特許第5938037号(P5938037)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5938037尿素変性ノボラック型フェノール樹脂の製造方法及びそれによって得られた尿素変性ノボラック型フェノール樹脂並びにそれを用いて得られるレジンコーテッドサンド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5938037
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】尿素変性ノボラック型フェノール樹脂の製造方法及びそれによって得られた尿素変性ノボラック型フェノール樹脂並びにそれを用いて得られるレジンコーテッドサンド
(51)【国際特許分類】
   C08G 14/08 20060101AFI20160609BHJP
   B22C 1/22 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   C08G14/08
   B22C1/22 L
【請求項の数】14
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-520561(P2013-520561)
(86)(22)【出願日】2012年6月13日
(86)【国際出願番号】JP2012065068
(87)【国際公開番号】WO2012173129
(87)【国際公開日】20121220
【審査請求日】2015年2月4日
(31)【優先権主張番号】特願2011-132053(P2011-132053)
(32)【優先日】2011年6月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078190
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 三千雄
(74)【代理人】
【識別番号】100115174
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 正博
(72)【発明者】
【氏名】千田 芳也
【審査官】 赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−152045(JP,A)
【文献】 特開昭58−142907(JP,A)
【文献】 特開平03−265619(JP,A)
【文献】 特開平03−265618(JP,A)
【文献】 特開平04−345612(JP,A)
【文献】 特開2003−292558(JP,A)
【文献】 特開平04−292612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 14/08
B22C 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール系化合物と、アルデヒド類と、尿素若しくはメチロール尿素とを共縮合せしめて、尿素変性ノボラック型フェノール樹脂を製造するに際して、
前記フェノール系化合物と前記アルデヒド類とを接触させて、それらの反応を進行せしめる一方、前記尿素若しくはメチロール尿素を、前記共縮合のために予定された使用量に到達するまで、反応系に、連続的に又は断続的に少しづつ添加して、その添加される尿素若しくはメチロール尿素を、前記フェノール系化合物及び前記アルデヒド類に順次共縮合させるようにしたことを特徴とする尿素変性ノボラック型フェノール樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記尿素若しくはメチロール尿素が、水溶液又は懸濁液の形態において、反応系に添加せしめられる請求項1に記載の尿素変性ノボラック型フェノール樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記尿素若しくはメチロール尿素が、一定割合の添加速度にて、反応系に連続的に添加される請求項1又は請求項2に記載の尿素変性ノボラック型フェノール樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記尿素若しくはメチロール尿素の断続的な添加が、一定の間隔を空けて、一定量毎において実施される請求項1又は請求項2に記載の尿素変性ノボラック型フェノール樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記尿素若しくはメチロール尿素が、固体である請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の尿素変性ノボラック型フェノール樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記フェノール系化合物と前記アルデヒド類とを初期縮合させた後、その初期縮合物に対して、前記尿素若しくはメチロール尿素の添加が、開始される請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の尿素変性ノボラック型フェノール樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記初期縮合物中に残留するアルデヒド類の量が、前記尿素若しくはメチロール尿素の前記共縮合のために予定された使用量に等しくなったときに、該尿素若しくはメチロール尿素の添加が開始される請求項6に記載の尿素変性ノボラック型フェノール樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記尿素変性ノボラック型フェノール樹脂の熱分解に伴う吸熱量が5〜200J/gであることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の尿素変性ノボラック型フェノール樹脂の製造方法
【請求項9】
前記尿素変性ノボラック型フェノール樹脂、その示差走査熱量計による熱分解に伴う吸熱量の測定において、280℃〜400℃の範囲内に吸熱ピークを有することを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載の尿素変性ノボラック型フェノール樹脂の製造方法
【請求項10】
フェノール(P)と、アルデヒド類(F)と、尿素若しくはメチロール尿素(U)とを、モル比[F/(P+U)]が0.50〜0.75となる割合において共縮合せしめてなり、重量平均分子量(Mw)が550〜2500である尿素変性ノボラック型フェノール樹脂であって、その熱分解に伴う吸熱量が5〜200J/gであり、且つその示差走査熱量計による熱分解に伴う吸熱量の測定において、280℃〜400℃の範囲内に吸熱ピークを有し、更にコーンプレート粘度計を用いて160℃で測定された溶融粘度が、500〜4500mPa・sであることを特徴とする尿素変性ノボラック型フェノール樹脂。
【請求項11】
尿素若しくはメチロール尿素(U)によるフェノール(P)の尿素変性率:U/(U+P)が5〜50%であることを特徴とする請求項10に記載の尿素変性ノボラック型フェノール樹脂。
【請求項12】
[フェノール−CH2 −NHCO−]結合数、[−NH−CH2 −NH−]結合数及び「フェノール−CH2 −フェノール」結合数の合計に占める[フェノール−CH2 −NHCO−]結合数の割合が、25〜35%である請求項10又は請求項11に記載の尿素変性ノボラック型フェノール樹脂。
【請求項13】
請求項1乃至請求項の何れか1項に記載の製造方法により得られた尿素変性ノボラック型フェノール樹脂を用いて、耐火性粒子を被覆してなることを特徴とするレジンコーテッドサンドの製造方法
【請求項14】
