(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5937911
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】音響特性設定支援システム及び音響特性設定装置
(51)【国際特許分類】
G10K 15/00 20060101AFI20160609BHJP
H04R 3/04 20060101ALI20160609BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
G10K15/00 M
H04R3/04
B60R11/02 B
【請求項の数】17
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-166894(P2012-166894)
(22)【出願日】2012年7月27日
(65)【公開番号】特開2014-26146(P2014-26146A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(72)【発明者】
【氏名】赤津 宏幸
【審査官】
千本 潤介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−288260(JP,A)
【文献】
特開2008−035388(JP,A)
【文献】
特開2010−093403(JP,A)
【文献】
特開平10−307592(JP,A)
【文献】
実開平04−061995(JP,U)
【文献】
特開2004−252279(JP,A)
【文献】
特開平03−171900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 15/00
B60R 11/02
H04R 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーディオ装置の音響特性を定めるパラメータの設定を支援する音響特性設定支援システムであって、
複数の音響特性項目についてのパラメータのセットであるパラメータデータと、当該パラメータデータのパラメータのセットの有効性が確認された音響環境を、複数の音響環境項目の値のセットによって表す音響環境データとを含む共用データを、複数登録したサーバと、
前記サーバにアクセス可能な音響特性設定装置とを有し、
前記音響特性設定装置は、
前記サーバから、前記共用データを取得する共用データ取得部と、
前記各音響環境項目についての、前記共用データ取得部が取得した共用データに含まれる前記音響環境データが表す値と、前記オーディオ装置の音響環境における値との一致の有無のパターンである音響環境一致パターンに基づいて定まる音響特性項目についてのパラメータを、前記取得した共用データに含まれるパラメータデータに含まれる各パラメータのうちから適用パラメータとして選定する適用パラメータ選定部と、
前記適用パラメータ選定部が、適用パラメータとして選定したパラメータを、前記オーディオ装置に、当該オーディオ装置の当該選定したパラメータに対応する音響特性項目のパラメータとして設定するパラメータ設定部とを有することを特徴とする音響特性設定支援システム。
【請求項2】
請求項1記載の音響特性設定支援システムであって、
前記音響特性設定装置の前記適用パラメータ選定部は、各音響環境項目の値の一致の有無の各パターンと適用音響特性項目とする音響特性項目との予め定めた対応に従って、前記音響環境一致パターンより適用音響特性項目とする音響特性項目を求め、当該適用音響特性項目として求まった各音響特性項目についてのパラメータを、前記取得した共用データに含まれるパラメータデータに含まれる各パラメータのうちから適用パラメータとして選定することを特徴とする音響特性設定支援システム。
【請求項3】
請求項1記載の音響特性設定支援システムであって、
前記音響特性設定装置の前記適用パラメータ選定部は、値が一致しない音響環境項目と、不適用音響特性項目とする音響特性項目との予め定めた対応に従って、前記音響環境一致パターンより不適用音響特性項目とする音響特性項目を求め、当該不適用音響特性項目として求まらなかった各音響特性項目についてのパラメータを、前記取得した共用データに含まれるパラメータデータに含まれる各パラメータのうちから前記適用パラメータとして選定することを特徴とする音響特性設定支援システム。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の音響特性設定支援システムであって、
前記音響特性設定装置の前記適用パラメータ選定部によって前記適用パラメータとして選定されるパラメータは、前記オーディオ装置の音響環境下において、前記取得した共用データに含まれる前記音響環境データが表す音響環境下と、前記オーディオ装置の音質に対して同様の効果を奏すると推定される音響特性項目のパラメータであることを特徴とする音響特性設定支援システム。
【請求項5】
請求項1、2、3または4記載の音響特性設定支援システムであって、
前記音響環境項目は、前記オーディオ装置のスピーカーシステムの構成を表す項目を含むことを特徴とする音響特性設定支援システム。
【請求項6】
請求項1、2、3、4または5記載の音響特性設定支援システムであって、
前記オーディオ装置は自動車に搭載されるオーディオ装置であって、
前記音響環境項目は、前記オーディオ装置が搭載された前記自動車の車種を表す項目を含むことを特徴とする音響特性設定支援システム。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5または6記載の音響特性設定支援システムであって、
前記オーディオ装置は自動車に搭載されるオーディオ装置であって、
前記音響環境項目は、前記オーディオ装置が搭載された前記自動車内のリスニングポジションを表す項目を含むことを特徴とする音響特性設定支援システム。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5、6または7記載の音響特性設定支援システムであって、
