(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本願発明者は、光学式のデータキャリアおよびリーダライタからなるデータキャリアシステムを開発することを考えた。光学式のデータキャリアシステムは、電波式および磁界式と比較して、交信距離、指向性および混信などの面で有利であり、工場の生産ラインなどでの取り扱いが容易である。また、光学式のデータキャリアシステムでは、データキャリアとリーダライタとの間で転送されるデータの大容量化を図ることができる。
【0009】
ただし、データキャリアからリーダライタへのデータ転送のために、データキャリアに搭載されたLEDなどの光源を発光させなければならず、その発光に比較的大きな電力が必要になる。
【0010】
たとえば、交信時にリーダライタからデータキャリアに強力な光を照射し、データキャリアの受光素子(たとえば、フォトダイオード)で発生した電力をコンデンサに蓄えて、その蓄えられた電力をデータキャリアの動作電力として使用する構成が考えられる。この構成において、データキャリアに一次電池が搭載されていない場合、データキャリアとリーダライタとが交信可能エリアに入ってから、コンデンサへの充電が開始されるため、短時間で大きな電力をコンデンサに蓄えることが困難であり、データキャリアからリーダライタへのデータ転送速度が制限される。したがって、データキャリアには、動作電力を賄うための一次電池を搭載することが好ましい。
【0011】
しかしながら、データキャリアでは、リーダライタとの交信時以外の待機時に、リーダライタからの受信が可能なように受信回路を動作させておく必要があるため、一次電池が消耗する。また、待機時に、太陽光や照明光などの直流外乱光が受光素子に入射すると、受光素子に起電力が発生し、その起電力による電流が一次電池を流れることによっても、一次電池が消耗する。そのため、大きな容量の一次電池が必要になり、データキャリアが大型化してしまう。
【0012】
本発明の目的は、待機時における電源電力の消費を抑制することができる、データキャリアおよびそのデータキャリアを含むデータキャリアシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の目的を達成するため、本発明の一の局面に係るデータキャリアは、リーダライタとの間で光を搬送波とする通信を行うデータキャリアであって、ダイオードからなる受光素子と、直流電圧を発生する電源と、受光素子および電源に接続された受信回路とを備え、受信回路は、コンパレータと、受光素子のカソードとコンパレータのマイナス入力端子との間に介在されたコンデンサと、コンデンサよりもコンパレータ側において、電源のプラス端子とコンパレータのマイナス入力端子との間に介在されたコンパレータ動作調整用抵抗と、複数の分圧用抵抗の直列回路からなり、一端が電源のプラス端子に接続され、2個の分圧用抵抗間の接続点がコンパレータのプラス入力端子に接続された抵抗分圧回路と、コンデンサよりも受光素子側において、受光素子のカソードとアノードとの間に介在された無効電流用抵抗とを含む。
【0014】
データキャリアとリーダライタとの間では、データを乗せた光(データにより変調された光)が送受される。
【0015】
データキャリアには、コンパレータ、コンデンサ、コンパレータ動作調整用抵抗、抵抗分圧回路および無効電流用抵抗を含む構成の受信回路が備えられている。コンデンサは、受光素子のカソードとコンパレータのマイナス入力端子との間に介在されている。コンパレータ動作調整用抵抗は、コンデンサよりもコンパレータ側において、電源のプラス端子とコンパレータのマイナス入力端子との間に介在されている。抵抗分圧回路は、複数の分圧用抵抗を直列接続して構成されている。抵抗分圧回路の一端は、電源のプラス端子に接続されている。分圧用抵抗と別の分圧用抵抗との接続点は、コンパレータのプラス入力端子に接続されている。これにより、コンパレータのプラス入力端子には、その分圧用抵抗と別の分圧用抵抗との接続点の電位(抵抗分圧回路の出力電圧)が基準電圧として入力される。無効電流用抵抗は、受光素子のカソードとアノードとの間に介在されている。
【0016】
受光素子に光が入射していない状態では、コンパレータのマイナス入力端子の電位(電源の電圧)がプラス入力端子の電位(抵抗分圧回路の出力電圧)以上であり、コンパレータの出力端子からローレベル信号が出力される。
【0017】
受光素子に太陽光や照明光などの直流外乱光が入射し、リーダライタからの信号光が入射していない状態では、受光素子に直流外乱光による起電力が生じる。受光素子のカソードとコンパレータのマイナス入力端子との間にコンデンサが介在されているので、受光素子に起電力が生じていても、コンパレータ動作調整用抵抗に電流が流れず、起電力による電流(無効電流)は、無効電流用抵抗を流れる。そのため、電源の電力が消費されない。
