特許第5937839号(P5937839)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5937839
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】透明石英焼結体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/14 20060101AFI20160609BHJP
   B29C 33/38 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   C04B35/14
   B29C33/38
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-28253(P2012-28253)
(22)【出願日】2012年2月13日
(65)【公開番号】特開2013-163623(P2013-163623A)
(43)【公開日】2013年8月22日
【審査請求日】2014年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108764
【氏名又は名称】タテホ化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(74)【代理人】
【識別番号】100078662
【弁理士】
【氏名又は名称】津国 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125793
【弁理士】
【氏名又は名称】川田 秀美
(74)【代理人】
【識別番号】100149412
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 雅俊
(74)【代理人】
【識別番号】100151367
【弁理士】
【氏名又は名称】柴 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100151828
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 将市
(74)【代理人】
【識別番号】100173772
【弁理士】
【氏名又は名称】角野 ゆり子
(74)【代理人】
【識別番号】100116919
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 房幸
(72)【発明者】
【氏名】田代 直
(72)【発明者】
【氏名】塘 啓祐
【審査官】 立木 林
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−070201(JP,A)
【文献】 特開2011−062993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/14
C03B 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明石英焼結体において、原料球状シリカ粉末が平均粒子径0.1〜1.0μmであり、Al含有量が30〜100ppmであって、波長200〜400nm全域における、透明石英焼結体の11mm厚換算の透過率が、70〜90%である、透明石英焼結体。
【請求項2】
気泡の数が、1cmあたり200〜1600個である、請求項1記載の透明石英焼結体。
【請求項3】
平均気泡径が、10〜100μmである、請求項1又は2に記載の透明石英焼結体。
【請求項4】
焼結体嵩密度が、2.20×10〜2.21×10・kg/mである、請求項1〜3のいずれか1項記載の透明石英焼結体。
【請求項5】
曲げ強度が、100〜130MPaである、請求項1〜4のいずれか1項記載の透明石英焼結体。
【請求項6】
Ca、Fe、Mg、Na、及びK含有量の合計が、50ppm未満である、請求項1〜5のいずれか1項記載の透明石英焼結体。
【請求項7】
透明石英焼結体の製造方法であって、
(a):平均粒子径が0.1〜1.0μmであり、Al含有量を30〜100ppmとした球状シリカ粉末、溶媒、及び分散剤を混合することにより、スリップを得る工程、
(b):工程(a)で得られたスリップ及び樹脂を混合し、硬化剤を添加して、樹脂及び硬化剤を含むスリップを得る工程、
(c−i):工程(b)で得られた樹脂及び硬化剤を含むスリップを鋳型に挿入し、脱型して、成形体を得る工程、
(d):工程(c−i)で得られた成形体を脱脂して、脱脂体を得る工程、及び
(e−i):工程(d)で得られた脱脂体を焼成して、透明石英焼結体を得る工程
を含む製造方法。
【請求項8】
透明石英焼結体の製造方法であって、
(a):平均粒子径が0.1〜1.0μmであり、Al含有量を30〜100ppmとした球状シリカ粉末、溶媒、及び分散剤を混合することにより、スリップを得る工程、
