特許第5938147号(P5938147)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5938147広いコモンモード入力範囲を有する受信器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5938147
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】広いコモンモード入力範囲を有する受信器
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/45 20060101AFI20160609BHJP
   H03F 3/32 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   H03F3/45 A
   H03F3/32
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-524252(P2015-524252)
(86)(22)【出願日】2013年3月21日
(65)【公表番号】特表2015-523040(P2015-523040A)
(43)【公表日】2015年8月6日
(86)【国際出願番号】US2013033381
(87)【国際公開番号】WO2014018124
(87)【国際公開日】20140130
【審査請求日】2016年1月29日
(31)【優先権主張番号】13/560,944
(32)【優先日】2012年7月27日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591025439
【氏名又は名称】ザイリンクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】XILINX INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リム,シオック・ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】シェイ,チェン−シアン
(72)【発明者】
【氏名】サボジ,ジャファー
【審査官】 白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−297462(JP,A)
【文献】 特表2006−508561(JP,A)
【文献】 特開平7−263978(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0291758(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00−3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
差動増幅器であって、
第1および第2の入力端子と、
第1の導電型を有し、ゲートが前記第1および第2の入力端子にそれぞれ結合されるトランジスタの第1の差動対と、
第2の導電型を有し、ゲートが前記第1および第2の入力端子にそれぞれ結合されるトランジスタの第2の差動対とを備え、前記第1の差動対はNMOS差動対であり、前記第2の差動対はPMOS差動対であり、さらに
トランジスタの前記第1の差動対に結合され、第1のバイアス電流制御信号に応答してトランジスタの前記第1の差動対のそれぞれのテール電流を調整するように構成される第1の対の調整可能な電流源と、
トランジスタの前記第2の差動対に結合され、前記第1のバイアス電流制御信号に応答してトランジスタの前記第2の差動対のそれぞれのテール電流を調整するように構成される第2の対の調整可能な電流源と、
トランジスタの前記第2の差動対に結合され、第2のバイアス電流制御信号に応答してトランジスタの前記第2の差動対を通るそれぞれの電流を調整するように構成される第3の対の調整可能な電流源と
制御回路とを備え、前記制御回路は、
高いコモンモードを示す信号に応答して、
前記第1のバイアス電流制御信号に応答して、前記第1の対の調整可能な電流源を用いてトランジスタの前記第1の差動対をバイアスすることによってトランジスタの前記第1の差動対の動作をイネーブルし、かつ
前記第1のバイアス電流制御信号を前記第3の対の調整可能な電流源から切り離し、かつ前記第2のバイアス電流制御信号を前記第2の対の調整可能な電流源から切り離すことによって、トランジスタの前記第2の差動対の動作をディスエーブルし、
低いコモンモードを示す信号に応答して、
前記第1のバイアス電流制御信号に応答して前記第2の対の調整可能な電流源を用いてトランジスタの前記第2の差動対をバイアスし、かつ第2のバイアス電流制御信号に応答して前記第3の対の調整可能な電流源を用いてトランジスタの前記第2の差動対をバイアスすることによって、トランジスタの前記第2の差動対の動作をイネーブルし、かつ
