(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記重合中止剤は、ヨードビフェニル(iodobiphenyl)、ヨードフェノール(iodophenol)、ヨードアニリン(iodoaniline)、ヨードベンゾフェノン(iodobenzophenone)、2−メルカプトベンゾチアゾール(2−mercaptobenzothiazole)、2,2’−ジチオビスベンゾチアゾール(2,2’−dithiobisbenzothiazole)、N−シクロヘキシルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド(N−cyclohexylbenzothiazole−2−sulfenamide)、2−モルホリノチオベンゾチアゾール(2−morpholinothiobenzothiazole)、N−ジシクロヘキシルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド(N−dicyclohexylbenzothiazole−2−sulfenamide)、テトラメチルチウラムモノスルフィド(tetramethylthiuram monosulfide)、テトラメチルチウラムジスルフィド(tetramethylthiuram disulfide)、亜鉛ジメチルジチオカルバメート(Zinc dimethyldithiocarbamate)、亜鉛ジエチルジチオカルバメート(Zinc diethyldithiocarbamate)及びジフェニルジスルフィド(diphenyldisulfide)からなる群より選択される1種以上の化合物を含むことを特徴とする請求項3に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
前記ジヨード芳香族化合物は、ジヨードベンゼン、ジヨードナフタレン、ジヨードビフェニル、ジヨードビスフェノール、及びジヨードベンゾフェノンからなる群より選択された1種以上の化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
前記重合段階は、温度180ないし250℃及び圧力66.7mbarないし600mbarの初期反応条件で温度上昇及び圧力降下を行って、最終反応条件である温度270ないし350℃及び圧力0.0013mbarないし26.7mbarに変化させ、1ないし30時間進行することを特徴とする請求項1に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明はまた、前記ポリアリーレンスルフィドを成形して製造される製品を提供する。
【0013】
以下に、本発明の具体的な具現例によるポリアリーレンスルフィド、ポリアリーレンスルフィドの製造方法及び前記ポリアリーレンスルフィドを成形して製造される製品について、より詳細に説明する。
【0014】
本発明の一具現例によれば、ポリスチレンを標準として、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)で測定したポリアリーレンスルフィドの分子量分布において、最大ピーク分子量以上の分子量を有する第1ポリアリーレンスルフィド高分子鎖のピーク面積に対する、最大ピーク分子量以下の分子量を有する第2ポリアリーレンスルフィド高分子鎖のピーク面積比率が1.3以下であるポリアリーレンスルフィドが提供される。
【0015】
本発明者らは優れた加工性を示しながらも、バリなどを発生せずに、成形精密度が要求される製品を良好に成形することができるポリアリーレンスルフィドに関する研究を重ね、本発明を完成した。
従来に知られたポリアリーレンスルフィドで成形精密度が要求されるコンピュータ部品または電子製品などを成形すると、高い流れ性を有するポリアリーレンスルフィドが成形のための鋳型の隙にしみ込んで、成形された製品の周囲にバリ(flash)を発生させる等、問題点が指摘されてきた。つまり、このようなバリの除去のために別途にバリ除去工程を行わなければならず、成形工程が複雑になる短所が指摘されており、またこのようなバリの発生により製品の成形不良がもたらされるという恐れも指摘されてきた。
【0016】
参考に、上記において、「バリ(flash、burr)」とは、鋳型の被覆面で溶融樹脂が漏出され、材料が薄い膜形態に成形品にくっついているものを称する。このようなバリは、射出圧力が高すぎたり鋳型に問題があるなど、射出条件に関連して発生することもあり、根本的には樹脂の流れ性が非常に良い場合発生する。本明細書全体において、バリは後者の根本的な問題点によって発生する場合と定義する。
【0017】
一方、明示的な記載がない限り、本明細書全体において、「数平均分子量」は、ポリスチレンを標準物質として使用して、GPCで測定したポリアリーレンスルフィドの分子量分布曲線において、下記一般式1によって計算されたポリアリーレンスルフィドの平均分子量と定義する。
【0019】
