特許第5937913号(P5937913)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5937913
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】エンジン
(51)【国際特許分類】
   F02D 41/06 20060101AFI20160609BHJP
【FI】
   F02D41/06 380A
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-167621(P2012-167621)
(22)【出願日】2012年7月27日
(65)【公開番号】特開2014-25441(P2014-25441A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 敦仁
(72)【発明者】
【氏名】大谷 知広
(72)【発明者】
【氏名】福田 智宏
【審査官】 二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−117788(JP,A)
【文献】 特開2001−065390(JP,A)
【文献】 特開2002−021610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 41/00−41/40
F02D 43/00−45/00
F02D 13/00−28/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの目標回転数、及び冷却水温度に基づいて基準最大噴射量を算出する燃料噴射制御部を備えるエンジンにおいて、
前記燃料噴射制御部は、エンジンの始動が完了してからの経過時間が所定時間以上であると判定し、エンジンの始動が完了してから冷却水温度が所定温度以上であると判定した場合には、前記基準最大噴射量と、前記目標回転数及び大気圧に基づいて算出した大気圧制限噴射量と、大気圧及び吸気流量に基づく空気過剰率から算出した黒煙制限噴射量とのうち、最も小さい値を、最終最大噴射量に設定して燃料噴射制御を行い、
前記燃料噴射制御部は、エンジンの始動が完了してから所定時間が経過するまでの間は、燃料噴射量を所定量だけ増量させたままの値を、最終最大噴射量として燃料噴射制御を行い、
前記燃料噴射制御部は、エンジンの始動が完了してから所定時間が経過しても、冷却水温度が所定温度に到達していない場合には、燃料噴射量を所定量だけ増量させたままの値を、冷却水温度が所定温度に到達するまで、最終最大噴射量として燃料噴射制御を行う
ことを特徴とするエンジン。
【請求項2】
前記燃料噴射制御部は、前記冷却水温度に基づいて前記所定量を算出する請求項1に記載のエンジン。
【請求項3】
前記燃料噴射制御部は、前記冷却水温度に基づいて前記所定時間を算出する請求項1または請求項2に記載のエンジン。
【請求項4】
前記燃料噴射制御部は、前記冷却水温度に基づいて前記所定温度を算出する請求項1、請求項2または請求項3に記載のエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジンに関する。詳しくは、燃料噴射制御装置を備えたエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジンは、冷態始動時において燃料の着火性の悪化に伴い、始動性が低下する場合がある。そこで、冷態始動時に燃料噴射量を意図的に増加させる燃料噴射制御装置が知られている。エンジンの冷却水温度が所定温度よりも低い場合にエンジン回転数が所定回転数に到達するまで、燃料噴射量を定常時の燃料噴射量よりも増加させることでエンジンの始動性を向上させるものである。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載の燃料噴射制御装置は、エンジンの始動時にエンジン回転数が所定回転数に到達すると燃料噴射量を増加させる制御を終了する。