【実施例】
【0043】
以下、本発明の実施例及び比較例を挙げて、本発明の効果について具体的に説明する。本実施例においては、下記の方法及び条件で延伸複合繊維を製造し、その性能を評価した。
【0044】
[原料]
(1)芯材
A:株式会社プライムポリマー製 アイソタクチックポリプロピレン 「S119」 (MFR=60g/10分、Q値=2.8)
B:株式会社プライムポリマー製 アイソタクチックポリプロピレン 「Y2000GV」 (MFR=18g/10分、Q値=3.0)
C:株式会社プライムポリマー製 アイソタクチックポリプロピレン 「S135」 (MFR=9g/10分、Q値=3.5)
D:株式会社プライムポリマー製 アイソタクチックポリプロピレン 「Y2005GP」 (MFR=20g/10分、Q値=4.7)
【0045】
(2)鞘材
a:旭化成ケミカルズ株式会社製 高密度ポリエチレン 「J302」 (MFR=38g/10分、Q値=4.3)
b:株式会社プライムポリマー製 高密度ポリエチレン 「Evoleu SP−H」 (MFR=47g/10分、Q値=2.2)
c:京葉ポリエチレン株式会社製 高密度ポリエチレン 「S6932」 (MFR=20g/10分、Q値=5.1)
【0046】
(3)添加剤
I:大日精化株式会社製 「PP−RM11K4753N」
Exxon Mobil社製 メタロセン高MFR顆粒状ポリプロプレン 「ACHIEVE 6936G1」(MFR=1550g/10分)と、パウダー状ポリプロピレン(MFR=40g/10分)とを、質量比で、80:20の割合でブレンドし、混練して作製したマスターバッチ(計算MFR=746g/10分)。
II:BASFジャパン株式会社製 ヒドロキシアミンエステル系ラジカル発生剤 「IRGATEC CR76」
III:株式会社プライムポリマー製 アイソタクチックポリプロピレン 「S13B」 (MFR=700g/10分、Q値=2.4)
IV:株式会社ADEKA製 リン酸−2,2’−メチレンビス(4,6−ジーtert−ブ
チルフェニル)アルミニウム塩 「アデカスタブ NA−21」
V:新日本理化株式会社製 ジメチルベンジリデンソルビトール 「ゲルオールMD」
【0047】
[評価・測定方法]
(1)
繊維繊度
未延伸
繊維及び延伸
繊維の
繊維繊度は、JIS L 1015に準じて測定した。
【0048】
(2)MFR
原料ペレット及び紡糸口金から吐出された鞘芯それぞれの繊維状物について、JIS K 7210のA法により、MFRを測定した。その際の測定条件を以下に示す。
・ポリプロピレン樹脂原料:試験温度230℃、試験荷重21.18N(条件M)。
・ポリエチレン樹脂原料:試験温度190℃、試験荷重21.18N(条件D)。
・紡糸口金吐出後の繊維状物:試験温度230℃、試験荷重21.18N(条件M)。
・ポリプロピレン樹脂原料のブレンド物:下記数式1及び数式2から求めた。なお、下記数式1,2におけるw
iは構成成分iの質量分画、MFR
iは構成要素iのメルトフローレート、nはブレンド中の構成成分の総数である。
【0049】
【数1】
【0050】
【数2】
【0051】
(3)延伸倍率
繊維切れ、延伸切れ及びローラー巻き付きがなく、安定して延伸可能な最大延伸倍率を調べた。
(4)
繊維の強度、伸度、ヤング率
JIS L 1015に準じて測定した。
(5)乾熱収縮率
JIS L 1015に準じて測定した。その際、熱処理温度は120℃とし、熱処理時間は10分間とした。
【0052】
(6)芯材の結晶化度
延伸複合繊維の芯材の結晶化度は、以下に示す手順で測定した。
i:測定用複合繊維の準備
延伸複合繊維をエタノール:メタノール=2:1の混合液で洗浄した後、室温で3時間以上風乾燥して、付着油剤及び水分を除去した。
【0053】
ii:吸熱量の測定
株式会社島津製作所製の示差走査熱量計(DSC−60)を用いて、iで準備した延伸複合繊維を8.0±0.3mgの質量範囲になるように秤量し、融解熱量測定用のアルミニウム製セル中に封入した。そして、窒素雰囲気下にて、昇温速度を30℃/分にして室温から200℃まで昇温し、延伸複合繊維の鞘材(ポリエチレン)及び芯材(ポリプロピレン)の吸熱量(mJ)をそれぞれ測定した。
【0054】
iii:芯材の融解熱量の算出
芯材(ポリプロピレン)の融解熱量ΔH
PP(J/g)を算出する際は、先ず、測定に使用した延伸複合繊維の質量(mg)と、その鞘と芯の割合(断面積比)とから、鞘材(ポリエチレン)及び芯材(ポリプロピレン)の質量(mg)を算出した。そして、芯材の吸熱量H
PP(mJ)を、芯材の質量で除すことによって、芯材の融解熱量ΔH
PPを算出した。
【0055】
iv:結晶化度の算出
芯材(ポリプロピレン)の結晶化度X
PPC(%)は、iiiで算出した芯材の融解熱量ΔH
PPを用いて、下記数式3により算出した。なお、下記数式3におけるΔH
PPCは、ポリプロピレンの完全結晶の融解熱量であり、本実施例においては、文献(J.Brandrup & E.H.Immergut:Polymer Handbook (2nd.Ed.),John Wiley & Sons,New York (1975) V-24.)に基づいて、209J/gとした。
【0056】
【数3】
【0057】
<実施例1>
(1)鞘芯型複合未延伸
繊維の作製
芯材Aに添加剤Iを7.5質量%配合した原料と、鞘材aとを用いて、鞘芯構造の未延伸
繊維を作製した。その際、鞘芯型複合紡糸口金を使用し、鞘芯の断面積比(鞘/芯)は40/60になるようにした。また、紡糸条件は、芯材の押出機シリンダー温度を275℃、鞘材の押出機シリンダー温度を255℃、紡糸口金温度を270℃、紡糸速度を600m/分として、繊度が0.67dTexの未延伸
繊維を紡糸した。紡糸口金から吐出された芯材のMFRは84.4g/10分、鞘材のMFRは72.6g/10分であり、MFR比(=芯材MFR/鞘材MFR)は1.16であった。
【0058】
(2)延伸複合繊維の作製
3台のローラー間に予備延伸槽(一段目、温水)及び本延伸槽(二段目、加圧飽和水蒸気)が連続して配置された二段延伸装置を用意した。そして、先ず、紡糸工程で得た未延伸