但し、上記式において、wは、対象ポリアリーレンスルフィドの総重量であり、Miは、対象ポリアリーレンスルフィドに含まれている特定のポリアリーレンスルフィド高分子鎖の分子量を示し、Niは、対象ポリアリーレンスルフィドに含まれているポリアリーレンスルフィド高分子鎖の中で、前記Miの分子量を有するもののモル数を示す。
【0020】
また、本明細書全体において、「最大ピーク点」または「最大ピーク分子量」は、ポリスチレンを標準物質として使用して、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography、GPC)で測定したポリアリーレンスルフィドの分子量分布曲線において、対象ポリアリーレンスルフィドの中で最大電圧(ゲル浸透クロトグラフィー法を用いた分子量分布測定で、RI detectorで測定してmili voltageで表記される電圧)を示す高分子鎖の分子量と定義する。
【0021】
一方、本発明の発明者らは後述する方法によって、ポリスチレンを標準として、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」と命名する。)で測定したポリアリーレンスルフィドの分子量分布において、最大ピーク分子量以上の分子量を有する第1ポリアリーレンスルフィド高分子鎖(すなわち、GPCで測定した分子量分布曲線において、最大ピーク点を基準として、それより滞留時間(retention time)が短い高分子鎖)のピーク面積に対する、最大ピーク分子量以下の分子量を有する第2ポリアリーレンスルフィド高分子鎖(すなわち、GPCで測定した分子量分布曲線において、最大ピーク点を基準として、それより滞留時間が長い高分子鎖)のピーク面積比率がほとんど同一の範囲にあるポリアリーレンスルフィドを製造することができた。特に、最大ピーク分子量を基準に低分子量の高分子鎖の含有量が過多でなく、分子量分布曲線が単一のピーク(peak)の正規分布曲線と類似して示される、前記のようなポリアリーレンスルフィドは、優れた加工性を示しながらも、バリなどを発生せずに、よって、高い成形精密度が要求される製品を良好に成形できることを見つけて本発明を完成した。
【0022】
このような本発明の一具現例によるポリアリーレンスルフィドは、ポリスチレンを標準として、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)で測定したポリアリーレンスルフィドの分子量分布において、最大ピーク分子量以上の分子量を有する第1ポリアリーレンスルフィド高分子鎖のピーク面積に対する、最大ピーク分子量以下の分子量を有する第2ポリアリーレンスルフィド高分子鎖のピーク面積比率が1.3以下である。
【0023】
そして、前記ポリアリーレンスルフィドの分子量分布において、最大ピーク分子量以上の分子量を有する第1ポリアリーレンスルフィド高分子鎖のピーク面積に対する、最大ピーク分子量以下の分子量を有する第2ポリアリーレンスルフィド高分子鎖のピーク面積比率の下限値は1以上で、最大ピーク分子量以下の分子量を有する第2ポリアリーレンスルフィド高分子鎖のピーク面積比率は、前記第1ポリアリーレンスルフィド高分子鎖のピーク面積比率より同一であるかまたは大きく示される。
【0024】
一方、本発明の一実施例によるポリアリーレンスルフィドの分子量分布曲線を
図1及び
図2に示した。
図1及び
図2に示されているように、分子量分布図が正規分布図に近い形状を示すことが分かる。上述した具現例によるポリアリーレンスルフィドは、前記分子量分布において、分子量分布曲線が単一のピーク(peak)に示され、正規分布と類似の形態を示す。
【0025】
本発明者らの実験結果、このような分子量分布特性を有するポリアリーレンスルフィドは流れ性が適切で、以前に知らされたものと同等であるかまたはそれ以上の加工性を示し、これと同時に、ポリアリーレンスルフィドの成形中にバリ(flash)等を発生せず、高い成形精密度が要求されたり平たい形状を有する製品の良好な成形を可能にすることが確認された。
【0026】
これは、前記ポリアリーレンスルフィド中に、最大ピーク分子量よりも大きい分子量を有する第1ポリアリーレンスルフィド高分子鎖及び最大ピーク分子量よりも小さい分子量を有する第2ポリアリーレンスルフィド高分子鎖の含有量がほとんど同一で、ポリアリーレンスルフィドの流れ性が最適化でき、また、流れ性が大きくなりすぎて生じられる成形中のバリ(flash)の発生量も最小化できるものとみられる。
【0027】
したがって、上記のような具現例によるポリアリーレンスルフィドは優れた加工性を示し、バリなどを発生せずに、高い成形精密度が要求される各種電子製品などの良好な成形を可能にする。
【0028】
上述した具現例によるポリアリーレンスルフィドは、分子量分布図曲線が正規分布曲線に近く示されるが、より具体的に、このようなポリアリーレンスルフィドは、ポリスチレンを標準として、GPCで測定したポリアリーレンスルフィドの分子量分布において、第1ポリアリーレンスルフィド高分子鎖のピーク面積に対する第2ポリアリーレンスルフィド高分子鎖のピーク面積比率が1.2以下、さらに好ましくは、第1ポリアリーレンスルフィド高分子鎖のピーク面積に対する第2ポリアリーレンスルフィド高分子鎖のピーク面積比率が1.1以下であってもよい。
