特許第5937785号(P5937785)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5937785
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】乗り物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/26 20060101AFI20160609BHJP
【FI】
   B60R22/26
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-69406(P2011-69406)
(22)【出願日】2011年3月28日
(65)【公開番号】特開2012-201291(P2012-201291A)
(43)【公開日】2012年10月22日
【審査請求日】2014年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】598147400
【氏名又は名称】ジョンソン コントロールズ テクノロジー カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Johnson Controls Technology Company
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】城村 浩貴
【審査官】 森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭56−146955(JP,U)
【文献】 実公平06−002831(JP,Y2)
【文献】 実開昭54−076017(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0119722(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R22/16
B60R22/26
B60R22/28
B60N2/00−2/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションフレームと、シートバックフレームと、前記シートクッションフレームに支持されてなるアンカーブラケットとより少なくとも構成されてなる乗り物用シートであって、
前記アンカーブラケットは、上下長方状に形成されてなり且つ該アンカーブラケットの略中央は、締結具により前記シートクッションフレームの表面に締結支持されてなり、
該アンカーブラケットの上端部には、シートベルトを結合自在なるシートベルトアンカーが支持されてなり、
前記アンカーブラケットの下端部は、断面略直角状に曲折形成されて前記シートクッションフレームに設けた挿入孔を介して前記表面から裏面に向け挿入可能なる第1折返部及び前記シートクッションフレームの前記裏面に所定寸法離間し且つ前記第1折返部と略平行で該第1折返部より突出する方向に折り返してなる第2折返部がそれぞれ形成され、
前記シートベルトアンカーによる荷重入力の際に、前記アンカーブラケットの上端部は前記締結具を中心に前側に回転することで、前記第1折返部は前記第2折返部が前記シートクッションフレームの裏面に当接するまで前記シートクッションフレームに対して変形可能あることを特徴とする乗り物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の乗り物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の乗り物用シートとしては、乗員への圧迫度合いを軽減しながら、乗員拘束性能の向上を図る為に、3点式シートベルトのタングが係合されるバックルを、該バックルの車両前方向への移動のみを許容するガイドを介してシートクッションフレームに取付けると共に、バックルに車両前方向への所定以上の外力が加わった時に該バックルの前方向への移動を抵抗力を伴いながら許容するエネルギ吸収機構を設けたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−161037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記シートベルトに対する強度を確保する為、シートベルトアンカーブラケット及びシートクッションフレームの強度を上げると、製造原価が高騰し、重量が増加することになる。
【0005】
