(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の整流器(15)を備えたカスケード式マルチレベル電気変換器の動作方法であって、各整流器(15)が、互いに直列に接続された二つのスイッチ(S)をそれぞれ備えた二つの分岐部を有するH形ブリッジ回路を備えており、このカスケード式マルチレベル変換器の交流側の全体の交流電圧が整流器(15)の交流側の交流電圧の合計と等しくなるように、これらの整流器(15)が、このカスケード式マルチレベル変換器の交流側で互いに直列に接続されている方法において、
変調器(2)が、一定数のレベルシフトキャリア信号(cr)を用いて、レベルシフトパルス幅変調プロセスによりマルチレベルパルス幅変調信号(Lk)を反復して発生させる工程であって、この一定数が動作中の整流器(15)の分岐部の合計数と等しく、このマルチレベルパルス幅変調信号(Lk)が、動作中の整流器の分岐部の合計数と等しい整数の信号レベルを取ることができる工程と、
変調器(2)が、制御機器(3)にマルチレベルパルス幅変調信号(Lk)を出力して、この制御機器(3)が、このマルチレベルパルス幅変調信号(Lk)から、整流器(15)のスイッチ(5)を制御する制御信号を発生して出力する工程と、
このカスケード式マルチレベル変換器の切換状態が、カスケード式マルチレベル変換器に配備された整流器(15)のスイッチ(S)の切換状態により表されて、このカスケード式マルチレベル変換器の切換状態のレベル数が、制御機器(3)に入力されるマルチレベルパルス幅変調信号のレベル数と等しく、この制御機器(3)の制御中に、この制御機器(3)に出力されたマルチレベルパルス幅変調信号(Lk)の変化が、このカスケード式マルチレベル変換器の切換状態の変更を必要とする毎に、動作中の整流器(15)の所定の反復シーケンスに基づき整流器(15)の中の一つを選択して、この選択された整流器(15)を制御することによって、切換状態の所要の変更を行ない、この整流器(15)の中の一つの選択は、マルチレベルパルス幅変調信号の変化がカスケード式マルチレベル変換器の切換状態のレベル数をより高いレベルに変更することを必要とする毎に、動作中の整流器(15)の第一の所定の反復シーケンスに基づき整流器(15)の中の一つを選択し、マルチレベルパルス幅変調信号の変化がカスケード式マルチレベル変換器の切換状態のレベル数をより低いレベルに変更することを必要とする毎に、動作中の整流器(15)の第二の所定の反復シーケンスに基づき整流器(15)の中の一つを選択するように行なわれる工程と、
を有する方法。
動作中の各整流器(15)の第二の切換状態の最後のサブ状態に関する情報が保存されて、次回、その整流器(15)を第二の切換状態に切り換える必要が有る場合、その整流器が第二の切換状態の異なるサブ状態に移行される請求項2に記載の方法。
故障している整流器(15)に関する情報が制御機器(3)に転送されて、その故障している整流器(15)が動作中の整流器(15)の反復シーケンスから除外される請求項1から3までのいずれか一つに記載の方法。
このカスケード式マルチレベル変換器内で互いに直接接続された隣接する整流器(15)の全てのペアが、シーケンスの始端が続くと考えられるシーケンスの終端を含む所定のシーケンス内で、それ以外の取り得る最大数の整流器(15)によって分離される請求項5に記載の方法。
複数の整流器(15)を備えたカスケード式マルチレベル電気変換器の動作を制御する制御装置であって、各整流器(15)が、互いに直列に接続された二つのスイッチをそれぞれ備えた二つの分岐部を有するH形ブリッジ回路を備えており、このカスケード式マルチレベル変換器の交流側の全体の交流電圧が整流器(15)の交流側の交流電圧の合計と等しくなるように、これらの整流器(15)が、このカスケード式マルチレベル変換器の交流側で互いに直列に接続されている制御装置において、
この装置が、一定数のレベルシフトキャリア信号(cr)を用いて、レベルシフトパルス幅変調プロセスによりマルチレベルパルス幅変調信号(Lk)を反復して発生するように構成された変調器(2)を備えており、この一定数が動作中の整流器(15)の分岐部の合計数と等しく、このマルチレベルパルス幅変調信号(Lk)が、動作中の整流器(15)の分岐部の合計数と等しい整数のレベルを取ることができ、
この装置が、このマルチレベルパルス幅変調信号(Lk)から、整流器(15)のスイッチ(S)を制御する制御信号を発生して出力するように構成された制御機器(3)を備えており、
この変調器(2)の出力が、この制御機器にマルチレベルパルス幅変調信号(Lk)を転送するために、この制御機器(3)の入力と接続されており、
このカスケード式マルチレベル変換器の切換状態が、カスケード式マルチレベル変換器に配備された整流器(15)のスイッチ(S)の切換状態により表されて、このカスケード式マルチレベル変換器の切換状態のレベル数が、制御機器(3)に入力されるマルチレベルパルス幅変調信号のレベル数と等しく、この制御機器(3)が、この制御機器(3)に転送されたマルチレベルパルス幅変調信号(Lk)の変化がカスケード式マルチレベル変換器の切換状態の変更を必要とする毎に、動作中の整流器(15)の所定の反復シーケンスに基づき整流器(15)の中の一つを選択して、この選択された整流器(15)を制御することによって、切換状態の所要の変更を行なうように構成されており、この整流器(15)の中の一つの選択は、マルチレベルパルス幅変調信号(Lk)の変化がカスケード式マルチレベル変換器の切換状態のレベル数をより高いレベルに変更することを必要とする毎に、動作中の整流器(15)の第一の所定の反復シーケンスに基づき整流器(15)の中の一つを選択し、マルチレベルパルス幅変調信号(Lk)の変化がカスケード式マルチレベル変換器の切換状態のレベル数をより低いレベルに変更することを必要とする毎に、動作中の整流器(15)の第二の所定の反復シーケンスに基づき整流器(15)の中の一つを選択するように行なわれる、
制御装置。
各整流器(15)に対して交流電源ユニット(30)が配備されており、これらの交流電源ユニット(30)は、それに対応する整流器(15)のスイッチを制御する制御機器からそれぞれ制御信号を受信するように構成されており、各交流電源ユニット(30)は、それに対応する整流器(15)を第二の切換状態に切り換える必要が有る場合に、その整流器(15)を以前の最後のサブ状態と異なる第二の切換状態のサブ状態に移行するように構成されている請求項8に記載の制御装置。
