(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1狭窄レバーおよび前記第1凸部の少なくともいずれかの当接面に段差部が設けられており、前記第1狭窄レバーが前記第1弾性チューブを狭窄する狭窄量を段階的に調節できる請求項1から5のいずれか1項に記載の流体切替弁。
前記切替部材は、前記第4状態、前記第1状態、前記第3状態、前記第2状態、前記第4状態の順序、あるいは前記第4状態、前記第2状態、前記第3状態、前記第1状態、前記第4状態の順序で切り替える請求項1から6のいずれか1項に記載の流体切替弁。
前記切替部材は、前記第1狭窄カムおよび前記第2狭窄カムが前記第1弾性チューブおよび前記第2弾性チューブを押圧する方向に直交する方向へスライド移動する請求項8に記載の流体切替弁。
前記第1弾性チューブおよび前記第2弾性チューブの少なくともいずれかを狭窄するときの、前記凸部の反動を抑制する抑制部を備える請求項16に記載の流体駆動ユニット。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
図1は、本実施形態に係る流体輸送装置300の利用形態の一例を示す図である。流体輸送装置300は、例えば犬、猿などの被検体である実験用動物が装備している実験用着衣310に固定される。流体輸送装置300は、予め定められた設定条件により定められた設定吐出量ずつ薬液等の流体を実験用動物の体内へ注入する。設定条件は、吐出開始時刻、単位時間あたりの吐出量を示す吐出割合、吐出時間、吐出間隔などの条件としてプログラム化されている。また、必要に応じて設定条件は、無線通信を介して遠隔操作により変更されうる。
【0011】
流体としては、例えば、薬液、生理食塩水、栄養液などの液体に限らず、吐出させたい成分を含んだゲル、ガスなどであってもよい。また、流体輸送装置300は、中型の実験用動物またはペットが装着したまま活動できる程度の大きさであるので、装着対象は実験用動物に限らず、人体へも応用できる。流体輸送装置300を人体に装着することにより、例えば、血管、筋肉等、生体組織に対して計画的または定期的に薬液を投与できる。
【0012】
図2は、流体輸送装置300の上面図である。流体輸送装置300は、流体輸送カートリッジ100および流体輸送駆動ユニット200を備える。流体輸送装置300は、2種類の流体を選択的に吐出できる。流体輸送カートリッジ100は、流体輸送駆動ユニット200に対して着脱可能に固定される。流体輸送カートリッジ100は、第1流体注入口部101、第2流体注入口部102、および流体吐出口部103を備える。第1流体注入口部101は、第1流体を収容する外部の第1リザーバーに接続される。第2流体注入口部102は、第2流体を収容する外部の第2リザーバーに接続される。流体吐出口部103は、実験用動物の体内に第1流体または第2流体を注入するための注入チューブに接続される。
【0013】
流体輸送駆動ユニット200は、カムユニット210を備える。カムユニット210は、回転駆動するカム体212およびカム体212を収納するカムカバー214を有する。カムユニット210は、第1流体および第2流体の少なくとも一方を第1流体注入口部101または第2流体注入口部102から流体吐出口部103へ導く駆動機構である。また、流体輸送駆動ユニット200のカムユニット210は、流体輸送カートリッジ100に対する位置決め部としても機能する。カムユニット210のカムカバー214は、回転中心に対して円弧形状を有し、流体輸送カートリッジ100を固定する場合に流体輸送駆動ユニット200に対して流体輸送カートリッジ100を位置決めする。
【0014】
流体輸送駆動ユニット200は、LED表示部208を備える。LED表示部208は、後述する流体輸送カートリッジ100における流路状態などを表示する。例えば、第1流体が流体吐出口部103へ輸送されている状態のときには、
図2に示す「CH1」に対応するLEDが点灯される。また、第2流体が流体吐出口部103へ輸送されている状態のときには、
図2に示す「CH2」に対応するLEDが点灯される。
【0015】
さらに、流体輸送駆動ユニット200は、実験用動物に関する生体情報を取得するための入力端子260を備える。生体情報としては、例えば実験用動物の血圧に関する情報、心電図に関する情報である。生体情報は、流体の吐出制御に用いてよい。なお、生体情報に基づいて流体の吐出制御を行わないのであれば、入力端子260は備えなくてもよい。
【0016】
また、流体輸送駆動ユニット200は、流体輸送カートリッジ100を固定するための第1フック205および第2フック206を備える。第1フック205は、流体輸送カートリッジ100の第1流体注入口部101と第2流体注入口部102との間の一辺110aを固定する。第2フック206は、流体輸送カートリッジ100の流体吐出口部103が設けられる一辺110bを固定する。また、流体輸送カートリッジ100と流体輸送駆動ユニット200とはロック部154により固定される。このように、ロック部154とともに、二辺において流体輸送カートリッジ100が固定されることによって、流体輸送カートリッジ100が流体輸送駆動ユニット200に対して脱落することを防止できる。
【0017】
また、流体輸送カートリッジ100を取り外す場合には、ロック部154を解除し、例えば右手の親指で第1フック205を押さえ、かつ右手の親指以外の指で第2フック206を押さえながら、左手で流体輸送カートリッジ100を取り外すことができる。よって、流体輸送カートリッジ100を流体輸送駆動ユニット200から容易に取り外すことができる。このように、流体輸送装置300が、第1フック205、第2フック206、およびロック部154などの異なる固定機能を有することで、猿などの霊長類に流体輸送装置300が装着される場合に、霊長類の手遊びなどに起因して流体輸送カートリッジ100が脱落することを防止できる。
【0018】
なお、
図2に図示するように座標軸を定める。すなわち、カム体212の回転軸と平行で、かつ紙面上へ向かう方向をz軸の正の方向と定め、z軸と直交し一辺110aと平行な方向をy軸、z軸と直交し一辺110bと平行な方向をx軸と定める。なお、x軸、y軸の方向は、右手系で定義する。また、以降の説明において、z軸の正の方向を上、z軸の負の方向を下、y軸の正の方向を右、y軸の負の方向を左と定義する。以降のいくつかの図においては、
図2の座標軸を基準として、それぞれの図の向きがわかるように座標軸を表示する。
【0019】
図3は、流体輸送カートリッジ100の内部構造の概略図である。流体輸送カートリッジ100は、外装部材110、流体切替弁130、および複数の押圧ピン140を備える。外装部材110は、流体切替弁130と複数の押圧ピン140を収容する。外装部材110は、流体輸送駆動ユニット200に対向する内向面とは反対の外向面が少なくとも透明である。また、外装部材110には、流体輸送駆動ユニット200に固定するためのロック部154が設けられている。