前記第1のバイアス電流制御信号を前記第1の対の調整可能な電流源から切り離すことによってトランジスタの前記第1の差動対の動作をディスエーブルするように構成される、差動増幅器。
【請求項2】
前記第1および第2の対の調整可能な電流源に結合され、かつ前記第1のバイアス電流制御信号を生成するように構成される一定相互コンダクタンスバイアス生成器をさらに備える、請求項1に記載の差動増幅器。
【請求項3】
前記第3の対の調整可能な電流源に結合され、かつ前記第1のバイアス電流制御信号から前記第2のバイアス電流制御信号を生成するように構成されるバイアス生成回路をさらに備える、請求項1または2に記載の差動増幅器。
【請求項4】
トランジスタの前記第1の差動対の第1のトランジスタはドレインおよびソースを有し、前記ドレインは第1の電流源から電流を受けるように結合されかつ前記差動増幅器の第1の出力端子に結合され、前記ソースは前記第1の対の調整可能な電流源の第1のものに結合され、
トランジスタの前記第1の差動対の第2のトランジスタはドレインおよびソースを有し、前記ドレインは第2の電流源から電流を受けるように結合されかつ前記差動増幅器の第2の出力端子に結合され、前記ソースは前記第1の対の調整可能な電流源の第2のものに結合され、
トランジスタの前記第2の差動対の第1のトランジスタは、ソースが前記第3の対の調整可能な電流源の第1のものに結合され、ドレインが前記第2の対の調整可能な電流源の第1のものに結合され、
トランジスタの前記第2の差動対の第2のトランジスタは、ソースが前記第3の対の調整可能な電流源の第2のものに結合され、ドレインが前記第2の対の調整可能な電流源の第2のものに結合される、請求項1から3のいずれかに記載の差動増幅器。
【請求項5】
トランジスタの前記第2の差動対の前記第1のトランジスタの前記ドレインと前記差動増幅器の前記第1の出力端子との間に結合される第1のMOSFETをさらに備え、前記第1のMOSFETは、ゲートが第3のバイアス電流制御信号を受けるように結合され、さらに
トランジスタの前記第2の差動対の前記第2のトランジスタの前記ドレインと前記差動増幅器の前記第2の出力端子との間に結合された第2のMOSFETをさらに備え、前記第2のMOSFETは、ゲートが第3のバイアス電流制御信号を受けるように結合される、請求項4に記載の差動増幅器。
【請求項6】
前記制御回路は、前記高いコモンモードを示す前記信号に応答して前記第1および第2のMOSFETのゲートから前記第3のバイアス電流制御信号を切離すようにさらに構成される、請求項4または5に記載の差動増幅器。
【請求項7】
トランジスタの前記第1の差動対の前記ソース同士の間に結合される第1のプログラマブル抵抗器と、
トランジスタの前記第2の差動対の前記ソース同士の間に結合される第2のプログラマブル抵抗器とをさらに備え、前記第1および第2のプログラマブル抵抗器は、利得制御信号に応答して前記差動増幅器の利得および周波数応答を調整するように構成される、請求項4からのいずれかに記載の差動増幅器。
【請求項8】
トランジスタの前記第1および第2の差動対に結合されるゼロ周波数調整回路をさらに備え、前記ゼロ周波数調整回路は、周波数制御信号に応答して前記差動増幅器のゼロ周波数を調整するように構成される、請求項4からのいずれかに記載の差動増幅器。
【請求項9】
前記ゼロ周波数調整回路は、トランジスタの前記第1および第2の差動対のそれぞれのソースと接地電圧との間に結合される第1、第2、第3、および第4のプログラマブルキャパシタを含む、請求項に記載の差動増幅器。
【請求項10】
前記第1の入力端子と前記第2の入力端子との間に結合される終端抵抗器回路をさらに備える、請求項1からのいずれかに記載の差動増幅器。
【請求項11】
前記第1および第2の入力端子に結合される静電放電回路をさらに備える、請求項1から1のいずれかに記載の差動増幅器。
【請求項12】
差動信号を増幅する方法であって、
前記差動信号をPMOS差動対の入力に与えることと、
前記差動信号をNMOS差動対の入力に与えることと、
高いコモンモードを示すコモンモード制御信号に応答して、
第1のバイアス電流制御信号に応答して、第1の対の調整可能な電流源を用いて前記NMOS差動対をバイアスすることによって前記NMOS差動対をイネーブルし、かつ
第2の対の調整可能な電流源から前記第1のバイアス電流制御信号を除去し、かつ第3の対の調整可能な電流源第2のバイアス電流制御信号を除去することによって、前記PMOS差動対をディスエーブルすることと、
低いコモンモードを示す前記コモンモード制御信号に応答して、
前記第1のバイアス電流制御信号に応答して前記第2の対の調整可能な電流源を用いて前記PMOS差動対をバイアスし、かつ前記第2のバイアス電流制御信号に応答して前記第3の対の調整可能な電流源を用いて前記PMOS差動対をバイアスすることによって、前記PMOS差動対をイネーブルし、かつ
