【実施例】
【0009】
≪はんだ印刷機のハード構成および印刷動作≫
図1に外観を示す実施例のはんだ印刷機(以下、単に「印刷機」という場合ある)は、プリント配線板等の基板に、所定のパターンでクリームはんだ(以下、単に、「はんだ」と言う場合がある)を印刷するものであり、例えば、電気回路製造ラインに配置される。
図2には、当該印刷機のハウジングを構成する外装パネルを外した状態、つまり、印刷機の内部構造を示す。
【0010】
図2から解るように、印刷機は、躯体となるフレーム10と、フレーム10のベースの部分に固定して配設されたコンベア型の基板搬送装置12と、基板搬送装置12によって搬送されてきた基板を設定位置において昇降させる基板昇降装置14と、フレーム10に位置調整可能に保持されてスクリーン16が嵌められるスクリーン枠18と、1対のスキージ20を有するスキージ装置22と、スキージ装置20を前後に移動させることによってスキージ20をスクリーン16に沿って移動させるスキージ移動装置24とを含んで構成されている。スキージ装置22は、スキージ移動装置24が有する可動ビーム26に取り付けられており、スキージ移動装置24は、その可動ビーム26を前後に移動させることでスキージ装置22を前後に移動させる。スキージ装置22は、1対のスキージ20の各々を個別に昇降させるスキージ昇降装置28を有している。なお、印刷機は、詳細な説明を省略するが、不織布等を有してスクリーン16の下面を清浄するためのクリーニング装置30をも備えている。
【0011】
この印刷機による印刷作業について説明する。まず、基板が、基板搬送装置12によって、外装パネルに設けられた開口(
図1参照)を通過するようにして搬入され、設定位置において停止させられる。この位置において、基板は、基板昇降装置14によって、上昇させられ、スクリーン16の下面に密着させられる。この状態で、スキージ昇降装置28によって、1対のスキージ20の一方が、先端がスクリーン16の上面に接するまで下降させられ、次いで、スキージ移動装置22によって、下降させられているスキージ20が、前後方向における一方向に移動させられる。つまり、所定の印刷動作が行われるのである。詳しく言えば、下降させられているスキージが20が前方側のものであるときには、後方に向かって移動させられ、後方側のものであるときには、前方に向かって移動させられる。はんだは、スクリーン16の上面上に供給されており、スクリーン16には、複数の開口が、基板に応じて設定されたパターンで形成されている。スキージ20の前方または後方への移動によって、はんだがそれらの開口を通過して基板上に印刷される。はんだが印刷された基板は、基板昇降装置14によって下降させられ、基板搬送装置12によって、当該印刷機から搬出される。
【0012】
上記印刷作業を始めとする本印刷機に関する種々の制御は、コンピュータを主体として構成された制御装置32によって行われる。また、その制御に関する入出力端末として、本印刷機は、ディスプレイを有する操作パネル34を有しており(
図1参照)、操作パネル34は、制御装置32に繋げられている。操作パネル34には、当該印刷機の種々の状態,オペレータに対する指示および警告が表示されるとともに、当該印刷機に対してオペレータが行う種々の指令が入力可能とされている。さらに、印刷機は、後述のはんだに関する情報を入力するためのデバイスとして、バーコードリーダ36を備えており、そのバーコードリーダ36も制御装置32に繋げられている。
【0013】
≪はんだ量の検出≫
1対のスキージ20の各々による印刷動作は、交互に行われるため、
図3に示すように、スクリーン16上に供給されているはんだは、1対のスキージ20の間に、ロール形状で、つまり、はんだロール40として存在する。詳しく言えば、
図3(a)は、印刷動作においてスキージ20の移動を停止した状態、
図3(b)は、印刷動作を行っていたスキージ20を上昇させた状態を、それぞれ示しており、スキージ20を上昇させた後には、はんだロール40は、
図3(c)に示す形状、つまり、概して円柱形状となる。
【0014】
本印刷機は、はんだロール40の径、詳しく言えば、直径を測定するために、1対のスキージ20の間に配設されたはんだセンサ50を備えている。はんだセンサ50は、自身の真直ぐ下の部分に存在する物体の光学的特性(例えば、色等)を検出するものであり、その物体がスクリーン16であるかはんだであるかを識別可能なものとされている。
図3(c)に示すように、このはんだセンサ50をスキージ移動装置24によって所定の速度で前後に移動させることにより、はんだセンサ50は、スクリーン16上を走査し、はんだロール40の径を測定する。はんだロール40の径(以下、「はんだロール径」と言う場合がある)は、スクリーン16上に供給されているはんだの量(以下、「はんだ量」と言う場合がある)に依存するため、はんだロール径に基づくことにより、はんだ量を検出することが可能である。本印刷機は、はんだロール径に基づいてはんだ量を検出する機能を備えており、はんだセンサ50は、はんだ量検出器として機能するものとされている。
【0015】