前記音響特性項目は、前記オーディオ装置のゲインの周波数特性を表す項目と、前記オーディオ装置の各スピーカーへの出力音の間の遅延特性を表す項目と、前記オーディオ装置の各スピーカーへの出力音の周波数帯域を表す項目とのうちのいずれかを含むことを特徴とする音響特性設定支援システム。
【請求項9】
請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載の音響特性設定支援システムであって、
前記サーバは、前記音響特性設定装置からの検索条件を指定した検索要求に応答して、指定された検索条件にマッチする共用データを検索して前記音響特性設定装置に提供する検索機能を備え、
前記音響特性設定装置の共用データ取得部は、前記検索条件を指定した検索要求を前記サーバに発行することにより前記サーバから前記共用データを取得することを特徴とする音響特性設定支援システム。
【請求項10】
オーディオ装置の音響特性を定めるパラメータの設定を支援する音響特性設定装置であって、
複数の音響特性項目についてのパラメータのセットであるパラメータデータと、当該パラメータデータのパラメータのセットの有効性が確認された音響環境を、複数の音響環境項目の値のセットによって表す音響環境データとを含む共用データを複数登録したサーバにアクセスし、当該サーバから前記共用データを取得する共用データ取得部と、
前記各音響環境項目についての、前記共用データ取得部が取得した共用データに含まれる前記音響環境データが表す値と、前記オーディオ装置の音響環境における値との一致の有無のパターンである音響環境一致パターンに基づいて定まる音響特性項目についてのパラメータを、前記取得した共用データに含まれるパラメータデータに含まれる各パラメータのうちから適用パラメータとして選定する適用パラメータ選定部と、
前記適用パラメータ選定部が、適用パラメータとして選定したパラメータを、前記オーディオ装置に、当該オーディオ装置の当該選定したパラメータに対応する音響特性項目のパラメータとして設定するパラメータ設定部とを有することを特徴とする音響特性設定装置。
【請求項11】
請求項10記載の音響特性設定装置であって、
前記適用パラメータ選定部は、各音響環境項目の値の一致の有無の各パターンと適用音響特性項目とする音響特性項目との予め定めた対応に従って、前記音響環境一致パターンより適用音響特性項目とする音響特性項目を求め、当該適用音響特性項目として求まった各音響特性項目についてのパラメータを、前記取得した共用データに含まれるパラメータデータに含まれる各パラメータのうちから適用パラメータとして選定することを特徴とする音響特性設定装置。
【請求項12】
請求項10記載の音響特性設定装置であって、
前記適用パラメータ選定部は、値が一致しない音響環境項目と、不適用音響特性項目とする音響特性項目との予め定めた対応に従って、前記音響環境一致パターンより不適用音響特性項目とする音響特性項目を求め、当該不適用音響特性項目として求まらなかった各音響特性項目についてのパラメータを、前記取得した共用データに含まれるパラメータデータに含まれる各パラメータのうちから前記適用パラメータとして選定することを特徴とする音響特性設定装置。
【請求項13】
請求項10、11または12記載の音響特性設定装置であって、
前記適用パラメータ選定部によって前記適用パラメータとして選定されるパラメータは、前記オーディオ装置の音響環境下において、前記取得した共用データに含まれる前記音響環境データが表す音響環境下と、前記オーディオ装置の音質に対して同様の効果を奏すると推定される音響特性項目のパラメータであることを特徴とする音響特性設定装置。
【請求項14】
コンピュータによって読み取られ実行される、オーディオ装置の音響特性を定めるパラメータの設定を支援するためのコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータに、複数の音響特性項目についてのパラメータのセットであるパラメータデータと、当該パラメータデータのパラメータのセットの有効性が確認された音響環境を、複数の音響環境項目の値のセットによって表す音響環境データとを含む共用データを複数登録したサーバにアクセスし、当該サーバから前記共用データを取得する共用データ取得ステップと、
前記各音響環境項目についての、前記共用データ取得ステップで取得した共用データに含まれる前記音響環境データが表す値と、前記オーディオ装置の音響環境における値との一致の有無のパターンである音響環境一致パターンに基づいて定まる音響特性項目についてのパラメータを、前記取得した共用データに含まれるパラメータデータに含まれる各パラメータのうちから適用パラメータとして選定する適用パラメータ選定ステップと、
前記適用パラメータ選定ステップで、適用パラメータとして選定したパラメータを、前記オーディオ装置に、当該オーディオ装置の当該選定したパラメータに対応する音響特性項目のパラメータとして設定するパラメータ設定ステップとを実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項15】
請求項14記載のコンピュータプログラムであって、
前記適用パラメータ選定ステップにおいて、各音響環境項目の値の一致の有無の各パターンと適用音響特性項目とする音響特性項目との予め定めた対応に従って、前記音響環境一致パターンより適用音響特性項目とする音響特性項目を求め、当該適用音響特性項目として求まった各音響特性項目についてのパラメータを、前記取得した共用データに含まれるパラメータデータに含まれる各パラメータのうちから適用パラメータとして選定することを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項16】
請求項14記載のコンピュータプログラムであって、
前記適用パラメータ選定ステップにおいて、値が一致しない音響環境項目と、不適用音響特性項目とする音響特性項目との予め定めた対応に従って、前記音響環境一致パターンより不適用音響特性項目とする音響特性項目を求め、当該不適用音響特性項目として求まらなかった各音響特性項目についてのパラメータを、前記取得した共用データに含まれるパラメータデータに含まれる各パラメータのうちから前記適用パラメータとして選定することを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項17】