(c−ii):工程(a)で得られたスリップを鋳型に挿入し、脱型して、成形体を得る工程、及び
(e−ii):工程(c−ii)で得られた成形体を焼成して、透明石英焼結体を得る工程
を含む製造方法。
【請求項9】
工程(c−i)で得られた成形体の成形体密度が、1.40×10〜1.49×10・kg/mである、請求項7記載の製造方法。
【請求項10】
工程(c−ii)で得られた成形体の成形体密度が、1.70×10〜1.79×10・kg/mである、請求項8記載の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか1項記載の透明石英焼結体を用いた、紫外線硬化性樹脂の硬化用の金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を散乱させることができ、かつ紫外線硬化性樹脂を均一硬化させるのに最適な紫外線透過性を有する透明石英焼結体、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、透過率が良い石英ガラスのパイプや板は、天然石英などを原料素材として、これを2000℃以上の高温度で溶解し、溶融状態でパイプや板の形に加工して連続的に凝固させる方法によって製造している。しかしながら、このパイプや板から複雑形状の製品を作る場合は、この方法では、熟練工がガスバーナーを使って1700℃以上に加熱しなければならず、生産性が低いという問題がある。このため生産性を向上するために、溶融した原料素材を鋳型に直接鋳造して複雑形状の製品を製造することも試みられているが、石英ガラスの粘性が大きく鋳造は困難である。
【0003】
また、シリカ粉末を各種成形方法により成形し、焼成して透過率が良い石英成形体を得る方法もある。このような成形体を得る具体的な方法として、プレス成形(特許文献1参照)、鋳込み成形(特許文献2参照)、及び押し出し成形(特許文献3参照)が挙げられる。特許文献1〜3に記載されたような焼結体の製造方法は、セラミックス製造プロセスにより成形体を得て、焼結して製造するため、特殊な装置が不要であり、機械加工コストも軽減されるが、透過率が良い所定の形状の焼結体を得るのは容易ではない。
【0004】
透過率が良い石英成形体は、光学用器具、理化学用器具、半導体分野などに幅広く用いられている。特に、光透過性を利用する分野において幅広く用いられている。また、透過率が良い石英成形体は、200〜400nmの波長の光である紫外線を透過することから、所定の形状の紫外線硬化性樹脂を形成する際の金型としても用いられている。しかし、そのような石英成形体を紫外線硬化性樹脂の硬化用の金型として用いた場合、石英成形体の紫外線透過率が低いと、紫外線が樹脂まで到達しないため、樹脂が硬化せず、脱型の際に樹脂が金型に付着してしまうという問題があった。また、紫外線透過率が高すぎると、金型内で光の散乱がないため、紫外線が均一に樹脂に照射されず、硬化時間にばらつきがあったり、未硬化部分の樹脂が脱型の際に剥離し、樹脂が金型に付着してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−48623号公報
【特許文献2】特開平11−209133号公報
【特許文献3】特開2001−269586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、光を散乱させることができ、かつ紫外線硬化樹脂を均一硬化させるのに最適な紫外線透過率を有する透明石英焼結体を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、透過率が所定の範囲である透明石英焼結体が、光を散乱させることができ、かつ紫外線硬化樹脂を均一硬化させることができることを見出した。また、平均粒子径が0.1〜1.0μmであり、Al含有量を20〜100ppmとした球状シリカ粉末を成形し、次いで焼成することにより光を散乱させることができ、かつ紫外線硬化樹脂を均一硬化させるのに最適な紫外線透過率を有する透明石英焼結体が得られることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、波長200〜400nmにおける透過率が、70〜90%である、透明石英焼結体に関する。
本発明は、気泡の数が、1cmあたり200〜1600個である、前記に記載の透明石英焼結体に関する。
本発明は、平均気泡径が、10〜100μmである、前記に記載の透明石英焼結体に関する。
本発明は、焼結体嵩密度が、2.20×10〜2.21×10・kg/mである、前記に記載の透明石英焼結体に関する。
本発明は、曲げ強度が、100〜130MPaである、前記に記載の透明石英焼結体に関する。
本発明は、Al含有量が20〜100ppmである、前記に記載の透明石英焼結体に関する。