【0029】
このとき、前記第1ポリアリーレンスルフィド高分子鎖は、12,000ないし900,000の分子量を有し、第2ポリアリーレンスルフィド高分子鎖は、330ないし80,000の分子量を有する。
【0030】
そして、前記のようなポリアリーレンスルフィドは、数平均分子量が3,000ないし100,000であり、最大ピーク分子量が12,000ないし60,000である。また、前記数平均分子量は、好ましくは、3,000ないし100,000であってもよく、さらに好ましくは、3,000ないし50,000であってもよく、最も好ましくは、5,000ないし30,000であってもよい。
【0031】
また、前記のようなポリアリーレンスルフィドは、数平均分子量に対する重量平均分子量で定義される分散度(多分散指数、polydispersity index)が2.0ないし4.0で、比較的に均一な分散度を有するポリアリーレンスルフィドであってもよい。
前記のような数平均分子量、及び/又は分散度値を有するポリアリーレンスルフィドは、分子量または溶融粘度により多様な製品形態に製作されて応用される。
一方、上述した具現例によるポリアリーレンスルフィドは優れた熱的安定性を示すが、融点(Tm)が265ないし320℃、好ましくは268ないし290℃、さらに好ましくは270ないし285℃である。このように高い範囲に融点(Tm)を確保することによって、本発明のポリアリーレンスルフィドは、エンジニアリングプラスチックとして適用時、高強度及び向上した耐熱性などの優れた性能を発揮することができる。
【0032】
そして、上述した具現例によるポリアリーレンスルフィドは流れ性が良い。具体的に、上述した具現例によるポリアリーレンスルフィドを射出機内で溶融した後、最大射出圧
1471bar(1500kgf/cm
2)、射出充填量20ml、段階別射出速度30mm/
s、25mm/sで、射出圧力
1422bar(1450kgf/cm
2)、射出温度320℃下で、縦断面の流路は、直径6mm、最大高さ2.6mmの半円形であり、横断面の流路は、流路長さ150cmのスパイラル形態のスパイラル鋳型の射出機内から射出された射出物の長さが40cm以上に示され、流れ性に優れている。前記射出物の長さは50cm以上、さらに好ましくは60cm以上であってもよい。したがって、流れ性が適切で、追って成形時において作業性が容易な長所がある。
【0033】
一方、流れ性が良い樹脂の場合、一部の樹脂はバリ発生量が多いこともあるが、このようなバリ発生量が多い場合、上述したように、発生したバリを別途に除去する工程を行わなければならず、成形工程が複雑になり、またこのようなバリの発生により製品の成形不良をもたらすこともある。本発明の上述した具現例によるポリアリーレンスルフィドは、上述したスパイラル形態の射出機内から射出された射出物の質量に対するバリ発生量で定義される「バリ発生重量比率」が1重量%以下で、バリ発生量がほとんどない。
【0034】
したがって、精密度が要求されるコンピュータ部品または電子部品のための成形時にもバリ(flash、burr)等が生成されないなど、高い成形精密度が要求される製品の成形時に有用に用いることができる。
【0035】
また、上述した具現例によるポリアリーレンスルフィドは、高分子内に含まれているジスルフィド繰り返し単位は全体ポリアリーレンスルフィド重量に対して3重量%以下であってもよい。
【0036】
これは、重合中に追加的に投入される硫黄化合物の交換反応で生成されたものと思われる。
【0037】
一方、本発明の他の具現例によれば、ジヨード芳香族化合物と硫黄化合物を含む反応物を重合反応させる段階;及び前記重合反応段階を進行しながら、前記反応物に含まれている硫黄化合物100重量部に対して、0.01ないし30重量部の硫黄化合物を追加的に加える段階を含む、上記ポリアリーレンスルフィドの製造方法が提供される。
【0038】
前記製造方法では、反応中に微量の硫黄化合物が追加的に加えられることによって、高分子内にジスルフィド系結合が形成される。このようなジスルフィド系結合は、ポリアリーレンスルフィドに含まれている高分子鎖と平衡反応である硫黄交換反応を起こし続けながら、ポリアリーレンスルフィドに含まれている高分子鎖の分子量を概して均一化することができる。特に、前記平衡反応である硫黄交換反応により、全体的な反応物の重合程度が均一化できるため、大きすぎるまたは小さいすぎる分子量を有するポリアリーレンスルフィド高分子鎖の形成が抑制される。これによって、上述した分子量分布特性を有するポリアリーレンスルフィドが製造される。
【0039】
前記重合反応段階中に追加される硫黄化合物の量は、初期反応物に含まれている硫黄化合物100重量部に対して、上述した範囲内で、好ましくは0.1ないし20重量部、さらに好ましくは1.0ないし15重量部であってもよい。
【0040】