請求項14、15または16記載のコンピュータプログラムであって、
前記適用パラメータ選定ステップにおいて前記適用パラメータとして選定されるパラメータは、前記オーディオ装置の音響環境下において、前記取得した共用データに含まれる前記音響環境データが表す音響環境下と、前記オーディオ装置の音質に対して同様の効果を奏すると推定される音響特性項目のパラメータであることをコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーディオ装置の音響特性を設定する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オーディオ装置のゲインの周波数特性を定めるイコライザパラメータや、各スピーカーへの出力音間の遅延を定めるTCR(タイムコレクション)パラメータや、個々のスピーカーへの出力音の周波数帯域を定めるクロスオーバーパラメータなどのオーディオ装置の音響特性パラメータを設定する技術としては、サーバに蓄積されている音響特性パラメータをダウンロードしてオーディオ装置に設定する技術が知られている(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-130643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したサーバから音響特性パラメータをダウンロードしてオーディオ装置に設定する技術を用いて、蓄積した様々な音響特性パラメータをサーバが公開し、各オーディオ装置のユーザが、それぞれ所望の音響特性パラメータをサーバからダウンロードしてオーディオ装置に設定できるようにすることが考えられる。
しかしながら、オーディオ装置に適した音響特性は、当該オーディオ装置のスピーカー構成や当該オーディオ装置が適用される音響空間などの音響環境によって異なるものとなる。そして、このために、サーバに蓄積された各音響特性パラメータは、各々特定の音響環境化にあるオーディオ装置にしか適用できず、その可用性は低い。
すなわち、オーディオ装置に、当該オーディオ装置と異なる音響環境に適するものとして作成された音響特性パラメータをそのまま適用すると、当該オーディオ装置の出力音は、必ずしも良質な音質とはならないのみならず、かえって、劣悪な音質となる場合もある。
そこで、オーディオ装置に、当該オーディオ装置と完全に一致する音響環境に適するものとして作成された音響特性パラメータのみが適用されるようにする必要があるが、このようにすると、サーバに様々な音響特性パラメータが蓄積されていても、個々のオーディオ装置で利用できる音響特性パラメータは限定されてしまうこととなる。
【0005】
そこで、本発明は、サーバに蓄積された音響特性パラメータをダウンロードしてオーディオ装置に設定するシステムにおいて、各音響特性パラメータの可用性を向上することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題達成のために、本発明は、オーディオ装置の音響特性を定めるパラメータの設定を支援する音響特性設定支援システムとして、複数の音響特性項目についてのパラメータのセットであるパラメータデータと、当該パラメータデータのパラメータのセットの有効性が確認された音響環境を、複数の音響環境項目の値のセットによって表す音響環境データとを含む共用データを、複数登録したサーバと、前記サーバにアクセス可能な音響特性設定装置とを備えた音響特性設定支援システムを提供する。ここで、前記音響特性設定装置は、前記サーバから、共用データを取得する共用データ取得部と、前記各音響環境項目についての、前記共用データ取得手段が取得した共用データに含まれる前記音響環境データが表す値と、前記オーディオ装置の音響環境における値との一致の有無のパターンである音響環境一致パターンに基づいて定まる音響特性項目についてのパラメータを、前記取得した共用データに含まれるパラメータデータに含まれる各パラメータのうちから適用パラメータとして選定する適用パラメータ選定部と、前記適用パラメータ選定部が、適用パラメータとして選定したパラメータを、前記オーディオ装置に、当該オーディオ装置の当該選定したパラメータに対応する音響特性項目のパラメータとして設定するパラメータ設定部とを備えたものである。
【0007】
ここで、このような音響特性設定支援システムは、前記音響特性設定装置の前記適用パラメータ選定部において、各音響環境項目の値の一致の有無の各パターンと適用音響特性項目とする音響特性項目との予め定めた対応に従って、前記音響環境一致パターンより適用音響特性項目とする音響特性項目を求め、当該適用音響特性項目として求まった各音響特性項目についてのパラメータを、前記取得した共用データに含まれるパラメータデータに含まれる各パラメータのうちから適用パラメータとして選定するように構成してもよい。
【0008】
また、このような音響特性設定支援システムは、前記音響特性設定装置の前記適用パラメータ選定部において、値が一致しない音響環境項目と、不適用音響特性項目とする音響特性項目との予め定めた対応に従って、前記音響環境一致パターンより不適用音響特性項目とする音響特性項目を求め、当該不適用音響特性項目として求まらなかった各音響特性項目についてのパラメータを、前記取得した共用データに含まれるパラメータデータに含まれる各パラメータのうちから前記適用パラメータとして選定するように構成してもよい。
【0009】
また、これらの音響特性設定支援システムにおいて、前記音響特性設定装置の前記適用パラメータ選定部によって前記適用パラメータとして選定されるパラメータは、前記オーディオ装置の音響環境下において、前記取得した共用データに含まれる前記音響環境データが表す音響環境下と、前記オーディオ装置の音質に対して同様の効果を奏すると推定される音響特性項目のパラメータとすることが好ましい。
【0010】