【0018】
よって、リーダライタからの信号光が受光素子に入射していない待機時における電源電力の消費を抑制することができる。
【0019】
リーダライタからパルス状の信号光(光パルス)が出力され、その信号光がデータキャリアの受光素子に入射すると、受光素子に生じる起電力の大きさが変化する。この起電力の大きさの変化に応じて、コンパレータ動作調整用抵抗、コンデンサおよび受光素子に電流が流れ、コンパレータのマイナス入力端子の電位が変化する。そして、コンパレータのマイナス入力端子の電位がプラス入力端子の電位を下回る期間、コンパレータの出力端子からハイレベル信号が出力される。
【0020】
よって、リーダライタからの信号光が受光素子に入射する通信時は、コンパレータの出力端子から出力される信号から受信データ(リーダライタから送信されたデータ)を得ることができる。
【0021】
本発明の他の局面に係るデータキャリアは、リーダライタとの間で光を搬送波とする通信を行うデータキャリアであって、ダイオードからなる受光素子と、コンパレータと、コンパレータの一方の入力端子に接続され、受光素子に生じる起電力の大きさの変化に応じて電位が変化する入力回路と、電源の直流電圧を所定の基準電圧に降圧して、当該基準電圧をコンパレータの他方の入力端子に入力する抵抗分圧回路と、受光素子のカソードとアノードとの間に介在された無効電流用抵抗とを含む。
【0022】
データキャリアとリーダライタとの間では、データを乗せた光(データにより変調された光)が送受される。
【0023】
データキャリアには、コンパレータ、入力回路、抵抗分圧回路および無効電流用抵抗が備えられている。コンパレータの一方の入力端子には、入力回路が接続されている。入力回路の電位、つまりコンパレータの一方の入力端子に入力される電位は、受光素子に生じる起電力の大きさの変化に応じて変化する。コンパレータの他方の入力端子には、抵抗分圧回路から電源の直流電圧を所定の基準電圧に降圧して生成された基準電圧が入力される。無効電流用抵抗は、受光素子のカソードとアノードとの間に介在されている。
【0024】
受光素子に太陽光や照明光などの直流外乱光が入射し、リーダライタからの信号光が入射していない状態では、受光素子に直流外乱光による起電力が生じる。この起電力の大きさはほぼ変化しないので、入力回路の機能により、コンパレータの一方の入力端子に入力される電位がほぼ変化しない。そのため、受光素子に起電力が生じていても、コンパレータの出力端子から出力される信号のレベルは、受光素子に光が入射していない状態から変化しない。このとき、起電力による電流(無効電流)は、無効電流用抵抗を流れる。そのため、電源の電力が消費されない。
【0025】
よって、リーダライタからの信号光が受光素子に入射していない待機時における電源電力の消費を抑制することができる。
【0026】
リーダライタからパルス状の信号光(光パルス)が出力され、その信号光がデータキャリアの受光素子に入射すると、受光素子に生じる起電力の大きさが変化する。この起電力の大きさの変化に応じて、コンパレータのマイナス入力端子の電位が変化する。そして、コンパレータのマイナス入力端子の電位がプラス入力端子の電位を超える期間、コンパレータの出力端子から出力される信号のレベルが反転する。
【0027】
よって、リーダライタからの信号光が受光素子に入射する通信時は、コンパレータの出力端子から出力される信号から受信データ(リーダライタから送信されたデータ)を得ることができる。
【0028】
データキャリアは、データを記憶する記憶部と、受信回路から出力される信号から受信データを取得し、当該受信データに基づいて、記憶部に記憶されているデータを用いた送信データを生成する制御部とをさらに備えていてもよい。
【0029】
その場合、制御部は、サブスレッショルド領域で動作するCMOS構造を有するLSIにより構成されていることが好ましい。
【0030】
MOSFETをサブスレッショルド領域で動作させることにより、LSIをnA(ナノアンペア)オーダの極めて微小な電力で動作させることができる。このLSIにより、制御部が構成されることにより、データキャリアの動作電力を低減させることができ、とくに交信時における電源電力の消費を抑制することができる。
【0031】
データキャリアは、発光素子と、電源の直流電圧を使用して、発光素子に駆動電流を供給する駆動回路とをさらに備え、制御部は、送信データに基づいて、駆動回路から発光素子に供給される駆動電流を制御してもよい。
【0032】