当該の制御機器(3)は、この制御機器(3)が故障している整流器(15)に関する情報を受信した場合に、その整流器を動作中の整流器(15)の反復シーケンスから除外するように構成されている請求項7から9までのいずれか一つに記載の制御装置。
【背景技術】
【0002】
カスケード式又は縦続接続マルチレベルインバータとも呼ばれるカスケード式マルチレベル変換器は、周知技術である。カスケード式マルチレベル変換器(略して、CMC)は、直流側と交流側を有する。CMCがインバータとして動作する場合、直流側に入力された直流は、交流側の交流に変換される。「カスケード式」又は「縦続接続」との用語は、複数の個々の変換器、即ち、H形ブリッジ変換器を備えた変換器がCMCの交流側で互いに直列に接続されていることを意味する。そのため、CMCの交流側の全体の交流電圧は、個々の変換器の交流側の交流電圧の合計と等しくなる。カスケード式マルチレベルインバータの場合、整流器はインバータとして動作するが、本明細書では、CMCの個々の変換器を整流器と称する。この「整流器」との用語は、CMCの動作を整流器としての動作に限定するものではない。しかし、好ましい用途は、鉄道の電気網から軌道車両の走行モータに電気エネルギーを伝達する目的でCMCを整流器として使用することである。特に、その用途では、全ての整流器の直流側の二つの接続部が同じ二つの電位と接続されるように、CMCの直流側において、CMCの個々の変換器又は整流器を互いに並列に接続することができる。
【0003】
前述した通り、各整流器は、H形ブリッジ回路を有する、即ち、この回路は、二つの分岐部を有し、各分岐部において、二つの制御可能なスイッチが直列に接続されている。フリーホイールダイオードなどのフリーホイールバルブは、各制御可能なスイッチと逆並列に接続されている。整流器の交流側の接続部は、二つの分岐部のスイッチの直列接続部の間に実現されている。「分岐部」に関する別の用語は、「ブリッジ」又は「フェーズレグ」である。
【0004】
CMCの整流器がCMCの交流側で互いに直列に接続されているので、それぞれ交流側の接続部の一方において二つの整流器が接続されるように、各整流器は、次の隣接する整流器との電気接続部を有する。CMCの交流側の二つの外部接続部の一方を構成する二つの整流器が有り、CMCが三つ以上の整流器を備えている場合、その二つの外側の整流器の間の全ての整流器は、CMC内で二つの隣接する整流器を有することとなる。言い換えると、カスケード式整流器は、交流側において、電気相互接続に関するシーケンスを構成している。
【0005】
前述した通り、CMCは、軌道車両の走行モータに、或いはそれに代わって、それ以外の車両にエネルギー供給網から電気エネルギーを供給するために使用することができる。軌道車両の標準的な変成器は、低い周波数で動作するので重い。そのような重い変成器を置き換えるために、CMCの整流器の各直流側がそれぞれ一つのDC/DC変換器を介して同じ直流中間回路と接続されるように、CMCを中間周波数の(例えば、1〜100kHzの範囲の周波数で動作する)DC/DC変換器と組み合わせることができる。それは、CMCの整流器が直流側で互いに並列に直接的には接続されていないが、DC/DC変換器を介して間接的に互いに並列に接続されていることを意味する。以下において、一つの例を挙げる。
【0006】
整流器が直流側で互いに並列に接続されているので、CMCの動作中、エネルギーは異なる整流器(又は相応に動作している場合のインバータ)を介して伝達される。更に、整流器の全てがCMCの動作中常に同じ形態では動作せず、そのため、整流器の幾つかだけが同時に大部分のエネルギー(又は電力)を伝達する一方、それ以外の整流器はエネルギー(又は電力)を伝達しない。長期間に渡る整流器の均等でない使用は、均等でない消耗を、そのため、早期のCMCの故障を引き起こす。更に、整流器の均等でない使用は、動作していない整流器の直流電圧がゼロに低下するので、変換器の直流側の電圧に影響を与える。実際、CMC内には、例えば、8〜20、特に、10〜16個の整流器が有る。均等に使用しない場合、これらの整流器の中の一つ又は二つが早く故障する可能性が有る。
【0007】
パルス幅変調信号を発生させ、その信号を用いて、CMCの切換状態を制御する制御信号を発生させるために、位相シフト式パルス幅変調(PS−PWM)を使用することが知られている。そのPWM信号の階段状の変化がCMCの一つ以上のスイッチの切換を起動する。PS−PWMにおいて、PWM信号は、時間領域でシフトするキャリア信号を用いて生成される、即ち、キャリア信号は位相をシフトされている。そのような形式の切換状態の制御を用いると、自動的に長期間に渡って異なる整流器を均一に使用する結果となる。
【0008】
別の形式のPWM手法が、レベルシフト式PWM(LS−PWM)として周知である。PS−PWMと比べたLS−PWMの一つの利点は、その手法のスペクトル特性である、即ち、LS−PWMのスイッチイング高調波は、システム、特に、鉄道網の他の構成要素への影響が小さいか、或いは欠点とならない。そのため、LS−PWMで得られる電圧スペクトルの形状は、EMC順守に必要なオンボードフィルタの設計手順を簡略化するので、牽引用途にとって非常に重要である。
【0009】
LS−PWMでは、異なるキャリア信号が信号レベルに関してシフトされている。LS−PWMプロセスの結果は、CMCの切換状態を規定するマルチレベルPWM信号である。しかし、マルチレベルPWM信号の大抵の取り得るレベルでは、異なるスイッチがオンとオフになるが、CMCの同じ変換効果を生じさせることとなる、それに対応したCMCの幾つかの異なる切換状態が存在する。言い換えると、マルチレベルPWM信号は、変換特性(即ち、交流側の交流電圧と直流側の直流電圧の関係)を一義的に規定するが、切換状態を一義的には規定しない。そのため、前述した通り、異なる整流器の均等でない使用が起こる可能性が有る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、CMCの異なる整流器を均等に使用するように構成されたカスケード式マルチレベル電気変換器の動作方法、それに対応する制御装置、それに対応する制御装置を備えたカスケード式マルチレベル変換器及びそのカスケード式マルチレベル変換器を備えた車両(特に、軌道車両)を提示することである。この場合、CMCの切換状態を制御するレベルシフト式パルス幅変調手法の利点を実現する。好ましくは、本解決策は、整流器の中の一つ以上が故障により動作できない状況にも対処する。更に、本制御がデジタルデータ処理により実現される、及び/又はCMCの隣接する整流器の交流側に同様の交流電圧波形を提供することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した通り、マルチレベルパルス幅変調信号を発生するレベルシフト式パルス幅変調手法を使用することを提案する。時間に関するCMCの整流器の均等な使用を実現するために、動作中の整流器の少なくとも一つの論理シーケンスを予め規定して、その論理シーケンスにおける次の整流器である整流器を制御することによって、マルチレベルPWM信号に関して必要なCMCの切換状態の変更を行なう。言い換えると、その時々のマルチレベルPWM信号に対応する切換状態を作り出すために切換動作が必要となる毎に、論理シーケンスに基づき整流器を順番に選択する。この「論理シーケンス」との用語は、CMCの電気接続に基づく整流器の電気シーケンスから当該のシーケンスを区別するために使用される。以下で説明する通り、これらのシーケンスが異なることが好ましい。