ここで、以上の音響特性設定支援システムにおいて、前記音響環境項目は、前記オーディオ装置のスピーカーシステムの構成を表す項目を含めることは好ましい。また、オーディオ装置が自動車に搭載されるオーディオ装置である場合には、前記音響環境項目は、前記オーディオ装置が搭載された前記自動車の車種を表す項目や、前記オーディオ装置が搭載された前記自動車内のリスニングポジションを表す項目を含むようにすることも好ましい。
【0011】
また、以上の音響特性設定支援システムであって、前記音響特性項目としては、前記オーディオ装置のゲインの周波数特性を表す項目や、前記オーディオ装置の各スピーカーへの出力音の間の遅延特性を表す項目や、前記オーディオ装置の各スピーカーへの出力音の周波数帯域を表す項目などを用いることができる。
また、以上の音響特性設定支援システムは、前記サーバに、前記音響特性設定装置からの検索条件を指定した検索要求に応答して、指定された検索条件にマッチする共用データを検索して前記音響特性設定装置に提供する検索機能を備え、前記音響特性設定装置の共用データ取得部において、前記検索条件を指定した検索要求を前記サーバに発行することにより前記サーバから前記共用データを取得するように構成してもよい。
【0012】
このような音響特性設定支援システムによれば、各音響環境項目についての、共用データに含まれる前記音響環境データが表す値と、前記オーディオ装置の音響環境における値の一致の有無のパターンに応じて、共用データに含まれるパラメータデータが表す複数のパラメータのうちからパラメータを選定し、選定したパラメータのみをオーディオ装置に設定する。ここで、オーディオ装置の音響環境での利用に、共用データのパラメータデータのパラメータを適用しても有効な音響特性項目は、各音響環境項目についての、共用データに含まれる前記音響環境データが表す値と、前記オーディオ装置の音響環境における値との一致の有無のパターンより特定することができる。したがって、このような音響特性設定支援システムによれば、サーバに蓄積した共用データに含まれるパラメータデータが表す複数のパラメータのうちからオーディオ装置の音響環境での利用に有効なパラメータのみを選定し、選定したパラメータのみをオーディオ装置に設定することが可能となる。
【0013】
よって、本発明によれば、オーディオ装置の音響環境と完全には一致しない音響環境において有効なパラメータデータを含む共用データも、そのパラメータデータに含まれるパラメータの一部のみをオーディオ装置の音質の向上のために用いることができるようになり、結果、サーバに登録された各共用データの可用性を向上することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、サーバに蓄積された音響特性パラメータをダウンロードしてオーディオ装置に設定するシステムにおいて、各音響特性パラメータの可用性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係るイコライザ設定支援システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る自音響環境データと、チューニングデータDBの内容を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る登録画面を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るパラメータ設定処理を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の実施形態に係る検索画面と設定画面を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るフィルタリングの内容を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1に、本実施形態に係るオーディオ音響特性設定支援システムの構成を示す。
図示するように、オーディオ音響特性設定支援システムは、自動車に搭載されたオーディオ装置1と、オーディオ装置1と接続可能なスマートフォン2と、スマートフォン2がWAN4を介してアクセス可能なチューニング支援センタシステム3とより構成される。ここで、WAN4は、移動体通信網と、移動体通信網が接続したインターネットなどのネットワークとを含んで構成される。
【0017】
そして、オーディオ装置1は、たとえば、自動車に搭載される装置であり、図示するように、入力装置101、複数のスピーカー102、各スピーカー102に対応して設けられた音声出力装置103、表示装置104、デバイスインタフェース105、制御部106、メディアプレイヤ107、ラジオ放送の受信を行うラジオ受信機108、CDやDVDなどの記録ディスクの再生を行うディスクドライブ109、記憶装置110とを備えている。
【0018】
次に、スマートフォン2は、ユーザによって携帯されるモバイル装置であり、図示するように、記憶部201、操作部202、ディスプレイ203、マイクやスピーカー102などを備えた音声入出力部204、ホストインタフェース205、移動体通信網にアクセスするための移動通信装置206、オペレーティングシステム207を備えている。また、スマートフォン2は、オペレーティングシステム207によって管理されオペレーティングシステム207上で稼働するアプリケーションとして、移動電話アプリケーション208や、オーディオ設定アプリケーション209などの複数のアプリケーションを備えている。
【0019】
ここで、移動電話アプリケーション208は、移動通信装置206や音声入出力部204や操作部202を用いた移動電話機能を提供するアプリケーションであり、オーディオ設定アプリケーション209は、オーディオ装置1の制御部106に、オーディオ装置1の各音響特性を決定するチューニングパラメータを設定するパラメータ設定処理等を行う。
【0020】
また、スマートフォン2のホストインタフェース205と、車載装置のデバイスインタフェース105とは、Bluetooth(登録商標)や、WIFIなどの無線通信インタフェースによって無線接続して相互通信を行う。
