特許第5937864号(P5937864)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5937864粘着シート及び粘着シートが備わる電子端末用画像表示部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5937864
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】粘着シート及び粘着シートが備わる電子端末用画像表示部材
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/00 20060101AFI20160609BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20160609BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20160609BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   C09J7/00
   C09J133/00
   C09J133/14
   G09F9/00 313
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-73877(P2012-73877)
(22)【出願日】2012年3月28日
(65)【公開番号】特開2013-203864(P2013-203864A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年5月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082647
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 義久
(72)【発明者】
【氏名】加藤 伸一郎
【審査官】 ▲吉▼澤 英一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/111575(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/111576(WO,A1)
【文献】 特開2010−189545(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/040422(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/065982(WO,A1)
【文献】 特開2010−163591(JP,A)
【文献】 特開2007−284666(JP,A)
【文献】 特開2010−185038(JP,A)
【文献】 特開2012−041456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/00
C09J 133/00
C09J 133/14
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
70〜85質量の(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、
2〜10質量部の(メタ)アクリル酸メチル、
3〜5質量部の(メタ)アクリル酸ブチル、
メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、及び
3〜10質量部のアクリルアミド、
構成モノマーとする、質量平均分子量が50万〜200万であるアクリル系共重合体と;
このアクリル系共重合体100質量部に対し、0.05〜5質量部のイソシアネート系架橋剤と;
を反応させた樹脂を主成分とし、
ガラス転移温度が−35℃以下であって、
25℃における貯蔵弾性率(A)が20000Pa〜400000Pa、
90℃における貯蔵弾性率(B)が10000Pa〜200000Pa、
かつ、次記(1)の条件及び次記(2)の条件のうち、少なくとも一方の条件を満たす、
ことを特徴とする粘着シート。
(1)前記貯蔵弾性率(B)/前記貯蔵弾性率(A)が0.20〜0.40
(2)前記貯蔵弾性率(A)が80000Pa以下で、前記貯蔵弾性率(B)が10000Pa以上、かつ前記貯蔵弾性率(A)以下。
【請求項2】
電子端末用画像表示部材の被着体に貼付される、厚さが15〜200μmとされている請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
厚さが15〜200μmとされている請求項1に記載の粘着シートが電子端末用画像表示部材の被着体に貼付されて備わる、ことを特徴とする電子端末用画像表示部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シート及び粘着シートが備わる電子端末用画像表示部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、携帯電話やスマートフォン等の電子端末に組み込まれる画像表示部材の表示部本体と表面保護材やタッチパネルとの間の間隙や、表面保護材とタッチパネルとの間の間隙、等に配置される粘着シートが開発されるに至っている(例えば、特許文献1参照。)。この粘着シートは、透明な粘着剤から形成されており、屈折率が、空気と比較して、表面保護材やタッチパネル、表示部本体に近いものとされている。したがって、上記間隙に粘着シートを配置することで、光の透過性を向上させることができ、例えば、画像表示部材の輝度やコントラストの低下等を抑えることができる。
