特許第5937907号(P5937907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5937907
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】固定窓ユニット
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/34 20060101AFI20160609BHJP
   F21S 8/10 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   B60Q1/34 B
   F21S8/10 310
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-158422(P2012-158422)
(22)【出願日】2012年7月17日
(65)【公開番号】特開2014-19250(P2014-19250A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】308013436
【氏名又は名称】小島プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川村 仁之
【審査官】 當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/138931(WO,A1)
【文献】 特開2000−301985(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/067405(WO,A1)
【文献】 特開2001−256810(JP,A)
【文献】 特開2004−210138(JP,A)
【文献】 特開2008−230271(JP,A)
【文献】 特表2014−534117(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/34
F21S 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の側部であって、サイドウィンドウよりも前側位置において、車両ボディーフロント側またはフロントドア側に略三角状の窓ガラスを固定設置した固定窓ユニットであって、
透明樹脂からなり、その外側表面にフィン状突起が形成された窓ガラスと、
前記フィン状突起を車室内側から照射する光源であって、前記自動車の方向指示に連動して点灯または点滅する光源と、
を備え、前記フィン状突起は、前記光源の光を外部に導くレンズとして機能するとともに、車両の走行を安定させる渦を発生させる渦発生装置として機能する、
ことを特徴とする固定窓ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の固定窓ユニットであって、
前記フィン状突起は、略流線形であって、走行方向後部に、前記渦が発生する空間を形成するカット部が設定されている、ことを特徴とする固定窓ユニット。
【請求項3】
請求項1または2に記載の固定窓ユニットであって、
前記フィン状突起は、前記窓ガラスの外側表面から車両外部に突出する中実の突起である、ことを特徴とする固定窓ユニット。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の固定窓ユニットであって、
前記フィン状突起の表面には、凹凸が設けられている、ことを特徴とする固定窓ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の側部において、車両ボディーフロント側またはフロントドア側に窓ガラスを固定設置した固定窓ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の中には、自動車の側部に、窓ガラスが昇降自在に設置されたサイドウィンドウの他に、さらに、車両ボディーフロント側またはフロントドア側に窓ガラスを固定設置した固定窓を備えたものがある。こうした固定窓は、単に、車外の状況を確認するための窓としてのみ機能することが多かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−157658号公報
【特許文献2】特開2003−63304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自動車は、自動車の操舵安定性向上のために車体の形状を空力構造にしたり(特許文献1参照)、ドアミラー部に方向指示器を設けたり(特許文献2参照)しており、各車両部位には様々な部品が多数存在している。こうした部品は、自動車の軽量化や、部品の組み付け作業性向上のために、極力、削減されることが求められている。しかし、上述したような、窓としてのみ機能する固定窓では、部品点数の低減に何ら寄与できなかった。なぜなら、側面に使用される窓ガラスは、無機材料で曲げなど形状に対する自由度が少なく、上記機能を持たせることが難しかったからである。
【0005】