さて、このような構成において、オーディオ装置1のメディアプレイヤ107は、ラジオ受信機108がラジオ放送から受信した音声の音声出力装置103を介したスピーカー102への出力や、ディスクドライブ109に装着された記録ディスクや記憶装置110に記録されているオーディオコンテンツの再生と音声出力装置103を介したスピーカー102への出力を行う。また、メディアプレイヤ107は、イコライザを内蔵しており、制御部106から設定されたイコライザパラメータに従ったゲインの周波数特性で、ラジオ放送から受信した各チャネルの音声や、記憶ディスクや記憶装置110に記録されているオーディオコンテンツの各チャネルの音声の周波数特性を変更した上で、当該チャネルの音声を出力するスピーカー102に対応する音声出力装置103に出力する。
【0021】
また、オーディオ装置1の各音声出力装置103は、メディアプレイヤ107から出力された音声に、制御部106から設定されたTCRパラメータに従った遅延時間分遅延させる遅延処理や、制御部106から設定されたクロスオーバーパラメータに従った周波数帯域を抽出するフィルタリング処理を施すと共に、制御部106から指定された増幅率で増幅して対応するスピーカー102に出力する。
【0022】
ここで、オーディオ装置1の制御部106は、上述したイコライザパラメータやTCRパラメータやクロスオーバーパラメータなどの複数の音響特性項目のパラメータを表す設定音響特性パラメータを記憶装置110に保持している、また、制御部106は、ユーザの設定音響特性パラメータの編集操作を入力装置101を介して受け付けて設定音響特性パラメータが表す各音響特性項目のパラメータを変更する処理や、スマートフォン2から設定されるチューニングパラメータに従って、設定音響特性パラメータが表す各音響特性項目のパラメータを変更する処理を行う。なお、設定音響特性パラメータの変更は、スマートフォン2のオーディオ設定アプリケーション209において、ユーザの音響特性パラメータの編集操作を操作部202を介して受け付けて音響特性パラメータを編集し、編集した音響特性パラメータをオーディオ装置1の制御部106に通知し、オーディオ装置1の制御部106において通知された音響特性パラメータに従って設定音響特性パラメータが表す各音響特性項目のパラメータを変更することによっても行うようにしてもよい。
【0023】
また、オーディオ装置1の制御部106は、このような設定音響特性パラメータが表す各音響特性項目のパラメータの変更が生じる度に、オーディオ装置1の音響特性を変更後の設定音響特性パラメータに従って変更する。すなわち、たとえば、設定音響特性パラメータが表すイコライザパラメータが変更されたならば、変更後のイコライザパラメータをメディアプレイヤ107に設定し、設定音響特性パラメータが表すTCRパラメータやクロスオーバーパラメータが変更されたならば、変更後のTCRパラメータやクロスオーバーパラメータを各音声出力装置103に設定する。
【0024】
次に、スマートフォン2の記憶部201には、
図2aに示す自音響環境データが登録されている。
図示するように、自音響環境データには、オーディオ装置1が搭載されている自動車の車名と形式を表す車種や、オーディオ装置1の音響特性を最適化するユーザの座席を表すリスニングポジションや、オーディオ装置1のスピーカー数やサブウーハーの有無やサブウーハーのサイズを示すスピーカーシステムなどの複数の音響環境項目についての情報が、オーディオ装置1の音響環境を表す情報として登録される。
【0025】
なお、このような設定対象音響環境データへの情報の登録は、オーディオ設定アプリケーション209が行う。すなわち、オーディオ設定アプリケーション209は、適当な自音響環境データ設定画面をディスプレイ203に表示し、自音響環境データ設定画面上でユーザから操作部202を介して設定対象音響環境データの各音響環境項目の情報の入力を受け付け、受け付けた内容を設定対象音響環境データに登録する。
【0026】
次に、チューニング支援センタシステム3は、WAN4に接続したチューニングデータ提供サーバ31と、チューニングデータのデータベースである、チューニングデータDB32を備えている。
そして、チューニングデータDB32には、
図2bに示すように、オーディオ装置1のユーザによって作成されチューニング支援センタシステム3にアップロードされた複数のチューニングデータが蓄積されている。そして、各チューニングデータは、登録日時、書誌、対象音響環境、チューニングパラメータ、評価が登録されている。
【0027】
ここで、各チューニングデータのチューニングパラメータには、オーディオ装置1のユーザがオーディオ装置1に設定し、オーディオ装置1の出力音より、その効果を確認したイコライザパラメータやTCRパラメータやクロスオーバーパラメータなどの各音響特性項目のパラメータが登録される。
また、登録日時には、チューニングデータがチューニングデータDB32に登録された月日が登録される。
【0028】
また、書誌は、作成者、タイトル、ジャンル、コメントよりなり、作成者はチューニングパラメータを作成したオーディオ装置1のユーザの名称が登録され、タイトルは作成者が設定したチューニングデータのタイトルが登録される。ただし、作成者は、タイトルとしては、チューニングパラメータが適する音楽の種類を簡便に表すものを用いる。また、ジャンルには、作成者により設定された、チューニングパラメータが適する音楽の種類(ロック、ポップス等)が登録され、コメントには、作成者により設定された、チューニングパラメータの詳細な説明が登録される。
次に、対象音響環境には、作成者がチューニングパラメータを設定して、その出力音より効果を確認したオーディオ装置1の音響環境が登録され、音響環境は、上述した車種、リスニングポジション、スピーカーシステム等の各音響環境項目の情報が登録される。
【0029】
そして、評価は、レートと評価数とダウンロード数とよりなり、レートにはチューニングデータの評価値の平均値が、評価数にはチューニングデータが評価された回数を表す評価数がダウンロード数にはチューニングデータがダウンロードされた回数が登録される。
さて、上述のように、このようなチューニングデータのチューニングデータDB32へのアップロードは、オーディオ装置1のユーザによって行われる。
以下、このチューニングデータのアップロードの動作について説明する。