本発明は、Ca、Fe、Mg、Na、及びK含有量の合計が、50ppm未満である、前記に記載の透明石英焼結体に関する。
本発明は、平均粒子径が0.1〜1.0μmであり、Al含有量を20〜100ppmとした球状シリカ粉末を成形し、次いで焼成することにより得られる、前記に記載の透明石英焼結体に関する。
本発明は、球状シリカ粉末のCa、Fe、Mg、Na、及びK含有量の合計が、50ppm未満である、前記に記載の透明石英焼結体に関する。
本発明は、透明石英焼結体の製造方法であって、
(a):平均粒子径が0.1〜1.0μmであり、Al含有量を20〜100ppmとした球状シリカ粉末、溶媒、及び分散剤を混合することにより、スリップを得る工程、
(b):工程(a)で得られたスリップ及び樹脂を混合し、硬化剤を添加して、樹脂及び硬化剤を含むスリップを得る工程、
(c−i):工程(b)で得られた樹脂及び硬化剤を含むスリップを鋳型に挿入し、脱型して、成形体を得る工程、
(d):工程(c−i)で得られた成形体を脱脂して、脱脂体を得る工程、及び
(e−i):工程(d)で得られた脱脂体を焼成して、透明石英焼結体を得る工程を含む製造方法に関する。
本発明は、透明石英焼結体の製造方法であって、
(a):平均粒子径が0.1〜1.0μmであり、Al含有量を20〜100ppmとした球状シリカ粉末、溶媒、及び分散剤を混合することにより、スリップを得る工程、
(c−ii):工程(a)で得られたスリップを鋳型に挿入し、脱型して、成形体を得る工程、
(e−ii):工程(c−ii)で得られた成形体を焼成して、透明石英焼結体を得る工程を含む製造方法に関する。
本発明は、工程(c−i)で得られた成形体の成形体密度が、1.40×10〜1.49×10・kg/mである、前記に記載の製造方法に関する。
本発明は、工程(c−ii)で得られた成形体の成形体密度が、1.70×10〜1.79×10・kg/mである、前記に記載の製造方法に関する。
本発明は、前記に記載の透明石英焼結体または前記に記載の製造方法により得られた透明石英焼結体を用いた、紫外線硬化性樹脂の硬化用の金型に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、光を散乱させることができ、かつ紫外線硬化性樹脂を均一硬化させるのに最適な紫外線透過率を有する透明石英焼結体が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.透明石英焼結体
本発明の透明焼結体は、波長200〜400nmにおける透過率が70〜90%であり、75〜90%であるのが好ましい。本発明において、透過率は光路長、つまり焼結体の厚さが11mmでの値である。このような透過率であれば、紫外線硬化性樹脂硬化用の金型として用いた場合に、紫外線硬化性樹脂を均一硬化させることができる。
【0011】
本発明の透明石英焼結体において、気泡の数は、1cmあたり200〜1600個であり、250〜1600個であるのが好ましく、250〜800個であるのがより好ましい。また、本発明の石英透明焼結体において、平均気泡径は、10〜100μmであり、20〜90μmであるのが好ましい。本発明において、焼結体に存在する気泡は、焼結により形成され、気泡壁により光を散乱させる。このような気泡の数及び平均気泡径であれば、光を良好に散乱することができ、かつ優れた紫外線透過性を有する。なお、本発明において、気泡の数は、光学反射顕微鏡などの装置を用いて、所定の領域で観察された気泡の数を計測し、これを1cm当たりの気泡の数に換算することで算出することができる。また、平均気泡径は、所定の領域で観察された気泡の直径の総和を気泡の数で除して算出することができる。
【0012】
本発明において、焼結体嵩密度は、2.20×10〜2.21×10・kg/mである。本発明において、曲げ強度は、100〜130MPaであり、105〜125MPaであるのが好ましく、110〜120MPaであるのがより好ましい。このような曲げ強度の範囲であると、紫外線硬化性樹脂を形成する紫外線透過金型として使用した場合、耐久性が良好であり、繰り返し使用しても、金型の割れや欠け、又は変形が生じにくい。
【0013】
本発明の透明石英焼結体は、原料として用いられる球状シリカ粉末において、Al、Ca、Fe、Mg、Na、及びKなどの金属元素を所定の含有量となるようにシリカ粉末を調製することにより、Al、Ca、Fe、Mg、Na、及びKなどの金属元素を含むことができる。本発明において、透明石英焼結体のAlの含有量は、20〜100ppmであり、30〜95ppmであるのが好ましい。Ca、Fe、Mg、Na、及びKの含有量の合計は、50ppm未満であり、40ppm未満であるのがより好ましい。また、Ca、Fe、Mg、Na、及びKの含有量は、それぞれ1〜20ppmであるのが好ましく、2〜15ppmであるのがより好ましい。本発明において、各金属元素の含有量は、ICP発光分析装置及び原子吸光分析装置を用いた測定方法により求めることができる。