請求項10乃至請求項12の何れか1項に記載の尿素変性ノボラック型フェノール樹脂を用いて、耐火性粒子を被覆してなることを特徴とするレジンコーテッドサンドの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿素変性ノボラック型フェノール樹脂の製造方法及びそれによって得られた尿素変性ノボラック型フェノール樹脂並びにそれを用いて得られるレジンコーテッドサンドに係り、特に、主としてレジンコーテッドサンドの粘結材乃至は被覆樹脂として好適に用いられる、尿素変性されたノボラック型フェノール樹脂と、その有効な製造方法、更には、そのようなノボラック型フェノール樹脂を用いて得られるレジンコーテッドサンドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、窒素化合物にて与えられる特異的な作用や機能に加えて、コスト等の工業的理由から、尿素やメラミン等にて変性されたフェノール樹脂が、広汎に使用されてきている。特に、尿素は、変性フェノール樹脂を製造する際に、フェノールに比べて、反応速度が大きく、また得られる変性樹脂の難燃性が改善される等の利点があるところから、多くの工業分野で、広く用いられている。
【0003】
ところで、尿素変性されたフェノール樹脂に関して、レゾール型フェノール樹脂を製造する際に、フェノールとホルムアルデヒドに尿素を加えて反応させ、尿素変性レゾール型フェノール樹脂を得る手法が知られており、例えば、特開2009−84382号公報において、その一例が明らかにされている。しかしながら、そのようにして得られる尿素変性レゾール型フェノール樹脂にあっては、吸湿性の問題に加えて、成形時に発生する縮合水に起因するクラックや、ホルムアルデヒドの発生による臭気等が問題となっており、実用上において、その使用は困難なものであった。
【0004】
一方、酸性条件下において、フェノール系化合物とホルムアルデヒドとを反応させて製造されるノボラック型フェノール樹脂の場合において、反応系に尿素を存在せしめて、それらフェノール系化合物やホルムアルデヒドと共に、尿素を反応させて、共縮合樹脂を製造する際、それら三成分の共縮合反応がスムーズに進行せず、特に、用いられるフェノール系化合物と尿素の合計量に対する尿素の割合が10重量%以上となるような、尿素の使用量を多くして、尿素にて高度に変性された尿素変性ノボラック型フェノール樹脂を製造しようとすると、フェノール系化合物と尿素のホルムアルデヒドに対する反応速度が異なるために、尿素単独でのホルムアルデヒドとの重合(縮合)を誘発して、ゲル化が惹起され、目的とする共縮合樹脂の製造自体が困難となるものであった。また、そのような反応において、仮に樹脂化が出来たとしても、その樹脂化生成物の粘度が上昇して、得られる尿素変性樹脂の望ましい性質を発揮させることは困難であった。
【0005】
なお、特開昭58−37020号公報においては、ノボラック型フェノール樹脂の製造工程において尿素を用いる技術が明らかにされているが、そこでは、ホルムアルデヒドとフェノール類との反応終了後において、その反応生成物に尿素を添加して、生成したノボラック型フェノール樹脂に残存する未反応のホルムアルデヒドと尿素とを反応させることにより、ホルムアルデヒドによる臭気を抑制することが、その主たる目的とされているに過ぎない。この特開昭58−37020号公報には、尿素変性ノボラック型フェノール樹脂を得るための有効な手法について、何等明らかにされてはいないのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−84382号公報
【特許文献2】特開昭58−37020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、取り扱いの容易な、低粘度を有する尿素変性ノボラック型フェノール樹脂を、安定的に製造することの出来る方法を提供することにあり、また、多量の尿素にて変性されたノボラック型フェノール樹脂を、有利に製造し得る手法を提供することにあり、更に、優れた鋳型特性を発揮せしめ得るレジンコーテッドサンドを提供することにもある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、本発明にあっては、上記した課題又は明細書全体の記載や図面から把握される課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものであるが、また、以下に記載の各態様は、任意の組み合わせにおいても、採用可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載並びにそこに開示の発明思想に基づいて認識され得るものであることが、理解されるべきである。
【0009】
(1) フェノール系化合物と、アルデヒド類と、尿素若しくはメチロール尿素とを共縮合せしめて、尿素変性ノボラック型フェノール樹脂を製造するに際して、前記フェノール系化合物と前記アルデヒド類とを接触させて、それらの反応を進行せしめる一方、前記尿素若しくはメチロール尿素を、前記共縮合のために予定された使用量に到達するまで、反応系に、連続的に又は断続的に少しづつ添加して、その添加される尿素若しくはメチロール尿素を、前記フェノール系化合物及び前記アルデヒド類に順次共縮合させるようにしたことを特徴とする尿素変性ノボラック型フェノール樹脂の製造方法。
(2) 前記尿素若しくはメチロール尿素が、水溶液又は懸濁液の形態において、反応系に添加せしめられる前記態様(1)に記載の尿素変性ノボラック型フェノール樹脂の製造方法。
(3) 前記尿素若しくはメチロール尿素が、一定割合の添加速度にて、反応系に連続的に添加される前記態様(1)又は前記態様(2)に記載の尿素変性ノボラック型フェノール樹脂の製造方法。
(4) 前記尿素若しくはメチロール尿素の断続的な添加が、一定の間隔を空けて、一定量毎において実施される前記態様(1)又は前記態様(2)に記載の尿素変性ノボラック型フェノール樹脂の製造方法。
(5) 前記尿素若しくはメチロール尿素が、固体である前記態様(1)乃至前記態様(4)の何れか1つに記載の尿素変性ノボラック型フェノール樹脂の製造方法。
(6) 前記フェノール系化合物と前記アルデヒド類とを初期縮合させた後、その初期縮合物に対して、前記尿素若しくはメチロール尿素の添加が、開始される前記態様(1)乃至前記態様(5)の何れか1つに記載の尿素変性ノボラック型フェノール樹脂の製造方法。
(7) 前記初期縮合物中に残留するアルデヒド類の量が、前記尿素若しくはメチロール尿素の前記共縮合のために予定された使用量に等しくなったときに、該尿素若しくはメチロール尿素の添加が開始される前記態様(6)に記載の尿素変性ノボラック型フェノール樹脂の製造方法。
(8) 前記態様(1)乃至前記態様(7)の何れか1つに記載の製造方法により得られた尿素変性ノボラック型フェノール樹脂。
(9) フェノール系化合物と、アルデヒド類と、尿素若しくはメチロール尿素とを共縮合せしめることによって、製造されてなることを特徴とする尿素変性ノボラック型フェノール樹脂。
(10) フェノール系化合物と、アルデヒド類と、尿素若しくはメチロール尿素とを共縮合せしめることによって、製造されてなる尿素変性ノボラック型フェノール樹脂であって、その熱分解に伴う吸熱量が5〜200J/gであることを特徴とする前記態様(9)に記載の尿素変性ノボラック型フェノール樹脂。
(11) フェノール系化合物と、アルデヒド類と、尿素若しくはメチロール尿素とを共縮合せしめることによって、製造されてなる尿素変性ノボラック型フェノール樹脂であって、その示差走査熱量計による熱分解に伴う吸熱量の測定において、280℃〜400℃の範囲内に吸熱ピークを有することを特徴とする前記態様(9)又は前記態様(10)に記載の尿素変性ノボラック型フェノール樹脂。
(12) フェノール系化合物(P)と、アルデヒド類(F)と、尿素若しくはメチロール尿素(U)のモル比:F/(P+U)が、0.50〜0.75であることを特徴とする前記態様(9)乃至前記態様(11)の何れか1つに記載の尿素変性ノボラック型フェノール樹脂。
(13) コーンプレート粘度計を用いて160℃で測定された溶融粘度が、500〜4500mPa・sであることを特徴とする前記態様(9)乃至前記態様(12)の何れか1つに記載の尿素変性ノボラック型フェノール樹脂。
(14) 重量平均分子量(Mw)が、550〜2500であることを特徴とする前記態様(9)乃至前記態様(13)の何れか1つに記載の尿素変性ノボラック型フェノール樹脂。