【0003】
もっとも、粘着シートと表面保護材やタッチパネル、表示部本体等(以下、これらを「被着体」ともいう。)との間に空気が入り込むと、十分に光透過性を向上させることができなくなる。そこで、この種の粘着シートは、被着体に対する粘着性(接着性)の向上も図られている。しかるに、粘着性を向上させたとしても、画像表示部材等の使用を継続すると、粘着シートと被着体との間に気泡(空気)が入ることや、粘着シートが被着体から剥がれること等がある。したがって、従来の粘着シートは、耐久性の点で、改良の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−74308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする主たる課題は、耐久性に優れる粘着シート及びこの粘着シートが備わる電子端末用画像表示部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明者等は、まず、粘着剤の主成分として、窒素含有官能基を有するアクリル系共重合体の使用を検討した。窒素含有官能基を有するアクリル系共重合体を使用することで、粘着シートの被着体に対する粘着性を向上させ、もって耐久性を向上させる趣旨である。しかるに、窒素含有官能基を有するアクリル系共重合体を使用すると、粘着性は向上するものの、耐久性は十分に向上しなかった。その原因を種々検討したところ、窒素含有官能基を有するアクリル系共重合体を使用する場合は、粘着剤のガラス転移温度(Tg)を高めていることにあると知見した。つまり、ガラス転移温度を高めると粘着シートが相対的に硬くなるため、温度の変化に伴う被着体の伸縮に追従し難くなり(応力緩和性の低下)、結果、気泡の混入や剥がれ等が生じるのである。そこで、更に窒素含有官能基を有するアクリル系共重合体を使用しつつも、ガラス転移温度を高めることなく、この種の粘着シートに対する各種要求を満足する粘着シートを得ることができないかを検討した。結果、想到するに至ったのが本発明である。
【0007】
すなわち、上記課題を解決するための本発明は、次の通りである。
〔請求項1記載の発明〕
70〜85質量の(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、
2〜10質量部の(メタ)アクリル酸メチル、
3〜5質量部の(メタ)アクリル酸ブチル、
メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、及び
3〜10質量部のアクリルアミド、
構成モノマーとする、質量平均分子量が50万〜200万であるアクリル系共重合体と;
このアクリル系共重合体100質量部に対し、0.05〜5質量部のイソシアネート系架橋剤と;
を反応させた樹脂を主成分とし、
ガラス転移温度が−35℃以下であって、
25℃における貯蔵弾性率(A)が20000Pa〜400000Pa、
90℃における貯蔵弾性率(B)が10000Pa〜200000Pa、
かつ、次記(1)の条件及び次記(2)の条件のうち、少なくとも一方の条件を満たす、
ことを特徴とする粘着シート。
(1)前記貯蔵弾性率(B)/前記貯蔵弾性率(A)が0.20〜0.40
(2)前記貯蔵弾性率(A)が80000Pa以下で、前記貯蔵弾性率(B)が10000Pa以上、かつ前記貯蔵弾性率(A)以下。
【0008】
〔請求項2記載の発明〕
電子端末用画像表示部材の被着体に貼付される、厚さが15〜200μmとされている請求項1に記載の粘着シート。
【0009】
〔請求項3記載の発明〕
厚さが15〜200μmとされている請求項1に記載の粘着シートが電子端末用画像表示部材の被着体に貼付されて備わる、ことを特徴とする電子端末用画像表示部材。
【0010】
【0011】
【0012】
【0013】
(主な作用効果)
本発明の粘着シートは、窒素含有官能基を有するアクリル系共重合体を主成分とするため、被着体との粘着性に優れる。また、25℃における貯蔵弾性率(A)が20000Pa〜400000Pa、90℃における貯蔵弾性率(B)が10000Pa〜200000Pa、貯蔵弾性率(B)/貯蔵弾性率(A)が0.20〜0.50、又は貯蔵弾性率(A)が80000Pa以下で、貯蔵弾性率(B)が10000Pa以上であるため、この種の粘着シートに対する各種要求を満足するのにガラス転移温度を高める必要がなく、ガラス転移温度が−35℃以下とされる。したがって、応力緩和性に優れ、上記粘着性に優れることと相まって、耐久性に優れる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、耐久性に優れる粘着シート及びこの粘着シートが備わる電子端末用画像表示部材となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】粘着シートの形成方法を示す断面図である。
図2】粘着シートの適用例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための形態について説明する。