【0014】
本発明の透明石英焼結体は、平均粒子径が0.1〜1.0μmであり、Al含有量を20〜100ppmとした球状シリカ粉末を成形し、次いで焼成することにより得られる。また、球状シリカ粉末のCa、Fe、Mg、Na、及びK含有量の合計が、50ppm未満であるのが好ましい。このような球状シリカ粉末として、下記の透明石英焼結体の製造方法において説明されたものが挙げられる。
【0015】
2.ゲルキャスティング法による透明石英焼結体の製造方法
本発明の透明石英焼結体の第一の製造方法として、ゲルキャスティング法が挙げられる。具体的な工程を以下に示す。
【0016】
本発明において、ゲルキャスティング法による透明石英焼結体の製造方法は、
(a):平均粒子径が0.1〜1.0μmであり、Al含有量を20〜100ppmとした球状シリカ粉末、溶媒、及び分散剤を混合することにより、スリップを得る工程、
(b):工程(a)で得られたスリップ及び樹脂を混合し、硬化剤を添加して、樹脂及び硬化剤を含むスリップを得る工程、
(c−i):工程(b)で得られた樹脂及び硬化剤を含むスリップを鋳型に挿入し、脱型して、成形体を得る工程、
(d):工程(c−i)で得られた成形体を脱脂して、脱脂体を得る工程、及び
(e−i):工程(d)で得られた脱脂後の成形体を焼成して、透明石英焼結体を得る工程を含む。
【0017】
(1)工程(a)
工程(a)は、平均粒子径が0.1〜1.0μmであり、Al含有量を20〜100ppmとした球状シリカ粉末、溶媒、及び分散剤を混合することにより、スリップを得る工程である。
【0018】
球状シリカ粉末は、本発明の透明石英焼結体の原料である。本発明において、球状シリカ粉末の平均粒子径は0.1〜1.0μmであり、Al含有量は20〜100ppmである。このような球状シリカを原料として使用すると、波長200〜400nmにおける透過率が、70〜90%である透明石英焼結体が得られる。
【0019】
本発明において、球状シリカ粉末の平均粒子径は、0.1〜1.0μmである。平均粒子径が0.1μmより小さいと作製したスリップのハンドリング性が悪くなり、平均粒子径が1.0μmより大きいと成形体密度が小さくなり、焼成すると、焼結体が含有する気泡の数が多くなる。スリップのハンドリング性が良く、得られる焼結体の気泡の数も良好であることから、平均粒子径は0.1〜1.0μmであり、0.1〜0.6μmであるのがより好ましい。なお、本発明において、「平均粒子径」とは、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した場合の、累積50%粒子径(D50)のことをいう。球状シリカ粉末の平均粒子径を0.1〜1.0μmとするために、球状シリカ粉末をポットミル等で粉砕し、平均粒子径を調整することができる。
【0020】
球状シリカ粉末のAl含有量は、20〜100ppmであり、30〜95ppmであるのが好ましい。Al含有量が20ppmより小さいと、平均気泡径が10μmよりも小さな気泡が形成され、Al含有量が100ppmより大きいと、平均気泡径が100μmよりも大きな気泡が形成される。球状シリカ粉末のAl含有量を20〜100ppmとするため、球状シリカ粉末にAl化合物を添加することができる。すなわち、原料である球状シリカ粉末におけるAl含有量を測定し、次いで、所望のAl含有量となるように、Al化合物を添加することにより、所望のAl含有量を有する球状シリカ粉末が得られる。
【0021】
Al化合物は、具体的には、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、炭酸アルミニウムなどが挙げられ、純度は99.9%以上であることが好ましい。Al化合物の添加方法は限定されないが、球状シリカ粉末とAl化合物をポットミル等で混合することにより添加することができる。
【0022】
本発明の球状シリカ粉末は、Ca、Fe、Mg、Na、及びKからなる群より選択される1種以上の金属元素を含むことができる。本発明において、Ca、Fe、Mg、Na、及びKの含有量の合計量は、50ppm未満であり、40ppm未満であるのがより好ましい。また、Ca、Fe、Mg、Na、及びKの含有量は、それぞれ、20ppm未満であるのが好ましく、10ppm未満であるのがより好ましい。Ca、Fe、Mg、Na、及びKの含有量が多くなると結晶化が起こり易くなり、焼結体が透明性を失うため、上記範囲が好ましい。Ca、Fe、Mg、Na、及びKの含有量が上記範囲の球状シリカ粉末を原料とすることで、本発明の透明石英焼結体が得られる。
【0023】