【0012】
この論理シーケンスは、少なくとも長期間に渡って、CMCの異なる整流器を均等に使用することを保証する。
【0013】
勿論、更新されたマルチレベルパルス幅変調信号が一つの特定のスイッチ又は一つの特定の整流器だけを用いて実施できる切換動作を必要とすることが起こり得る。例えば、全ての個々の整流器が同じ個々の切換状態を有するCMCの切換状態を一つの手法だけで実現することができる。
【0014】
特に、複数の整流器を備えたカスケード式マルチレベル電気変換器の動作方法であって、各整流器が、互いに直列に接続された二つのスイッチをそれぞれ備えた二つ分岐部を有するH形ブリッジ回路を備えており、このカスケード式マルチレベル変換器の交流側の全体の交流電圧が整流器の交流側の交流電圧の合計と等しくなるように、これらの整流器が、このカスケード式マルチレベル変換器の交流側で互いに直列に接続されている方法において、
一定数のレベルシフトキャリア信号を用いて、レベルシフトパルス幅変調プロセスによりマルチレベルパルス幅変調信号を反復して発生させる工程であって、この一定数が動作中の整流器の分岐部の数と等しく、このマルチレベルパルス幅変調信号が、動作中の整流器の分岐部の数と等しい整数の信号レベルを取ることができる工程と、
相応の制御信号を発生して出力することにより整流器のスイッチを制御する制御機器にマルチレベルパルス幅変調信号を出力する工程と、
この制御機器の動作中に、この制御機器に出力されたマルチレベルパルス幅変調信号の変化が、このカスケード式マルチレベル変換器の切換状態の変更を必要とする毎に、動作中の整流器の所定の反復シーケンスに基づき整流器の中の一つを選択して、この選択された整流器を制御することによって、切換状態の所要の変更を行なう工程と、
を有する方法を提案する。
【0015】
更に、複数の整流器を備えたカスケード式マルチレベル電気変換器の動作を制御する制御装置であって、各整流器が、互いに直列に接続された二つのスイッチをそれぞれ備えた二つ分岐部を有するH形ブリッジ回路を備えており、このカスケード式マルチレベル変換器の交流側の全体の交流電圧が整流器の交流側の交流電圧の合計と等しくなるように、これらの整流器が、このカスケード式マルチレベル変換器の交流側で互いに直列に接続されている制御装置において、
この装置が、一定数のレベルシフトキャリア信号を用いて、レベルシフトパルス幅変調プロセスによりマルチレベルパルス幅変調信号を反復して発生するように構成された変調器を備えており、この一定数が動作中の整流器の分岐部の数と等しく、このマルチレベルパルス幅変調信号が、動作中の整流器の分岐部の数と等しい整数のレベルを取ることができ、
この装置が、相応の制御信号を発生して出力することにより整流器のスイッチを制御するように構成された制御機器を備えており、
この変調器の出力が、この制御機器にマルチレベルパルス幅変調信号を転送するために、この制御機器の入力と接続されており、
この制御機器が、この制御機器に転送されたマルチレベルパルス幅変調信号の変化がカスケード式マルチレベル変換器の切換状態の変更を必要とする毎に、動作中の整流器の所定の反復シーケンスに基づき整流器の中の一つを選択して、この選択された整流器を制御することによって、切換状態の所要の変更を行なうように構成されている制御装置を提案する。
【0016】
また、本発明には、本明細書に記載された実施形態の中の一つに基づく制御装置を備えたカスケード式マルチレベル変換器が含まれるとともに、そのカスケード式マルチレベル変換器を備えた軌道車両が含まれる。
【0017】
この「反復シーケンス」との用語は、このシーケンスの最後の要素の後に、即ち、最後の整流器の後に、再びこのシーケンスが始まることを意味する。
【0018】
特に、このマルチレベルパルス幅変調信号は、この信号を計算することによって生成される。特別な実施形態では、この信号は、デジタルデータ処理により計算される。例えば、それに対応するデジタル信号プロセッサ(DSP)を使用する。
【0019】
典型的には、レベルシフトキャリア信号の数は、動作中の整流器の分岐部の数と等しい。これらの整流器は、二つの分岐部を有するH形ブリッジを備えており、レベルシフトキャリア信号の数は、整流器の数に2を掛けた数と等しい。マルチレベルパルス幅変調信号を計算する一つの手法は、時間に依存する基準信号の値を各レベルシフトキャリア信号の電流値と反復して(特に、サイクリックに)比較して、その基準信号の値が当該キャリア信号の値よりも大きい比較毎に1を加算することである。そのようなパルス幅変調信号の計算結果は、正又はゼロと等しい、マルチレベルPWM信号の当該レベルに対応する整数である。
【0020】
それに応じて、マルチレベルパルス幅変調信号は、分岐部の数の2倍+1となる。
【0021】
多くの場合、これらのキャリア信号は、三角形のキャリア信号である。例えば、これらのレベルシフトキャリア信号の位相は、ずらすことも、同相にすることもできる。そのため、レベルシフトPWMキャリア信号の配列は、所謂位相配列、所謂逆位相配列又は所謂交番逆位相配列である。それ以外の配列も可能である。
【0022】