その場合、発光素子は、複数備えられており、複数の発光素子は、駆動回路に共通に接続され、駆動回路から供給される駆動電流により同時に発光することが好ましい。
【0033】
複数の発光素子が同期して発光することにより、1つの発光素子に塵埃などの異物が付着していても、他の発光素子からの発光により、リーダライタに送信データを送信することができる。
【0034】
発光素子は、LEDであることが好ましい。
【0035】
LEDは、パルス点灯を容易に制御することが可能な点光源であるので、発光素子にLEDが用いられることにより、強度がパルス状に変化する光を発光素子から容易に出力させることができる。また、LEDは、拡散光源であるので、データキャリアからの送信に比較的広い指向性を持たせることができる。そのため、LEDがリーダライタの受光素子と光軸の方向に対向していなくても、データキャリアからリーダライタに送信データを送信することができる。
【0036】
本発明のさらに他の局面に係るデータキャリアシステムは、リーダライタと、リーダライタとの間で光を搬送波とする通信を行うデータキャリアとを含むデータキャリアシステムであって、データキャリアは、ダイオードからなる受光素子と、直流電圧を発生する電源と、受光素子および電源に接続された受信回路とを備え、受信回路は、コンパレータと、受光素子のカソードとコンパレータのマイナス入力端子との間に介在されたコンデンサと、コンデンサよりもコンパレータ側において、電源のプラス端子とコンパレータのマイナス入力端子との間に介在されたコンパレータ動作調整用抵抗と、複数の分圧用抵抗の直列回路からなり、一端が電源のプラス端子に接続され、2個の分圧用抵抗間の接続点がコンパレータのプラス入力端子に接続された抵抗分圧回路と、コンデンサよりも受光素子側において、受光素子のカソードとアノードとの間に介在された無効電流用抵抗とを含む。
【0037】
この構成によれば、データキャリアに関して述べた作用効果と同様の作用効果を奏することができる。
【0038】
リーダライタは、リーダライタ側発光素子と、リーダライタ側受光素子と、リーダライタ側発光素子から出力される光の強度を相対的に小さい強度に設定し、当該状態において、リーダライタ側受光素子によるデータキャリアからの受光光量が第1レベル以上であれば、リーダライタ側発光素子から出力される光の強度を相対的に大きい強度に設定する強度設定部と、リーダライタ側発光素子から出力される光の強度が相対的に大きい強度に設定された状態において、リーダライタ側受光素子によるデータキャリアからの受光光量が第1レベルよりも低く設定された第2レベル以上であることを条件に、リーダライタ側受光素子が受けた光に乗せられたデータを取り出すリーダライタ側復調部とを備えていてもよい。
【0039】
リーダライタ側発光素子から相対的に小さい強度の光が出力され、これに応答して、リーダライタ側受光素子がデータキャリアから第1レベル以上の光量を受光すると、データキャリアがリーダライタの交信可能エリアに入ったと判断することができる。そして、データキャリアがリーダライタの交信可能エリアに入っている状態では、リーダライタ側発光素子から相対的に大きい強度の光が出力される。また、リーダライタ側受光素子がデータキャリアから第1レベルよりも低く設定された第2レベル以上の光量を受光すると、その光に乗せられたデータを取り出すようにリーダライタ側復調部が制御されることにより、リーダライタの受信感度が上げられる。そのため、データキャリアとリーダライタとの間で安定した交信を行うことができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、データキャリアにおいて、待機時における電源電力の消費を抑制することができる。一方、リーダライタからの信号光がデータキャリアの受光素子に入射する通信時は、その信号光に乗せられた受信データを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0043】
図1は、本発明の一実施形態に係るデータキャリアシステム1の構成を示すブロック図である。
【0044】
データキャリアシステム1は、データを保持するデータキャリア2と、データキャリア2に対してデータを読み書きするリーダライタ3とを含む。データキャリア2とリーダライタ3との間での通信には、光が搬送波として用いられる。すなわち、データキャリアシステム1は、データキャリア2とリーダライタ3との間で光を搬送波とする交信を行う光学式データキャリアシステムである。
【0045】