オーディオ装置1のユーザは、現在のオーディオ装置1の設定音響特性パラメータを他のユーザと共有したいと考えた場合、スマートフォン2のオーディオ設定アプリケーション209にアップロード処理の開始を指示する。
アップロード処理の開始を指示されたスマートフォン2のオーディオ設定アプリケーション209は、
図3に示す登録画面をディスプレイ203に表示し、ユーザから作成者、タイトル、ジャンル、コメントなどの書誌の各項目の情報301と、車種、スピーカーシステム、リスニングポジションなどの当該ユーザのオーディオ装置1の音響環境を表す各音響環境項目の情報302の入力を受け付ける。
【0030】
ただし、各音響環境項目の情報は、記憶部201の自音響環境データに登録されている、対応する音響環境項目の情報を自動入力するようにしてよい。
そして、ユーザから登録画面に設けた登録ボタン303が操作されたならば、入力を受け付けた各情報と、現在のオーディオ装置1の設定音響特性パラメータとを含めた登録データを伴う登録要求を、チューニングデータ提供サーバ31に発行する。なお、現在のオーディオ装置1の設定音響特性パラメータは、制御部106を介してオーディオ装置1から取得するようする。ただし、当該現在のオーディオ装置1の設定音響特性パラメータが上述のようにオーディオ設定アプリケーション209において編集してオーディオ装置1に設定した音響特性パラメータである場合には、当該音響特性パラメータを、現在のオーディオ装置1の設定音響特性パラメータとして用いるようにしてもよい。
【0031】
一方、登録要求を受けたチューニングデータ提供サーバ31は、登録データの書誌の各項目の情報を、書誌の各項目の情報とし、登録データの各音響環境項目の情報を対象音響環境の各音響環境項目の情報とし、設定音響特性パラメータをチューニングパラメータとするチューニングデータを新規作成する。そして、作成したチューニングデータに登録日時として現在日時を、レートとして評価無を、評価数として0を、ダウンロード数として0を登録した上で、当該チューニングデータをチューニングデータDB32に登録する。
【0032】
次に、スマートフォン2のオーディオ設定アプリケーション209が、上述のようにオーディオ装置1の制御部106にチューニングパラメータを設定するために行うパラメータ設定処理について説明する。
図4に、このパラメータ設定処理の手順を示す。なお、パラメータ設定処理は、ユーザからパラメータ設定処理の開始を指示されたときに、オーディオ設定アプリケーション209が実行を開始する処理である。
さて、
図4に示すように、パラメータ設定処理において、スマートフォン2のオーディオ設定アプリケーション209は、まず、
図5aに示す検索画面をディスプレイ203に表示し(ステップ402)、検索画面上で各検索項目の検索キーの入力を受け付け(ステップ404)、各検索項目毎の検索キーの集合よりなる検索条件を設定する(ステップ410)。
【0033】
ここで、
図5aに示すように、ユーザは検索画面の検索条件入力領域501に設けられた、作成者、タイトル、ジャンル、レート、車名、自動車の型式の各検索項目の入力ボックスを用いて各検索項目についての検索キーを設定することができる。ただし、ユーザは、検索項目の全てについて検索キーを設定する必要はなく、任意数の任意の項目についてのみ検索キーを設定することができる。
【0034】
また、検索画面に設けられた終了ボタン502の操作による終了指示が発生したならば(ステップ406)、パラメータ設定処理を終了する。一方、検索画面に設けられた検索ボタン503の操作による検索指示が発生したならば(ステップ408)、検索画面で受け付けた検索項目毎の検索キーの集合よりなる検索条件を伴う検索要求を、チューニングデータ提供サーバ31に発行することにより、検索条件にマッチするチューニングデータの書誌をチューニング支援システムから取得する(ステップ412)。
【0035】
ここで、オーディオ設定アプリケーション209から、検索要求を受け取ったチューニングデータ提供サーバ31は、検索条件にマッチするチューニングデータ、すなわち、検索条件に含まれる各検索キーの検索項目の全てについて、検索キーとマッチする(完全一致または部分一致する)内容が、当該検索キーの検索項目の内容として登録されたチューニングデータをチューニングデータDB32から検索し、検索したチューニングデータの書誌をオーディオ設定アプリケーション209に返信する。
【0036】
このようにして、検索条件にマッチするチューニングデータの書誌を取得したオーディオ設定アプリケーション209は(ステップ412)、次に、
図5bに示す設定画面をディスプレイ203に表示する(ステップ414)。
ここで、
図5bに示すように、設定画面には、取得した各チューニングデータの書誌に含まれるタイトルの一覧551と、タイトルの一覧551上で選択されたタイトルであるチューニングデータの書誌の各項目の内容552とを表示する。なお、設定画面の表示開始時には、タイトルの一覧551中の先頭のタイトルを選択タイトルに自動設定する。
【0037】
次に、このようにして設定画面を表示したならば(ステップ414)、ユーザのタイトルの一覧551上でのタイトルの選択操作の発生と(ステップ416)、ユーザの終了ボタン553の操作による終了指示の発生と(ステップ418)、ユーザの設定ボタン554の操作による設定指示の発生と(ステップ420)とを監視する。
【0038】
そして、タイトルの選択操作が発生した場合には(ステップ414)、選択タイトルを今回ユーザから選択されたタイトルに更新し、書誌の内容の表示552を今回ユーザから選択されたタイトルに対応する書誌の各項目の内容に更新し(ステップ422)、ステップ416-420の監視に戻る。
【0039】
一方、終了指示が発生したならば(ステップ418)、パラメータ設定処理を終了する。
また、設定指示が発生した場合には(ステップ420)、設定指示が発生した時点における選択タイトルのチューニングデータの識別を含むデータ送信要求をチューニングデータ提供サーバ31に発行することにより、選択タイトルに対応するチューニングデータの対象音響環境とチューニングパラメータを取得する(ステップ424)。
【0040】