このマルチレベルパルス幅変調信号は、相応の制御信号を生成して出力することにより整流器のスイッチを制御する制御機器に出力される。そのため、この制御機器の役割は、マルチレベルパルス幅変調信号に固有の情報を用いて制御信号を生成することである。好ましくは、このマルチレベルPWM信号は、反復して(特に、サイクリックに)生成されて、反復生成直後毎に、或いは連続的に制御機器に出力されるか、或いはマルチレベルPWM信号のレベルが変化した場合に制御機器に出力される。第一の場合(マルチレベルPWM信号の反復又は連続出力時)、この制御機器は、好ましくは、信号のレベルが変化したかを調べる。如何なる場合でも、この信号のレベルが変化した場合だけ、この制御機器が、CMCのスイッチの幾つかの切換動作を引き起こすことが好ましい。レベルが変化したかを調べる一つの手法は、マルチレベルPWM信号の取り得るレベルの中の一つに対応するその時々の切換状態の測度をその時々のマルチレベルPWM信号と比較することである。更に、この制御機器が、この信号の上方又は下方への単一レベルの如何なる変化にも反応できるように、このマルチレベルPWM信号を十分な頻度で更新して、このマルチレベルPWM信号を十分な頻度で制御機器に出力するのが好ましい。言い換えると、この制御機器が、2以上のレベル差に対応するCMCの切換状態の変更を制御することは起こり得ない。
【0023】
この制御機器がCMCの切換状態を規定する好ましい手法は、動作中の各整流器の切換状態を規定することである。H形ブリッジに関して、個々の整流器の切換状態を規定するのに1つの数で十分である。以下に一例を挙げる。そのため、CMCの切換状態を規定する情報を一定数の構成要素を有する数学ベクトルとして考えることができ、各構成要素は、それに対応する整流器の個々の切換状態に対応する。例えば、この数学ベクトルの一つの構成要素が変化する毎に、この制御機器によって、CMCの切換状態を変更する切換動作を起動することができる。
【0024】
好ましくは、この制御機器は、マルチレベルパルス幅変調信号、即ち、この信号自身の発生から一つの入力情報だけを使用する。制御信号の生成のために、制御機器が必要とする、それ以外の全ての情報は、CMCに関して従来から周知の情報であり、任意選択により、整流器の中の一つ以上の故障に関する情報である。それは、後で説明する。特に、故障情報は、どの整流器が動作中であるか、或いは動作していないかを表す。特に、動作していない整流器は、電気バイパス接続により迂回することができる。
【0025】
特に、各整流器の切換状態は、次の通り規定することができ、各整流器は、カスケード式マルチレベル変換器の動作挙動に異なる影響を与える三つの異なる切換状態を有し、
これらの三つの切換状態の中の第一の状態は、正の直流電圧が整流器の直流側に印加された場合に正の電圧を交流側に生じさせ、
これらの三つの切換状態の中の第二の状態は、直流電圧が整流器の直流側に印加された場合にゼロの電圧を交流側に生じさせ、この第二の切換状態は、同じ影響を外部に与えるが、スイッチの個々の切換状態の異なるセットから構成されるサブ状態を有し、
これらの三つの切換状態の中の第三の状態は、正の直流電圧が整流器の直流側に印加された場合に負の電圧を交流側に生じさせる。
【0026】
そのため、動作中の全ての整流器が第一の切換状態に有る場合に最も高いレベルを有し、動作中の全ての整流器が第三の切換状態に有る場合に最も低いレベルを有するカスケード式マルチレベル変換器の動作状態を規定することができる。
【0027】
好ましい実施形態では、この制御機器の動作中に、マルチレベルパルス幅変調信号の変化がカスケード式マルチレベル変換器の動作状態をより高いレベルに変更することを必要とする毎に、動作中の整流器の第一の所定の反復(論理)シーケンスに基づき整流器の中の一つが選択され、マルチレベルパルス幅変調信号の変化がカスケード式マルチレベル変換器の動作状態をより低いレベルに変更することを必要とする毎に、動作中の整流器の第二の所定の反復(論理)シーケンスに基づき整流器の中の一つが選択される。それに対応する制御装置の実施形態は、第一と第二のシーケンスに基づき、この選択を行なうように構成される。
【0028】
このレベルを増減するために別個の論理シーケンスを使用する利点は、個々の整流器が一層均等に使用されることである。さもなければ、特定の切換状態において、より頻繁に特定の整流器が使用されることが起こり得る。更に、第一のシーケンスと第二のシーケンスが動作中の整流器の同じ順序から成るが、第一のシーケンスと第二のシーケンスがCMCの動作開始時に異なる整流器から始まることが好ましい。それは、整流器が二つのシーケンスの中の一方に基づき新しい切換状態に移行されて、他方のシーケンスに基づき次の切換動作で前の切換状態に戻される尤度を低減する。
【0029】
この制御機器の一つの動作手法は、マルチレベルPWM信号の変化を求めて、その変化の方向(レベルの上昇又はレベルの低下)を求め、二つのシーケンスの中の何れを使用するのかを決定して、その決定結果に応じて切り換える整流器を選択することである。
【0030】
同じ個々の整流器のスイッチを均等に使用するために、次のことを提案し、動作中の各整流器の第二の切換状態(上記を参照)の最後のサブ状態に関する情報を保存して、次回、その整流器を第二の切換状態に切り換える必要が有る場合、その整流器を第二の切換状態の異なるサブ状態に移行させる。それに対応する制御装置の実施形態は、各整流器に対して配備された交流電源ユニットを有し、これらの交流電源ユニットは、それに対応する整流器のスイッチを制御する制御機器からそれぞれ制御信号を受信するように構成されており、各交流電源ユニットは、それに対応する整流器を第二の切換状態に切り換える必要が有る場合に、その整流器を以前の最後のサブ状態と異なる、第二の切換状態のサブ状態に移行させるように構成される。
【0031】
前述した通り、この制御機器は、どの整流器が故障のために動作していないかとの情報を考慮することができる。故障している整流器に関する情報を制御機器に転送して、故障している整流器を動作中の整流器の反復シーケンスから除外することを提案する。それに対応して、この制御機器は、この制御機器が故障している整流器に関する情報を受信した場合に、動作中の整流器の反復シーケンスからその整流器を除外するように構成される。そのため、故障した整流器は、望ましくない結果を生じさせない。故障した整流器が最早論理シーケンスの一部でないので、この制御機器は、その整流器のスイッチを切り換えるために制御信号を発生しない。
【0032】
前述した故障の扱いは、別の制御方式(特に、整流器の反復論理シーケンスを用いない方式や位相シフトPWMを用いた方式)により実施することもできる。同じことが、前述した通り、第二の切換状態の異なるサブ状態の扱いにも言える。
【0033】
好ましくは、整流器の中の少なくとも一つが動作しなくなった場合、所定の一つのシーケンス又は所定の複数のシーケンス全体が再度規定される。
【0034】