データキャリアシステム1は、たとえば、工場の生産ラインを流れる製品の管理に使用される。この場合、データキャリア2が工場の生産ラインを流れる各製品に取り付けられ、リーダライタ3が各生産ラインに対して固定的に配置される。そして、各製品の流れに伴い、データキャリア2がリーダライタ3の交信可能エリアに入ると、データキャリア2とリーダライタ3との間での交信により、データキャリア2に保持されている製品に関する情報がリーダライタ3に収集される。周期的または任意のタイミングで、各リーダライタ3がホストPC4に接続されて、リーダライタ3に収集された情報がリーダライタ3からホストPC4に転送される。これにより、ホストPC4において、複数の生産ラインを流れる製品を一元的に管理することができる。
【0046】
図2は、データキャリア2およびリーダライタ3の電気的構成を示すブロック図である。
【0047】
データキャリア2は、PD(フォトダイオード)21、LED22、制御部23、メモリ24、変調部25、復調部26および電源部27を備えている。
【0048】
制御部23は、CPUを含む構成であり、サブスレッショルド領域で動作するCMOS構造を有するLSIにより構成されている。制御部23は、メモリ24に格納されているプログラムを実行し、メモリ24に対するデータの書込/読出など、各部の動作を制御する。
【0049】
メモリ24は、たとえば、フラッシュメモリからなる。
【0050】
変調部25は、LED22に駆動電流を供給する駆動回路(ドライバ)251を含む。データキャリア2からリーダライタ3へのデータ(送信データ)の送信時に、当該データに基づいて、制御部23により駆動回路251が制御されて、LED22がパルス点灯される。これにより、当該データがLED22から出力されるパルス光に乗せられて送信される。
【0051】
復調部26は、受信回路261を含む。受信回路261については、後述する。
【0052】
電源部27は、一次電池271を含む。電源部27は、一次電池271の電力を制御部23、メモリ24、変調部25および復調部26に供給する。一次電池271には、たとえば、二酸化マンガンリチウム電池が採用されている。具体的には、電池容量およびサイズの観点から、一次電池271には、たとえば、コイン型リチウム電池「CR2025」が採用されている。
【0053】
リーダライタ3は、LD(レーザダイオード)31、PD(フォトダイオード)32、制御部33、メモリ34、変調部35、復調部36、電源部37および外部インタフェース38を備えている。
【0054】
LD31は、たとえば、赤色レーザダイオードである。
【0055】
制御部33は、CPUを含む構成であり、メモリ24に格納されているプログラムを実行し、メモリ34に対するデータの書込/読出など、各部の動作を制御する。
【0056】
メモリ34は、たとえば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)からなる。
【0057】
変調部35は、LED22に駆動電流を供給する駆動回路(ドライバ)351を含む。リーダライタ3からデータキャリア2へのデータの送信時に、当該データに基づいて、制御部33により駆動回路351が制御されて、LD31がパルス点灯される。これにより、当該データがLD31から出力される光に乗せられて送信される。
【0058】
復調部36は、受信回路361を含む。データキャリア2から出力される信号光がPD32に入射すると、PD32に光起電力効果による起電力が生じる。PD32の起電力は、信号光の強度に応じて変化する。受信回路361では、PD32の起電力の変化に応じてハイレベル/ローレベルが切り替わる信号が生成される。この信号は、受信回路361から制御部33に出力される。制御部33では、受信回路361から出力される信号がデータに変換されて、そのデータがデータキャリア2からの受信データとして取得される。
【0059】
電源部37は、制御部33、メモリ34、変調部35および復調部36に電力を供給する。電源部37は、たとえば、内蔵バッテリを電源として備えていてもよいし、外部電源(たとえば、商用交流電源、USBバスパワーなど)から各部の動作電力を生成する回路を備えていてもよい。
【0060】
外部インタフェース38は、ホストPC4(
図1参照)との通信のためのインタフェースである。外部インタフェース38には、たとえば、USB(Universal Serial Bus)インタフェースが採用されている。
【0061】
図3は、データキャリア2の受信回路261(復調部26)の構成を示す回路図である。
図4は、リーダライタ3からの光の出力態様(コンパレータの出力端子からの信号の出力態様)とデータ(符号)との関係を説明するための図である。
【0062】
受信回路261は、コンパレータ41、コンデンサ42、コンパレータ動作調整用抵抗43、抵抗分圧回路44および無効電流用抵抗45を含む。