ここで、オーディオ設定アプリケーション209から、データ送信要求を受けたチューニングデータ提供サーバ31は、識別が示すチューニングデータの対象音響環境とチューニングパラメータをチューニングデータDB32から取得し、オーディオ設定アプリケーション209に返信する。また、このとき、識別が示すチューニングデータのダウンロード数を1増加する。
【0041】
次に、以上のようにして、選択タイトルに対応するチューニングデータの対象音響環境とチューニングパラメータを取得したならば、チューニングパラメータに含まれるパラメータを、各音響環境項目の、取得した対象音響環境データと記憶部201の自音響環境データとの一致の有無のパターンに応じてフィルタリングする(ステップ426)。
【0042】
ここで、フィルタリングは、予め定めた、各音響環境項目についての対象音響環境データと自音響環境データの不一致のパターンと、チューニングパラメータから除外するパラメータとの対応に従って、チューニングパラメータからパラメータを除外することにより行う。
ここで、この不一致のパターンと、チューニングパラメータから除外するパラメータとの対応は、各パターン毎にチューニングパラメータから除外するパラメータを対応づけることにより定義することもできるが、音響環境項目と、当該音響環境項目の情報が対象音響環境データと自音響環境データで不一致である場合にチューニングパラメータから除外するパラメータとを対応づけることにより定義することもできる。
【0043】
ここで、音響環境項目と、当該音響環境項目の情報が対象音響環境データと自音響環境データで不一致である場合にチューニングパラメータから除外するパラメータとの対応づけは、具体的には、たとえば、
図6に示すように、対象音響環境データと自音響環境データで車種(車名、型式)が一致しない場合には、チューニングパラメータからTCRパラメータを除外し、対象音響環境データと自音響環境データでサブウーハーサイズが一致しない場合には、チューニングパラメータからクロスオーバーパラメータを除外し、対象音響環境データと自音響環境データでスピーカー数が一致しない場合には、チューニングパラメータからTCRパラメータとクロスオーバーパラメータを除外し、対象音響環境データと自音響環境データでリスニングポジションが一致しない場合には、チューニングパラメータからTCRパラメータを除外するといったように、各音響環境項目に対して、当該音響環境項目の情報が対象音響環境データと自音響環境データで不一致である場合にチューニングパラメータから除外するパラメータを定義することにより行う。なお、対象音響環境データと自音響環境データの一方がサブウーハー無を表しており、他方がサブウーハー有りを表している場合には、両データのサブウーハーサイズは不一致として取り扱う。
【0044】
そして、
図6の対応を用いる場合には、たとえば、取得した対象音響環境データと記憶部201の自音響環境データとで車種のみが一致しない場合には、チューニングパラメータからTCRパラメータを除外し、他のパラメータのみがチューニングパラメータに残るように、チューニングパラメータのフィルタリングを行う。また、たとえば、取得した対象音響環境データと記憶部201の自音響環境データとで車種とサブウーハーサイズのみが一致しない場合には、チューニングパラメータからTCRパラメータとクロスオーバーパラメータを除外し、他のパラメータのみがチューニングパラメータに残るように、チューニングパラメータのフィルタリングを行う。
【0045】
ここで、以上のような、音響環境項目と、当該音響環境項目の情報が対象音響環境データと自音響環境データで不一致である場合にチューニングパラメータから除外するパラメータとの対応は、対象音響環境データが表す音響環境と、オーディオ装置1の音響環境とが当該音響環境項目について異なる場合に、そのパラメータをオーディオ装置1の当該音響環境項目のパラメータとして適用しても、そのチューニングパラメータの作成者が当該チューニングパラメータで意図した音質の実現に寄与しないパラメータが、当該音響環境項目の情報が不一致である場合に除外するパラメータとなるように設定する。すなわち、たとえば、車種やスピーカー数が異なる場合にはスピーカーの配置関係が異なるので、音像定位位置に関わるTCRパラメータとして同じパラメータを適用しても同じ音像定位位置は得られないので、TCRパラメータは、車種やスピーカー数が異なる場合にチューニングパラメータから除外するパラメータとして設定する。また、サブウーハーサイズ/有無やスピーカー数などのスピーカーシステムの構成が異なる場合には、各スピーカー102が担うことが望ましい音域が異なり、各スピーカー102に出力する音声の周波数帯域を同じとしても同質の音質が得られることが期待できないので、クロスオーバーパラメータは、サブウーハーサイズやスピーカー数が異なる場合にチューニングパラメータから除外するパラメータとして設定する。また、たとえば、リスニングポジションが異なる場合には、音像定位位置に関わるTCRパラメータとして同じパラメータを適用しても、リスニングポジションに対して同じ関係で定位する音像は得られないので、TCRパラメータは、リスニングポジションが異なる場合にチューニングパラメータから除外するパラメータとして設定する。ただし、
図6に示した対応に代えて、オーディオ設定アプリケーション209の提供者等における音質に対するポリシーに従って定めた対応を用いるようにしてもよい。
【0046】
さて、このようにしてチューニングパラメータのフィルタリングを行ったならば(ステップ426)、フィルタリング後のチューニングパラメータを、オーディオ装置1の制御部106に設定する(ステップ428)。
ここで、このようにしてチューニングパラメータの設定を受けたオーディオ装置1の制御部106は、上述のようにチューニングパラメータに従って、設定音響特性パラメータを変更する。
すなわち、設定されたチューニングパラメータに含まれるパラメータの音響特性項目についてのみ、設定音響特性パラメータに含まれるパラメータを、設定されたチューニングパラメータに含まれるパラメータに変更し、設定されたチューニングパラメータに含まれていないパラメータの音響特性項目については、設定音響特性パラメータに含まれる当該音響特性項目のパラメータを、現在のまま維持する。