前記重合反応中の硫黄化合物の追加時点は重合が進行される条件であれば、時点の限定なしに投与できるが、好ましくは、前記重合が50ないし99%行われた時点で硫黄化合物を追加的に加えることができる。一方、本明細書全体において明示的な記載がない限り、「重合が50ないし99%行われた時点」というのは、「反応物のジヨード芳香族化合物が50ないし99重量%反応して消尽された時点」と定義する。このような時点に投与する場合、ポリアリーレンスルフィドの分子量分布が正規分布と近くに、より具体的に、ポリスチレンを標準として、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)で測定したポリアリーレンスルフィドの分子量分布において、最大ピーク分子量以上の分子量を有する第1ポリアリーレンスルフィド高分子鎖のピーク面積に対する、最大ピーク分子量以下の分子量を有する第2ポリアリーレンスルフィド高分子鎖のピーク面積比率が1.3以下に示される。また、このような硫黄化合物の追加段階は、重合段階中に一回のみ進行することもできるが、場合によっては一回以上、つまり、多段に進行することもできる。この場合、多段に追加される総硫黄化合物の量は、初期反応物に含まれている硫黄化合物100重量部に対して、0.01ないし30重量部、好ましくは0.1ないし20重量部、さらに好ましくは1.0ないし15重量部であってもよい。
【0041】
一方、上記のような製造方法で硫黄化合物を反応中に追加的に加える段階で重合中止剤を硫黄化合物と共に追加的に加えられるが、このとき追加される重合中止剤の含有量の範囲は、好ましくはジヨード芳香族化合物100重量部に対して0.01ないし10重量部で含まれる。重合中止剤の含有量が0.01重量部未満であると、重合中止剤の添加による効果が微々であり、10重量部を超える場合、分子量が低すぎるポリアリーレンスルフィドが製造される。
【0042】
このとき、前記重合中止剤は、重合される高分子に含まれるヨードグループを除去して重合を中止させることができる化合物であれば、その構成の限定はないが、好ましくは、ジフェニルスルフィド(diphenyl suldife)、ジフェニルエーテル(diphenyl ether)、ジフェニル(diphenyl)、ベンゾフェノン(benzophenone)、ジフェニルスルフィド(diphenyl suldife)、ジフェニルエーテル(diphenyl ether)、ジフェニル(diphenyl)、ベンゾフェノン(benzophenone)、モノヨードアリール化合物(monoiodoaryl compound)、ベンゾチアゾール(benzothiazole)類、ベンゾチアゾールスルフェンアミド(benzothiazolesulfenamide)類、チウラム(thiuram)類、ジチオカルバメート(dithiocarbamate)類及びジフェニルジスルフィドからなる群より1種以上であってもよい。さらに好ましくは、前記重合中止剤は、ヨードビフェニル(iodobiphenyl)、ヨードフェノール(iodophenol)、ヨードアニリン(iodoaniline)、ヨードベンゾフェノン(iodobenzophenone)、2−メルカプトベンゾチアゾール(2−mercaptobenzothiazole)、2,2’−ジチオビスベンゾチアゾール(2,2’−dithiobisbenzothiazole)、N−シクロヘキシルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド(N−cyclohexylbenzothiazole−2−sulfenamide)、2−モルホリノチオベンゾチアゾール(2−morpholinothiobenzothiazole)、N−ジシクロヘキシルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド(N−dicyclohexyl−2−benzothiazolesulfenamide)、テトラメチルチウラムモノスルフィド(tetramethylthiuram monosulfide)、テトラメチルチウラムジスルフィド(tetramethylthiuram disulfide)、亜鉛ジメチルジチオカルバメート(Zinc dimethyldithiocarbamate)、亜鉛ジエチルジチオカルバメート(Zinc diethyldithiocarbamate)及びジフェニルジスルフィド(diphenyldisulfide)からなる群より選択される1種以上であってもよい。
【0043】
さらに好ましくは、ジフェニルスルフィド(diphenyl suldife)、ジフェニルエーテル(diphenyl ether)、またはジフェニル(diphenyl)であってもよいが、このような重合中止剤は、フェニル間の作用基が電子供与体(electron donor)の機能を果たし、重合反応の反応性がさらに高く示される。
【0044】
一方、硫黄化合物の追加段階が重合段階中一回以上である場合、前記重合中止剤は、最初の硫黄化合物の追加段階のみで投与することもでき、場合によっては、一回以上の硫黄化合物の追加段階で毎度共に投与することもできる。
【0045】
