特許第5937903号(P5937903)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5937903
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】耐火処理具及び貫通部の耐火構造
(51)【国際特許分類】
   F16L 5/04 20060101AFI20160609BHJP
   A62C 3/16 20060101ALI20160609BHJP
   H02G 3/22 20060101ALI20160609BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   F16L5/04
   A62C3/16 B
   H02G3/22
   E04B1/94 F
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-143192(P2012-143192)
(22)【出願日】2012年6月26日
(65)【公開番号】特開2014-5911(P2014-5911A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2014年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉原 伸和
(72)【発明者】
【氏名】谷 真也
【審査官】 杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−132147(JP,A)
【文献】 特開平05−228223(JP,A)
【文献】 特開2011−117574(JP,A)
【文献】 特開2001−303692(JP,A)
【文献】 特開2011−021618(JP,A)
【文献】 米国特許第05347767(US,A)
【文献】 特開2007−312599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 5/04
A62C 3/16
E04B 1/94
H02G 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の防火区画体を厚み方向に貫通して形成された貫通部に挿入されるとともに、配線・配管材が挿通される耐火処理具であって、
自身で形状を維持可能な熱膨張性材料によって前記配線・配管材が貫通可能な筒状に形成されるとともに、前記貫通部に挿入される耐火具本体と、
前記配線・配管材の外周面と前記耐火具本体の内周面との間に充填される、難燃性又は不燃性を有する非熱膨張性材料の耐火パテよりなる充填材と、からなり、
前記充填材は、火災時の熱によって膨張する前記耐火具本体って前記配線・配管材に向けて圧縮されて、前記配線・配管材の焼失によって形成される空隙を閉塞する耐火処理具。
【請求項2】
建築物の防火区画体を厚み方向に貫通して形成された貫通部に配線・配管材が挿入され、該貫通部の内周面と前記配線・配管材の外周面との間に耐火処理具が挿通されてなる貫通部の耐火構造であって、
前記貫通部には、自身で形状を維持可能な熱膨張性材料によって前記配線・配管材が貫通可能な筒状に形成された耐火処理具の耐火具本体が挿入されるとともに、前記配線・配管材の外周面と前記耐火具本体の内周面との間には難燃性又は不燃性を有する非熱膨張性材料の耐火パテよりなる充填材が充填されており、火災時には熱によって膨張する前記耐火具本体によって前記充填材が前記配線・配管材に向けて圧縮されて、該充填材により前記配線・配管材の焼失によって形成される空隙閉塞されるように構成されている貫通部の耐火構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の防火区画体を厚み方向に貫通して形成された貫通部に挿入されるとともに、配線・配管材が挿通される耐火処理具及び貫通部の耐火構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建築物における防火区画壁(防火区画体)に配線・配管材を貫通させる場合、この防火区画壁の貫通部には耐火構造が設けられる(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の防火処理構造(耐火構造)において、防火区画壁を厚み方向に貫通する貫通孔(貫通部)内には、防火処理具が設置されている。この防火処理具は、熱膨張性ゴムから円筒状に形成された処理具本体と、この処理具本体の内側に設けられる熱膨張パテと、からなる。