CMC内で互いに直接接続された隣接する整流器ペアの間の交流電圧波形を最適化するために、本方法の次の実施形態とそれに対応する制御装置の実施形態を提案する。これらの交流電圧は、短い時間内で幾つかの階段状変化を起こさない。カスケード式マルチレベル変換器内で互いに直接接続された隣接する整流器が、所定のシーケンス内で少なくとも一つの別の整流器によって分離されるように、動作中の整流器の反復シーケンスを予め規定することを提案する。前述した通り、この所定のシーケンスは、反復シーケンスである。そのため、それは、好ましくは、シーケンスの始端が続くと考えられるシーケンスの終端を有する。
【0035】
カスケード式マルチレベル変換器内で互いに直接接続された隣接する整流器ペアの全てが、シーケンスの始端が続くと考えられるシーケンスの終端を含む所定のシーケンス内でそれ以外の取り得る最大数の整流器によって分離されることが、最も好ましい。例えば、10個の整流器の場合、隣接する整流器を分離するそれ以外の整流器の取り得る最大数は3である。しかし、9個の整流器の場合、隣接する整流器ペアの全てをシーケンス内でそれ以外の3つの整流器によって分離できないので、取り得る最大数は2又は3である。以下において、10個の整流器の例を述べる。
【0036】
以下において、添付図面を参照して本発明の例を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1に図示された装置は、複数のモジュールM
1...M
4を有し、その各々が、直流側をインバータ161,162,163,164と接続された一つの整流器151,152,153,154を有する。これらの整流器151,152,153,154とインバータ161,162,163,164の間の直流ラインには、コンデンサCpが接続されている。これらのインバータは、変成器171,172.173,174を介して、第二の整流器181,182,183,184と接続されている。これらのインバータ161,162,163,164、変成器171,172.173,174及び第二の整流器181,182,183,184は、数kHz〜100kHzの中間周波数帯域内の共振周波数で動作する直列共振形変換器を構成している。
図1には、当該のモジュールMの変成器との接続部に、コンデンサCrpとCrsが図示されている。
【0039】
第二の整流器181,182,183,184の直流側は、直流中間回路の直流ライン117,118と互いに並列に接続されている。第二の整流器の直流出力には、直流ライン117,118の間にコンデンサCsが有る。これらのライン117,118の間の電圧は、U
ZKと称する。
【0040】
キャパシタンスとインダクタンスを有するフィルタ115は、これらのライン117,118の間に接続されている。三相走行インバータ131が、少なくとも一つの走行モータ121に電気エネルギーを供給するライン117,118と接続されている。
【0041】
これらの整流器151,152,153,154は、モジュールM
1〜M
4の交流側で互いに直列に接続されている。モジュールM
1の整流器151の接続部191は、フィルタ200を介して集電器111と接続されている。(図示されていない)車両の動作中に、この集電器111は、本装置をエネルギー供給網のライン110と接続するために使用される。
【0042】
図1に図示された例では、車両は、推進中軌道上を回転する少なくとも一つの車輪を備えた軌道車両である。四つのモジュールMの数は、一つの例であり、この数は、異なる実施形態において変えることができる。一つのモジュールM
4の交流接続部204は、直流中間回路ZKの第二の直流ライン118と接続されるとともに、軌道との接触のために、この少なくとも一つの車輪119と接続されている。これらの整流器151,152,153,154は、整流器151の第二の接続部201から整流器152の第一の接続部192に接続されるように、電気接続部を介して隣の整流器と接続されている。これらの接続部と整流器の構成のより詳しい細部が
図2に図示されている。
【0043】
図2の破線は、例えば、
図1の整流器151を囲んでいる。この整流器151は、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラ・トランジスタ)などの二つの制御可能なスイッチSの直列接続を備えた二つの分岐部を有する。この第一の分岐部は、スイッチS
b1と
【0045】
を有する。この第二の分岐部は、スイッチS
a1と
【0047】
を有する。これらのスイッチSの各々と逆並列に接続されたフリーホイールダイオードが有る。
【0048】
図2に図示された(整流器の中の三つが図示されている)各整流器の直流側は、バッテリ記号で表示されており、その直流電圧v
dcは、そのような直流電圧が整流器としての動作中に生成されるか、或いはインバータとしての動作中に出現することを表している。例えば、
図1に図示されているのと同様に、
図2の整流器は、直流側で互いに並列に接続することができる。
【0049】
図2では、交流側での電圧状況も図示されている。車輪119との接続部(又は一般的に言うと、アースとの接続部)の電位は、
図2の底部に符号Gにより表示されている。フィルタ200を介した集電器111との接続部の電位は、符号aにより表示されている。そのため、整流器の直列接続を介した交流電圧全体は、符号v
aGで表示されている。二つの隣接する整流器を有する中間の整流器152とアース電位の間の交流電圧が符号v
iGで表示されている。更に、個々の整流器151,152,15Nの交流接続部の電圧は、符号v
1,v
i,v
Nで表示されている。
【0050】
更に、隣接する整流器151,152,15Nの相互接続が図示されている。例えば、整流器151の第二の交流接続部201は、隣の整流器152の第一の交流接続部192と直接接続されている。この整流器152の第二の交流接続部202は、(
図2に図示されていない)次の隣接する整流器と直接接続されている。寄生キャパシタンスCparも整流器151,152,15Nの直流側に図示されている。
【0051】
図2に図示された整流器は、カスケード式マルチレベル変換器を構成している。
図2でスイッチに対して使用されている記号は、以下の記述とそれ以外の図面でも同じ形又は同様の形で使用されている。
【0052】
例えば、
図1に図示されている中間周波数変換器の構成の制御における主要な課題の一つは、好適な手法でCMCの整流器を変調することである。それに対応する制御装置の例を
図5を参照して説明する。しかし、先ずは、個々の整流器及びCMCの例の幾つかの切換状態を
図3と
図4を参照して説明する。
図3には、