このため、エンジンの運転環境に応じて黒煙の発生を抑制するため燃料噴射量を減少させる制御を開始した場合や、エンジンに大きな負荷が加わった場合に、エンジンの運転状態が不安定になったりエンジンストールが発生したりする可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−157884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、始動性を向上させるとともに、運転環境及び使用態様に関わらず運転状態を安定させることができるエンジンの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1においては、エンジンの目標回転数、及び冷却水温度に基づいて基準最大噴射量を算出する燃料噴射制御部を備えるエンジンにおいて、前記燃料噴射制御部は、エンジンの始動が完了してからの経過時間が所定時間以上であると判定し、エンジンの始動が完了してから冷却水温度が所定温度以上であると判定した場合には、前記基準最大噴射量と、前記目標回転数及び大気圧に基づいて算出した大気圧制限噴射量と、大気圧及び吸気流量に基づく空気過剰率から算出した黒煙制限噴射量とのうち、最も小さい値を、最終最大噴射量に設定して燃料噴射制御を行い、前記燃料噴射制御部は、エンジンの始動が完了してから所定時間が経過するまでの間は、燃料噴射量を所定量だけ増量させたままの値を、最終最大噴射量として燃料噴射制御を行い、前記燃料噴射制御部は、エンジンの始動が完了してから所定時間が経過しても、冷却水温度が所定温度に到達していない場合には、燃料噴射量を所定量だけ増量させたままの値を、冷却水温度が所定温度に到達するまで、最終最大噴射量として燃料噴射制御を行うものである。
【0007】
請求項2においては、前記燃料噴射制御部は、前記冷却水温度に基づいて前記所定量を算出するものである。
【0008】
請求項3においては、前記燃料噴射制御部は、前記冷却水温度に基づいて前記所定時間を算出するものである。
【0009】
請求項4においては、前記燃料噴射制御部は、前記冷却水温度に基づいて前記所定温度を算出するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
即ち、請求項1に係る発明によれば、燃料噴射量が制限される運転環境下においても確実に始動し、エンジンストールの発生を抑制することができる。これにより、始動性が向上するとともに、運転環境及び使用態様に関わらず運転状態が安定する。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、運転環境に応じた適切な燃料噴射条件で燃料を噴射することができる。これにより、始動性が向上するとともに、運転環境及び使用態様に関わらず運転状態が安定する。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、運転環境に応じた適切な燃料噴射条件で燃料を噴射することができる。これにより、始動性が向上するとともに、運転環境及び使用態様に関わらず運転状態が安定する。
【0014】
請求項4に係る発明によれば、運転環境に応じた適切な燃料噴射条件で燃料を噴射することができる。これにより、始動性が向上するとともに、運転環境及び使用態様に関わらず運転状態が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る燃料噴射制御装置の構成を示した概略図。
図2】本発明に係る燃料噴射制御装置の制御態様を表すフローチャートを示す図。
図3】(a)エンジンの始動完了からの経過時間が所定時間未満のときに、冷却水温度が所定温度に到達した場合における本発明に係る燃料噴射制御装置が噴射する最終最大噴射量と冷却水温度との関係を示したグラフを示す図。(b)エンジンの始動完了からの経過時間が所定時間を経過した後に、冷却水温度が所定温度に到達した場合における本発明に係る燃料噴射制御装置が噴射する最終最大噴射量と冷却水温度との関係を示したグラフを示す図。
図4】本発明に係る燃料噴射制御装置の第二実施形態における燃料噴射御装置の制御態様を表すフローチャートを示す図。
図5】本発明に係る燃料噴射制御装置の第三実施形態における燃料噴射御装置の制御態様を表すフローチャートを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図1を用いて、本発明の第一実施形態に係るエンジン1について説明する。
【0017】
図1に示すように、エンジン1は、ディーゼルエンジンであり、本実施形態においては、図1に示すように、四つの気筒3・3・3・3を有する直列四気筒エンジンである。
【0018】