≪はんだの追加供給作業≫
本印刷機では、はんだの追加供給は、当該印刷機のオペレータによる手作業にて行われる。印刷機は、
図1に示すように、ハウジングの一部、つまり、外装パネルの一部として、扉60を備えており、はんだの追加供給の作業は、その扉60を開けた状態で行われる。詳しく説明すれば、追加供給されるはんだを、容器から適量だけ取り出して、スクリーン16上に載せ置くようにして行われる。はんだが追加供給された場合には、所定の練合せを行う。具体的に説明すれば、1対のスキージ20による上記印刷動作と同じ動作を繰り返し行うことで、はんだの調整が、つまり、はんだロール40の調製が行われるのである。
【0016】
はんだの追加供給の作業は、当該印刷機によるはんだの印刷が行われていないときに行われるべきである。そのため、本印刷機には、
図1に示すように、扉60が開状態にあるか閉状態にあるかを検出するための扉センサ62、および、扉60が開けられることを禁止するための扉ロック機構64が、それぞれ設けられており、印刷が行われているときにはんだの追加供給の作業が行われることが、逆に言えば、扉60が開いているときに印刷が行われることが、防止されている。なお、扉のロックは、操作パネル34の扉ロック解除スイッチ66によって、手動で解除することも可能である。
【0017】
≪はんだの追加供給に関連する2つの認識処理≫
本印刷機は、はんだの追加供給に関連して、2つの認識処理、すなわち、2つの確認処理(ベリファイ)を行う機能を有している。2つの認識処理の1つは、実際にはんだが追加供給されたか否かを認識する処理であり、もう1つは、追加供給されたはんだが適正なものであるか否かを認識する処理である。それら2つの認識処理は、
図4にフローチャートを示すはんだ追加供給管理プログラムが制御装置32において実行されることによって行われる。そして、そのプログラムが実行されることによって、制御装置32は、
図5に示すような機能部を有するように構成されることになる。つまり、
図5に示す各機能部が実現されるのである。以下に、それら
図4,
図5を参照しつつ、当該プログラムのフローチャートに沿って、上記2つの認識処理について説明する。
【0018】
はんだ追加供給管理プログラムに従う処理では、まず、ステップ1(以下、「S1」と略す。他のステップも同様である。)において、はんだを追加供給すべき旨の指示があったか否か、若しくは、扉60の解除操作があったか否かが判断される。制御装置32は、印刷作業の管理を行う作業管理部70を有しており、この作業管理部70は、印刷された基板の枚数を把握することによって、はんだの追加供給のタイミングを管理している。上述のはんだを追加供給すべき旨の指示は、作業管理部70から発せられ、その指示が操作パネル34に表示されることで、オペレータは、はんだの追加供給の作業を実行することになる。一方、扉60の解除操作は、操作パネル34の扉ロック解除スイッチ66が操作された場合に発せられる。この操作は、上記作業管理部70の指示とは関係なくはんだを追加供給するような場合に、オペレータによって行われる。ちなみに、上記指示,操作は、はんだの追加供給に関連して、扉60を開けることを許容すべき旨の指令と解釈することができる。
【0019】
はんだを追加供給すべき旨の指示、若しくは、扉ロックの解除操作があった事実は、はんだ量の検出に関する制御を司るはんだ検出制御部72に入力される。はんだ検出制御部72は、それらの指示,操作があった場合には、はんだが追加供給されるものとみなして、扉ロック機構64による扉60のロックの解除に先立って、S2において、その時点でのはんだのロール径を、はんだが追加供給される前のはんだロール径(追加前はんだロール径)φ
Bとして、はんだセンサ50に測定させる。つまり、上述した扉60を開けることを許容すべき旨の指令をトリガとして、スキージ装置22を制御することによって、はんだ量の検出を行わせるのである。はんだ検出制御部72は、はんだロール径φ
Bの測定の後に、S3において、扉ロック制御部74に指示を送り、その指示を受けた扉ロック制御部74は、扉ロック機構64に、扉ロックの解除を実行させる。
【0020】
はんだの追加供給の際には、扉60がオペレータによって開けられ、追加供給の作業が終了した後に、扉60は、オペレータによって再び閉められる。はんだ検出制御部72は、このような扉60の動作を、扉センサ62を利用して検出しており、S4において、扉60が開状態から閉状態になったと判断した場合には、はんだの印刷が再開されるとみなして、S5において、扉ロック制御部74に扉60をロックする旨の指示を送る。この指示を受けた扉ロック制御部74は、扉ロック機構64に扉60をロックさせる。その後、はんだ検出制御部72は、S6において、再度、その時点でのはんだのロール径を、はんだが追加供給された後のはんだロール径(追加後はんだロール径)φ
Aとして、はんだセンサ50に測定させる。
【0021】
