特許第5937929号(P5937929)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5937929
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】インプリントモールドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 59/02 20060101AFI20160609BHJP
   B29C 33/38 20060101ALI20160609BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   B29C59/02 B
   B29C33/38
   H01L21/30 502D
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-193818(P2012-193818)
(22)【出願日】2012年9月4日
(65)【公開番号】特開2014-46657(P2014-46657A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】井上 俊明
【審査官】 鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−71587(JP,A)
【文献】 特開2012−30475(JP,A)
【文献】 特開2004−209971(JP,A)
【文献】 特開2007−320246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 59/00−59/18
B29C 33/00−33/76
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部から突出する第1の凸部分と、前記第1の凸部分からさらに突出する第2の凸部分と、を少なくとも有する多段状の突出部を備えたインプリントモールドの製造方法であって、
シリコン酸化層と、前記シリコン酸化層の一方面に設けられた第1のシリコン層と、前記シリコン酸化層の他方面に設けられた第2のシリコン層と、を有する基板を準備する第1の工程と、
前記第1のシリコン層の上に第1のマスクパターンを形成する第2の工程と、
前記第1のシリコン層をエッチングすることで前記第2の凸部分を形成する第3の工程と、
前記第1のマスクパターンを除去する第4の工程と、
前記シリコン酸化層の上に第2のマスクパターンを形成する第5の工程と、
前記シリコン酸化層をエッチングすることで、二酸化シリコンからなる前記第1の凸部分を形成する第6の工程と、
前記第2のマスクパターンを除去する第7の工程と、を備え、
前記第1のマスクパターンが二酸化シリコンから構成されており、
前記第4の工程と前記第6の工程を同時に実行することを特徴とするインプリントモールドの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のインプリントモールドの製造方法であって、
前記シリコン酸化層は、5〜20μmの厚さを有することを特徴とするインプリントモールドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノインプリント法に用いられるインプリントモールドの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の段差を備えたパターン形成体を製造する方法として、石英基板の上にハードマスク層とエッチングストッパ層を交互に形成し、これらをパターニングした後に基板をエッチングすることで、下側のパターンから順次形成する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−74566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の基板は単一の材料から構成されているため、エッチング回数が多くなり生産性に劣るという問題があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、生産性向上を図ることが可能なインプリントモールドの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るインプリントモールドの製造方法は、支持部から突出する第1の凸部分と、前記第1の凸部分からさらに突出する第2の凸部分と、を少なくとも有する多段状の突出部を備えたインプリントモールドの製造方法であって、シリコン酸化層と、前記シリコン酸化層の一方面に設けられた第1のシリコン層と、前記シリコン酸化層の他方面に設けられた第2のシリコン層と、を有する基板を準備する第1の工程と、前記第1のシリコン層の上に第1のマスクパターンを形成する第2の工程と、前記第1のシリコン層をエッチングすることで前記第2の凸部分を形成する第3の工程と、前記第1のマスクパターンを除去する第4の工程と、前記シリコン酸化層の上に第2のマスクパターンを形成する第5の工程と、前記シリコン酸化層をエッチングすることで、二酸化シリコンからなる前記第1の凸部分を形成する第6の工程と、前記第2のマスクパターンを除去する第7の工程と、を備え、前記第1のマスクパターンが二酸化シリコンから構成されており、前記第4の工程と前記第6の工程を同時に実行することを特徴とする
【0008】
]上記発明において、前記シリコン酸化層は、5〜20μmの厚さを有してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、突出部の第1の凸部分全体を二酸化シリコンで構成するので、インプリントモールドを製造する際のエッチングの回数を少なくすることができ、インプリントモールドの生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施形態におけるインプリントモールドを示す断面図である。
図2図2は、本発明の実施形態におけるインプリントモールドの製造方法を示す工程図である。