一方、上記のようなポリアリーレンスルフィドの重合反応に使用可能なジヨード芳香族化合物は、ジヨードベンゼン(diiodobenzene;DIB)、ジヨードナフタレン(diiodonaphthalene)、ジヨードビフェニル(diiodobiphenyl)、ジヨードビスフェノール(diiodobisphenol)、及びジヨードベンゾフェノン(diiodobenzophenone)からなる群より選択される1種以上を使用することができるが、これに限定されず、このような化合物にアルキル原子基(alkyl group)やスルホン原子基(sulfone group)などが置換基としてくっついていたり、アリール化合物に酸素や窒素などの原子を含む形態のジヨード芳香族化合物も使用することができる。このとき、前記ジヨード芳香族化合物は、ヨード原子がくっついた位置によって様々なジヨード化合物の異性体(isomer)があるが、このうち、最も好ましいのは、pDIB(パラジヨードベンゼン)、2,6−ジヨードナフタレン、またはp,p’−ジヨードビフェニルのように、分子の両端に最も遠い距離で対称するようにヨードがくっついている化合物である。
【0046】
そして、使用可能な硫黄化合物の形態には制限がない。普通、硫黄は、常温で原子8個が連結された環状(cyclooctasulfur;S8)に存在するが、そうではなくても商業的に使用可能な固体状態の硫黄であれば、どのような形態でも可能である。
【0047】
また、前記ジヨード芳香族化合物は、固体硫黄対比0.9モル以上投入することができる。また、前記硫黄化合物は、ジヨード芳香族化合物と硫黄化合物とを反応させて製造されたポリアリーレンスルフィドの重量対比15ないし30重量%の範囲で含まれるのが好ましい。前記範囲内に硫黄を添加すると、耐熱性及び耐化学性が増加し、同時に物理的強度などの物性も優れたポリアリーレンスルフィドを合成することができる。
【0048】
一方、上記のような重合段階は、ジヨード芳香族化合物、硫黄化合物、及び重合中止剤を含む反応物の重合が開示される条件であれば、重合反応条件はその構成に限定はない。好ましくは、昇温減圧反応条件で重合反応を進行することができるが、この場合、温度180ないし250℃及び圧力
66.7mbarないし600mbar(50ないし450torr
)の初期反応条件で温度上昇及び圧力降下を行って、最終反応条件である温度270ないし350℃及び圧力
0.0013mbarないし26.7mbar(0.001ないし20torr
)に変化させ、1ないし30時間進行することができる。
【0049】
このような昇温減圧条件で重合反応を進行する場合、優れた熱的安定性を示し、再活用のために再溶融する場合にも、樹脂の初期溶融粘度に対する熱処理後の溶融粘度の変化値で定義される溶融粘度の変化率が0以上に示され、機械的物性が再活用前と比較して、同等以上に示される。
【0050】
一方、上述した具現例によるポリアリーレンスルフィドの製造方法は、前記重合段階前に、ジヨード芳香族化合物、硫黄化合物及び重合中止剤を溶融混合する段階を追加的に含むことができる。上述した重合段階は、有機溶媒の不存在下で進行される溶融重合反応段階であるが、このような溶融重合反応の進行のために、ジヨード芳香族化合物を含む反応物を予め溶融混合した後、重合反応を進行することができる。
【0051】
このような溶融混合は、上述した反応物が全て溶融混合できる条件であれば、その構成の限定はないが、好ましくは160ないし400℃の温度で、さらに好ましくは170ないし350℃の温度で、最も好ましくは250ないし320℃の温度で進行されてもよい。
【0052】
このように重合前に溶融混合段階を進行して、溶融重合反応がより容易に行われる。
【0053】
一方、上述した具現例によるポリアリーレンスルフィドの製造方法において、重合反応はニトロベンゼン系触媒の存在下で進行される。また、上述したように、重合反応前に溶融混合段階を経る場合、前記触媒は溶融混合段階で追加される。重合反応において、ニトロベンゼン系触媒の存在下でポリアリーレンスルフィドを重合する場合、触媒の不存在下で重合する場合よりも高い融点を有するポリアリーレンスルフィドを製造することができるという事実を見つけた。ポリアリーレンスルフィドの融点が低い場合、製品の耐熱性に問題があるため、耐熱性が必要なポリアリーレンスルフィドの製造のためにはニトロベンゼン系触媒の存在下で重合反応を進行することができる。ニトロベンゼン系触媒の種類としては、1,3−ジヨード−4−ニトロベンゼン、または1−ヨード−4−ニトロベンゼンなどが挙げられるが、上述した例に限定されるのではない。
【0054】
そして、上述した方法によって製造されたポリアリーレンスルフィドは、ポリスチレンを標準として、GPCで測定した分子量分布において、最大ピーク分子量以上の分子量を有する第1ポリアリーレンスルフィド高分子鎖のピーク面積に対する、最大ピーク分子量以下の分子量を有する第2ポリアリーレンスルフィド高分子鎖のピーク面積比率が1.3以下である。
【0055】
また、このような方法によって製造されたポリアリーレンスルフィドの第1ポリアリーレンスルフィド高分子鎖の含有量と、第2ポリアリーレンスルフィド高分子鎖の含有量との差、最大ピーク分子量、第1及び第2ポリアリーレンスルフィド高分子鎖の分子量、数平均分子量、数平均分子量に対する重量平均分子量で定義される分散度、融点などは、上述したポリアリーレンスルフィドの具現例に言及したものと同様である。