(15) 尿素若しくはメチロール尿素(U)によるフェノール系化合物(P)の尿素変性率:U/(U+P)が5〜50%であることを特徴とする前記態様(9)乃至前記態様(14)の何れか1つに記載の尿素変性ノボラック型フェノール樹脂。
(16) 前記態様(1)乃至前記態様(7)の何れか1つに記載の製造方法により得られた尿素変性ノボラック型フェノール樹脂を用いて、耐火性粒子を被覆してなることを特徴とするレジンコーテッドサンド。
(17) 前記態様(9)乃至前記態様(15)の何れか1つに記載の尿素変性ノボラック型フェノール樹脂を用いて、耐火性粒子を被覆してなることを特徴とするレジンコーテッドサンド。
【発明の効果】
【0010】
このような本発明に従う尿素変性ノボラック型フェノール樹脂の製造方法にあっては、ノボラック型フェノール樹脂を得るためのフェノール系化合物とアルデヒド類との反応系に、それらと共縮合することとなる尿素又はメチロール尿素が、一挙に乃至は一括して添加されるものではなく、少しずつ連続的に又は断続的に分割添加されて、共縮合のために予定された使用量に達するように供給されるものであるところから、比較的低粘度の尿素変性ノボラック樹脂が効果的に形成されることとなるのであり、これによって、そのような樹脂の製造や取り扱いが容易となることに加えて、尿素変性ノボラック型フェノール樹脂の特性を有利に発揮させることが出来ることとなったのである。
【0011】
しかも、そのような尿素若しくはメチロール尿素の少割合での分割添加の手法の採用により、フェノール系化合物とアルデヒド類と尿素若しくはメチロール尿素との共縮合反応が安定的に進行せしめられ得ることとなり、これによって、かかる尿素若しくはメチロール尿素の最終的な供給量(共縮合量)を多くすることが出来ることとなり、以って、多量の尿素にて変性されたノボラック型フェノール樹脂を有利に得ることが出来るのである。
【0012】
これに対して、フェノール系化合物とアルデヒド類との反応系に、共縮合せしめられる尿素若しくはメチロール尿素の使用量の全量を、一挙に乃至は一括して供給して、反応させた場合にあっては、反応熱が著しく増加して、反応系の温度が急激に上昇せしめられ、それによる尿素の加水分解や尿素単独重合(縮合)が誘発されるようになるのであり、これによって、分子量上昇に伴なうゲル化が惹起されたり、また、得られる尿素変性ノボラック型フェノール樹脂の品質安定化が損なわれたりして、非常に高い粘度の反応生成物となって、実用に堪えられない問題が内在しているのである。
【0013】
また、かくの如き本発明に従って得られた尿素変性ノボラック型フェノール樹脂は、その窒素含有率に比例した吸熱量を有し、難燃性が高い特徴を有しているのであり、更に、そのような尿素変性樹脂を、耐火性粒子の粘結材乃至は被覆樹脂として用いてなるレジンコーテッドサンドにおいては、実用可能な鋳型強度を発現し得るものであると共に、鋳型特性、例えばヒケ巣等の鋳肌不良の問題の改善や、鋳型の崩壊性の改善等にも寄与し得ることとなったのである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例3、実施例4及び比較例3で得られた尿素変性ノボラック型フェノール樹脂の赤外線(IR)吸収スペクトルの測定結果を示すグラフである。
図2】実施例3、実施例4及び比較例3で得られた尿素変性ノボラック型フェノール樹脂の吸熱量の測定結果を示すDSC曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ところで、本発明に従って製造される尿素変性ノボラック型フェノール樹脂を与える原料の一つであるフェノール系化合物としては、フェノール自体の他に、例えば、クレゾール、キシレノール、ブチルフェノール、ノニルフェノール等のアルキルフェノールや、レゾルシノール、ビスフェノールF、ビスフェノールA等の多価フェノール、及びそれらの混合物等の公知のものを挙げることが出来、それらフェノール系化合物が、単独で又は適宜に組み合わせて用いられる。
【0016】
具体的には、アルキルフェノールとしては、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、2,3−キシレノール、3,5−キシレノール、2,5−キシレノール、3,4−キシレノール、2−プロピルフェノール、2−イソプロピルフェノール、3−プロピルフェノール、3−イソプロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、4−プロピルフェノール、2−sec−ブチルフェノール、2−tert−ブチルフェノール、3−sec−ブチルフェノール、3−tert−ブチルフェノール、4−sec−ブチルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、2−シクロヘキシルフェノール、3−シクロヘキシルフェノール、4−シクロヘキシルフェノール、2−ノニルフェノール、3−ノニルフェノール、4−ノニルフェノール、2−ドデシルフェノール、3−ドデシルフェノール、4−ドデシルフェノール、2−オクタデシルフェノール、3−オクタデシルフェノール、4−オクタデシルフェノール、2−イソプロピル−5−メチルフェノール、2−tert−ブチル−4−メチルフェノール、3−メチル−6−tert−ブチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、2,3,5−トリエチルフェノール等が用いられ得る。
【0017】
この他、本発明においては、フェノール系化合物として、従来からフェノール樹脂の製造に用いられてきている公知の各種のものも適宜に採用され、例えば、各種の多価フェノール類、ビスフェノール類、多縮合環フェノール類、フェノール系精製残渣等の公知のものを挙げることが出来る。
【0018】
また、本発明に従う尿素変性ノボラック型フェノール樹脂を与える、上記フェノール系化合物に反応せしめられる他の原料であるアルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、ホルマリン、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、パラアルデヒド、プロピオンアルデヒド等の公知の各種の化合物が、適宜に選択されて用いられることとなる。このようなアルデヒド類は、上記したフェノール系化合物と同様に、単独で用いられる他、二種以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0019】
さらに、上記したフェノール系化合物とアルデヒド類とを反応させて、ノボラック型のフェノール樹脂を製造するに際しては、従来から公知の各種の酸触媒が用いられることとなる。例えば、蓚酸や塩酸、硫酸、マレイン酸、リン酸等の有機酸や無機酸が、触媒として好適に用いられる他、酸化亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、酢酸鉛、ホウ酸亜鉛、酸化マグネシウム等の二価金属塩や酸化物等の化合物を用いることが出来る。なお、このような酸触媒の使用量は、触媒の種類に応じて、公知の使用量範囲において、適宜に選定されることとなるが、一般に、フェノール系化合物と尿素若しくはメチロール尿素の合計量に対して、0.01〜10質量%程度、好ましくは、0.1〜1質量%程度の割合が、採用され得るものである。
【0020】
そして、本発明にあっては、上記したフェノール系化合物とアルデヒド類との酸触媒による反応系に、第三成分として尿素若しくはメチロール尿素を存在せしめて、それら三者を相互に縮合反応させることにより、共縮合型のノボラック樹脂である、尿素変性ノボラック型フェノール樹脂を製造するものであるが、ここで用いられるメチロール尿素としては、モノメチロール尿素、ジメチロール尿素、トリメチロール尿素、テトラメチロール尿素がある。また、この第三成分としての尿素やメチロール尿素は、水溶液、懸濁液、又は固体の形態において、反応系に添加せしめられ得るものであるが、反応途中で固体を投入する場合においては、そのような固体の融解熱により、反応速度の低下を招くおそれがあるところから、本発明においては、水溶液や懸濁液の形態において反応系に投入されることが望ましい。なお、かかる第三成分のうち、尿素は、一般に、水溶液の形態において用いられるが、メチロール尿素は水に完全に溶け切らず、そのために、懸濁液として使用されたり、固体として使用されることとなる。