そして、火災等が発生すると、処理具本体及び熱膨張パテは火災等の熱によって膨張し、配線・配管材が焼失することで形成された空隙を閉塞する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−117574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に開示のように、防火処理具においては、貫通孔に配線・配管材が挿通された状態で、この配線・配管材の外周面と貫通孔の内周面との間隙に処理具本体が挿入される。このため、処理具本体が挿入できるように、貫通孔は十分余裕を持って形成されている。したがって、処理具本体は、貫通孔を配線・配管材とともに閉塞する大きさに形成する必要があり、製造コストが嵩んでしまっている。また、防火処理具は、処理具本体及び熱膨張パテ共に熱膨張性材料からなるため、防火処理具のコストが嵩んでしまっていた。
【0005】
本発明は、熱膨張性材料の使用量を減らして製造コストを抑えることができる耐火処理具及び貫通部の耐火構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、建築物の防火区画体を厚み方向に貫通して形成された貫通部に挿入されるとともに、配線・配管材が挿通される耐火処理具であって、自身で形状を維持可能な熱膨張性材料によって前記配線・配管材が貫通可能な筒状に形成されるとともに、前記貫通部に挿入される耐火具本体と、前記配線・配管材の外周面と前記耐火具本体の内周面との間に充填される、難燃性又は不燃性を有する非熱膨張性材料の耐火パテよりなる充填材と、からなり、前記充填材は、火災時の熱によって膨張する前記耐火具本体って前記配線・配管材に向けて圧縮されて、前記配線・配管材の焼失によって形成される空隙を閉塞することを要旨とする。
【0008】
請求項に記載の発明は、建築物の防火区画体を厚み方向に貫通して形成された貫通部に配線・配管材が挿入され、該貫通部の内周面と前記配線・配管材の外周面との間に耐火処理具が挿通されてなる貫通部の耐火構造であって、前記貫通部には、自身で形状を維持可能な熱膨張性材料によって前記配線・配管材が貫通可能な筒状に形成された耐火処理具の耐火具本体が挿入されるとともに、前記配線・配管材の外周面と前記耐火具本体の内周面との間には難燃性又は不燃性を有する非熱膨張性材料の耐火パテよりなる充填材が充填されており、火災時には熱によって膨張する前記耐火具本体によって前記充填材が前記配線・配管材に向けて圧縮されて、該充填材により前記配線・配管材の焼失によって形成される空隙閉塞されるように構成されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、熱膨張性材料の使用量を減らして製造コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態の貫通部の耐火構造を示す断面図。
図2】実施形態の耐火処理具を示す斜視図。
図3】(a)は耐火処理具を示す正面図、(b)は図3(a)のA−A線断面図。
図4】耐火処理具と電線管との間隙を示す図。
図5】貫通部の耐火構造の作用を示す断面図。
図6】貫通部の耐火構造の別例を示す断面図。
図7】別例の耐火構造の作用を示す断面図。
図8】貫通部の耐火構造の別例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した耐火処理具の一実施形態を図1図5にしたがって説明する。
まず、防火区画体としての防火区画壁Wについて説明する。
【0013】
図1に示すように、防火区画壁Wはコンクリート壁であるとともに、防火区画壁Wには、配線・配管材としての電線管Pを防火区画壁Wの厚み方向に貫通させるための円孔状の貫通孔Waが形成されている。そして、本実施形態では、貫通孔Waそのものによって貫通部が形成されている。
【0014】
次に、防火区画壁Wにおける貫通部の耐火構造を形成するため、貫通孔Waに装着されるとともに防火区画壁Wに固定される耐火処理具11について説明する。図2に示すように、耐火処理具11は、熱膨張性材料としての熱膨張性ゴムによって有底円筒状に形成されている。耐火処理具11は、円筒状をなす耐火具本体12と、この耐火具本体12の軸方向一端に形成されたフランジ部13とを有する。
【0015】
図3(b)に示すように、耐火具本体12の外径は、耐火具本体12の軸方向に一定で、かつ貫通孔Waの直径より僅かに大きく形成されている。また、熱膨張性ゴムは、300℃以上の熱を受けると体積が加熱前の2倍以上に膨張する膨張材(膨張黒鉛)をゴムに混入し、このゴムを所定形状に成形した(成形工程を経た)ものに加硫工程を経てなるものである。なお、加硫工程とは、成形工程を経たゴムに熱を加え、加硫(架橋)反応や接着反応を起こさせ、ゴム弾性を有する製品を得る工程である。そして、耐火処理具11は、熱膨張性ゴム自身により円筒状(形状)を維持している。
【0016】