【0020】
流体輸送カートリッジ100の内向面または外向面側から見た外形は、第1流体注入口部101、第2流体注入口部102および流体吐出口部103を除く部分において略矩形であり、流体輸送駆動ユニット200に対して矩形の二辺にそれぞれ固定される。その二辺は、第1流体注入口部101および第2流体注入口部102が設けられ、第1流体注入口部101と第2流体注入口部102との間の一辺110a、および流体吐出口部103が設けられる一辺110bである。
【0021】
外装部材110は、一辺110aに、第1フック205が固定される第1固定受け部116aを有する。また、外装部材110は、一辺110bに、第2フック206が固定される第2固定受け部116bを有する。
【0022】
流体切替弁130は、第1弾性チューブ111、第2弾性チューブ112、第3弾性チューブ113、および三叉管128を有する。また、流体切替弁130は、切替部材131、並びに狭窄レバー134および狭窄レバー135を有する。
【0023】
第1弾性チューブ111は、外装部材110に形成された第1溝121に沿って配置され、第1流路を形成する。第1弾性チューブ111の一端は、第1流体注入口部101に接続され、他端は、三叉管128に接続される。第1弾性チューブ111は、第1リザーバーから第1流体注入口部101を介して注入された第1流体を三叉管128に流通させる。
【0024】
第2弾性チューブ112は、外装部材110に形成された第2溝122に沿って配置され、第2流路を形成する。第2弾性チューブ112の一端は、第2流体注入口部102に接続され、他端は、三叉管128に接続される。第2弾性チューブ112は、第2リザーバーから第2流体注入口部102を介して注入された第2流体を三叉管128に流通させる。
【0025】
第3弾性チューブ113は、外装部材110に形成された第3溝123に沿って配置され、第3流路を形成する。第3弾性チューブ113の一端は、三叉管128を介して、第1弾性チューブ111および第2弾性チューブ112に接続され、他端は流体吐出口部103に接続される。第3弾性チューブ113は、三叉管128を介して流入された第1流体および第2流体の少なくとも一方を流体吐出口部103まで流通させる。なお、第1流体注入口部101、第2流体注入口部102、および流体吐出口部103は、簡易着脱方式の一つであるルアーロック方式のコネクタでもよい。
【0026】
流体切替弁130は、4つの流路状態を切り替えるための機構である。第1状態は、第1流路を閉塞し、かつ第2流路を開放して、第2流体を流体吐出口部103に導く流路状態である。第2状態は、第1流路を開放し、かつ第2流路を閉塞して、第1流体を流体吐出口部103に導く流路状態である。第3状態は、第1流路および第2流路をいずれも閉塞して、第1流体および第2流体をいずれも流体吐出口部103に導かない流路状態である。第4状態は、第1流路および第2流路をいずれも開放して、第1流体および第2流体をいずれも流体吐出口部103に導く流路状態である。
【0027】
図3は、第1流路および第2流路をいずれも開放した状態である第4状態を示す。流体切替弁130において、第3弾性チューブ113へ流入する流体の切り替えは、切替部材131、並びに狭窄レバー134および狭窄レバー135の作用によって実現される。
【0028】
切替部材131は、凸部131aおよび凸部131bを有する。狭窄レバー134は押圧部134aおよび本体部134cを有し、狭窄レバー135は押圧部135aおよび本体部135cを有する。また、押圧部134aは突起部134bを含み、押圧部135aは突起部135bを含む。狭窄レバー134は、第1弾性チューブ111を押圧するために、第1弾性チューブ111に押圧部134aが対向するように配置される。狭窄レバー135は、第2弾性チューブ112を押圧するために、第2弾性チューブ112に押圧部135aが対向するように配置される。
【0029】
切替部材131は、狭窄レバー134および狭窄レバー135の少なくとも一方を挟んで、第1弾性チューブ111および第2弾性チューブ112と対向するように配置される。外装部材110には、第1弾性チューブ111を挟んで押圧部134aと対向する位置において、押圧部134aによる第1弾性チューブ111の狭窄効果を補助するための狭窄補助部110cが形成されている。同様に、外装部材110には、第2弾性チューブ112を挟んで押圧部135aと対向する位置において、押圧部135aによる第2弾性チューブ112の狭窄効果を補助するための狭窄補助部110dが形成されている。
【0030】
また、外装部材110には、狭窄レバー134が第1弾性チューブ111を狭窄する位置近傍において、抑制ピン110hが一体成形により形成されている。同様に、外装部材110には、狭窄レバー135が第2弾性チューブ112を狭窄する位置近傍において、抑制ピン110iが一体成形により形成されている。抑制ピン110h、110iは、それぞれ押圧部134a、135aのy方向の変位を抑制する。
【0031】
狭窄レバー134は、押圧部134aが形成された端の反対側の端が外装部材110の支持部110eにy軸方向にスライド可能に挟持されている。狭窄レバー134の押圧部134a以外の部分である本体部134cは板状であり、弾性を有する。本体部134cは、第1弾性チューブ111をz方向に跨いで交差するように、逃げ部を有する。
【0032】
狭窄レバー134は、押圧部134aが形成された端に、案内孔134eが設けられている。案内孔134eは、押圧部134aをz軸方向に貫通する孔である。案内孔134eのxy断面は、x方向に長い略楕円形状である。また、案内孔134eのxy断面におけるy方向の幅は、抑制ピン110hの径と略同一である。ここで、案内孔134eは、狭窄レバー134の先端部である押圧部134aを案内するための案内部としての役割を担う。案内孔134eには、抑制ピン110hが挿通される。押圧部134aは、抑制ピン110hによってy軸方向の変位が抑制される一方で、第1弾性チューブ111を狭窄する方向であるx軸方向に変位することができる。
【0033】
狭窄レバー135は、押圧部135aが形成された端の反対側の端が外装部材110の支持部110fにy軸方向にスライド可能に挟持されている。狭窄レバー135の押圧部135a以外の部分である本体部135cは板状であり、弾性を有する。本体部135cは、第2弾性チューブ112をz方向に跨いで交差するように、逃げ部を有する。
【0034】
狭窄レバー135は、押圧部135aが形成された端に、案内孔135eが設けられている。案内孔135eは、押圧部135aをz軸方向に貫通する孔である。案内孔135eのxy断面は、x方向に長い略楕円形状である。また、案内孔135eのxy断面におけるy方向の幅は、抑制ピン110iの径と略同一である。ここで、案内孔135eは、狭窄レバー135の先端部である押圧部135aを案内するための案内部としての役割を担う。案内孔135eには、抑制ピン110iが挿通される。押圧部135aは、抑制ピン110iによってy軸方向の変位が抑制される一方で、第2弾性チューブ112を狭窄する方向であるx軸方向に変位することができる。