【0021】
また、そのような尿素変性ノボラック型フェノール樹脂を得るために用いられる、フェノール系化合物(P)とアルデヒド類(F)と尿素若しくはメチロール尿素(U)は、モル比において、F/Pが、一般に、0.40〜2.00、好ましくは0.50〜1.95となるように、そしてF/(P+U)の値(モル比)が、一般に、0.40〜0.80、好ましくは0.50〜0.75となるような割合において、それら三者が反応せしめられることとなる。なお、かかるF/PやF/(P+U)の値が大きくなり過ぎると、目的とする尿素変性ノボラック型フェノール樹脂の分子量増加に伴なう粘度上昇や、融点の上昇により、レジンコーテッドサンド等の目的とする用途への使用に供することが困難となる他、場合によってはゲル化を惹起して、樹脂の製造自体を困難にするおそれが生じる。一方、それらF/PやF/(P+U)の値が小さくなり過ぎると、目的とする尿素変性ノボラック型フェノール樹脂の分子量が低下し、それに伴ない、融点が低下し、ゲルタイムが長くなって、レジンコーテッドサンド等の用途における使用に供することが困難となる問題を惹起する。
【0022】
さらに、フェノール系化合物と尿素若しくはメチロール尿素との関係において、第三成分たる尿素若しくはメチロール尿素の使用量が少なくなり過ぎると、尿素変性率が低下し、得られる尿素変性ノボラック型フェノール樹脂の特徴である吸熱作用を充分に発揮し難くなり、また、レジンコーテッドサンド等の用途におけるレジンとして用いた場合において、鋳肌不良(ヒケ巣等)の抑制や崩壊性の改善に充分に寄与し難くなるところから、一般に、フェノール系化合物(P)と尿素若しくはメチロール尿素(U)の合計量に対する尿素若しくはメチロール尿素(U)の割合は、質量基準において、5質量%以上の割合となるように調整される。なお、ここで、メチロール尿素の使用量には、それの形成に用いられた尿素量が用いられることとなる。一方、尿素若しくはメチロール尿素の使用量が多くなると、得られる尿素変性ノボラック型フェノール樹脂の特性が減衰し、尿素樹脂としての特性を示すようになるところから、一般に、フェノール系化合物と尿素若しくはメチロール尿素との合計質量に対して、尿素若しくはメチロール尿素の使用割合は、80質量%以下、好ましくは50質量%以下となるように調整されることとなる。この上限を超えるような割合の尿素やメチロール尿素を使用したりすると、靭性や耐水性、耐熱性が低下し、硬度や脆性が上昇し、レジンコーテッドサンド等のレジンとして使用に供することが困難となる。
【0023】
ここにおいて、本発明は、上記した三成分、即ちフェノール系化合物とアルデヒド類と尿素若しくはメチロール尿素とを、反応せしめて、共縮合タイプの尿素変性ノボラック樹脂を製造する際に、フェノール系化合物とアルデヒド類との反応系に、第三成分たる尿素若しくはメチロール尿素を、共縮合のために予定された使用量に到達するまで、少しずつ(徐々に)添加して、その添加された尿素若しくはメチロール尿素を、フェノール系化合物とアルデヒド類に、順次、共縮合させるようにするものである。
【0024】
そして、このような、共縮合せしめられる尿素若しくはメチロール尿素の使用量を分割して、反応の進行につれて、少しずつ反応系に添加せしめるようにすることにより、酸性触媒下でのフェノール系化合物とアルデヒド類との縮合反応熱や、尿素若しくはメチロール尿素の添加時の中和熱が急激に発生して、反応温度が上昇するのを効果的に抑制乃至は阻止せしめ、以って、尿素やメチロール尿素の加水分解を抑制して、反応溶液が弱酸性領域にある時間を長く保持せしめるようにすることにより、フェノールと尿素若しくはメチロール尿素との共縮合反応を有利に促進することが出来るようになるのである。
【0025】
ここで、尿素やメチロール尿素は、その水溶液がpH=7.5程度の弱アルカリ性となるものであり、更に、その水溶液は、100℃以上の温度に加熱されると、尿素が加水分解を起こし、アンモニアの発生によって、pH値が上昇するようになるところから、反応系における反応温度とpH値の検討の結果、本発明においては、尿素若しくはメチロール尿素の添加開始より添加終了までの時間は、一般に、反応系のpH値が酸性領域(pH=4以下)から中性領域(pH=7〜8程度)になる前まで、好ましくはpH=7.5になるまでとすることが望ましく、更に、その添加継続時間としては、添加開始より1.5〜2時間程度で、添加が終了するようにすることが望ましい。
【0026】
また、本発明において、尿素やメチロール尿素の少しずつの添加は、連続的に又は断続的に行なわれることとなるが、その連続的な添加方式にあっては、一定割合の添加速度(一定量を一定のスピード)にて、反応系に添加する方式が有利に採用され、また、尿素やメチロール尿素の断続的な添加方式においては、一定の間隔を空けて一定量毎において、実施されることが望ましい。なお、この間隔を空けた断続的な添加方式においては、例えば、10分毎等、時間を決めて一定量を投入したり、尿素やメチロール尿素の使用量が少量の場合においては、それを反応系に漸次滴下する方式等も、採用可能である。
【0027】
ところで、尿素とフェノールとそれらのヒドロキシメチル誘導体との反応では、フェノールのヒドロキシメチル基によって、尿素との共縮合が優先的に惹起され、また、反応媒体のpH依存性に関しては、弱酸性条件下では、ヒドロキシメチル基が尿素と優先的に反応し、強酸性条件下又はアルカリ性条件下では、尿素の単独重合、即ち尿素とアルデヒドとの縮合反応が惹起されるようになるところから、本発明においては、フェノール系化合物とアルデヒド類とを初期縮合させた後、その得られた初期縮合物に対して、尿素若しくはメチロール尿素の添加が開始されるようにして、かかる尿素やメチロール尿素が、フェノール系化合物及びアルデヒド類に、有効に共縮合せしめられるようにすることが、望ましい。
【0028】
特に、共縮合反応に用いられるアルデヒド類の使用モル量が、第三成分たる尿素若しくはメチロール尿素の使用モル量よりも多い場合において、その関係が反応系においても保持されたりすると、生成するノボラック樹脂の分子量の増大や粘度上昇が誘発され易くなるところから、本発明においては、先ず、フェノール系化合物とアルデヒド類とを初期縮合せしめ、そして、その得られた初期縮合物中に残留する未反応のアルデヒド類の量(モル)が、尿素若しくはメチロール尿素の投入量(共重合のために予定された使用モル量)に等しくなったときに、かかる尿素若しくはメチロール尿素の添加が開始されるようにすることが、望ましいのである。
【0029】
なお、そのようなフェノール系化合物とアルデヒド類との初期縮合後における、尿素若しくはメチロール尿素の添加のタイミングは、予め、所定の酸触媒の所定量の存在下において、フェノール系化合物(P)とアルデヒド類(F)とを、所定のモル比にて縮合反応を行なって、経時的に残留(未反応)アルデヒド量を測定し、得られた残留アルデヒド率(y)と反応時間(x)との関係を、例えば、指数近似式等の関係式として求めておくことにより、そして、その関係式を用いて、共縮合反応の開始時間、換言すれば尿素若しくはメチロール尿素の添加開始時間を算出することが可能となる。
【0030】
例えば、フェノールとホルマリンとの縮合反応において、酸触媒として、蓚酸を0.5質量%(対フェノール)用い、各種のモル比(F/P=0.65、0.69、0.84、1.00、1.23、1.54)において反応を進行せしめ、残留ホルマリン量を測定することによって、下記表1に示されるような、残留ホルマリン率(y)と反応時間(x)の指数近似式を得ておくのである。そして、その得られた指数近似式より、下記表1のA〜Fの反応における、尿素の物質量(モル)と等量のホルマリン量(残留ホルマリン率)に到達する反応開始時間(h)が、容易に算出され得るのである。
【0031】
なお、かかる反応開始時間(h)の算出方法は、以下の手順にて、行なわれることとなる。即ち、先ず、次式:
残留ホルマリン率(y)=
尿素の物質量(モル)÷ホルマリンの物質量(モル)×100
