【実施例】
【0040】
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等が加え得るものであることが、理解されるべきである。なお、以下に示すF、P及びUは、それぞれ、ホルマリン、フェノール及び尿素の略号として用いられている。
【0041】
−実施例1− 尿素変性率5%ノボラック樹脂[モル比(F/(P+U))=0.60]の製造
先ず、温度計、バキュームスターラー及び冷却管を備えた3000mlの三口フラスコに、フェノール1200g(12.77mol)及びホルマリン47%水溶液527g(8.26mol)と、触媒としての蓚酸6.3g(0.07mol)を収容した後、攪拌混合しながら、徐々に反応容器内を還流温度(98〜105℃)まで昇温し、そして22分間加熱攪拌することにより、初期縮合反応を行なった。
【0042】
次いで、その得られた初期縮合反応物に対して、予め蒸留水90mlに溶解した尿素60g(1.00mol)を、120分で添加が完了するように滴下した後、約60分間加熱攪拌して、更に反応を進行せしめた。そして、かかる加熱攪拌による反応の後、反応溶液のpHが7となり、ホルマリンが消費されたことを確認し、その後攪拌混合しながら、反応液の温度(液温)が180℃程度となるまで、加熱及び減圧濃縮することにより、黄色透明固体の尿素変性ノボラック樹脂(尿素変性ノボラック型フェノール樹脂)を得た。
【0043】
−実施例2− 尿素変性率9%ノボラック樹脂[モル比(F/(P+U))=0.60]の合成
先ず、温度計、バキュームスターラー及び冷却管を備えた3000mlの三口フラスコに、フェノール1200g(12.77mol)及びホルマリン47%水溶液566g(8.86mol)と、触媒としての蓚酸3.8g(0.04mol)を収容した後、攪拌混合しながら、徐々に反応容器内を還流温度(98〜105℃)まで昇温し、そして22分間加熱攪拌することにより、初期縮合反応を行なった。
【0044】
次いで、その得られた初期縮合反応物に対して、予め蒸留水180mlに溶解した尿素120g(2.00mol)を、120分で添加が完了するように滴下した後、60分間加熱攪拌して、更に反応を進行せしめた。そして、その加熱攪拌による反応の後、反応溶液のpHが7となり、ホルマリンが消費されたことを確認し、その後攪拌混合しながら、反応液の温度(液温)が180℃程度となるまで、加熱及び減圧濃縮することにより、黄色透明固体の尿素変性ノボラック樹脂を得た。
【0045】
−実施例3− 尿素変性率20%ノボラック樹脂[モル比(F/(P+U))=0.60]の合成
先ず、温度計、バキュームスターラー及び冷却管を備えた3000mlの三口フラスコに、フェノール960g(10.21mol)及びホルマリン47%水溶液544g(8.53mol)と、触媒としての蓚酸6.0g(0.07mol)を収容した後、攪拌混合しながら、徐々に反応容器内を還流温度(98〜105℃)まで昇温し、そして22分間加熱攪拌することにより、初期縮合反応を行なった。
【0046】
次いで、その得られた初期縮合反応物に対して、予め蒸留水360mlに溶解した尿素240g(4.00mol)を、120分で添加が完了するように滴下した後、60分間加熱攪拌して、更に反応を進行せしめた。そして、その加熱攪拌による反応の後、反応溶液のpHが7となり、ホルマリンが消費されたことを確認し、その後攪拌混合しながら、反応液の温度(液温)が180℃程度となるまで、加熱及び減圧濃縮することにより、黄色透明固体の尿素変性ノボラック樹脂を得た。
【0047】
−実施例4− 尿素変性率30%ノボラック樹脂[モル比(F/(P+U))=0.60]の合成
先ず、温度計、バキュームスターラー及び冷却管を備えた3000mlの三口フラスコに、フェノール840g(8.94mol)及びホルマリン47%水溶液572g(8.96mol)と、触媒としての蓚酸6.0g(0.07mol)を収容した後、攪拌混合しながら、徐々に反応容器内を還流温度(98〜105℃)まで昇温し、そして30分間加熱攪拌することにより、初期縮合反応を行なった。
【0048】
