(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記耐熱多孔質層(II)に含まれる耐熱性微粒子が、アルミナ、シリカおよびベーマイトよりなる群から選択される少なくとも1種の微粒子である請求項1または2に記載の電池用セパレータ。
前記耐熱多孔質層(II)に含まれる耐熱性微粒子の少なくとも一部が、一次粒子が凝集した二次粒子構造を有する微粒子である請求項1〜4のいずれかに記載の電池用セパレータ。
Liイオンを吸蔵放出可能な活物質を有する正極と、Liイオンを吸蔵放出可能な活物質を有する負極と、有機電解液と、セパレータとを備えており、前記セパレータとして、請求項1〜7のいずれかに記載の電池用セパレータを有することを特徴とする電池。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の電池用セパレータ(以下、単に「セパレータ」という場合がある)は、樹脂多孔質膜(I)と耐熱多孔質層(II)とを少なくとも有する多層多孔質膜からなるものであり、多層多孔質膜の透気度X(sec/100ml)と樹脂多孔質膜(I)の透気度Y(sec/100ml)との関係が、X−Y≦50である。
【0015】
なお、本明細書でいう「透気度」とは、JIS P 8117に準拠した方法で測定され、0.879g/mm
2の圧力下で100mlの空気が膜を透過する秒数で示されるガーレー値のことを意味している。
【0016】
詳しくは後述するが、本発明のセパレータにおける樹脂多孔質膜(I)は、正極と負極の短絡を防止しつつ、イオンを透過するセパレータ本来の機能を有する層であり、耐熱多孔質層(II)はセパレータに耐熱性を付与する役割を担う層であるが、耐熱多孔質層(II)の存在によって、樹脂多孔質膜(I)のイオン透過性が阻害される虞がある。しかしながら、多層多孔質膜の透気度Xと樹脂多孔質膜(I)の透気度Yとの差X−Yが50以下であれば、耐熱多孔質層(II)が樹脂多孔質膜(I)のイオン透過性を阻害する影響が少ないため、電池の負荷特性など、電池内でのイオンの移動度によって影響を受ける電池特性の低下が抑制される。電池特性の低下は、X−Yの値が小さいほど抑制され、例えば、X−Yは30以下であることがより好ましい。
【0017】
なお、耐熱多孔質層(II)にもイオン透過性が要求される一方で、樹脂多孔質膜(I)のイオン透過性をある程度抑制するような場合の方が、セパレータの短絡防止効果がより向上する。よって、多層多孔質膜の透気度X(sec/100ml)と、樹脂多孔質膜の透気度Y(sec/100ml)との差X−Yは、5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましい。
【0018】
なお、本発明のセパレータ全体の透気度は、10〜300sec/100mlであることが好ましい。セパレータの透気度が大きすぎるとイオン透過性が小さくなり、小さすぎるとセパレータの強度が小さくなることがあるからである。後述する構成のセパレータとすることで、前記の透気度を確保することができる。
【0019】
また、本発明のセパレータにおいては、多層多孔質膜のバブルポイント細孔径をS(μm)、樹脂多孔質膜(I)のバブルポイント細孔径をR(μm)としたとき、R−S≦0.01の関係を満たすことが好ましい。
【0020】
なお、本明細書でいう「バブルポイント細孔径」とは、JIS K 3832に規定される方法によって測定されるバブルポイント値P(Pa)を用い、下記式によって算出される細孔径(最大孔径)であり、例えば、後述する実施例において用いた装置を使用することで測定することができる。
d=(K4γcosθ)/P
ここで、前記式中、d:バブルポイント細孔径(μm)、γ:表面張力(mN/m)、θ:接触角(°)、K:キャピラリー定数、である。
【0021】
このようなセパレータを用いた電池では、電池内でのイオンの移動が耐熱多孔質層(II)によって阻害され難く、負荷特性などの電池特性の低下が、より良好に抑制される
。
【0022】
なお、多層多孔質膜のバブルポイント細孔径は、0.05μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、また、5μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましい。更に、樹脂多孔質膜(I)のバブルポイント細孔径は、0.01μm以上であることが好ましく、0.05μm以上であることがより好ましく、また、0.5μm以下であることが好ましく、0.3μm以下であることがより好ましい。
【0023】
また、本発明のセパレータにおいては、樹脂多孔質膜(I)の空孔率Aが30〜70%、耐熱多孔質層(II)の空孔率Bが30〜75%であることが好ましく、更に、A≦Bの関係を満たすことがより好ましい。
【0024】
樹脂多孔質膜(I)の空孔率や耐熱多孔質層(II)の空孔率を前記の下限値以上とすることで、電池内において、イオンをより移動させやすくして、負荷特性などの電池特性の低下を、より良好に抑制することができる。また、樹脂多孔質膜(I)の空孔率や耐熱多孔質層(II)の空孔率を前記の上限値以下とすることで、樹脂多孔質膜(I)や耐熱多孔質層(II)の強度を高めて、それらの取り扱い性を良好にすることができる。更に、樹脂多孔質膜(I)の空孔率Aと、耐熱多孔質層(II)の空孔率Bとを、A≦Bの関係を満たすようにすることで、電池内でのイオンの移動を、耐熱多孔質層(II)によって阻害され難くして、負荷特性などの電池特性の低下を、更に良好に抑制することができる。
【0025】
また、セパレータ全体の空孔率は、非水電解質の保持量を確保してイオン透過性を良好にするために、乾燥した状態で、30%以上であることが好ましい。一方、セパレータ強度の確保と内部短絡の防止の観点から、セパレータの空孔率は、乾燥した状態で、70%以下であることが好ましい。なお、セパレータの空孔率:C(%)は、セパレータの厚み、面積あたりの質量、構成成分の密度から、下記(1)式を用いて各成分iについての総和を求めることにより計算できる。
C = 100−(Σa
i/ρ
i)×(m/t) (1)
ここで、前記式中、a
i:質量%で表した成分iの比率、ρ
i:成分iの密度(g/cm
3)、m:セパレータの単位面積あたりの質量(g/cm
2)、t:セパレータの厚み(cm)である。
【0026】
また、前記(1)式において、mを樹脂多孔質膜(I)の単位面積あたりの質量(g/cm
2)とし、tを樹脂多孔質膜(I)の厚み(cm)とすることで、前記(1)式を用いて、セパレータの空孔率:Cの代わりに、樹脂多孔質膜(I)の空孔率:A(%)を求めることができる。更に、前記(1)式において、mを耐熱多孔質層(II)の単位面積あたりの質量(g/cm
2)とし、tを耐熱多孔質層(II)の厚み(cm)とすることで、前記(1)式を用いて、セパレータの空孔率:Cの代わりに、耐熱多孔質層(II)の空孔率:B(%)を求めることができる。
【0027】
本発明のセパレータを構成する多層多孔質膜に係る樹脂多孔質膜(I)としては、正極と負極との短絡を防止しつつ、イオンを透過する特性を有し、電池内での酸化還元反応に対して安定で、かつ電池に用いる有機電解液などの電解液に安定であれば、特に制限はない。
【0028】
また、樹脂多孔質膜(I)を構成する樹脂[以下、樹脂(A)という。]に熱可塑性樹脂を用いることで、電池内が異常に過熱した際に、樹脂の溶融によりセパレータの孔を塞ぐ、いわゆるシャットダウン機能を持たせることもできる。よって、樹脂多孔質膜(I)にシャットダウン機能を持たせる場合、樹脂多孔質膜(I)を構成する樹脂(A)には、融点が80〜140℃の樹脂を用いることが望ましい。樹脂の融点は、例えば、JIS K 7121の規定に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される融解温度により求めることができる。