繊維400本(約54万dTex)が準備できた後、直ちに、まとめたトウを、予備延伸槽にて、導入ローラー(G1ローラー)速度10m/分、予備延伸送出しローラー(G2ローラー)速度29m/分の条件で、93℃の温水で予備延伸処理した。その後、連続して延伸繊維引き出しローラー(G3ローラー)の速度を増加させて、124℃の加圧飽和水蒸気中で二段目の本延伸を行った。
【0059】
その結果、
繊維切れ、延伸切れを起こさず、工業的に安定して延伸できる延伸繊維引き出しローラー(G3ローラー)速度は50m/分、全延伸倍率は5.0倍であった。また、得られた実施例1の延伸複合繊維の繊度は、0.15dTexであり、十分な繊維物性を有していた。
【0060】
<実施例2>
(1)鞘芯型複合未延伸
繊維の作製
芯材Aに添加剤Iを15質量%配合した原料と、鞘材aとを用いて、鞘芯構造の未延伸
繊維を作製した。その際、鞘芯型複合紡糸口金を使用し、鞘芯の断面積比(鞘/芯)は40/60となるようにした。また、紡糸条件は、芯材の押出機シリンダー温度を270℃、鞘材の押出機シリンダー温度を255℃、紡糸口金温度を260℃、紡糸速度を600m/分として、繊度が0.67dTexの未延伸
繊維を紡糸した。紡糸口金から吐出された芯材のMFRは91.1g/10分、鞘材のMFRは71.8g/10分であり、MFR比(=芯材MFR/鞘材MFR)は1.27であった。
図2は実施例2の未延伸
繊維の断面を示す顕微鏡写真である。
【0061】
(2)延伸複合繊維の作製
紡糸工程で得た未延伸
繊維400本(約54万dTex)が準備できた後、直ちに、まとめたトウを、実施例1と同様の方法及び条件で予備延伸処理した後、連続して本延伸を行った。
【0062】
その結果、
繊維切れ、延伸切れを起こさず、工業的に安定して延伸できる延伸繊維引き出しローラー(G3ローラー)速度は53m/分、全延伸倍率は5.3倍となった。実施例1に比べて、実施例2のローラー速度及び全延伸倍率が向上したのは、芯材のMFRが大きくなったためと考えられる。また、得られた延伸複合繊維の繊度は0.13dTexであり、十分な繊維物性を有していた。
【0063】
<実施例3>
(1)鞘芯型複合未延伸
繊維の作製
前述した実施例2と同様の方法及び条件で、未延伸
繊維を作製した。
【0064】
(2)延伸複合繊維の作製
3台のローラー間に予備延伸槽(一段目、温水)及び本延伸槽(二段目、常圧蒸気)が連続して配置された二段延伸装置を用意した。そして、先ず、紡糸工程で得た未延伸
繊維400本(約54万dTex)が準備できた後、直ちに、まとめたトウを、予備延伸槽にて、導入ローラー(G1ローラー)速度10m/分、予備延伸送出しローラー(G2ローラー)速度35m/分の条件で、93℃の温水で予備延伸処理した。その後、連続して延伸繊維引き出しローラー(G3ローラー)の速度を増加させて、100℃の常圧蒸気中で二段目の本延伸を行った。
【0065】
その結果、
繊維切れ、延伸切れを起こさず、工業的に安定して延伸できる延伸繊維引き出しローラー(G3ローラー)速度は37m/分、全延伸倍率は3.7倍となった。実施例2に比べて、二段目の本延伸温度が低いため、延伸倍率は低下したが、得られた延伸複合繊維の繊度は0.19dTexであり、十分な繊維物性を有していた。また示差走査熱量計で、昇温速度30℃/分で測定した芯材の融解熱量ΔH
PPは74.0J/gで、結晶化度は35.4%であった。
【0066】
<実施例4>
(1)鞘芯型複合未延伸
繊維の作製
芯材Aに添加剤Iを15質量%、添加剤IV(リン酸エステル金属塩系核剤)を0.3質量%配合した原料と、鞘材aとを用いて、鞘芯構造の未延伸
繊維を作製した。その際、鞘芯型複合紡糸口金を使用し、鞘芯の断面積比(鞘/芯)は40/60となるようにした。また、紡糸条件は、芯材の押出機シリンダー温度を270℃、鞘材の押出機シリンダー温度を255℃、紡糸口金温度を260℃、紡糸速度を600m/分として、繊度が0.67dTexの未延伸
繊維を紡糸した。紡糸口金から吐出された芯材のMFRは91.9g/10分、鞘材のMFRは72.5g/10分であり、MFR比(=芯材MFR/鞘材MFR)は1.27であった。
【0067】
図3は実施例4の未延伸
繊維の断面を示す顕微鏡写真である。
図3に示すように、核剤を添加した実施例4の未延伸
繊維は、
図2に示す核剤を添加していない実施例2の未延伸
繊維に比べて、繊維間での繊度(太さ)斑がより小さく、単繊維内での鞘芯比率の斑や鞘材の被覆斑がより低減していることが確認された。
【0068】
(2)延伸複合繊維の作製
紡糸工程で得た未延伸
繊維400本(約54万dTex)が準備できた後、直ちに、まとめたトウを、実施例1と同様の方法及び条件で予備延伸処理した後、連続して本延伸を行った。
【0069】
その結果、
繊維切れ、延伸切れを起こさず、工業的に安定して延伸できる延伸繊維引き出しローラー(G3ローラー)速度は55m/分、全延伸倍率は5.5倍となった。実施例2に比べて、実施例4のローラー速度及び全延伸倍率が向上した理由としては、芯材に結晶核剤を添加したことで、口金から吐出した樹脂の冷却が安定し、更に繊度斑が低減して鞘芯比率の斑や鞘材の被覆斑が低減したこと、微結晶が生成され延伸しやすい結晶構造が形成されたことが考えられる。また、得られた延伸複合繊維の繊度は0.12dTexであり、十分な繊維物性を有していた。更に示差走査熱量計で、昇温速度30℃/分で測定した芯材の融解熱量ΔH
PPは99.5J/g、結晶化度は47.6%であり、核剤添加により、ヤング弾性率が大きく、熱収縮率が小さくなり、繊維物性の点においても優れた延伸複合繊維であった。
【0070】
<実施例5>
(1)鞘芯型複合未延伸
繊維の作製
芯材Aに、添加剤Iを7.5質量%、添加剤IIを0.1質量%配合した原料と、鞘材aとを用いて、鞘芯構造の未延伸
繊維を作製した。その際、鞘芯型複合紡糸口金を使用し、鞘芯の断面積比(鞘/芯)は40/60となるようにした。また、紡糸条件は、芯材の押出機シリンダー温度を255℃、鞘材の押出機シリンダー温度を255℃、紡糸口金温度を270℃、紡糸速度を600m/分として、繊度が0.67dTexの未延伸