【0035】
切替部材131は、後述する駆動装置によって駆動されてy方向に移動する。切替部材131は、流体輸送駆動ユニット200との装着面側に挿入穴131cを有する。外装部材110において切替部材131と対向する面には、切欠溝110gが形成される。詳細は後述するが、挿入穴131cには、流体輸送駆動ユニット200の装着面から露出した駆動装置の一部である固定部が、切欠溝110gを介して挿入される。これにより、切替部材131は、駆動装置のラック部材に係止されて、ラック部材と連動してy方向に移動する。
【0036】
切替部材131の移動に伴い、凸部131aおよび凸部131bもy方向に変位する。切替部材131の移動により、凸部131aは、狭窄レバー134をx方向に屈曲させて、第1弾性チューブ111を狭窄する方向に押圧部134aを変位させる。
【0037】
同様に、切替部材131の移動により、凸部131bは、狭窄レバー135をx方向に屈曲させて、第2弾性チューブ112を狭窄する方向に押圧部135aを変位させる。このように、流体切替弁130は、第1弾性チューブ111および第2弾性チューブ112をそれぞれ狭窄もしくは開放することにより、第3弾性チューブ113へ流入する流体を切り替える。
【0038】
第1弾性チューブ111および第2弾性チューブ112における流路の状態は、切替部材131の位置と対応付けられて制御される。詳細は後述するが、本実施形態において、切替部材131を駆動する駆動源には、ステッピングモータが用いられる。そして、流体輸送駆動ユニット200の制御部は、オープンループ制御方式で、切替部材131の位置を制御する。なお、制御部は、駆動原点となる基準位置を第1弾性チューブ111および第2弾性チューブ112の両開放となる位置として、当該基準位置よりステッピングモータを駆動させる。
【0039】
制御部は、切替部材131の位置に対応した流路情報を、LED表示部208に表示する。ユーザは、LED表示部208の表示を目視することによって、第1流体および第2流体、またはこれらの流体のいずれか一方が吐出対象の流体として選択されているのかを確認できる。
【0040】
また、上述のように外装部材110の上面は透明な素材が用いられている。したがって、切替部材131の位置、並びに狭窄レバー134および狭窄レバー135の変位は、流体輸送カートリッジ100が流体輸送駆動ユニット200に装着された状態で、外装部材110の外側から目視できる。ユーザは、切替部材131並びに狭窄レバー134および狭窄レバー135を目視することによっても、第1流体および第2流体、またはこれらの流体のいずれか一方が吐出対象の流体として選択されているのかを確認できる。
【0041】
外装部材110は、流体輸送駆動ユニット200に対向する内向面側であって流体吐出口部103の近傍に挿通孔160を有する。挿通孔160には、第3弾性チューブ113の圧力を計測するための圧力検出用のピンが挿通される。さらに、外装部材110は、流体輸送駆動ユニット200に装着された場合にユニット側の位置決め部を兼ねるカムユニット210に対向する位置に、カムユニット210との位置決め部を兼ねるカム収容開口150を有する。カム収容開口150は、カムユニット210の外周に接する貫通口である。
【0042】
外装部材110は、流体輸送駆動ユニット200に対向する内向面の対角線上に位置する二つの角部付近に、内向面から突出している突起部115aおよび突起部115bを有する。突起部115aおよび突起部115bは、流体輸送駆動ユニット200に設けられた固定孔に嵌合される。これにより、流体輸送カートリッジ100と流体輸送駆動ユニット200との位置ずれが抑制される。さらに、外装部材110は、貫通口152を有する。流体輸送駆動ユニット200に設けられた凸部が貫通口152に嵌合する。
【0043】
カムユニット210および複数の押圧ピン140は、第3弾性チューブ113に流入する流体を流体吐出口部103へ移動させる移動機構として機能する。複数の押圧ピン140は、第3弾性チューブ113を外部から押圧して流体の輸送路を狭窄する第1位置と、狭窄しない第2位置との間で変位する。複数の押圧ピン140は、外装部材110に形成されたピン案内溝124に沿って配置される。
【0044】
複数の押圧ピン140は、カムユニット210の回転中心に対して放射状かつ等間隔に、第3弾性チューブ113に対して流体の輸送方向に沿って配置される。複数の押圧ピン140の先端は、カム収容開口150に対してカム収容開口150の中心方向に向かって突出している。さらに、複数の押圧ピン140の先端は、カムユニット210の収容方向に対向する半球面を有する。このように半球面を有することで、カムユニット210がカム収容開口150に収容される場合に、複数の押圧ピン140の先端とカム体212の側面との間の摩擦を低減し、複数の押圧ピン140を規定された位置に確実に配置できる。
【0045】
さらに、ピン案内溝124に配置された状態の押圧ピン140を外向面側から見た場合に、押圧ピン140の先端部分は、先細りになるようにテーパ面を有する。これにより、複数の押圧ピン140を、狭い取り付けスペースに放射状に配置できる。押圧ピン140の先端が先細り形状なので、カム体212と押圧ピン140との接触面積を小さくでき、カム体212が回転駆動する場合の摺動抵抗を低減できる。
【0046】
また、カム収容開口150は、カムユニット210の回転中心に対して円弧形状を有している。これにより、流体輸送カートリッジ100が流体輸送駆動ユニット200に装着された状態において、カム収容開口150の円弧形状の中心と、カムユニット210の回転中心とを一致させることができる。そして、カム収容開口150の円弧形状の中心と、カムユニット210の回転中心とが一致しているので、カムユニット210がカム収容開口150に収容された状態で回転駆動した場合に、流体輸送カートリッジ100がカムユニット210に対して位置ずれすることを防止できる。
【0047】
さらに、カム収容開口150の円弧形状の中心と、カムユニット210の回転中心とが一致しているので、カム体212の回転駆動に応じて複数の押圧ピン140のそれぞれが順次第3弾性チューブ113を均等の力で押圧できる。したがって、カム体212の駆動に応じて、正確に複数の押圧ピン140に第3弾性チューブ113を押圧させることができる。これにより、流体を設定吐出量だけ正確に吐出させることができる。
【0048】
ここで、流体輸送カートリッジ100が流体輸送駆動ユニット200に装着された状態において、複数の押圧ピン140は、カム体212の駆動に応じて、放射方向に沿って変位する。具体的には、複数の押圧ピン140は、第3弾性チューブ113を外部から押圧して流体の輸送路を狭窄する第1位置と、狭窄しない第2位置との間で変位する。これにより、複数の押圧ピン140は、第3弾性チューブ113内の流体を上流側から下流側へ流通させる。言い換えれば、複数の押圧ピン140は、カム体212の駆動に応じて、第3弾性チューブ113を上流側から下流側へ順次押圧することにより第3弾性チューブ113を蠕動させて、流体を上流側から下流側へ流通させる。