エンジン1は、吸気管2を介して供給される空気と、燃料噴射弁4・4・4・4から供給される燃料とを気筒3・3・3・3の内部において混合して燃焼させることで出力軸を回転駆動させる。エンジン1は、燃料の燃焼により発生する排気を、排気管5を介して外部へ排出する。エンジン1は、燃料噴射弁4・4・4・4から噴射される燃料噴射量を制御する燃料噴射制御装置10、エンジン1を制御するECUを備える。
【0019】
燃料噴射制御装置10は、燃料噴射の制御を行うものである。燃料噴射制御装置10は、エンジン1の回転数を検出するエンジン回転数検出部11、アクセルペダル7の操作量Sを検出する操作量検出部12、大気圧Pを検出する大気圧検出部13、吸気の流量を検出する吸気流量検出部14、エンジン1の冷却水温度Tmを検出する冷却水温度検出部15、燃料噴射を制御する制御手段である燃料噴射制御部16を具備する。
【0020】
エンジン回転数検出部11は、エンジン1の回転数Nを検出するものである。エンジン回転数検出部11は、センサーとパルサーとから構成され、エンジン1の出力軸に設けられる。なお、本実施形態において、エンジン回転数検出部11をセンサーとパルサーとから構成しているが、回転数Nを検出することができるものであればよい。
【0021】
操作量検出部12は、アクセルペダル7の操作量Sを検出するものである。操作量検出部12は、ストロークセンサー又は角度センサーから構成され、アクセルペダル7の出力レバーに設けられる。なお、本実施形態において、操作量検出部12をストロークセンサー又は角度センサーから構成しているが、CAN信号等の操作量Sを検出することができるものであればよい。
【0022】
大気圧検出部13は、大気圧Pを検出するものである。大気圧検出部13は、大気圧センサー等から構成され、大気圧Pが測定可能な箇所に設置される。
【0023】
吸気流量検出部14は、エンジン1の吸気流量Fを検出するものである。吸気流量検出部14は、流量センサー等から構成され、エンジン1の吸気管2に設置される。なお、本実施形態において、吸気流量検出部14を流量センサー等から構成しているが、演算により算出するものでもよい。
【0024】
冷却水温度検出部15は、エンジン1の冷却水温度Tmを検出するものである。冷却水温度検出部15は、温度センサー等から構成され、エンジン1の冷却水の熱交換を行うラジエータ6に配置される。なお、本実施形態において、冷却水温度検出部15を温度センサー等から構成しているが、エンジンサーモスタッドの代表値を検出するものでもよい。
【0025】
制御手段である燃料噴射制御部16は、燃料の噴射制御を行うための種々のプログラムや、操作量Sに基づいてエンジン1の目標回転数Ntを算出するための回転数マップM1、目標回転数Nt及び冷却水温度Tmに基づいて基準最大噴射量Qsを算出するための基準最大燃料噴射量マップM2、目標回転数Nt及び大気圧Pに基づいて大気圧制限噴射量Qpを算出するための大気圧制限噴射量マップM3、空気過剰率λに基づいて黒煙制限噴射量Qλを算出するための黒煙制限噴射量マップM4等を記憶する。
【0026】
目標回転数Ntは、アクセルペダル7が操作量Sだけ操作された場合にエンジン1が一定速度で回転する回転数である。
【0027】
基準最大噴射量Qsは、エンジン1からの黒煙の発生を抑制するため、冷却水温度Tmのときに、目標回転数Ntにおいて許容される最大の燃料噴射量である。
【0028】
大気圧制限噴射量Qpは、エンジン1からの黒煙の発生を抑制するため、大気圧Pのときに目標回転数Ntにおいて許容される最大の燃料噴射量である。
【0029】
黒煙制限噴射量Qλは、エンジン1からの黒煙の発生を抑制するため、空気過剰率λのときに許容される最大の燃料噴射量である。
【0030】
所定量Qvは、エンジン1の始動性を向上させるため冷却水温度Tmのときに増量される燃料噴射量の増量分である。
【0031】
所定時間tvは、エンジン1の始動性を向上させるため冷却水温度Tmのときにエンジン1の始動が完了してから燃料噴射量の増量を継続する時間である。
【0032】
所定温度Tmvは、エンジン1の始動性を向上させるためエンジン1の始動が完了してから燃料噴射量の増量が継続される冷却水の閾値である。
【0033】
ECU17は、エンジン1を制御するものである。ECU17には、エンジン1の制御を行うための種々のプログラムやデータが格納される。ECU17は、CPU、ROM、RAMがバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。ECU17は、燃料噴射制御部16を具備する。