本形態の粘着剤及びこの粘着剤から形成された粘着シートは、アクリル系共重合体と架橋剤とを反応させた樹脂を主成分とし、好ましくは窒素含有モノマーを含む。アクリル系共重合体を使用することで、耐久性や透明性の向上が図られる。また、架橋剤を使用することで、凝集性の向上が図られる。なお、本明細書中おいて「主成分」とは、含有割合が固形分質量基準で50%以上であることを意味する。
【0017】
アクリル系共重合体は、例えば、1種又は2種以上の(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、ビニル系モノマー等のその他のモノマーとを重合することで得ることができる。ただし、アクリル系共重合体は、窒素含有官能基及び架橋性官能基を有する必要がある。窒素含有官能基を有することで、粘着シートの被着体との粘着性が向上する。また、架橋性官能基を有することで、架橋剤との反応が促進され、粘着シートの凝集性が向上する。なお、本明細書中において「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」又は「メタクリル」を意味する。
【0018】
アクリル系共重合体の構成モノマーとなる(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0019】
ただし、得られるアクリル系共重合体が、H2C=C(R1)COOR2〔前記R1はH又はCH3、前記R2はC5〜C12のアルキル基〕で表わされる(メタ)アクリル酸エステルモノマー(以下、このモノマーを「所定の(メタ)アクリル酸エステルモノマー」ともいう。)を50〜95%の質量比で含むように構成するのが好ましく、60〜95%の質量比で含むように構成するのがより好ましく、70〜95%の質量比で含むように構成するのが特に好ましい。配合比が50%を下回ると、粘着性が十分に発揮されず容易に剥がれる等の不具合が発生するおそれがある。他方、配合比が95%を上回ると、凝集性が不足し耐久性能が不十分になるおそれがある。
【0020】
また、上記所定の(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、H2C=CHCOOCH2CH(C25)C49を20〜100%の質量比で含むのが好ましく、50〜98%の質量比で含むのがより好ましく、70〜95%の質量比で含むのが特に好ましい。配合比が20%を下回ると、埋込み適性が低下する傾向がある。
【0021】
さらに、アクリル系共重合体は、質量平均分子量が50万〜200万であるのが好ましく、70万〜150万であるのがより好ましく、100万〜120万であるのが特に好ましい。質量平均分子量が50万を下回ると、耐久性が低下する傾向がある。他方、質量平均分子量が200万を上回ると、溶液状態での粘着剤の粘度が高くなり、塗工できなくなるおそれや、塗工面の平滑性が不十分になるおそれがある。なお、質量平均分子量は、GPC(ゲルパーミテイションクロマトグラフィー)(島津社製LC−10VP)によって測定された値である。
【0022】
上記架橋性官能基としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、アミド基、アルコキシ基、アセトアセチル基等を例示することができる。これらの架橋性官能基は、2種類以上有するものとされていてもよい。ただし、水酸基を有すると、後述するイソシアネート系架橋剤との反応性が良くなり、また、貯蔵弾性率の制御やゲル分率の制御が容易となる。したがって、架橋性官能基としては、少なくとも水酸基を有するのが好ましい。
【0023】
架橋性官能基を有するアクリル系共重合体を得るためには、架橋性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー(単量体)を構成モノマーとして重合することや、架橋性官能基を有するその他のモノマーを構成モノマーとして重合すること等が考えられる。ただし、架橋性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーを構成モノマーとして重合する方が好ましい。
【0024】
この架橋性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基を有する単量体、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸クロロ2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、アリルアルコール等の水酸基を有する単量体、(メタ)アクリル酸アミノメチル、(メタ)アクリル酸アミノエチル等のアミノ基を有する単量体、アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、メトキシエチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基を有する単量体、メタクリロキシプロピルメトキシシラン等のアルコキシ基を有する単量体、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等のアセトアセチル基を有する単量体、等を例示することができる。なお、水酸基を有する単量体が好ましいのは、前述した通りである。
【0025】