【0063】
コンパレータ41は、プラス入力端子411、マイナス入力端子412および出力端子413を有している。
【0064】
コンデンサ42は、PD21のカソードとコンパレータ41のマイナス入力端子412との間に介在されている。具体的には、コンデンサ42の一方の電極は、PD21のカソードに配線46を介して接続されている。コンデンサ42の他方の電極は、コンパレータ41のマイナス入力端子412に配線47を介して接続されている。
【0065】
コンパレータ動作調整用抵抗43の一端は、電源部37の一次電池271のプラス端子に接続されている。コンパレータ動作調整用抵抗43の他端は、配線47に接続されている。すなわち、コンパレータ動作調整用抵抗43は、一次電池271のプラス端子とコンパレータ41のマイナス入力端子412との間に介在されている。
【0066】
コンパレータ41の出力端子413は、制御部23に接続されている。
【0067】
抵抗分圧回路44は、2個の分圧用抵抗441,442を直列接続して構成されている。抵抗分圧回路44の一端は、一次電池271のプラス端子に接続されている。分圧用抵抗441,442の接続点443は、コンパレータ41のプラス入力端子411に接続されている。抵抗分圧回路44の他端およびPD21のアノードは、グランド(GND)に接続されている。
【0068】
なお、抵抗分圧回路44は、3個以上の分圧用抵抗を直列接続して構成されていてもよい。
【0069】
無効電流用抵抗45は、PD21のカソードとアノードとの間に介在されている。具体的には、無効電流用抵抗45の一端は、配線46に接続されている。無効電流用抵抗45の他端は、グランドに接続されている。
【0070】
PD21に光が入射していない状態では、PD21に直流外乱光による起電力が生じず、PD21のカソードに接続された配線46に電流が流れないので、その配線46にコンデンサ42を介して接続された配線47に電流が流れない。そのため、配線47の電位は、電源部37の一次電池271のプラス端子と同電位である。一方、抵抗分圧回路44には、電流が流れる。抵抗分圧回路44のマイナス側の分圧用抵抗442には、比較的抵抗値の大きい抵抗が用いられており、抵抗分圧回路44に流れる電流は、たとえば、100nA程度の微小電流である。コンパレータ41のプラス入力端子411には、一次電池271の起電圧からプラス側の分圧用抵抗441での電位降下分を差し引いた電圧が供給される。したがって、コンパレータ41のマイナス入力端子412の電位は、プラス入力端子411の電位よりも高く、コンパレータ41の出力端子からは、ローレベル信号が出力される。
【0071】
PD21に太陽光や照明光などの直流外乱光が入射し、リーダライタ3からの信号光が入射していない状態では、PD21に直流外乱光による起電力(直流電力)が生じる。このとき、PD21のカソードに接続された配線46に電流が流れるが、PD21のカソードとコンパレータ41のマイナス入力端子412との間にコンデンサ42が介在されているので、PD21に直流外乱光による起電力が生じていても、配線47には電流が流れない。そのため、コンパレータ41のマイナス入力端子412の電位は、プラス入力端子411の電位よりも高く、コンパレータ41の出力端子からは、ローレベル信号が出力される。配線46を流れる電流(無効電流)は、無効電流用抵抗45を流れる。
【0072】
このように、PD21にリーダライタ3からの信号光が入射しておらず、データキャリア2とリーダライタ3との間での交信が行われていない待機状態では、配線46に電流が流れない。そのため、電源部37の一次電池271の電力の消費は、抵抗分圧回路44を流れる微小電流による消費分のみである。よって、受信回路261の構成では、リーダライタからの信号光がPD21に入射していない待機時における一次電池271の電力(電源電力)の消費を抑制することができる。その結果、一次電池271の寿命を延ばすことができる。
【0073】
待機状態、すなわち、生産ラインを流れる製品に取り付けられたデータキャリア2がリーダライタ3との交信可能エリアに入る前の状態では、リーダライタ3では、LD31から出力される光の強度が相対的に小さい強度に設定されている。そして、制御部33により、変調部35の駆動回路351が制御されて、そのLD31から出力される強度の小さい光に乗せて、交信の開始を指示する交信開始コマンドが繰り返し送信される。
【0074】
交信開始コマンドは、「1」および「0」の羅列(ビット列)により表現されるデータである。データ「1」および「0」は、