本発明において、球状シリカ粉末は、シリカの純度が99.0%以上であるのが好ましく、99.5%以上であるのがより好ましく、99.9%以上であるのがさらに好ましい。本発明において、純度は、対象とする球状シリカ粉末中の不純物元素(Ag、Al、As、Au、Ba、Be、Bi、Ca、Cd、Co、Cr、Cu、Fe、Ga、Ge、La、K、Mg、Mn、Mo、Na、Nb、Nd、Ni、P、Pb、Pd、Pt、Sb、Sc、Se、Sn、Sr、Ta、Te、Ti、Tl、V、Zn及びZr)の含有量を測定し、これらの合計含有量を100質量%から差し引いた値とする。測定対象となる不純物元素(Ag、Al、As、Au、Ba、Be、Bi、Ca、Cd、Co、Cr、Cu、Fe、Ga、Ge、La、K、Mg、Mn、Mo、Nb、Nd、Ni、P、Pb、Pd、Pt、Sb、Sc、Se、Sn、Sr、Ta、Te、Ti、Tl、V、Zn及びZr)は、ICP発光分析装置を使用して、試料を酸に溶解した後、質量を測定し、Na及びK量は、原子吸光分析装置を使用して、試料を酸に溶解した後、質量を測定した値とする。
【0024】
溶媒は、アルコール、アセトン、及びヘキサン等の有機溶媒又はイオン交換水若しくは蒸留水等の純水が挙げられ、蒸留水であるのが好ましい。溶媒が、Alなどの金属元素を不純物として含む場合には、得られる透明石英焼結体もこの不純物に由来するAlなどの金属元素をさらに含むこととなり、透明石英焼結体の性能が低下する恐れがあるため好ましくない。溶媒の配合量は、適宜選択することができ、球状シリカ粉末100重量部に対して、5〜50重量部であるのが好ましい。
【0025】
分散剤は、カルボン酸系、スルホン酸系、硫酸エステル系、燐酸エステル系、ポリカルボン酸アンモニウム塩及びアンモニウム化合物等のアニオン系分散剤が挙げられる。分散剤は、単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。分散剤の配合量は、適宜選択することができ、球状シリカ粉末100重量部に対して、0.1〜1重量部であるのが好ましい。分散剤は、分散剤の種類に適した、純水又はアルコール、アセトン、ヘキサン等の有機溶媒を希釈媒体として10重量%に希釈したものを用いることが好ましい。
【0026】
球状シリカ粉末、溶媒、及び分散剤の混合は、公知の方法を用いて行うことができ、例えばボールミルを用いて行う湿式混合が挙げられる。混合時間は、混合を効率的に十分行うことができ、所望の粘度を有するスリップが得られる時間であれば特に限定されない。シリカ粉末の種類及び粒子径等の条件によって、適宜選択することができ、5〜30時間であるのが好ましい。
【0027】
(2)工程(b)
工程(b)は、工程(a)で得られたスリップに樹脂を混合し、硬化剤を添加して、樹脂及び硬化剤を含むスリップを得る工程である。
【0028】
樹脂としては、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、及びアクリル樹脂が挙げられ、エポキシ樹脂が好ましい。樹脂は単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。樹脂の配合量は、適宜選択することができ、球状シリカ粉末100重量部に対して、1〜50重量部であるのが好ましい。
【0029】
スリップの混合は、公知の方法を用いて行うことができるが、例えばポットミルを用いて行うことができる。混合時間は、樹脂の種類及び球状シリカ粉末の粒子径等の条件によって、適宜選択することができる。混合を効率的に十分行うための混合時間は、1〜60分であるのが好ましい。
【0030】
硬化剤を使用することで、スリップに含まれる樹脂の硬化を促進させ、注入されるスリップを自己硬化させることができる。硬化剤としては、ヘキサメチレンテトラミン、ポリイソシアネート、ポリアミドアミン、変性アミン、水系硬化剤、及び潜在性硬化剤が挙げられる。硬化剤は、単独で用いても、2種以上の混合物として用いてもよい。スリップに添加する硬化剤の配合量は、適宜選択することができ、スリップに含まれる樹脂の合計重量100重量部に対して、0.1〜20重量部であるのが好ましい。
【0031】
工程(b)の後で、得られた樹脂及び硬化剤を含むスリップを脱泡することが好ましい。脱泡することにより、工程(e−i)での焼成の際の割れや亀裂等の発生を防止することができる。脱泡は、真空攪拌脱泡機を用い、攪拌しながら行うことができる。脱泡の時間は、特に限定されないが、10〜150分であるのが好ましい。
【0032】
(3)工程(c−i)
工程(c−i)は、工程(b)で得られた樹脂及び硬化剤を含むスリップを鋳型に挿入して硬化させ、脱型して、成形体を得る工程である。
【0033】