(メタ)アクリル酸エステル100質量部に対する架橋性官能基の含有量は、1〜20質量部であるのが好ましく、3〜15質量部であるのがより好ましく、3〜10質量部であるのが特に好ましい。
【0026】
一方、以上の(メタ)アクリル酸エステルモノマーと重合するその他のモノマー、例えば、ビニル系モノマーとしては、例えば、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニルモノマー、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル等を例示することができる。これらのビニル系モノマーは、(メタ)アクリル酸エステルモノマー100質量部に対して、例えば、1〜10質量部、好ましくは3〜7質量部配合することができる。
【0027】
アクリル系共重合体は、共重合形態が、ランダム、ブロック、グラフトのいずれであってもよい。また、アクリル系共重合体の調製は、例えば、溶媒の存在下又は不存在下において、常法により行うことができる。当該溶媒としては、例えば、酢酸エチル、トルエン等を例示することができる。また、重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド等を例示することができる。
【0028】
アクリル系共重合体と反応させる架橋剤としては、例えば、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、金属塩系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、アンモニウム塩系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、グリシジル系架橋剤、アミン系架橋剤、アミノ樹脂系架橋剤、イソシアネート系架橋剤等を使用することができる。ただし、これらの中でも、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤、アミン系架橋剤、アミノ樹脂系架橋剤を使用するのが好ましく、イソシアネート系架橋剤を使用するのがより好ましい。
【0029】
以上の架橋剤のうち、例えば、エポキシ系架橋剤としては、分子中に2個以上のエポキシ基又はグリシジル基を有するエポキシ系架橋剤を使用するのが好ましく、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能性のエポキシ系架橋剤を使用するのがより好ましい。
【0030】
多官能性のエポキシ系架橋剤としては、例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル及び当該ジグリシジルエーテルのオリゴマー、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテル及び当該ジグリシジルエーテルのオリゴマー、オルソフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、p−オキシ安息香酸ジグリシジルエステル、テトラハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル及びポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル類、トリメリット酸トリグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、1,4−ジグリシジルオキシベンゼン、ジグリシジルプロピレン尿素、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジ又はトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールジ又はトリグリシジルエーテル、グリセロールアルキレンオキサイド付加物のトリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン等のジグリシジルアミン等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0031】
アジリジン系架橋剤としては、例えば、1,1´−(メチレン−ジp−フェニレン)ビス−3,3−アジリジル尿素、1,1´−(ヘキサメチレン)ビス−3,3−アジリジル尿素、2,4,6−トリアジリジニル−1,3,5−トリアジン、トリメチロールプロパン−トリス−(2−アジリジニルプロピオネート)等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。アジリジン系架橋剤の市販品としては、例えば、BXX5134(アジリジン系硬化剤、東洋インキ製造株式会社製)等を使用することができる。
【0032】
金属キレート系架橋剤としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属にアセチルアセトン、アセト酢酸エチル等を配位したものを使用することができる。金属キレート系架橋剤の市販品としては、例えば、アルミニウムにアセチルアセトンを配位した日本化学産業株式会社製のナーセムアルミ等を使用することができる。
【0033】