前記第1の対の調整可能な電流源から前記第1のバイアス電流制御信号を除去することによって前記NMOS差動対をディスエーブルすることと、を備える、方法。
【請求項13】
前記低いコモンモードを示す前記コモンモード制御信号に応答して、第3のバイアス電流制御信号を1対のトランジスタに印加することによって、PMOS差動増幅器の第1および第2の出力をそれぞれ前記1対のトランジスタを有するNMOS差動増幅器の第1および第2の出力に結合することと、
前記低いコモンモードを示す前記コモンモード制御信号に応答して、前記第3のバイアス電流制御信号を1対のトランジスタから除去することによって、前記1対のトランジスタを有する前記NMOS差動増幅器の前記第1および第2の出力から前記PMOS差動増幅器の前記第1および第2の出力を切離すこととをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明の実施形態は概してトランジスタの増幅に関し、より特定的には差動増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
差動増幅器は、入力を受付け、その間の差を判定する回路である。典型的な差動増幅器は2つの入力を取り、2つの入力間の電圧差を表わす信号を生成する。多くの回路は、アナログ−デジタルコンバータ(ADC)またはトランシーバ回路などの差比較器を用いる。
【0003】
差動増幅器は、異なる回路同士の間で信号を通信する通信システムで一般的に用いられる。耐ノイズ性という理由により、大部分の通信規格は差動シグナリングを利用する。差動シグナリングでは、データは2つのノード間の差動電圧の形態で送信される。
【0004】
理想的な差動増幅器は2つの入力間の電圧差のみを増幅する。両方の入力に共通の電圧は理想的には拒絶される。しかしながら、異なる通信規格のために、さまざまな送信器が利用するコモンモード電圧は、異なる送信器間で大きく異なり得る。たとえば、ある規格は700mV〜1300mVの範囲にわたる高いコモンモード電圧を特定する。一方で、ある規格は、たとえば145mV〜350mVの範囲にわたる低いコモンモード電圧を特定する。これらのさまざまな差動送信回路に対応するため、柔軟な受信器設計は、接地(0mV)と終端電圧(約1200mV)との間の異なるコモンモード電圧を受付け可能である必要がある。
【0005】
ある以前の方策は、入力信号線上のオンチップAC結合キャパシタを実現して入力端子と受信器回路との間の容量性分離を設ける。容量性分離は、受信器の入力コモンモード電圧が入力端子へのコモンモード電圧とは独立して設定されるようにする。しかしながら、AC結合キャパシタを介さず受信器が送信器に直接に接続されるQuickPath Interconnect(QPI)などの通信規格/プロトコルでDC結合が必要な場合は、入力コモンモード電圧は独立して調整されてはならない。受信器のアナログフロントエンドに到達する前に、送信器からの信号は、概して損失が多く高周波成分が減衰されかつ低周波信号には概ね影響がない低域フィルタのように振る舞うバックプレーン/ケーブルを通って進んでいく。送信は符号間干渉も招き、その場合は、ランダム符号の列が送信されているときに、電流符号が隣接する符号に影響してしまう。その結果、受信器によって処理される信号の縦方向のアイ開口率が低下し、システムのビット誤り率が劣化する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つ以上の実施形態は以上の問題の1つ以上に対処し得る。
要約
1つの実施形態では、差動増幅器が提供される。第1の導電型のトランジスタの第1の差動対は、ゲートが差動増幅器の第1および第2の入力端子に結合されている。第2の導電型のトランジスタの第2の差動対は、ゲートが第1および第2の入力端子に結合されている。第1の対の調整可能な電流源はトランジスタの第1の差動対に結合され、第1のバイアス電流制御信号に応答してトランジスタの第1の差動対のそれぞれのテール電流を調整するように構成される。第2の対の調整可能な電流源はトランジスタの第2の差動対に結合され、第1のバイアス電流制御信号に応答してトランジスタの第2の差動対のそれぞれのテール電流を調整するように構成される。第3の対の調整可能な電流源はトランジスタの第2の差動対に結合され、第2のバイアス電流制御信号に応答してトランジスタの第2の差動対を通るそれぞれの電流を調整するように構成される。
【0007】