次いで、その得られた初期縮合反応物に対して、予め蒸留水540mlに溶解した尿素360g(6.00mol)を、120分で添加が完了するように滴下した後、60分間加熱攪拌して、更に反応を進行せしめた。そして、その加熱攪拌による反応の後、反応溶液のpHが7となり、ホルマリンが消費されたことを確認し、その後攪拌混合しながら、反応液の温度(液温)が180℃程度となるまで、加熱及び減圧濃縮することにより、黄色透明固体の尿素変性ノボラック樹脂を得た。
【0049】
−実施例5− 尿素変性率40%ノボラック樹脂[モル比(F/(P+U))=0.60]の合成
先ず、温度計、バキュームスターラー及び冷却管を備えた3000mlの三口フラスコに、フェノール720g(7.66mol)及びホルマリン47%水溶液599g(9.39mol)と、触媒としての蓚酸6.0g(0.07mol)を収容した後、攪拌混合しながら、徐々に反応容器内を還流温度(98〜105℃)まで昇温し、そして32分間加熱攪拌することにより、初期縮合反応を行なった。
【0050】
次いで、その得られた初期縮合反応物に対して、予め蒸留水720mlに溶解した尿素480g(7.99mol)を、120分で添加が完了するように滴下した後、60分間加熱攪拌して、更に反応を進行せしめた。そして、その加熱攪拌による反応の後、反応溶液のpHが7となり、ホルマリンが消費されたことを確認し、その後攪拌混合しながら、反応液の温度(液温)が180℃程度となるまで、加熱及び減圧濃縮することにより、黄色透明固体の尿素変性ノボラック樹脂を得た。
【0051】
−実施例6− 尿素変性率50%ノボラック樹脂[モル比(F/(P+U))=0.60]の合成
先ず、温度計、バキュームスターラー及び冷却管を備えた3000mlの三口フラスコに、フェノール600g(6.38mol)及びホルマリン47%水溶液627g(9.82mol)と、触媒としての蓚酸6.0g(0.07mol)を収容した後、攪拌混合しながら、徐々に反応容器内を還流温度(98〜105℃)まで昇温した。次いで、この昇温の後、予め蒸留水900mlに溶解した尿素600g(9.96mol)を、120分で添加が完了するように滴下した後、60分間加熱攪拌して、反応を進行せしめた。そして、かかる加熱攪拌による反応の後、反応溶液のpHが7となり、ホルマリンが消費されたことを確認した。その後、攪拌混合しながら、反応液の温度(液温)が180℃程度となるまで、加熱及び減圧濃縮することにより、黄色透明固体の尿素変性ノボラック樹脂を得た。なお、本実施例では、投入する尿素の使用量が、ホルマリンの使用量より0.14mol多いため、上述の各実施例とは異なり、初期縮合反応を実施しなかった。
【0052】
−実施例7− 尿素変性率5%ノボラック樹脂[モル比(F/(P+U))=0.60]の合成
先ず、温度計、バキュームスターラー及び冷却管を備えた3000mlの三口フラスコに、フェノール1200g(12.77mol)及びホルマリン47%水溶液527g(8.26mol)と、触媒としての蓚酸6.3g(0.07mol)を収容した後、攪拌混合しながら、徐々に反応容器内を還流温度(98〜105℃)まで昇温した。次いで、予め蒸留水90mlに溶解した尿素60g(1.00mol)を、120分で添加が完了するように滴下した後、60分間加熱攪拌して、反応を進行せしめた。そして、かかる加熱攪拌による反応の後、反応溶液のpHが7となり、ホルマリンが消費されたことを確認した。その後、攪拌混合しながら、反応液の温度(液温)が180℃程度となるまで、加熱及び減圧濃縮することにより、黄色透明固体の尿素変性ノボラック樹脂を得た。
【0053】
−実施例8− 尿素変性率30%ノボラック樹脂[モル比(F/(P+U))=0.70]の合成
先ず、温度計、バキュームスターラー及び冷却管を備えた3000mlの三口フラスコに、フェノール840g(8.94mol)及びホルマリン47%水溶液667g(10.5mol)と、触媒としての蓚酸6.0g(0.07mol)を収容した後、攪拌混合しながら、徐々に反応容器内を還流温度(98〜105℃)まで昇温し、そして88分間加熱攪拌することにより、初期縮合反応を行なった。