アミン系架橋剤としては、例えば、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、これらの塩等のポリアミンを使用することができる。脂肪族ポリアミンとしては、例えば、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、エチレンジアミン、N,N−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、エタノールアミン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサ−2−スピロ[5.5]ウンデカン等を例示することができる。また、芳香族ポリアミンとしては、例えば、ジアミノジフェニルメタン、キシリレンジアミン、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン等を例示することができる。
【0034】
アミノ樹脂系架橋剤としては、例えば、メトキシ化メチロール尿素、メトキシ化メチロールN,N−エチレン尿素、メトキシ化メチロールジシアンジアミド、メトキシ化メチロールメラミン、メトキシ化メチロールベンゾグアナミン、ブトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールベンゾグアナミン等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。ただし、メトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールメラミン、メチロール化ベンゾグアナミンを使用するのがより好ましい。
【0035】
イソシアネート系架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、クロルフェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添されたジフェニルメタンジイソシアネート等のポリイソシアネート、これらのポリイソシアネートにトリメチロールプロパン等を付加したポリイソシアネート、ポリイソシアヌレート、ビュレット型化合物、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等を付加反応させたウレタンプレポリマー型のポリイソシアネート等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0036】
アクリル系共重合体の架橋性官能基が水酸基で、かつ架橋剤としてイソシアネート系架橋剤を使用する場合は、アクリル系共重合体100質量部に対してイソシアネート系架橋剤(溶媒等を除いた有効成分)を0.05〜5質量部反応させるのが好ましく、0.1〜2質量部反応させるのがより好ましい。架橋剤の反応量を0.05質量部以上とすることで、ゲル分率が65%未満となって得られる粘着剤の凝集力が不十分になるのを防止することができる。また、粘着剤が高温環境下において発泡し易くなるのも防止することができる。他方、架橋剤の反応量を5質量部以下とすることで、ゲル分率が90%を超えて粘着剤の経時安定性が悪くなるのを防止することができる。また、粘着剤の応力緩和性が不十分になるのも防止することができる。
【0037】
アクリル系共重合体及び架橋剤は、混合した後、例えば、乾燥工程(70〜120℃で30〜180秒間加熱)において溶剤を蒸発させ、更に20〜80℃の環境下で2〜7日静置することで、反応(架橋)させることができる。
【0038】
粘着シートの厚さは、混合物の塗布量によって決定することができ、使用目的等にもよるが、15〜200μmとするのが好ましく、20〜185μmとするのがより好ましく、25〜175μmとするのが特に好ましい。シート厚が15μmを下回ると、粘着性が不十分になるおそれがあり、他方、200μmを上回ると、粘着シート断面から粘着剤が浸み出し易くなり、例えば、加工性が低下するおそれがある。なお、シート厚は、マイクロゲージを用いて測定した値である。
【0039】
一方、上記窒素含有官能基を有するアクリル系共重合体を得るためには、窒素含有官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー(単量体)を構成モノマーとして重合することや、窒素含有官能基を有するその他のモノマーを構成モノマーとして重合すること等が考えられる。ただし、窒素含有官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーを構成モノマーとして重合する方が好ましい。窒素含有官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、N,N−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0040】
本形態において、アクリル系共重合体及び架橋剤を反応させてなる樹脂は、粘着剤の主成分であり、粘着剤全量の好ましくは50〜100%、より好ましくは80〜100%、特に好ましくは90〜100%である。当該樹脂が主成分とされていないと、粘着性や耐久性等の各種物性が不十分になるおそれがある。
【0041】
このような観点から、粘着剤に含有させる上記樹脂以外の成分としては、本発明による作用効果を損なわない範囲で、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防かび剤、粘着付与剤、可塑剤、消泡剤、濡れ性調整剤等を例示することができる。ただし、上記樹脂以外の成分としては、シランカップリング剤を成分とするのがより好ましい。