図3(a)及び図3(b)に示すように、耐火具本体12の軸方向一端には、フランジ部13が耐火具本体12の周方向の全周に亘って外方へ突出するように形成されている。また、耐火具本体12の軸方向他端(底側)側には受け部16が形成されている。そして、耐火具本体12内には充填空間Kが形成されるとともに、この充填空間Kは耐火具本体12の軸方向一端で開口するとともに軸方向他端で受け部16によって閉鎖されている。充填空間Kは、円穴状に形成されるとともに、耐火具本体12の軸方向一端から他端に向かうに従い徐々に先細となるように縮径して形成されている。そして、耐火具本体12の外径は軸方向に沿って一定であるため、耐火具本体12における周壁部12aの厚みは、耐火具本体12の軸方向一端から他端に向かうに従い徐々に厚くなるように形成されており、受け部16側ほど厚くなっている。
【0017】
受け部16は、耐火具本体12の内周面に一体形成された薄板状をなす。受け部16には、複数の分割溝16aが受け部16の周方向へ等間隔おきに形成されるとともに、受け部16の径方向へ延びるように形成されている。受け部16において、分割溝16aが形成された部位は、その他の部位より薄くなっている。受け部16の中央部で全ての分割溝16aが交わる位置には挿通孔16bが受け部16を厚み方向に貫通して形成されている。また、各分割溝16aは、受け部16の中央部寄りが挿通孔16bに連通するように受け部16の厚み全体に切断されている。
【0018】
図1に示すように、受け部16における挿通孔16bに電線管Pが差し込まれると、受け部16は、分割溝16aの挿通孔16b側から分断される。その結果、受け部16は、複数の分割溝16aによって扇形状に分割されて複数の舌片16cが形成されるようになっている。各舌片16cはゴム弾性を有しているとともに、舌片16cの基端側を基点として充填空間K内又は耐火具本体12から離間する側へ向けて変形可能になっている。図1では、電線管Pが受け部16を貫通した状態で、耐火処理具11を電線管Pに沿って移動させたため、舌片16cが基端側を基点として充填空間K内へ向けて変形するとともに、舌片16cが電線管Pの外周面に密接している。
【0019】
また、図2及び図3(a)に示すように、耐火具本体12及びフランジ部13には、耐火具本体12の軸方向全体に亘って延びるスリット14が形成されている。スリット14は、耐火具本体12の外面側及びフランジ部13の外周端と、充填空間Kとを連通するように繋ぎ、充填空間Kを耐火具本体12の外側へ開口可能としている。スリット14は、複数の分割溝16aのうちの一つであり、舌片16cの形成に利用されている。
【0020】
図1に示すように、耐火処理具11は、耐火具本体12の充填空間Kに充填される充填材21を備えている。充填材21は、耐火パテからなる。充填材21は、耐火具本体12と異なり非熱膨張性材料(熱によって膨張しない材料)によって形成されている。
【0021】
次に、貫通部の耐火構造について説明する。
図1に示すように、防火区画壁Wには耐火処理具11が固定されている。具体的には、防火区画壁Wの貫通孔Waには、耐火処理具11の耐火具本体12が挿入されるとともに、貫通孔Waの開口縁部にフランジ部13が当接した状態で係止している。そして、フランジ部13と防火区画壁Wの開口縁部とは、粘着テープ又は接着剤によって固着され、耐火処理具11は防火区画壁Wに対して移動不能に固定されている。なお、耐火処理具11の防火区画壁Wへの設置は、フランジ部13の表面から防火区画壁Wの表面にかけて難燃性のパテを塗り、このパテ内にフランジ部13を埋め込んで耐火処理具11を防火区画壁Wに固定することで行ってもよい。
【0022】
耐火具本体12の外周面は、貫通孔Wa内周面に圧接している。よって、耐火具本体12の外周面が貫通孔Waの内周面に圧接することにより、耐火具本体12の外周面と貫通孔Waの内周面との間に隙間が無くなり、耐火具本体12がシール部材として機能している。
【0023】
図1及び図4に示すように、耐火具本体12内には電線管Pが挿通されるとともに、電線管Pは防火区画壁Wを厚み方向に貫通している。そして、耐火具本体12は、電線管Pの外周面との間に間隙Kaを空けて周方向の全体に亘って取り囲んでいる。また、耐火処理具11の複数の舌片16cは電線管Pに沿って充填空間K(間隙Ka)内へ向けて突出するように変形している。貫通孔Waの奥方では、複数の舌片16cよりなる受け部16により充填空間Kが閉鎖されている。
【0024】
図1に示すように、間隙Kaには耐火パテからなる充填材21が充填されるとともに、充填材21によって間隙Kaが閉塞されている。充填材21は、内周面が電線管Pの外周面に密着するとともに、外周面が耐火具本体12の内周面に密着している。なお、充填材21は、舌片16cを押し退けて貫通孔Waの奥に到達するまで充填空間Kには充填されず、舌片16cによって耐火具本体12から飛び出ることが防止されている。また、充填材21によって、耐火具本体12のスリット14も耐火具本体12の内周面側から閉じられている。したがって、電線管Pの外周面と耐火処理具11の内周面との間隙Kaは充填材21によって閉塞されている。