図3図3(a)〜図3(d)は、図2のステップS10〜S40におけるインプリントモールドの断面図である。
図4図4(a)〜図4(d)は、図2のステップS50〜S80におけるインプリントモールドの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
先ず、本実施形態におけるインプリントモールド10の構成について、図1を参照しながら説明する。図1は本実施形態におけるインプリントモールドの断面図である。
【0015】
本実施形態におけるインプリントモールド10は、例えばプリント配線板の基材を成形するための熱インプリント用の金型である。このインプリントモールド10は、図1に示すように、ベース部11と、第1の突出部12と、第2の突出部15と、を備えている。なお、本実施形態におけるベース部11が本発明における支持部の一例に相当し、本実施形態における第1の突出部12が本発明における突出部の一例に相当する。
【0016】
第1の突出部12は、ベース部11の上面111から上方に向かって突出しており、本例では、台状部分13と柱状部分14からなる2段構造を備えている。台状部分13は、ベース部11の上面111に設けられており、当該ベース部11から上方に向かって突出している。柱状部分14は、この台状部分13よりも小さな外径を有しており、上方に向かって突出するように台状部分13の上面131に設けられている。
【0017】
なお、本実施形態における台状部分13が本発明における第1の凸部分の一例に相当し、本実施形態における柱状部分14が本発明における第2の凸部分の一例に相当する。また、第1の突出部12を構成する凸部分13,14の段数は2段に限定されず、3段以上としてもよく、本発明における「多段」には2段も含まれる。
【0018】
この第1の突出部12は、特に図示しないが、熱インプリントの際に、プリント配線板の導体パターンを形成するための貫通孔を基材に形成する。具体的には、柱状部分14によって基材に裏面まで達する小径部が形成されると共に、台状部分13によって基材に貫通孔の大径部が形成される。因みに、この大径部に導体が充填されることで、導体パターンのランド部が形成される。また、基材の具体例としては、例えば、ポリイミド(PI)、液晶ポリマ(LCP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等からなるフィルムを例示することができる。
【0019】
第2の突出部15は、上述の第1の突出部12とは独立して、ベース部11の上面111に設けられており、当該ベース部11から上方に向かって突出している。なお、この第2の突出部15は、第1の突出部12と異なり、単段の凸部分のみで構成されている。特に図示しないが、熱インプリント時にこの第2の突出部15によって基材に溝が形成され、この溝に導体が充填されることでプリント配線板の配線パターンが形成される。
【0020】
なお、特に図示しないが、平面視において、上述した第1の突出部12は、円形、矩形、或いは多角形等となっているのに対し、第2の突出部15は、ベース部11上で線条に延在している。但し、第2の突出部15を、柱状部分14が形成されていない台状部分13のような形状とした場合は、線条に限らず、円形や矩形、或いは多角形等としてもよい。また、図1に示すインプリントモールド10における突出部12,15の配置は一例に過ぎず特にこれに限定されない。
【0021】
本実施形態では、ベース部11と第1の突出部12の柱状部分14は、シリコン(Si)のみから構成されており、柱状部分14は20μm程度の高さを有している。これに対し、第1の突出部12の台状部分13と第2の突出部15は、二酸化シリコン(SiO)のみから構成されており、5〜20μm程度の高さを有している。
【0022】
ここで、シリコン基板に形成されるシリコン酸化膜の膜厚は0.5〜1.0μm程度が一般的であり、こうしたシリコン酸化膜の従来の用途はマスクパターン等に留まる。これに対し、本実施形態では、シリコン酸化膜を意図的に厚く形成し、二酸化シリコン単体で第1の突出部12の台状部分13や第2の突出部15を構成しており、これによりインプリントモールドの製造工程からエッチング回数の低減が図られている。
【0023】
次に、本実施形態におけるインプリントモールド10の製造方法について図2図4を参照しながら説明する。
【0024】
図2は本実施形態におけるインプリントモールドの製造方法を示す工程図であり、図3及び図4図2のステップS10〜S80におけるインプリントモールドの断面図である。
【0025】
先ず、図2のステップS10において、SOI(Silicon on insulator)ウェハ20を準備する。このSOIウェハ20は、図3(a)に示すように、第1のシリコン(Si)層21、シリコン酸化(SiO)層22、及び、第2のシリコン(Si)層23を備えている。第1のシリコン層21は、シリコン酸化層22の一方面に積層されているのに対し、第2のシリコン層23は、当該シリコン酸化層22の他方面に積層されており、このSOIウェハ20は、2つのシリコン層21,23でシリコン酸化層22を挟んだ構造を有している。
【0026】
本実施形態では、第1のシリコン層21は20μm程度の厚さを有しているのに対し、シリコン酸化層22は5〜20μm程度の厚さを有しており、シリコン酸化層22が意図的に厚く形成されている。こうしたSOIウェハ20は、例えば、シリコンウェハにシリコン酸化膜を比較的厚く形成し、当該酸化膜付きシリコンウェハを別のシリコンウェハに接合した後にその一方面を研磨することで形成されている。
【0027】
次いで、図2のステップS20において、図3(b)に示すように、第1のシリコン層21の上にマスク層31を形成する。具体的には、このマスク層31は二酸化シリコン(SiO)から構成されており、TEOS(tetra ethyl ortho silicate/Tetraethoxysilane)を用いてCVD(chemical vapor deposition)法によって形成する。なお、このマスク層31を、ウェット酸化、ドライ酸化、或いはパイロジェニック酸化によって形成してもよい。