にて、残留ホルマリン率(y)を算出し、次いで、その得られた残留ホルマリン率(y)を、下記表1における近似式のyに代入し、相当するxを算出することにより、尿素若しくはメチロール尿素の共縮合が開始せしめられる反応開始時間(h)を、容易に求め得るのである。
【0032】
【表1】
【0033】
また、このような本発明手法に従って得られる尿素変性ノボラック型フェノール樹脂は、尿素誘導体とフェノール系化合物との共縮合物であって、その反応メカニズムについては、次のように説明することが出来る。即ち、先ず、酸性条件下において、フェノール系化合物とアルデヒド類との縮合反応によりヒドロキシメチルフェノールが生成し、初期段階では、ヒドロキシメチルフェノールとフェノールとの比較的低分子量の反応生成物が形成される。次いで、所定の添加タイミングにより、尿素やメチロール尿素が反応系に所定の割合で少しずつ投入されることにより、反応温度の上昇を抑制し、また尿素やメチロール尿素の加水分解を抑制しつつ、反応系のpHが穏やかに上昇するものの、弱酸性領域では、ヒドロキシメチルフェノールと尿素との反応が優先的に惹起され、以て、目的とする共縮合物が形成されることとなるのである。
【0034】
そして、かくの如くして得られた尿素変性ノボラック型フェノール樹脂は、比較的低粘度のものであることにより、その取り扱いが容易であり、各種の用途に有利に用いられ得る他、多量の尿素にて変性せしめられ得ることにより、その窒素含有率に比例して、350〜365℃の領域に大きな吸熱作用を有するものとなり、また難燃性が高められたものとなっており、これによって、各種の用途に有利に用いられることとなる。
【0035】
なお、上記した尿素変性ノボラック型フェノール樹脂にあっては、その製造過程において、或いは、その製造の後に、任意の化合物や樹脂、例えば、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、キシレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、メラミン系化合物、エポキシ系化合物、カシューナッツ油等を添加、混合せしめたり、或いは反応させたりして、各種の変性ノボラック型フェノール樹脂として、用いることも可能である。
【0036】
そして、このようにして得られた本発明に従う尿素変性ノボラック型フェノール樹脂にあっては、その特性に従って、各種の用途に用いられ得るものであるが、特に、本発明にあっては、鋳型用レジンコーテッドサンドの粘結材乃至は被覆樹脂として、好適に用いられることとなる。
【0037】
なお、そのような本発明に従う尿素変性ノボラック型フェノール樹脂を用いて、レジンコーテッドサンドを製造するに際しては、公知の各種の手法、例えばホットマーリング法等に従って、かかる尿素変性ノボラック型フェノール樹脂にて、所定の耐火性粒子の表面を被覆するようにした手法が採用される。その際、尿素変性ノボラック型フェノール樹脂の使用量としては、耐火性粒子の100質量部に対して、0.4〜5質量部程度となるような割合において、好ましくは0.5〜4質量部程度となるような割合において、耐火性粒子に配合されて、耐火性粒子の表面が被覆されることとなる。
【0038】
なお、ここで用いられる耐火性粒子としても、公知の各種のものが用いられ、天然の粒子であっても、人工の粒子であってもよく、特に限定されるものではない。例えば、ケイ砂、オリビンサンド、ジルコンサンド、クロマイトサンド、アルミナサンド、フェロクロム系スラグ、フェロニッケル系スラグ、転炉スラグ、ムライト系人工粒子(例えば、伊藤忠セラテック株式会社から入手することの出来る商品名「セラビーズ」等)や、これらの再生砂等が挙げられ、これらのうちの一種或いは二種以上が組み合わされて、用いられ得るのである。
【0039】
そして、かくの如くして得られたレジンコーテッドサンドを用いて造型された鋳型にあっては、それを用いた鋳造工程において、ヒケ巣等の鋳肌不良の発生が効果的に抑制され得るのであり、また、鋳造後の鋳型の崩壊性にも優れた特徴を発揮するのである。
【実施例】
【0040】
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等が加え得るものであることが、理解されるべきである。なお、以下に示すF、P及びUは、それぞれ、ホルマリン、フェノール及び尿素の略号として用いられている。
【0041】
−実施例1− 尿素変性率5%ノボラック樹脂[モル比(F/(P+U))=0.60]の製造
先ず、温度計、バキュームスターラー及び冷却管を備えた3000mlの三口フラスコに、フェノール1200g(12.77mol)及びホルマリン47%水溶液527g(8.26mol)と、触媒としての蓚酸6.3g(0.07mol)を収容した後、攪拌混合しながら、徐々に反応容器内を還流温度(98〜105℃)まで昇温し、そして22分間加熱攪拌することにより、初期縮合反応を行なった。
【0042】
次いで、その得られた初期縮合反応物に対して、予め蒸留水90mlに溶解した尿素60g(1.00mol)を、120分で添加が完了するように滴下した後、約60分間加熱攪拌して、更に反応を進行せしめた。そして、かかる加熱攪拌による反応の後、反応溶液のpHが7となり、ホルマリンが消費されたことを確認し、その後攪拌混合しながら、反応液の温度(液温)が180℃程度となるまで、加熱及び減圧濃縮することにより、黄色透明固体の尿素変性ノボラック樹脂(尿素変性ノボラック型フェノール樹脂)を得た。
【0043】
−実施例2− 尿素変性率9%ノボラック樹脂[モル比(F/(P+U))=0.60]の合成
先ず、温度計、バキュームスターラー及び冷却管を備えた3000mlの三口フラスコに、フェノール1200g(12.77mol)及びホルマリン47%水溶液566g(8.86mol)と、触媒としての蓚酸3.8g(0.04mol)を収容した後、攪拌混合しながら、徐々に反応容器内を還流温度(98〜105℃)まで昇温し、そして22分間加熱攪拌することにより、初期縮合反応を行なった。
【0044】
次いで、その得られた初期縮合反応物に対して、予め蒸留水180mlに溶解した尿素120g(2.00mol)を、120分で添加が完了するように滴下した後、60分間加熱攪拌して、更に反応を進行せしめた。そして、その加熱攪拌による反応の後、反応溶液のpHが7となり、ホルマリンが消費されたことを確認し、その後攪拌混合しながら、反応液の温度(液温)が180℃程度となるまで、加熱及び減圧濃縮することにより、黄色透明固体の尿素変性ノボラック樹脂を得た。
【0045】
−実施例3− 尿素変性率20%ノボラック樹脂[モル比(F/(P+U))=0.60]の合成
先ず、温度計、バキュームスターラー及び冷却管を備えた3000mlの三口フラスコに、フェノール960g(10.21mol)及びホルマリン47%水溶液544g(8.53mol)と、触媒としての蓚酸6.0g(0.07mol)を収容した後、攪拌混合しながら、徐々に反応容器内を還流温度(98〜105℃)まで昇温し、そして22分間加熱攪拌することにより、初期縮合反応を行なった。
【0046】
次いで、その得られた初期縮合反応物に対して、予め蒸留水360mlに溶解した尿素240g(4.00mol)を、120分で添加が完了するように滴下した後、60分間加熱攪拌して、更に反応を進行せしめた。そして、その加熱攪拌による反応の後、反応溶液のpHが7となり、ホルマリンが消費されたことを確認し、その後攪拌混合しながら、反応液の温度(液温)が180℃程度となるまで、加熱及び減圧濃縮することにより、黄色透明固体の尿素変性ノボラック樹脂を得た。
【0047】
−実施例4− 尿素変性率30%ノボラック樹脂[モル比(F/(P+U))=0.60]の合成
先ず、温度計、バキュームスターラー及び冷却管を備えた3000mlの三口フラスコに、フェノール840g(8.94mol)及びホルマリン47%水溶液572g(8.96mol)と、触媒としての蓚酸6.0g(0.07mol)を収容した後、攪拌混合しながら、徐々に反応容器内を還流温度(98〜105℃)まで昇温し、そして30分間加熱攪拌することにより、初期縮合反応を行なった。
【0048】