【0025】
次に、耐火処理具11及び耐火構造の作用について記載する。
防火区画壁Wの一方の壁面側(フランジ部13が露出する側)で火災等が発生すると、電線管Pやその他のものの燃焼により煙が発生する。このとき、貫通孔Waは、耐火具本体12の貫通孔Wa内面への圧接(耐火具本体12のシール機能)及び間隙Kaに充填された充填材21により閉塞されている。このため、耐火処理具11(耐火具本体12及び充填材21)によって貫通孔Waが煙の経路となることが防止され、防火区画壁Wの他方の壁面側へ煙が伝わる不都合がなくなる。
【0026】
さらに、電線管Pが燃焼し、火災等や燃焼により発生した熱によりフランジ部13、充填材21及び耐火具本体12の露出面側が加熱される。すると、フランジ部13及び耐火具本体12が膨張する。さらに、電線管Pが燃え進むと、耐火具本体12が内周面から加熱されるとともに、耐火具本体12を伝播した熱により耐火具本体12が内周面から加熱される。すると、耐火具本体12が内周面側から膨張する。
【0027】
図5に示すように、加熱された耐火具本体12は貫通孔Waの径方向及び軸方向に向けて膨張し、充填材21を電線管Pに向けて押圧する。そして、電線管Pが焼失すると、その焼失によって形成された空隙に充填材21が押し込まれ、充填材21によって空隙が閉塞される。また、膨張した耐火具本体12は、電線管Pを押し潰しながら貫通孔Waを密封閉鎖する。その結果、電線管Pの外周面と貫通孔Waの内周面との間の隙間が熱、煙の経路となり、防火区画壁Wの他方の壁面側へ熱、煙が伝わる不都合がなくなる。
【0028】
一方、防火区画壁Wの他方の壁面側(貫通孔Waが開放された側)で火災等が発生すると、電線管Pやその他のものの燃焼により煙が発生する。このとき、貫通孔Waは、耐火処理具11により閉鎖されているため、貫通孔Waが煙の経路となることが防止され、防火区画壁Wの他方の壁面側へ煙が伝わる不都合がなくなる。
【0029】
さらに、電線管Pが燃焼するとともに、火炎や煙が貫通孔Wa内に侵入する。すると、火災等や燃焼により発生した熱により、耐火具本体12の受け部16側が加熱される。燃え進んだ電線管Pからの熱により耐火具本体12が内周面側から加熱される。
【0030】
すると、加熱された耐火具本体12の受け部16側は貫通孔Waの径方向及び軸方向に向けて膨張し、充填材21を電線管Pに向けて押し潰す。このため、充填材21は電線管Pに向けて圧縮される。そして、電線管Pが焼失すると、その焼失によって形成された空隙に充填材21が押し込まれ、圧縮された充填材21によって空隙が閉塞される。また、膨張した耐火処理具11は、電線管Pを押し潰しながら貫通孔Waを密封閉鎖する。その結果、電線管Pの外周面と貫通孔Waの内面との間の隙間が熱、煙の経路となり、防火区画壁Wの他方の壁面側へ熱、煙が伝わる不都合がなくなる。
【0031】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)貫通部の耐火構造を形成する耐火処理具11を、耐火処理具11と充填材21とで形成した。そして、充填材21を非熱膨張性材料で形成した。このため、耐火処理具11と充填材21の両方を熱膨張性材料で形成する場合と比べると、耐火処理具11に用いられる熱膨張性材料を減らして製造コストを抑えることができる。
【0032】
(2)火災時には、耐火具本体12が熱膨張すると、充填材21が電線管Pに向けて押される。このため、電線管Pが焼失することで、耐火具本体12内で電線管Pが配置されていた部位に空隙が形成されても、膨張する耐火具本体12によって充填材21を空隙に押し込むことができる。その結果、耐火具本体12の内側に空隙が形成されることを防止して、貫通孔Waが煙や火炎の経路になることを防止することができる。
【0033】
(3)耐火具本体12の内周面と電線管Pの外周面との間隙Kaに充填材21を充填したため、間隙Kaを充填材21で閉塞して貫通孔Waが煙の経路になることを防止することができる。
【0034】
(4)耐火具本体12は熱膨張性ゴムよりなり、ゴム弾性を有する。また、耐火具本体12の外径は貫通孔Waの直径より僅かに大きく形成されている。このため、耐火具本体12を貫通孔Wa内に挿入すると、耐火具本体12が貫通孔Waの内周面によって僅かに圧縮変形するとともに、原形状への復帰により貫通孔Waの内周面に耐火具本体12の外周面が圧接し、耐火具本体12そのもので貫通孔Waの内周面との間をシールすることができる。