図2の整流器151,152,15Nの中の一つなどの単一の整流器の四つの取り得る切換状態が図示されている。0、1、2、”i”と成り得る切換状態の数は、CMCの整流器の数を表す指数である。第一欄の第2行と第4行の符号v
dcと−v
dcは、整流器の直流側の正の電圧とその電圧の負の値を意味する。第3行では、第一欄の「0」は、電圧が0にも成り得ることを表している。そのため、
図3は、直流側の正の電圧v
dcが、第一のスイッチS
biが(「1」で表示された)オンであり、第二のスイッチS
aiが(「0」で表示された)オフである切換状態「2」で交流側に生じることを図示している。同じ分岐部の別のスイッチは、その逆の切換状態に有る、即ち、スイッチ
【0056】
がオンである。ゼロ電圧は、二つの異なるサブ状態によって実現することができる(
図3の表の第3行)。両方のスイッチS
biとS
aiがオフとなるか、或いは両方のスイッチがオンとなる。その切換状態は、「1」の数字で表示されている。第一のスイッチS
biがオフで、第二のスイッチS
aiがオンの場合、交流側に負の直流側電圧−v
dcを実現することができる。
【0057】
図4には、二つの整流器を有するCMCの切換状態が図示されている。第一欄は、CMCの交流側の電圧v
aGの五つの異なる値を有する。第二欄は、切換状態のレベル数Lkを有し、そのレベル数は、それに対応する切換状態を生じさせる制御信号を発生する制御機器に入力される、それに対応するマルチレベルPWM信号のレベル数と等しい。2倍の直流側電圧2v
dcを発生させる最上位レベル(Lk=4)は、第一の整流器の第一の分岐部S
b1の第一のスイッチがオンに切り換えられ、第一の整流器の第二の分岐部S
a1の第一のスイッチがオフに切り換えられ、第二の整流器の第一の分岐部S
b2の第一のスイッチがオンに切り換えられ、第二の整流器の第二の分岐部S
a2の第一のスイッチがオフに切り換えられている場合に実現される。それ以外のレベルの取り得る切換状態は、
図4から得られる。レベル1と3には、四つのサブ状態が有り、レベル2には、六つのサブ状態が有る。
【0058】
図5に図示された制御装置1は、マルチレベルパルス幅変調信号を発生する信号発生器2を有し、そのレベル数Lkが
図5の(破線で表示された)境界線に図示されている。この境界線の右手側には、レベル数Lkに対応するCMCの切換状態を得るための制御信号を生成して出力する、この装置1の制御機器3が図示されている。特に、この制御機器3は、追加の制御ユニット(例えば、IGBTの所謂ゲート駆動ユニット)により実行される切換動作を起動する所謂発射信号を出力し、それは、本発明によるそれ以外の考え得る制御機器に適用される。この制御機器3は、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)によって実現することができる。
【0059】
この信号発生器2は、正弦波形として図示されている基準信号r
*を受信するための入力12を有する。この基準信号は、変換器の構成、例えば、
図1に図示された変換器の構成の電圧と電流などの測定値に依存する。この基準信号の生成は、従来技術により周知である。この基準信号r
*は、CMCの動作中の整流器の数に対応する制限値に基準信号の値を制限する制限ユニット13に入力される。例えば、CMCが10個の整流器を有し、(例えば、10番目の整流器が故障しているために)それらの中の9個の整流器だけが動作している場合、この基準信号r
*は、10個の整流器の動作と比較した上限値と下限値の間の狭い範囲に制限される。この上限値と下限値の間の範囲の大きさは、基準信号と比較されるキャリア信号c
rの全ての振幅の合計に対応する。例えば、N個の数の整流器を有するCMCに関して、その(2Nを意味する)2倍の数のレベルシフトキャリア信号が使用される。各キャリア信号c
rは、必要に応じて、制限ユニット13により制限された後の基準信号r
*の上限値と下限値により規定される範囲のサブ範囲内で変化する。異なるキャリア信号c
rのサブ範囲の間には隙間が無く、そのため、制限された基準信号の各値は、キャリア信号c
rのサブ範囲の中の一つのサブ範囲内に有る。
【0060】
従って、より一般的に述べると、PWM信号発生器の制限ユニットは、必要に応じて、CMCを動作させる特定の段階の間に必要とされるキャリア信号のサブ範囲の合計と等しい、上限値と下限値の間の値の範囲に基準信号を制限する。
【0061】
図5の上部に図示されている通り、CMCの整流器の上限性能に関する情報は、状態ベクトルを用いて制御装置1に入力でき、この状態ベクトルは、整流器毎に一つの構成要素を有する。例えば、各構成要素S
1,S
2,S
3,...S
N(整流器がN個の場合)は、値「0」か値「1」を取り得ることを意味する二進の構成要素である。この値が「0」の場合、それに対応する整流器が故障しているか、或いは動作していないことを表す。この場合、
図1と
図2の整流器151の接続部191,201などの整流器の二つの交流接続部を接続するスイッチが閉じられる。少なくとも動作していない整流器の数に関する情報が制限ユニット13に転送される。一般的に述べると、CMCがN個の数の整流器を有し、そのため、N個の整流器の全てが動作している場合の基準信号の最大範囲は、正規化された単位において、−1と+1の間で変化し、m個(m<N)の整流器だけが動作している場合、制限ユニットは、上限値と下限値の間の基準信号の範囲を(−1+m/N...1−m/N)のサイズに制限する。
図5には、符号14
1、14
2...14
2Nで表示された、三角キャリア信号を有する各ボックスにより表された所でキャリア信号c
r1...c
r2Nが生成されるか、或いは出力される。小さい円で表示された比較ユニットで、これらのキャリア信号c
rの各々は、制限された基準信号と比較される。例えば、この比較とは、基準信号から当該のキャリア信号を減算することを意味する。その結果は、二進数発生器10に入力されて、その発生器は、それに対応する二進信号B
1...B
2Nを出力する。例えば、それに対応する二進数Bは、キャリア信号が基準信号よりも小さい(即ち、キャリア信号の電流値が基準信号の電流値よりも小さい)場合に1と等しく、キャリア信号が基準信号よりも大きい場合に0と等しい。
【0062】