【0042】
一方、シランカップリング剤の配合量は、アクリル系共重合体100質量部に対して、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.03〜3質量部、特に好ましくは0.05〜1質量部である。シランカップリング剤の配合量が0.01質量部を下回ると、湿熱環境下での密着性が低下するおそれがある。他方、シランカップリング剤の配合量が5質量部を上回ると、セパレーターのシリコーンとの密着が強固になり、剥離強度が高くなり、剥離しにくくなる傾向がある。
【0043】
以上のアクリル系共重合体及び架橋剤を反応させた樹脂を主成分とする本形態の粘着シートは、ガラス転移温度(Tg)が−35℃以下とされているのが好ましく、−35〜−50℃とされているのがより好ましく、−35〜−45℃とされているのが特に好ましい。ガラス転移温度が−35℃を上回ると、粘着シートが相対的に硬くなるため、温度の変化に伴う被着体の伸縮に追従し難くなり(応力緩和性の低下)、結果、気泡の混入や剥がれ等が生じるおそれがある。他方、ガラス転移温度が−50℃を下回ると、常温域以上で粘着シートとして形状が保てず使用できないおそれがある。なお、「ガラス転移温度」は、JIS K 7121に準拠して測定した値である。
【0044】
また、本形態の粘着シートは、ゲル分率が質量基準で65〜90%であるのが好ましく、70〜88%であるのがより好ましく、75〜85%であるのが特に好ましい。ゲル分率が65%を下回ると、凝集力が低くなり、耐久性が低下する傾向がある。他方、ゲル分率が90%を上回ると、硬くなり、埋込み適性が低下する傾向がある。このゲル分率は、例えば、架橋性官能基を有するアクリル系共重合体や架橋剤の配合量を調節することによって制御することができる。なお、「ゲル分率」は、以下の式に基づいて算出した値である。
ゲル分率=(c−a)×100/(b−a)
当該式中の「c−a」は、200メッシュの金網に入れた粘着シートを40℃の酢酸エチルに24時間浸漬し、次いで、酢酸エチルを濾別してから粘着シートを110℃で1時間乾燥した際の粘着シートの質量である。また、「b−a」は、酢酸エチルに浸漬する前の粘着シートの質量、「a」は、金網の質量である。
【0045】
本形態の粘着シートは、ボールタック値がJ.Dow法で3以下であるのが好ましく、2以下であるのがより好ましく、1以下であるのが特に好ましい。ここで、ボールタック値は、JIS Z 0237のJ.Dow法に準拠して測定した値である。この方法においては、30°の傾斜板に粘着シートを貼り付け、当該粘着シート上においてボールを転がし、測定部(域)内で停止する最大のボールナンバーをボールタック値とする。この測定方法からも明らかなように、ボールタック値は、粘着シート表面の粘性を示す指標である。ボールタック値が大きい場合は、粘着シート表面が体感的には柔らかくなり、べたつきが強くなる。特に、ボールタック値が3を超えると、粘着シートをスリット加工やダイカット加工等する際の加工刃に、粘着剤が付着して加工効率が低下するおそれがある。また、ボールタック値が3を超えると、段差部等に対する埋込み適性は向上するが、被着体になじむ速度が速くなるため、粘着シートを被着体に貼り付ける際に、両者間に空気が入り易くなる。
【0046】
本形態の粘着シートは、25℃における貯蔵弾性率(A)が20000Pa〜400000Pa(好ましくは50000〜350000Pa、より好ましくは80000〜300000Pa)、90℃における貯蔵弾性率(B)が10000Pa〜200000Pa(好ましくは30000〜180000Pa、より好ましくは50000〜150000Pa)、貯蔵弾性率(B)/貯蔵弾性率(A)が0.20〜0.50(好ましくは0.2〜0.40、より好ましくは0.20〜0.30)である。ただし、貯蔵弾性率(A)が80000Pa以下であって、貯蔵弾性率(B)が10000Pa以上、かつ貯蔵弾性率(A)以下となる場合は、貯蔵弾性率(B)/貯蔵弾性率(A)が0.20〜0.50でなくてもよい。
【0047】
25℃における貯蔵弾性率(A)が20000Paを下回ると、常温時における粘着シートが柔らかく、加工適性や輸送、保存等における取扱い適正が悪くなる。他方、当該貯蔵弾性率(A)が400000Paを上回ると、埋込み適正が悪くなる。したがって、例えば、被着体の表面に段差等が存在した場合には、当該段差部において粘着シートと被着体との間に空気(気泡)が入り込むおそれがある。また、被着体が温度変化に伴って伸縮した際に、段差部の粘着シートに大きな応力がかかることになり、粘着シートが被着体から剥がれるおそれがある。つまり、粘着シートの耐久性が低下する。
【0048】
一方、90℃における貯蔵弾性率(B)が10000Paを下回ると、オートクレーブ加工(加熱・加圧加工)時等において、粘着剤が被着体から浸み出すおそれがある。他方、当該貯蔵弾性率(B)が200000Paを上回ると、オートクレーブ加工時等において、粘着シートが被着体の表面に、特に段差部や凹凸部が存在する場合は、当該部位に追従せず(埋め込まれず)、発泡等の異常が発生するおそれがある。
【0049】