【0035】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態では、充填材として耐火パテを用いたが、充填材を発泡性材料(例えば、スポンジ)で形成してもよい。図6に示すように、充填材31は、内径及び外径を縮径させた状態、すなわち圧縮させた状態で間隙Kaに押し込まれている。そして、充填材31は、圧縮状態から原形状へ復帰しようとする弾性力によって、内周面が電線管Pの外周面に密接するとともに、外周面が耐火具本体12の内周面に密接している。なお、充填材31は、舌片16cを押し退けて貫通孔Waの奥に到達するまで間隙Kaには充填されず、舌片16cによって耐火具本体12から飛び出ることが防止されている。また、充填材31によって、耐火具本体12のスリット14も耐火具本体12の内周面側から閉じられている。したがって、電線管Pの外周面と耐火処理具11の内周面との間隙Kaは充填材21によって閉塞されている。
【0036】
そして、防火区画壁Wの一方の壁面側(フランジ部13が露出する側)で火災等が発生し、フランジ部13及び耐火具本体12が膨張する。このとき、図7に示すように、充填材31は火炎や熱によって焼失する。すると、充填材31の焼失によって空隙が形成され、この空隙が熱の伝播空間となり、空隙を取り囲む耐火具本体12がその内周面側(電線管P側)から膨張される。その結果、膨張した耐火具本体12が空隙に入り込み、空隙が閉塞されるとともに、貫通孔Waが閉塞される。
【0037】
充填材31として発泡性材料を用い、充填材31を圧縮状態で間隙Kaに充填した。このため、充填材31の圧縮状態から原形状への復帰力により、充填材31を電線管Pの外周面及び耐火具本体12の内周面に面接触させることができる。よって、電線管Pの外周面と耐火処理具11の内周面との間を充填材31によって好適に閉塞することができる。
【0038】
○ 実施形態では、充填材21を耐火パテで形成したが、火炎や熱が充填材21に及ぶ前に間隙Kaからの煙の漏れを防止することができるのであれば、充填材21はパテ状のものではない難燃性材料や不燃性材料あってもよい。また、別の実施形態では充填材31を発泡性材料(スポンジ)で形成したが、火炎や熱が充填材31に及ぶ前に間隙Kaからの煙の漏れを防止することができるのであれば、発泡性材料の代わりに布等を使用してもよい。
【0039】
図8に示すように、防火区画体として、一対の壁材70の間に中空部71が区画された中空状の中空壁72において、いずれか一方の壁材70に貫通孔70aを形成し、その貫通孔70a内に耐火処理具11を装着して耐火構造を形成してもよい。又は、両壁材70に貫通孔70aを形成し、両貫通孔70aに耐火処理具11を装着して耐火構造を形成してもよい。
【0040】
○ 防火区画体として、一対の壁材の間に中空部が区画された中空状の中空壁に貫通孔を形成し、その貫通孔内にスリーブを配設するとともに、スリーブによって貫通部を形成してもよい。そして、スリーブ内に耐火処理具11及び充填材21を装着して耐火構造を形成してもよい。
【0041】
○ 実施形態の防火区画壁Wにおいて、貫通孔Waにスリーブを配設するとともに、そのスリーブによって貫通部を形成してもよい。そして、スリーブ内に耐火処理具11及び充填材21,31を設けてもよい。
【0042】
○ 中実状をなす防火区画体として、コンクリート壁以外の土壁等に耐火構造を形成する場合、本発明の耐火構造を用いてもよい。
○ 実施形態において、貫通孔Waの両開口側に耐火処理具11を装着してもよい。
【0043】
○ 実施形態では、貫通孔Waを円孔状としたが四角孔状や六角孔状の多角孔状に形成してもよく、楕円孔状であってもよい。
○ 防火区画体としての床を厚み方向に貫通する貫通孔内に耐火処理具11及び充填材21,31を設け、床に耐火構造を設けてもよい。
【0044】
○ 実施形態では、耐火具本体12を熱膨張性ゴムより形成するとともに、耐火具本体12の外径を貫通孔Waの直径より僅かに大きくしたが、耐火具本体12の外径は貫通孔Waの直径より僅かに小さく形成されていてもよい。この場合、耐火具本体12は、フランジ部13を貫通したビスやボルト等で防火区画壁Wに固定されていてもよいし、フランジ部13に接合した粘着テープを防火区画壁Wに接合して防火区画壁Wに固定されていてもよい。
【0045】
○ 配線・配管材として、配線や、電線管P以外の管材であってもよく、配線及び配管材の両方でもよい。さらに、配線・配管材として、配線や配管材を複数本纏めたものであってもよい。
【符号の説明】
【0046】
P…配管材としての電線管、W…防火区画体としての防火区画壁、Wa…貫通部としての貫通孔、11…耐火処理具、12…耐火具本体、21,31…充填材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8