別の実施形態では、アナログフロントエンド回路が提供される。アナログフロントエンド回路は、送信媒体から差動信号を受信するための入力を有する第1の静電放電回路を含む。終端抵抗器は、第1の静電放電回路の差動出力に結合され、アナログフロントエンドのインピーダンスを送信媒体のインピーダンスに整合するように構成される。差動増幅器回路を含む等化器回路は、終端抵抗器の差動出力から差動信号を受信するように結合される。差動増幅器回路は、入力が終端抵抗器の差動出力に接続されるNMOS差動対を含む。NMOS差動対は、差動信号を受信しかつ高いコモンモード電圧を用いてこれを増幅するように構成される。NMOS差動対は、第1のバイアス電流制御信号に応答して第1の対の調整可能な電流源によって動作の際にバイアスされる。
【0008】
差動増幅器回路は、入力が終端抵抗器の差動出力に接続されるPMOS差動対も含む。PMOS差動対は、差動信号を受信しかつ低いコモンモード電圧を用いてこれを増幅するように構成される。PMOS差動対は、第1のバイアス電流制御信号に応答して第2の対の調整可能な電流源によっておよび第2のバイアス電流制御信号に応じて第3の対の調整可能な電流源によって、動作の際にバイアスされる。差動増幅器回路は、低いコモンモードで動作する際は、PMOS差動対の動作をイネーブルし、NMOS差動対の動作をディスエーブルするように構成される制御回路を含む。制御回路は、高いコモンモードで動作する際は、NMOS差動対の動作をイネーブルし、PMOS差動対の動作をディスエーブルするようにさらに構成される。
【0009】
また別の実施形態では、差動信号を増幅する方法が提供される。差動信号はPMOS差動対の入力およびNMOS差動対の入力に与えられる。高いコモンモードを示すコモンモード制御信号に応答して、NMOS差動対は、第1のバイアス電流制御信号に応じて第1の対の調整可能な電流源を用いてNMOS差動対をバイアスすることによってイネーブルされ、PMOS差動対はディスエーブルされる。低いコモンモードを示すコモンモード制御信号に応答して、PMOS差動対は、第1のバイアス電流制御信号に応じて第2の対の調整可能な電流源を用いてPMOS差動対をバイアスすることおよび第2のバイアス電流制御信号に応じて第3の対の調整可能な電流源を用いてPMOS差動対をバイアスすることによってイネーブルされ、NMOS差動対はディスエーブルされる。
【0010】
後続の詳細な説明および請求項でさまざまな他の実施形態が述べられることが認められるであろう。
【0011】
発明のさまざまな局面および利点は、以下の詳細な説明を検討してかつ図面を参照して明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】1つ以上の実施形態に従って構成される差動増幅器のブロック図である。
図2】バイアス電流制御信号を生成する、ならびに図1に示されるPMOSおよびNMOS差動対をイネーブルおよびディスエーブルするように用いられ得る、バイアス電流制御回路およびコモンモード制御回路を示す図である。
図3】1つ以上の実施形態に従ってP−BiasおよびC−Biasバイアス電流制御信号を生成するように用いられ得る電流ミラーを示す図である。
図4】1つ以上の実施形態に従って実現される例示的なアナログフロントエンド回路のブロック図である。
図5】1つ以上の実施形態と整合するトランシーバ回路を含むように実現され得る例示的なプログラマブル集積回路のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面の詳細な説明
異なる通信規格により、コモンモード電圧は、異なる送信器同士の間で大きく異なり得る。たとえば、ある規格は高いコモンモード電圧を用いる一方で、あるものは低いコモンモード電圧を用いる。これらのさまざまな差動送信回路に対応するため、柔軟な受信器設計は、異なるコモンモード電圧を有する信号を処理できる必要がある。
【0014】
1つ以上の実施形態は、広いコモンモード入力範囲にわたって動作するように構成可能な差動増幅器を提供する。差動増幅器は、並列に接続される相補のPMOSおよびNMOSソース縮退(source degenerated)差動対で実現される。差動対の各々は、コモンモード範囲の部分にわたって差動入力信号を比較するように構成される。たとえば、PMOS差動対は、低いコモンモード電圧を有する信号を比較するように構成されてもよく、NMOS差動対は、高いコモンモード電圧を有する信号を比較するように構成されてもよい。2つの差動対の出力電流経路は、広いコモンモード入力範囲にわたる差分の比較を与えるように、共有される抵抗器負荷の両端間で合計される。
【0015】
図1は、1つ以上の実施形態に従って構成される差動増幅器130のブロック図を示す。差動増幅器は、高いコモンモード電圧を有する入力差動信号の比較のためのトランジスタ132および134のNMOS差動対を含み、低いコモンモード電圧を有する入力差動信号の比較のためのトランジスタ146および148のPMOS差動対を含む。
【0016】