本発明は、このような従来の技術に着目してなされたものであり、製造原価が高騰せず、重量を増加させずに、シートベルトのアンカーブラケット及びシートクッションフレームとの間で、衝撃荷重が吸収可能なるようにした乗り物用シートを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、シートクッションフレームと、シートバックフレームと、前記シートクッションフレームに支持されてなるアンカーブラケットとより少なくとも構成されてなる乗り物用シートであって、前記アンカーブラケットは、上下長方状に形成されてなり且つ該アンカーブラケットの略中央は、締結具により前記シートクッションフレームの表面に締結支持されてなり、該アンカーブラケットの上端部には、シートベルトを結合自在なるシートベルトアンカーが支持されてなり、前記アンカーブラケットの下端部は、断面略直角状に曲折形成されて前記シートクッションフレームに設けた挿入孔を介して前記表面から裏面に向け挿入可能なる第1折返部及び前記シートクッションフレームの前記裏面に所定寸法離間し且つ前記第1折返部と略平行で該第1折返部より突出する方向に折り返してなる第2折返部がそれぞれ形成され、前記シートベルトアンカーによる荷重入力の際に、前記アンカーブラケットの上端部は前記締結具を中心に前側に回転することで、前記第1折返部は前記第2折返部が前記シートクッションフレームの裏面に当接するまで前記シートクッションフレームに対して変形可能あることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、前記アンカーブラケットは、上下長方状に形成されてなり且つ該アンカーブラケットの略中央は、締結具により前記シートクッションフレームに締結支持されてなり、該アンカーブラケットの上端部には、シートベルトアンカーが支持されてなり、前記アンカーブラケットの下端部は、前記シートクッションフレームに設けた挿入孔に挿入してなる第1折返部及び前記シートクッションフレームの裏面に所定寸法離間した位置に前記第1折返部と逆方向に折り返してなる第2折返部がそれぞれ形成されてなるため、製造原価が高騰せず、重量を増加させずに、シートベルトのアンカーブラケット及びシートクッションフレームとの間で、衝撃荷重が吸収可能という実益的効果を有する。
【0010】
また、前記アンカーブラケットの第2折返部は、前記シートクッションフレームの裏面に略平行な隙間が形成されてなるため、前記隙間が常に一定であり、安定した耐衝撃荷重のアンカーブラケットとすることができる。
【0011】
更に、前記アンカーブラケットの第1折返部は、荷重入力の際に第2折返部が前記シートクッションフレームの裏面に当接するまで変形可能なるため、前記アンカーブラケットの重量を増すこともなく、製造原価高騰もない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施例に係る乗り物用シートを示す斜視説明図。
図2図1の矢視Aに係る側面説明図。
図3図2のSB−SB線に沿った断面図。
図4図3のアンカーブラケットに衝撃荷重が加わった状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
製造原価が高騰せず、重量を増加させずに、シートベルトのアンカーブラケット及びシートクッションフレームとの間で、衝撃荷重が吸収可能なるようにした乗り物用シートを提供する、という目的を、アンカーブラケットは、上下長方状に形成されてなり且つ該アンカーブラケットの略中央は、締結具により前記シートクッションフレームの表面に締結支持されてなり、該アンカーブラケットの上端部には、シートベルトを結合自在なるシートベルトアンカーが支持されてなり、前記アンカーブラケットの下端部は、断面略直角状に曲折形成されて前記シートクッションフレームに設けた挿入孔を介して前記表面から裏面に向け挿入可能なる第1折返部及び前記シートクッションフレームの前記裏面に所定寸法離間し且つ前記第1折返部と略平行で該第1折返部より突出する方向に折り返してなる第2折返部がそれぞれ形成され、前記シートベルトアンカーによる荷重入力の際に、前記アンカーブラケットの上端部は前記締結具を中心に前側に回転することで、前記第1折返部は前記第2折返部が前記シートクッションフレームの裏面に当接するまで前記シートクッションフレームに対して変形可能あることで、実現した。
【実施例】
【0014】
以下、本発明の最良の実施例を図1図4に基づいて説明する。図1に示す符号1は、「乗り物」としてのワンボックスタイプの自動車に搭載されてなるシートであり、該シート1は、図示しない運転席の後ろ側に配される所謂セカンドシート(前から2番目の座席)である。
【0015】
前記シート1は、図1に示すように、図示を省略した床上を前後にスライド自在なると共に適宜の位置で停止可能なるスライド装置2、2と、該スライド装置2、2間に架橋されてなる脚部5、5により支持されてなるシートクッション4と、該シートクッション4のアーム4C、4Cにより前後に回転自在に軸支してなるシートバック6と、該シートバック6に支持されてなるヘッドレスト7とよりなる。図1の符号3及び3aは、前記スライド装置2、2の図示しないロックを解除したり、ロックしたりするスライド操作レバー及び係合部である。図1の符号16、17は、シートバック6に支持されたアームレストである。図2に示す符号22は、前記シートバック6のシートバックフレームである。図2に示す符号20は、リクライニング装置である。図2に示す符号9aは、連結ワイヤ、同9bは、リターンスプリング、同9cは、連結ロッドである。
【0016】