【0029】
前記の融点を有する樹脂(A)の具体例としては、ポリエチレン(PE)、共重合ポリオレフィン、またはポリオレフィン誘導体(塩素化ポリエチレンなど)、ポリオレフィンワックス、石油ワックス、カルナバワックスなどが挙げられる。前記共重合ポリオレフィンとしては、エチレン−ビニルモノマー共重合体、より具体的には、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体(エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体など)などが例示できる。前記共重合ポリオレフィンにおけるエチレン由来の構造単位は、85モル%以上であることが望ましい。また、ポリシクロオレフィンなどを用いることもできる。樹脂(A)には、前記例示の樹脂を1種単独で用いてもよく、2種以上を用いても構わない。樹脂多孔質膜(I)を構成する樹脂としては、PE、ポリオレフィンワックス、またはエチレン由来の構造単位が85モル%以上のEVAが好ましく、PE単独またはPEを主成分とすることがより好ましい。また、ポリエチレン製の膜と他のポリオレフィン製の膜との多層構造の膜としてもよい。なお、樹脂(A)は、必要に応じて、樹脂に添加される公知の各種添加剤(例えば、酸化防止剤など)を含有していても構わない。
【0030】
樹脂多孔質膜(I)は、前記の樹脂(A)を主成分とする微多孔膜で構成する。このような微多孔膜としては、例えば、従来から知られているリチウム二次電池などの電気化学素子で使用されているポリオレフィン(PE、エチレン−プロピレン共重合体などの共重合ポリオレフィンなど)製の微多孔膜、すなわち、無機フィラーなどを混合したポリオレフィンを用いて形成したフィルムやシートに、一軸または二軸延伸を施して微細な空孔を形成したものなどを用いることができる。また、前記の樹脂(A)と他の樹脂とを混合してフィルムやシートとし、その後、前記他の樹脂のみを溶解する溶媒中に、これらフィルムやシートを浸漬して、前記他の樹脂のみを溶解させて空孔を形成したものを、樹脂多孔質膜(I)として用いることもできる。
【0031】
また、樹脂多孔質膜(I)には、セパレータにシャットダウン機能を付与する作用を損なわない範囲で、その強度などを向上するためにフィラーなどを含有させることもできる。樹脂多孔質膜(I)に使用可能なフィラーとしては、例えば、後述する耐熱多孔質層(II)に使用可能な耐熱性微粒子と同じものが挙げられる。
【0032】
樹脂多孔質膜(I)に使用するフィラーの粒径は、平均粒径で、例えば、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上であって、好ましくは10μm以下、より好ましくは1μm以下である。なお、本明細書でいう平均粒径は、例えば、レーザー散乱粒度分布計(例えば、HORIBA社製「LA−920」)を用い、フィラーを溶解しない媒体に、これら微粒子を分散させて測定した数平均粒子径として規定することができる[後述する耐熱多孔質層(II)に係る耐熱性微粒子についても同じである。]。
【0033】
前記のような構成の樹脂多孔質膜(I)を備えることで、セパレータにシャットダウン機能を付与することが容易となり、電池の内部温度上昇時における安全性確保を達成することが容易となる。
【0034】
樹脂多孔質膜(I)における樹脂(A)の含有量は、シャットダウンの効果をより得やすくするために、例えば、下記のようであることが好ましい。セパレータの全構成成分中における樹脂(A)の体積は、10体積%以上であることが好ましく、20体積%以上であることがより好ましい。また、樹脂(A)の体積が、樹脂多孔質膜(I)の全構成成分中、50体積%以上であることが好ましく、70体積%以上であることがより好ましく、80体積%以上であることがより好ましい[樹脂(A)が100体積%であってもよい。]。更に、後記の方法により求められる耐熱多孔質層(II)の空孔率(空孔率B)が30〜75%であり、かつ樹脂(A)の体積が、耐熱多孔質層(II)の空孔体積の50%以上であることが好ましい。
【0035】
本発明のセパレータを構成する多層多孔質膜に係る耐熱多孔質層(II)は、前記の通り、セパレータに耐熱性を付与する役割を担う層であり、例えば、電池が高温となった場合、喩え微孔性フィルム層(I)が収縮しても、収縮し難い耐熱多孔質層(II)によって、セパレータが熱収縮した場合に発生し得る正負極の直接の接触による短絡を防止することができる。また、後述するように樹脂多孔質膜(I)と耐熱多孔質層(II)が一体化した構成の場合には、この耐熱多孔質層(II)がセパレータの骨格として作用し、樹脂多孔質膜(I)の熱収縮、すなわちセパレータ全体の熱収縮を抑制する。
【0036】
なお、耐熱多孔質層(II)は、耐熱性微粒子を主体として含むものであるが、本明細書でいう「耐熱性微粒子を主体として含む」とは、層内の固形分比率(ただし、後記の多孔質基体を有する場合においては、多孔質基体を除いた固形分比率)で、耐熱性微粒子が50体積%以上であることを意味している。
【0037】
耐熱性微粒子としては耐熱温度が150℃以上の耐熱性および電気絶縁性を有しており、電池の有する電解液やセパレータ製造の際に使用する溶媒(詳しくは後述する)に対して安定であり、更に電池の作動電圧範囲において酸化還元されにくい電気化学的に安定なものであれば、有機微粒子でも無機微粒子でもよいが、安定性などの点から無機微粒子がより好ましく用いられる。なお、後記の多孔質基体を除き、本明細書でいう「耐熱温度が150℃以上」とは、少なくとも150℃において軟化などの変形が見られないことを意味している。
【0038】
より具体的には、無機微粒子としては、例えば、酸化鉄、シリカ(SiO
2)、アルミナ(Al
2O
3)、TiO
2、BaTiO
3、ZrO
2などの無機酸化物;窒化アルミニウム、窒化ケイ素などの無機窒化物;フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウムなどの難溶性のイオン結晶;シリコン、ダイヤモンドなどの共有結合性結晶;モンモリロナイトなどの粘土;などの微粒子が挙げられる。ここで、前記無機酸化物は、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、マイカなどの鉱物資源由来物質またはこれらの人造物などであってもよい。また、金属、SnO
2、スズ−インジウム酸化物(ITO)などの導電性酸化物、カーボンブラック、グラファイトなどの炭素質材料などで例示される導電性材料の表面を、電気絶縁性を有する材料(例えば、前記の無機酸化物など)で被覆することにより電気絶縁性を持たせた微粒子であってもよい。
【0039】
また、有機微粒子(有機粉末)としては、架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリスチレン、架橋ポリジビニルベンゼン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体架橋物、ポリイミド、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド縮合物などの各種架橋高分子微粒子[ただし、樹脂(A)に該当しないもの]や、ポリプロピレン(PP)、ポリスルフォン、ポリアクリロニトリル、ポリアラミド、ポリアセタール、熱可塑性ポリイミドなどの耐熱性高分子微粒子などが例示できる。また、これらの有機微粒子を構成する有機樹脂(高分子)は、前記例示の材料の混合物、変性体、誘導体、共重合体(ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体)、架橋体(前記の耐熱性高分子の場合)であってもよい。