【0049】
一方、流体輸送カートリッジ100が流体輸送駆動ユニット200から取り外された状態、つまり、カム収容開口150がカムユニット210を収容していない状態において、複数の押圧ピン140は、第3弾性チューブ113を押圧していない。言い換えれば、複数の押圧ピン140は、カム収容開口150がカムユニット210を収容していない状態において、第3弾性チューブ113の弾性力により流体の輸送路を狭窄しない第2位置に位置している。これにより、流体輸送装置300を使用しない場合には、流体輸送カートリッジ100を流体輸送駆動ユニット200から取り外しておくことで、第3弾性チューブ113が複数の押圧ピン140のいずれによっても押圧されていない状態を維持できる。したがって、第3弾性チューブ113が複数の押圧ピン140により押圧された状態が継続することで、第3弾性チューブ113の経年劣化が進行することを抑制できる。
【0050】
また、複数の押圧ピン140を押圧する駆動機構であるカムユニット210が流体輸送駆動ユニット200側に設けられている。カムユニット210は、設定された吐出量だけ流体を正確に吐出させるために正確に回転することが要求される。
【0051】
一方、カムユニット210が流体輸送カートリッジ100側に設けられる場合には、流体輸送カートリッジ100の装着ごとにカムユニット210を予め定められた位置に正確に固定することが要求される。しかし、カムユニット210を予め定められた位置に正確に固定することは難しい。本実施形態においては、カムユニット210を流体輸送駆動ユニット200側に設けることにより、流体輸送カートリッジ100の装着ごとにカムユニット210が位置ずれすることを防止できる。これにより、流体輸送カートリッジ100の装着ごとに流体の吐出量にばらつきが生じることを防止できる。
【0052】
さらに、流体輸送カートリッジ100が流体輸送駆動ユニット200に対して着脱できる。これにより、流体輸送カートリッジ100を消耗品として適宜交換できる。よって、例えば、一定回数の使用ごとに流体輸送カートリッジ100を交換することで、流体輸送カートリッジ100の清潔さを維持できる。
【0053】
図4Aは、
図3に示したA−A断面における断面図である。
図4Bは、
図4Aに示したB−B断面における断面図である。なお、
図4Aおよび
図4Bにおいては、切替部材131を移動させる駆動機構の主要な部分の説明に必要な構成だけを抜き出して示す。
【0054】
図4Aおよび
図4Bは、流体輸送カートリッジ100が流体輸送駆動ユニット200に装着された状態を示す。流体輸送駆動ユニット200は、切替部材131をy方向に移動させるための装置である駆動装置230を備える。駆動装置230は、モータ部232および駆動伝達部233を含む。モータ部232および駆動伝達部233は、筒状の支持部材237に内包されて支持されている。支持部材237は、直進溝237aを有する。
【0055】
図4Bに示すように、流体輸送駆動ユニット200において流体輸送カートリッジ100を装着する面である装着面202は、駆動伝達開口202aを備える。駆動装置230は、駆動伝達開口202aにおいて支持部材237の直進溝237aが露出するように配置される。また、外装部材110は、駆動伝達開口202aの上方に切欠溝110gが位置するように、装着面202の上方に当接して配置される。
【0056】
モータ部232は、切替部材131を移動させるための駆動力を生成する。モータ部232の一例は、ステッピングモータである。モータ部232は、端子231を介して、流体輸送駆動ユニット200内部の不図示の制御部および電源と電気的に接続されている。モータ部232は、流体輸送駆動ユニット200の制御部によって駆動が制御される。
【0057】
駆動伝達部233は、モータ部232で生成された駆動力を切替部材131に伝達する。駆動伝達部233は、リードスクリュー234およびラック部材235を有する。リードスクリュー234は、モータ部232の出力軸と連結して、出力軸と一体で回転する。リードスクリュー234の表面にはネジ山(雄ネジ)が形成されている。ラック部材235は、リードスクリュー234を挿通するための孔を有する。当該孔の表面には、リードスクリュー234の表面の雄ネジとかみ合うように雌ネジが形成されている。ラック部材235は、リードスクリュー234に螺合する。
【0058】
ラック部材235は、固定部235aを有する。固定部235aは、直進溝237aおよび切欠溝110gを介して、切替部材131に形成された挿入穴131cに挿入される。これにより、固定部235aは、ラック部材235に対して切替部材131を係止する。
【0059】
モータ部232によって、リードスクリュー234が回転すると、ラック部材235は、螺合するネジどうしの接触面における摩擦力により、リードスクリュー234の回転方向と同方向に回転する力を受ける。しかし、固定部235aは、直進溝237aにより回転方向の変位を制限されている。このため、ラック部材235は、リードスクリュー234の回転に伴って、リードスクリュー234の回転軸の方向、すなわちy方向へ並進運動する。切替部材131は、固定部235aによりラック部材235に係止されているため、ラック部材235の並進運動に伴って、
図4Aの白抜きの矢印で示した方向(y方向)に移動する。
【0060】
また、流体輸送カートリッジ100の外装部材110は、反動を抑制する壁部110jを有する。壁部110jは、切替部材131の凸部131aおよび凸部131bが設けられた側と反対側の面に当接するように設けられる。切替部材131は、それぞれの弾性チューブを狭窄させるときに、狭窄レバー134または狭窄レバー135の反発力により、狭窄させる方向と反対の方向に力を受ける。壁部110jは、それぞれの狭窄レバーから受ける力による切替部材131のx軸の負の方向への変位を抑制する。これにより、凸部131aおよび凸部131bのx軸方向の位置は、切替部材131のy軸方向のスライド変位において一定の位置に保たれる。
【0061】
図5Aから
図5Dは、流体切替弁130における流路の切り替えについて説明するための模式図である。
図5Aから
図5Dは、流体切替弁130を上方から見た図である。
図5Aは、第1弾性チューブ111および第2弾性チューブ112を共に狭窄せずに第1流体と第2流体を第3弾性チューブ113へ流通させる第4状態を示す。なお、第4状態は、流体輸送カートリッジ100の使用前の初期状態である。流体輸送装置300は、流体輸送カートリッジ100の使用前において、流路状態を第4状態に保つように流体切替弁130を固定する。
【0062】
図5Bは、狭窄レバー135の押圧部135aが第2弾性チューブ112を狭窄して、第1流体を第3弾性チューブ113へ流通させる第2状態を示す。