【0056】
一方、本発明のまた他の具現例によれば、前記ポリアリーレンスルフィドを成形して製造される製品を提供することができる。
【0057】
前記製品は、成形品、フィルム、シート、または繊維形態であってもよい。特に、成形品の場合、特に高い成形精密度が要求されるコネクタ系成形品、電気用成形品、極細電線被覆用品、超薄フィルム成形品などである。
【0058】
前記ポリアリーレンスルフィドは、射出成形、圧出成形などの方法によって、各種成形品に容易に加工することができる。このような成形品は、射出成形品、圧出成形品、ブロー成形品である。
【0059】
射出成形する場合の金型の温度は、結晶化の観点で、30℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましく、試験片の変形の観点では、150℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましく、130℃以下がさらに好ましい。また、これら物品は、電気・電子部品、建築部材、自動車部品、機械部品、日用品などとして用いることができる。
【0060】
フィルム、またはシートとしては、未延伸、1軸延伸、2軸延伸などの各種フィルム、シートに製造することができる。繊維としては、未延伸糸、延伸糸、超延伸糸など各種繊維とし、織物、編物、不織布(スパンボンド、メルトブロー、ステープル)、ロープ、ネットとして用いることができる。
【実施例】
【0061】
本発明を下記実施例でより詳細に説明する。但し、下記の実施例は、本発明を例示するだけのものであって、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるのではない。一方、下記でポリアリーレンスルフィドは「PAS」と記載する。
【0062】
[実施例]PASの重合
1.実施例1のPAS重合
ジヨード芳香族化合物400gのパラジヨードベンゼン、34gの結晶状の硫黄と、1.0gの1,3−ジヨード−4−ニトロベンゼンを含む反応物を、180℃で溶融混合した。前記溶融混合物を180℃から340℃まで昇温及び常圧から
13mbar(10torr
)まで減圧しながら、重合反応した。重合が始まってから4時間が過ぎた時点で硫黄0.5gを投与した後、1時間さらに重合反応を進行して、高分子を得た。
生成された高分子は、M.V.914ポアズ、Tm281℃であった。
【0063】
2.実施例2のPAS重合
ジヨード芳香族化合物400gのパラジヨードベンゼン、34gの結晶状の硫黄と、1.0gの1,3−ジヨード−4−ニトロベンゼンを含む反応物を、180℃で溶融混合した。前記混合された混合物を180℃から340℃まで昇温及び常圧から
13mbar(10torr
)まで減圧しながら、重合反応した。重合が始まってから4時間が過ぎた時点で硫黄0.5gを投与した後、重合が始まってから5時間が過ぎた時点で硫黄0.5gを追加的に投与した後、1時間さらに重合反応を進行して、高分子を得た。
【0064】
生成された高分子は、M.V.751ポアズ、Tm282℃であった。
【0065】
3.実施例3のPAS重合
ジヨード芳香族化合物400gのパラジヨードベンゼン、34gの結晶状の硫黄と、1.0gの1,3−ジヨード−4−ニトロベンゼンを含む反応物を、180℃で溶融混合した。前記混合された混合物を180℃から340℃まで昇温及び常圧から
13mbar(10torr
)まで減圧しながら、重合反応した。重合が始まってから4時間が過ぎた時点で硫黄0.5gを投与した後、重合が始まってから5時間が過ぎた時点で硫黄0.5gを追加的に投与した後、重合が始まってから6時間が過ぎた時点で硫黄0.5gを追加的に投与した後、1時間さらに重合反応を進行して、高分子を得た。
【0066】
生成された高分子は、M.V.1465ポアズ、Tm281℃であった。
【0067】
4.実施例4のPAS重合
ジヨード芳香族化合物400gのパラジヨードベンゼン、34gの結晶状の硫黄と、1.0gの1,3−ジヨード−4−ニトロベンゼンを含む反応物を、180℃で溶融混合した。前記混合された混合物を180℃から340℃まで昇温及び常圧から
13mbar(10torr
)まで減圧しながら、重合反応した。重合が始まってから5時間が過ぎた時点で硫黄0.5gを投与した後、1時間さらに重合反応を進行して、高分子を得た。
【0068】
生成された高分子は、M.V.1659ポアズ、Tm281℃であった。
【0069】
5.実施例5のPAS重合
ジヨード芳香族化合物400gのパラジヨードベンゼン、34gの結晶状の硫黄と、1.0gの1,3−ジヨード−4−ニトロベンゼンを含む反応物を、180℃で溶融混合した。前記混合された混合物を180℃から340℃まで昇温及び常圧から
13mbar(10torr
)まで減圧しながら、重合反応した。重合が始まってから5時間が過ぎた時点で硫黄0.5gを投与した後、重合が始まってから6時間が過ぎた時点で硫黄0.5gを追加的に投与した後、1時間さらに重合反応を進行して、高分子を得た。