【0034】
燃料噴射制御部16(ECU17)は、燃料噴射弁4・4・4・4と接続され、燃料噴射弁4・4・4・4を制御することが可能である。
【0035】
燃料噴射制御部16は、エンジン回転数検出部11に接続され、エンジン回転数検出部11が検出する回転数Nを取得することが可能である。
【0036】
燃料噴射制御部16は、操作量検出部12に接続され、操作量検出部12が検出する操作量Sを取得することが可能である。
【0037】
燃料噴射制御部16は、大気圧検出部13に接続され、大気圧検出部13が検出する大気圧Pを取得することが可能である。
【0038】
燃料噴射制御部16は、吸気流量検出部14に接続され、吸気流量検出部14が検出する吸気流量Fを取得することが可能である。
【0039】
燃料噴射制御部16は、冷却水温度検出部15に接続され、冷却水温度検出部15が検出する冷却水温度Tmを取得することが可能である。
【0040】
燃料噴射制御部16は、取得した操作量Sに基づいて回転数マップM1から目標回転数Ntを算出することが可能である。
【0041】
燃料噴射制御部16は、取得した吸気流量F及び大気圧Pに基づいて空気過剰率λを算出することが可能である。
【0042】
燃料噴射制御部16は、取得した冷却水温度Tm及び算出した目標回転数Ntに基づいて基準最大燃料噴射量マップM2から基準最大噴射量Qsを算出することが可能である。
【0043】
燃料噴射制御部16は、取得した大気圧P及び算出した目標回転数Ntに基づいて大気圧制限噴射量マップM3から大気圧制限噴射量Qpを算出することが可能である。
【0044】
燃料噴射制御部16は、算出した空気過剰率λに基づいて黒煙制限噴射量マップM4から黒煙制限噴射量Qλを算出することが可能である。
【0045】
燃料噴射制御部16は、算出した基準最大噴射量Qs、大気圧制限噴射量Qp及び黒煙制限噴射量Qλのうち最も小さい値を選択して、最終最大噴射量Qmを設定することが可能である。
【0046】
ECU17は、燃料噴射制御部16を介して取得した操作量S、回転数N、目標回転数Nt、最終最大噴射量Qmに基づいてエンジン1を制御することが可能である。
【0047】
以下では、図2、及び図3を用いて、本発明の第一実施形態に係るエンジン1の始動後における燃料噴射制御部16の燃料噴射制御の態様について説明する。
【0048】
図2に示すように、エンジン1の始動後、ステップS110において、燃料噴射制御装置10の燃料噴射制御部16は、操作量検出部12が検出する操作量S、大気圧検出部13が検出する大気圧P、吸気流量検出部14が検出する吸気流量F、及び冷却水温度検出部15が検出する冷却水温度Tmを取得し、ステップをステップS120に移行させる。
【0049】
ステップS120において、燃料噴射制御部16は、取得した操作量Sに基づいて回転数マップM1から目標回転数Ntを算出し、取得した大気圧P、及び吸気流量Fに基づいて空気過剰率λを算出し、ステップをステップS130に移行させる。なお、本実施形態において、ステップS110とステップS120とはこの順序に限定するものではない。
【0050】
ステップS130において、燃料噴射制御部16は、取得した冷却水温度Tm及び算出した目標回転数Ntに基づいて基準最大燃料噴射量マップM2から基準最大噴射量Qsを算出し、ステップをステップS140に移行させる。
【0051】
ステップS140において、燃料噴射制御部16は、取得した大気圧P及び算出した目標回転数Ntに基づいて大気圧制限噴射量マップM3から大気圧制限噴射量Qpを算出し、ステップをステップS150に移行させる。
【0052】
ステップS150において、燃料噴射制御部16は、算出した空気過剰率λに基づいて黒煙制限噴射量マップM4から黒煙制限噴射量Qλを算出し、ステップをステップS160に移行させる。なお、本実施形態において、ステップS130からステップS150はこの順序に限定するものではない。
【0053】
ステップS160において、燃料噴射制御部16は、エンジン1の始動が完了してからの経過時間tが所定時間tv以上か否か判定する。その結果、エンジン1の始動が完了してからの経過時間tが所定時間tv以上であると判定した場合、燃料噴射制御部16はステップをステップS170に移行させる。一方、エンジン1の始動が完了してからの経過時間tが所定時間tv未満であると判定した場合、燃料噴射制御部16はステップをステップS280に移行させる。