そこで、本発明では、部品点数を低減でき得る固定窓ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の固定窓ユニットは、自動車の側部であって、サイドウィンドウよりも前側位置において、車両ボディーフロント側またはフロントドア側に略三角状の窓ガラスを固定設置した固定窓ユニットであって、透明樹脂からなり、その外側表面にフィン状突起が形成された窓ガラスと、前記フィン状突起を車室内側から照射する光源であって、前記自動車の方向指示に連動して点灯または点滅する光源と、を備え、前記フィン状突起は、前記光源の光を外部に導くレンズとして機能するとともに、車両の走行を安定させる渦を発生させる渦発生装置として機能することを特徴とする。好適な態様では、前記フィン状突起は、略流線形であって、走行方向後部に、前記渦が発生する空間を形成するカット部が設定されている。他の好適な態様では、前記フィン状突起は、前記窓ガラスの外側表面から車両外部に突出する中実の突起である。また、前記フィン状突起は、その表面に、光源の光を拡散する微小凹凸が形成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、窓ガラスが透明樹脂のため、方向指示用レンズおよび渦発生装置として機能するフィン状突起を形成でき、部品点数を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態である固定窓ユニットが搭載された自動車の概略斜視図である。
図2】固定窓ユニットで用いられる窓ガラスの正面図である。
図3図2におけるA−A断面図である。
図4図2におけるB−B断面図である。
図5】フィン状突起の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態である固定窓ユニット10が搭載された自動車100の概略斜視図である。また、図2は、固定窓ユニット10に用いられる窓ガラス12の正面図である。なお、以下では、材料の一種としてのガラスは「ガラス素材」と呼び、窓枠14に嵌めこまれる透明部材は、その材料に関わらず(無機材料以外の材料から形成されていても)、全て「窓ガラス」と呼ぶ。
【0010】
固定窓ユニット10は、自動車100の側部(車両ボディーフロント側またはフロントドア側)に設けられた嵌め殺し式の窓ユニットである。周知の通り、自動車100の側部には、窓ガラス12が昇降可能に設置されたサイドウィンドウ102が設けられているが、固定窓ユニット10は、このサイドウィンドウ102よりも前方側に設置される。なお、図1では、この固定窓ユニット10を、自動車100の開閉ドア104に設けているが、固定窓ユニット10は、開閉ドア104よりも前方に位置する車体そのものに設置されてもよい。
【0011】
図1に示す通り、固定窓ユニット10は、下方に近づくほど幅広になる略三角形状であり、窓枠14や、当該窓枠14に嵌め殺しになるように固定設置される窓ガラス12、方向指示に連動して点灯または点滅する光源30などを備えている。固定窓ユニット10の窓枠14は、自動車100の側部に形成された略三角形の開口に設置される。窓枠14のフレームは、自動車100のピラーやサイドボディドアなどの一部から構成され、当該フレームと窓ガラス12との間には、両者間をシールするために、エラストマー等からなるモール16(図4参照)が設置される。
【0012】
窓ガラス12は、図2に示す通り、下側に近づくほど幅広となる略三角形状の透明部材である。この窓ガラス12は、透明樹脂、例えばポリカーボネート(屈折率1.585)などからなる。こうした透明樹脂製の窓ガラス12は、ガラス素材製の窓ガラスに比して、大幅に軽量化できる。また、透明樹脂は、優れた成型性を有しており、射出圧縮などの成型技術を用いることにより、窓ガラスとして要求される品質、例えば、透過に対するひずみが少なく、安定した形状で製品を多量かつ簡易に製造することができる。
【0013】
窓ガラス12は、枠部20と窓部22に大別される。窓部22は、光を単純に透過させる通常の窓として機能する部位である。窓部22は、窓ガラス12の中央に設けられ、窓ガラス12の大部分を占める。枠部20は、窓ガラス12の周縁に設けられる部位で、窓枠14に当該窓ガラス12を取り付ける際の「取り付け代」として機能する。この枠部20は、フィン状突起24が形成されている。こうした枠部20は、スクリーン印刷などにより、黒色の彩色が施される。ただし、フィン状突起24部分には、スクリーン印刷は施されず、透光性が維持される。
【0014】
次に、フィン状突起24について、図2図4を参照して説明する。図3は、図2のA−A断面図であり、図4図2のB−B断面図である。フィン状突起24は、窓ガラス12の車外側の表面から突出する突起である。このフィン状突起24は、窓ガラス12を射出圧縮で成型する際に、一緒に成型される。フィン状突起24の数や位置は、特に限定されないが、本実施形態では、図2に示す通り、三つのフィン状突起24を、窓ガラス12のうち、自動車100の進行方向(図2の左右方向)後ろ側の縁辺に沿って上下に並ぶように配設している。
【0015】
三つのフィン状突起24は、その進行方向長さなどが微妙に異なるが、基本的には、進行方向に長尺な、略半円盤形状(ただし、後部は渦発生させるため略カットされている)である。より具体的に説明すると、フィン状突起24は、図2図3に示す通り、進行方向前側に近づくほど、また、窓ガラス12の表面から離れるほど、肉薄になるような形状となっている。また、フィン状突起24は、図4に示す通り、その突出高さが、進行方向前端から中央にかけては穏やかに増加し、中央から進行方向後端部にかけては比較的急峻に減少する流線形状となっている。別の言い方をすれば、フィン状突起24は、略半円のうち、走行方向後部が非流線形にカットされる。このカットにより、フィン状突起24の後端24a(カット部)の直後方には、渦が発生する空間であるカット部Sが形成される。
【0016】
かかる構成のフィン状突起24は、渦発生装置(ボルテックスジェネレータ)として機能する。渦発生装置は、エアロスタビライジングフィンなどとも呼ばれるもので、翼面に乱流を生み出し、翼面を常時乱流境界層に保つことで、車体の操舵性安定を向上させるフィン状の突起物である。かかる渦発生装置を設けて、車両の周囲の気流に、あえて、小さな渦を発生させると、走行中、車体の走行が安定するため、優れた操舵安定性が得られる。
【0017】