図1に示す符号4d、4dは、シートクッション4の後部RRで左側LH及び右側RHの端部にそれぞれ配された覆い表皮で、突出形成されてなる。該覆い表皮4d、4dは、前記シートクッション4の表皮と同じ材料(例えば、布、樹脂フィルムに布を裏打ちしたもの、天然皮革、合成皮革)によりなり、シートバック6の下端に形成されてなる凹部6d、6dに差込可能なる幅寸法に形成されてなる。
【0017】
図1及び図2に示す符号18は、シートベルトアンカーで、該シートベルトアンカー18は、図示しない3点式シートベルトのタングが係合可能なバックル23と、該バックル23を支持したアンカープレート24と、該アンカープレート24をアンカーボルト25により支持してなる板厚2,6ミリメートルの鉄板よりなるアンカーブラケット26とよりなる。
【0018】
該アンカーブラケット26は、図2に示すように、上下長方状に形成されてなり且つ該アンカーブラケット26の略中央は、「締結具」のボルト27により前記シートクッションフレーム21に締結支持されてなり、該アンカーブラケット26の上端部には、シートベルトアンカー18がアンカーボルト25により支持されてなり、前記アンカーブラケット26の下端部は、前記シートクッションフレーム21に設けた挿入孔28に図3に示すように断面が略直角状に形成されて挿入してなる第1折返部26a及び前記シートクッションフレーム21の裏面に所定寸法D分だけ離間し且つ図3に示すように断面が前記下端部と略平行で該下端部より突出する方向に折り返してなる第2折返部26bがそれぞれ形成されてなる。図3に示す該所定寸法Dは、前記シートクッションフレーム21の裏面に略平行な隙間であり、32.4ミリメートルであり、第2折返部26bの突出する寸法Cは、24,6ミリメートルである。前記挿入孔28の前後寸法Eは、8ミリメートルである。
【0019】
前記アンカーブラケット26の第1折返部26aは、前記シートベルトアンカー18による荷重入力の際に、図3の状態から図4の状態にまで変形して、第2折返部26bが前記シートクッションフレーム21の裏面に当接するまで変形する。
【0020】
次に、本実施例の作用を説明する。
【0021】
前記アンカーブラケット26は、上下長方状に形成されてなり且つ該アンカーブラケット26の略中央は、「締結具」であるボルト27により前記シートクッションフレーム21の表面に締結支持されてなる。該アンカーブラケット26の上端部には、シートベルトアンカー18が支持されてなる。前記アンカーブラケット26の下端部は、前記シートクッションフレーム21に設けた挿入孔28に図3に示すように断面が略直角状に形成されて挿入してなる第1折返部26a及び前記シートクッションフレーム21の裏面に所定寸法Dだけ離間し且つ図3に示すように断面が前記下端部と略平行で該下端部より突出する方向に折り返してなる第2折返部26bがそれぞれ形成されてなるため、製造原価が高騰せず、重量を増加させずに、図示しないシートベルトのアンカーブラケット26及びシートクッションフレーム21との間で、衝撃荷重が吸収可能という実益的効果を有する。
【0022】
自動車が急制動などをして、前記バックル23に所定値以上の荷重が加わった場合、前記シートベルトアンカー18による前記アンカーブラケット26の上端部図2に二点鎖線で示すように、前側FRに変形する。該変形に伴い前記シートベルトアンカー18による衝撃を1次的に吸収しつつ、挿入孔28から第1折返部26aが引っ張り出され、ボルト27を中心に後側RRに変形する。第2折返部26bが、図4に示すように、シートクッションフレーム21の裏面に当接して回転が停止する。こうして、バックル23も符号23’で示す前側FRへ、そして、アンカープレート24も符号24’で示す前側FRへ移動する。その結果、モーメントが減るため、スライド装置2及び該スライド装置2を図示しない床に固定する手段への入力荷重が減少する。
【0023】
前記アンカーブラケット26の第2折返部26bは、前記シートクッションフレーム21の裏面から所定寸法Dの略平行な隙間があらかじめ形成されてなるため、前記隙間が常に一定のため、安定した耐衝撃荷重のアンカーブラケット26とすることができる。
【0024】
前記アンカーブラケット26の第1折返部26aは、図示しないシートベルトにより荷重入力の際に第2折返部26bが前記シートクッションフレーム21の裏面に当接するまで変形が可能なるため、前記アンカーブラケット26の重量を増すこともなく、製造原価高騰もない。
【産業上の利用可能性】
【0025】
以上の実施例では、乗り物用シートとして自動車用のシート1を例にして説明したが、これに限定されず、航空機、鉄道車両、船舶などに搭載されているシートでも良い。また、シート1は、運転席の後側に配されるセカンド席を例にして説明したが、これに限定されず、更に、後側の席でも良い。
【符号の説明】
【0026】
1 「乗り物」としての自動車のシート
4 シートクッション
6 シートバック
18 シートベルトアンカー
21 シートクッションフレーム
22 シートバックフレーム
26 アンカーブラケット
26a 第1折返部
26b 第2折返部
27 ボルト(締結具)
28 挿入孔
図1
図2
図3
図4