繊維を紡糸した。紡糸口金から吐出された芯材のMFRは112.7g/10分、鞘材のMFRは73.4g/10分であり、MFR比(=芯材MFR/鞘材MFR)は1.54であった。
【0071】
図4は実施例5の未延伸
繊維の断面を示す顕微鏡写真である。
図4に示すように、実施例5の未延伸
繊維は核剤を添加していないため、一部の単繊維に鞘芯比率の斑や鞘材の被覆斑が認められた。
【0072】
(2)延伸複合繊維の作製
紡糸工程で得た未延伸
繊維400本(約54万dTex)が準備できた後、直ちに、まとめたトウを、実施例1と同様の方法及び条件で予備延伸処理した後、連続して本延伸を行った。
【0073】
その結果、延伸切れを起こさず、工業的に安定して延伸できる延伸繊維引き出しローラー(G3ローラー)速度は58m/分、全延伸倍率は5.8倍となった。実施例5においてローラー速度及び全延伸倍率が向上したのは、芯材に添加した高MFRの添加Iが、添加剤IIにより更に分解されて、可塑剤的に働いたためと考えられる。また、得られた延伸複合繊維の繊度は0.12dTexであり、十分な繊維物性を有していた。
【0074】
<実施例6>
(1)鞘芯型複合未延伸
繊維の作製
芯材Aに、添加剤Iを7.5質量%、添加剤IIを0.1質量%配合した樹脂原料と、鞘材aとを用いて、鞘芯構造の未延伸
繊維を作製した。その際、鞘芯型複合紡糸口金を使用し、鞘芯の断面積比(鞘/芯)は50/50となるようにした。また、紡糸条件は、芯材の押出機シリンダー温度を255℃、鞘材の押出機シリンダー温度を255℃、紡糸口金温度を270℃、紡糸速度を700m/分として、繊度が0.46dTexの未延伸
繊維を紡糸した。紡糸口金から吐出された芯材のMFRは120.5g/10分、鞘材のMFRは72.1g/10分であり、MFR比(=芯材MFR/鞘材MFR)は1.67であった。
【0075】
(2)延伸複合繊維の作製
紡糸工程で得た未延伸
繊維400本(約37万dTex)が準備できた後、直ちに、まとめたトウを、実施例1と同様の方法及び条件で予備延伸処理した後、連続して本延伸を行った。
【0076】
その結果、延伸切れを起こさず、工業的に安定して延伸できる延伸繊維引き出しローラー(G3ローラー)速度は52m/分、全延伸倍率は5.2倍となった。また、得られた延伸複合繊維の繊度は0.09dTexであり、十分な繊維物性を有していた。
【0077】
<実施例7>
(1)鞘芯型複合未延伸
繊維の作製
芯材Aに、添加剤Iを7.5質量%、添加剤IIを0.1質量%配合した樹脂原料と、鞘材aを用いて、鞘芯構造の未延伸
繊維を作製した。その際、鞘芯型複合紡糸口金を使用し、鞘芯の断面積比(鞘/芯)は30/70となるようにした。また、紡糸条件は、芯材の押出機シリンダー温度を255℃、鞘材の押出機シリンダー温度を255℃、紡糸口金温度を270℃、紡糸速度を600m/分として、繊度が0.63dTexの未延伸
繊維を紡糸した。紡糸口金から吐出された芯材のMFRは116.5g/10分、鞘材のMFRは70.2g/10分であり、MFR比(=芯材MFR/鞘材MFR)は1.66であった。
【0078】
(2)延伸複合繊維の作製
紡糸工程で得た未延伸
繊維400本(約50万dTex)が準備できた後、直ちに、まとめたトウを、実施例1と同様の方法及び条件で予備延伸処理した後、連続して本延伸を行った。
【0079】
その結果、延伸切れを起こさず、工業的に安定して延伸できる延伸繊維引き出しローラー(G3ローラー)速度は62m/分、全延伸倍率は6.2倍となった。実施例7において、ローラー速度及び全延伸倍率が向上したのは、芯材の比率を上げたためと考えられる。また、得られた延伸複合繊維の繊度は0.11dTexであり、十分な繊維物性を有していた。
【0080】
<実施例8>
(1)鞘芯型複合未延伸
繊維の作製
芯材Bに、添加剤IIを0.5質量%配合した樹脂原料と、鞘材aとを用いて、鞘芯構造の未延伸
繊維を作製した。その際、鞘芯型複合紡糸口金を使用し、鞘芯の断面積比(鞘/芯)は40/60となるようにした。また、紡糸条件は、芯材の押出機シリンダー温度を255℃、鞘材の押出機シリンダー温度を255℃、紡糸口金温度を270℃、紡糸速度を600m/分として、繊度が0.67dTexの未延伸
繊維を紡糸した。紡糸口金から吐出された芯材のMFRは140.5g/10分、鞘材のMFRは69.9g/10分であり、MFR比(=芯材MFR/鞘材MFR)は2.01であった。
【0081】
(2)延伸複合繊維の作製
紡糸工程で得た未延伸
繊維400本(約54万dTex)が準備できた後、直ちに、まとめたトウを、実施例1と同様の方法及び条件で予備延伸処理した後、連続して本延伸を行った。
【0082】
本実施例では、実施例5〜7で使用している芯材Aに比べてMFRが小さい芯材Bを用いているが、実施例5〜7よりも添加剤IIの配合量を多くしているため、紡糸口金から吐出される芯材のMFRを大きくし、本発明の範囲内にすることができた。その結果、延伸切れを起こさず、工業的に安定して延伸できる延伸繊維引き出しローラー(G3ローラー)速度は55m/分、全延伸倍率は5.5倍となった。また、得られた延伸複合繊維の繊度は0.13dTexであり、十分な繊維物性を有していた。
【0083】
<実施例9>
(1)鞘芯型複合未延伸
繊維の作製
芯材Cに、添加剤IIを0.7質量%配合した樹脂原料と、鞘材aとを用いて、鞘芯構造の未延伸
繊維を作製した。その際、鞘芯型複合紡糸口金を使用し、鞘芯の断面積比(鞘/芯)は40/60となるようにした。また、紡糸条件は、芯材の押出機シリンダー温度を255℃、鞘材の押出機シリンダー温度を255℃、紡糸口金温度を270℃、紡糸速度を600m/分として、繊度が0.67dTexの未延伸
繊維を紡糸した。紡糸口金から吐出された芯材のMFRは156.9g/10分、鞘材のMFRは72.4g/10分であり、MFR比(=芯材MFR/鞘材MFR)は2.17であった。
【0084】
(2)延伸複合繊維の作製
紡糸工程で得た未延伸