【0054】
ステップS170において、燃料噴射制御部16は、エンジン1の始動が完了してから冷却水温度Tmが所定温度Tmv以上か否か判定する。その結果、エンジン1の始動が完了してから冷却水温度Tmが所定温度Tmv以上であると判定した場合、燃料噴射制御部16はステップをステップS180に移行させる。一方、エンジン1の始動が完了してから冷却水温度Tmが所定温度Tmv未満であると判定した場合、燃料噴射制御部16はステップをステップS280に移行させる。
【0055】
ステップS180において、燃料噴射制御部16は、算出した基準最大噴射量Qs、大気圧制限噴射量Qp、及び黒煙制限噴射量Qλのうち最も小さい値を選択して最終最大噴射量Qmに設定し、ステップをステップS110に戻す。
【0056】
ステップS280において、燃料噴射制御部16は、算出した基準最大噴射量Qsを所定量Qvだけ増量した値を最終最大噴射量Qmに設定し、ステップをステップS110に戻す。
【0057】
すなわち、図3(a)に示すように、燃料噴射制御部16は、エンジン1の始動が完了してから所定時間tvが経過するまでに冷却水温度Tmが所定温度Tmvに到達しても(図3(a)における線A参照)、所定時間tvが経過するまで燃料噴射量を所定量Qvだけ増量するように制御を行う(図3(a)における線B参照)。また、図3(b)に示すように、燃料噴射制御部16は、エンジン1の始動が完了してから所定時間tvが経過しても(図3(b)における線A参照)冷却水温度Tmが所定温度Tmvに到達するまで燃料噴射量を所定量Qvだけ増量するように制御を行う(図3(b)における線B参照)。
【0058】
これにより、エンジン1の始動性を向上させるとともに、低温環境におけるエンジン1の始動直後のエンジンストールを抑制することができる。また、作業機等に積載されたエンジン1が始動直後に高負荷が加わった場合や、低温環境において高負荷が加わった場合のエンジンストールを防止できる。
【0059】
以上の如く、本発明の第一実施形態に係るエンジン1は、エンジン1の目標回転数Nt、及びエンジン1の冷却水温度Tmに基づいて基準最大噴射量Qsを算出する制御手段である燃料噴射制御部16を備えるエンジン1において、燃料噴射制御部16は、基準最大噴射量Qsと、目標回転数Nt及び大気圧Pに基づいて算出した大気圧制限噴射量Qpと、空気過剰率λに基づいて算出した黒煙制限噴射量Qλとのうち最も小さい値を最終最大噴射量Qmに設定し、エンジン1の始動が完了してからの経過時間tが所定時間tv未満の場合、又は冷却水温度Tmが所定温度Tmv未満の場合においては基準最大噴射量Qsを所定量Qvだけ増加させた値を最終最大噴射量Qmとするものである。
【0060】
このように構成することにより、燃料噴射量が制限される運転環境下においても確実に始動しエンジンストールの発生を抑制することができる。これにより、始動性が向上するとともに、運転環境及び使用態様に関わらず運転状態が安定する。
【0061】
次に、図1、及び図4を用いて、本発明に係るエンジンの第二実施形態であるエンジン18について説明する。エンジン18は、燃料噴射制御装置19を具備する。燃料噴射制御装置19は、燃料噴射制御部20を具備し、冷却水温度Tmに基づいて所定量Qv、所定時間tv、及び所定温度Tmvを算出するものである。なお、以下の実施形態において、既に説明した実施形態と同様の点に関してはその具体的説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
【0062】
図1に示すように、燃料噴射制御部20は、冷却水温度Tmから燃料噴射量を増量するための所定量Qvを算出する所定量算出マップM5、冷却水温度Tmから所定時間tvを算出する所定時間算出マップM6、冷却水温度Tmから所定温度Tmvを算出する所定温度算出マップM7等を記憶する。燃料噴射制御部20は、これらのプログラム等に従って所定の演算を行って、その演算の結果を記憶する。
【0063】
燃料噴射制御部20は、取得した冷却水温度Tmに基づいて所定量算出マップM5から所定量Qvを、所定時間算出マップM6から所定時間tvを、所定温度算出マップM7から所定温度Tmvをそれぞれ算出することが可能である。
【0064】
以下では、図4を用いて、本発明第二実施形態に係るエンジン18の始動後における燃燃料噴射制御部20の燃料噴射制御の態様について説明する。
【0065】