図5Cは、第1弾性チューブ111および第2弾性チューブ112を共に狭窄して、第3弾性チューブ113への流体の流入を遮断する第3状態を示す。このとき、狭窄レバー134の押圧部134aが第1弾性チューブ111を狭窄して、狭窄レバー135の押圧部135aが第2弾性チューブ112を狭窄する。
図5Dは、狭窄レバー134の押圧部134aが第1弾性チューブ111を狭窄して、第2流体を第3弾性チューブ113に流通させる第1状態を示す。
【0063】
切替部材131は、狭窄レバー134および狭窄レバー135が第1弾性チューブ111および第2弾性チューブ112を押圧する方向に対して直交する方向へスライド移動する。
図5Aから
図5Dに向かって、切替部材131は右方向へスライド移動する。
図5Aに示す第4状態から、切替部材131が右方向に移動すると、切替部材131の凸部131bの右側の傾斜面と、狭窄レバー135の押圧部135aの左側の傾斜面とが当接する。
【0064】
さらに切替部材131が右方向に移動すると、押圧部135aは、切替部材131からx軸の正の方向、すなわち第2弾性チューブ112を狭窄する方向に力を受けて変位する。より具体的には、押圧部135aは、案内孔135eに挿通された抑制ピン110iによってy軸方向の変位が抑制されているため、切替部材131の凸部131bから受ける力により、x軸の正の方向に変位する。また、
図5Bにおいて白抜き矢印で示したように、狭窄レバー135は、押圧部135aのx軸方向への変位に合わせて、y軸方向に変位する。これにより、押圧部135aは、流路方向に対して略直交するように第2弾性チューブ112を押圧することができる。
【0065】
図5Bに示すように、凸部131bの第2弾性チューブ112側の面と、押圧部135aの第2弾性チューブ112と反対側の面とが当接するまで切替部材131が移動すると、第2弾性チューブ112は、押圧部135aによって狭窄される。これにより、第2流体の流路が閉塞されて、第1流体のみが第3弾性チューブ113へ流入する。
【0066】
図5Bに示す第2状態から、切替部材131が右方向に移動すると、切替部材131の凸部131aの右側の傾斜面と、狭窄レバー134の押圧部134aの左側の傾斜面とが当接する。さらに切替部材131が右方向へ移動すると、押圧部134aは、切替部材131からx軸の正の方向、すなわち第1弾性チューブ111を狭窄する方向に力を受けて変位する。より具体的には、押圧部134aは、案内孔134eに挿通された抑制ピン110hによってy軸方向の変位が抑制されているため、切替部材131の凸部131aから受ける力により、x軸の正の方向に変位する。また、
図5Cにおいて白抜き矢印で示したように、狭窄レバー134は、押圧部134aのx軸方向への変位に合わせて、y軸方向に変位する。これにより、押圧部134aは、流路方向に対して略直交するように第1弾性チューブ111を押圧することができる。
【0067】
図5Cに示すように、凸部131aの第1弾性チューブ111側の面と、押圧部134aの第1弾性チューブ111と反対側の面とが当接するまで切替部材131が移動すると、第1弾性チューブ111は押圧部134aによって狭窄される。これにより、第1流体の流路が閉塞される。このとき、
図5Cに示したように、第2弾性チューブ112も押圧部135aによって狭窄されており、第2流体の流路も閉塞されている。このため、第1流体および第2流体は、いずれも第3弾性チューブ113へ流入しない。
【0068】
図5Cに示す第3状態から、切替部材131が右方向に移動すると、当接していた凸部131bの第2弾性チューブ112側の面と、押圧部135aの第2弾性チューブ112と反対側の面とが離れる。押圧部135aは、狭窄レバー135のx軸の負の方向の復元力により、押圧部135aの右側の傾斜面と凸部131bの左側の傾斜面とを当接させながらx軸の負の方向、すなわち第2弾性チューブ112から離れる方向に変位する。
【0069】
さらに切替部材131が右方向に移動すると、狭窄レバー135が第2弾性チューブ112を完全に開放した状態に戻る。このとき、
図5Dに示すように、第1弾性チューブ111は押圧部134aによって狭窄されており、第1流体の流路は閉塞されている。このため、第2流体のみが第3弾性チューブ113へ流入する。
【0070】
図5Dに示す第1状態から、切替部材131が右方向に移動すると、当接していた凸部131aの第1弾性チューブ111側の面と、押圧部134aの第1弾性チューブ111と反対側の面とが離れる。押圧部134aは、狭窄レバー134のx軸の負の方向の復元力により、押圧部134aの右側の傾斜面と凸部131aの左側の傾斜面とを当接させながらx軸の負の方向、すなわち第1弾性チューブ111から離れる方向に変位する。このとき、
図5Dにおいて白抜き矢印で示したように、狭窄レバー135は、押圧部135aのx軸方向への変位に合わせて、y軸方向に変位して、
図5Aに示した位置に戻る。
【0071】
さらに切替部材131が右方向に移動すると、狭窄レバー134が第1弾性チューブ111を完全に開放した状態になる。これにより、流路状態は、狭窄レバー134および狭窄レバー135のいずれも、第1弾性チューブ111および第2弾性チューブ112を狭窄しない、第4状態になる。
【0072】
本実施形態において、切替部材131が左端に位置する第4状態から右方向(y軸の正の方向)へ移動すると、流路状態は、第4状態→第2状態→第3状態→第1状態→第4状態のように切り替えられる。また、切替部材131が右端に位置する第4状態から左方向(y軸の負の方向)へ移動すると、流路状態は、第4状態→第1状態→第3状態→第2状態→第4状態のように切り替えられる。
【0073】
本実施形態では、第1流体のみを第3弾性チューブ113に流入させる状態と第2流体のみを第3弾性チューブ113に流入させる状態との間で流路を切り替える場合に、一旦両閉塞の状態を経てから切り替える。これにより、流路を切り替えるときに、第1流体と第2流体との混合液が第3弾性チューブ113に流入することを抑止することができる。
【0074】
図6は、狭窄レバーの端部に形成された突起部を説明するための模式図である。なお、ここでは2つの狭窄レバーのうち、狭窄レバー134を用いて説明する。狭窄レバー134は、第1弾性チューブ111との当接面134dに、当接面積よりも小さい突起部134bを有する。
【0075】
図6に示したように、突起部134bは、第1弾性チューブ111の流路方向に曲率を有するように配置された円筒面を含む。突起部134bは、第1弾性チューブ111の流路方向に曲率を有することにより、効率的に流路を狭窄する。また、突起部134bの幅は、第1弾性チューブ111の幅よりも広いことが好ましい。
【0076】