繊維400本(約54万dTex)が準備できた後、直ちに、まとめたトウを、実施例1と同様の方法及び条件で予備延伸処理した後、連続して本延伸を行った。
【0085】
本実施例では、特にMFRが小さい芯材Cを用いているが、実施例5〜8よりも添加剤IIの配合量を多くしているため、紡糸口金から吐出される芯材のMFRを大きくして、本発明の範囲内にすることができた。その結果、延伸切れを起こさず、工業的に安定して延伸できる延伸繊維引き出しローラー(G3ローラー)速度は53m/分、全延伸倍率は5.3倍となった。また、得られた延伸複合繊維の繊度は0.14dTexであり、十分な繊維物性を有していた。
【0086】
<実施例10>
(1)鞘芯型複合未延伸
繊維の作製
芯材Aと芯材Bを、質量比で、1:1の割合で混合し、擬似的に分子量分布を広くしたものに、添加剤IIを0.4質量%配合した樹脂原料と、鞘材aとを用いて、鞘芯構造の未延伸
繊維を作製した。その際、鞘芯型複合紡糸口金を使用し、鞘芯の断面積比(鞘/芯)は40/60となるようにした。また、紡糸条件は、芯材の押出機シリンダー温度を255℃、鞘材の押出機シリンダー温度を255℃、紡糸口金温度を270℃、紡糸速度を600m/分とし、繊度が0.67dTexの未延伸
繊維を紡糸した。紡糸口金から吐出された芯材のMFRは137.8g/10分、鞘材のMFRは70.5g/10分であり、MFR比(=芯材MFR/鞘材MFR)は1.95であった。
【0087】
(2)延伸複合繊維の作製
紡糸工程で得た未延伸
繊維400本(約54万dTex)が準備できた後、直ちに、まとめたトウを、実施例1と同様の方法及び条件で予備延伸処理した後、連続して本延伸を行った。
【0088】
本実施例は、芯材の分子量分布が広いため、延伸切れを起こさず、工業的に安定して延伸できる延伸繊維引き出しローラー(G3ローラー)速度は52m/分、全延伸倍率は5.2倍となった。また、得られた延伸複合繊維の繊度は0.14dTexであり、十分な繊維物性を有していた。
【0089】
<実施例11>
(1)鞘芯型複合未延伸
繊維の作製
芯材Bに、添加剤Iを10質量%、添加剤IIを0.3質量%配合した樹脂原料と、鞘材aとを用いて、鞘芯構造の未延伸
繊維を作製した。その際、鞘芯型複合紡糸口金を使用し、鞘芯の断面積比(鞘/芯)は40/60となるようにした。また、紡糸条件は、芯材の押出機シリンダー温度を255℃、鞘材の押出機シリンダー温度を255℃、紡糸口金温度を270℃、紡糸速度を600m/分として、繊度が0.67dTexの未延伸
繊維を紡糸した。紡糸口金から吐出された芯材のMFRは148.7g/10分、鞘材のMFRは71.5g/10分であり、MFR比(=芯材MFR/鞘材MFR)は2.08であった。
【0090】
(2)延伸複合繊維の作製
紡糸工程で得た未延伸
繊維400本(約54万dTex)が準備できた後、直ちに、まとめたトウを、実施例1と同様の方法及び条件で予備延伸処理した後、連続して本延伸を行った。
【0091】
その結果、延伸切れを起こさず、工業的に安定して延伸できる延伸繊維引き出しローラー(G3ローラー)速度は57m/分、全延伸倍率は5.7倍となった。実施例11において良好な延伸性が得られたのは、芯材に添加した高MFRの添加
剤Iが、添加剤IIにより更に分解されて、可塑剤的に働いたためと考えられる。また、得られた延伸複合繊維の繊度は0.12dTexであり、十分な繊維物性を有していた。
【0092】
<実施例12>
(1)鞘芯型複合未延伸
繊維の作製
芯材Aに、添加剤Iを7.5質量%、添加剤IIを0.1質量%配合した樹脂原料と、鞘材bとを用いて、鞘芯構造の未延伸
繊維を作製した。その際、鞘芯型複合紡糸口金を使用し、鞘芯の断面積比(鞘/芯)が40/60となるようにした。また、紡糸条件は、芯材の押出機シリンダー温度を255℃、鞘材の押出機シリンダー温度を255℃、紡糸口金温度を270℃、紡糸速度を600m/分とし、繊度が0.67dTexの未延伸
繊維を紡糸した。紡糸口金から吐出された芯材のMFRは109.6g/10分、鞘材のMFRは76.3g/10分であり、MFR比(=芯材MFR/鞘材MFR)は1.44であった。
【0093】
(2)延伸複合繊維の作製
紡糸工程で得た未延伸
繊維400本(約54万dTex)が準備できた後、直ちに、まとめたトウを、実施例1と同様の方法及び条件で予備延伸処理した後、連続して本延伸を行った。
【0094】
その結果、延伸切れを起こさず、工業的に安定して延伸できる延伸繊維引き出しローラー(G3ローラー)速度は58m/分、全延伸倍率は5.8倍となった。実施例12において良好な延伸性が得られたのは、芯材に添加した高MFRの添加
剤Iが、添加剤IIにより更に分解されて、可塑剤的に働いたためと考えられる。また、得られた延伸複合繊維の繊度は0.12dTexであり、十分な繊維物性を有していた。
【0095】
<実施例13>
(1)鞘芯型複合未延伸
繊維の作製
芯材Aに、添加剤Iを7.5質量%、添加剤IIを0.1質量%配合した樹脂原料と、鞘材aとを用いて、鞘芯構造の未延伸
繊維を作製した。その際、鞘芯型複合紡糸口金を使用し、鞘芯の断面積比(鞘/芯)は50/50となるようにした。また、紡糸条件は、芯材の押出機シリンダー温度を255℃、鞘材の押出機シリンダー温度を255℃、紡糸口金温度を270℃、紡糸速度を150m/分とし、繊度が0.45dTexの未延伸
繊維を紡糸した。紡糸口金から吐出された芯材のMFRは128.9g/10分、鞘材のMFRは71.8g/10分であり、MFR比(=芯材MFR/鞘材MFR)は1.80であった。
【0096】
(2)延伸複合繊維の作製
前述した紡糸工程から連続して延伸工程が実施することができるように、3台のローラー間に予備延伸槽(一段目、常圧蒸気)及び本延伸槽(二段目、加圧飽和水蒸気)が連続して配置された二段延伸装置を用いた。そして、先ず、紡糸工程で得た未延伸
繊維(約1.5万dTex)を、紡糸工程に連続して、予備延伸槽にて、導入ローラー(G1ローラー)速度150m/分、予備延伸送出しローラー(G2ローラー)速度750m/分の条件で、100℃の常圧蒸気で予備延伸処理した。引き続き、延伸繊維引き出しローラー(G3ローラー)の速度を増加させて、124℃の加圧飽和水蒸気中で二段目の本延伸を行った。