NMOS差動対のトランジスタ132および134はそれぞれの差動入力(Vin)によって駆動され、バイアストランジスタ136および138を通るそれぞれのテール電流を生成する。テール電流同士の間の差は、受けた差動入力の電圧差を表わす。電圧差(Vout)は、電流が抵抗器166および168を通過する際にテール電流の差から生成される。抵抗器166および168はトランジスタ132および134のNMOS差動対への電流源としても働く。NMOS差動対のトランジスタ132および134によって生成されるテール電流は、NMOSトランジスタ136および138によって実現される第1の対の調整可能な電流源によってそれぞれバイアスされる。電流は、トランジスタのゲート電圧を調整することによって調整される。
【0017】
PMOS差動対のトランジスタ146および148は、それぞれの差動入力(Vin)によって駆動され、それぞれのテール電流を生成する。PMOS差動対のトランジスタ146および148のテール電流は、NMOSバイアストランジスタ152および154によって実現される第2の対の調整可能な電流源によってそれぞれバイアスされる。PMOS差動対のトランジスタ132および134を通る電流は、PMOSトランジスタ142および144によって実現される第3の対の調整可能な電流源によってもそれぞれバイアスされる。
【0018】
動作の際、PMOSおよびNMOS差動対は、高いコモンモード電圧または低いコモンモード電圧についての差分の比較を与えるように選択可能にイネーブルされる。PMOSおよびNMOS差動対は、3組のバイアス電流制御信号(N−Bias、P−Bias、およびC−Bias)によってイネーブル/ディスエーブルされる。先に示したように、NMOS差動対132および134を用いて高いコモンモード電圧を有する差動信号を比較し、PMOS差動対146および148を用いて低いコモンモード電圧を有する信号を比較する。
【0019】
高いコモンモード信号を受信するように動作されると、バイアストランジスタ136および138は、一定相互コンダクタンスバイアス付与回路によって生成されるバイアス電流制御信号(N−Bias)に対抗してバイアスされる。バイアス付与の結果、入力信号は、NMOSトランジスタ132および134の飽和動作範囲内の中心に集まる。一定相互コンダクタンスバイアス付与は、トランジスタのすべてのプロセス変動温度(PVT)のコーナー(corners)にわたってNMOS差動対のための一定の利得を与える。PMOS差動対(146および148)は、動作中のバイアストランジスタ142、144、152、および154、ならびにカスケードトランジスタ162および164のゲートからP−BiasおよびC−Bias電圧を除去することによってディスエーブルされる。P−BiasおよびC−Biasバイアス電流制御信号はN−Biasバイアス電流制御信号をミラーリングすることによって生成される。動作中のバイアストランジスタのゲートからP−BiasおよびC−Bias信号を除去することにより、トランジスタは開成状態で動作するようになり、これにより、電流がPMOS差動対(146および148)を通過しないようになる。以上示したように、このモードでは、NMOS差動対のトランジスタ132および134によって生成されるテール電流が抵抗器166および168を通過すると電圧差(Vout)が生成される。
【0020】
低いコモンモード電圧を有する信号を増幅するように動作されると、NMOS差動対は、バイアストランジスタ136および138のゲートからN−Biasを除去することによってディスエーブルされる。トランジスタのゲートからN−Bias信号を除去することにより、トランジスタは開成状態で動作するようになり、これにより、電流がNMOS差動対(132および134)を通過しないようになる。PMOS差動対のバイアストランジスタ152および154はN−Bias信号でバイアスされる。P−Biasは、PMOS差動対146および148の飽和動作範囲内の中心に入力信号(Vin)が集まるようにトランジスタ142および144をバイアスするのに用いられる。P−Biasは一定相互コンダクタンスN−Bias信号をミラーリングすることによって生成されるので、PMOS差動対も一定の相互コンダクタンス挙動を呈する。
【0021】
カスケードトランジスタ162および164はPMOS差動対の出力を差動増幅器の出力(Vout)に結合し、C−Bias信号によってバイアスされると、抵抗器166および168を通るようにPMOS差動対のテール電流を向けて差動電圧(Vout)を生成するように設けられる。ベースライン電流は、抵抗器166および168を通って、カスケードトランジスタ162および164を通って、かつバイアストランジスタ152および154を通って接地電圧へと流れる。バイアストランジスタ152および154の固定されたバイアス電流により、抵抗器166および168を通過した電流は、PMOS差動対146および148によって生成されるテール電流に反比例する。このように、PMOS差動対のテール電流は電圧差(Vout)に変換される。