【0040】
耐熱性微粒子には、前記例示の各種微粒子を1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよいが、アルミナ、シリカおよびベーマイトのうちの少なくとも1種を使用することがより好ましい。
【0041】
耐熱性微粒子の形態としては、例えば、球状に近い形状を有していてもよく、板状の形状を有していてもよいが、耐熱多孔質層(II)に含まれる耐熱性微粒子の少なくとも一部が板状粒子であることが好ましい。耐熱性微粒子の全てが板状粒子でもよい。耐熱多孔質層(II)に板状粒子を使用することで、短絡防止作用をより高めることができる。
【0042】
板状の耐熱性微粒子としては、各種市販品が挙げられ、例えば、旭硝子エスアイテック社製「サンラブリー(商品名)」(SiO
2)、石原産業社製「NST−B1(商品名)」の粉砕品(TiO
2)、堺化学工業社製の板状硫酸バリウム「Hシリーズ(商品名)」、「HLシリーズ(商品名)」、林化成社製「ミクロンホワイト(商品名)」(タルク)、林化成社製「ベンゲル(商品名)」(ベントナイト)、河合石灰社製「BMM(商品名)」や「BMT(商品名)」(ベーマイト)、河合石灰社製「セラシュールBMT−B(商品名)」[アルミナ(Al
2O
3)]、キンセイマテック社製「セラフ(商品名)」(アルミナ)、斐川鉱業社製「斐川マイカ Z−20(商品名)」(セリサイト)などが入手可能である。この他、SiO
2、Al
2O
3、ZrO、CeO
2については、特開2003−206475号公報に開示の方法により作製することができる。
【0043】
耐熱性微粒子が板状粒子の場合の形態としては、アスペクト比(板状粒子中の最大長さと板状粒子の厚みとの比)が、好ましくは5以上、より好ましくは10以上であって、好ましくは100以下、より好ましくは50以下である。また、耐熱性微粒子の平板面の長軸方向長さと短軸方向長さの比(長軸方向長さ/短軸方向長さ)の平均値は、3以下、より好ましくは2以下で、1に近い値であることが望ましい。
【0044】
板状粒子におけるアスペクト比、および前記の平板面の長軸方向長さと短軸方向長さの比の平均値は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影した画像を画像解析することにより求めることができる。
【0045】
耐熱性微粒子として板状粒子を用いる場合、耐熱多孔質層(II)中での板状粒子の存在形態は、平板面がセパレータの面に対して略平行であることが好ましく、より具体的には、セパレータの表面近傍における板状粒子について、その平板面とセパレータ面との平均角度が30°以下であることが好ましい[最も好ましくは、当該平均角度が0°、すなわち、セパレータの表面近傍における板状の平板面が、セパレータの面に対して平行である]。ここでいう「表面近傍」とは、セパレータの表面から全体厚みに対しておよそ10%の範囲を指す。板状粒子の存在形態が前記のような状態となるように板状粒子の配向性を高めることで、電極表面に析出するリチウムデンドライトや電極表面の活物質の突起により生じ得る内部短絡をより効果的に防ぐことができる。なお、耐熱多孔質層(II)中における板状粒子の存在形態は、セパレータの断面をSEMにより観察することにより把握することができる。
【0046】
また、耐熱多孔質層(II)に含まれる耐熱性微粒子の少なくとも一部が、一次粒子が凝集した二次粒子構造を有する微粒子であることが好ましい。耐熱性微粒子の全部が、前記二次粒子構造を有する微粒子であってもよい。耐熱多孔質層(II)が前記二次粒子構造の耐熱性微粒子を含有することで、前述した板状粒子を用いた場合と同様の短絡防止効果を確保することができ、また、粒子同士の密着をある程度防止して粒子同士の空隙を適度に保つことが可能となることから、耐熱多孔質層(II)のイオン透過性を高めることが容易となり、多層多孔質層の透気度Xと、樹脂多孔質膜(I)の透気度Yとの差X−Yを、前記の値に調整しやすくなる。前記二次粒子構造の耐熱性微粒子の例としては、大明化学社製「ベーマイト C06(商品名)」、「ベーマイト C20(商品名)」(ベーマイト)、米庄石灰工業社製「ED−1(商品名)」(CaCO
3)、J.M.Huber社製「Zeolex 94HP(商品名)」(クレイ)などが挙げられる。
【0047】
耐熱性微粒子の粒径は、多層多孔質膜の透気度Xと、樹脂多孔質膜(I)の透気度Yとの差X−Yを、前記の値に調整しやすいことから、前記の方法により測定される平均粒径で、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。すなわち、粒径が小さすぎる耐熱性微粒子を用いると、耐熱多孔質層(II)の細孔径が小さくなって、多層多孔質膜のバブルポイント細孔径を前記好適値にすることが難しくなり、更に、多層多孔質膜中の細孔の経路が複雑になりすぎる虞があることから、多層多孔質膜の透気度を前記好適値に調整し難くなる。また、耐熱性微粒子の粒径があまり大きすぎると、耐熱多孔質層(II)の形成によるセパレータの耐熱性向上効果が小さくなる虞があることから、耐熱性微粒子の平均粒径は、15μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。
【0048】
耐熱多孔質層(II)における耐熱性微粒子の量は、耐熱多孔質層(II)の構成成分の全体積中[ただし、後記の多孔質基体を使用する場合には、多孔質基体を除く構成成分の全体積中。耐熱多孔質層(II)の各構成成分の含有量について、以下同じ。]、70体積%以上であることが好ましく、80体積%以上であることがより好ましく、90体積%以上であることが更に好ましい。耐熱多孔質層(II)中の耐熱性微粒子の量を前記のように多くすることで、電池が高温となった際の正極と負極との直接の接触による短絡の発生をより良好に抑制することができ、また、特に樹脂多孔質膜(I)と耐熱多孔質層(II)とを一体化した構成のセパレータの場合には、セパレータ全体の熱収縮を良好に抑制することができる。
【0049】
また、耐熱多孔質層(II)には、耐熱性微粒子同士を結着したり、必要に応じて樹脂多孔質膜層(I)と耐熱多孔質層(II)とを結着したりするために有機バインダを含有させることが好ましく、このような観点から、耐熱多孔質層(II)における耐熱性微粒子量の好適上限値は、例えば、耐熱多孔質層(II)の構成成分の全体積中、99体積%である。なお、耐熱多孔質層(II)における耐熱性微粒子の量を70体積%未満とすると、例えば、耐熱多孔質層(II)中の有機バインダ量を多くする必要が生じるが、その場合には耐熱多孔質層(II)の空孔が有機バインダによって埋められやすく、セパレータとしての機能が低下する虞があり、また、開孔剤などを用いて多孔質化した場合には、前記フィラー同士の間隔が大きくなりすぎて、熱収縮を抑制する効果が低下する虞がある。
【0050】
耐熱多孔質層(II)には、セパレータの形状安定性の確保や、耐熱多孔質層(II)と樹脂多孔質膜(I)との一体化などのために、有機バインダを含有させることが好ましい。EVA(酢酸ビニル由来の構造単位が20〜35モル%のもの)、エチレン−エチルアクリレート共重合体などのエチレン−アクリル酸共重合体、フッ素系ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、架橋アクリル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂などが挙げられるが、特に、150℃以上の耐熱温度を有する耐熱性のバインダが好ましく用いられる。有機バインダは、前記例示のものを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