【0097】
その結果、
繊維切れや延伸切れを起こさず、工業的に安定して延伸できる延伸繊維引き出しローラー(G3ローラー)速度は1200m/分、全延伸倍率は8.0倍であった。また、得られた延伸複合繊維の繊度は0.06dTexであり、十分な繊維物性を有していた。
【0098】
<実施例14>
(1)鞘芯型複合未延伸
繊維の作製
芯材Aと、鞘材aとを用いて、鞘芯構造の未延伸
繊維を作製した。その際、鞘芯型複合紡糸口金を使用し、鞘芯の断面積比(鞘/芯)は40/60になるようにした。また、紡糸条件は、芯材の押出機シリンダー温度を295℃、鞘材の押出機シリンダー温度を255℃、紡糸口金温度を270℃、紡糸速度を500m/分として、樹脂の吐出量を調整して、繊度が1.10dTexの未延伸
繊維を紡糸した。紡糸口金から吐出された芯材のMFRは75.8g/10分、鞘材のMFRは71.8g/10分であり、MFR比(=芯材MFR/鞘材MFR)は1.06であった。
【0099】
(2)延伸複合繊維の作製
3台のローラー間に予備延伸槽(一段目、温水)及び本延伸槽(二段目、加圧飽和水蒸気)が連続して配置された二段延伸装置を用意した。そして、先ず、紡糸工程で得た未延伸
繊維250本(約55万dTex)が準備できた後、直ちに、まとめたトウを、予備延伸槽にて、導入ローラー(G1ローラー)速度10m/分、予備延伸送出しローラー(G2ローラー)速度29m/分の条件で、93℃の温水で予備延伸処理した。その後、連続して延伸繊維引き出しローラー(G3ローラー)の速度を増加させて、124℃の加圧飽和水蒸気中で二段目の本延伸を行った。
【0100】
その結果、
繊維切れ、延伸切れを起こさず、工業的に安定して延伸できる延伸繊維引き出しローラー(G3ローラー)速度は55m/分、全延伸倍率は5.5倍であった。また、得られた追加実施例の延伸複合繊維の繊度は、0.20dTexであり、十分な繊維物性を有していた。
【0101】
<実施例15>
(1)鞘芯型複合未延伸
繊維の作製
芯材Aに、添加剤Iを10質量%配合した樹脂原料と、鞘材aとを用いて、鞘芯構造の未延伸
繊維を作製した。その際、鞘芯型複合紡糸口金を使用し、鞘芯の断面積比(鞘/芯)は45/55となるようにした。また、紡糸条件は、芯材の押出機シリンダー温度を260℃、鞘材の押出機シリンダー温度を260℃、紡糸口金温度を270℃、紡糸速度を250m/分とし、繊度が0.6dTexの未延伸
繊維を紡糸した。紡糸口金から吐出された芯材のMFRは88.9g/10分、鞘材のMFRは72.5g/10分であり、MFR比(=芯材MFR/鞘材MFR)は1.23であった。
【0102】
(2)延伸複合繊維の作製
前述した紡糸工程から連続して延伸工程が実施できるように、3台のローラー間に第一延伸槽(一段目、常圧蒸気)及び第二延伸槽(二段目、常圧蒸気)が連続して配置された二段延伸装置を用いた。そして、先ず、紡糸工程で得た未延伸
繊維(約2万dTex)を、紡糸工程に連続して、第一延伸槽にて、導入ローラー(G1ローラー)速度250m/分、第一延伸送出しローラー(G2ローラー)と延伸繊維引き出しローラー(G3ローラー)の二段目延伸比率(G3/G2)1.05倍の条件で、第一延伸送出しローラー(G2ローラー)の速度を増加させながら、100℃の常圧蒸気による二段延伸を行った。
【0103】
その結果、
繊維切れや延伸切れを起こさず、工業的に安定して延伸できる延伸繊維引き出しローラー(G3ローラー)速度は1075m/分、全延伸倍率は4.3倍であった。また、得られた延伸複合繊維の繊度は0.15dTexであり、十分な繊維物性を有していた。
【0104】
<実施例16>
(1)鞘芯型複合未延伸
繊維の作製
芯材Aに、添加剤IIIを20質量%配合した樹脂原料と、鞘材aとを用いて、鞘芯構造の未延伸
繊維を作製した。その際、鞘芯型複合紡糸口金を使用し、鞘芯の断面積比(鞘/芯)は45/55となるようにした。また、紡糸条件は、芯材の押出機シリンダー温度を260℃、鞘材の押出機シリンダー温度を260℃、紡糸口金温度を270℃、紡糸速度を250m/分とし、繊度が0.6dTexの未延伸
繊維を紡糸した。紡糸口金から吐出された芯材のMFRは96.8g/10分、鞘材のMFRは72.8g/10分であり、MFR比(=芯材MFR/鞘材MFR)は1.33であった。
【0105】
前述した紡糸工程から連続して延伸工程が実施できるように、3台のローラー間に第一延伸槽(一段目、常圧蒸気)及び第二延伸槽(二段目、常圧蒸気)が連続して配置された二段延伸装置を用いた。そして、先ず、紡糸工程で得た未延伸
繊維(約2万dTex)を、紡糸工程に連続して、第一延伸槽にて、導入ローラー(G1ローラー)速度250m/分、第一延伸送出しローラー(G2ローラー)と延伸繊維引き出しローラー(G3ローラー)の二段目延伸比率(G3/G2)1.05倍の条件で、第一延伸送出しローラー(G2ローラー)の速度を増加させながら、100℃の常圧蒸気による二段延伸を行った。
【0106】
その結果、
繊維切れや延伸切れを起こさず、工業的に安定して延伸できる延伸繊維引き出しローラー(G3ローラー)速度は1000m/分、全延伸倍率は4.0倍であった。添加剤IIIを添加した実施例16は、実施例15と比べて延伸性が若干低下したが、得られた延伸複合繊維の繊度は0.17dTexであり、十分な繊維物性を有していた。
【0107】
<実施例17>
(1)鞘芯型複合未延伸
繊維の作製
芯材Aに、添加剤IIIを20質量%、添加剤IV(リン酸エステル金属塩系核剤)を0.2%配合した樹脂原料と、鞘材aとを用いて、鞘芯構造の未延伸
繊維を作製した。その際、鞘芯型複合紡糸口金を使用し、鞘芯の断面積比(鞘/芯)は50/50となるようにした。また、紡糸条件は、芯材の押出機シリンダー温度を260℃、鞘材の押出機シリンダー温度を260℃、紡糸口金温度を270℃、紡糸速度を250m/分とし、繊度が0.6dTexの未延伸