上述したように、はんだ検出制御部72は、はんだの追加供給の際に必然的に行われる扉60の開閉に関連して、はんだの追加供給前,追加供給後のはんだロール径を測定するように構成されている。つまり、扉60の開閉に依存して、はんだの追加供給の前後の2回のはんだ量の検出が行われるように構成されているのである。この構成により、本印刷機では、はんだの追加供給がオペレータの手作業によって行われるものであるにも拘わらず、確実に、その作業の前後のはんだ量を把握することが可能とされている。
【0022】
はんだセンサ50によって測定された追加前はんだロール径φ
Bおよび追加後はんだロール径φ
Aは、S7において、はんだ追加判断部76によって比較される。詳しく言えば、追加後はんだロール径φ
Aから追加前はんだロール径φ
B引いたロール径差Δφが、閾値Δφ
THよりも大きいか否かが判断され、大きい場合に、はんだが追加供給されたと判断され、小さい場合に、はんだが追加供給されていないと判断される。この判断が行われることで、本印刷機は、実際にはんだが追加供給されたか否かを認識する機能を有しているのである。はんだが追加供給されていない場合は、S8において、未だはんだが追加供給されていない旨の警告が、操作パネル34を介して、オペレータに発せられる。一方、S7においてはんだが実際に供給されたと判断された場合には、S9において、追加したはんだのIDを読み取る旨の指示が、操作パネル34を介して、オペレータに発せられる。
【0023】
図6に示すように、はんだが収容されている容器90には、バーコード92が付されており、追加供給されたはんだのIDは、そのはんだが収容されていた容器90に付されたバーコード92をバーコードリーダ36によって読み取ることによって取得される。つまり、バーコード92は、追加供給されたはんだの容器90に付されたそのはんだについての識別子であり、バーコードリーダ36は、その識別子を読み取るための識別子読取器として機能する。そして、バーコードリーダ36による読み取り結果は、実供給はんだ認識用情報入手部78に送られ、S10において、その読み取り結果から、実供給はんだ認識用情報入手部78によって、実際に供給されたはんだの種別を認識するための情報である実供給はんだ認識用情報が入手される。
【0024】
一方、現在行っている印刷作業に対して適正なはんだについての情報、つまり、供給されるべきはんだの種別についての情報である適正はんだ情報は、適正はんだ情報記憶部80に記憶されている。この情報は、操作パネル34から入力されることによって記憶される、若しくは、当該印刷作業についての印刷プログラムの中に存在する情報に基づいて記憶される。
【0025】
実供給はんだ認識用情報の入手の後、S11において、その情報と上記適正はんだ情報とが比較される。この比較は、追加はんだ適否認定部82によって行われる。具体的には、追加はんだ適否認定部82によって、実供給はんだ認識用情報が示すはんだ種別が、適正はんだ情報が示すはんだの種別と一致しているか否かが判定されることで、追加供給されたはんだの適否が認定される。この認定が行われることで、本印刷機は、追加供給されたはんだが適正なものであるか否かを認識する機能を有しているのである。適正であると認定された場合には、S12において、印刷作業が許容される。つまり、制御装置32は、印刷を再開するために操作パネル34に行われる操作を受け付けるのである。
【0026】
一方、S11において追加供給されたはんだが適正ではない、すなわち、不適と認定された場合には、S13において、印刷作業が禁止される。つまり、制御装置32は、印刷を再開するために操作パネル34に行われる操作を受け付けないようにするのである。この印刷作業の禁止は、作業禁止部84によって行われる。さらに、S14において、作業禁止部84は、作業禁止に引き続き、追加供給されたはんだの種別が適正なはんだの種別と不一致である旨の警告を、操作パネル34を介して、オペレータに行う。
【0027】
上記追加供給されたはんだが適正なものであるか否かを認識する機能、および、追加供給されたはんだが不適と認定された場合の処置を実行する機能により、不適なはんだによる印刷作業が未然に防止されることになる。なお、はんだ追加供給管理プログラムは、印刷が再開される都度、繰り返し実行される。
【0028】
≪変形例≫
上記実施例の印刷機は、基板にクリームはんだを印刷するためのものであるが、本発明は、印刷対象物が特に限定されるものではなく、スクリーンを利用してクリームはんだを印刷する印刷機に対して広く適用できる。また、上記実施例の印刷機では、はんだロール径に基づいてはんだ量を検出するように構成されていたが、本発明では、はんだ量の検出の具体的な手法については、特に限定されない。本発明の印刷機は、例えば、スクリーン上に供給されているはんだの重量を測定することによって、はんだ量を検出するように構成されてもよい。
【0029】
上記実施例の印刷機では、実供給はんだ認識用情報を、容器に付されたバーコードを読み取ることによって入手するように構成されていたが、識別子は特に限定されず、例えば、QRコード(登録商標)等であってもよい。また、本発明の印刷機は、識別子を読み取るのではなく、操作パネル等へオペレータが入力する情報に基づいて、実供給はんだ認識情報を入手するように構成されてもよい。