【0054】
次いで、その得られた初期縮合反応物に対して、予め蒸留水540mlに溶解した尿素360g(6.00mol)を、120分で添加が完了するように滴下した後、60分間加熱攪拌して、更に反応を進行せしめた。そして、かかる加熱攪拌による反応の後、反応溶液のpHが7となり、ホルマリンが消費されたことを確認し、その後攪拌混合しながら、反応液の温度(液温)が180℃程度となるまで、加熱及び減圧濃縮することにより、黄色透明固体の尿素変性ノボラック樹脂を得た。
【0055】
−実施例9− 尿素変性率30%ノボラック樹脂[モル比(F/(P+U))=0.50]の合成
先ず、温度計、バキュームスターラー及び冷却管を備えた3000mlの三口フラスコに、フェノール840g(8.94mol)及びホルマリン47%水溶液476g(7.5mol)と、触媒としての蓚酸6.0g(0.07mol)を収容した後、攪拌混合しながら、徐々に反応容器内を還流温度(98〜105℃)まで昇温し、そして10分間加熱攪拌することにより、初期縮合反応を行なった。
【0056】
次いで、その得られた初期縮合反応物に対して、予め蒸留水540mlに溶解した尿素360g(6.00mol)を、120分で添加が完了するように滴下した後、60分間加熱攪拌して、更に反応を進行せしめた。そして、かかる加熱攪拌による反応の後、反応溶液のpHが7となり、ホルマリンが消費されたことを確認し、その後攪拌混合しながら、反応液の温度(液温)が180℃程度となるまで、加熱及び減圧濃縮することにより、黄色透明固体の尿素変性ノボラック樹脂を得た。
【0057】
−実施例10− モノメチロール尿素変性率20%ノボラック樹脂[モル比(F/(P+U))=0.60]の合成
先ず、1000mlのフラスコに、尿素240g(4.00mol)、蒸留水240ml及びホルマリン47%水溶液255g(4.00mol)を収容し、pH=9〜10になるまでNaOHを加えて、反応させることにより、液中に懸濁した形態のモノメチロール尿素を得た。そして、この得られたモノメチロール尿素の懸濁液を、分液ロートに移した。
【0058】
次いで、温度計、バキュームスターラー及び冷却管を備え、更に、上記のメチロール尿素懸濁液を収容した分液ロートを取り付けた3000mlの四口フラスコに、フェノール960g(10.21mol)及びホルマリン47%水溶液289g(4.52mol)と、触媒としての蓚酸6.0g(0.07mol)を収容した後、攪拌混合しながら、徐々に反応容器内を還流温度(98〜105℃)まで昇温し、そして分液ロートから、モノメチロール尿素懸濁液を、120分で添加が完了するように滴下した後、60分間加熱攪拌を行なうことにより、反応を進行せしめた。そして、かかる加熱攪拌による反応の後、反応溶液のpHが7となり、ホルマリンが消費されたことを確認した。その後、攪拌混合しながら、反応液の温度(液温)が180℃程度となるまで、加熱及び減圧濃縮を行なうことにより、黄色透明固体の尿素変性ノボラック樹脂を得た。
【0059】
−実施例11− モノメチロール尿素変性率30%ノボラック樹脂[モル比(F/(P+U))=0.50]の合成
先ず、1000mlのフラスコに、尿素360g(6.00mol)、蒸留水540ml及びホルマリン47%水溶液382g(6.00mol)を収容し、pH=9〜10になるまでNaOHを加えて、反応させることにより、液中に懸濁した形態の白色固体のモノメチロール尿素を得た。そして、この得られたモノメチロール尿素懸濁液を、分液ロートに移し、フェノールとの縮合反応に使用した。
【0060】
次いで、温度計、バキュームスターラー及び冷却管を備え、更に、上記のメチロール尿素懸濁液を収容した分液ロートを取り付けた3000mlの四口フラスコに、フェノール840g(8.94mol)及びホルマリン47%水溶液96g(1.51mol)と、触媒としての蓚酸6.0g(0.07mol)を収容した後、攪拌混合しながら、徐々に反応容器内を還流温度(98〜105℃)まで昇温し、そして分液ロートから、モノメチロール尿素懸濁液を、120分で添加が完了するように滴下した後、60分間加熱攪拌を行なうことにより、反応を進行せしめた。そして、かかる加熱攪拌による反応の後、反応溶液のpHが7となり、ホルマリンが消費されたことを確認した。その後、攪拌混合しながら、反応液の温度(液温)が180℃程度となるまで、加熱及び減圧濃縮行なうことにより、黄色透明固体の尿素変性ノボラック樹脂を得た。