図4に示されるように、LD31の1回の点灯時間Tonを固定として、LD31の点灯から次の点灯までの時間間隔の長短により送信される。たとえば、LED31の点灯から相対的に短い時間T1の経過後にLED31が再び点灯されることにより、データ「1」が送信される。一方、LED31の点灯から相対的に長い時間T0の経過後にLED31が再び点灯されることにより、データ「0」が送信される。
【0075】
データキャリア2がリーダライタ3との交信可能エリアに入ると、そのデータキャリア2のPD21に交信開始コマンドを乗せた光(信号光)が入射する。リーダライタ3からの信号光がデータキャリア2のPD21に入射すると、PD21に生じる起電力の大きさが変化する。この起電力の大きさの変化に応じて、コンパレータ動作調整用抵抗43、コンデンサ42およびPD21に電流が流れ、コンパレータ41のマイナス入力端子412の電位が変化する。そして、コンパレータ41のマイナス入力端子412の電位がプラス入力端子411の電位を下回る期間、コンパレータ41の出力端子413からハイレベル信号が出力される。
【0076】
制御部23では、コンパレータ41の出力端子413から出力される信号からデータ(符号)が復号される。
【0077】
すなわち、データキャリア2とリーダライタ3との間での交信が開始されていない状態で、コンパレータ41の出力端子413からハイレベル信号が出力されると、制御部23により、それ以降、コンパレータ41の出力端子413からローレベル信号が時間T0よりも長い一定時間にわたって出力され続けるまで、その出力端子413から出力される信号がデータに復号される。コンパレータ41の出力端子413からハイレベル信号が出力されてから次のハイレベル信号が出力されるまでの時間が相対的に短い時間T1であれば、制御部23により、データ「1」が取得される。一方、コンパレータ41の出力端子413からハイレベル信号が出力されてから次のハイレベル信号が出力されるまでの時間が相対的に長い時間T0であれば、制御部23により、データ「0」が取得される。
【0078】
そして、制御部23では、その取得された一連のビット列が交信開始コマンドに対応したものであるかが判定される。
【0079】
ビット列が交信開始コマンドに対応したものであれば、制御部23により、リーダライタ3からの交信開始コマンドを受信したと判断される。この場合、制御部23により、変調部25の駆動回路251が制御されて、LED22がパルス点灯し、交信を承認する旨の交信承認データがLED22から出力される光に乗せて送信される。
【0080】
交信承認データを乗せた光がリーダライタ3のPD32に入射すると、リーダライタ3では、制御部33により、復調部36の受信回路361から出力される信号から交信承認データが取得される。
【0081】
たとえば、受信回路361には、感度(基準電圧)が相違する2個のコンパレータが並列に設けられている。交信承認データを乗せた光の受光時には、相対的に低感度のコンパレータ(たとえば、プラス入力端子に基準電圧が入力される構成では、相対的に低い基準電圧が入力されるコンパレータ)が出力する信号から交信承認データが取得されない場合、相対的に高感度のコンパレータが出力する信号から交信承認データが取得されても、データキャリア2とリーダライタ3との間での交信は開始されない。相対的に低感度のコンパレータが出力する信号から交信承認データが取得されると、データキャリア2とリーダライタ3との間での交信が開始される。
【0082】
データキャリア2とリーダライタ3との間での交信が開始されると、リーダライタ3では、データキャリア2との安定した交信を行うために、LD31から出力される光の強度が相対的に大きい強度に変更される。
【0083】
その後、制御部33により、変調部35の駆動回路351が制御されて、データキャリア2に所定データの送信を要求する送信要求コマンドがLD31から出力される光に乗せて送信される。
【0084】
送信要求コマンドを乗せた光がデータキャリア2のPD21に入射すると、前述の交信開始コマンドの場合と同様に、制御部23により、コンパレータ41の出力端子413から出力される信号がデータに復号される。この復号により、送信要求コマンドが取得される。送信要求コマンドの取得に応答して、制御部23により、メモリ24から所定データが読み出される。そして、制御部23により、変調部25の駆動回路251が制御されて、LED22がパルス点灯し、メモリ24から読み出された所定データがLED22から出力される光に乗せて送信される。
【0085】
所定データを乗せた光がリーダライタ3のPD32に入射すると、リーダライタ3では、制御部33により、復調部36の受信回路361から出力される信号から所定データが取得される。そして、制御部33により、その所定データがメモリ34に書き込まれる。
【0086】