【0022】
PMOSおよびNMOS差動対の各々毎に、トランジスタの差動対へのソース端子間に接続されるそれぞれの縮退(degeneration)抵抗器170および172によって、利得が調整される。縮退抵抗器170および172の抵抗性負荷は、利得制御信号(図示せず)を介して動作の際に動的に調整されて差動対の高周波利得を制御し得る。縮退抵抗器は、差動対の周波数ゼロを調整するのにも用いられてもよい。ある実施形態では、ゼロ周波数調整回路は、縮退抵抗器170および172によって与えられるものに加えて、周波数ゼロのさらなる調整を与えるように含まれてもよい。1つの実現例では、図1に示されるように、ゼロ周波数調整回路は、接地電圧とNMOSおよびPMOS差動対132、134、146、および148のそれぞれのソースとの間に結合される4つのプログラマブルキャパシタ182、184、186、および188を含む。キャパシタの容量は、たとえばそれぞれの容量制御信号を介して調整されて、差動増幅器のゼロ周波数を調整してもよい。
【0023】
差の出力における歪みまたは雑音を回避するため、ある実施形態は、モニタ回路からのフィードバックに基づいて自動的に利得を調整して定常的な全体的な利得を維持するように構成される利得制御回路(図示せず)を含んでもよい。これは、たとえば、デジタルフィードバックループによって達成可能である。デジタル信号は、単位間隔ですべての信号波形のアンサンブルによって生成される信号アイとして公知であるものを生成する。信号アイは、等化器で用いるべき最適な利得を決めるのに用いることができる。利得の変動は信号の振幅の変動を生じさせ、これは後等化(post-equalization)信号アイの縦方向の大きさを変化させてしまう。出力信号アイサイズの後等化は、所望の目標信号アイに対して比較される。比較結果は次にデジタルフィルタリングを経て必要な量の利得調整を決める。次に、動作中の差動対の利得を調整するように制御信号が生成される。この種類のループは典型的に、自動利得制御(AGC)ループまたは可変利得増幅器(VGA)ループと呼ばれる。当業者は、本発明の1つ以上の実施形態で用いるように当該技術分野で公知の他のAGC法を適合してもよいことを認めるであろう。
【0024】
図2は、バイアス電流制御信号を生成する、ならびに図1に示されるPMOSおよびNMOS差動対をイネーブルおよびディスエーブルするように用いられ得る、バイアス電流制御回路およびコモンモード制御回路を示す。バイアス制御回路220は、N−Biasバイアス電流制御信号を生成するように構成される一定相互コンダクタンス(GM)バイアス付与回路222を含む。第1のバイアス生成器224は、N−Bias電圧をミラーリングしてP−Biasバイアス電流制御信号を生成する。第2のバイアス生成器226は、N−Bias電圧をミラーリングしてC−Biasバイアス電流制御信号を生成する。バイアス電流制御信号は、バイアス付与およびカスケードトランジスタに選択的に印加されるかまたはそれから除去されて、記載のようにNMOSおよびPMOS差動対をイネーブルまたはディスエーブルする。バイアス電流制御信号は、PMOS_ENおよびNMOS_ENイネーブル信号によって制御されるスイッチ230、232、234、および236によってバイアス付与およびカスケードトランジスタに選択的に印加されるかまたはそれから除去される。PMOS_ENおよびNMOS_ENイネーブル信号は、高いまたは低いコモンモードのために、図1に示される差動増幅器を構成するようにコモンモード制御回路210によって調整される。
【0025】
高いコモンモードで差動増幅器を動作させるため、制御回路210は、NMOS_ENを設定してスイッチ230を閉成し、PMOS_ENを設定してスイッチ232、234、および236を開成する。その結果、図1のバイアストランジスタ136および138はN−Bias信号によってバイアスされてNMOS差動対132および134の動作をイネーブルし、バイアス電流制御信号はトランジスタ142、144、152、154、162、および164から除去されてPMOS差動対146および148をディスエーブルする。これに対し、低いコモンモードで差動増幅器を動作させるため、制御回路はNMOS_ENを設定してスイッチ230を開成し、PMOS_ENを設定してスイッチ232、234、および236を閉成する。その結果、N−Bias信号がトランジスタ136および138から除去されてNMOS差動対132および134をディスエーブルし、バイアス電流制御信号がトランジスタ142、144、152、154、162、および164に送達されてPMOS差動対146および148をイネーブルする。
【0026】