次いで、その得られた初期縮合反応物に対して、予め蒸留水540mlに溶解した尿素360g(6.00mol)を、120分で添加が完了するように滴下した後、60分間加熱攪拌して、更に反応を進行せしめた。そして、その加熱攪拌による反応の後、反応溶液のpHが7となり、ホルマリンが消費されたことを確認し、その後攪拌混合しながら、反応液の温度(液温)が180℃程度となるまで、加熱及び減圧濃縮することにより、黄色透明固体の尿素変性ノボラック樹脂を得た。
【0049】
−実施例5− 尿素変性率40%ノボラック樹脂[モル比(F/(P+U))=0.60]の合成
先ず、温度計、バキュームスターラー及び冷却管を備えた3000mlの三口フラスコに、フェノール720g(7.66mol)及びホルマリン47%水溶液599g(9.39mol)と、触媒としての蓚酸6.0g(0.07mol)を収容した後、攪拌混合しながら、徐々に反応容器内を還流温度(98〜105℃)まで昇温し、そして32分間加熱攪拌することにより、初期縮合反応を行なった。
【0050】
次いで、その得られた初期縮合反応物に対して、予め蒸留水720mlに溶解した尿素480g(7.99mol)を、120分で添加が完了するように滴下した後、60分間加熱攪拌して、更に反応を進行せしめた。そして、その加熱攪拌による反応の後、反応溶液のpHが7となり、ホルマリンが消費されたことを確認し、その後攪拌混合しながら、反応液の温度(液温)が180℃程度となるまで、加熱及び減圧濃縮することにより、黄色透明固体の尿素変性ノボラック樹脂を得た。
【0051】
−実施例6− 尿素変性率50%ノボラック樹脂[モル比(F/(P+U))=0.60]の合成
先ず、温度計、バキュームスターラー及び冷却管を備えた3000mlの三口フラスコに、フェノール600g(6.38mol)及びホルマリン47%水溶液627g(9.82mol)と、触媒としての蓚酸6.0g(0.07mol)を収容した後、攪拌混合しながら、徐々に反応容器内を還流温度(98〜105℃)まで昇温した。次いで、この昇温の後、予め蒸留水900mlに溶解した尿素600g(9.96mol)を、120分で添加が完了するように滴下した後、60分間加熱攪拌して、反応を進行せしめた。そして、かかる加熱攪拌による反応の後、反応溶液のpHが7となり、ホルマリンが消費されたことを確認した。その後、攪拌混合しながら、反応液の温度(液温)が180℃程度となるまで、加熱及び減圧濃縮することにより、黄色透明固体の尿素変性ノボラック樹脂を得た。なお、本実施例では、投入する尿素の使用量が、ホルマリンの使用量より0.14mol多いため、上述の各実施例とは異なり、初期縮合反応を実施しなかった。
【0052】
−実施例7− 尿素変性率5%ノボラック樹脂[モル比(F/(P+U))=0.60]の合成
先ず、温度計、バキュームスターラー及び冷却管を備えた3000mlの三口フラスコに、フェノール1200g(12.77mol)及びホルマリン47%水溶液527g(8.26mol)と、触媒としての蓚酸6.3g(0.07mol)を収容した後、攪拌混合しながら、徐々に反応容器内を還流温度(98〜105℃)まで昇温した。次いで、予め蒸留水90mlに溶解した尿素60g(1.00mol)を、120分で添加が完了するように滴下した後、60分間加熱攪拌して、反応を進行せしめた。そして、かかる加熱攪拌による反応の後、反応溶液のpHが7となり、ホルマリンが消費されたことを確認した。その後、攪拌混合しながら、反応液の温度(液温)が180℃程度となるまで、加熱及び減圧濃縮することにより、黄色透明固体の尿素変性ノボラック樹脂を得た。
【0053】
−実施例8− 尿素変性率30%ノボラック樹脂[モル比(F/(P+U))=0.70]の合成
先ず、温度計、バキュームスターラー及び冷却管を備えた3000mlの三口フラスコに、フェノール840g(8.94mol)及びホルマリン47%水溶液667g(10.5mol)と、触媒としての蓚酸6.0g(0.07mol)を収容した後、攪拌混合しながら、徐々に反応容器内を還流温度(98〜105℃)まで昇温し、そして88分間加熱攪拌することにより、初期縮合反応を行なった。
【0054】
次いで、その得られた初期縮合反応物に対して、予め蒸留水540mlに溶解した尿素360g(6.00mol)を、120分で添加が完了するように滴下した後、60分間加熱攪拌して、更に反応を進行せしめた。そして、かかる加熱攪拌による反応の後、反応溶液のpHが7となり、ホルマリンが消費されたことを確認し、その後攪拌混合しながら、反応液の温度(液温)が180℃程度となるまで、加熱及び減圧濃縮することにより、黄色透明固体の尿素変性ノボラック樹脂を得た。
【0055】
−実施例9− 尿素変性率30%ノボラック樹脂[モル比(F/(P+U))=0.50]の合成
先ず、温度計、バキュームスターラー及び冷却管を備えた3000mlの三口フラスコに、フェノール840g(8.94mol)及びホルマリン47%水溶液476g(7.5mol)と、触媒としての蓚酸6.0g(0.07mol)を収容した後、攪拌混合しながら、徐々に反応容器内を還流温度(98〜105℃)まで昇温し、そして10分間加熱攪拌することにより、初期縮合反応を行なった。
【0056】
次いで、その得られた初期縮合反応物に対して、予め蒸留水540mlに溶解した尿素360g(6.00mol)を、120分で添加が完了するように滴下した後、60分間加熱攪拌して、更に反応を進行せしめた。そして、かかる加熱攪拌による反応の後、反応溶液のpHが7となり、ホルマリンが消費されたことを確認し、その後攪拌混合しながら、反応液の温度(液温)が180℃程度となるまで、加熱及び減圧濃縮することにより、黄色透明固体の尿素変性ノボラック樹脂を得た。
【0057】
−実施例10− モノメチロール尿素変性率20%ノボラック樹脂[モル比(F/(P+U))=0.60]の合成
先ず、1000mlのフラスコに、尿素240g(4.00mol)、蒸留水240ml及びホルマリン47%水溶液255g(4.00mol)を収容し、pH=9〜10になるまでNaOHを加えて、反応させることにより、液中に懸濁した形態のモノメチロール尿素を得た。そして、この得られたモノメチロール尿素の懸濁液を、分液ロートに移した。
【0058】
次いで、温度計、バキュームスターラー及び冷却管を備え、更に、上記のメチロール尿素懸濁液を収容した分液ロートを取り付けた3000mlの四口フラスコに、フェノール960g(10.21mol)及びホルマリン47%水溶液289g(4.52mol)と、触媒としての蓚酸6.0g(0.07mol)を収容した後、攪拌混合しながら、徐々に反応容器内を還流温度(98〜105℃)まで昇温し、そして分液ロートから、モノメチロール尿素懸濁液を、120分で添加が完了するように滴下した後、60分間加熱攪拌を行なうことにより、反応を進行せしめた。そして、かかる加熱攪拌による反応の後、反応溶液のpHが7となり、ホルマリンが消費されたことを確認した。その後、攪拌混合しながら、反応液の温度(液温)が180℃程度となるまで、加熱及び減圧濃縮を行なうことにより、黄色透明固体の尿素変性ノボラック樹脂を得た。
【0059】
−実施例11− モノメチロール尿素変性率30%ノボラック樹脂[モル比(F/(P+U))=0.50]の合成
先ず、1000mlのフラスコに、尿素360g(6.00mol)、蒸留水540ml及びホルマリン47%水溶液382g(6.00mol)を収容し、pH=9〜10になるまでNaOHを加えて、反応させることにより、液中に懸濁した形態の白色固体のモノメチロール尿素を得た。そして、この得られたモノメチロール尿素懸濁液を、分液ロートに移し、フェノールとの縮合反応に使用した。
【0060】
次いで、温度計、バキュームスターラー及び冷却管を備え、更に、上記のメチロール尿素懸濁液を収容した分液ロートを取り付けた3000mlの四口フラスコに、フェノール840g(8.94mol)及びホルマリン47%水溶液96g(1.51mol)と、触媒としての蓚酸6.0g(0.07mol)を収容した後、攪拌混合しながら、徐々に反応容器内を還流温度(98〜105℃)まで昇温し、そして分液ロートから、モノメチロール尿素懸濁液を、120分で添加が完了するように滴下した後、60分間加熱攪拌を行なうことにより、反応を進行せしめた。そして、かかる加熱攪拌による反応の後、反応溶液のpHが7となり、ホルマリンが消費されたことを確認した。その後、攪拌混合しながら、反応液の温度(液温)が180℃程度となるまで、加熱及び減圧濃縮行なうことにより、黄色透明固体の尿素変性ノボラック樹脂を得た。