図4に示すように、エンジン18の始動後、ステップS151において、燃料噴射制御部20は、取得した冷却水温度Tmに基づいて、所定量算出マップM5から所定量Qvを、所定時間算出マップM6から所定時間tvを、所定温度算出マップM7から所定温度Tmvをそれぞれ算出し、ステップをステップS160に移行させる。なお、本実施形態において、所定量Qv、所定時間tv、及び所定温度Tmvのうちいずれか1つ又は二つを冷却水温度Tmに基づいて算出した値としてもよい。
【0066】
ステップS160からステップS280において、燃料噴射制御部20は、算出した所定量Qv、所定時間tv、及び所定温度Tmvを用いて燃料噴射制御を行う。
【0067】
以上の如く、本発明の第二実施形態に係るエンジン18において、制御手段である燃料噴射制御部20は、冷却水温度Tmに基づいて所定量Qvを算出するものである。
【0068】
また、燃料噴射制御部20は、冷却水温度Tmに基づいて所定時間tvを算出するものである。
【0069】
また、燃料噴射制御部20は、冷却水温度Tmに基づいて所定温度Tmvを算出するものである。
【0070】
このように構成することにより、運転環境に応じた適切な燃料噴射条件で燃料を噴射することができる。これにより、これにより、始動性が向上するとともに、運転環境及び使用態様に関わらず運転状態が安定する。
【0071】
次に、図1、及び図5を用いて本発明に係るエンジンの第三実施形態であるエンジン21について説明する。エンジン21は、燃料噴射制御装置22を具備する。燃料噴射制御装置22は、燃料噴射制御部23を具備し、大気圧Pに基づいて所定量Qv、所定時間tv、及び所定温度Tmvを算出するものである。なお、以下の実施形態において、既に説明した実施形態と同様の点に関してはその具体的説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
【0072】
図1に示すように、燃料噴射制御部23は、大気圧Pから燃料噴射量を増量するための所定量Qvを算出する所定量算出マップM8、冷却水温度Tmから所定時間tvを算出する所定時間算出マップM9、冷却水温度Tmから所定温度Tmvを算出する所定温度算出マップM10等を記憶する。燃料噴射制御部23は、これらのプログラム等に従って所定の演算を行って、その演算の結果を記憶する。
【0073】
燃料噴射制御部23は、取得した大気圧Pに基づいて所定量算出マップM8から所定量Qvを、所定時間算出マップM9から所定時間tvを、所定温度算出マップM10から所定温度Tmvをそれぞれ算出することが可能である。
【0074】
以下では、図5を用いて、本発明の第三実施形態に係るエンジン21の始動後における燃料噴射制御部23の燃料噴射制御の態様について説明する。
【0075】
図5に示すように、エンジン21の始動後、ステップS152において、燃料噴射制御部23は、取得した大気圧Pに基づいて、所定量算出マップM8から所定量Qvを、所定時間算出マップM9から所定時間tvを、所定温度算出マップM10から所定温度Tmvをそれぞれ算出し、ステップをステップS160に移行させる。なお、本実施形態において、所定量Qv、所定時間tv、及び所定温度Tmvのうちいずれか1つ又は二つを大気圧Pに基づいて算出した値としてもよい。
【0076】
ステップS160からステップS280において、燃料噴射制御部23は、算出した所定量Qv、所定時間tv、及び所定温度Tmvを用いて燃料噴射制御を行う。
【0077】
以上の如く、本発明の第三実施形態に係るエンジン21において、制御手段である燃料噴射制御部23は、大気圧Pに基づいて所定量Qvを算出するものである。
【0078】
また、燃料噴射制御部23は、大気圧Pに基づいて所定時間tvを算出するものである。
【0079】
また、燃料噴射制御部23は、大気圧Pに基づいて所定温度Tmvを算出するものである。
【0080】
このように構成することにより、運転環境に応じた適切な燃料噴射条件で燃料を噴射することができる。これにより、これにより、始動性が向上するとともに、運転環境及び使用態様に関わらず運転状態が安定する。
【符号の説明】
【0081】
1 エンジン
10 燃料噴射制御装置
16 燃料噴射制御部
Nt 目標回転数
P 大気圧
Tm 冷却水温度
λ 空気過剰率
Qs 基準最大噴射量
Qp 大気圧制限噴射量
Qλ 黒煙制限噴射量
Qm 最終最大噴射量
t 経過時間
tv 所定時間
Tmv 所定温度
図1
図2
図3
図4
図5