前記例示の有機バインダの中でも、EVA、エチレン−アクリル酸共重合体、フッ素系ゴム、SBRなどの柔軟性の高いバインダが好ましい。このような柔軟性の高い有機バインダの具体例としては、三井デュポンポリケミカル社の「エバフレックスシリーズ(EVA)」、日本ユニカー社のEVA、三井デュポンポリケミカル社の「エバフレックス−EEAシリーズ(エチレン−アクリル酸共重合体)」、日本ユニカー社のEEA、ダイキン工業社の「ダイエルラテックスシリーズ(フッ素ゴム)」、JSR社の「TRD−2001(SBR)」、日本ゼオン社の「EM−400B(SBR)」などがある。
【0052】
なお、前記の有機バインダを耐熱多孔質層(II)に使用する場合には、後述する耐熱多孔質層(II)形成用の組成物の溶媒に溶解させるか、または分散させたエマルジョンの形態で用いればよい。
【0053】
また、セパレータの形状安定性や柔軟性を確保するために、耐熱多孔質層(II)において、繊維状物や、後記の樹脂(B)の微粒子などを混在させてもよい。繊維状物としては、耐熱温度が150℃以上であって、電気絶縁性を有しており、電気化学的に安定で、更に電池の有する電解液や、セパレータ製造の際に使用する溶媒に安定であれば、特に材質に制限はない。なお、本明細書でいう「繊維状物」とは、アスペクト比[長尺方向の長さ/長尺方向に直交する方向の幅(直径)]が4以上のものを意味しており、アスペクト比は10以上であることが好ましい。
【0054】
繊維状物の具体的な構成材料としては、例えば、セルロースおよびその変成体[カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)など]、ポリオレフィン[ポリプロピレン(PP)、プロピレンの共重合体など]、ポリエステル[ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)など]、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアラミド、ポリアミドイミド、ポリイミドなどの樹脂;ガラス、アルミナ、ジルコニア、シリカなどの無機酸化物;などを挙げることができ、これらの構成材料を2種以上併用して繊維状物を構成してもよい。また、繊維状物は、必要に応じて、公知の各種添加剤(例えば、樹脂である場合には酸化防止剤など)を含有していても構わない。
【0055】
また、耐熱多孔質層(II)に多孔質基体を用いることができる。多孔質基体は、前記の繊維状物が織布、不織布(紙を含む)などのシート状物を形成してなる耐熱温度が150℃以上のものであり、市販の不織布などを基体として用いることができる。この態様のセパレータでは、多孔質基体の空隙内に耐熱性微粒子を含有させることが好ましいが、多孔質基体と耐熱性微粒子とを結着させるために、前記の有機バインダを用いることもできる。
【0056】
なお、多孔質基体の「耐熱性」は、軟化などによる実質的な寸法変化が生じないことを意味し、対象物の長さの変化、すなわち、多孔質基体においては、室温での長さに対する収縮の割合(収縮率)が5%以下を維持することのできる上限温度(耐熱温度)がシャットダウン温度よりも十分に高いか否かで耐熱性を評価する。シャットダウン後の電池の安全性を高めるために、多孔質基体は、シャットダウン温度よりも20℃以上高い耐熱温度を有することが望ましく、より具体的には、多孔質基体の耐熱温度は、150℃以上であることが好ましく、180℃以上であることがより好ましい。
【0057】
繊維状物(多孔質基体を構成する繊維状物、その他の繊維状物を含む)の直径は、耐熱多孔質層(II)の厚み以下であればよいが、例えば、0.01〜5μmであることが好ましい。径が大きすぎると、繊維状物同士の絡み合いが不足するため、例えばシート状物を形成して多孔質基体を構成する場合に、その強度が小さくなって取り扱いが困難となることがある。また、径が小さすぎると、セパレータの空隙が小さくなりすぎて、イオン透過性が低下する傾向にあり、負荷特性などの電池特性の低下抑制効果が小さくなることがある。
【0058】
セパレータにおける繊維状物の含有量は、全構成成分中、例えば、10体積%以上であることが好ましく、20体積%以上であることがより好ましく、また、90体積%以下であることが好ましく、80体積%以下であることがより好ましい。セパレータ中での繊維状物の存在状態は、例えば、長軸(長尺方向の軸)の、セパレータ面に対する角度が平均で30°以下であることが好ましく、20°以下であることがより好ましい。
【0059】
また、繊維状物を多孔質基体として用いる場合には、多孔質基体の占める割合が、耐熱多孔質層(II)の全構成成分中、10体積%以上90体積%以下となるように、他の成分の含有量を調整するのが望ましい。
【0060】
樹脂(B)としては、電気化学的に安定であり、かつ電池の有する電解液に安定であるものであり、耐熱性微粒子を構成し得るもの以外であれば特に制限はないが、柔軟性の高いものが望ましい。より具体的には、ポリオレフィン(PEなどのように、耐熱性微粒子を構成し得るもの以外のポリオレフィン)、アイオノマー樹脂、シリコンゴム、ポリウレタンなどを用いることができる。
【0061】
樹脂(B)の粒径は、耐熱性微粒子などと同じ方法で測定される平均粒径で、0.1〜20μmであることが好ましい。また、樹脂(B)を使用する場合、その含有量は、耐熱多孔質層(II)の全構成成分中、10〜30体積%であることが好ましい。
【0062】
電池における短絡防止効果をより高め、セパレータの強度を確保して取り扱い性を良好にする観点から、セパレータの厚みは、3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましい。他方、電池のエネルギー密度をより高める観点からは、セパレータの厚みは、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましい。
【0063】
また、樹脂多孔質膜(I)の厚みは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であって、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下である。そして、耐熱多孔質層(II)の厚みは、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上であって、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。また、樹脂多孔質膜(I)の厚みaと耐熱多孔質層(II)の厚みbとの比a/bは、0.5以上であることが好ましく、10以下であることが好ましい。前記a/bが小さすぎると、セパレータにおいて樹脂多孔質膜(I)の占める割合が小さくなりすぎて、セパレータ本来の機能が損なわれたり、樹脂多孔質膜(I)によってシャットダウン特性を確保する場合には、シャットダウン特性が低下したりする虞がある。また、前記a/bが大きすぎると、セパレータにおいて耐熱多孔質層(II)の占める割合が小さくなりすぎて、セパレータ全体の耐熱性向上効果が小さくなる虞がある。
【0064】
本発明のセパレータのシャットダウン特性は、例えば、本発明のセパレータを有する電池の内部抵抗の温度変化により求めることができる。具体的には、電池を恒温槽中に設置し、温度を室温から毎分1℃の割合で上昇させ、電池の内部抵抗が上昇する温度を求めることで測定することが可能である。この場合、150℃における電池の内部抵抗は、室温の5倍以上であることが好ましく、10倍以上であることが更に好ましい。セパレータを前記の構成とすることで、前記のシャットダウン特性を確保することができる。