【0061】
−実施例12− モノメチロール尿素変性率30%ノボラック樹脂[モル比(F/(P+U))=0.60]の合成
先ず、1000mlのフラスコに、尿素360g(6.00mol)、蒸留水360ml及びホルマリン47%水溶液382g(6.00mol)を収容し、pH=9〜10になるまでNaOHを加えて、反応させることにより、液中に懸濁した形態のモノメチロール尿素を得た。そして、この得られたモノメチロール尿素の懸濁液を、分液ロートに移した。
【0062】
次いで、温度計、バキュームスターラー及び冷却管を備え、更に上記のメチロール尿素懸濁液を収容した分液ロートを取り付けた3000mlの四口フラスコに、フェノール840g(8.94mol)及びホルマリン47%水溶液190g(2.97mol)と、触媒としての蓚酸6.0g(0.07mol)を収容した後、攪拌混合しながら、徐々に反応容器内を還流温度(98〜105℃)まで昇温し、そして分液ロートから、モノメチロール尿素懸濁液を、120分で添加が完了するように滴下した後、60分間加熱攪拌を行なうことにより、反応を進行せしめた。そして、かかる加熱攪拌による反応の後、反応溶液のpHが7となり、ホルマリンが消費されたことを確認した。その後、攪拌混合しながら、反応液の温度(液温)が180℃程度となるまで、加熱及び減圧濃縮を行なうことにより、黄色透明固体の尿素変性ノボラック樹脂を得た。
【0063】
−実施例13− ジメチロール尿素変性率20%ノボラック樹脂[モル比(F/(P+U))=0.50]の合成
先ず、1000mlのフラスコに、尿素240g(4.00mol)、蒸留水360ml及びホルマリン47%水溶液453g(7.10mol)を収容し、pH=9〜10になるまでNaOHを加えて、反応させることにより、白色固体のジメチロール尿素懸濁物を得た。
【0064】
次いで、温度計、バキュームスターラー及び冷却管を備えた3000mlの三口フラスコに、フェノール960g(10.21mol)と、触媒としての蓚酸6.0g(0.07mol)を収容した後、攪拌混合しながら、徐々に反応容器内を還流温度(98〜105℃)まで昇温し、そして上記で得られたジメチロール尿素懸濁物を、10分間隔にて、120分かけて、一定割合で分割投入した。更に、60分間加熱攪拌を行なうことにより、反応を進行せしめた。そして、かかる反応の後、反応溶液のpHが7となり、ホルマリンが消費されたことを確認した。その後、攪拌混合しながら、反応液の温度(液温)が180℃程度となるまで、加熱及び減圧濃縮を行なうことにより、黄色透明固体の尿素変性ノボラック樹脂を得た。
【0065】
−実施例14− ジメチロール尿素変性率20%ノボラック樹脂[モル比(F/(P+U))=0.60]の合成
先ず、1000mlのフラスコに、尿素240g(4.00mol)、蒸留水360ml及びホルマリン47%水溶液544g(8.53mol)を収容し、pH=9〜10になるまでNaOHを加えて、反応させることにより、白色固体のジメチロール尿素懸濁物を得た。
【0066】
次いで、温度計、バキュームスターラー及び冷却管を備えた3000mlの三口フラスコに、フェノール960g(10.21mol)と、触媒としての蓚酸6.0g(0.07mol)を収容した後、攪拌混合しながら、徐々に反応容器内を還流温度(98〜105℃)まで昇温し、そして上記で得られたジメチロール尿素懸濁物を、10分間隔にて、120分かけて、一定割合で分割投入した。更に、60分間加熱攪拌を行なうことにより、反応を進行せしめた。そして、かかる反応の後、反応溶液のpHが7となり、ホルマリンが消費されたことを確認した。その後、攪拌混合しながら、反応液の温度(液温)が180℃程度となるまで、加熱及び減圧濃縮を行なうことにより、黄色透明固体の尿素変性ノボラック樹脂を得た。
【0067】
−比較例1− 尿素一括投入による尿素変性30%ノボラック樹脂[モル比(F/(P+U))=0.60]の合成
温度計、バキュームスターラー及び冷却管を備えた500mlの三口フラスコに、予め蒸留水の120mlに溶解した尿素90g(1.50mol)と、フェノール210g(2.13mol)及びホルマリン47%水溶液139g(2.18mol)と、触媒としての蓚酸1.5g(0.02mol)とを収容した後、攪拌混合しながら、徐々に反応容器内を還流温度(98〜105℃)まで昇温し、更に約240分間、加熱攪拌を行なうことにより、縮合反応せしめた。そして、かかる反応の後、攪拌混合しながら、加熱及び減圧濃縮下、反応液の温度(液温)が150℃程度にて、ゲル化し、固化してしまった。
【0068】
−比較例2− モノメチロール尿素変性6%ノボラック樹脂[モル比(F/(P+U))=0.68]の合成
温度計、バキュームスターラー及び冷却管を備えた500mlのフラスコに、先ず、尿素12g(0.20mol)及びホルマリン47%水溶液23g(0.36mol)を収容し、50℃にて150分間加熱攪拌した後、フェノール188g(2.00mol)と、触媒としての蓚酸0.94g(0.01mol)とを収容し、攪拌混合しながら、徐々に反応容器内を還流温度(98〜105℃)まで昇温し、そして60分間攪拌して、反応させた。更に、ホルマリン47%水溶液73g(1.14mol)及び蓚酸0.6g(6.00mmol)を加えて、120分還流攪拌して、反応を進行せしめた。そして、かかる反応の後、攪拌混合しながら、加熱及び減圧濃縮したところ、反応液の温度(液温)が150℃程度にてゲル化し、固化してしまった。
【0069】
−比較例3− ノボラック樹脂[モル比(F/P)=0.60]の合成
温度計、バキュームスターラー及び冷却管を備えた3000mlの三口フラスコに、フェノール1200g(12.77mol)及びホルマリン47%水溶液490g(7.68mol)と、触媒としての蓚酸3.6g(0.04mol)を収容した後、攪拌混合しながら、徐々に反応容器内を還流温度(98〜105℃)まで昇温し、更に約240分間加熱攪拌を行なうことにより、縮合反応せしめた。そして、かかる反応の後、攪拌混合しながら、反応液の温度(液温)が180℃程度となるまで、加熱及び減圧濃縮することにより、黄色透明固体のノボラック型のフェノール樹脂を得た。
【0070】
[特性評価1]
上記で得られた各種の尿素変性ノボラック樹脂組成物について、以下の測定方法に従って、それぞれ、各種の物性を測定した。そして、その得られた結果を、下記表2及び表3に併わせ示した。
【0071】
−重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、未反応フェノール量の測定−
尿素変性ノボラック樹脂組成物の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の測定は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ(GPC)法により測定されるフェノール換算の分子量として求めた。なお、測定装置には、GPC測定装置(東ソー株式会社製、商品名:HLC8320GPC)を用い、またカラムには、混合ポリスチレンゲルカラム(東ソー株式会社製、商品名:G1000HXL、G2000JXL)を用いた。また、同時に、かかるGPC法によって、未反応フェノール量が求められた。
【0072】
−窒素含有率の測定−
各々の尿素変性ノボラック樹脂の窒素含有率は、ケルダール窒素定量法により求めた。
【0073】
−流れ、ゲル化時間、融点の測定−
各々の尿素変性ノボラック樹脂の流れ、ゲル化時間および融点は、JIS K 6910に準拠して測定した。
【0074】
−粘度の測定−
各々の尿素変性ノボラック樹脂の粘度は、コーンプレート粘度計(東亜工業株式会社製、商品名:CV1S)を用い、試料の0.15gを秤取して、プレート温度:160℃において、その溶融粘度を測定することによって、行なった。
【0075】
−熱量測定−
示差走査熱量計(DSC)による各々の尿素変性ノボラック樹脂の熱分解に伴う吸熱量の測定は、以下の様にして測定した。