繊維を紡糸した。紡糸口金から吐出された芯材のMFRは97.5g/10分、鞘材のMFRは73.5g/10分であり、MFR比(=芯材MFR/鞘材MFR)は1.33であった。
【0108】
(2)延伸複合繊維の作製
前述した紡糸工程から連続して延伸工程が実施できるように、3台のローラー間に第一延伸槽(一段目、常圧蒸気)及び第二延伸槽(二段目、常圧蒸気)が連続して配置された二段延伸装置を用いた。そして、先ず、紡糸工程で得た未延伸
繊維(約2万dTex)を、紡糸工程に連続して、第一延伸槽にて、導入ローラー(G1ローラー)速度250m/分、第一延伸送出しローラー(G2ローラー)と延伸繊維引き出しローラー(G3ローラー)の二段目延伸比率(G3/G2)1.05倍の条件で、第一延伸送出しローラー(G2ローラー)の速度を増加させながら、100℃の常圧蒸気による二段延伸を行った。
【0109】
その結果、
繊維切れや延伸切れを起こさず、工業的に安定して延伸できる延伸繊維引き出しローラー(G3ローラー)速度は1125m/分、全延伸倍率は4.5倍であった。実施例17は、添加剤IV(リン酸エステル金属塩系核剤)を添加したため、実施例16に比べて、微結晶が生成され延伸しやすい結晶構造が形成され、延伸性が向上した。また、得られた延伸複合繊維の繊度は0.14dTexであり、十分な繊維物性を有していた。更に示差走査熱量計で、昇温速度30℃/分で測定したポリプロピレン繊維成分の融解熱量ΔH
PPは90.2J/gで、結晶化度は43.2%であり、核剤添加により、ヤング弾性率が大きくなり、熱収縮率が小さく、繊維物性の点においても優れた延伸複合繊維が得られた。
【0110】
<実施例18>
(1)鞘芯型複合未延伸
繊維の作製
芯材Aに、添加剤IIIを20質量%、添加剤IV(リン酸エステル金属塩系核剤)を0.3質量%配合した樹脂原料と、鞘材aとを用いて、鞘芯構造の未延伸
繊維を作製した。その際、鞘芯型複合紡糸口金を使用し、鞘芯の断面積比(鞘/芯)は50/50となるようにした。また、紡糸条件は、芯材の押出機シリンダー温度を260℃、鞘材の押出機シリンダー温度を260℃、紡糸口金温度を270℃、紡糸速度を250m/分とし、繊度が0.6dTexの未延伸
繊維を紡糸した。紡糸口金から吐出された芯材のMFRは96.5g/10分、鞘材のMFRは73.1g/10分であり、MFR比(=芯材MFR/鞘材MFR)は1.32であった。
【0111】
(2)延伸複合繊維の作製
前述した紡糸工程から連続して延伸工程が実施できるように、3台のローラー間に第一延伸槽(一段目、常圧蒸気)及び第二延伸槽(二段目、常圧蒸気)が連続して配置された二段延伸装置を用いた。そして、先ず、紡糸工程で得た未延伸
繊維(約2万dTex)を、紡糸工程に連続して、第一延伸槽にて、導入ローラー(G1ローラー)速度250m/分、第一延伸送出しローラー(G2ローラー)と延伸繊維引き出しローラー(G3ローラー)の二段目延伸比率(G3/G2)1.05倍の条件で、第一延伸送出しローラー(G2ローラー)の速度を増加させ、100℃の常圧蒸気による二段延伸を行った。
【0112】
その結果、
繊維切れや延伸切れを起こさず、工業的に安定して延伸できる延伸繊維引き出しローラー(G3ローラー)速度は1200m/分、全延伸倍率は4.8倍であった。実施例18は、添加剤IV(リン酸エステル金属塩系核剤)の添加量が多かったため、実施例17と比較して、結晶核が増加し、微結晶が生成されて、更に延伸しやすい結晶構造が形成され、延伸性が向上した。また、得られた延伸複合繊維の繊度は0.13dTexであり、十分な繊維物性を有していた。
【0113】
<実施例19>
(1)鞘芯型複合未延伸
繊維の作製
芯材Aに、添加剤IIIを20質量%、添加剤V(ベンジリデンソルビトール系核剤)を0.1質量%配合した樹脂原料と、鞘材aとを用いて、鞘芯構造の未延伸
繊維を作製した。その際、鞘芯型複合紡糸口金を使用し、鞘芯の断面積比(鞘/芯)は50/50となるようにした。また、紡糸条件は、芯材の押出機シリンダー温度を260℃、鞘材の押出機シリンダー温度を260℃、紡糸口金温度を270℃、紡糸速度を250m/分とし、繊度が0.6dTexの未延伸
繊維を紡糸した。紡糸口金から吐出された芯材のMFRは97.1g/10分、鞘材のMFRは72.6g/10分であり、MFR比(=芯材MFR/鞘材MFR)は1.34であった。
【0114】
(2)延伸複合繊維の作製
前述した紡糸工程から連続して延伸工程を実施できるように、3台のローラー間に第一延伸槽(一段目、常圧蒸気)及び第二延伸槽(二段目、常圧蒸気)が連続して配置された二段延伸装置を用いた。そして、先ず、紡糸工程で得た未延伸
繊維(約2万dTex)を、紡糸工程に連続して、第一延伸槽にて、導入ローラー(G1ローラー)速度250m/分、第一延伸送出しローラー(G2ローラー)と延伸繊維引き出しローラー(G3ローラー)の二段目延伸比率(G3/G2)1.05倍の条件で、第一延伸送出しローラー(G2ローラー)の速度を増加させながら、100℃の常圧蒸気による二段延伸を行った。
【0115】
その結果、
繊維切れや延伸切れを起こさず、工業的に安定して延伸できる延伸繊維引き出しローラー(G3ローラー)速度は1325m/分、全延伸倍率は5.3倍であった。実施例17、18の添加剤IV(リン酸エステル金属塩系核剤)の分散型結晶核剤と比較して、実施例19の添加剤V(ベンジリデンソルビトール系)の溶融型結晶核剤は、非常に多くの微結晶が生成されるため、更に延伸しやすい結晶構造が形成され、延伸性は向上した。また、得られた延伸複合繊維の繊度は0.12dTexであり、十分な繊維物性を有していた。更に示差走査熱量計で、昇温速度30℃/分で測定したポリプロピレン繊維成分の融解熱量ΔH
PPは94.2J/gで、結晶化度は45.1%であり、核剤添加により、ヤング弾性率が大きく、熱収縮率が小さく、繊維物性の点においても優れた延伸複合繊維であった。
【0116】
<実施例20>
(1)鞘芯型複合未延伸
繊維の作製
芯材Aに、添加剤IIIを20質量%、添加剤V(ベンジリデンソルビトール系核剤)を0.2質量%配合した樹脂原料と、鞘材aとを用いて、鞘芯構造の未延伸