さらに、貯蔵弾性率(B)/貯蔵弾性率(A)が0.20を下回ると、温度の変化に伴う物性の変化が大きくなり、粘着シートと被着体との間において、特に段差部や凹凸部等において粘着シートに大きなストレスがかかり、当該粘着シートが被着体から浮いたり、剥がれたりするおそれがある。他方、貯蔵弾性率(B)/貯蔵弾性率(A)が0.50を上回ると、加熱時において被着体の伸縮差を吸収することができず(応力緩和性の低下)、粘着シートが被着体から浮いたり、剥がれたりするおそれがある。ただし、貯蔵弾性率(A)が80000Pa以下である場合は、貯蔵弾性率(B)が10000Pa以上、かつ貯蔵弾性率(A)以下であれば、以上の問題が生じない。これは、25℃において既に一定の柔軟性を有しており、加熱時に極端に柔軟化する必要がないためである。
【0050】
25℃における貯蔵弾性率(A)及び90℃における貯蔵弾性率(B)は、例えば、粘着剤の架橋密度やモノマー成分の比率を変えることで調節することができる。また、貯蔵弾性率の比(貯蔵弾性率(B)/貯蔵弾性率(A))は、例えば、粘着剤の架橋密度やモノマー成分の比率を変えることに加え、粘着剤とガラス転移点が異なる添加剤を混合することによって、調節することができる。
【0051】
なお、本明細書において、貯蔵弾性率は、JIS K 7244に準拠して測定した値である。より詳細には、動的粘弾性測定装置(日本シーベルヘグナー社製、型番:MCR301)を使用し、−40℃〜190℃の温度範囲において、昇温速度3℃/min、周波数1Hzにてズリ測定して得た値である。そして、25℃における貯蔵弾性率(A)は、当該測定結果の25℃における値、90℃における貯蔵弾性率(B)は、当該測定結果の90℃における値である。
【0052】
〔粘着シートの形成〕
本形態の粘着シートを製造するにあたっては、例えば、まず、各種モノマー及び重合開始剤を溶媒の存在下において加温、攪拌することで重合し、アクリル系共重合体を得る。この際、適宜溶媒を加え、所望の固形分、粘度に調整する。このようにして得たアクリル系共重合体を含む主剤に架橋剤や添加剤を添加し、攪拌して塗工液を調製する。この塗工液は、下記に示すように、剥離シートに塗布し、ドライヤー等で溶剤を蒸発させて、粘着剤(組成物)の膜を剥離シート上に形成する(成膜)。そして、室温又は加温環境下において数日間静置し、熟成(エージング)して粘着シートを得る。
【0053】
ここで上記成膜に関して、例えば、図1の(1)に示すように、剥離シート2A上に粘着剤(塗工液)を塗布し、この塗布した粘着剤を乾燥して層状の粘着シート1を形成することができる。この粘着シート1上には、更に他の剥離シート2Bを積層して粘着シート製品A1とすることができる。また、例えば、図1の(2)に示すように、PETフィルム等からなる基材シート3の両面に粘着剤を塗布し、この塗布した粘着剤を乾燥して基材3の両面に粘着剤層4が形成された粘着シート1´を形成することもできる。この粘着シート1´の両表面上には、剥離シート2を積層して、粘着シート製品A2とすることもできる。この粘着シート製品A2は、例えば、携帯電話やスマートフォン、PDA(Personal Digital Assistant)、電子辞書、デジタル音楽プレイヤー、デジタル動画プレイヤー、携帯ゲーム機器、携帯型GPS、カメラ、ビデオハンドヘルドPC等の電子端末に組み込まれる画像表示部材において、液晶表示ユニットと光学基材(輝度上昇フィルム)とを粘着して固定する際に使用することができる。つまり、接着シートが液晶表示ユニットと光学基材との間に組み込まれて使用されることになる。
【0054】
この点、電子端末に組み込まれる画像表示部材は、LCDモジュール等の画像表示モジュールとして構成されるのが一般的であり、他の部材からの独立性が高く、追加や交換が容易にできるように設計される。したがって、その低価格化や耐久性向上を競って開発が進められており、本発明による接着シートの特性がいかんなく発揮される。
【0055】
以上における粘着剤の塗布は、例えば、ロールコーター、ナイフコーター、ロールナイフコーター、リバースコーター、グラビアコーター等を使用して行うことができる。また、剥離シート2(2A,2B)としては、例えば、グラシン紙、コート紙、キャストコート紙等の紙素材や、これらの紙素材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム等のプラスチックフィルムにシリコーン樹脂等の剥離剤を塗布した合成素材、等からなるものを使用することができる。これらの剥離シート2の厚さには、特に制限がないが、通常20〜150μmである。さらに、上記剥離剤としては、例えば、オレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマーや、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂等を使用することができる。
【0056】
〔適用における特徴等〕
図2に、本形態の粘着シート1の適用(配置)例を示した。
図2の(1)においては、粘着シート1が、ガラス板等からなる表面保護材11とタッチパネル12との間の間隙に配置されている。図示例のように、表面保護材11の表面には、マスキング等を目的として、印刷等が施され、印刷層Pが形成されていることがある。この場合においては、表面保護材11の表面に段差が存在し、当該段差部において粘着シート1と表面保護材11との間に空気が入り込み易くなる。しかしながら、本形態の粘着シート1は、埋込み適正に優れるため、当該段差部において空気が入り込むおそれがない。