なお、第1弾性チューブ111と当接する突起部134bの面の形状は、円筒面以外の形状でもよい。例えば、xy断面の形状が、楕円、放物線および双曲線など円以外の曲線の一部であってもよい。また、突起部134bの全体の形状は、円筒の一部でなくてもよく、当接面134d側の面積よりも第1弾性チューブ111側の面積の方が小さくなるように配置された四角錐台や三角柱の一部のような形状であってもよい。当接面134d側の面積よりも第1弾性チューブ111側の面積の方が小さい突起部134bを有することにより、押圧部134aは、第1弾性チューブ111との接触面積が小さくなり、効率的に第1弾性チューブ111を狭窄できる。
【0077】
図7Aから
図7Cは、第2実施形態に係る狭窄レバー174を説明するための模式図である。なお、第1弾性チューブ111側と第2弾性チューブ112側とは同様の構成をとり得るため、
図7Aから
図7Cにおいて、第2弾性チューブ112側で代表して説明する。
【0078】
狭窄レバー174の押圧部174aには、切替部材131と当接する当接面に、第1当接部174bおよび第2当接部174cが設けられている。第1当接部174bと第2当接部174cは、x軸方向に互いに異なる位置に設けられて、段差部を形成する。
図7Aに示すように、凸部131bの狭窄レバー174と対向する面から第1当接部174bまでのx軸方向の長さをd1とする。また、凸部131bの狭窄レバー174と対向する面から第2当接部174cまでのx軸方向の長さをd2とする。なお、
図5Aから
図5Dを用いて説明した内容については、重複を避けるべく記載を省略する。
【0079】
図7Aから
図7Cに向かって、切替部材131は、右方向へ移動する。
図7Bに示すように、凸部131bの第2弾性チューブ112側の面と、押圧部174aの第1当接部174bとが当接するまで切替部材131が移動すると、押圧部174aは、x軸の正方向にd1変位する。すなわち、押圧部174aは、第2弾性チューブ112を内径方向に変位量d1に応じて狭窄する。
【0080】
更に、
図7Cに示すように、凸部131bの第2弾性チューブ112側の面と、押圧部174aの第2当接部174cとが当接するまで切替部材131が移動すると、押圧部174aは、x軸の正の方向にd2変位する。すなわち、押圧部174aは、第2弾性チューブ112を内径方向に変位量d2に応じて狭窄する。このように、本実施形態に係る狭窄レバー174は、押圧部174aに設けられた段差部により、狭窄レバー174が第2弾性チューブ112を狭窄する狭窄量を段階的に調節できる。これにより、単位時間当たりの第2弾性チューブ112からの流入量を段階的に調節できる。
【0081】
図8Aから
図8Dは、第3実施形態に係る狭窄機構を説明するための模式図である。本実施形態に係る流体切替弁は、第1実施形態に係る流体切替弁130の狭窄レバーを狭窄カム184に置き換え、切替部材131を切替部材181に置き換えたものである。なお、第1弾性チューブ111側と第2弾性チューブ112側とは同様の構成をとり得るため、
図8Aから
図8Dにおいて、第2弾性チューブ112側で代表して説明する。
【0082】
狭窄カム184は、z軸方向に伸びるカム回転軸186を有する。狭窄カム184は、カム回転軸186から外側へ向かって突出したアーチ状のカムローブ184aを有する。カム回転軸186は、外装部材110に一端が固定されている。狭窄カム184は、カム回転軸186の他端にカム回転軸186を中心に回動可能に固定されている。
【0083】
切替部材181は、凸部181aおよびカム保持穴181bを有する。切替部材181は、狭窄カム184が第2弾性チューブ112を押圧する方向に対して直交する方向へスライド移動する。
図8Aから
図8Dに向かって、切替部材181は右方向へスライド移動する。
図8Aは、狭窄カム184が第2弾性チューブ112を狭窄していない状態を示している。切替部材181が右方向に移動すると、凸部181aの右側の傾斜面が狭窄カム184に接触する。
【0084】
切替部材181がさらに右方向に移動すると、狭窄カム184は、凸部181aの右側の傾斜面との間に生じる摩擦力によりカム回転軸186回りに回転する。狭窄カム184は、カム回転軸186回りに回転することにより、カムローブ184aが第2弾性チューブ112を狭窄し始める。切替部材181がさらに右方向に移動すると、
図8Bに示すように、狭窄カム184のカム回転軸186を挟んでカムローブ184aと反対側の面がカム保持穴181bに収まる。このとき、狭窄カム184は、第2弾性チューブ112の流路を閉塞する。
【0085】
図8Bの状態から、切替部材181がさらに右方向に移動すると、
図8Cに示すように、カム保持穴181bの左側の面と狭窄カム184とが接触する。そして、切替部材181がさらに右方向に移動することにより、狭窄カム184は、カム保持穴181bの左側の面から力を受けて、カム回転軸186回りに回転する。これにより、カムローブ184aの位置がずれて、狭窄カム184は、狭窄していた第2弾性チューブ112を開放する。
【0086】
本実施形態の狭窄カムは、第1弾性チューブ111側と第2弾性チューブ112側とで同一形状の部品を使用することができる。このため、部品の種類を減らすことができるため、製造コストを抑えることができる。
【0087】
図9Aおよび
図9Bは、第4実施形態に係る流体切替弁190を説明するための模式図である。
図9Aは、流体切替弁190の外観斜視図である。
図9Bは、流体切替弁190をy軸の負の方向から見た図である。
【0088】
流体切替弁190は、第1弾性チューブ111、第2弾性チューブ112、第3弾性チューブ113、三叉管128および切替部材191を備える。また、流体切替弁190は、切替部材191を回転変位させるためにステッピングモータなどの外部機器で生成された駆動力を伝達する伝達機構としての駆動伝達部196を備える。
【0089】
第4実施形態は、第1実施形態に係る切替部材131、狭窄レバー134および狭窄レバー135を、切替部材191に置き換えた構成である。また、本実施形態は、第1実施形態に係る駆動装置230を、ステッピングモータおよびステッピングモータの回転軸に固定されたギアに置き換えた構成である。本実施形態において、ステッピングモータの回転軸に固定されたギアの一部は、流体輸送カートリッジ100の装着面側に表出する。
【0090】
切替部材191は、回転移動する回転部材である。切替部材191は、本体部材192および回転軸195を備える。本体部材192は円柱形状の部材であり、第1弾性チューブ111を狭窄させる凸部192aと、第2弾性チューブ112を狭窄させる凸部192bとが、円筒面上に回転軸195を中心とする径方向に部分的に突出して形成される。
【0091】
凸部192aおよび凸部192bは、y軸方向において互いに異なる位置に形成される。また、凸部192aおよび凸部192bは、y軸方向に見たときに、特定の領域において、互いに重なるように形成されている。流体輸送カートリッジ100の外装部材110には、回転軸195を受ける不図示の軸受部が設けられる。軸受部は、切替部材191のx方向、y方向、およびz方向への変位を制御しつつ、切替部材191を回動可能に固定する。