【0065】
また、セパレータの強度としては、直径1mmのニードルを用いた突き刺し強度で50g以上であることが望ましい。かかる突き刺し強度が小さすぎると、リチウムのデンドライト結晶が発生した場合に、セパレータの突き破れによる短絡が発生する場合がある。セパレータを前記の構成とすることで、前記の突き刺し強度を確保することができる。
【0066】
また、本発明のセパレータは、150℃での熱収縮率が5%以下であることが好ましい。このような特性のセパレータであれば、電池内部が150℃程度になっても、セパレータの収縮が殆ど生じないため、正負極の接触による短絡をより確実に防止することができ、高温での電池の安全性をより高めることができる。セパレータを前記の構成を採用することで、前記の熱収縮率を確保することができる。
【0067】
ここでいう熱収縮率は、樹脂多孔質膜(I)と耐熱多孔質層(II)が一体化している場合は、その一体化したセパレータ(多層多孔質膜)全体の収縮率を指し、樹脂多孔質膜(I)と耐熱多孔質層(II)が独立している場合には、それぞれの収縮率の小さい方の値を指す。また、後述するように、樹脂多孔質膜(I)および/または耐熱多孔質層(II)は、電極と一体化する構成とすることもできるが、その場合は、電極と一体化した状態で測定した熱収縮率を指す。
【0068】
なお、前記の「150℃の熱収縮率」とは、セパレータ(多層多孔質膜)または樹脂多孔質膜(I)および耐熱多孔質層(II)(電極と一体化した場合には電極と一体化した状態で)を恒温槽に入れ、温度を150℃まで上昇させて3時間放置した後に取り出して、恒温槽に入れる前のセパレータまたは樹脂多孔質膜(I)および耐熱多孔質層(II)の寸法と比較することで求められる寸法の減少割合を百分率で表したものである。
【0069】
本発明のセパレータの製造方法としては、例えば、下記の(a)または(b)の方法を採用できる。製造方法(a)は、多孔質基体に、耐熱性微粒子を含有する耐熱多孔質層(II)形成用組成物(スラリーなどの液状組成物など)を塗布した後、樹脂多孔質膜(I)と重ね合わせて乾燥し、1つのセパレータとする方法である。
【0070】
前記の場合の多孔質基体としては、具体的には、前記例示の各材料を構成成分に含む繊維状物の少なくとも1種で構成される織布や、これら繊維状物同士が絡み合った構造を有する不織布などの多孔質シートなどが挙げられる。より具体的には、紙、PP不織布、ポリエステル不織布(PET不織布、PEN不織布、PBT不織布など)、PAN不織布などの不織布が例示できる。
【0071】
耐熱多孔質層(II)形成用組成物は、耐熱性微粒子の他、樹脂(B)などで形成された微粒子、有機バインダなどを含有し、これらを溶媒(分散媒を含む。以下同じ。)に分散させたものである。なお、有機バインダについては溶媒に溶解させることもできる。耐熱多孔質層(I)形成用組成物に用いられる溶媒は、耐熱性微粒子、樹脂(B)の微粒子などを均一に分散でき、また、有機バインダを均一に溶解または分散できるものであればよいが、例えば、トルエンなどの芳香族炭化水素、テトラヒドロフランなどのフラン類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類など、一般に有機溶媒が好適に用いられる。なお、これらの溶媒に、界面張力を制御する目的で、アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコールなど)、または、モノメチルアセテートなどの各種プロピレンオキサイド系グリコールエーテルなどを適宜添加してもよい。また、有機バインダが水溶性である場合、エマルジョンとして使用する場合などでは、水を溶媒としてもよく、この際にもアルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールなど)を適宜加えて界面張力を制御することもできる。
【0072】
耐熱多孔質層(II)形成用組成物は、耐熱性微粒子、樹脂(B)の微粒子および有機バインダを含む固形分含量を、例えば10〜80質量%とすることが好ましい。
【0073】
前記多孔質基体の空孔の開口径が比較的大きい場合、例えば、5μm以上の場合には、これが電池の短絡の要因となりやすい。よって、この場合には、耐熱性微粒子や樹脂(A)などの全部または一部が、多孔質基体の空隙内に存在する構造とすることが好ましい。多孔質基体の空隙内に耐熱性微粒子、樹脂(A)などを存在させるには、例えば、これらを含有する耐熱多孔質層(II)形成用組成物を多孔質基体に塗布した後に一定のギャップを通し、余分の組成物を除去した後、乾燥するなどの工程を用いればよい。
【0074】
なお、耐熱性微粒子として板状粒子を用いる場合、セパレータに含有させる板状粒子の配向性を高めてその機能をより有効に作用させるためには、板状粒子を含有する耐熱多孔質層(II)形成用組成物を多孔質基体に塗布し含浸させた後、前記組成物にシェアや磁場をかけるといった方法を用いればよい。例えば、前記のように、板状粒子を含有する耐熱多孔質層(II)形成用組成物を多孔質基体に塗布した後、一定のギャップを通すことで、前記組成物にシェアをかけることができる。
【0075】
また、板状粒子を始めとする耐熱性微粒子や樹脂(B)など、それぞれの構成物の持つ作用をより有効に発揮させるために、前記構成物を偏在させて、セパレータの膜面と平行または略平行に、前記構成物が層状に集まった形態としてもよい。
【0076】
本発明のセパレータの製造方法(b)は、耐熱多孔質層(II)形成用組成物に、更に必要に応じて繊維状物を含有させ、これを樹脂多孔質膜(I)の表面に塗布し、所定の温度で乾燥する方法である。
【0077】
また、(a)、(b)いずれの製造方法を採用する場合においても、セパレータを正極および負極の少なくとも一方の電極と一体化してもよい。セパレータを電極と一体化するには、例えば、セパレータの樹脂多孔質膜(I)側の面を電極とを重ねてロールプレスする方法などが採用できる。更に、製造方法(b)により、正極または負極の一方の表面に耐熱多孔質層(II)を形成し、この耐熱多孔質層(II)を一体化した電極にロールプレスなどの前記の方法により、樹脂多孔質膜(I)を一体化してもよい。
【0078】
なお、樹脂多孔質膜(I)と、耐熱多孔質層(II)とは、それぞれ1層ずつである必要はなく、複数の層がセパレータ中にあってもよい。例えば、樹脂多孔質膜(I)の両面に耐熱多孔質層(II)を配置した構成としてもよく、耐熱多孔質層(II)の両面に樹脂多孔質膜(I)を形成した構成としてもよい。ただし、層数を増やすことでセパレータの厚みを増やして、内部抵抗の増加やエネルギー密度の低下を招く虞があるので、層数を多くしすぎるのは好ましくなく、セパレータ層の層数は5層以下であることが好ましい。また、樹脂(A)は、粒子状で個々に独立して存在していてもよく、互いに、または繊維状物などに、一部が融着されていても構わない。
【0079】
本発明のセパレータを適用できる電池は、非水電解液を用いるものであれば特に限定されるものではなく、リチウム二次電池の他、リチウム一次電池など、高温での安全性が要求される用途であれば好ましく適用できる。すなわち、本発明の電池は、前記本発明のセパレータを備えていれば、その他の構成・構造については特に制限はなく、従来から知られている有機電解液を有する各種電池(リチウム二次電池、リチウム一次電池など)が備えている各種構成・構造を採用することができる。
【0080】