【0047】
そして、オーディオ装置1の制御部106は、変更後の設定音響特性パラメータに一致するように、メディアプレイヤにイコライザパラメータを設定したり、各音声出力装置103にTCRパラメータやクロスオーバーパラメータを設定する。
この結果、たとえば、チューニングパラメータにイコライザパラメータのみが含まれている場合には、設定音響特性パラメータに含まれるイコライザパラメータのみがチューニングパラメータのイコライザパラメータに一致するように変更され、オーディオ装置1の音響特性はイコライザの特性(ゲインの周波数特性)のみが変化する。また、たとえば、チューニングパラメータにイコライザパラメータとTCRパラメータのみが含まれている場合には、設定音響特性パラメータに含まれるイコライザパラメータとTCRパラメータとがチューニングパラメータのイコライザパラメータとTCRパラメータ一致するように変更され、オーディオ装置1の音響特性はイコライザの特性とTCRの特性(各スピーカー102から出力される音間の遅延)のみが変化する。
【0048】
この結果、オーディオ装置1の音響特性が、チューニング支援システムからダウンロートしたチューニングパラメータを用いて変更され、以降、ユーザは、オーディオ装置1に音声を出力させることにより、ダウンロートしたチューニングパラメータの評価が可能となる。
【0049】
そこで、オーディオ設定アプリケーション209は、次に、ユーザから選択タイトルのチューニングデータの評価値を受け付けて、評価値と選択タイトルに対応するチューニングデータの識別とを含む評価登録要求をチューニングデータ提供サーバ31に送信する評価処理を行って(ステップ430)オーディオ設定処理を終了する。
【0050】
ここで、オーディオ設定アプリケーション209から、評価登録要求を受けたチューニングデータ提供サーバ31は、受け取った評価値をb、識別が示すチューニングデータのレートをa、評価回数をnとして、(a×n+b)/(n+1)に識別が示すチューニングデータのレートを更新すると共に、識別が示すチューニングデータの評価回数を1増加させる。
【0051】
以上、スマートフォン2のオーディオ設定アプリケーション209が行うパラメータ設定処理について説明した。
以上のように、本実施形態によれば、チューニングデータに含まれる音響環境が表す各音響環境項目の情報と、オーディオ装置1の音響環境における各音響環境項目の情報との不一致のパターンに応じて、チューニングデータに含まれるチューニングパラメータが表す複数の音響特性項目のパラメータのうちからパラメータを選定し、選定したパラメータのみをオーディオ装置1に設定する。ここで、オーディオ装置1の音響環境での利用にチューニングデータのチューニングパラメータのパラメータを適用しても有効な音響特性項目は、チューニングデータに含まれる前記音響環境が表す各音響環境項目の情報と、前記オーディオ装置1の音響環境の各響環境項目の情報との一致の有無のパターンより特定することができる。したがって、本実施形態によれば、チューニングデータDB32に蓄積したチューニングデータに含まれるチューニングパラメータが表す複数のパラメータのうちからオーディオ装置1の音響環境での利用に有効なパラメータのみを選定してオーディオ装置1に設定することが可能となる。
【0052】
よって、本発明によれば、オーディオ装置1の音響環境と完全には一致しない音響環境に好適化されたチューニングパラメータを含むチューニングデータも、そのチューニングパラメータに含まれるパラメータの一部のみを利用することによりオーディオ装置1の音質の向上のために用いることができるようになり、結果、サーバに登録された各チューニングデータの可用性が向上することとなる。
【0053】
ところで、以上の実施形態では、パラメータ設定処理において
図5aの検索画面を用いてユーザが、作成者、タイトル、ジャンル、レート、車名、自動車の型式を検索キーとするチューニングデータの検索を可能としたが、チューニングデータの検索は、これら以外の書誌の項目(たとえば、コメント)や音響環境の項目(たとえば、リスニングポジションやスピーカーシステム)や登録日を検索キーとして行えるようにしてもよい。また、書誌や音響環境の項目の値が属するカテゴリを検索キーとしてチューニングデータの検索を行えるようにしてもよい。すなわち、たとえば、検索画面で、セダンやミニバンといった自動車のタイプを検索キーとして受け付け、チューニング提供サーバにおいて、検索キーとされた自動車のタイプに属する車名、型式が登録されたチューニングデータを、当該検索キーについての検索条件の部分を満たすチューニングデータとして検索するようにしてもよい。
【0054】
なお、以上の実施形態は、スマートフォン2に代えて、PDAや、携帯電話などの任意の携帯装置を車載装置に接続して用いる場合に同様に適用可能である。
また、以上の実施形態は、スマートフォン2のオーディオ設定アプリケーション209や移動体通信装置を設けたが、これは、スマートフォン2のオーディオ設定アプリケーション209をオーディオ装置1に備え、オーディオ装置1のオーディオ設定アプリケーション209がスマートフォン2の移動体通信装置を用いて以上の処理を行うようにしてもよいし、スマートフォン2のオーディオ設定アプリケーション209や移動体通信装置をオーディオ装置1に設けて、オーディオ装置1単体で、以上の処理を行えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…オーディオ装置、2…スマートフォン、3…チューニング支援センタシステム、4…WAN、31…チューニングデータ提供サーバ、32…チューニングデータDB、101…入力装置、102…スピーカー、103…音声出力装置、104…表示装置、105…デバイスインタフェース、106…制御部、107…メディアプレイヤ、108…ラジオ受信機、109…ディスクドライブ、110…記憶装置、201…記憶部、202…操作部、203…ディスプレイ、204…音声入出力部、205…ホストインタフェース、206…移動通信装置、207…オペレーティングシステム、208…移動電話アプリケーション、209…オーディオ設定アプリケーション。