この信号発生器2と、好ましくは、この制御機器3の動作は、サイクリックである、即ち、例えば、所定のクロック速度でクロックにより起動される形で、この動作がサイクリックに反復される。そのため、この二進値Bは、クロック速度と等しいサンプリング速度で生成される。この二進値Bは、加算ユニット16により一緒に加算され、その結果得られた合計が、前述したレベル数Lkとなる。このPWM信号発生器2のサイクリックな動作のために、このレベル数Lkの更新されたレベル数値の反復出力がマルチレベルPWM信号の出力と等しくなる。言い換えると、その時々のレベル数Lkは、マルチレベル信号のその時々のレベルを規定する。
【0063】
前述した通り、並びに
図4に図示された例と関連して説明した通り、CMCのN個の数の整流器が動作している場合、マルチレベルPWM信号のNの2倍プラス1(2N+1)個の異なるレベルが存在する。更に説明するとともに、
図4を参照して前述した通り、大部分のレベル(最高レベルと最低レベルを除く全てのレベル)は、CMCの異なる切換状態により実現できる異なるサブ状態に対応する。そのため、この制御機器3(又は本発明によるそれ以外の制御機器)は、レベル数Lkのその時々の値に対応する切換状態の中の一つを選択する自由を有する。
図5に図示された例では、この制御機器3に入力された、その時々のレベル数Lkが、その前のレベル数Lk−1と減算により比較される。この減算結果は、符号決定ユニットとも呼ばれる分類ユニットに転送され、そのユニットは、LkとLk−1の差が0よりも大きいか、或いは0よりも小さいか(或いは、0と等しいか)を決定する。0の場合、レベル数が変化していないので、動作は不要である。この差が0よりも大きい場合、第一のシーケンサ25に応じて動作する第一の信号発生器23に信号が出力される。この差が0よりも小さい場合、符号決定ユニット22から、第二のシーケンサ26に応じて動作する第二の信号発生器24に信号が出力される。これらのシーケンサ25,26は、予め決められた反復シーケンスに基づき、どの整流器を次に動作すべきかを決定して、それに対応する決定された整流器の切換を起動するために、当該の信号発生ユニット23又は24を制御又は調節する。例えば、第一の信号発生ユニット23は、N個の数の整流器のその時々の切換状態数C
1...C
Nを保存する記憶部27内の決定された整流器の切換状態数C(
図3を参照)を修正する。第一の信号発生ユニット23が常に切換状態数を(0から1に、或いは1から2に)増加させる一方、第二の信号発生ユニット24は、切換状態数Cを(2から1に、或いは1から0に)低下させる。
【0064】
符号Lk−1により表示された、ユニット21によりその時々のレベル数Lkから減算されたCMCの前の切換状態の値を発生するために、全ての整流器の切換状態数を加算するように構成された加算器29が記憶部27と接続されている。
【0065】
整流器の中の少なくとも一つが動作していない場合、(前述した)状態ベクトルに含まれる情報が記憶部27に転送されて、それに対応する整流器の切換状態数が0に設定される。更に、この情報は、それに対応する整流器を整流器のシーケンスから除外する第一と第二のシーケンサ25,26にも転送される。この結果、除外された整流器が最早信号発生ユニット23と24により使用できなくなる。好ましくは、これらのシーケンサ25と26は、整流器の中の一つが除外される毎に、整流器の新しいシーケンスを決定する。
【0066】
整流器のシーケンスを決定する例を説明する前に、この制御機器3の出力側の交流電源ユニット30
1...30
nを説明する。N個の数の交流電源ユニット30の各々は、それに対応する(即ち、それに対して配備された)整流器を新しい切換状態に切り換える場合に起動信号を受信する。その整流器の切換状態が、交流側のゼロ電圧に対応する(
図3で状態数1を有する)所謂第二の切換状態に切り換えられる場合、この交流電源ユニットは、二つのサブ切換状態の中の何れを実現すべきかを決定する。即ち、二つのサブ状態の中の一方を実現する場合、この交流電源ユニットは、二つのゼロ電圧切換状態を交替させる。一方のゼロ電圧サブ状態が実現された場合、次回には、他方のゼロ電圧サブ状態が実現される。この交流電源ユニットは、整流器の当該の発射信号を発生又は起動する。
【0067】
加算器29が記憶部27に保存された状態数を加算することと、それに対応する整流器がサービスから除外された場合に、0の値が当該の記憶場所に保存されることとを前述した。しかし、この場合、除外された整流器のそれに対応する交流電源ユニット30による動作は不要である。それに代わって、値「1」が除外された整流器の当該の記憶場所に書き込まれるが、この場合、除外された整流器の記憶場所の値「1」を破棄するために、加算器29は、除外された整流器に関する情報を受信しなければならない。それに代わって、加算器29の加算結果は、(
図5には図示されていない)別個のユニットにより訂正することができる。
【0068】
整流器の均等な使用に関する動機は、前述した通り、整流器のスイッチとそれ以外の構成部品の均等な消耗である。しかし、整流器の均等な使用の別の利点は、異なる整流器を冷却できるとの要求でもある。そのため、均等な使用とは、全ての整流器を同様に構成及び製造するとともに、同様に冷却できることを意味する。このモジュール構成によって、整流器の製造とCMCの組立が容易となる。
【0069】
本発明は、レベルシフトPWMの形式に依存しない、特に、キャリア信号配列(例えば、位相配列)に依存しない。全ての配列は、制御機器が使用できるマルチレベルPWM信号を発生させることとなる。
【0070】
図6は、四つの整流器を備えたCMCの場合の整流器の五つの異なる論理シーケンスを図示している。各整流器は、整流器の指数を付与された状態変数Cにより表示されている。全ての整流器が動作している場合、
図6の上部に図示されている通り、シーケンスは、C
1,C
2,C
3,C
4となる。それに対応する状態ベクトルは、整流器の何れも故障フラグを付与されていないので、構成要素0,0,0,0を有する。しかし、整流器の中の一つが故障フラグを付与されて、それに対応する状態ベクトルの構成要素が「1」に設定されている場合、当該の整流器は、このシーケンスから除外される。例えば、指数3を有する整流器が故障しているか、或いは動作から除外されている場合、状態ベクトルは、0,0,1,0となり、その結果得られる整流器のシーケンスは、
図6の上部から底部までの順番の中の四番目に図示されているC
1,C
2,C
4となる。
【0071】
図6は、シーケンスから一つの整流器を除外する手法だけを図示している。それは、整流器のシーケンスを規定する最も好ましい手法を図示していない。
【0072】
図7〜9は、整流器のシーケンスを規定する最も好ましい手法の例を図示している。この例では、10個の整流器が扱われているが、それ以外の2よりも多い整流器のシーケンスも同様に決定できる。先ずは、