以下、一例として、リチウム二次電池への適用について詳述する。リチウム二次電池の形態としては、スチール缶やアルミニウム缶などを外装缶として使用した筒形(角筒形や円筒形など)などが挙げられる。また、金属を蒸着したラミネートフィルムを外装体としたソフトパッケージ電池とすることもできる。
【0081】
正極としては、従来から知られているリチウム二次電池に用いられている正極、すなわち、Liイオンを吸蔵放出可能な活物質を含有する正極であれば特に制限はない。例えば、活物質として、Li
1+xMO
2(−0.1<x<0.1、M:Co、Ni、Mn、Al、Mgなど)で表される層状構造のリチウム含有遷移金属酸化物、LiMn
2O
4やその元素の一部を他元素で置換したスピネル構造のリチウムマンガン酸化物、LiMPO
4(M:Co、Ni、Mn、Feなど)で表されるオリビン型化合物などを用いることが可能である。前記層状構造のリチウム含有遷移金属酸化物の具体例としては、LiCoO
2やLiNi
1−xCo
x−yAl
yO
2(0.1≦x≦0.3、0.01≦y≦0.2)などのほか、少なくともCo、NiおよびMnを含む酸化物(LiMn
1/3Ni
1/3Co
1/3O
2、LiMn
5/12Ni
5/12Co
1/6O
2、LiNi
3/5Mn
1/5Co
1/5O
2など)などを例示することができる。
【0082】
導電助剤としては、カーボンブラックなどの炭素材料が用いられ、バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などフッ素樹脂が用いられ、これらの材料と活物質とが混合された正極合剤により正極合剤層が、例えば集電体表面に形成される。
【0083】
また、正極の集電体としては、アルミニウムなどの金属の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルなどを用い得るが、通常、厚みが10〜30μmのアルミニウム箔が好適に用いられる。
【0084】
正極側のリード部は、通常、正極作製時に、集電体の一部に正極合剤層を形成せずに集電体の露出部を残し、そこをリード部とすることによって設けられる。ただし、リード部は必ずしも当初から集電体と一体化されたものであることは要求されず、集電体にアルミニウム製の箔などを後から接続することによって設けてもよい。
【0085】
負極としては、従来から知られているリチウム二次電池に用いられている負極、すなわち、Liイオンを吸蔵放出可能な活物質を含有する負極であれば特に制限はない。例えば、活物質として、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素繊維などの、リチウムを吸蔵、放出可能な炭素系材料の1種または2種以上の混合物が用いられる。また、Si,Sn、Ge,Bi,Sb、Inなどの元素およびその合金、リチウム含有窒化物、またはLi
4Ti
5O
12などの酸化物などの、リチウム金属に近い低電圧で充放電できる化合物、もしくはリチウム金属やリチウム/アルミニウム合金も負極活物質として用いることができる。これらの負極活物質に導電助剤(カーボンブラックなどの炭素材料など)やPVDFなどのバインダなどを適宜添加した負極合剤を、集電体を芯材として成形体(負極合剤層)に仕上げたもの、または前記の各種合金やリチウム金属の箔を単独もしくは集電体表面に積層したものなどが用いられる。
【0086】
負極に集電体を用いる場合には、集電体としては、銅製やニッケル製の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルなどを用い得るが、通常、銅箔が用いられる。この負極集電体は、高エネルギー密度の電池を得るために負極全体の厚みを薄くする場合、厚みの上限は30μmであることが好ましく、下限は5μmであることが望ましい。また、負極側のリード部は、正極側のリード部と同様にして形成すればよい。
【0087】
電極は、前記の正極と前記の負極とを、本発明のセパレータを介して積層した積層体や、更にこれを巻回した電極巻回体の形態で用いることができる。
【0088】
なお、耐熱多孔質層(II)に用いる耐熱性微粒子として、耐酸化性に優れた材料(例えば、無機酸化物)を用いた場合、耐熱多孔質層(II)を正極側に向けることによって、正極によるセパレータの酸化を抑制することが可能となり、高温時の保存特性や充放電サイクル特性に優れた電池とすることができるため、耐熱多孔質層(II)を正極側に向ける構成とすることがより好ましい。
【0089】
有機電解液としては、リチウム塩を有機溶媒に溶解した溶液が用いられる。リチウム塩としては、溶媒中で解離してLi
+イオンを形成し、電池として使用される電圧範囲で分解などの副反応を起こしにくいものであれば特に制限は無い。例えば、LiClO
4、LiPF
6、LiBF
4、LiAsF
6 、LiSbF
6などの無機リチウム塩、LiCF
3SO
3、LiCF
3CO
2、Li
2C
2F
4(SO
3)
2、LiN(CF
3SO
2)
2、LiC(CF
3SO
2)
3、LiC
nF
2n+1SO
3(n≧2)、LiN(RfOSO
2)
2〔ここでRfはフルオロアルキル基〕などの有機リチウム塩などを用いることができる。
【0090】
有機電解液に用いる有機溶媒としては、前記のリチウム塩を溶解し、電池として使用される電圧範囲で分解などの副反応を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートなどの環状カーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネートなどの鎖状カーボネート;プロピオン酸メチルなどの鎖状エステル;γ−ブチロラクトンなどの環状エステル;ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、1,3−ジオキソラン、ジグライム、トリグライム、テトラグライムなどの鎖状エーテル;ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどの環状エーテル;アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリルなどのニトリル類;エチレングリコールサルファイトなどの亜硫酸エステル類;などが挙げられ、これらは2種以上混合して用いることもできる。なお、より良好な特性の電池とするためには、エチレンカーボネートと鎖状カーボネートの混合溶媒など、高い導電率を得ることができる組み合わせで用いることが望ましい。また、これらの電解液に安全性や充放電サイクル性、高温貯蔵性といった特性を向上させる目的で、ビニレンカーボネート類、1,3−プロパンサルトン、ジフェニルジスルフィド、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、フルオロベンゼン、t−ブチルベンゼンなどの添加剤を適宜加えることもできる。
【0091】
このリチウム塩の有機電解液中の濃度としては、0.5〜1.5mol/lとすることが好ましく、0.9〜1.25mol/lとすることがより好ましい。
【0092】
なお、前記のような正極合剤層を有する正極や、負極合剤層を有する負極は、例えば、正極合剤をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの溶媒に分散させた正極合剤層形成用組成物(スラリーなど)や、負極合剤をNMPなどの溶媒に分散させた負極活物質層形成用組成物(スラリーなど)を集電体表面に塗布し、乾燥することにより作製される。この場合、例えば、正極合剤層形成用組成物を集電体表面に塗布し、該組成物が乾燥する前に、耐熱多孔質層(I)形成用組成物を塗布して作製した正極と耐熱多孔質層(II)との一体化物や、負極合剤層形成用組成物を集電体表面に塗布し、該組成物が乾燥する前に、耐熱多孔質層(II)形成用組成物を塗布して作製した負極と耐熱多孔質層(II)との一体化物を用いて、電池(リチウム二次電池など)を構成することもできる。