【0092】
図9Bを参照すると、切替部材191は、回転軸195を中心として、周上に4つの領域AからDを有する。領域Aは、凸部192aおよび凸部192bがいずれも形成されていない領域である。領域Bは、凸部192aのみが形成されている領域である。領域Cは、凸部192aおよび凸部192bがいずれも形成されている領域である。領域Dは、凸部192bのみが形成されている領域である。
図9Bに示されている状態において、第1弾性チューブ111は、凸部192aによって狭窄されている。
【0093】
駆動伝達部196は、周囲にギアを有する円柱状の回転体である。駆動伝達部196は、切替部材191の回転軸195を共有する。駆動伝達部196の周囲のギアは、不図示のステッピングモータの回転軸に固定されたギアと嵌合して、当該ステッピングモータの駆動力を切替部材191に伝達する。すなわち、駆動伝達部196は、ステッピングモータの回転力を切替部材191に伝達して、切替部材191を回転軸195回りに回動させる。
【0094】
切替部材191が回転軸195回りに回動すると、第1弾性チューブ111および第2弾性チューブ112に対向する領域が変化する。第1弾性チューブ111および第2弾性チューブ112に領域Aが対向する場合には、第1弾性チューブ111および第2弾性チューブ112のいずれも狭窄されずに、流路状態は第4状態となる。
【0095】
第1弾性チューブ111および第2弾性チューブ112に領域Bが対向する場合には、第1弾性チューブ111は凸部192aによって狭窄されて、流路状態は第1状態となる。第1弾性チューブ111および第2弾性チューブ112に領域Cが対向する場合には、第1弾性チューブ111は凸部192aによって狭窄され、第2弾性チューブ112は凸部192bによって狭窄されて、流路状態は第3状態となる。そして、第1弾性チューブ111および第2弾性チューブ112に領域Dが対向する場合には、第2弾性チューブ112は凸部192bによって狭窄されて、流路状態は第2状態となる。
【0096】
本実施形態において、第1弾性チューブ111および第2弾性チューブ112に領域Aが対向した状態を初期状態とする。流体輸送駆動ユニット200の制御部は、初期状態の位置を基準位置として、オープンループ制御方式でステッピングモータの駆動を制御する。切替部材191をy軸方向に見て時計回りに回転させると、領域A→領域B→領域C→領域D→領域Aの順番で第1弾性チューブ111および第2弾性チューブ112に対向する領域が変化する。すなわち、切替部材191は、第4状態→第1状態→第3状態→第2状態→第4状態の順序で流路状態を切り替える。
【0097】
また、切替部材191をy軸方向に見て時計回りに回転させると、領域A→領域D→領域C→領域B→領域Aの順番で第1弾性チューブ111および第2弾性チューブ112に対向する領域が変化する。すなわち、切替部材191は、第4状態→第2状態→第3状態→第1状態→第4状態の順序で流路状態を切り替える。
【0098】
このように、本実施形態では、第1流体のみを第3弾性チューブ113に流入させる状態と第2流体のみを第3弾性チューブ113に流入させる状態との間で流路を切り替える場合に、一旦両閉塞の状態を経てから切り替える。これにより、流路を切り替えるときに、第1流体と第2流体との混合液が第3弾性チューブ113に流入することを抑止することができる。
【0099】
本実施形態における切替部材191は回転によって流路を切り替えることができる。したがって、切替部材191は、流路の切り替えにおいて、周囲に移動のためのスペースを必要としない。このため、流体切替弁をコンパクトに構成することができる。
【0100】
図10は、第5実施形態に係る流体輸送駆動ユニットを説明するための模式図である。
図2においては、流体輸送駆動ユニットに流体輸送カートリッジを装着した状態を示したが、本図では、流体輸送駆動ユニットのみを示す。本実施形態に係る流体輸送駆動ユニット400は、第1実施形態に係る流体輸送駆動ユニット200に対して、切替部材431が流体輸送駆動ユニット側に設けられている点で異なる。なお、第1実施形態と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省略する。
【0101】
流体輸送駆動ユニット400は、切替部材431および駆動装置430を備える。切替部材431は、凸部431a、凸部431bおよび挿入穴431cを有する。凸部431aおよび凸部431bの形状および機能は、凸部131a、凸部131bと同一であるため、説明は省略する。また、切替部材431と駆動装置430との接続については、図を用いて後述する。
【0102】
流体輸送駆動ユニット400の装着面402には、矩形開口である駆動伝達開口402aが設けられている。また、流体輸送駆動ユニット400は、レール部402b、レール部402cおよび壁部402dを有する。レール部402b、402cは、駆動伝達開口402aの長辺のそれぞれに沿って設けられる。レール部402b、402cの上面は、略同一の平面を形成して、切替部材431の下面とそれぞれ当接する。切替部材431は、駆動装置230によって、レール部402b、402c上を摺動するように、y軸方向にスライド移動される。
【0103】
壁部402dは、レール部402cの駆動伝達開口402aと反対の側において、切替部材431の凸部431aおよび凸部431bが設けられた側と反対側の面に当接するように設けられる。壁部402dは、狭窄レバー134および狭窄レバー135のいずれかの押圧部からの反動を抑制する抑制部としての役割を担う。壁部402dの機能は、
図4Bを用いて説明した壁部110jと同一であるため、説明を省略する。
【0104】
装着面402には、カムユニット210の回転中心に対して円弧形状を有する凸部420が突出して設けられている。また、装着面402には、固定孔402eおよび固定孔402fが設けられている。凸部420、固定孔402eおよび固定孔402fは、流体輸送カートリッジを装着面402に装着するときに、流体輸送カートリッジの装着位置を決定する役割を担う。
【0105】
流体輸送駆動ユニット400は、後述する流体輸送カートリッジを固定するための第1フック405および第2フック406を備える。第1フック405および第2フック406の機能は、第1実施形態における第1フック205および第2フック206と同一であるため、説明を省略する。本実施形態においては、装着面402、凸部420、固定孔402eおよび固定孔402fは、流体輸送カートリッジを装着する装着部としての役割を担う。
【0106】
図11は、第5実施形態に係る流体輸送カートリッジ内部構造の概略図である。流体輸送カートリッジ500は、流体輸送カートリッジ100に対して、切替部材を備えない点で異なる。なお、第1実施形態と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省略する。
【0107】