図7aに図示されている通り、整流器の角度差が決定される。単位長の二次元座標系の原点からの位相ベクトルを動作中の各整流器に対応付ける。そのため、N個の整流器が動作中である場合、N個の位相ベクトルが有る。
図7a〜7f、
図8及び
図9は、10個の整流器の例を示す。これらの位相ベクトルは、隣接するベクトルの各ペアの位相ベクトルの間の角度差が等しくなるように、(1単位の半径長を有する円の中心として看做すことができる)原点の周りの回転位置に動かされている。ここで、位相ベクトルを整流器に対応付ける。
【0073】
図7bに図示されている通り、電気シーケンスの第一の整流器の位相ベクトル、即ち、位相ベクトルC
1が最初に選択され、そのため、角度0°が、その整流器に割り振られている。しかし、このシーケンスは、シーケンス内の最初の整流器がシーケンス内の最後の整流器に続くことを意味する反復シーケンスなので、このシーケンスは、それ以外の整流器から開始することができる。
【0074】
そして、電気シーケンス内の次に続く整流器は、電気シーケンス内の前の整流器の位相ベクトルに対して最も大きい角度差を有する位相ベクトルに割り振られる。
【0075】
そして、
図7cに図示されている通り、電気シーケンス内の前の二つの整流器に対して最も大きい角度差を取り得る電気シーケンス内の次の整流器に、位相ベクトルが割り振られる。そして、この位相ベクトルは、前の位相ベクトルに対して最も大きい角度差を有する電気シーケンス内の次の整流器に割り振られる。この手順は、全ての位相ベクトルが整流器の中の一つに割り振られるまで、
図7d、
図7e及び
図7fに図示されている通り繰り返される。
【0076】
より一般的に述べると、これらの位相ベクトルは、電気シーケンス内の二つ又は三つの連続する整流器が交互に原点(円の中心)に関して出来る限り対称となる位相ベクトルに対応するように割り振られる。
【0077】
図7fの右手側に図示された、C
1...C
Nにより表示された電気シーケンス内の整流器の位相ベクトルへの対応付けは、
図8にも図示されており、この右手側の欄は、位相ベクトルの角度の連続する指数を有する。言い換えると、第三の欄の指数は、連続して増加する角度値の順番を表す。
【0078】
そして、この連続する順番を用いて、
図9に図示されている通り、整流器のシーケンスを決定することができる。左から右に、
図8の右手側の欄に対応する順番で整流器が列挙されている。この方法の結果、電気シーケンス内の連続する整流器の各ペアの間において論理シーケンス内で起こり得る最も大きい差が得られる。この利点は、当該の個々の整流器の交流接続部の間の交流電圧の波形が最適化される、即ち、この最適化された波形が最小の歪みを有することである。そのため、CMCの絶縁体の長期安定性が向上する。更に、当該の整流器とアース電位の間の寄生キャパシタンスにより生じる電流が最小化される。
【0079】
本発明の別の特徴は、前述した通り、故障した整流器を動作から除外して、低減した数の整流器を用いて切換状態の制御を実施できることである。前述した通り、故障した整流器は、その整流器の二つの交流接続部の間の電気接続によって迂回することができる。その迂回接続を構築するために、それに対応するスイッチ又はスイッチ構成が使用される。好ましくは、このスイッチ又はスイッチ構成は、スイッチ又はスイッチ構成の手動による動作が不要となるように、変換器制御部により自動的に制御することができる。理想的には、CMCの動作は、その整流器が動作から除外されている間継続する。しかし、実際には、短時間の中断が起こり得る。
【0080】
H形ブリッジ変換器では、この制御装置が、二つの発射信号を発生させる必要が有る。前述した通り、これらの発射信号は、各ブリッジ内、即ち、二つのスイッチの各直列接続部内の一つの制御可能なスイッチの切換状態を制御する。当該のブリッジの別のスイッチの切換状態は、第一のスイッチの切換状態から導き出すことができる。特に、第二のスイッチは、第一のスイッチがオンに切り換えられている間、オンに切り換えてはならない。これらの発射信号は、従来技術により周知の如何なる形式の信号とすることができる。特に、この発射信号は、切換プロセスの起動時の信号レベルが階段状に変化する起動信号とすることができる。勿論、当該のスイッチの切換状態を制御する制御信号は、時間に依存する信号であるか、或いはマルチレベルパルス幅変調信号が必要とする通りスイッチをオン及びオフに切り換えるために繰り返される。
【0081】
異なる整流器の均等な使用が主要な目的であることを前述した。特に、均等な使用とは、定常状態の動作中に異なる整流器が同じ量の電力を伝達することを意味する。
【0082】
整流器の少なくとも一つの予め決められたシーケンスに応じて整流器を切り換える本発明の方法も、同時に転流可能な整流器の数が制限されるので、CMCの交流側の電圧の時間微分が制限されるとの利点を有する。
【0083】
前述した通り、このマルチレベルパルス幅変調信号がレベルシフトPWMにより生成される。基本的に、このマルチレベルPWM信号は、異なるプロセスにより生成することができる。
【0084】
図10は、単一の整流器に関して取り得る連続切換プロセスのフローチャートを図示している。
図10の右手側には、整流器の三つの異なる切換状態が「+V」、「0」及び「−V」により表示されている。これらの切換状態は、
図3に列挙された状態に対応する。交流側にゼロ電圧を発生させる切換状態「0」は、二つのサブ状態を有するので、これらのサブ状態は、「+」符号又は「−」符号によって互いに区別されている。
【0085】
このフローチャートでは、矢印が異なる切換状態を接続して、当該の切換状態からそれ以外の取り得る切換状態への遷移を表している。このフローチャートでは、各切換状態が、前の切換状態の履歴を考慮するために二回出現している。このようにして、前述した交流電源ユニットの動作が実現されている。例えば、整流器がフローチャートの上部右隅の切換状態「0−」に有る場合、その時の切換状態「0−」の左下を指し示す矢印により状態「−V」に遷移することができる。次に、ゼロ電圧を切り換える場合、フローチャートの底部右隅の切換状態「0+」への遷移が唯一の可能性である。この図では、「Ci」が切換状態を表し、「i」は、
図3の通り、0、1又は2と等しい切換状態の指数である。切換状態が変化する毎に、それに対応する遷移がフローチャートに存在する。好ましくは、C
0からC
2への直接的な遷移(「−V」から「+V」への遷移)とその逆の直接的な遷移は、
図10では完成するために図示されているが、許されない。