繊維を作製した。その際、鞘芯型複合紡糸口金を使用し、鞘芯の断面積比(鞘/芯)は50/50となるようにした。また、紡糸条件は、芯材の押出機シリンダー温度を260℃、鞘材の押出機シリンダー温度を260℃、紡糸口金温度を270℃、紡糸速度を250m/分とし、繊度が0.6dTexの未延伸
繊維を紡糸した。紡糸口金から吐出された芯材のMFRは98.4g/10分、鞘材のMFRは74.2g/10分であり、MFR比(=芯材MFR/鞘材MFR)は1.33であった。
【0117】
(2)延伸複合繊維の作製
前述した紡糸工程から連続して延伸工程を実施することができるように、3台のローラー間に第一延伸槽(一段目、常圧蒸気)及び第二延伸槽(二段目、常圧蒸気)が連続して配置された二段延伸装置を用いた。そして、先ず、紡糸工程で得た未延伸
繊維(約2万dTex)を、紡糸工程から連続して、第一延伸槽にて、導入ローラー(G1ローラー)速度250m/分、第一延伸送出しローラー(G2ローラー)と延伸繊維引き出しローラー(G3ローラー)の二段目延伸比率(G3/G2)1.05倍の条件で、第一延伸送出しローラー(G2ローラー)の速度を増加させ、100℃の常圧蒸気による二段延伸を行った。
【0118】
その結果、
繊維切れや延伸切れを起こさず、工業的に安定して延伸できる延伸繊維引き出しローラー(G3ローラー)速度は1450m/分、全延伸倍率は5.8倍であった。実施例19と比較して、実施例20は添加
剤V(ベンジリデンソルビトール系核剤)の添加量を増やしているため、結晶核が増加し、微結晶が生成され、更に延伸しやすい結晶構造が形成され、延伸性が向上した。また、得られた延伸複合繊維の繊度は0.11dTexであり、十分な繊維物性を有していた。
【0119】
<比較例1>
(1)鞘芯型複合未延伸
繊維の作製
芯材Dと、鞘材cとを用いて、鞘芯構造の未延伸
繊維を作製した。その際、鞘芯型複合紡糸口金を使用し、鞘芯の断面積比(鞘/芯)は50/50となるようにした。また、紡糸条件は、芯材の押出機シリンダー温度を275℃、鞘材の押出機シリンダー温度を275℃、紡糸口金温度を290℃、紡糸速度を500m/分として、樹脂の吐出量を調整しながら、細繊度未延伸
繊維の作製を試みた。
【0120】
しかし、紡糸口金から吐出された芯材のMFRは38.7g/10分、鞘材のMFRは33.0g/10分、MFR比(=芯材MFR/鞘材MFR)は1.17であり、芯材及び鞘材共に紡糸口金から吐出する樹脂の溶融張力が高かった。このため、紡糸温度を高く設定したにも関わらず、安定紡糸可能な未延伸
繊維繊度は3.11dTexに留まった。
【0121】
(2)延伸複合繊維の作製
紡糸工程で得た未延伸
繊維70本(約56万dTex)が準備できた後、直ちに、まとめたトウを、実施例1と同様の方法及び条件で予備延伸処理した後、連続して本延伸を行った。
【0122】
その結果、紡糸口金から吐出された芯材のMFRが本発明の範囲よりも小さい値であったため、延伸切れを起こさず、工業的に安定して延伸できる延伸繊維引き出しローラー(G3ローラー)速度は54m/分、全延伸倍率は5.4倍となった。また、得られた延伸複合繊維は、繊維物性は良好であったが、未延伸
繊維の細繊度化が不十分であったため、繊度0.60dTexと太いものであった。
【0123】
<比較例2>
(1)鞘芯型複合未延伸
繊維の作製
芯材Aに、添加剤Iを7.5質量%、添加剤IIを0.1質量%配合した樹脂原料と、鞘材cとを用いて、鞘芯構造の未延伸
繊維を作製した。その際、鞘芯型複合紡糸口金を使用し、鞘芯の断面積比(鞘/芯)は50/50となるようにした。また、紡糸条件は、芯材の押出機シリンダー温度を255℃、鞘材の押出機シリンダー温度を255℃、紡糸口金温度を270℃、紡糸速度を500m/分として、樹脂の吐出量を調整しながら、細繊度未延伸
繊維の作製を試みた。
【0124】
しかし、紡糸口金から吐出された芯材のMFRは105.7g/10分、鞘材のMFRは33.5g/10分、MFR比(=芯材MFR/鞘材MFR)は3.16あり、鞘材の紡糸口金から吐出する樹脂の溶融張力が高かったため、安定紡糸可能な未延伸
繊維の繊度は2.04dTexに留まった。
【0125】
(2)延伸複合繊維の作製
紡糸工程で得た未延伸
繊維130本(約53万dTex)が準備できた後、直ちに、まとめたトウを、実施例1と同様の方法及び条件で予備延伸処理した後、連続して本延伸を行った。
【0126】
その結果、延伸切れを起こさず、工業的に安定して延伸できる延伸繊維引き出しローラー(G3ローラー)速度は60m/分、全延伸倍率は6.0倍となった。しかし、紡糸口金から吐出された芯材のMFRと鞘材のMRFとの比が大きく、未延伸
繊維が太かったため、得られた延伸複合繊維は、繊維物性は良好であったが、繊度が0.35dTexと前述した実施例より太いものであった。
【0127】
<比較例3>
(1)鞘芯型複合未延伸
繊維の作製
芯材Aと、鞘材aを用いて、鞘芯構造の未延伸
繊維を作製した。その際、鞘芯型複合紡糸口金を使用し、鞘芯の断面積比(鞘/芯)が50/50となるようにした。また、紡糸条件は、芯材の押出機シリンダー温度を255℃、鞘材の押出機シリンダー温度を255℃、紡糸口金温度を270℃、紡糸速度を500m/分として、樹脂の吐出量を調整しながら、細繊度未延伸
繊維の作製を試みた。
【0128】
しかし、紡糸口金から吐出された芯材のMFRは69.6g/10分、鞘材のMFRは71.5g/10分、MFR比(=芯材MFR/鞘材MFR)は0.97であり、芯材の紡糸口金から吐出する樹脂の溶融張力が若干高かったため、安定紡糸可能な未延伸
繊維の繊度は1.61dTexに留まった。
【0129】
(2)延伸複合繊維の作製
紡糸工程で得た未延伸
繊維170本(約55万dTex)が準備できた後、直ちに、まとめたトウを、実施例1と同様の方法及び条件で予備延伸処理した後、連続して本延伸を行った。
【0130】
その結果、延伸切れを起こさず、工業的に安定して延伸できる延伸繊維引き出しローラー(G3ローラー)速度は62m/分、全延伸倍率は6.2倍となった。これは、紡糸口金から吐出された芯材のMFRの値が本発明の範囲よりも低く、更に未延伸