流体輸送カートリッジ500は、外装部材510を備える。外装部材510は、一辺110aに、第1フック405が固定される第1固定受け部516aを有する。また、外装部材510は、一辺110bに、第2フック406が固定される第2固定受け部516bを有する。
【0108】
外装部材510は、開口520を有する。開口520には、流体輸送カートリッジ500が流体輸送駆動ユニット400に装着されるときに、切替部材431が内部に収容される。
【0109】
外装部材510は、貫通口552を有する。貫通口552は、流体輸送カートリッジ500が流体輸送駆動ユニット400に装着されるときに、凸部420と嵌合する。また、外装部材510は、突起部515aおよび突起部515bを有する。突起部515aおよび突起部515bは、流体輸送カートリッジ500が流体輸送駆動ユニット400に装着されるときに、それぞれ固定孔402eおよび固定孔402fに嵌合される。
【0110】
図12は、
図10に示したC−C断面における断面図である。流体輸送カートリッジ500が流体輸送駆動ユニット400に装着された状態を示す。なお、第1実施形態と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省略する。
【0111】
駆動装置430は、ラック部材435以外は、駆動装置230と同じ構成である。ラック部材435の固定部435aには、凹部435bが設けられている。また、切替部材431には、凸部431aと凸部431bとの間の側面から挿入穴431cまで貫通するネジ孔431dが設けられている。ネジ孔431dには、イモネジ438が螺合する。イモネジ438の先端部は、凹部435bに挿入される。イモネジ438をねじ込むことによって、凹部435bを介して、固定部435aは挿入穴431cの側面に押し付けられる。これにより、切替部材431は、イモネジ438を介してラック部材435に固定される。
【0112】
第5実施形態においては、凸部431aおよび凸部431bは、流体輸送駆動ユニット400の装着部に流体輸送カートリッジ500が装着されたときに、第1弾性チューブ111と第2弾性チューブ112の少なくともいずれかに対向する。そして、切替部材431のy軸方向のスライド変位により、第1状態から第4状態の間で流路状態を切り替える。
【0113】
以上の説明では、第3弾性チューブ113に流入する、第1弾性チューブ111および第2弾性チューブ112の2つの流路について、閉塞、開放の組み合わせである4つの流路状態の間で、流路を切り替える流体切替弁を一例とした。しかし、流路の数は2流路に限られず、3流路以上であってもよい。例えば、3流路の場合には、
図3において、上方から流入する第4弾性チューブを設けて第3流体を流入させるように構成する。第4弾性チューブを狭窄するための狭窄レバーを、狭窄レバー134および狭窄レバー135と同様に設ける。本実施形態においては、T字状の切替部材を用いて、x方向およびy方向に当該切替部材をスライド移動させることにより、各弾性チューブの閉塞、開放を制御する。同様に、4流路の場合には、第4弾性チューブと対向する方向、すなわち下方から流入する第5弾性チューブを設けて第4流体を流入させるように構成する。本実施形態においては、十字状の切替部材を用いて、x方向およびy方向に当該切替部材をスライド移動させることにより、各弾性チューブの閉塞、開放を制御する。
【0114】
以上の説明では、流体輸送駆動ユニットが流体切替弁を駆動させる駆動装置を備える実施形態について説明した。しかし、流体輸送カートリッジが駆動装置を備えてもよい。
【0115】
以上の説明では、駆動装置230のモータ部232を構成する部材の一例としてステッピングモータを用いて説明した。しかし、モータ部232を構成する部材はステッピングモータでなくてもよい。例えば、ブラシレスモータなどを使用してもよい。この場合には、切替部材131の位置検出機構を別途設けて、検出した切替部材131の位置が、予め定められた位置となるようにモータ部232の駆動量をフィードバック制御してもよい。同様に、第4実施形態に係る駆動装置についても、モータ部はステッピングモータでなくてもよく、ブラシレスモータなどを使用してもよい。この場合には、回転軸195の角度検出機構としてロータリエンコーダなどを別途設けて、検出した回転軸195の回転角度を用いて、ブラシレスモータの駆動量をフィードバック制御してもよい。
【0116】
以上の説明では、第3弾性チューブ113を蠕動させて内部の流体を吐出端子へ移動させる移動機構として、複数の押圧ピン140を有する移動機構を一例として記載した。しかし、他の移動機構を用いて構成してもよい。例えば、第3弾性チューブ113に対して、回転に伴ってカムローブの押し当て位置および狭窄量が流路方向に沿って変化するようにカムを配置する。当該カムにより、上流側から下流側に向かって流路中の流体を押し流すように移動させることができる。また移動機構は、ポンプであってもよい。この場合には、第3弾性チューブ113の端と流体吐出口部103との間に配置して、第3弾性チューブ113内部の流体を吸引して、流体吐出口部103から排出させてもよい。
【0117】
以上の説明では、狭窄レバー174による弾性チューブの狭窄量を段階的に調節する形態として、狭窄レバー174の押圧部174aに段差部を設けた実施形態を一例として説明した。しかし、段差部を設けずに傾斜のみを設けて、切替部材131との位置関係により押圧部174aの変位量を調整して狭窄量を調節するように構成してもよい。また、狭窄レバー174ではなく切替部材131の凸部に段差部が設けられていてもよい。この場合には、狭窄レバーには、段差部を設けなくてもよい。
【0118】
以上の説明では、流体輸送装置300における流体輸送カートリッジ100の一部の構成として流体切替弁を説明した。しかし、本発明に係る流体切替弁は、流体の流路を切り替える機構を備える様々な製品に適用し得る。例えば、本発明に係る流体切替弁は、温度の違う水の切り替えや、状態の異なる流体(例えば、気体と液体)の切り替えを行う製品に適用し得る。
【0119】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0120】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【解決手段】流体切替弁は、第1流体を流通させる第1弾性チューブと、第2流体を流通させる第2弾性チューブと、一端において第1弾性チューブおよび第2弾性チューブに接続された第3弾性チューブと、凸部を変位させることにより、第1弾性チューブを狭窄して第2流体を第3弾性チューブに流通させる第1状態と、第2弾性チューブを狭窄して第1流体を第3弾性チューブへ流通させる第2状態と、第1弾性チューブおよび第2弾性チューブを共に狭窄して第3弾性チューブへの流体の流入を遮断する第3状態と、第1弾性チューブおよび第2弾性チューブを共に狭窄せずに第1流体と第2流体を第3弾性チューブへ流通させる第4状態に切り替える切替部材とを備える。