【0093】
本発明の電池は、各種電子機器の電源用途など、従来から知られている電池が用いられている各種用途と同じ用途に適用することができる。
【実施例】
【0094】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではない。
【0095】
また、本実施例で示す樹脂多孔質膜(I)を構成する樹脂(A)の融点は、JIS K 7121の規定に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定した融解温度であり、樹脂多孔質膜(I)および耐熱多孔質層(II)の空孔率は、前述の方法により求めた空孔率である。
【0096】
製造例1(負極の作製)
負極活物質である黒鉛:95質量部と、バインダであるPVDF:5質量部とを、NMPを溶剤として均一になるように混合して負極合剤含有ペーストを調製した。この負極合剤含有ペーストを、銅箔からなる厚さ10μmの集電体の両面に、塗布長が表面495mm、裏面440mmになるように間欠塗布し、乾燥した後、カレンダー処理を行って全厚が150μmになるように負極合剤層の厚みを調整し、幅44mmになるように切断して、長さ505mm、幅44mmの負極を作製した。更にこの負極の銅箔の露出部にタブを溶接してリード部を形成した。
【0097】
製造例2(正極の作製)
正極活物質であるLiCoO
2:85質量部、導電助剤であるアセチレンブラック:10質量部、およびバインダであるPVDF:5質量部を、NMPを溶剤として均一になるように混合して、正極合剤含有ペーストを調製した。このペーストを、集電体となる厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に、塗布長が表面495mm、裏面423mmになるように間欠塗布し、乾燥した後、カレンダー処理を行って、全厚が150μmになるように正極合剤層の厚みを調整し、幅43mmになるように切断して、長さ510mm、幅43mmの正極を作製した。更にこの正極のアルミニウム箔の露出部にタブを溶接してリード部を形成した。
【0098】
実施例1
耐熱性微粒子として板状ベーマイト(平均粒径1μm、アスペクト比10)1000gを水1000gに分散させ、更に有機バインダとしてSBRラテックス(固形分比率40質量%)120gを加えて均一に分散させて、耐熱多孔質層(II)形成用組成物[以下、単に「組成物(a)と称する]を調製した。
【0099】
また、樹脂多孔質膜(I)として、PE製微多孔膜(厚み16μm、空孔率45%)を用意した。樹脂多孔質膜(I)に係るPEの融点は135℃である。樹脂多孔質膜(I)の片面に、前記の耐熱多孔質層(II)形成用組成物をブレードコーターにより塗布して乾燥し、厚みが5μmとなるように、耐熱性微粒子である板状ベーマイトを主体として含む耐熱多孔質層(II)を形成して、セパレータを作製した。なお、有機バインダの比重を1.2g/cm
3、ベーマイトの比重を3g/cm
3として算出した耐熱多孔質層(II)の空孔率は53%であり、耐熱多孔質層(II)における耐熱性微粒子の体積比率は、89%であった。
【0100】
製造例1で作製した負極と製造例2で作製した正極との間に、前記のセパレータを、耐熱多孔質層(II)が正極側となるように介在させ、渦巻状に巻回して巻回電極体を作製した。この巻回電極体を押しつぶして扁平状にし、厚み6mm、高さ50mm、幅34mmでのアルミニウム製外装缶に入れ、有機電解液(エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを体積比で1対2に混合した溶媒にLiPF
6を濃度1.2mol/lで溶解したもの)を注入した後に封止を行って、
図1に示す構造で、
図2に示す外観のリチウム二次電池を作製した。
【0101】
ここで
図1および
図2に示す電池について説明すると、
図1の(a)は平面図、(b)はその部分断面図であって、
図1(b)に示すように、正極1と負極2は前記のようにセパレータ3を介して渦巻状に巻回した後、扁平状になるように加圧して扁平状の巻回体電極群6として、角筒形の外装缶4に電解液と共に収容されている。ただし、
図1では、煩雑化を避けるため、正極1や負極2の作製にあたって使用した集電体としての金属箔や電解液などは図示していない。また、セパレータ3についても、樹脂多孔質膜(I)と耐熱多孔質層(II)とを区別していない。
【0102】
外装缶4はアルミニウム合金製で電池の外装体を構成するものであり、この外装缶4は正極端子を兼ねている。そして、外装缶4の底部にはポリエチレンシートからなる絶縁体5が配置され、正極1、負極2およびセパレータ3からなる扁平状巻回体電極群6からは、正極1および負極2のそれぞれ一端に接続された正極リード体7と負極リード体8が引き出されている。また、外装缶4の開口部を封口するアルミニウム合金製の封口用蓋板9にはポリプロピレン製の絶縁パッキング10を介してステンレス鋼製の端子11が取り付けられ、この端子11には絶縁体12を介してステンレス鋼製のリード板13が取り付けられている。
【0103】
そして、この蓋板9は外装缶4の開口部に挿入され、両者の接合部を溶接することによって、外装缶4の開口部が封口され、電池内部が密閉されている。また、
図1の電池では、蓋板9に非水電解液注入口14が設けられており、この非水電解液注入口14には、封止部材が挿入された状態で、例えばレーザー溶接などにより溶接封止されて、電池の密閉性が確保されている(従って、
図1および
図2の電池では、実際には、非水電解液注入口14は、非水電解液注入口と封止部材であるが、説明を容易にするために、非水電解液注入口14として示している)。更に、蓋板9には、電池の温度が上昇した際に内部のガスを外部に排出する機構として、開裂ベント15が設けられている。
【0104】
この実施例1の電池では、正極リード体7を蓋板9に直接溶接することによって外装缶5と蓋板9とが正極端子として機能し、負極リード体8をリード板13に溶接し、そのリード板13を介して負極リード体8と端子11とを導通させることによって端子11が負極端子として機能するようになっているが、外装缶4の材質などによっては、その正負が逆になる場合もある。
【0105】
図2は前記
図1に示す電池の外観を模式的に示す斜視図であり、この
図2は前記電池が角形電池であることを示すことを目的として図示されたものであって、この
図1では電池を概略的に示しており、電池の構成部材のうち特定のものしか図示していない。また、
図1においても、電極群の内周側の部分は断面にしていない。
【0106】
実施例2
実施例1で作製した組成物(a)に、更に樹脂微粒子として架橋PMMA微粒子エマルジョン(耐熱性微粒子、平均粒子径0.4μm、固形分比率40%)を500g加えて耐熱多孔質層(II)形成用の組成物(b)を調製した。組成物(a)に代えて組成物(b)を用いた以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製し、更に、このセパレータを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。PMMAの比重を1.2g/cm
3としたときの、耐熱多孔質層(II)の空孔率は47%であり、耐熱多孔質層(II)における耐熱性微粒子の体積比率は、93%であった。
【0107】
実施例3