繊維も太かったためと考えられる。一方、得られた延伸複合繊維は、繊維物性は良好であったが、繊度が0.29dTexと前述した実施例より太いものであった。
【0131】
<比較例4>
(1)鞘芯型複合未延伸
繊維の作製
比較例3と同様の方法及び条件で、未延伸
繊維を作製した。
【0132】
(2)延伸複合繊維の作製
紡糸工程で得た未延伸
繊維170本(約55万dTex)を、約2日間放置した後、まとめたトウを、実施例1と同様の方法及び条件で予備延伸処理した後、連続して本延伸を行った。
【0133】
その結果、延伸切れを起こさず、工業的に安定して延伸できる延伸繊維引き出しローラー(G3ローラー)速度は55m/分、全延伸倍率は5.5倍となり、比較例3よりも延伸性が低下した。これは、未延伸
繊維を約2日間放置したため、結晶が成長して、延伸し難い結晶構造が形成されたためと考えられる。一方、得られた延伸複合繊維は、繊維物性は良好であったが、繊度が0.29dTexと前述した実施例より太いものであった。
【0134】
<比較例5>
(1)鞘芯型複合未延伸
繊維の作製
芯材Aに、添加剤IIを1.0質量%配合した樹脂原料と、鞘材aとを用いて、鞘芯構造の未延伸
繊維を作製した。その際、鞘芯型複合紡糸口金を使用し、鞘芯の断面積比(鞘/芯)は40/60となるようにした。また、紡糸条件は、芯材の押出機シリンダー温度を255℃、鞘材の押出機シリンダー温度を255℃、紡糸口金温度を270℃、紡糸速度を500m/分とし、樹脂の吐出量を調整して、細繊度未延伸
繊維の作製を試みた。
【0135】
しかし、紡糸口金から吐出された芯材のMFRは237.9g/10分、鞘材のMFRは73.1g/10分、MFR比(=芯材MFR/鞘材MFR)は3.25であり、芯材の紡糸口金から吐出する樹脂の溶融張力が低くなり過ぎた。このため、若干不安定な状態となったが、繊度が0.67dTexの未延伸
繊維を紡糸した。
【0136】
図5は比較例5の未延伸
繊維断面を示す顕微鏡写真である。未延伸
繊維の断面を顕微鏡観察して比較したところ、
図5に示す比較例5の未延伸
繊維は、
図2〜4に示す実施例2,4,5の未延伸
繊維に比べて、繊度斑が大きく、
繊維レベルでは鞘芯比率の斑や、鞘材の被覆斑(芯材の露出)が認められた。
【0137】
(2)延伸複合繊維の作製
紡糸工程で得た未延伸
繊維400本(約54万dTex)が準備できた後、直ちに、まとめたトウを、実施例1と同様の方法及び条件で予備延伸処理した後、連続して本延伸を行った。
【0138】
その結果、延伸切れを起こさず、工業的に安定して延伸できる延伸繊維引き出しローラー(G3ローラー)速度は45m/分、全延伸倍率は4.5倍となった。これは、比較例5では、未延伸
繊維の繊度斑が大きかったためと考えられる。また、得られた延伸複合繊維は、繊度が0.16dTexであったが、繊維物性のばらつきが大きかった。
【0139】
<比較例6>
(1)鞘芯型複合未延伸
繊維の作製
芯材Aに、添加剤Iを7.5質量%、添加剤IIを0.2質量%配合した樹脂原料と、鞘材aとを用いて、鞘芯構造の未延伸
繊維を作製した。その際、鞘芯型複合紡糸口金を使用し、鞘芯の断面積比(鞘/芯)が40/60となるようにした。また、紡糸条件は、芯材の押出機シリンダー温度を255℃、鞘材の押出機シリンダー温度を255℃、紡糸口金温度を270℃、紡糸速度を500m/分とし、樹脂の吐出量を調整して、細繊度未延伸
繊維の作製を試みた。
【0140】
しかし、未延伸
繊維を紡糸できる条件が見出せなかった。これは、芯材に添加した高MFR添加剤Iが、添加剤IIにより分解され過ぎたためと考えられる。なお、紡糸口金から吐出された芯材のMFRは180.7g/10分、鞘材のMFRは72.5g/10分であり、MFR比(=芯材MFR/鞘材MFR)は2.49であった。
【0141】
<比較例7>
(1)鞘芯型複合未延伸
繊維の作製
芯材Aと、鞘材aとを用いて、鞘芯構造の未延伸
繊維を作製した。その際、鞘芯型複合紡糸口金を使用し、鞘芯の断面積比(鞘/芯)は50/50になるようにした。また、紡糸条件は、芯材の押出機シリンダー温度を255℃、鞘材の押出機シリンダー温度を255℃、紡糸口金温度を270℃、紡糸速度を150m/分として、樹脂の吐出量を調整しながら、細繊度未延伸
繊維の作製を試みた。
【0142】
しかし、紡糸口金から吐出された芯材のMFRは68.9g/10分、鞘材のMFRは73.9g/10分、MFR比(=芯材MFR/鞘材MFR)は0.93であり、芯材の紡糸口金から吐出する樹脂の溶融張力が若干高かったため、安定紡糸可能な未延伸
繊維の繊度は1.50dTexに留まった。
【0143】
(2)延伸複合繊維の作製
前述した紡糸工程から連続して延伸工程を実施できるように、3台のローラー間に第一延伸槽(一段目、常圧蒸気)及び第二延伸槽(二段目、常圧蒸気)が連続して配置された二段延伸装置を用いた。そして、先ず、紡糸工程で得た未延伸
繊維(約5万dTex)を引き続き、第一延伸槽にて、導入ローラー(G1ローラー)速度150m/分、第一延伸送出しローラー(G2ローラー)と延伸繊維引き出しローラー(G3ローラー)の二段目延伸比率(G3/G2)1.05倍の条件で、第一延伸送出しローラー(G2ローラー)の速度を増加させながら、100℃の常圧蒸気による二段延伸を行った。
【0144】
その結果、
繊維切れや延伸切れを起こさず、工業的に安定して延伸できる延伸繊維引き出しローラー(G3ローラー)速度は825m/分、全延伸倍率は5.5倍であった。これは、紡糸口金から吐出された芯材のMFRの値が本発明の範囲よりも低く、更に未延伸
繊維も太かったためと考えられる。一方、得られた延伸複合繊維は、繊維物性は良好であったが、繊度が0.30dTexと前述した実施例より太いものであった。
【0145】
以上の結果を下記表1及び表2にまとめて示す。
【0146】
【表1】
【0147】
【表2】
【0148】
上記表1及び表2に示すように、実施例1〜20の製造方法は、比較例1〜7の製造方法に比べて細繊度化に優れており、繊維物性に優れた細繊度の延伸複合繊維を製造できることが確認された。