【0028】
因みに、二酸化シリコンに代えて、第1のシリコン層21に対してエッチング選択比の高い他の材料(例えば、窒化シリコン、金属、レジスト等)でこのマスク層を形成してもよいが、第1の突出部12の第1の凸部分13や第2の突出部15と同じ材料でこのマスク層を構成することで、後述するマスクパターン32の除去工程を省略することができる。
【0029】
次いで、図2のステップS30において、図3(c)に示すように、マスク層31の上に感光性樹脂をスピンコートによって塗布した後に、この感光性樹脂をフォトリソグラフィによってパターニングすることで、マスク層31の上に第1のレジストパターン33を形成する。
【0030】
次いで、図2のステップS40において、図3(d)に示すように、例えばCガスを用いた反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)によって、第1のシリコン層21が露出するまでマスク層31を選択的に除去して、第1のシリコン層21上にマスクパターン32を形成する。本実施形態におけるマスクパターン32が、本発明における第1のマスクパターンの一例に相当する。
【0031】
次いで、図2のステップS50において、図4(a)に示すように、例えばOプラズマアッシング等によって、第1のレジストパターン33をマスクパターン32の上から剥離して除去する。
【0032】
次いで、図2のステップS60において、図4(b)に示すように、例えば、SF+Oガスを用いたRIEによって、シリコン酸化層22が露出するまで第1のシリコン層21を選択的に除去する。これにより、第1の突出部12の柱状部分14が形成される。
【0033】
この際、シリコンと二酸化シリコンのエッチング選択比は40:1程度であり、シリコン酸化層22がエッチングストッパとして機能するので、エッチング不均一性(プラズマ不均一性、開口率、パターン幅等)に起因するエッチングレートのばらつきを低減することができる。
【0034】
次いで、図2のステップS70において、図4(c)に示すように、シリコン酸化層22の上に感光性樹脂をスピンコートによって塗布した後に、この感光性樹脂をフォトリソグラフィによってパターニングすることで、シリコン酸化層22の上に第2のレジストパターン34を形成する。本実施形態における第2のレジストパターン34が、本発明における第2のマスクパターンの一例に相当する。
【0035】
なお、このSiOエッチング条件における第2のレジストパターン34のエッチング選択比は1:1程度であるため、第2のレジストパターン34の厚さがシリコン酸化層22の厚さの2倍以上となるように、第2のレジストパターン34をシリコン酸化層22の上に形成する。
【0036】
次いで、図2のステップS80において、図4(d)に示すように、第2のレジストパターン34をマスクとして、例えばCガスを用いたRIEによって、第2のシリコン層23が露出するまでシリコン酸化層22を選択的に除去する。これにより、二酸化シリコンのみからなる、第1の突出部12の台状部分13と第2の突出部15が形成される。
【0037】
この際、反応ガスとしてCF系ガスを用いているので、エッチングが進行して第2のシリコン層23が露出すると、炭素がシリコンと反応してSiCが形成されエッチングされないので、この第2のシリコン層23がエッチングストッパとして機能する。このため、第1の突出部12の台状部分13や第2の突出部15の高さが均一となる。
【0038】
また、本実施形態では、このステップS80のエッチングによって、シリコン酸化層22の除去と同時に、第1の突出部12の柱状部分14の上に残っているマスクパターン32も除去されるが、特にこれに限定されない。例えば、上述のステップS60の直後に、マスクパターン32を除去してもよい。
【0039】
最後に、図2のステップS90において、例えば、Oプラズマアッシングによって、第1の突出部12の台状部分13や第2の突出部15の上から第2のレジストパターン34を剥離して除去することで、インプリントモールド10が完成する。
【0040】
以上のように、本実施形態では、多段状の第1の突出部12の台状部分13全体を二酸化シリコンのみで構成するので、インプリントモールド10を製造する際にエッチングの回数を少なくすることができ、インプリントモールドの生産性が向上する。
【0041】
本実施形態における図2のステップS10が本発明における第1の工程の一例に相当し、同図のステップS20〜S50が本発明における第2の工程の一例に相当し、同図のステップS60が本発明における第3の工程の一例に相当し、同図のステップS70が本発明における第5の工程の一例に相当し、同図のステップS80が本発明における第4及び第6の工程の一例に相当し、同図のステップS90が本発明における第7の工程の一例に相当する。
【0042】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0043】
例えば、上述の実施形態では、上側からSi層/SiO層/Si層からなるSOIウェハを出発材料としたが、隣接する層同士の間で一方のエッチング条件において他方のエッチング選択比が大きくなるような関係が成立していれば、基板の3つの層を構成する材料は特に限定されない。
【0044】
例えば、上側からSiO層/PolySi(多結晶シリコン:Polycrystalline silicon)層/SiO層からなる積層基板、上側からSiO層/Al層/SiO層からなる積層基板、SiO層/SiN層/SiO層からなる積層基板、或いは、SiO層/SiN層/Al層からなる積層基板等を出発材料として用いてもよい。
【符号の説明】
【0045】
10…インプリントモールド
11…ベース部
111…上面
12…第1の突出部
13…台状部分
131…上面
14…柱状部分
15…第2の突出部
20…SOIウェハ
21…第1のシリコン層
22…シリコン酸化層
23…第2のシリコン層
31…マスク層
32…マスクパターン
33…第1のレジストパターン
34…第2のレジストパターン
図1
図2
図3
図4