板状ベーマイトに代えて、板状アルミナ(平均粒径2μm、アスペクト比25)を用いた以外は、実施例1と同様にして耐熱多孔質層(II)形成用の組成物(c)を調製した。組成物(a)に代えて組成物(c)を用いた以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製し、更に、このセパレータを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。アルミナの比重を4g/cm
3としたときの、耐熱多孔質層(II)の空孔率は40%であり、耐熱多孔質層(II)における耐熱性微粒子の体積比率は、86%であった。
【0108】
実施例4
板状ベーマイトに代えて、二次粒子構造の粒状ベーマイト(平均粒径2μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして耐熱多孔質層(II)形成用の組成物(d)を調製した。組成物(a)に代えて組成物(d)を用いた以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製し、更に、このセパレータを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。耐熱多孔質層(II)の空孔率は57%であり、耐熱多孔質層(II)における耐熱性微粒子の体積比率は、89%であった。
【0109】
実施例5
板状ベーマイトに代えて、粒状アルミナ(平均粒径0.4μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして耐熱多孔質層(II)形成用の組成物(e)を調製した。組成物(a)に代えて組成物(e)を用いた以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製し、更に、このセパレータを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。耐熱多孔質層(II)の空孔率は48%であり、耐熱多孔質層(II)における耐熱性微粒子の体積比率は、89%であった。
【0110】
実施例6
板状ベーマイトに代えて、球状シリカ(平均粒径0.3μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして耐熱多孔質層(II)形成用の組成物(f)を調製した。組成物(a)に代えて組成物(f)を用いた以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製し、更に、このセパレータを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。シリカの比重を2.15g/cm
3としたときの耐熱多孔質層(II)の空孔率は43%であり、耐熱多孔質層(II)における耐熱性微粒子の体積比率は、92%であった。
【0111】
比較例1
PE製微多孔膜(厚み20μm)を用い、製造例1で作製した負極と製造例2で作製した正極とを、前記PE製微多孔膜を介在させつつ重ね合わせ、渦巻状に巻回して巻回電極体を作製した。この巻回電極体を用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
【0112】
比較例2
板状シリカの水分散液(粒子の平均粒径0.5μm、アスペクト比30、固形分比率10%)を耐熱多孔質層(II)形成用組成物として用いた以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製し、更に、このセパレータを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
【0113】
比較例3
耐熱性微粒子として粒状アルミナ(平均粒径0.4μm)1000gを水1000gに分散させ、更に有機バインダとしてSBRラテックス(固形分比率40質量%)125gを加えて均一に分散させて、組成物(g)を調製した。
【0114】
また、樹脂多孔質膜(I)として、PE製微多孔膜(厚み12μm、空孔率41%)を用意した。樹脂多孔質膜(I)に係るPEの融点は135℃である。樹脂多孔質膜(I)の片面に、前記の組成物(g)をブレードコーターにより塗布して乾燥し、厚みが8μmとなるように、耐熱性微粒子である粒状アルミナを主体として含む耐熱多孔質層(II)を形成して、セパレータを作製した。なお、有機バインダの比重を1.2g/cm
3、アルミナの比重を4g/cm
3として算出した耐熱多孔質層(II)の空孔率は52%であった。
【0115】
実施例1〜6および比較例1〜3の各リチウム二次電池に用いたものと同じセパレータ(実施例1〜6および比較例1〜3のセパレータ)について、下記の各評価を行った。それらの結果を表1に示す。
【0116】
<透気度>
各セパレータに使用した樹脂多孔質膜(I)(PE製微多孔膜)、および各セパレータ(多層多孔質膜)の透気度を、ガーレー試験機を用いて、JIS P 8117に準拠した方法で測定した。
【0117】
<バブルポイント細孔径>
各セパレータに使用した樹脂多孔質膜(I)(PE製微多孔膜)、および各セパレータ(多層多孔質膜)のバブルポイント細孔径を、PMI社製「CFE−1500AEXパームポロシメータ」を使用し、JIS K 3832の規定によって測定されるバブルポイント値を用いた前述の方法により測定した。
【0118】
<熱収縮率>
熱収縮率は、4cm×4cmに切り出した各セパレータの試験片を、クリップで固定した2枚のステンレス鋼板で挟みこみ、これらを150℃の恒温槽内に30分放置した後に取り出し、各試験片の長さを測定し、試験前の長さと比較して長さの減少割合を熱収縮率とした。
【0119】
【表1】
【0120】
また、実施例1〜6および比較例1〜3のリチウム二次電池について、以下の条件で充放電を行って充電容量および放電容量をそれぞれ測定し、これらの電池特性(充電特性および負荷特性)を評価した。充電は、0.2Cの電流値で電池電圧が4.2Vになるまで定電流充電を行い、次いで、4.2Vでの定電圧充電を行う定電流−定電圧充電とした。充電終了までの総充電時間は15時間とした。
【0121】
充電後の各電池を、0.2Cの放電電流で、電池電圧が3.0Vになるまで放電させて放電容量を測定し、充電容量に対する放電容量の割合(充電効率)を求め、充電特性を評価した。実施例1〜6の電池および比較例1、3の電池は、充電効率がほぼ100%となり、充電時のリチウムデンドライトの生成が抑止され電池として良好に作動することが確認できた。しかしながら、比較例2の電池は、充電効率が30%以下であり、電池として良好な動作を確認できなかった。
【0122】
また、前記と同様の条件で充電した実施例1〜6および比較例1、3のリチウム二次電池を、2Cの電流値で、電池電圧が3.0Vになるまで放電させて放電容量を測定し、これらの放電容量の、0.2Cの電流値で放電して求めた前記の放電容量に対する割合を求め、負荷特性を評価した。
【0123】
また、前記と同様の条件で充電した実施例1〜6および比較例1、3のリチウム二次電池について、以下の方法により、昇温試験を行った。充電後の各電池を恒温槽に入れ、30℃から150℃まで毎分1℃の割合で温度上昇させて加熱し、150℃に達した状態で更に30分間温度を維持し、電池の表面温度を測定した。
【0124】
実施例1〜6および比較例1〜3のリチウム二次電池における前記の評価結果を表2に示す。
【0125】
【表2】
【0126】
表2から明らかなように、比較例1の電池は、昇温試験において温度上昇が見られたのに対し、実施例1〜6の電池は、昇温試験において異常が見られず、安全性に優れていることが判明した。なお、比較例2の電池は、充電特性が良好でないため、負荷特性の測定および昇温試験を行わなかった。また、比較例3の電池は、昇温事件では異常がなかったものの、実施例の電池と比べて負荷特性が劣っている。