【0057】
図2の(2)においては、粘着シート1が、タッチパネル12と画像表示部材の表示部本体Xと間の間隙に配置されている。通常、タッチパネル12と表示部本体Xとでは熱伸縮率が異なり、粘着シート1がタッチパネル12や表示部本体Xから剥がれる原因となる。しかしながら、本形態の粘着シート1は、タッチパネル12等の被着体との粘着性に優れ、しかも応力緩和性にも優れるため、温度が変化したとしても、タッチパネル12や表示部本体Xから剥がれるおそれがなく、耐久性に優れる。
【0058】
図2の(3)においては、粘着シート1が、ガラス板等からなる表面保護材11と画像表示部材の表示部本体Xと間の間隙に配置されている。この場合においても、当該間隙に段差部が存在しており、しかも粘着シート1は表示部本体Xからの熱を受け易い状態にある。したがって、通常であれば、特に段差部において粘着シート1と表面保護材11との間に空気が入り込み易くなるが、本形態の粘着シート1は、物性の変化が制御されているため、当該部位において空気が入り込むおそれがない。
【実施例】
【0059】
次に、各種試験例を示し、本発明による作用効果を明らかにする。
(実施例1)
アクリル酸メチル(MA)10質量部、アクリル酸ブチル(BA)3質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)75質量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(2HEA)2質量部、及びアクリルアミド(Am)10質量部からなる構成モノマーを、質量平均分子量が120万となるよう重合して、アクリル系共重合体(主剤)を得た。この主剤に架橋剤を添加して粘着剤とし、この粘着剤をPET基材からなる剥離シート上に塗工した。この塗工は、乾燥後の塗工厚が50μmとなるよう行った。塗工した粘着剤は、90℃で5分間乾燥し、更に60℃環境下で3日間エージングを行った。このようにして粘着剤から粘着シートを製造した。この粘着シートの製造は、ガラス転移温度が−38℃、25℃における貯蔵弾性率(A)が180000Pa、90℃における貯蔵弾性率(B)が46000Pa、ゲル分率が85%、ボールタックが2未満となるように行った。
【0060】
(実施例2〜7及び比較例)
構成モノマーの種類や配合割合、粘着剤の物性等を変化させて粘着シートを製造した。詳細は、表1及び表2に示した。なお、表中の「EA」はアクリル酸エチル、「4HBA」はアクリル酸4−ヒドロキシブチル、「AA」はアクリル酸、「VAc」は酢酸ビニルを示す。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
以上のようにして製造した粘着シートについて、各種評価を行った。結果は、表2に示した。なお、ガラス転移温度、貯蔵弾性率、シート厚、ゲル分率及びボールタックの測定方法は、前述した通りである。また、評価方法の詳細は、以下の通りである。
【0064】
(埋込み適正)
70mm×70mmのガラス上に幅5mm、厚み40μmの印刷を施して得た被着体の印刷部及びガラス部を覆うように試験片(粘着シート)を貼付した後、0.5MPa、50℃の条件下でオートクレーブ処理を30分間行った。その後、23℃、50%RHの環境下で24時間静置し、更に85℃、85%RHの環境下で240時間静置した。この状態において、印刷部とガラス部との境界部、つまり段差部の外観を観察し、次の基準に基づいて評価した。
◎:浮き剥がれ発泡が存在しなかった場合。
○:10μm以下の目視で確認できない微小な気泡の発生はあったが、浮き剥がれ等は存在しなかった場合。
×:浮き剥がれや発泡等の外観異常があった場合。
【0065】
(耐久性)
上記方法によって製造した試験片(粘着シート)を用いて50mm×50mmのガラス同士を貼り合わせ、0.5MPa、50℃の条件下でオートクレーブ処理を30分間行った。その後、23℃、50%RHの環境下で24時間静置し、更に−40℃、85℃DRY、及び85℃、85%RHの各環境下でそれぞれ120時間の計240時間静置した。この状態において、外観を観察し、次の基準に基づいて評価した。
◎:浮き剥がれ及び発泡が存在しなかった場合。
○:10μm以下の目視で確認できない微小な気泡の発生はあったが、浮き剥がれ等は存在しなかった場合。
×:浮き剥がれや発泡等の外観異常があった場合。
【0066】
(加工適性)
上記方法によって製造した試験片(粘着シート)を、ダイカット刃を用いて200回裁断した。この際のダイカット刃への粘着剤の付着状態を観察し、次の基準に基づいて評価した。
◎:ダイカット刃への粘着剤の付着がなく、裁断性に影響がなかった場合。
○:ダイカット刃への粘着剤の付着が僅かにあるものの、裁断性に影響がなかった場合。
×:ダイカット刃への粘着剤の付着が多く、裁断性の低下が認められた場合。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、画像表示装置の表示部と表面保護材やタッチパネルとの間の間隙や、表面保護材とタッチパネルとの間の間隙、等に配置される粘着シート及びこの粘着シートを形成する粘着剤として適用可能である。
【符号の説明】
【0068】
1…粘着シート、2,2A,2B…剥離シート、11…表面保護材、12…タッチパネル、X…表示部本体。
図1
図2