従来、こうした、渦発生装置は、特許文献1などに開示されているように、窓部材とは全く別の別部材として構成されていた。しかし、かかる別部材としての渦発生装置は、部品点数の増加、ひいては、コストアップになったり、部品組み付け作業に時間がかかったりした。そこで、本実施形態では、固定窓の窓ガラス12に、当該渦発生装置として機能するフィン状突起24を形成している。これにより、別途、渦発生装置を設ける必要が無くなり、部品点数を低減できる。なお、上述したフィン状突起24の形状は、一例であり、渦発生装置として機能できるのであれば、搭載される自動車100の種類等に応じて、適宜、他の形状に変更されてもよい。
【0018】
ここで、フィン状突起24は、その求められる機能上、流線形状であることが多い。従来、多用されていたガラス素材からなる窓ガラス12の場合、こうした流線型の突起物を形成するのは容易ではなかった。一方、本実施形態のように、窓ガラス12を透明樹脂で構成する場合、所望の形状の型で射出成型(射出圧縮成型等)すれば、流線型の突起を含む窓ガラス12であっても、容易に大量生産できる。
【0019】
また、本実施形態のフィン状突起24は、方向指示用レンズとしても機能する。すなわち、本実施形態の窓ガラス12ユニットは、図3図4に示すように、方向指示用光源30を有している。この方向指示用光源30は、フィン状突起24を車室内側から照射する光源(例えばLEDなど)で、ハンドル近傍に設けられた方向指示操作器(ターンシグナルスイッチ)を介してドライバーから指示された方向指示に連動して点滅点灯する。フィン状突起24は、この方向指示用光源30の光を外部に導く方向指示用レンズとして機能する。方向指示用光源30からの光は、窓ガラス12に入射した後、その内部で反射した後、または、反射することなく直接、フィン状突起24の先端から外部に出射していく。このフィン状突起24から出射する光が、自動車100の進路変更方向を示す方向指示表示としてなる。
【0020】
なお、こうした方向指示の設置位置は、法規等により定められている。例えば、日本の普通自動車の場合、側面方向指示表示器は、自動車100の前端2m以内に設置されること、規定の位置から見通せることが要求されている。ここで、規定の位置とは、自動車100の後端を含む鉛直面上で自動車100の最外側から外側方1mの距離に相当する点における地上1mから25mの全ての位置である。フィン状突起24は、こうした、側面方向指示表示器に関して法規で定められた基準を満たす位置であれば、上述した位置とは別の位置に設けられてもよい。
【0021】
いずれにしても、フィン状突起24を、方向指示用レンズとして用いることで、別途、方向指示用レンズや、当該レンズの組み付け構造物を設ける必要がない。その結果、部品点数をより低減でき、部品組み付け作業向上やコストをより低減できる。また、フィン状突起24は、窓ガラス12の表面(車の側面)から突出しており、また、その前後には当該フィン状突起24を隠す部材が存在しない。そのため、ドアミラーに設けた従来の方向指示器に比べて、車両の側方や後方からの視認性をより向上できる。すなわち、従来、ドアミラーに設けられた方向指示器は、ドアミラーの前面に設けられることが多かった。かかる方向指示器の場合、車両の前方からは見やすいが、車両の側方や後方からは、方向指示器がドアミラーそのものに遮られてしまい、見えづらいことが多かった。特に、車両の後方からは、ドアミラーに設けられた方向指示器が殆ど見えなかった。一方、本実施形態のフィン状突起24(方向指示器)は、ドアミラーに設けられた方向指示器に比して、他部材で遮られることが少ないため、車両の前方だけでなく、側方や後方からも見やすくなる。
【0022】
なお、本実施形態では、フィン状突起24の表面を凹凸のない滑面としている。しかし、必要に応じて、図5に示すように、フィン状突起24の表面に微小凹凸面を設け、梨地やシボ地のようにしてもよい。このようにフィン状突起24の表面に微小凹凸を設けると、入射してきた光がフィン状突起24の内部で、複雑に反射するため、側面方向指示表示器の照明を明るくできる。
【0023】
以上の説明から明らかな通り、本実施形態によれば、固定窓の窓ガラス12に、渦発生装置および方向指示用レンズとして機能するフィン状突起24を、当該窓ガラス12と一体成型している。その結果、渦発生装置および方向指示用レンズや、渦発生装置および方向指示用レンズの組み付け用部品を、別部品として用意する必要が無く、部品点数を低減できる。なお、上述した実施形態では、フィン状突起は車両に対して上下縦に複数配列しているが、横に配列、縦横組み合わせて配列されてもよく、フィン方向は、水平であるが、ボディー形状により角度が変わってもよい。また、従来、窓ガラスが設置されていなかった箇所に、上述したような透明樹脂からなる窓ガラスを配置してもよい。例えば、車両には、フロントサイドウィンドウの窓ガラスの前下端部を固定する樹脂カバー、いわゆる、三角ガーニッシュと呼ばれる部材が設けられている。この三角ガーニッシュは、通常、黒色(つまり不透明)の樹脂で形成されていたが、かかる三角ガーニッシュを透明樹脂からなり、フィン状突起を備えた窓ガラスで構成してもよい。換言すれば、従来、三角ガーニッシュが設置されていた箇所に、三角ガーニッシュとしても機能する窓ガラスを備えた固定窓ユニットを設置してもよい。このように三角ガーニッシュのように従来、不透明であった部材に代えて、透明樹脂からなる窓ガラスを設置すれば、従来、不透明部材で遮られて運転者からは見えづらかった箇所も、視認できるようになり、運転手の視界をより広げることができる。
【符号の説明】
【0024】
10 固定窓ユニット、12 窓ガラス、14 窓枠、16 モール、20 枠部、22 窓部、24 フィン状突起、30 光源、100 自動車。
図1
図2
図3
図4
図5