合、電動オイルポンプ10eの冷却に必要な時間が短いにも関わらず、必要な駆動禁止時間経過後において電動オイルポンプ10eの駆動が禁止されることを防止し、駆動禁止時間が不要に長く設定されることを防止することができる。従って、コーストストップ制御、またはアイドルストップ制御が短時間実行された後、一時的にコーストストップ制御、またはアイドルストップ制御の条件が不成立となり、その後すぐに条件が成立するシーンでは、コーストストップ制御、またはアイドルストップ制御を実行することができ、エンジン1の燃費を向上することができる。
【0091】
さらに、電動オイルポンプ10eの発熱量が大きい場合には、電動オイルポンプ10eが十分に冷却されるまで電動オイルポンプ10eの駆動が禁止されるので、電動オイルポンプ10eが過熱することを防止し、電動オイルポンプ10eの構成部品の劣化を抑制し、電動オイルポンプ10eの吐出性能、及び耐久性が悪化することを抑止することができる。
【0092】
発熱量を電動オイルポンプ10eの駆動時間に基づいて算出することで、温度センサなどのセンサ類を用いることなく、電動オイルポンプ10eの発熱量を算出することができる。
【0093】
電動オイルポンプ10eは駆動時間が長くなるほど、発熱量が多くなる。本実施形態では、電動オイルポンプ10eの駆動時間が長いほど、電動オイルポンプ10eの駆動禁止時間を長くする。これにより、電動オイルポンプ10eが過熱することを防止し、電動オイルポンプ10eの吐出性能、及び耐久性が悪化することを抑止することができる。また、電動オイルポンプ10eの駆動時間が短く、電動オイルポンプ10eを冷却するために必要な時間が短い場合には、駆動禁止時間を短くする。これにより、電動オイルポンプ10eの状態に応じて適宜コーストストップ制御、またはアイドルストップ制御を実行することができ、エンジン1の燃費を向上することができる。
【0094】
電動オイルポンプ10eはオフ状態からオン状態となる時に、多くの電流が流れ、電動オイルポンプ10eを継続している場合よりも発熱量が多くなる。本実施形態では、冷却タイマの経過時間が所定時間内であり、かつ電動オイルポンプ10eの駆動回数が所定回数以上である場合には、駆動回数が多いほど、駆動禁止時間を長くする。これにより、短時間で電動オイルポンプ10eの駆動、停止が繰り返された場合には、駆動回数が多いほど、駆動禁止時間を長くし、電動オイルポンプ10eが過熱することを防止し、電動オイルポンプ10eの吐出性能、及び耐久性が悪化することを抑止することができる。
【0095】
また、本実施形態では、電動オイルポンプ10eの駆動回数が所定回数以上となるときの冷却タイマの経過時間が短いほど、駆動禁止時間を長くする。これにより、電動オイルポンプ10eが過熱することを防止し、電動オイルポンプ10eの吐出性能、及び耐久性が悪化することを抑止することができる。
【0096】
冷却タイマの経過時間が冷却時間となると、冷却時間となった冷却タイマをリセットし、駆動回数を減算する。これにより、現在の電動オイルポンプ10eの熱量に応じて駆動禁止時間を算出することができる。
【0097】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0098】
上記実施形態では、電動オイルポンプ10eの駆動時間に基づいて電動オイルポンプ10eの発熱量を算出したが、アイドルストップ制御、またはコーストストップ制御中のエンジン1の自動停止時間に基づいて算出してもよい。これによっても、温度センサなどのセンサ類を用いることなく、電動オイルポンプ10eの発熱量を算出することができる。この場合、電動オイルポンプ10eの駆動禁止時間は、エンジン1の自動停止時間が長いほど、長くなる。これにより、電動オイルポンプ10eが過熱することを防止し、電動オイルポンプ10eの吐出性能、及び耐久性が悪化することを抑止することができる。また、電動オイルポンプ10eを冷却するための時間が短い場合には、駆動禁止時間を短くする。これにより、電動オイルポンプ10eの状態に応じて適宜コーストストップ制御、またはアイドルストップ制御を実行し、エンジン1の燃費を向上することができる。
【0099】
また、温度センサによって電動オイルポンプ10eの温度を検出し、検出した温度に基づいて電動オイルポンプ10eの駆動禁止時間を算出してもよい。電動オイルポンプ10eの駆動時間が長い場合でも電動オイルポンプ10eの負荷が小さい場合には、電動オイルポンプ10eの発熱量は小さくなる。さらに、電動オイルポンプ10eの駆動時間が短い場合でも電動オイルポンプ10eの負荷が大きい場合には、電動オイルポンプ10eの発熱量は大きくなる。そのため、温度センサによって検出した温度に基づいて、電動オイルポンプ10eの発熱量を精度良く算出し、精度良く電動オイルポンプ10eの駆動を禁止することができる。
【0100】
また、電動オイルポンプ10eの負荷を検出し、負荷に応じて電動オイルポンプ10eの発熱量を算出してもよい。これにより、温度センサを用いずに電動オイルポンプ10eの発熱量を精度良く算出することができ、精度良く電動オイルポンプ10eの駆動を禁止することができる。
【0101】
電動オイルポンプ10eの負荷を、電動オイルポンプ10eに流れる電流の積分値に基づいて算出してもよい。これにより、電動オイルポンプ10eで発生する熱を推定することができる。
【0102】
また、電動オイルポンプ10eの負荷を、電動オイルポンプ10eの回転速度の積分値に基づいて算出してもよい。これにより、電動オイルポンプ10eに流れる電流を検出できないような場合でも、電動オイルポンプ10eで発生する熱を推定することができる。
【0103】
本願は2013年3月12日に日本国特許庁に出願された特願2013−49405に基づく優先権を主張し、この出願の全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7