【0061】
−実施例12− モノメチロール尿素変性率30%ノボラック樹脂[モル比(F/(P+U))=0.60]の合成
先ず、1000mlのフラスコに、尿素360g(6.00mol)、蒸留水360ml及びホルマリン47%水溶液382g(6.00mol)を収容し、pH=9〜10になるまでNaOHを加えて、反応させることにより、液中に懸濁した形態のモノメチロール尿素を得た。そして、この得られたモノメチロール尿素の懸濁液を、分液ロートに移した。
【0062】
次いで、温度計、バキュームスターラー及び冷却管を備え、更に上記のメチロール尿素懸濁液を収容した分液ロートを取り付けた3000mlの四口フラスコに、フェノール840g(8.94mol)及びホルマリン47%水溶液190g(2.97mol)と、触媒としての蓚酸6.0g(0.07mol)を収容した後、攪拌混合しながら、徐々に反応容器内を還流温度(98〜105℃)まで昇温し、そして分液ロートから、モノメチロール尿素懸濁液を、120分で添加が完了するように滴下した後、60分間加熱攪拌を行なうことにより、反応を進行せしめた。そして、かかる加熱攪拌による反応の後、反応溶液のpHが7となり、ホルマリンが消費されたことを確認した。その後、攪拌混合しながら、反応液の温度(液温)が180℃程度となるまで、加熱及び減圧濃縮を行なうことにより、黄色透明固体の尿素変性ノボラック樹脂を得た。
【0063】
−実施例13− ジメチロール尿素変性率20%ノボラック樹脂[モル比(F/(P+U))=0.50]の合成
先ず、1000mlのフラスコに、尿素240g(4.00mol)、蒸留水360ml及びホルマリン47%水溶液453g(7.10mol)を収容し、pH=9〜10になるまでNaOHを加えて、反応させることにより、白色固体のジメチロール尿素懸濁物を得た。
【0064】
次いで、温度計、バキュームスターラー及び冷却管を備えた3000mlの三口フラスコに、フェノール960g(10.21mol)と、触媒としての蓚酸6.0g(0.07mol)を収容した後、攪拌混合しながら、徐々に反応容器内を還流温度(98〜105℃)まで昇温し、そして上記で得られたジメチロール尿素懸濁物を、10分間隔にて、120分かけて、一定割合で分割投入した。更に、60分間加熱攪拌を行なうことにより、反応を進行せしめた。そして、かかる反応の後、反応溶液のpHが7となり、ホルマリンが消費されたことを確認した。その後、攪拌混合しながら、反応液の温度(液温)が180℃程度となるまで、加熱及び減圧濃縮を行なうことにより、黄色透明固体の尿素変性ノボラック樹脂を得た。
【0065】
−実施例14− ジメチロール尿素変性率20%ノボラック樹脂[モル比(F/(P+U))=0.60]の合成
先ず、1000mlのフラスコに、尿素240g(4.00mol)、蒸留水360ml及びホルマリン47%水溶液544g(8.53mol)を収容し、pH=9〜10になるまでNaOHを加えて、反応させることにより、白色固体のジメチロール尿素懸濁物を得た。
【0066】
次いで、温度計、バキュームスターラー及び冷却管を備えた3000mlの三口フラスコに、フェノール960g(10.21mol)と、触媒としての蓚酸6.0g(0.07mol)を収容した後、攪拌混合しながら、徐々に反応容器内を還流温度(98〜105℃)まで昇温し、そして上記で得られたジメチロール尿素懸濁物を、10分間隔にて、120分かけて、一定割合で分割投入した。更に、60分間加熱攪拌を行なうことにより、反応を進行せしめた。そして、かかる反応の後、反応溶液のpHが7となり、ホルマリンが消費されたことを確認した。その後、攪拌混合しながら、反応液の温度(液温)が180℃程度となるまで、加熱及び減圧濃縮を行なうことにより、黄色透明固体の尿素変性ノボラック樹脂を得た。
【0067】