工程(c−i)における鋳型として、吸液性のない鋳型が挙げられる。本発明において、吸液性のない鋳型とは、スリップが注入されるキャビティ面のみ吸液性がなく、かつ成形材料の重量によって変形しない鋳型をいう。吸液性のない鋳型の材質としては、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン、及びポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂の樹脂が挙げられる。また、透明石英焼結体に寸法精度が要求される場合には、例えば金属型、硬質樹脂型、無機フィラーを含有する樹脂型などの使用が好ましい。また、鋳型の材質として、吸液性のある石膏型を用いる場合には、そのキャビティ面を目止め処理すれば、吸液性のない鋳型として用いることが可能である。
【0034】
本発明において、鋳型から脱型した成形体を、室温(25℃)〜90℃の温度で8〜48時間乾燥することが好ましい。
【0035】
本発明において、工程(c−i)で得られる成形体の成形体密度が、1.40×10〜1.49×10・kg/mであるのが好ましく、1.41×10〜1.46×10・kg/mであるのがより好ましい。このような成形体密度であれば、焼成によって所望の焼結体嵩密度が得られるため好ましい。
【0036】
(4)工程(d)
工程(d)は、工程(c−i)で得られた成形体を脱脂し、脱脂体を得る工程である。
成形体の乾燥の後、電気炉等の加熱炉を用いて、500〜700℃の温度で、1〜20時間の脱脂を行うことが好ましい。
【0037】
(5)工程(e−i)
工程(e−i)は、工程(d)で得られた脱脂体を焼成し、透明石英焼結体を得る工程である。
【0038】
脱脂体の焼成条件は、適宜選択することができる。例えば、次に述べるような手順により脱脂体の焼成を行うことによって、透明石英焼結体の透過率を向上することができる。
【0039】
脱脂体の焼成は、雰囲気炉の温度を上昇させ、焼成温度1300〜1700℃で行うことが好ましい。脱脂体の焼成時間は、10分〜2時間であることが好ましい。
【0040】
なお、上述の脱脂体の焼成は、真空雰囲気中で行うことが好ましい。具体的には、成形体の焼成は、焼成雰囲気を制御することのできる雰囲気炉又は真空炉を用い、高真空下(例えば、10−2MPa以下の圧力)で行うことが好ましい。
【0041】
以上の工程により、透明石英焼結体を得ることができる。上記したゲルキャスティング法による透明石英焼結体の製造方法により得られる透明石英焼結体は、本発明の透明石英焼結体であるのが好ましい。
【0042】
3.スリップキャスティング法による透明石英焼結体の製造方法
本発明の透明石英焼結体の第二の製造方法として、スリップキャスティング法が挙げられる。スリップキャスティング法は、多孔質の鋳型の片側面に着肉させて溶媒分を排出する「排泥鋳込み」や、流し込んだスリップの全てを着肉させる「固形鋳込み」等の方法を用いることができる。具体的な工程を以下に示す。
【0043】
本発明において、スリップキャスティング法による透明石英焼結体の製造方法は、
(a):平均粒子径が0.1〜1.0μmであり、Al含有量を20〜100ppmとした球状シリカ粉末、溶媒、及び分散剤を混合することにより、スリップを得る工程、
(c−ii):工程(a)で得られたスリップを鋳型に挿入し、脱型して、成形体を得る工程、及び
(e−ii):工程(c−ii)で得られた成形体を焼成して、透明石英焼結体を得る工程を含む。
【0044】
(1)工程(a)
工程(a)は、平均粒子径が0.1〜1.0μmであり、Al含有量を20〜100ppmとした球状シリカ粉末、溶媒、及び分散剤を混合することにより、スリップを得る工程である。スリップの調製条件は適宜選択することができ、ゲルキャスティング法の工程(a)と同様に行うことができる。
【0045】
本発明のスリップキャスティング法による製造方法では、工程(a)で得られたスリップを脱泡することが好ましい。脱泡することにより、工程(e−ii)での焼成の際の割れや亀裂等の発生を防止することができる。脱泡は、真空攪拌脱泡機を用い、攪拌しながら行うことができる。脱泡の時間は、特に限定されないが、10〜150分であるのが好ましい。
【0046】
(2)工程(c−ii)
工程(c−ii)は、工程(a)で得られたスリップを鋳型に挿入し、脱型して、成形体を得る工程である。
【0047】
工程(c−ii)における鋳型としては、吸液性のある多孔質の石膏型又は樹脂型が挙げられ、公知のものを用いることができる。鋳型に挿入されたスリップは、多孔質の鋳型中の多数の細孔を通して、スリップからの溶媒分の除去を行うことができる。
【0048】
鋳込成形は、公知の方法を用いて行うことができる。具体的には、スリップを鋳型に挿入することにより、成形体を得ることができる。スリップを鋳型に挿入する際、スリップを加圧しながら挿入することにより、スリップの挿入をより確実に行うことができる。
【0049】
本発明において、鋳型から脱型した成形体を8〜48時間自然乾燥することが好ましい。
【0050】