データキャリア2とリーダライタ3との交信の開始後は、たとえば、相対的に高感度のコンパレータが出力する信号からデータが取得される。これにより、データキャリア2からの光が微弱であっても、リーダライタ3では、そのデータキャリア2からの光に乗せられたデータを良好に取得することができる。
【0087】
その後、制御部33により、変調部35の駆動回路351が制御されて、データキャリア2との交信を終了する旨の交信終了コマンドがLD31から出力される光に乗せて送信される。
【0088】
交信終了コマンドを乗せた光がデータキャリア2のPD21に入射すると、制御部23により、コンパレータ41の出力端子413から出力される信号がデータに復号されて、交信終了コマンドが取得される。この交信終了コマンドの取得に応答して、データキャリア2とリーダライタ3との間での交信が終了となる。
【0089】
なお、データキャリア2とリーダライタ3との間での交信の開始後、LD31から出力される光の強度が相対的に小さい強度から相対的に大きい強度とに切り替えられるとしたが、LD31から出力される光の強度は、データキャリア2とリーダライタ3との間での交信の開始の前後で一定であってもよい。
【0090】
また、リーダライタ3の復調部36の受信回路361には、感度が相違する2個のコンパレータが並列に設けられているとしたが、受信回路361に設けられるコンパレータの個数は、1個であってもよい。
【0091】
データキャリア2の復調部26の受信回路261に、コンパレータ41よりも高感度のコンパレータがコンパレータ41と並列に設けられて、データキャリア2とリーダライタ3との間での交信の開始後は、その高感度のコンパレータが出力する電流からデータが取得されてもよい。これにより、データキャリア2のPD21に入射する信号光(リーダライタ3から出力される光)が微弱であっても、データキャリア2では、その信号光に乗せられたデータを良好に取得することができる。
【0092】
データキャリア2では、制御部23がサブスレッショルド領域で動作するCMOS構造を有するLSIにより構成されている。これにより、制御部23の動作電力を低減させることができ、制御部23の動作による一次電池271の電力の消費を抑制することができる。その結果、一次電池271の寿命をさらに延ばすことができる。
【0093】
LED22は、パルス点灯を容易に制御できる点光源である。データキャリア2では、発光素子としてLED22が用いられているので、強度がパルス状に変化する光を容易に出力させることができる。また、LED22は、拡散光源であるので、データキャリア2からの送信に比較的広い指向性を持たせることができる。そのため、そのため、LED22がリーダライタ3のPD32と光軸の方向に対向していなくても、データキャリア2からリーダライタ3に送信データを送信することができる。
【0094】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0095】
たとえば、前述の実施形態では、データキャリア2が生産ラインを流れる製品などの移動体に取り付けられた場合を取り上げたが、データキャリア2は、工場などに固定的に配置される機器に取り付けられて、当該機器の状態を記憶保持するために用いられてもよい。
【0096】
図5は、工場などに固定的に配置される機器に取り付けられるデータキャリア2の構成の一例を示すブロック図である。
【0097】
図5に示されるように、データキャリア2が取り付けられる機器には、機器の状態を検出する検出器51が取り付けられる。検出器51には、LED52が備えられ、データキャリア2には、そのLED52とフォトカプラを構成するフォトトランジスタ61が備えられている。検出器51により機器の状態が検出されると、LED52とフォトトランジスタ61との間で、その機器の状態を表す電気信号が光に変換され、当該光が再び電気信号に戻されることにより、検出器51からデータキャリア2に機器の状態が送信される。データキャリア2が機器の状態を受信すると、制御部23により、その受信した機器の状態がメモリ24に書き込まれる。
【0098】
機器の状態としては、たとえば、機器の温度、機器の使用環境の温度および/または湿度、機器の動作回数(たとえば、プレス装置におけるプレス回数)、機器で生産された良品および/または不良品の数量などが挙げられる。
【0099】
機器の状態がデータキャリア2に記憶保持されていれば、たとえば、機器における不良発生時や不良率が増加した場合に、リーダライタ3によりデータキャリア2から機器の状態を読み出して、その読み出した情報を不良発生原因の解析や不良発生の対策に役立てることができる。その結果、製品の品質向上を図ることができる。
【0100】