【0070】
生成された高分子は、M.V.2660ポアズ、Tm280℃であった。
【0071】
6.実施例6のPAS重合
ジヨード芳香族化合物400gのパラジヨードベンゼン、34gの結晶状の硫黄と、1.0gの1,3−ジヨード−4−ニトロベンゼンを含む反応物を、180℃で溶融混合した。前記混合された混合物を180℃から340℃まで昇温及び常圧から
13mbar(10torr
)まで減圧しながら、重合反応した。重合が始まってから5時間が過ぎた時点で硫黄0.5gを投与した後、重合が始まってから6時間が過ぎた時点で硫黄0.5gを追加的に投与した後、重合が始まってから7時間が過ぎた時点で硫黄0.5gを追加的に投与した後、1時間さらに重合反応を進行して、高分子を得た。
【0072】
生成された高分子は、M.V.2473ポアズ、Tm281℃であった。
【0073】
7.実施例7のPAS重合
ジヨード芳香族化合物400gのパラジヨードベンゼン、34gの結晶状の硫黄と、1.0gの1,3−ジヨード−4−ニトロベンゼンを含む反応物を、180℃で溶融混合した。前記混合された混合物を180℃から340℃まで昇温及び常圧から
13mbar(10torr
)まで減圧しながら、重合反応した。重合が始まってから6時間が過ぎた時点で硫黄0.5gを投与した後、1時間さらに重合反応を進行して、高分子を得た。
【0074】
生成された高分子は、M.V.1610ポアズ、Tm281℃であった。
【0075】
8.実施例8のPAS重合
ジヨード芳香族化合物400gのパラジヨードベンゼン、34gの結晶状の硫黄と、1.0gの1,3−ジヨード−4−ニトロベンゼンを含む反応物を、180℃で溶融混合した。前記混合された混合物を180℃から340℃まで昇温及び常圧から
13mbar(10torr
)まで減圧しながら、重合反応した。重合が始まってから6時間が過ぎた時点で硫黄0.5gを投与した後、重合が始まってから7時間が過ぎた時点で硫黄0.5gを投与した後、1時間さらに重合反応を進行して、高分子を得た。
【0076】
生成された高分子は、M.V.2530ポアズ、Tm280℃であった。
【0077】
9.実施例9のPAS重合
ジヨード芳香族化合物400gのパラジヨードベンゼン、34gの結晶状の硫黄と、1.0gの1,3−ジヨード−4−ニトロベンゼンを含む反応物を、180℃で溶融混合した。前記混合された混合物を180℃から340℃まで昇温及び常圧から
13mbar(10torr
)まで減圧しながら、重合反応した。重合が始まってから6時間が過ぎた時点で硫黄0.5gを投与した後、重合が始まってから7時間が過ぎた時点で硫黄0.5gを投与した後、重合が始まってから8時間が過ぎた時点で硫黄0.5gを投与した後、1時間さらに重合反応を進行して、高分子を得た。
【0078】
生成された高分子は、M.V.2622ポアズ、Tm280℃であった。
【0079】
上述した実施例の重合反応の反応物及び添加量、及び重合中に追加的に投与される硫黄化合物の投与量及び投与時点を下記表1に示した。一方、上記実施例の重合反応時の重合中止剤は、最初の硫黄投与時点で硫黄と共に下記表1に示した量と同様の量で投与した。
【0080】
[比較例]PASの重合
1.比較例1のPAS重合
Celaneseで製造されたPASを準備した。準備された高分子は、溶融粘度(以下、「M.V.」)2103ポアズ(Poise)、融点(以下、「Tm」)282℃であった。
【0081】
2.比較例2のPAS重合
Fortron(0205P4 Grade)のPASを準備した。準備された高分子は、M.V.628ポアズ、Tm282℃であった。
【0082】
3.比較例3のPAS重合
DeyangのPASを準備した。準備された高分子は、M.V.2443ポアズ、Tm281℃であった。
【0083】
[実験例]比較例及び実施例のPASの物性測定
1.分子量分析
測定しようとする試料は、1−クロロナフタレン、210度、6時間溶解、1wt%の濃度で溶解過程を経た後、ポリスチレン標準、210度程度で測定した。このとき、分子量測定装備であるGPCは「Pl gel 220」であり、Detectorは RI detectorが使用され、ColumnはPLgel 5μm Mixed−Dx3 EAを使用した。Flow rateは 1ml/minであり、PumpはPL Gelが使用された。溶媒量は5ml、試料量は0.01g投入して測定した。
【0084】
2.分子量分布の計算
上記で分析された実施例及び比較例のGPC測定を通じる分子量の分布を分析して、最大ピーク分子量、数平均分子量、第1PAS高分子鎖含有量、つまり、ポリアリーレンスルフィドの最大ピーク点を基準として、それより滞留時間(retention time)が短い、つまり、最大ピーク点の分子量よりも大きい高分子鎖のピーク面積、及び、第2PAS高分子鎖の含有量、つまり、ポリアリーレンスルフィドの最大ピーク点を基準として、それより滞留時間(retention time)が長い、つまり、最大ピーク点の分子量よりも小さい高分子鎖のピーク面積を、下記表2に示した。