本発明において、工程(c−ii)で得られる成形体の成形体密度が、1.70×10〜1.79×10・kg/mであるのが好ましく、1.71×10〜1.76×10・kg/mであるのがより好ましい。このような成形体密度であれば、焼成によって所望の焼結体嵩密度が得られるため好ましい。
【0051】
(3)工程(e−ii)
工程(e−ii)は、工程(c−ii)で得られた成形体を焼成し、透明石英焼結体を得る工程である。
【0052】
成形体の焼成条件は、適宜選択することができ、ゲルキャスティング法の工程(e−i)と同様に行うことができる。
【0053】
以上の工程により、透明石英焼結体を得ることができる。上記したスリップキャスティング法による透明石英焼結体の製造方法により得られる透明石英焼結体は、本発明の透明石英焼結体であるのが好ましい。
【0054】
本発明は、上述の製造方法によって得られる透明石英焼結体に関する。本発明の透明石英焼結体は、特に、良好な紫外線透過率を要求される様々な部品、例えば光学材料、光デバイス、ランプの反射鏡及びその他の光学部品等の用途に用いることができる。例えば、本発明の透明石英焼結体は、光デバイス等に使用される電極、基板、レンズ、ミラーや、光学部品である医療及び食品分野などの殺菌用ランプ、各種照明、光学器具、半導体・液晶製造プロセスの露光装置用光源並びに洗浄用ランプ等に使用される部品、樹脂硬化用透明金型等に用いることができる。特に、本発明の透明石英焼結体を紫外線硬化性樹脂の硬化用の金型として用いた場合、紫外線硬化性樹脂を均一硬化させるのに優れた紫外線透過性を有しつつ、さらに優れた耐久性を有する。
【実施例】
【0055】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
純度99.9%以上、平均粒子径0.10μm、Al含有量45ppmの球状シリカ粉末100重量部に対し、蒸留水を40重量部となるように添加し、分散剤としてスルホン酸ナトリウム塩を球状シリカ粉末100重量部に対し0.5重量部加え、ボールミルにて15時間湿式混合して、スリップを作製した(工程(a))。これに樹脂としてエポキシ樹脂を球状シリカ粉末100重量部に対し4重量部添加し、約15分混合した。これに樹脂の硬化剤としてポリアミドアミンを球状シリカ粉末100重量部に対し0.5重量部添加した(工程(b))。次に、15分間、減圧脱泡操作を行った後、所定の形状の鋳型へスリップを注型し、自己硬化させた。スリップが硬化した段階で、硬化体を鋳型から脱型し、室温で24時間、80℃で24時間乾燥後、成形体密度1.46×10・kg/mの成形体を得た(工程(c−i))。
【0056】
これを電気炉にて加熱し、550℃、10時間の間脱脂をおこなった(工程(d))。次に、雰囲気炉を用いた高真空下(10−2Pa)で1500℃で1時間焼成し、透明石英焼結体を得た。以上のようにして実施例1の透明石英焼結体を得た(工程(e−i))。作製した焼結体の外形は、55mm×55mm×11mm厚であった。
【0057】
<平均粒子径測定>
レーザ回折散乱式粒度分布測定装置(商品名:HIRA、日機装製)を使用して累積50%粒子径(D50)を測定し、平均粒子径とした。
<各元素の含有量測定法>
Al、Ca、Fe及びMgの含有量は、ICP発光分析装置(商品名:SPS−1700、セイコーインスツルメンツ株式会社製)を使用して、試料を酸に溶解した後に測定した。Na及びKの含有量は、原子吸光分析装置(商品名:AA−880、日本ジャーレルアッシュ株式会社製)を使用して、試料を酸に溶解した後に測定した。
<成形体の密度測定>
工程(c−i)において得られた成形体の外形及び重量を測定し、重量を外形から算出した体積で除し、成形体の密度を算出した。
<焼結体の密度測定>
焼結体の密度は、アルキメデス法により測定した。
<透過率測定>
透過率は、分光光度計(商品名:UV−2552、(株)島津製作所製)を使用し、透明石英焼結体の波長200〜400nmにおける透過率を測定した。
<曲げ強度測定>
曲げ強度は、精密万能試験機(商品名:オートグラフAG−100KN、(株)島津製作所製)を使用し、JIS R 1601準拠の三点曲げ強度測定により測定した。
<気泡の数及び平均気泡径の測定>
気泡の数は、光学反射顕微鏡(商品名:BX60M、オリンパス株式会社製)を使用し、透明石英焼結体(55mm×55mm×11mm厚)の2mm×2mmの観察面に観察された気泡の数を計測し、単位体積あたりの気泡の数を算出した。平均気泡径は、観察された気泡の直径の総和を気泡の数で除して算出した。
<金型評価 剥離性評価>
評価用金型として、φ2mm×0.6mm深さの孔を有する55mm×55mm×11mm厚の透明石英焼結体の金型を作製した。これに紫外線硬化性樹脂を塗布し、基体に押圧したのち、金型側から紫外線を照射し、樹脂を硬化させた。金型を外した際、樹脂が金型に付着せず、剥離性が良好であったものを○、樹脂が金型に付着したものを×として評価した。
<金型評価 耐久性評価>