図3は、1つ以上の実施形態に従ってP−BiasおよびC−Bias信号を生成するように用いられ得る電流ミラーを示す。P−Bias生成器302は、N−Bias信号をミラーリングすることによってP−Bias信号を生成するように構成され、図2に示される第1の生成器224を実現するように用いられてもよい。NMOSトランジスタ306は、N−Bias信号に応じて電流を通す。PMOSトランジスタ304は、抵抗器に接続されて、NMOSトランジスタ306が通す電流を整合させるのに十分なゲート電圧を生成する。PMOSトランジスタ304のゲート電圧はP−Bias信号として用いられる。
【0027】
カスケードバイアス生成器310は、N−Bias信号をミラーリングすることによってC−Bias信号を生成するように構成され、図2に示される第2のバイアス生成器226を実現するように用いられてもよい。NMOSトランジスタ310は、N−Bias信号に応じて電流を通す。NMOSトランジスタ308は抵抗器に接続されて、NMOSトランジスタ310が通す電流を整合させるのに十分なゲート電圧を生成する。NMOSトランジスタ308のゲート電圧はC−Bias信号として用いられる。
【0028】
図4は、本発明のいくつかの実施形態に従って実現される例示的なアナログフロントエンド回路のブロック図を示す。この例では、差動信号は一次静電放電(ESD)回路404によって受信されかつ処理される。ESD回路404は、送信媒体上の突然の望まれない電流の場合のアナログフロントエンドに対する損傷を防止する。この例では、一次ESD回路404は、各々の信号線毎に1対の直列接続されたダイオードを用いて実現される。直列接続されたダイオードの各々の対は、接地電圧と終端電圧との間に直列に接続される。信号線は2つのダイオードの間に接続される。信号線上の電圧が終端電圧を超えると、ダイオードの対のうちの第1のものが信号線から終端電圧供給線へ電流を通して、信号線の電圧を低下させる。これに対し、信号線上の電圧が接地電圧よりも低い場合は、ダイオードの対のうちの第2のものが接地電圧線から信号線へ電流を通して、信号線の電圧を上昇させる。
【0029】
終端抵抗器406は一次ESD回路404の後に含まれる。終端抵抗器406はアナログフロントエンドのインピーダンスを送信媒体のインピーダンスに整合させ、信号反射を最小限にする。この例では、インピーダンスは受動終端抵抗器回路を用いて整合される。異なる適用例は異なる種類の終端抵抗を必要とすることがある。イーサネット(登録商標)などのいくつかの適用例では、信号線と接地電圧との間に抵抗器が設けられる。SCSIなどのいくつかの他の適用例では、終端電圧と信号線との間に抵抗器が設けられる。この例では、終端抵抗器406は、特定の適用例について要件とされるように、抵抗器を終端電圧、接地、プログラマブルコモンモード電圧(Vp)、または接続せず(Hi−Z)のいずれかに接続するようにプログラミングされ得るスイッチを含んだ。
【0030】
二次能動ESD回路408が終端抵抗器の後に接続されて、静電パルスから回路をさらに保護する。差動増幅器回路(差動対414および416)で実現される等化器回路412は二次能動ESD408から信号を受信してこれを処理する。等化器回路412は、入力コモンモード電圧とは独立した受信差動入力の差を発生する。以上で論じたように、等化器回路412は、以上で論じたように実現されるPMOSおよびNMOS差動対414および416の対を含む。PMOS差動対414は、低いコモンモード電圧を有する差動信号の比較を与え、NMOS差動対416は、高いコモンモード電圧を有する差動信号の比較を与える。
【0031】
ある実施形態では、等化器回路412は、複数段連続時間リニアイコライザ(CTLE)として実現されてもよい。たとえば、1つの実施形態では、複数段CTLEは3つの差動増幅器段を用いて実現されてもよく、この場合、第2および第3段は、以上で論じたようにNMOS差動対416のみを含有する。第1段は入力コモンモード調整および高周波信号昇圧を与えるように構成され、第2段はロングテール打消し(long tail cancellation)を与えるように構成され、第3段は信号の利得を調整するように構成される。
【0032】
コモンモードの構成性(configurability)により、1つ以上の実施形態が、異なる通信規格および入力コモンモード電圧を利用する異なる適用例で用いられ得るプログラマブルICに特に適していると考えられる。
【0033】
図5は、例示的なプログラマブル集積回路のブロック図である。プログラマブルICは、入力および出力通信のための複数のトランシーバ回路を含んでもよい。トランシーバ回路のアナログフロントエンドは、入力コモンモードを広いコモンモード範囲で構成できるように、以上で論じたような差動増幅器を用いて実現されてもよい。
【0034】