【0076】
すなわち、示差走査熱量計として、リガク社製の商品名:DSC8230 を用い、粉末試料の5.00mgにヘキサメチレンテトラミンを0.75mg混合し、窒素雰囲気下、25℃から500℃まで5℃/分で昇温させることによって得られた、分解に伴う吸熱カーブ(DSC曲線)から観測される吸熱ピークトップの温度を測定し、また吸熱量は、上記DSC曲線から算出した。このときに測定されるDSC曲線は、横軸の温度の上昇に伴って縦軸の熱量が徐々に上昇する曲線を描くこととなるが、特定の温度範囲において、吸熱により熱量が一旦下降する曲線を描くものであり、この熱量が下降する曲線の頂点部分を吸熱ピークとしている(図2の実施例3及び実施例4の300℃〜400℃の範囲の曲線を参照)。
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
[特性評価2] 尿素変性ノボラック樹脂の構造解析
−尿素変性ノボラック樹脂におけるメチレン結合の結合様式及びオルソ/パラ(o/p)結合比の測定−
各々の尿素変性ノボラック樹脂におけるメチレン結合の結合様式及びo/p結合比の測定は、核磁気共鳴装置(米国:バリアン社製;INOVA 400)を用いて、13C−NMR(100MHz、溶媒:重ピリジン−d5)を測定して、[o,o−フェノール−CH2 −フェノール]結合、[o,p−フェノール−CH2 −フェノール]結合、[p,p−フェノール−CH2 −フェノール]結合、[o−フェノール−CH2 −NHCO−]結合、[p−フェノール−CH2 −NHCO−]結合、[−NH−CH2 −NH−]結合の存在密度を求め、それぞれの結合比を計算した。なお、この測定に用いた樹脂は、実施例4、実施例11及び実施例14のものである。その結果を、下記表4に示す。
【0080】
【表4】
【0081】
−赤外線(IR)吸収スペクトルの測定−
各々の尿素変性ノボラック樹脂の赤外線(IR)スペクトルの測定を、赤外線分光器(JASCO社製;FT/IR-4200)を用いて測定し、NH結合の特性吸収帯(1450cm-1)、CH2 結合の特性吸収帯(1300〜1400cm-1)、C=O結合の特性吸収帯(1700cm-1)の存在を確認した。そこでは、特に、C=O結合の存在により、尿素変性ノボラック樹脂が形成されていることを認識することができる。なお、この測定に用いた樹脂は、実施例3、実施例4及び比較例3のものである。そして、その結果が、図1に示されている。
【0082】
また、実施例3、実施例4及び比較例3で得られた尿素変性ノボラック型樹脂について、示差走査熱量計(DSC)を用いて、各々の尿素変性ノボラック樹脂の熱分解に伴うDSC曲線を求め、その結果を図2に示した。
【0083】
上記尿素変性ノボラック樹脂の構造解析により、フェノール系化合物と、アルデヒド類と、尿素若しくはメチロール尿素とを共縮合せしめることによって、製造されてなる、本発明に従う尿素変性ノボラック型フェノール樹脂は、一例を示すと、下記一般式(1)で表わされるものである。なお、式中、mは0〜20程度の整数を示す。
【化1】
【0084】
次いで、かくの如くして得られた各種の尿素変性ノボラック樹脂を用いて、シェルモールド用レジンコーテットサンド(RCS)(試料1〜15)を、それぞれ、以下の手法に従って製造した。
【0085】
−試料1〜15の製造及びその評価−
実験用スピードミキサーに対して、150〜180℃に予熱した耐火性粒子(フラタリー)の7000gと、実施例1〜14又は比較例3の各樹脂の140g(2.0%/耐火性粒子)とを投入し、ミキサー内にて60秒間混練することにより、耐火性粒子表面に、それぞれの尿素変性ノボラック樹脂を溶融被覆せしめた。次いで、ミキサー内に、硬化剤であるヘキサメチレンテトラミンの21g(15.0%/樹脂)を冷却水:105g(1.5%/耐火性粒子)に溶解してなるヘキサメチレンテトラミン水溶液を添加し、送風冷却した後、ステアリン酸カルシウムの7g(0.1%/耐火性粒子)を添加することにより、各種のRCS(試料1〜15)を得た。この得られた試料1〜15については、下記の試験法に従って、その特性の測定を行なった。その結果を、下記表5に示す。
【0086】
[特性評価3]
−融着点の測定−
上記において製造された各種シェルモールド用RCSを用いて、JACT法に準じて、それぞれ測定した。
【0087】
−鋳型強度の測定−
上記で製造された各種シェルモールド用RCSを用いて、JIS−K−6910に準じて、それぞれ、JIS式テストピース(幅:10mm×厚さ:10mm×長さ:60mm、焼成条件:250℃×60秒間)を作製し、そしてその得られたJIS式テストピース(以下、単に、テストピース又はTPとも言う)について、冷間時における強度(MPa)を、JACT試験法:SM−1に準じて測定し、鋳型強度として評価した。
【0088】
【表5】
【0089】
上記の表2〜表5の結果から明らかなように、尿素又はメチロール尿素を用いて共縮合させて、尿素変性ノボラック樹脂(尿素変性ノボラック型フェノール樹脂)を得る場合に、比較例1〜2の如く、最初に、尿素又はメチロール尿素の使用量の全量を一括投入すると、ゲル化して、良好な樹脂が形成され得ないのに対して、本発明に従う実施例1〜14のように、一定割合の添加速度で、尿素又はメチロール尿素を少しづつ加えることにより、利便性の良い、低粘度を有する尿素変性ノボラック樹脂を得ることができるのである。
【0090】
また、実施例1等の結果から明らかな如く、フェノールとホルマリンとを先に反応(初期縮合反応)させてから、尿素を少しづつ投入するようにすることにより、樹脂の粘度を一層有利に下げることができることが認められる。具体的には、添加する尿素の量と残留している未反応ホルマリンの量とが、略同一のモル量になった時点で、尿素の投入を開始することにより、尿素変性ノボラック樹脂の安定した低粘度化を、有利に実現することができるのである。
【0091】
さらに、モル比(F/(P+U))を0.5〜0.7程度の範囲内とすることで、目的とする尿素変性ノボラック樹脂を良好に製造することができることも、容易に理解されるところである。なお、かかるモル比が0.8を超えるようになると、樹脂の粘度が高くなり過ぎるために、モル比の上限は、0.8までが望ましく、より好適なモル比の範囲は、0.50〜0.75と考えられる。
【0092】
なお、本発明に従う尿素変性ノボラック型フェノール樹脂は、尿素若しくはメチロール尿素(U)によるフェノール系化合物(P)の尿素変性率(U/(U+P))が5〜50%程度となる範囲内において、有利に製造することが可能である。特に、表5より明らかな如く、尿素変性率を5〜30%の範囲として得られた尿素変性ノボラック型フェノール樹脂にあっては、それを用いて、シェルモールド用レジンコーテットサンド(RCS)を製造し、その得られたRCSにて鋳型を製造することで、高い鋳型強度を有する鋳型を得ることができるのである。ここで、尿素変性率は、質量基準において求められるものであり、またメチロール尿素を用いた場合において、その合成に用いられた尿素量(質量)をUの値に用いて、尿素変性率が求められることとなる。
【0093】
また、本発明に従う尿素変性ノボラック型フェノール樹脂は、[フェノール−CH2 −NHCO−]結合数、[−NH−CH2 −NH−]結合数、および[フェノール−CH2 −フェノール]結合数の合計に占める[フェノール−CH2 −NHCO−]結合数の平均割合が25〜35%程度であり、窒素含有率に比例した吸熱量を有し、難燃性が高いことが証明される。更に、そのような樹脂の吸熱量は、5J/g以上であることが望ましく、より好適には5〜200J/gであることが良く、これによって、その吸熱作用により、ヒケ巣や鋳肌不良などを抑えることができる。更にまた、表2、3に示される実施例から、重量平均分子量(Mw)が550〜2500程度、コーンプレート粘度が500〜4500mPa・s程度のものを得ることが出来ることから、取扱が容易となることも、合わせて証明されるのである。そして、そのような尿素変性ノボラック型フェノール樹脂の鋳型用途への適用を鑑みた場合、使用可能な鋳型強度を発現できることも、明らかなところである。
図1
図2