評価用金型に50MPaの圧力をかけ、金型にヒビ、欠けが発生しなかったものを○、発生したものを×として評価した。
【0058】
[実施例2]
平均粒子径0.25μm、Al含有量49ppmの球状シリカ粉末を使用した以外は、実施例1と同様にして透明石英焼結体を得た。
【0059】
[実施例3]
平均粒子径0.50μm、Al含有量43ppmの球状シリカ粉末を使用した以外は、実施例1と同様にして透明石英焼結体を得た。
【0060】
[実施例4]
平均粒子径1.00μm、Al含有量85ppmの球状シリカ粉末を使用した以外は、実施例1と同様にして透明石英焼結体を得た。
【0061】
[実施例5]
平均粒子径1.00μm、Al含有量35ppmの球状シリカ粉末を使用した以外は、実施例1と同様にして透明石英焼結体を得た。
【0062】
[実施例6]
純度99.9%以上、平均粒子径0.10μm、Al含有量51ppmの球状シリカ粉末100重量部に対し、蒸留水を40重量部となるように添加し、分散剤としてスルホン酸ナトリウム塩を球状シリカ粉末100重量部に対し0.5重量部加え、ボールミルにて15時間湿式混合して、スリップを作製した(工程(a))。これを約15分間、減圧脱泡操作を行った後、所定の形状の石膏型へスリップを注型し、着肉させた。着肉した段階で、成形体を石膏型から脱型し、室温で24時間、80℃で24時間乾燥し、成形体密度1.76×10・kg/mの成形体を得た(工程(c−ii))。
【0063】
これを雰囲気炉を用いた高真空下(10−2MPa)で、1500℃で1時間焼成し、透明石英焼結体を得た。以上のようにして実施例1の透明石英焼結体を得た(工程(e−ii))。作製した焼結体の外形は、55mm×55mm×11mm厚であった。
【0064】
[実施例7]
平均粒子径0.25μm、Al含有量53ppmの球状シリカ粉末を使用した以外は、実施例5と同様にして透明石英焼結体を得た。
【0065】
[実施例8]
平均粒子径0.50μm、Al含有量43ppmの球状シリカ粉末を使用した以外は、実施例5と同様にして透明石英焼結体を得た。
【0066】
[比較例1]
平均粒子径2.00μm、Al含有量153ppmの球状シリカ粉末を使用した以外は、実施例1と同様にして透明石英焼結体を得た。
【0067】
[比較例2]
平均粒子径2.00μm、Al含有量86ppmの球状シリカ粉末を使用した以外は、実施例1と同様にして透明石英焼結体を得た。
【0068】
[比較例3]
平均粒子径2.00μm、Al含有量10ppmの球状シリカ粉末を使用した以外は、実施例1と同様にして透明石英焼結体を得た。
【0069】
[比較例4]
平均粒子径0.08μm、Al含有量151ppmの球状シリカ粉末を使用した以外は、実施例1と同様にして透明石英焼結体を得た。
【0070】
[比較例5]
平均粒子径0.08μm、Al含有量88ppmの球状シリカ粉末を使用した以外は、実施例1と同様にして透明石英焼結体を得た。
【0071】
[比較例6]
平均粒子径0.08μm、Al含有量14ppmの球状シリカ粉末を使用した以外は、実施例1と同様にして透明石英焼結体を得た。
【0072】
[比較例7]
平均粒子径1.00μm、Al含有量150ppmの球状シリカ粉末を使用した以外は、実施例1と同様にして透明石英焼結体を得た。
【0073】
[比較例8]
平均粒子径1.00μm、Al含有量13ppmの球状シリカ粉末を使用した以外は、実施例1と同様にして透明石英焼結体を得た。
【0074】
[比較例9]
平均粒子径2.00μm、Al含有量153ppmの球状シリカ粉末を使用した以外は、実施例6と同様にして透明石英焼結体を得た。
【0075】
[比較例10]
平均粒子径2.00μm、Al含有量10ppmの球状シリカ粉末を使用した以外は、実施例6と同様にして透明石英焼結体を得た。
【0076】
[比較例11]
平均粒子径0.08μm、Al含有量151ppmの球状シリカ粉末を使用した以外は、実施例6と同様にして透明石英焼結体を得た。
【0077】
[比較例12]
平均粒子径0.08μm、Al含有量12ppmの球状シリカ粉末を使用した以外は、実施例6と同様にして透明石英焼結体を得た。
【0078】
表1に、原料であるシリカ粉末の純度、平均粒子径、金属元素含有量、及び成形体の成形体密度を示す。また、表2に、焼結体嵩密度、曲げ強度、金属元素含有量、気泡の数、平均気泡径、透過率、剥離性評価、及び耐久性評価を示す。表2の結果から明らかなように、本発明の実施例の焼結体は、透過率が適度な範囲にあった。また、実施例の透明石英焼結体を紫外線硬化性樹脂の金型として用いたときに、剥離性が良好であった。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の透明石英焼結体は、光を散乱させることができ、かつ紫外線硬化性樹脂を均一硬化させるのに最適な紫外線光透過率を有するため、産業上、きわめて有用である。