【0085】
一方、実施例4によるポリアリーレンスルフィドの分子量分布曲線を
図1に、実施例7によるPASの分子量分布曲線を
図2に示した。
図1及び
図2に示されているように、実施例によるポリアリーレンスルフィドの分子量分布曲線は、単一のピークの分布曲線で、正規分布曲線と類似の形態を示すことが分かる。このとき、
図1及び
図2の最大ピーク値は、ポリスチレンを標準として、分子量を検定(calibration)する前の滞留時間値を示す。
【0086】
3.溶融粘度の分析
比較例及び実施例により合成された高分子の物性分析において、溶融粘度(melt viscosity、以下、「M.V.」)は、回転円板粘度計(rotating disk viscometer)で300℃で測定した。Frequency sweep方法で測定するにおいて、angular frequencyを0.6から500rad/sまで測定し、1.84での粘度を溶融粘度と定義した。値は、表3に示す通りである。
【0087】
4.融点(Tm)の測定
時差走査熱量分析器(Differential Scanning Calorimeter;DSC)を用いて、30℃から320℃まで10℃/minの速度で昇温後、30℃まで冷却後に、再び30℃から320℃まで10℃/minの速度で昇温しながら、融点を測定した。測定値は、表3に示す通りである。
【0088】
5.ジスルフィドの重量%の分析
少量の試料(約2mg)をAQF(Automatic Quick Furnace)で1000℃で燃焼させて、硫酸ガスを吸収溶液(過酸化水素水)で捕集、イオン化した後、IC(Ion Chromatography)測定法を用いて、コラムで硫黄イオンを分離し、硫黄イオン標準物質(K
2SO
4)で硫黄含有量を定量した。理論硫黄含有量対比分析した硫黄含有量の差を全てジスルフィド(disulfide)で計算し、結果を表3に示した。
【0089】
6.高分子の流れ性の測定(スパイラルテスト)
反応重合された高分子の流れを測定するために普遍的に使用されるスパイラルテスト(Spiral test)方法が用いられた。下記のテスト進行のために、全ての重合試料に対し、重合反応器から反応器の外部に出る間、直径1〜2mm、長さ2〜4mm程度の一定のペレットタイプの形態に切断し、射出機内に最大射出圧、射出充填量、射出速度、射出時の圧力及び保圧の大きさを一定にし、射出時の温度は、バレル(barrel)基準、320℃に固定した。具体的に、上記実施例及び比較例によるポリアリーレンスルフィドを射出機内で溶融させた後、最大射出圧
1471bar(1500kgf/cm
2)、射出充填量20ml、段階別射出速度30mm/s
、25mm/sで、射出圧力
1422bar(1450kgf/cm
2)、射出温度320℃下で、縦断面の流路は、直径6mm、最大高さ2.6mmの半円形であり、横断面の流路は、流路長さ150cmのスパイラル形態のスパイラル鋳型の射出機内で射出した後、スパイラル金型から分離された射出物の最終長さを測定し、測定値は表3に示す通りである。射出物の最終長さは、下記表3の「射出物の長さ」と記載した。
【0090】
7.成形品の製作時に形成されたバリ発生量の測定
一方、比較例及び実施例の高分子を用いて、上記に記載されたスパイラルテスト(spiral test)方法を用い、バリの量は、スパイラルテストに使用されたモールドの主な形態を除いて、モールドの前板と後板との間に割り込んだ薄い部分を切断した後、測定され、重量で下記表3に示した。
【0091】
一方、前記スパイラルテストで、金型から分離された射出物の質量に対するバリ発生量を「バリ発生重量比率」と定義し、これを下記表3に示した。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
【表3】
【0095】
上記表2及び表3から分かるように、本願の実施例によるPASの場合、ポリスチレンを標準として、GPCで測定したPASの分子量分布において、第1PAS高分子鎖のピーク面積に対する、第2PASピーク面積比率が1.3以下であり、射出物の長さが40cm以上で、流れ性も良好であって、作業性が容易であるものと思われ、またバリ発生量がほとんどないか、あっても極微量である。
【0096】
具体的に、実施例におけるPASは、スパイラルテストによる射出物の質量に対するバリ発生量で定義されるバリ発生重量比率も全て1重量%以下に示されるなど、流れ性は改善された反面、バリ発生量は最小化したことが分かった。
【0097】
反面、比較例のPASの場合、第1及び第2PAS高分子鎖のピーク面積比率がいずれも1.4以上で、相対的に分子量が低い高分子鎖の含有量が過多であり、またこれにより、射出物の長さにおいて本願のものと類似していたりまたは若干大きい値を示すが、これによるバリ発生量は、大きくは本願の実施例によるPASよりも60倍以上である。したがって、このような実施例と比較例の結果から、本発明によるポリアリーレンスルフィド及びその製造方法は、高い成形性が要求される精密部品の製造に関する産業分野に幅広く応用されると期待される。