−比較例1− 尿素一括投入による尿素変性30%ノボラック樹脂[モル比(F/(P+U))=0.60]の合成
温度計、バキュームスターラー及び冷却管を備えた500mlの三口フラスコに、予め蒸留水の120mlに溶解した尿素90g(1.50mol)と、フェノール210g(2.13mol)及びホルマリン47%水溶液139g(2.18mol)と、触媒としての蓚酸1.5g(0.02mol)とを収容した後、攪拌混合しながら、徐々に反応容器内を還流温度(98〜105℃)まで昇温し、更に約240分間、加熱攪拌を行なうことにより、縮合反応せしめた。そして、かかる反応の後、攪拌混合しながら、加熱及び減圧濃縮下、反応液の温度(液温)が150℃程度にて、ゲル化し、固化してしまった。
【0068】
−比較例2− モノメチロール尿素変性6%ノボラック樹脂[モル比(F/(P+U))=0.68]の合成
温度計、バキュームスターラー及び冷却管を備えた500mlのフラスコに、先ず、尿素12g(0.20mol)及びホルマリン47%水溶液23g(0.36mol)を収容し、50℃にて150分間加熱攪拌した後、フェノール188g(2.00mol)と、触媒としての蓚酸0.94g(0.01mol)とを収容し、攪拌混合しながら、徐々に反応容器内を還流温度(98〜105℃)まで昇温し、そして60分間攪拌して、反応させた。更に、ホルマリン47%水溶液73g(1.14mol)及び蓚酸0.6g(6.00mmol)を加えて、120分還流攪拌して、反応を進行せしめた。そして、かかる反応の後、攪拌混合しながら、加熱及び減圧濃縮したところ、反応液の温度(液温)が150℃程度にてゲル化し、固化してしまった。
【0069】
−比較例3− ノボラック樹脂[モル比(F/P)=0.60]の合成
温度計、バキュームスターラー及び冷却管を備えた3000mlの三口フラスコに、フェノール1200g(12.77mol)及びホルマリン47%水溶液490g(7.68mol)と、触媒としての蓚酸3.6g(0.04mol)を収容した後、攪拌混合しながら、徐々に反応容器内を還流温度(98〜105℃)まで昇温し、更に約240分間加熱攪拌を行なうことにより、縮合反応せしめた。そして、かかる反応の後、攪拌混合しながら、反応液の温度(液温)が180℃程度となるまで、加熱及び減圧濃縮することにより、黄色透明固体のノボラック型のフェノール樹脂を得た。
【0070】
[特性評価1]
上記で得られた各種の尿素変性ノボラック樹脂組成物について、以下の測定方法に従って、それぞれ、各種の物性を測定した。そして、その得られた結果を、下記表2及び表3に併わせ示した。
【0071】
−重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、未反応フェノール量の測定−
尿素変性ノボラック樹脂組成物の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の測定は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ(GPC)法により測定されるフェノール換算の分子量として求めた。なお、測定装置には、GPC測定装置(東ソー株式会社製、商品名:HLC8320GPC)を用い、またカラムには、混合ポリスチレンゲルカラム(東ソー株式会社製、商品名:G1000HXL、G2000JXL)を用いた。また、同時に、かかるGPC法によって、未反応フェノール量が求められた。
【0072】
−窒素含有率の測定−
各々の尿素変性ノボラック樹脂の窒素含有率は、ケルダール窒素定量法により求めた。
【0073】
−流れ、ゲル化時間、融点の測定−
各々の尿素変性ノボラック樹脂の流れ、ゲル化時間および融点は、JIS K 6910に準拠して測定した。
【0074】
−粘度の測定−
各々の尿素変性ノボラック樹脂の粘度は、コーンプレート粘度計(東亜工業株式会社製、商品名:CV1S)を用い、試料の0.15gを秤取して、プレート温度:160℃において、その溶融粘度を測定することによって、行なった。
【0075】
−熱量測定−
示差走査熱量計(DSC)による各々の尿素変性ノボラック樹脂の熱分解に伴う吸熱量の測定は、以下の様にして測定した。