また、データキャリア2が工場などに固定的に配置される機器に取り付けられる場合、データキャリア2に当該機器の状態を検出する構成が備えられていてもよい。
【0101】
データキャリア2がワイヤーハーネス端子の圧着作業に用いるプレス装置に取り付けられる場合、データキャリア2には、たとえば、
図6に示されるように、圧電変換素子(ピエゾ素子)71と、圧電変換素子71の出力信号からアプリケータの上下動した際の固有振動を検出する検出回路72と、検出回路72による固有振動の検出回数を計数する計数回路73とが備えられる。そして、計数回路73により計数された回数が制御部23に入力され、制御部23により、その回数がメモリ24に書き込まれる。
【0102】
この構成によれば、リーダライタ3によりデータキャリア2からメモリ24に記憶保持されている回数(使用回数)を読み出すことにより、プレス装置に用いられている消耗品の寿命(耐用期間)を良好に管理することができる。
【0103】
また、データキャリア2には、複数の発光素子が備えられてもよい。たとえば、
図7に示されるように、データキャリア2には、2個のLED221,222が備えられてもよい。この場合、2個のLED221,222は、同期してパルス点灯されて、各LED221,222から出力される光に送信データが乗せられるとよい。これにより、1つのLED221に塵埃などの異物が付着していても、他のLED222からの発光により、リーダライタ3に送信データを送信することができる。
【0104】
また、リーダライタ3により、データキャリア2にデータが送信されて、そのデータがデータキャリア2のメモリ24に書き込まれてもよい。たとえば、データキャリア2が取り付けられる機器に校正を必要とする部材が備えられている場合、校正が行われた時に、その日時または次に校正を行うべき時期がデータキャリア2のメモリ24に書き込まれてもよい。また、データキャリア2が取り付けられる機器に交換を必要とする部材が備えられている場合、交換が行われた時に、その日時または次に交換を行うべき時期がデータキャリア2のメモリ24に書き込まれてもよい。これにより、リーダライタ3によりデータキャリア2から機器の状態などの情報を読み出す際に、校正時期または交換時期に関する情報を併せて読み出すことにより、校正時期または交換時期までの期間を取得することができる。
【0105】
本発明の実施形態について詳細に説明してきたが、これらは本発明の技術的内容を明らかにするために用いられた具体例に過ぎず、本発明はこれらの具体例に限定して解釈されるべきではなく、本発明の精神および範囲は添付の請求の範囲によってのみ限定される。
【0106】
たとえば、リーダライタ3の発光素子として、赤色レーザダイオードからなるLD(レーザダイオード)31が備えられているとした。これに限らず、リーダライタ3の発光素子は、赤色以外の色のレーザ光を出力するレーザダイオードであってもよい。また、リーダライタ3の発光素子は、レーザダイオードに限らず、LEDであってもよい。LEDは、赤色LEDであってもよいし、赤外LEDであってもよい。
【0107】
たとえば、リーダライタ3がデータキャリア2から比較的離れた位置で操作される長距離ハンディタイプのものである場合、リーダライタ3の発光素子として、赤色レーザが採用されることが好ましい。赤色レーザが採用されることにより、リーダライタ3から出力されるレーザ光がデータキャリア2に照射されていることを視認することができる。リーダライタ3がデータキャリア2から比較的近い位置で操作される短距離ハンディタイプまたは固定的に配置される固定タイプのものである場合、リーダライタ3の発光素子として、赤色LEDまたは赤外LEDが採用されてもよい。たとえば、短距離ハンディタイプのリーダライタ3には、赤色LEDが採用され、固定タイプのリーダライタ3には、赤外LEDが採用されてもよい。
【0108】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
データキャリア2には、コンパレータ41、コンデンサ42、コンパレータ動作調整用抵抗43、抵抗分圧回路44および無効電流用抵抗45が備えられている。コンデンサ42は、PD(フォトダイオード)21のカソードとコンパレータ41のマイナス入力端子との間に介在されている。コンパレータ動作調整用抵抗43は、一次電池271のプラス端子とコンパレータ41のマイナス入力端子との間に介在されている。抵抗分圧回路44は、複数の分圧用抵抗441,442を直列接続して構成されている。抵抗分圧回路44の一端は、一次電池271のプラス端子に接続されている。分圧用抵抗441と別の分圧用抵抗442との接続点は、コンパレータ41のプラス入力端子に接続されている。