FPGAは、アレイ状のいくつかの異なる種類のプログラマブル論理ブロックを含むことができる。たとえば、図5は、マルチギガビットトランシーバ(MGT)501、コンフィギュラブル論理ブロック(CLB)502、ランダムアクセスメモリブロック(BRAM)503、入/出力ブロック(IOB)504、コンフィギュレーションおよびクロッキング論理(CONFIG/CLOCKS)505、デジタル信号処理ブロック(DSP)506、たとえばクロックポートなどの特化された入/出力ブロック(I/O)507、ならびにデジタルクロックマネージャ、アナログ−デジタルコンバータ、システム監視論理などの他のプログラマブル論理508を含む多数の異なるプログラマブルタイルを含むFPGAアーキテクチャ(500)を図示する。いくつかのFPGAは、専用プロセッサブロック(PROC)510、ならびに内部および外部再構成ポート(図示せず)も含む。
【0035】
いくつかのFPGAでは、各々のプログラマブルタイルは、各々の隣接するタイルにおいて対応の相互接続素子へのまたはそれからの規格化接続を有するプログラマブル相互接続素子(INT)511を含む。したがって、プログラマブル相互接続素子は、ともに、図示されるFPGAのためのプログラマブル相互接続構造を形成する。プログラマブル相互接続素子INT511は、図5の一番上に含まれる例に示されるように、同じタイル内にコンフィギュラブル論理素子(CLE)へのおよびそれからの接続も含む。
【0036】
たとえば、CLB502は、ユーザ論理プラス単一のプログラマブル相互接続素子INT511を実現するようにプログラミング可能なコンフィギュラブル論理素子CLE512を含むことができる。BRAM503は、1つ以上のプログラマブル相互接続素子に加えて、BRAM論理素子(BRL)513を含むことができる。典型的に、タイルに含まれる相互接続素子の数はタイルの高さに依存する。描かれる実施形態では、BRAMタイルは5つのCLBと同じ高さを有するが、他の数(たとえば4)も用いることができる。DSPタイル506は、適切な数のプログラマブル相互接続素子に加えて、DSP論理素子(DSPL)514を含むことができる。IOB504は、プログラマブル相互接続素子INT511の1つのインスタンスに加えて、たとえば、入/出力論理素子(IOL)515の2つのインスタンスを含むことができる。当業者には明らかであるように、たとえばI/O論理素子515に接続される実際のI/O接着パッドは、さまざまな図示される論理ブロックの上に積層される金属を用いて製造され、典型的には入/出力論理素子515の区域に閉じ込められることはない。
【0037】
描かれる実施形態では、(図5に影付きで示される)ダイの中心近くの円柱状の区域がコンフィギュレーション、クロック、および他の制御論理のために用いられる。この円柱から延在する水平方向の区域509は、FPGAの幅にわたってクロックおよびコンフィギュレーション信号を配布するのに用いられる。
【0038】
図5に図示されるアーキテクチャを利用するいくつかのFPGAは、FPGAの大きな部分を構成する規則的な円柱構造を中断させる付加的な論理ブロックを含む。付加的な論理ブロックは、プログラマブルブロックおよび/または専用論理であり得る。たとえば、図5に示されるプロセッサブロックPROC510は、CLBおよびBRAMのいくつかの列にわたる。
【0039】
図5は例示的なFPGAアーキテクチャのみを図示することが意図されることに留意されたい。列中の論理ブロックの数、列の相対的な幅、列の数および順序、列に含まれる論理ブロックの種類、論理ブロックの相対的な大きさ、ならびに図5の一番上に含まれる相互接続/論理実現例は、純粋に例示的である。たとえば、実際のFPGAでは、ユーザ論理の効率的な実現を容易にするために、CLBが現われる場所にはどこにでも、1つよりも多くのCLBの隣接する列が典型的に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
FPGAの観点で1つ以上の実施形態を記載する。しかしながら、当業者は、発明が、揮発性および不揮発性技術の両方に基づいて、異なるFPGAアーキテクチャ、FPGA以外の他の種類のプログラマブル論理デバイス(PLD)、プログラマブル論理回路構成を含む集積回路において実現され得る、ならびに/またはさまざまな適用例の要件に適合され得ることを認めるであろう。
【0041】
差動増幅器回路を利用するさまざまな適用例に1つ以上の実施形態が適用可能であると考えられる。本明細書中に開示される発明の実践および明細書の検討から、他の局面および実施形態が当業者に明らかになるであろう。明細書および図示される実施形態は例としてのみ考えられ、発明の真の範囲は以下の請求項によって示されることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5