【0076】
すなわち、示差走査熱量計として、リガク社製の商品名:DSC8230 を用い、粉末試料の5.00mgにヘキサメチレンテトラミンを0.75mg混合し、窒素雰囲気下、25℃から500℃まで5℃/分で昇温させることによって得られた、分解に伴う吸熱カーブ(DSC曲線)から観測される吸熱ピークトップの温度を測定し、また吸熱量は、上記DSC曲線から算出した。このときに測定されるDSC曲線は、横軸の温度の上昇に伴って縦軸の熱量が徐々に上昇する曲線を描くこととなるが、特定の温度範囲において、吸熱により熱量が一旦下降する曲線を描くものであり、この熱量が下降する曲線の頂点部分を吸熱ピークとしている(
図2の実施例3及び実施例4の300℃〜400℃の範囲の曲線を参照)。
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
[特性評価2] 尿素変性ノボラック樹脂の構造解析
−尿素変性ノボラック樹脂におけるメチレン結合の結合様式及びオルソ/パラ(o/p)結合比の測定−
各々の尿素変性ノボラック樹脂におけるメチレン結合の結合様式及びo/p結合比の測定は、核磁気共鳴装置(米国:バリアン社製;INOVA 400)を用いて、13C−NMR(100MHz、溶媒:重ピリジン−d5)を測定して、[o,o−フェノール−CH
2 −フェノール]結合、[o,p−フェノール−CH
2 −フェノール]結合、[p,p−フェノール−CH
2 −フェノール]結合、[o−フェノール−CH
2 −NHCO−]結合、[p−フェノール−CH
2 −NHCO−]結合、[−NH−CH
2 −NH−]結合の存在密度を求め、それぞれの結合比を計算した。なお、この測定に用いた樹脂は、実施例4、実施例11及び実施例14のものである。その結果を、下記表4に示す。
【0080】
【表4】
【0081】
−赤外線(IR)吸収スペクトルの測定−
各々の尿素変性ノボラック樹脂の赤外線(IR)スペクトルの測定を、赤外線分光器(JASCO社製;FT/IR-4200)を用いて測定し、NH結合の特性吸収帯(1450cm
-1)、CH
2 結合の特性吸収帯(1300〜1400cm
-1)、C=O結合の特性吸収帯(1700cm
-1)の存在を確認した。そこでは、特に、C=O結合の存在により、尿素変性ノボラック樹脂が形成されていることを認識することができる。なお、この測定に用いた樹脂は、実施例3、実施例4及び比較例3のものである。そして、その結果が、
図1に示されている。
【0082】
また、実施例3、実施例4及び比較例3で得られた尿素変性ノボラック型樹脂について、示差走査熱量計(DSC)を用いて、各々の尿素変性ノボラック樹脂の熱分解に伴うDSC曲線を求め、その結果を
図2に示した。
【0083】
上記尿素変性ノボラック樹脂の構造解析により、フェノール系化合物と、アルデヒド類と、尿素若しくはメチロール尿素とを共縮合せしめることによって、製造されてなる、本発明に従う尿素変性ノボラック型フェノール樹脂は、一例を示すと、下記一般式(1)で表わされるものである。なお、式中、mは0〜20程度の整数を示す。
【化1】
【0084】
次いで、かくの如くして得られた各種の尿素変性ノボラック樹脂を用いて、シェルモールド用レジンコーテットサンド(RCS)(試料1〜15)を、それぞれ、以下の手法に従って製造した。
【0085】
−試料1〜15の製造及びその評価−
実験用スピードミキサーに対して、150〜180℃に予熱した耐火性粒子(フラタリー)の7000gと、実施例1〜14又は比較例3の各樹脂の140g(2.0%/耐火性粒子)とを投入し、ミキサー内にて60秒間混練することにより、耐火性粒子表面に、それぞれの尿素変性ノボラック樹脂を溶融被覆せしめた。次いで、ミキサー内に、硬化剤であるヘキサメチレンテトラミンの21g(15.0%/樹脂)を冷却水:105g(1.5%/耐火性粒子)に溶解してなるヘキサメチレンテトラミン水溶液を添加し、送風冷却した後、ステアリン酸カルシウムの7g(0.1%/耐火性粒子)を添加することにより、各種のRCS(試料1〜15)を得た。この得られた試料1〜15については、下記の試験法に従って、その特性の測定を行なった。その結果を、下記表5に示す。
【0086】
[特性評価3]
−融着点の測定−
上記において製造された各種シェルモールド用RCSを用いて、JACT法に準じて、それぞれ測定した。
【0087】
−鋳型強度の測定−
上記で製造された各種シェルモールド用RCSを用いて、JIS−K−6910に準じて、それぞれ、JIS式テストピース(幅:10mm×厚さ:10mm×長さ:60mm、焼成条件:250℃×60秒間)を作製し、そしてその得られたJIS式テストピース(以下、単に、テストピース又はTPとも言う)について、冷間時における強度(MPa)を、JACT試験法:SM−1に準じて測定し、鋳型強度として評価した。
【0088】
【表5】
【0089】
上記の表2〜表5の結果から明らかなように、尿素又はメチロール尿素を用いて共縮合させて、尿素変性ノボラック樹脂(尿素変性ノボラック型フェノール樹脂)を得る場合に、比較例1〜2の如く、最初に、尿素又はメチロール尿素の使用量の全量を一括投入すると、ゲル化して、良好な樹脂が形成され得ないのに対して、本発明に従う実施例1〜14のように、一定割合の添加速度で、尿素又はメチロール尿素を少しづつ加えることにより、利便性の良い、低粘度を有する尿素変性ノボラック樹脂を得ることができるのである。
【0090】
また、実施例1等の結果から明らかな如く、フェノールとホルマリンとを先に反応(初期縮合反応)させてから、尿素を少しづつ投入するようにすることにより、樹脂の粘度を一層有利に下げることができることが認められる。具体的には、添加する尿素の量と残留している未反応ホルマリンの量とが、略同一のモル量になった時点で、尿素の投入を開始することにより、尿素変性ノボラック樹脂の安定した低粘度化を、有利に実現することができるのである。
【0091】
さらに、モル比(F/(P+U))を0.5〜0.7程度の範囲内とすることで、目的とする尿素変性ノボラック樹脂を良好に製造することができることも、容易に理解されるところである。なお、かかるモル比が0.8を超えるようになると、樹脂の粘度が高くなり過ぎるために、モル比の上限は、0.8までが望ましく、より好適なモル比の範囲は、0.50〜0.75と考えられる。
【0092】
なお、本発明に従う尿素変性ノボラック型フェノール樹脂は、尿素若しくはメチロール尿素(U)によるフェノール系化合物(P)の尿素変性率(U/(U+P))が5〜50%程度となる範囲内において、有利に製造することが可能である。特に、表5より明らかな如く、尿素変性率を5〜30%の範囲として得られた尿素変性ノボラック型フェノール樹脂にあっては、それを用いて、シェルモールド用レジンコーテットサンド(RCS)を製造し、その得られたRCSにて鋳型を製造することで、高い鋳型強度を有する鋳型を得ることができるのである。ここで、尿素変性率は、質量基準において求められるものであり、またメチロール尿素を用いた場合において、その合成に用いられた尿素量(質量)をUの値に用いて、尿素変性率が求められることとなる。
【0093】
また、本発明に従う尿素変性ノボラック型フェノール樹脂は、[フェノール−CH
2 −NHCO−]結合数、[−NH−CH
2 −NH−]結合数、および[フェノール−CH
2 −フェノール]結合数の合計に占める[フェノール−CH
2 −NHCO−]結合数の平均割合が25〜35%程度であり、窒素含有率に比例した吸熱量を有し、難燃性が高いことが証明される。更に、そのような樹脂の吸熱量は、5J/g以上であることが望ましく、より好適には5〜200J/gであることが良く、これによって、その吸熱作用により、ヒケ巣や鋳肌不良などを抑えることができる。更にまた、表2、3に示される実施例から、重量平均分子量(Mw)が550〜2500程度、コーンプレート粘度が500〜4500mPa・s程度のものを得ることが出来ることから、取扱が容易となることも、合わせて証明されるのである。そして、そのような尿素変性ノボラック型フェノール樹脂の鋳型用途への適用を鑑みた場合、使用可能な鋳型強度を発現できることも、明らかなところである。